とある女性研究員の日記
○宇宙世紀0085年
私の名前はミンファ・ワン。ニュータイプ研究員である。元々はフラナガン機関に所属していたが、ジオンが敗北し残党がアクシズに逃げ延びた際に私も同行しアクシズにて研究を続けている。
現在、アクシズではとあるプロジェクトが企画されていた。ニュータイプ兵士のクローンを造り量産する計画だ。
候補となったニュータイプ少女……エルピー・プルは高いニュータイプ能力を持つが、兵士として、MSパイロットとしての能力は未知数である。というか普通に考えればわかる事だがニュータイプとして有能でも兵士として有能かどうかは別問題である。外付けの臓器や強化手術で補うつもりなのだろうが、あの連邦の白い悪魔や、我等ジオンが誇る赤い彗星に届くかと言えば困難だというのが私の結論だ。
そうだ、戦いも知らない小娘なんかよりも、赤い彗星のクローンを造った方が余程強いはずなのに。何故彼のクローンを造らないのか理解に苦しむ。未知数のデータより実績のある優秀なデータを使うべきだと考えるのは科学者として別におかしくないはずだ。
だが一研究員に過ぎない私の意見など考慮されない。ならば勝手にやらせてもらうとしよう。
○宇宙世紀0086年1月
いよいよ私の計画が始まった。私の意見に賛同した同僚達に協力してもらい研究区画に極小規模なクローン製造施設を建造した。クローン1体しか製造できない規模だが、私の夢を叶えるには十分だ。……協力してくれた同僚達からは苦笑されたが私がこの計画を始めたのは、決して私が赤い彗星のファンだからではない。本当だ。
それはさておき、事前に入手していた赤い彗星のDNAを使いさっそくクローンを造り始めよう。もちろんただのクローンを造るのではない。身体能力を強化したオリジナルより強いクローンを造るつもりだ。
○宇宙世紀0086年3月
計画が始まって2ヶ月が経過した。人工子宮の中で浮かぶクローンは成長促進剤を投与された影響で、既に3歳児程の大きさに成長していた。
クローンは3歳児ながらも整った顔立ちをしており、成人になれば周囲の目を引く色男になる事は間違いないだろう。あの赤い彗星のクローンなのだから当然である。まあこのクローンに求めているのは顔立ちではなく戦闘能力なのだが。
ああ、ルウム戦役の獅子奮迅の活躍、ア・バオア・クーでの鬼神の如き強さ……赤い彗星は一年戦争で凄まじい強さを見せつけていたが、この子ならきっとオリジナルを超え、いや白い悪魔をも超えた戦士となるだろう。いや私がそうしてみせる。
〇宇宙世紀0086年6月
クローンの身体が10歳程までに成長したので人工子宮から出す事にした。人工子宮に揺蕩う中で最低限の知識を刷り込む事は出来ていたが、これからは睡眠学習と並行して対面での教育を行う事にする。
そして教育を始めてわかったが、クローン、いや我が子は天才だ。スポンジが水を吸う様に瞬く間に知識を吸収していく!遺伝子情報を編集し身体能力を向上させていたが知力についても頭脳明晰だとは!仮説だがこれはオリジナル譲りの知能なのだろう。あの赤い彗星のクローンならこれくらい出来て当然だという事か。流石は赤い彗星である。
軍事訓練についても10歳とは思えないレベルの身体能力を発揮し、格闘訓練でも大人の軍人を圧倒していた。これならMSの操縦も期待できるだろう。
〇宇宙世紀0086年7月3日
素晴らしい!本当に素晴らしい!MS訓練という事で初めての模擬戦に臨んだ我が子であったが、一年戦争から従軍しているベテラン3人のチームをたった一人で圧倒し一蹴していた!しかも相手はゲルググに対して我が子は無改造のザクⅡでだ!MSの性能差が戦力の決定的な差ではないと赤い彗星が言っていたらしいが本当だった!
