動画の冒頭、ミライアカリが金髪サイドテールを弾ませ、元気よくカメラに語りかける。
「ハロー! ミライアカリだよ! 今回はアカリが思う、『こんな男性は嫌だ!5選』を紹介したいと思います。…だからといって、これは一女性としてミライアカリの独断と偏見です! 『お付き合いをしていないと言う男性』とのやり取りでお送り致します!」
【その1】待ち合わせにて
「お待たせしました。遅刻して申し訳ありません」
ファルカ・ミューレンカンプ少尉は、軽く息を切らせながらアクスマン中佐に頭を下げた。
「構わんよ。私も今来たところだ」
と、いつものように軍人然とした無表情で返す中佐。
……が。
「何か今日の中佐殿、少し雰囲気が違いますね」
「ん? おや、気付いてしまったか。リーガルの革靴を新調してみたのだよ」
「どれですか?」
──その瞬間。
《バァァン!!!!》
「おおおおおおおおおおおおおおおおい!!!何でお前靴尖ってんだよ!!!一緒に歩いて恥ずかしいだろうがあああああああああああ!!!おめぇはな!ピーターパンか!!?この野郎!!いや分かるんだよ。その尖った靴でも御洒落なのは中には本当にあるの!靴はな!男の象徴でもあるんだよ!!いいモノを履け!」
アカリ、全力のツッコミ。
(なお、この声は全空に響き渡ったらしい)
【その2】高級レストランにて
「ここは私の行きつけの会員制高級フレンチレストランだ」
誇らしげに語るアクスマン中佐。その眼差しは、自信に満ちている。
「良い雰囲気ですね……! 初めて来ました!」
「何にしようか……?」
アクスマンがメニューを独占。それと同時にファルカは困惑した
「(メニューが……来ない)」
「何が食べたいのかね?」
アクスマンがさらっと聞く
「おおおおおおおおおおおおおおおおい!!!! お前、行きつけなんだろ!!? アカリにもメニュー見せろ! コノヤロー!! 何で自分だけ見てんだよ! それで『何が食べたいか?』って? わっかんねーよ! 人にはメニューを見せる時はな! これをこう反対してこうだろ!!? せめてびっくりドンキーみたいに観音開きで2人でこうやってこう見合うのが普通だろ!!!! 良かったぁなぁ?」
アカリ、全力の幻滅。
【その3】ショッピングの帰り道で
ファルカが満足げに言う。
「さっきのご飯、美味しかったです」
アクスマンが歩きながら語る。
「気に入ってくれて幸いだよ。―――私の母は調理師免許を持っていてね。幼少の頃は、他所の家の食事など……比べ物にならなかったさ」
──ファルカの顔が引きつる。
「(あーあ……そういうとこですよ、マジで――最低最悪屑卑怯ダメ人間)」
しかも、次の瞬間。
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおい!!! 先に行くなよ!!! こっちはなお洒落して無理にでもヒール履いてんだよ!! 一緒のペースで歩けよな! ゴラァ!! あとな、言っとくけどな、女子はな、ストッキングとか履いてるんだよ!! ストッキング履くとこうツルツルと前の方に足が出て行って…もう小指とか…あの痛さがあるんだよ!! ちゃんとお前! 女に配慮しろ!!!!!」
アカリ、怒り心頭。
【その4】ドライブ中にて
ファルカが微笑む
「今日は楽しかったです、中佐殿」
「そうだな……」
アクスマンがハンドルを握る。
「あ、信号変わりそうですよ」
ファルカが警告。
「黄色なら行ける…何気にすることはない。赤になった時は誰かを犠牲にすればいいのだよ」
アクスマンが軽く言う。
──赤信号、無視。
そして迫る、交差点の死角。
「あ、危ない!」
ファルカが叫ぶ。
「何!!?…危なかったな…全く不躾なドライバーだな」
アクスマンが開き直る。
「チッ(貴方もですよ。アクスマン中佐)」
ファルカが内心で舌打ちし、乾いた笑みを浮かべる
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおい!!!!!! 『危なかった』じゃねーよ!! あっちは勿論な! こっちだって命があるんだよ!!! 分かるかおい! しかもな、開き直って自分が悪くない感じにするなよな!!!! てめぇ! あ? 分かってるか!!? 言っとくけどな! お前、もしそのなー、女の子が乗っていたとして、その女の子が自分の結婚したいフィアンセだったとする! その子の親父に挨拶に行った時、てめー、絶対殺されるぞ! その命の覚悟を持て!! 分かったな? と言う訳で、女の子を横に乗せるという自覚を持って生きろ!!」
