この小説の今の時系列は、3つ目のカズデルが滅ぶ少し前からスタートしています。
最初の実験の失敗から少し時間が経ち、私は物思いにふけていた。内容は当然ながら、メイクホールの改善案だ。
爆発の原因が源石エンジンの稼働による、フレームへの負荷限界の超過、ということは突き止めた。あくまで最低限必要なフレームでしか構成していなかったのだ、壊れるのも無理はない。
なのでフレームに鉄板を重ね合わせ、耐久性を向上させエンジンの負荷に耐えれるか試した。
しかしエンジンの負荷には耐えたものの、今度はフレームの総重量が変わり、機体のバランスが崩れ、歩く度に後ろにひっくり返るようになった。
これでは爆発は防げるだろうが、待機させることすらままならない。
そうして諦めずフレームの重量配分を弄り続け、幾度も失敗を繰り返したことを踏まえて、今私ができる改善案は2つに絞られた。
1つ目はフレームの基本設計そのものを作り直す。2つ目は源石エンジンに手を加えることだ。
どちらも時間の掛かる問題だったが、今回は後者を優先することにした。
フレームの耐久性に関しては今のままで十分有しており、構造にも何ら問題はない。あくまでも、エンジン側の出力が大き過ぎるだけだ。
ならば、フレームが耐えきれるレベルまで、出力を抑えてやればいい。
「とはいえ、どうやって出力を抑えるか……」
やはり問題はそこだ。今の源石エンジンはあまりにもエネルギーを垂れ流し過ぎている。
分かりやすく例えるなら、ダムに溜まった水を、そのままゆっくり流すのではなく、壁を突き破る勢いのまま流しているということだ。
当然、本来少ないエネルギーを受ける回路は、それだけのエネルギーの集中に耐えれる筈もなく、吹き飛ぶのである。
なら回路を大きくすれば良いのだろうが、今度は1人で扱うにはあまりにも大き過ぎる。
それではロボではなく、戦艦や移動都市を作るのと変わらなくなってしまう。それでは駄目なのだ。
ならこの問題はどう解くべきか?この問題がクリア出来ない程度では、
星の膜を貫くのであろう?古の双月を何とかするにしても、まず舞台に辿り着かねばなるまい。
それに、海の魚共のことも考えておかねばなるまい。事態によっては実験の邪魔になりかねない。そうなれば、そちらへの対処を施行しなければならない。
そう心の中で己に圧をかける。しかしそんなことをしても、中々アイデアは出てこない。
分かっているとも、この初歩的な条件をクリアしなければ、前へ進めないことなど。
うんうんと頭を捻っている内に、疲れてきた私は、源石が入った小瓶をうっかり机から落としてしまった。
「おっと…!これはこれは、やってしまった。すぐに片付けなければ………」
源石がそれ以上活性化しないよう、エネルギーを変換しながら放出。
徐々に動きを止めた源石を、ゆっくりと時間を巻き戻しながら小瓶の中にしまい、別の棚に移動させた。
それに安心しチェアに座り込んだ時、今した私の行動が、頭の中で妙に引っ掛かった。
そして、不意に思いついたことを口に出した。
「もし、エネルギーを全て稼働に回すのではなく、貯める、ないし放出するように、エネルギーの行き先を変えれば……?」
それからの行動は早かった。作業に取り掛かること1カ月、少々時間は掛かったが、出力にリミッターを掛けた改良版が3つ完成した。
制御基盤をエンジンに取り付け、一定の出力に達すると、それ以上のエネルギー供給を停止。急速にエネルギーを空の貯蔵タンクに流して出力を下げる仕組みだ。
また貯蔵タンクに流す以外にも、フレームに新たに設けた回路から溢れたエネルギーを放出。360度、球体状に張るシールドを生成できるよう加えた。
真の意味でリミッターを付けれた訳ではない、と指摘されると耳が痛いところである。
しかし、今はこれでいい。致命的な問題が再び発生した時、きちんと変更すれば良いのだから。
早速、修理したメイクホールにエンジンの1つの取り付けを行い、コックピットに移動した。無論、アクシデントが起きた時のために、予備のエンジンを1つ載せておく。
乗り込んでハッチを閉め、1つ1つ表示される数値を確かめながら、ボタンを押していく。
「よし、最大出力は元のエンジンより4割減っている。私の実験と計算が正しければ、これでいけるが……」
実験とはトライアンドエラーの塊。成功とは幾度の失敗があるから成り立つ。それらを忘れたことは1度もなかったが、やはりここまでの失敗がチラつくが故に、少ない回数で成功してほしい、というのが本音だった。
最後に、ぱちんとトグルが入ったのを合図に、エンジンは熱を帯び始める。
次第に強烈な揺れと、後ろから熱波を感じ始めたが、一定時間を過ぎるとそれも収まりをみせた。