今回の模擬戦で私は確信した。あの子ならオリジナルを超える事が出来ると!ああ、日記を書いている今でも興奮が収まらない!模擬戦を見学していたニュータイプ研究者の同僚達は我が子の強さを見て全員驚愕し私を絶賛してくれた。
我が子の件はアクシズ上層部にも知られた事により、急遽私が直接報告する事になった。アクシズのトップに直接説明するのは少し緊張するが、我が子の力を見ればきっと満足するだろうし大丈夫だと思いたい。
〇宇宙世紀0086年7月4日
まずい。死ぬかもしれない。昨日の興奮が嘘のように怖くて仕方ない。我が子が心配して私の手を握ってくれるが体の震えが止まらない。
〇宇宙世紀0086年7月7日
死ぬかと思った。アクシズのトップであるハマーン様に我が子の素晴らしさを説明しただけなのに、何故か尋常ではない殺意を向けられた。その場で気絶したり漏らさなかった自分を褒めてあげたい。
私は最悪その場で処刑され我が子は廃棄処分かもしれないと危惧したが、同僚達の懇願によって首の皮一枚繋がった。苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべたハマーン様は我が子のテストを続けるように命令された。奇跡的に助かったが結果が出なければ即処刑されるのは私でも理解できた。
まあこれなら処刑される心配はないだろう。我が子の実力は抜きん出ているし失敗など有り得ないのだから。心配する我が子に頭を撫でられ落ち着いた私は今後のテストでも良い結果を出せるよう我が子の調整に気合いを入れる事にする。
〇宇宙世紀0086年12月
我が子は相変わらずテストにて素晴らしい結果を出してくれている。ハマーン様から示された合格基準は非常に高く、同僚達は難しい顔をしていたが、我が子はそれを軽々と超えてくれた。やはりあの子は最高だ。
私に協力してくれている同僚達は自分の仕事があるのに我が子の調整・研究に進んで協力してくれており非常に助かっている。正直言ってエルピー・プルのクローン計画より力を入れている気がするが大丈夫なのだろうか?
〇宇宙世紀0087年1月
エルピー・プルや他の強化人間達と我が子の模擬戦が行われた。結果は……まあ、我が子の圧勝だった。というか勝負になっていなかった。予想通りだったので特に驚く事もない。あの子ならこうなる事は当然である。ライバルであるはずの同僚達も特に悔しがる様子を見せず素直に納得していた。
模擬戦は三回行われ、最初はエルピー・プルのオールレンジ攻撃を紙一重で、いや必要最低限の動きで回避して急接近し撃破した。我が子の機体は被弾0であり格の違いを見せつけていた。
次はオールレンジ攻撃で相手のビットを全て破壊し、その後相手の機体の四肢を破壊して無力化した。
そして最後は見学していたハマーン様の命令により1対4という状況で模擬戦が行われた。最初こそ梃子摺ったものの、我が子は相手の癖を見抜いて翻弄し一機ずつ撃破していった。相手が弱いのではなく我が子の卓越した実力によるものであった。製造者として非常に誇らしいものである。
同僚達は私や我が子の事を絶賛してくれたがハマーン様は相変わらず苦々しい表情を浮かべていた。ここまで結果を出し続けているのに一体何が不満なのだろうか?私にはハマーン様の事がよくわからない。
〇宇宙世紀0087年2月
納得いかない。先月の模擬戦の結果から赤い彗星のクローン量産計画を推進すべきだと我々ニュータイプ研究者達は一丸となって陳情したがハマーン様の許可が下りなかった。何故だ。
〇宇宙世紀0087年3月
結局ニュータイプ兵士量産計画はエルピー・プルのクローンを量産する事が決定した。悔しい。同僚達や我が子が慰めてくれたが納得できない。愚痴っても仕方ないのは理解しているが、結果を出したのだから評価してほしいと思うのは我儘なのだろうか?
