2019年3月16日 アカリスタジオ 廊下
アカリスタジオの廊下は、いつものキラキラした雰囲気とは裏腹に、異世界からの来訪者によるカオスで騒然としていた。壁にはミライアカリのポスターや「料理対決」のサムネイルが貼られ、床にはスナックの袋が転がる。
シフィが緑髪サイドテールを揺らし、元気に自己紹介。
「私はシフィール・エシラー。『シフィ』って呼んでね!」
彼女のキラキラした瞳には、異世界から転生してきたばかりの純粋さが宿る。
アカリが手を振って、キラキラ笑顔で応じる。
「前回は真面に話せてなかったね。ミライアカリだよ♪ よろしくね!」
彼女のエプロンには、料理対決のトマトソースのシミがまだ残っている。
「ふふ、シフィは異世界から来たんだけど、今はベイレーン家に居候してるの。」
シフィが少し照れながら言う。彼女の手には、謎の魔法書ノートが握られている。
「うん、異世界転生か……アカリ、異世界モノ好きだから趣味が合うね!」
アカリが目をハートにし、シフィにグイグイ近づく。
「え? う、うん(活発的に明るいね…)。」
シフィがアカリのテンションに圧倒されつつ、微笑む。
「ねえねえ、シフィちゃんの前世の仕事は何してたの?」
アカリが好奇心全開で尋ねる。
「そうだね…奴隷だよ。」
シフィがあっさり答える。
「え? 奴隷って…シフィちゃん差別されてたの?」
アカリが目を丸くし、心配そうに身を乗り出す。
「誰に差別されたかシフィ、分からないんだ。でね、奴隷は朝9時から夜6時まで働いてるんだけど、ベイレーンはもっと働いてるみたい。」
シフィが首を傾げ、純粋に疑問を口にする。
「あー、あれはベイレーンさんのジョークだから気にしないでね…何教えたんだろう?」 アカリが苦笑いし、ベイレーン過激なノリをフォロー。
「ENTUMの顧問の仕事とか務めてるみたいけど、よく分からないんだ。」
シフィが魔法書ノートをパラパラめくりながら呟く。
「あはは…。」
アカリが笑ってごまかし、二人でスタジオの奥へ進む。
ガチャ!
廊下の奥で、ベイレーンがベアトリクスと立ち話をしている姿が目に入る。ベアトリクスの側近として、ニコラがクールに立っている。
「おはようございま~す!」
アカリが手を振って元気に挨拶。
「あ、ベイレーン!」
シフィが嬉しそうに駆け寄る。
「おい! 何できた!?」
ベイレーンが黒色のおさげを揺らし、警戒心全開でシフィを睨む。
シフィがベアトリクスをチラリと見て、内心で察知。
「(この全身黒い服に黒いロングヘアー…艶やかで漂う妖気…黒魔術師だ…!)」
彼女の異世界脳が、ベアトリクスの威厳ある姿を完全に誤解。
「オイラの会社の名誉会長だお。」
ベイレーンがドヤ顔で紹介。
ベアトリクスが優雅に微笑み、言う。
「あなたがシフィね。ベイレーンにはいつも世話になってるわ。」
彼女の黒髪ロングヘアーが揺れ、貫禄が廊下を支配する。
シフィが目を光らせ、突然叫ぶ。
「(こんな人間の皮を被った狼と仲良くするのはおかしい。やっぱり既にベイレーンは洗脳されているんだ!)ベイレーン、私がブラックキギョーから解放してあげるから!」
「え?」
アカリがポカン。
「お前、名誉会長の前で何を!?」
ベイレーンが慌ててシフィの腕を掴む。
ベアトリクスが冷静に言う。
「いいのよ、ベイレーン。我が社はブラック企業ではない。厳しく躾をするが、破格な待遇は受けさせるつもりよ? ニコラ。」
「――は!」