計器を確認すると、無事に出力の4割がタンクに流れ込んでいるのが確認できた。
「ああ、良かった。まずは1段階目の突破に成功だ」
そうだとも、これはまだ起動し、爆発しなかったまで。次は機体を動かし、爆発しないか確かめねばならない。
ゆっくりと、つま先を地面にちょんと触れさせるようにして、メイクホールの足を前に踏み出した。そしてそのまま歩行、ダッシュ、ブーストの順で徐々に速度を上げていく。
それでも爆発せず、かつエネルギー切れなどを起こさないメイクホールに、思わず安心しきった私は、メイクホールに乗ったまま外に飛び出した。
────そう、良かったのはそこまでだった。
飛び出した勢いのまま走行していると、いきなり後ろからドンっと何かがぶつかった。突然の衝撃に驚きながらも、メイクホールを衝撃を受けた背後に回転させ、原因を確認しようとした。そしてそこには…………。
「なあ、あの変なアレはやっちまっていいんだよな?」
「ああ、どうせこのまま行きゃ、他の奴にも見つかるだろ。だったら……」
アーツを構えた無数のサルカズの旅団と鉢合わせてしまった。これは不味いことになったね……。
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結果として私はサルカズ達と交渉。彼らに予備のエンジンを渡す形でその場を収めた。
メイクホールから降りて殲滅しても良かったが相手の戦力が不明であり、流れ弾等でこの貴重な試作品を破壊されるリスクを考えると、選べるのもあの場では1つしかなかった。
だが1つ、私には疑問が残っていた。
何故あのサルカズ達は怯えていたのだろうか?特段、私は彼らに何かした覚えもないのだが。
………ふむ。先民の心理というのも、研究してみるのもありかも知れないな。
それはもうどうでもいいが、今回新たに得た情報もある。
1つはサルカズの種族がこの辺りで国を構えていること。もう1つは他の先民や神民の種族達も同じくして、国を作り始めているということである。
あまり私が外に出ないというのもあるが、大地でそのようなことが起きていたというのは少し驚きだ。
しかし私の感想はそれだけである。どのような種族が繁栄しようとも争いごとを起こそうと、私は気にしない。それに関わるつもりも今のところない。
実験の邪魔になるというのなら、それ相応の対応をするだけだがね。
まあそれはそれとして、今はメイクホールの改良だ。
サルカズ達のアーツを一発背部に食らったことで、フレームに穴が空いてしまった。エンジンへの直撃はなかったがもし同じ様なことが起きれば爆発が起きるだろう。
外的要因に対しての耐久性の向上。しかしフレーム自体を弄ることは難しい。
さて、どうしたものか────
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『よし、録画が回っていることを確認したな。それでは始めようか。
2回目となる今回は前回の目標の進歩について発表したい。
あの後私は爆発の原因を解明し、エンジンにリミッターを掛けることで出力の安定化を成した。これにより、基本的運動機能及びエンジンの稼働による爆発は解決したとみていた。
だがその後アーツによるフレームへの損傷で機体を一定以上稼働させると、外部からの衝撃で砕ける程フレームの耐久性が落ちることが判明した。
つまるところ、もう一度耐久性に手を加えなければならないということだな。
なので私はフレームに、装甲という名のカバーを付けることにした。これならば中身のフレームは守られ安定した稼働ができるだろう。
………正直なところ、今までは試作機というのもあり最低限の機能だけで満足していた。加えて私の怠惰が混ざったことで再び大破させてしまった。それは前回のことにも言えるだろう。
ならばこうして問題が起きた以上
────そしてだ。その装甲を取り付け終えたものが、このメイクホールv1だ。
エンジンと装甲以外、元のメイクホールと何ら変わらない。以降はこのv1を使い、実験を進める。
おっと。もう録画が終わってしまいそうだな。仕方ない。
前回の目標は形はどうあれ一先ず達成した。なら新たな目標を決め、一度この問題に区切りをつけて今回は終わりとしよう。
そうだな。今回外に出たことでv1には対敵性存在への攻撃手段が無いのが浮き彫りとなった。さらに私の研究所の近くに先民の国が幾つかありばったりと会う危険性もある。
となるとだ。次なる目標はv1が携行できる兵器の作成、或いは研究所の引っ越しか。このどちらかに絞って行うのがベストだろうか。まあその報告も次回するとしよう。
それでは、また次の発表で会おう───』