〇宇宙世紀0087年6月
我が子は軍曹の階級を与えられ、来たるべき地球圏では先鋒を務める事になった。しかし受領した機体はニュータイプ専用機ではなくただの高機動型ゲルググであった……これは一体どういう事なのか。まさかハマーン様は我が子に死んでほしいとでもいうのか?
いや、愚痴っていても仕方ない。私は我が子が死なないように調整を続ける事にしよう。
〇宇宙世紀0087年7月
ハマーン様の腹心であるマシュマー・セロの部下であるグレミー・トトという青年が我が子に接触してきた。彼は我が子の模擬戦の記録を見て興味を持った様子で、我が子の事を絶賛してくれた。我が子と彼は少しばかり話し合っていたが相性は悪くないようであった。
話の中で我が子は私の事を最高の母親だと言ってくれたが少し気恥ずかしかった。戦士として母親離れが出来ないのは問題だが人工子宮から出て1年しか経っておらず、まだ精神が未発達で幼いのだから仕方ないと諦める事にした。
〇宇宙世紀0087年10月
ついにアクシズが地球圏に帰還した。モニターに映る地球を見て思わず感動した私だが、我が子に頭を撫でられ落ち着いた。
私は政治の事は一切わからないので今後アクシズがどうなるのか不明だ。まあハマーン様……いや、日記で様を付ける必要もないか。ハマーンのお手並みを拝見する事にしよう。
〇宇宙世紀0087年11月
アクシズはティターンズと同盟を結んだらしい。アースノイド至上主義であるティターンズと同盟など正気の沙汰ではないと思うがハマーンには何か考えがあるのだろう。
〇宇宙世紀0087年12月
同盟相手のティターンズと何故か戦闘が始まっていた。意味が分からない。やはり地球至上主義者と上手くいくわけがなかったか。
まあそれはどうでもいい。そんな事より重要な事がある。我が子が初の実戦で目覚ましい戦果を上げたのだ!エリート部隊であるティターンズは手練れが大勢いたはずであったが、乗っていた機体がゲルググという旧式にもかかわらず我が子は一騎当千の働きを見せてくれた!
我が子は初陣でMS16機、戦艦1隻、巡洋艦3隻を撃墜するという活躍をした。流石にハマーンとて無碍にする事はできないはずだ。
〇宇宙世紀0088年1月
酷く不機嫌な表情を隠さなかったハマーンだが、それでも我が子の戦功は評価された。我が子は曹長に昇進したが機体はそのままであった。納得いかない。
しかしハマーンは我が子の何が気に入らないのだろうか?ニュータイプ兵士として完璧だと自信を持って断言できる程の完成度があるのに、これでも足りないと言うのか?……いいだろう、ならば研究者として更に完璧な調整をするとしよう。
〇宇宙世紀0088年2月
ティターンズが壊滅した。対するエゥーゴも疲弊しておりアクシズが漁夫の利を得た形となったのだろう。我が子は決戦でも目覚ましい活躍を見せており、アクシズの兵士達から「深緑の彗星」と渾名されていた。
まあ我が子がどう呼ばれていようが問題ない。それより問題なのはハマーンの態度だ。今までの態度を一転させ上機嫌な様子で我が子を褒めていたが気味が悪かった。我が子も困惑していたが当然だ。そんなに我が子が鹵獲したMS……あの金ぴかで悪趣味なMSにそこまでの価値があるのだろうか?やはり私にはあの宰相殿の思考がよくわからない。
<人物紹介>
●シャアのクローン(我が子)
→クローンガチャUR。CE世界ならコーディネーターと呼ばれるだろう彼は宇宙世紀が誇るクソつよパイロット赤い彗星のクローンである。身体能力とニュータイプ能力が強化された影響で元々強かったのが更に強化され1.3シャアのポテンシャルがある。シロッコが見たら感心して素直に称賛するレベルの完成度であるが、偶々奇跡的に上手くいっただけである。仮にもう一度再現しようと量産したら0.75シャア~0.9シャアにしかならないだろう。まあでもSR以上確定ガチャなのでシャアクローンが量産化されたら手が付けられなくなるのは確実である。