アカリ、保険料が上がるレベルの説教中。
【その5】別れ際にて
ファルカが笑顔で言う。
「今日は本当にありがとうございました!」
「どう致しましてだ。ところで、帰ってからは何を──」
アクスマンが軽く聞く。
「ここから先は詮索しないでください!」
ファルカがピシャリ。
「フッ…」
アクスマンが笑い、ファルカの頭をポンポン。
ぽん。
ぽん。
「ちょっと…中佐殿!」
ファルカが顔を赤らめる。
「ん?」
アクスマンがキョトン。
「セクハラです」
ファルカが睨む。
「え!!?」
アクスマンが慌てる。
「おおおおおおおおおおおおい!! おーい! おーい! おーい! おーい! おーい! おおおおおおおおおおおおおおい!!!!!! 誰もがな! 頭PONPONされて優しいと思うなよ!! コノヤロー! って思っちゃうんだよ! 分かるか!? お前! ましてはな、お前、付き合ってもねーだろ!!付き合ってたらまだマシだ! 中には女の子によってヤダって言う子もいるけど、まだ付き合ってたらマシだ! だけどおめーはまだ付き合ってないで、それ以下なんだよ! 分かるか!?お前の位置はここだ! ってか、お前らさ、そのPONPONって奴はさ、漫画とかアニメとかドラマを参考にしてんだろ!? 違うからな!! 触っていいですか? PONPONしていいですか? って言えよな!!」
アカリ、怒涛のPONPON制裁。
アカリがカメラにウィンク。
「明日の話題は見つかりましたか? こんな事をしちゃうと、女の子から嫌われちゃうかもしれませんよ。コメント欄よりご感想お待ちしております。最後まで見てくれたあなたが大好きです! それでは!」
スナック『ミツコ』でのアカリの動画の反響が広がり、ミツコがカウンターで笑いながら言う。
「アカリちゃんの動画、めっちゃバズってるわよ! コメント欄、めっちゃ盛り上がってるわ!」
夕呼がスマホをスクロールし、笑う。
「『ピーターパンの靴で草』『びっくりドンキー観音開き最高』だって! アカリのツッコミ、キレッキレね」
ベアトリクスがワインを飲み、言う。
「あの動画、アクスマンをダシにしたのは笑えたけど、ファルカが不満そうね」
ファルカが腕を組み、ムッとした顔で言う。
「ちょっと良いですか? アカリさん」
「なーに?」
アカリが金髪サイドテールを弾ませ、ニコニコ。
「私があんな男と付き合う訳ないですよ! あり得ない光景!」
ファルカが声を張る。
「えー…例えの話ですよ」
アカリが笑って誤魔化す。
ファルカが目を細め、言う。
「リィズ先輩一筋です!」
「…」
アカリが言葉に詰まる。
二コラがため息をつき、呟く。
「うむ…」
カタリーナがニヤリと笑う。
「あの下種野郎は、それ以前に嫌われてるからね」
ファルカが頷き、続ける。
「そうですね…同志少佐をダシにして、ベルンハルト大尉を交渉の駒として扱おうと考えた男ですからね」
アカリが目を丸くし、叫ぶ。
「ダシ? 交渉? 何々? 分かんない! 分かんないよ!」
二コラが冷たく言う。
「貴様には関係ない事だ」
カタリーナが頷く。
「そうね…」
ミツコがカウンター越しに笑う。
「まぁまぁ、みんな熱くなってるわね。アカリちゃん、冬コミの準備はどう? 動画の勢いなら、ブースも盛り上がりそう!」
アカリが拳を握り、元気よく言う。
「うん! 『ミライアカリオルタネイティヴ』のデモ版、めっちゃいい感じ! 萌実ちゃんの主題歌も、ミディちゃんのアレンジでバッチリ! ニーツちゃんのプロモ動画も最高! 冬コミでWUGちゃんとコラボして、トップVTuber目指すよ!」
ニーツが敬礼し、言う。
「プロモーション動画、再生数すでに10万超えました。リスナーの期待値、高いです」
ミディが手を振る。
「主題歌のフルバージョン、冬コミで初披露! 絶対泣けるよー!」
ベアトリクスが微笑み、言う。
「新人二人、意外とやるわね。アカリ、ファルカ、冬コミでENTUMの名前を轟かせなさい」
ファルカが頷き、言う。
「リィズ先輩にも、このゲームを見せたい…アカリさん、シナリオの最終チェック、急ぎましょう」
アカリがスマホを取り出し、萌実からのメッセージを確認。
「アカリちゃん、動画バズってる! 冬コミブース、絶対成功するよ!(´ω`)」
彼女の唇に笑みが広がる。
「よし! ENTUM全員で、冬コミをドカンと盛り上げる!」
ENTUMの冬コミへの挑戦は、新たな仲間と動画の勢いを武器に、さらなる高みを目指していた――。