ENTUM23   作:マブラマ

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第98話 謎の異世界人

2019年3月16日 アカリスタジオ 廊下

 

アカリスタジオの廊下は、いつものキラキラした雰囲気とは裏腹に、異世界からの来訪者によるカオスで騒然としていた。壁にはミライアカリのポスターや「料理対決」のサムネイルが貼られ、床にはスナックの袋が転がる。

シフィが緑髪サイドテールを揺らし、元気に自己紹介。

「私はシフィール・エシラー。『シフィ』って呼んでね!」

彼女のキラキラした瞳には、異世界から転生してきたばかりの純粋さが宿る。

アカリが手を振って、キラキラ笑顔で応じる。

「前回は真面に話せてなかったね。ミライアカリだよ♪ よろしくね!」

彼女のエプロンには、料理対決のトマトソースのシミがまだ残っている。

「ふふ、シフィは異世界から来たんだけど、今はベイレーン家に居候してるの。」

シフィが少し照れながら言う。彼女の手には、謎の魔法書ノートが握られている。

「うん、異世界転生か……アカリ、異世界モノ好きだから趣味が合うね!」

アカリが目をハートにし、シフィにグイグイ近づく。

「え? う、うん(活発的に明るいね…)。」

シフィがアカリのテンションに圧倒されつつ、微笑む。

「ねえねえ、シフィちゃんの前世の仕事は何してたの?」

アカリが好奇心全開で尋ねる。

「そうだね…奴隷だよ。」

シフィがあっさり答える。

「え? 奴隷って…シフィちゃん差別されてたの?」

アカリが目を丸くし、心配そうに身を乗り出す。

「誰に差別されたかシフィ、分からないんだ。でね、奴隷は朝9時から夜6時まで働いてるんだけど、ベイレーンはもっと働いてるみたい。」

シフィが首を傾げ、純粋に疑問を口にする。

「あー、あれはベイレーンさんのジョークだから気にしないでね…何教えたんだろう?」 アカリが苦笑いし、ベイレーン過激なノリをフォロー。

「ENTUMの顧問の仕事とか務めてるみたいけど、よく分からないんだ。」

シフィが魔法書ノートをパラパラめくりながら呟く。

「あはは…。」

アカリが笑ってごまかし、二人でスタジオの奥へ進む。

ガチャ!

