2019年1月19日
株式会社ENTUM 大ホール
ENTUMの大ホールは、熱狂とカオスのるつぼだった。色とりどりのペンライトが観客席を埋め尽くし、キラキラ! と輝くステージでは、巨大なスクリーンに『バーチャルさんは見ている!?』の劇中映像――シュタージ本部での月夜ソラのガーランド、BETAの咆哮、アイリスディーナの救出シーン――が断片的に映し出される。2019年の東京の夜を背景に、1983年の東ドイツを舞台にした劇中劇のライブイベントが、観客の歓声で沸き立っていた。ドンドン! ドラムのビートがホールに響き、会場の熱気が最高潮に達する。
バックステージでは、ベイレーンがヘッドセットを調整し、ニヤリと笑う。
「(準備はOKだ!)」
エイレーンが隣でウインクし、夏実萌恵に目配せする。
「(始めましょう! 萌恵さん!)」
萌恵がマイクを握り、力強く頷く。
「(OK…!)」
カチ! ステージの照明が一斉に点灯し、♪~ イントロのメロディが流れ出す。アカリがステージ中央に飛び出し、観客の歓声に応える。
「窓の 星の灯りで ふたりの距離を たしかめる…」
彼女の透き通った声が、ホールに響き渡る。
「手さぐり あなたの唇 こわいわ
声にならないけれど あなたの名前 呼んでみた
からだの 何処かに誰かが いるのよ
愛のために ふたり できることを 教えてほしい
愛をはなさないで 夢のような 秘密く・だ・さ・い
いつも くれる微笑み いえないくらい ぎこちない
あなたが 遠くなるようで さみしい
愛のために ふたり 熱いことば みつけてみたい
愛を忘れないで 夢のような 秘密く・だ・さ・い
愛のために ふたり できることを 教えて欲しい
愛をはなさないで 夢のような 秘密く・だ・さ・い
愛のために ふたり 熱いことば みつけてみたい
愛を忘れないで 夢のような 秘密く・だ・さ・い♪」
観客の歓声が爆発し、ワー! ペンライトが波のように揺れる。萌恵がマイクを握り直し、叫ぶ。
「(Next song…!)」
カチ! 次の曲のイントロが流れ、ひいろがアカリの隣に躍り出る。
「Lonely Sunset♪ Lonely Sunset♪」
ひいろの力強い声が、ステージをさらに盛り上げる。
アカリが続き、情感たっぷりに歌う。
「夏の終わりのペイブメント 彼の背中をみてた
透きとおる 熱い肌 何か言いたげだった
銀の♪」
「Lonely Sunset♪」
ひいろがコーラスで応じ、観客が手を振る。
「ペンダントそっと…♪音を♪」
アカリが歌い、キラキラ! ステージの照明が銀色に輝く。
「Lonely Sunset♪」
ひいろがリズムを刻む。
「たてながらおちた 深い理由 ありそうに
ふたり…♪」
「ふたり♪」
ひいろがアカリと息を合わせ、観客が唱和する。
「みつめあっていたね Lonely Sunset 涙がこわい♪」
「こわい♪」
ひいろの声が響く。
「Lonely Sunset こわくてつらい♪」
「つらい♪」
「さよならの気配 ものわかりがいい わたし お馬鹿さん♪」
「Lonely Sunset♪ Lonely Sunset♪」
ひいろが盛り上げる。
「昔♪」
アカリが続ける。
「Lonely Sunset♪」
「よくしたように♪腕も♪」
「Lonely Sunset♪」
「くめない感じ♪なにもかも 意味ばかり♪
きっと…♪」
「きっと…♪」
「ありすぎてこまるわ♪ Lonely Sunset ふたりがわるい♪」
「わるい♪」
「Lonely Sunset わるくてきらい♪」
「きらい♪」
「さよならのために 気をきかすなんて わたし お馬鹿さん♪」
アカリとひいろが息を合わせて締める。
「Lonely Sunset♪ 涙がこわい♪ Lonely Sunset♪ こわくてつらい♪ Lonely Sunset♪ ふたりがわるい♪ Lonely Sunset♪ わるくてきらい♪」
ワー! 観客の歓声がホールに響き、ステージは熱狂に包まれる。だが、その熱気をぶち壊すように、ベノちゃんがステージに乱入し、マイクを奪う。
