色々と遅くなりました。今回はオリジナル要素が多く含まれています。
ギュインギュインと地面を削る音が四方八方に響く。何度聞いても大きな音がするものだ。そのようなことを考えながら車輪の回転を速めていく。
あの日以降、私はv1の兵器開発と研究所の移転を同時並行で行っていた。実行可能な部分を少しづつ進めていけばいいと短絡的で、今にして思えばもう少しやり方を考慮するべきだった。
まず兵器開発についてだが、結果から言えば完成に至った。だが、私はそれらを完成品であるとは一切考えていない。むしろ兵器と呼ぶに値しない欠陥品、そう評価するのが正しい筈だ。
少なくとも源石を詰めた鉄塊を広範囲にばら撒き、意図的に天災を引き起こすだけでは、
今回の計画によって改めて理解したが、やはり私一人ではこの辺りが関の山か。できれば先史人類達の遺物を収集し解析。或いは源石内の無限に等しい情報群──そこから必要な情報の抽出ができればこの状況も変わるのだが、そうはいかない。
悪魔が跋扈する氷原、南方の海中にある遺跡、地下空間の孤独な番人。どれも行くにはリスクがあり、現時点で手を伸ばす訳にはいかない。
源石内の情報も、取り出そうと一度試したことはある。私が私であることで、干渉する余地が十分に存在しているのでか。
しかし内部にあれが居座っている以上、それこそ管理権限を持つ者に接触しなければ無理だろう。
そうしてここまでの結果を鑑みて、兵器開発は一度切り上げることに決定した。完成へのピースが入手できない以上、これ以上時間を割く必要もないと判断したわけだ。
またいずれ再開するだろうが、今は頭の片隅にでも置いておくとしよう。
そしてもう一つの研究所の移転についてだが、これについては準備を進める前に起きた一つのエピソード、これを語るとしよう。
何、無関係ではないとも。何せこれが起きたせいで、私は準備に取り掛かれなかったのだから─────
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それはv1の兵器テストのため、手頃な場所を探す最中に遭遇した。
「我はサルカズの王、魔王と呼ばれる者。名をゴルドルと言う。そなたがあの未知なる物の主、マナタン博士であるか?そなたには、あの物体について聞きたいことがある。是非とも、我がカズデルに来てくれないだろうか?」
これが以前、予備のエンジンを渡したサルカズ達…それらの王を名乗る、ゴルドルとの出会いだった。
最初、私は拒否するつもりであった。何ゆえに先民に教える必要があるだろうか。彼らに教えても価値もないのだから当然のことである。
しかしゴルドルからの熱烈な招待、カズデルに行くことで得れるメリットを天秤に掛けた。
暫くの長考を続けた末、ゴルドルに契約を結ぶことを条件にカズデルに向かうことを選んだ。
こうして研究所に帰るまでの千年、あまりに多忙の日々をカズデルにて過ごした。
サルカズ達は字が読めない者が多く、始めにそこを解決する必要があった。
何とか字が読めるよう言葉の絵や一覧表を作成し、ゴルドルや同じ魔王であったクイロン、バロルサッカを通じてサルカズ達に広めさせたり、
彼らが安全な時間を確保できるよう、後で再び作ることになる移動型領地を建築したり、
彼らに敵意を向け、度々戦いを仕掛けていた先民や神民達の間に入るなどetc……。
色々あったが、とにかく私は彼らに教えるために案を作り実行し続けた。思えばその時は本当に、ゴルドルの誘いに乗ったことに後悔した。しかし己が選択したことを反故にする気もなく、やり遂げた。
そして無事に教えるべき事が終了した頃には、私という個がカズデルにおいて必要不可欠となっていた。
なので、カズデルから去る時もそれはそれは大変だった。
ゴルドルがここに残ってくれと私に縋り付いてきたり、私が国から出ないよう防壁を作り出す始末。私が彼らにあの物品を渡さなければ、今頃薙ぎ倒しながらここに帰ってきただろう。
しかし短い期間だったものの、他者に対しての私の認識に変化があった。はっきり言うと、彼らとの時間は楽しいものだった。
また、彼らが生きる内に会いに行くべきか?そう考えていた。浮かれていた。
それが間違いだった。
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ゴルドルが死亡した。原因はバロルサッカによる裏切りだった。私がカズデルで過ごす以前から、他の先民への恨みが募っていたのだろう。そして下手に動かなかったゴルドルに苛立ちが募り、と言ったところか。
同じ種族で、共に苦しみを共有していた筈だろうに、哀しいものだ。
次にバロルサッカ、クイロンが死亡した。ゴルドルの死亡により互いに袂を分かち、別々の道を辿ったことで先民と神民達によって殺された。
ああ、分かっていたとも。こうなることも、あり得るだろうということも。だがもう遅い。起きてしまった以上、
…………どうやら、私は要らぬ期待をし過ぎたのかもしれない。
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以上が、準備ができなかった理由である。
思い返せば本当に酷かった。なにせこの私にとっての最大のミスで、ただただ時間を浪費しただけなのだから。
……ああ、哀しい思い出だとも。本当に。
だが私は切り替えが早く、払った代償は大きいものの収穫があったことに気付いていた。
カズデルとの長き交流により、足りなかったアーツへの理解を深めることができた。
これらを先史人類達の遺産と組み合わせれば、どのような結果を引き起こすのだろうか。あれやこれやと考えてるとすぐに試したくなるが、私の手元に一切ないので、想像しかできないのは歯痒いものだ。
さて、長々と話をしたが、ここまでが二つ目の計画の結果だ。移転場所は見つからず、されどアーツへの理解を得た。一先ずこれで満足しよう。
それでは、実験に戻るとしようか。今行っているのはv1の脚部装填型兵器のテスト中でな、目を離し過ぎると何が起きるか分からないので───
そう言いながら博士は録音を続け、ゆっくりとロボットの元へ歩いて行った。
彼はこんな日々を続けていく。例え大地で時の王が生まれようとお構いなく。それを彼も望んでいる。
だが彼もまた、この日々から引き剥がされていく。他ならぬ彼が蒔いた種によって、表舞台へと姿を現す。