ニコラがキビキビと動き、ノートを取り出してページを開く。そこには、ENTUMの理念と規則がびっしり書かれている。
「これが我がENTUMの理念と秩序よ。他のVTuber事務所とは違うけど、それなりにやってるつもりよ。」
ベアトリクスが自信たっぷりに言う。
シフィが廊下に飾られたトラバントや東ドイツ国旗を見て、目を丸くする。さらに、シュタージの紋章旗を見つけて完全に勘違い。
「(こ、これは失われたルーン文字!? ノートにも書かれてる…発動前に止めないと!)」
次の瞬間、シフィがベアトリクスに鉄拳制裁を繰り出そうと拳を振り上げる。だが、ニコラが電光石火で動く前に、ベアトリクス自身がサッと手を上げてシフィを制する。
「少佐!」
ニコラが叫ぶ。
「――初対面の相手に殴りかかるなど愚かな行為だ。」
ベアトリクスが冷たく言い放ち、軽い手刀でシフィの拳を弾く。
「ぐび!」
シフィがバランスを崩し、よろける。
「な、何してるんだお前!!?」
ベイレーンが絶叫。
「あわわわ…ど、どうしよう!? このままじゃ…!」
アカリがオロオロしながら二人を交互に見る。
ベアトリクスがシフィを睨み、言う。
「…今回だけは見逃してあげる。次はないぞ。」
「おい、異世界人。もう余計なことはするな! 名誉会長怒らせたら怖いぞ!」
ベイレーンがシフィの肩をガシッと掴む。
「そうだよ! ベアトリクスさん、東ドイツのシュタージ出身で連邦情報局の諜報員を務めてた怖い女性だよ!」
アカリが大げさに囁く。
「クビにされたいのか!?」
ベイレーンがシフィを揺さぶる。
「う、打ち首だなんて許せない!」
シフィがムッとして反発。
「お前、何か勘違いしてるお!」
ベイレーンが頭を抱える。
ベアトリクスが静かに言う。
「ベイレーン。」
「!」
ベイレーンがビクッ。
「6ヶ月減俸だ。」
ベアトリクスが淡々と宣告。
「!!!!」
ベイレーンが絶叫し、膝をつく。
数分後 楽屋
楽屋のソファに、ベイレーンがドサッと座り、シフィを睨む。
「おい、シフィ何してるんだお! お前のせいでオイラは減俸受けたじゃないか! どうしてくれるんだお!」
「ごめんね…。」
シフィがしょんぼり頭を下げる。魔法書ノートをギュッと抱きしめる姿が、なんとも哀愁漂う。
「…とりあえず減った分の給料、お前が頑張って動画作れ。」
ベイレーンがため息をつき、気を取り直す。
「うん! シフィ頑張るよ!」
シフィが目を輝かせ、元気に頷く。
「よし、これがお前のスケジュールと出退勤表だお。」
ベイレーンが分厚い書類をドンと渡す。
「あれ? 真っ黒だけど。」
シフィが書類をめくり、困惑。
「おい、よく見ろお!」
ベイレーンがニヤリ。
「え? 死んじゃうよ!」
シフィが書類を見て青ざめる。そこには、朝5時から深夜2時までのスケジュールがギッシリ。
「ベイレーンさん、それは流石にやり過ぎですよ…。」
アカリが苦笑いし、シフィの肩をポンと叩く。
「シフィちゃん、ENTUMは楽しいよ! ブラックじゃないから、ゆっくり慣れてね!」
楽屋のモニターには、配信の待機画面が映る。「シフィのENTUM入社スペシャル! ベアトリクスVS異世界人の真相!」と、煽るテロップが輝く。コメント欄は「シフィ、転生ガチ!?」「ベイレーン減俸w」「ベアトリクス姐さん怖え!」と、視聴者の興奮が爆発。シフィの誤解とベイレーン減俸劇が、ENTUMの新たなバズりを生み出す準備が整っていた。このカオスな楽屋が、どんな笑いを巻き起こすのか、シフィの純粋さとアカリのキラキラ笑顔に答えは隠されていた。