「よーし、次は私の番だね♪ どうしたの? ○○○○♪ 勃起しないの? ○○○○…」
二コラがバックステージから飛び出し、冷たく叫ぶ。
「摘み出せ!」
ファルカが即座に応じ、腕を組んで睨む。
「了解です。この不躾な女を追い出せ!」
グイッ! 誠実な黒服の男がベノちゃんを掴み、ステージから引きずり出す。
「はい!」
「ちょ…何するんだよ! 折角良い所なのに! お姉ちゃん!」
ベノちゃんがエイレーンに助けを求める。
エイレーンが冷ややかに言う。
「摘み出してください。」
「えええええええええええええええ!???」
ベノちゃんの悲鳴がホールに響き、観客が爆笑に包まれる。
皆守ひいろがステージでマイクを握り、呟く。
「あー、早く歌上手くなりたいなぁ……。」
花野蜜がバックステージで静かに微笑む。
「……。」
夏実萌恵が蜜に近づき、英語混じりで熱く語る。
「Do not rest! Honey, a lot of loud noise with loud voice. I watched the movie saying that I listened to the singing voice I was impressed! Why don’t you debut as a singer if you don’t mind?」
蜜が照れ笑いを浮かべ、答える。
「あ……いえ、これは……。」
彼女の心には、劇中の月夜ソラとの絆や、シュタージ本部での戦いがよぎる。
ファルカがニヤリと笑い、提案する。
「良いじゃないですか! 花野蜜、歌手デビュー! 既存の曲をカバーして、歌詞の一部を変えれば絶対売れるはずです!」
「ファルカさん……。」
蜜が少し困惑した表情でファルカを見つめる。
「はい?」
ファルカがクールに応じる。
蜜が静かに言う。
「少し時間をください。」
彼女の心には、競争率の高いアイドル業界への不安がちらつく。「(競争率が高いわね…)」
そこへ、ZMAPPちゃんが元気に割り込む。
「声の事なら心配しないで!」
「ZMAPPちゃん……。」
蜜が驚きつつ微笑む。
エボラちゃんが不気味に笑い、言う。
「ゆっくり休めば?」
ZMAPPちゃんが突然叫ぶ。
「DEATHDEATHDEATHDEATHDEATH…エボラ! 今日こそはお前を倒す! 私は失敗作じゃない! 私は人類を救う存在…!」
キュアちゃんが静かに割って入り、言う。
「今はダメよ。」
「キュアお姉様!」
ZMAPPちゃんが目を輝かせる。
キュアちゃんが続ける。
「私たちもこうなれば……。」
エボラちゃんが不敵に笑い、蜜に迫る。
「お前の喉頭を細菌入れて……。」
「な、何するのよ! やめなさい!」
蜜が慌てて後ずさる。
二コラがため息をつき、冷たく命じる。
「……摘み出せ」
グイッ! 誠実な黒服の男が再び登場し、エボラちゃんとZMAPPちゃんを掴む。
「ハッ!」
「ちょ…何するんだよ!」
エボラちゃんが抵抗する。
「何故私まで!?」
ZMAPPちゃんが叫ぶ。
「何もやってない!」
キュアちゃんが必死に弁解する。
「NOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!」
ZMAPPちゃんの悲鳴がホールに響き、観客が再び爆笑に包まれる。
二コラが額を押さえ、呆れたように呟く。
「はぁ…このカオス、劇中のシュタージ本部より酷いな。」
ステージでは、アカリとひいろが次の曲に移り、♪~ 観客の熱狂が再び沸き上がる。客席の月夜ソラは、ペンライトを振ってステージを見つめ、呟く。
「蜜先生、すげえな……俺もガーランドでBETA倒すシーン、負けられないぜ!」
大ホールのスクリーンには、カウルスドルフ収容所でのソラの戦い、ユメノツキミの真相、カティアの理想、アイリスディーナの救出が映し出される。『バーチャルさんは見ている!?』のライブイベントは、劇中劇の重厚さと現代のエンターテインメントのダイナミズムを融合させ、観客を熱狂の渦に巻き込んでいた。
このライブシーンが、ENTUMの配信コンテンツとして視聴者にどんな興奮と笑いを与えるのか、大ホールの歌声とカオスな掛け合いに答えは隠されていた。