廊下の奥で、ベイレーンがベアトリクスと立ち話をしている姿が目に入る。ベアトリクスの側近として、ニコラがクールに立っている。

「おはようございま~す!」

アカリが手を振って元気に挨拶。

「あ、ベイレーン!」

シフィが嬉しそうに駆け寄る。

「おい! 何できた!?」

ベイレーンが黒色のおさげを揺らし、警戒心全開でシフィを睨む。

シフィがベアトリクスをチラリと見て、内心で察知。

「(この全身黒い服に黒いロングヘアー…艶やかで漂う妖気…黒魔術師だ…!)」

彼女の異世界脳が、ベアトリクスの威厳ある姿を完全に誤解。

「オイラの会社の名誉会長だお。」

ベイレーンがドヤ顔で紹介。

ベアトリクスが優雅に微笑み、言う。

「あなたがシフィね。ベイレーンにはいつも世話になってるわ。」

彼女の黒髪ロングヘアーが揺れ、貫禄が廊下を支配する。

シフィが目を光らせ、突然叫ぶ。

「(こんな人間の皮を被った狼と仲良くするのはおかしい。やっぱり既にベイレーンは洗脳されているんだ!)ベイレーン、私がブラックキギョーから解放してあげるから!」

「え?」

アカリがポカン。

「お前、名誉会長の前で何を!?」

ベイレーンが慌ててシフィの腕を掴む。

ベアトリクスが冷静に言う。

「いいのよ、ベイレーン。我が社はブラック企業ではない。厳しく躾をするが、破格な待遇は受けさせるつもりよ? ニコラ。」

「――は!」

ニコラがキビキビと動き、ノートを取り出してページを開く。そこには、ENTUMの理念と規則がびっしり書かれている。

「これが我がENTUMの理念と秩序よ。他のVTuber事務所とは違うけど、それなりにやってるつもりよ。」

ベアトリクスが自信たっぷりに言う。

シフィが廊下に飾られたトラバントや東ドイツ国旗を見て、目を丸くする。さらに、シュタージの紋章旗を見つけて完全に勘違い。

「(こ、これは失われたルーン文字!? ノートにも書かれてる…発動前に止めないと!)」

次の瞬間、シフィがベアトリクスに鉄拳制裁を繰り出そうと拳を振り上げる。だが、ニコラが電光石火で動く前に、ベアトリクス自身がサッと手を上げてシフィを制する。

「少佐!」

ニコラが叫ぶ。

「――初対面の相手に殴りかかるなど愚かな行為だ。」

ベアトリクスが冷たく言い放ち、軽い手刀でシフィの拳を弾く。

「ぐび!」

シフィがバランスを崩し、よろける。

「な、何してるんだお前!!?」

ベイレーンが絶叫。

「あわわわ…ど、どうしよう!? このままじゃ…!」

アカリがオロオロしながら二人を交互に見る。

ベアトリクスがシフィを睨み、言う。

「…今回だけは見逃してあげる。次はないぞ。」

「おい、異世界人。もう余計なことはするな! 名誉会長怒らせたら怖いぞ!」

ベイレーンがシフィの肩をガシッと掴む。

「そうだよ! ベアトリクスさん、東ドイツのシュタージ出身で連邦情報局の諜報員を務めてた怖い女性だよ!」

アカリが大げさに囁く。

「クビにされたいのか!?」

ベイレーンがシフィを揺さぶる。

「う、打ち首だなんて許せない!」

シフィがムッとして反発。

「お前、何か勘違いしてるお!」

ベイレーンが頭を抱える。

ベアトリクスが静かに言う。

「ベイレーン。」

「!」

ベイレーンがビクッ。

「6ヶ月減俸だ。」

ベアトリクスが淡々と宣告。

「!!!!」

ベイレーンが絶叫し、膝をつく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数分後 楽屋

楽屋のソファに、ベイレーンがドサッと座り、シフィを睨む。

「おい、シフィ何してるんだお! お前のせいでオイラは減俸受けたじゃないか! どうしてくれるんだお!」

「ごめんね…。」

シフィがしょんぼり頭を下げる。魔法書ノートをギュッと抱きしめる姿が、なんとも哀愁漂う。

「…とりあえず減った分の給料、お前が頑張って動画作れ。」

ベイレーンがため息をつき、気を取り直す。

「うん! シフィ頑張るよ!」

シフィが目を輝かせ、元気に頷く。

「よし、これがお前のスケジュールと出退勤表だお。」

ベイレーンが分厚い書類をドンと渡す。

「あれ? 真っ黒だけど。」

シフィが書類をめくり、困惑。

「おい、よく見ろお!」

ベイレーンがニヤリ。

「え? 死んじゃうよ!」

シフィが書類を見て青ざめる。そこには、朝5時から深夜2時までのスケジュールがギッシリ。

「ベイレーンさん、それは流石にやり過ぎですよ…。」

アカリが苦笑いし、シフィの肩をポンと叩く。

「シフィちゃん、ENTUMは楽しいよ! ブラックじゃないから、ゆっくり慣れてね!」

楽屋のモニターには、配信の待機画面が映る。「シフィのENTUM入社スペシャル! ベアトリクスVS異世界人の真相!」と、煽るテロップが輝く。コメント欄は「シフィ、転生ガチ!?」「ベイレーン減俸w」「ベアトリクス姐さん怖え!」と、視聴者の興奮が爆発。シフィの誤解とベイレーン減俸劇が、ENTUMの新たなバズりを生み出す準備が整っていた。このカオスな楽屋が、どんな笑いを巻き起こすのか、シフィの純粋さとアカリのキラキラ笑顔に答えは隠されていた。

 

 

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