2019年3月28日 KADOKAWA本社 会議室
KADOKAWA本社の会議室は、重苦しい空気に包まれていた。普段は新作ライトノベルやアニメ企画の活発な議論で賑わう部屋だが、今日の議題は異様だった。巨大なモニターには、『バーチャルさんはみている』第12話(3月27日放送分)の映像が映し出され、電脳少女シロが暴力的な反体制派役、月ノ美兎が陰鬱なスパイ役として登場。彼女たちのいつものキラキラしたVTuberの魅力は封じられ、ダークでシリアスな雰囲気が漂う。KADOKAWAの幹部陣と社員たちは、最近このアニメをチェックしていなかったことを後悔しながら、画面に釘付けになっていた。
「これは……!?」
眼鏡の幹部が、コーヒーカップを落としそうになりながら呟く。
「バーチャルさんじゃない……これはマブラヴシリーズの一つ、シュヴァルツェスマーケンだ!」
中年社員が声を震わせ、モニターを指差す。シロの冷酷な台詞と美兎の暗い表情が、まるで別世界の物語のようだった。
「これはバーチャルさんはみているじゃない…別物だ。」
若手社員が呆然と呟き、隣の同僚と顔を見合わせる。
ガチャ!
会議室のドアが勢いよく開き、社長がドカドカと入ってくる。偶然の視察だったが、タイミングは最悪だった。社長がモニターを一瞥し、顔を真っ赤にして叫ぶ。
「こんなカオスなアニメ認められるか! すぐ打ち切りにしろ!!」
会議室が一瞬で凍りつく。幹部たちが「社長、落ち着いて…」「視聴率は悪くないんです!」と弁解するが、社長の怒りは収まらない。
「こんなダークなVTuberアニメ、誰が見るんだ! KADOKAWAの看板が泣くぞ!」
彼の声が会議室を震わせ、即座に打ち切りが決定。FAXとメールで、ENTUMと制作会社リドに通告が飛んだ。
ENTUM本社 会議室
ENTUM本社の会議室は、まるで嵐の後の静けさだった。壁にはミライアカリのポスターや「料理対決」のトロフィーが飾られ、モニターには「シフィ入社スペシャル」の配信コメントがまだ流れている。だが、テーブルの上には、KADOKAWAからの打ち切り宣告のFAXとメールが無情に置かれていた。ENTUM名誉会長のベアトリクスは、黒いスーツ姿で、FAXを握り潰しそうな勢いで睨みつける。彼女の隣には、制作会社リドのスタッフが青ざめた顔で立っている。
「50話までのプロットを事前に用意していたのに…悔しい。」
ベアトリクスが低く呟く。彼女の声には、シュタージ出身の威厳と、プロジェクトへの情熱が滲む。
「シロの反体制派、美兎のスパイ役…あれはVTuberの新たな可能性だったのに!」
リドのスタッフが肩を落とし、呟く。
「我々も…視聴者の反応は良かったんです。コメント欄も『シロちゃん、かっこよすぎ!』『美兎、闇落ち最高!』と盛り上がってたのに…。」
ベアトリクスが拳を握り、言う。
「KADOKAWAの圧力だ。奴らは我々の挑戦を理解しない。ENTUMの魂を、こんな形で潰すなんて…!」
ガチャ! ドアが開き、ニコラとカタリーナが駆け込んでくる。
「そ、そんな…!」
ニコラがFAXを手に、目を潤ませる。
「『バーチャルさんはみている』が…打ち切りに!?」
「信じられないわ…。」
カタリーナが呆然と呟き、ソファにドサッと座る。
「あのアニメ、視聴者めっちゃハマってたのに…!」
アイリスディーナが腕を組み、クールに言う。
「打ち切られて当然だな。」
彼女の声には、いつもの冷静さと若干の呆れが混じる。
「あんなダークな方向性、VTuberのファン層に合わないと最初から分かっていた。KADOKAWAが過剰反応したのは確かだが、リドの暴走も問題だ。」
「な、何だと!?」
ニコラが振り返り、ショック顔。
「ベルンハルト大尉、冷たすぎるわよ!そんな言い方ないんじゃない?」
カタリーナがムッとして反発。
ベアトリクスが一歩踏み出し、言う。
「アイリスディーナ、あなたの意見は分かるわ。だが、このアニメはENTUMの新たな挑戦だった。シロや美兎の新しい一面を見せることで、VTuberの枠を超えたかったのよ。」
アイリスディーナがため息をつき、返す。