名前はフィーリアス・ワン。製造されて1年ばかりでまだ精神は幼く製造者である女研究者を母親として懐いている。MSに乗って戦うのは自分が頑張れば母親が褒めてくれるからである。今はまだ未熟だが成長スピードは非常に早く成長すれば手が付けられなくなるだろう。性格は迷いがなく呑気で図太い神経をしている。戦場に出て死者の思念を受けても平然としているくらい心がつえぇ奴である。
グリプス戦役の決戦の場で獅子奮迅の活躍をして「深緑の彗星」と勝手に呼ばれることになった。そういえば鹵獲した金ぴかのMS……不思議と他人とは思えなかったけど誰だったんだろう?まあそんな事よりお母さんに褒めてもらおう!と呑気に考えている。
●女研究者
→シャアクローンの製造者でありシャアのDNAを手に入れた行動力の化身で、クローンガチャURを引き当てた剛運の者である。赤い彗星の大ファンであるがあくまでもMSパイロットとしてのファンであり、指揮官とか政治家としてのシャアについてはどうでもいいタイプである。自分の研究と我が子の成長が第一であり出世には興味がない。
我が子については歪んでいるものの母親のように振る舞い懐かれている。本人も悪い気はしないようだ。ちなみに20代前半であり、見た目は瓶底眼鏡をかけ黒髪を三つ編みにしたマッドサイエンティストである。
●ニュータイプ研究者達
→女研究者の同僚達。女研究者については世話がかかるが才能はあると認めている。シャアクローンについては彼女の好きにやらせた結果とんでもない物ができたので宇宙猫になった。もうシャアシリーズ量産すればいいんじゃね?と考えている者も多い。
●エルピー・プル
→模擬戦でシャアクローンに負けたがそこまで悔しくはない模様。
●プルシリーズ
→この世界ではハマーン様を含めたアクシズ上層部も計画について知っていた。シャアクローンのせいで風評被害を受けているが人手不足なので量産されるのは変わらず。
●ハマーン様
→なんか勝手にシャアのクローンを造ったと聞いてブチギレた。コイツ死なねーかなと旧式に乗せて突撃させたらシャアクローンが驚異的な成果を上げたので廃棄処分は渋々ながら諦めた。
その後シャアクローンが金ぴかMSを鹵獲しMSパイロットも確保した事で一転して上機嫌となり、とりあえず人手不足だし前線で働かせようと思い直した。今後はアクシズのトップとして働きつつ、MSパイロットの説得に力を入れるらしい。
●グレミー・トト
→シャアクローンの噂を聞いて興味を持ち接触してきた。マザコン同士気が合った模様。シャアクローンもといフィーリアス君の上司になる予定。
●アクシズ
→フィーリアス君の活躍によって原作より少しだけ余裕ができた。具体的には原作でメガバズーカランチャーにやられたベテラン達が半分程生き残っている模様。それでも深刻な人手不足なのは変わらず。
●ティターンズ
→原作通り壊滅した。旧式MSに蹂躙され「アクシズのニュータイプは化け物か!?」とトラウマになった生き残りもいるとか。
●エゥーゴ
→ティターンズに勝ったがズタボロであり疲弊している。トップである赤い彗星が行方不明となり混乱している。
●金ぴかMS
→この世界ではフィーリアス君によって鹵獲されパイロットも確保された。敗因はフィーリアス君の素性を察したパイロットが大いに動揺したためである。現在はハマーン様から熱心な説得を受けているらしい。
ネタとして投稿しましたが一応完結までのプロットはできております。Gジェネエターナルとまどドラが楽しいので前作のような更新速度は難しいですが頑張って書いていこうと思います。
今後は少しずつ投稿していく予定ですがよろしくお願いします。