「挑戦は結構だが、視聴者の期待を裏切るのは危険だ。『バーチャルさんはみている』は、キラキラした笑顔とカオスな掛け合いが売りだった。それをダークな物語に変えたら、こうなるのは必然だ。」
2019年4月15日 リド解散
リドのオフィスは、静まり返っていた。机には未完成のプロットやキャラクターデザインのスケッチが散らばり、壁にはシロと美兎のアニメイラストが寂しく貼られている。打ち切り宣告からわずか数週間で、制作会社リドは解散を余儀なくされた。スタッフたちは肩を落とし、荷物をまとめる中、ベアトリクスの言葉が響く。
「悔しいが…我々の夢はここで終わりじゃない。ENTUMは立ち上がる。」
アカリスタジオでは、ミライアカリがモニターを見つめ、呟く。
「シロちゃん、美兎ちゃん…めっちゃカッコよかったのに…。」
シフィが隣で魔法書ノートを握り、言う。
「シフィ、異世界でもこんな急な打ち切り見たことないよ…。」
ベイレーンが黒いおさげを揺らし、叫ぶ。
「KADOKAWAのクソ野郎! オイラの動画も収益化剥がして、アニメまで潰すなんて! 許さねーお!」
彼女の怒りは、YouTubeのAI問題と重なり、爆発寸前。
花野蜜が穏やかに言う。
「でも、ENTUMにはまだ私たちの配信があるわ。視聴者と一緒に、新しいコンテンツを作っていきましょう。」
彼女の声には、名取さなの診断や「S〇X講座」のカオスを乗り越えた強さが宿る。
モニターには、ENTUMの新企画予告が映る。「ミライアカリのキラキラ☆リベンジ配信! 次なる挑戦は!?」と、テロップが輝く。コメント欄は「ENTUM、負けるな!」「シロと美兎、復活希望!」「ベイレーン、ゆっくりで続けてw」と、視聴者の応援が溢れる。『バーチャルさんはみている』の打ち切りは、ENTUMに大きな打撃を与えたが、ベアトリクスの決意とメンバーの絆が、新たなバズりを生み出す準備を整えていた。このカオスな危機が、どんな未来を切り開くのか、蜜の笑顔とベイレーン叫びに答えは隠されていた。
2019年4月4日 ENTUM本社 会議室
ENTUM本社の会議室は、まるで戦場のような緊張感に包まれていた。壁にはミライアカリのポスターや「シフィ入社スペシャル」のサムネイルが貼られたまま、テーブルにはKADOKAWAからの「打ち切りFAX」が無情に山積み。モニターには、『バーチャルさんはみている』の最終話コメント欄が「シロちゃん、闇落ち最高!」「美兎、戻ってきて!」「打ち切りマジ!?」と、視聴者の悲鳴と称賛で溢れていた。だが、誰も予想しなかった新たな嵐が、ENTUMを襲おうとしていた。
名誉会長ベアトリクス・ブレーメは、黒いスーツを翻し、会議室の中央に立つ。彼女の前には、打ち切りから一週間後の後番組について尋ねるスタッフたち。ベアトリクスがニヤリと笑い、言う。
「後番組? ふふ、これは思いもよらないチャンスだ。」
彼女がモニターを指差すと、新番組『シルヴィアさんがみている』の予告映像が映し出される。内容は、シュヴァルツェスマーケン外伝のシルヴィア・クシャシンスカの壮絶な過去を基にした、ダークで重厚なSF戦争アニメだった。
「こんなの…バーチャルさんじゃない!」
スタッフの一人が呟き、頭を抱える。
後番組の悲劇
『シルヴィアさんがみている』は、ベアトリクスの野心とスポンサーaNCHORの圧力が生んだ怪物だった。だが、視聴率は初回から壊滅的。第10話(6月5日放送分)で、あえなく打ち切りが決定。関連グッズの売上もそこそこ、視聴者アンケートも低迷し、多額の赤字だけが残った。モニターに映るコメント欄は「シルヴィア、誰!?」「VTuberどこ行った?」「これバーチャルさんの続編じゃない!」と、視聴者の失望が渦巻く。
ENTUM本社の廊下では、ベアトリクスがaNCHORの代表・石長朝陽らスポンサーに追い回される。
「赤字の責任はどうするんだ!」
「契約通り、利益の50%はどこだ!」
石長の怒号が響く。ベアトリクスは冷や汗をかきながら、内心で毒づく。
「(自業自得? ふん、元凶はお前たちaNCHORだ! バーチャルさんのコンセプトを無視した商品を押し付けたのは誰だ!)」
事の発端:2018年12月15日
遡ること数ヶ月、2018年12月15日。『バーチャルさんはみている』の放送決定が発表された日、ENTUM本社は歓喜に沸いた。KADOKAWA完全子会社のリドのスタッフが迎え入れられ、ミライアカリ、電脳少女シロ、月ノ美兎らがオムニバス形式のドタバタコメディで輝くはずだった。だが、ベアトリクス以外の全員が喜ぶ中、暗雲が忍び寄る。
スポンサーであるaNCHORの石長朝陽が、ベアトリクスに接触。
「マブラヴシリーズの宣伝を入れてほしい。シロや美兎を、シュヴァルツェスマーケン風のダークな世界観で描くんだ!」
石長がデザイン案を突きつける。だが、ベアトリクスは即座に反発。
「オムニバス形式のVTuberコメディに、マブラヴの世界観が合うわけがない! なぜそんな必要があるんだ!」
リドのスタッフも困惑。
「いったい何に変身するんだ!?」と呟く者までいた。
だが、aNCHORが提示した「関連グッズ売上の50%をベアトリクスに支払う」契約に、彼女の目がくらむ。「ベアトリクス・ブレーメが革命に勝利した世界線」をコンセプトに、無理やりSF戦争アニメへと変貌。ベアトリクス自身も「テレビ局は視聴率のためならVTuberを戦場に出すことなど屁とも思わん」と毒づきつつ、スポンサーの「これも出せ、あれも出せ」に乗ってしまう。
結果、番組はカオスな方向へ暴走。サブタイトルは「すさまじく物騒」、北朝鮮が登場、ベアトリクスとアイリスディーナが美化され、反体制派のズーズィ・ツァプやシモーネ・レージンガーは冷遇。イングヒルト・ブロニコフスキーがシュタージに鞍替えし、ニコラ・ミヒャルケの恋仲に。シロは戦術機に乗ってアカリに襲いかかり、美兎はシュタージの陰鬱な作戦参謀に。ばあちゃるやバーチャルゴリラ、ピーナッツくんは第1話のみで消滅。VTuberのキラキラした魅力は影を潜め、視聴者の期待は裏切られた。
ファンの悲しみとベアトリクスの皮肉
打ち切りを知ったファン、音霊魂子や水菜月夏希らあおぎり高校の面々は、複雑な心境だった。夏希は『バーチャルさんはみている』のグッズを買い込み、部屋に飾りながら涙ぐむ。
「シロちゃん、美兎ちゃん…こんな終わり方、悲しすぎる…。」
だが、彼女の手には新品のシロのフィギュアや美兎のTシャツが握られている。
その様子を遠くから見たベアトリクスが、冷笑。
「ファンの悲しい性(サガ)だな。」
さらに毒を吐く。
「バーチャルさんはみているなんて個性の無いアニメはいずれ打ち切られる運命だった。」
だが、彼女の内心は悔しさで煮えくり返っていた。元凶はaNCHORの無茶な要求と、自分の欲に負けた決断にあることを、彼女自身が一番理解していた。
VTuberたちの無念
キズナアイ、電脳少女シロ、月ノ美兎らは、打ち切りの事実を知り、静かに傷ついていた。
「アニメ、クラッシュしちゃったんだ…。」
シロが呟き、美兎がため息。
「私たちの輝き、もっと見せたかったのに…。」
アカリが隣で励ます。
「大丈夫! ENTUMでまたキラキラ配信しようよ!」
だが、彼女たちの心には、失われた可能性への無念が残る。
ENTUMの再起
ENTUM本社の会議室では、ベアトリクスがスタッフを集め、宣言。
「『シルヴィアさんがみている』の失敗は痛い。だが、ENTUMは終わりじゃない。新たな配信で、視聴者の心を取り戻す!」
モニターには「ミライアカリのキラキラ☆リベンジ配信!」の予告が映る。コメント欄は「ENTUM、頑張れ!」「シロと美兎、復活して!」「ベアトリクス、赤字どうすんのw」と、応援とツッコミが溢れる。
花野蜜が紅茶をすすり、言う。
「ベアトリクスさん、今回はVTuberの輝きを大切にしましょうね。」
ベイレーンが叫ぶ。
「オイラの動画も収益化復活させろお! KADOKAWAとaNCHOR、クソくらえだお!」
シフィが魔法書ノートを握り、呟く。
「異世界でも、こんなカオスな打ち切りは見たことないよ…。」
『バーチャルさんはみている』の崩壊と『シルヴィアさんがみている』の失敗は、ENTUMに深い傷を残した。だが、ベアトリクスの野心とメンバーの絆が、新たなバズりを生み出す準備を整えていた。このカオスな危機が、どんな未来を切り開くのか、アカリの笑顔とシフィの純粋さに答えは隠されていた。