「白い悪魔と戦う事になるとはね、しかも悪魔は新型ガンダムに乗っているとは」
「ああ、楽な戦いはできなさそうだ。研究者の俺達でもわかる」
出撃したエンドラ隊に同行しているニュータイプ研究者達はこれから戦う事になる連邦の白い悪魔について話し合っていた。
「プルシリーズの初陣がこれとは、こんな事言いたくないが殆ど死ぬだろ」
「おい」
「いや、プルシリーズの性能は悪くないが、ニュータイプ兵士と言えども新兵達があのスーパーエースに勝てるかって言えば、なぁ?」
「俺もそう思うけど口に出すのはやめとけ」
ニュータイプ研究者達は地球連邦軍を代表するスーパーエースでありニュータイプのアムロ・レイとエンドラ隊が戦う事に不安な様子を見せる。
「大丈夫だ。プルシリーズ達はフィーリアス准尉の援護に徹するそうだ。連邦の白い悪魔は深緑の彗星が対応する事になっている……彼女の自慢の息子なら、ネオ・ジオンのニュータイプ兵士の最高傑作なら白い悪魔にだって勝てるさ。模擬戦でプルシリーズ全員を一人で殲滅したのはお前も見てただろ?」
「それもそうか、確かに赤い彗星のクローンである彼なら白い悪魔にも勝てるだろうな」
それでもフィーリアス准尉ならきっとアムロ・レイに勝てると研究者達は信じていた。それだけフィーリアス准尉の強さは突き抜けていたのだ。
「はぁ、プルシリーズじゃなくシャアシリーズだったらもっと安心できたのにな」
「そうだな。そういえばあの噂知ってるか?ミンファ博士が総帥にシャアシリーズ量産を直談判したって話」
「ああ、知ってる。所長が頭を抱えてたな」
「どうも彼女は総帥はMSパイロットが一番向いている!総帥の仕事なんて影武者にでもやらせとけ!って言ったらしいぞ」
「えぇ……?本当にそう言ったのか?まぁ言いそうだけどさぁ。相変わらずだな彼女は」
「そして所長に大目玉をくらったそうだ。本人が不満そうに話してたよ」
「それはそうだ、怒られて当然だよ。説教で済んだだけ幸運だな」
「ミンファ博士、フィーリアス准尉の調整はどうだ?」
「問題ありませんグレミー様。あの子のコンディションは完璧です」
「うむ、それはよかった」
ニュータイプ研究者達から噂されているミンファ博士は現在フィーリアス准尉の調整作業を行っており、調整の様子を見ていたグレミー・トトはミンファ博士と親し気に会話していた。
「そうか、貴方の子ならあの白い悪魔に勝てると私は信じているよ……時に博士、例の話だが考えてくれたかな?」
「ええ、私はグレミー様に、総帥に付いて行きます。あの子も私から言い聞かせれば従ってくれます」
「うむ、それはよかった。シャア総帥もお喜びになるだろう。彼の力があれば向かうところ敵なしだ」
周囲を確認し声を潜めて話し合っていた二人は、来たるべき時に向けて準備を始めようとしていた。
「ハマーン様、いやハマーンにあの子は散々冷遇されていましたからね。私とフィーリアスがあの女に従う理由なんてありませんよ」
「ああ、確かにそうだな。ハマーンの自業自得だ」
「傾注!」
時間が経過しエンドラ隊はエゥーゴの基地の一つに迫っていた。エンドラ隊指揮官のマシュマー・セロは出撃前にMSパイロット達の前で演説を行っていた。
「諸君、時が来た。地球連邦軍のエースオブエースであり、我等ジオンの敵である連邦の白い悪魔と戦う時だ!」
「既にエゥーゴは組織として死に体だ。もはや連中はネオ・ジオンの脅威ではない、ただの残りカスである!だが、連邦の白い悪魔は別だ!」
「新型ガンダムに乗った白い悪魔を放置する事はできない!そこで我々エンドラ隊に指令が下った。諸君らなら連邦の白い悪魔に勝てるとハマーン様は信頼されているのだ。その信頼を決して裏切ってはならない!」
「恐れるな勇者達よ、諸君らの手であの怪物を討ち取るのだ!ネオ・ジオンの勝利の為に、スペースノイド解放の為に!諸君らの活躍に期待する!」
演説が終わりフィーリアス准尉が、プルシリーズ達が出撃する。
「フィーリアス・ワン、Zガンダム出撃します」
フィーリアス准尉が乗る深緑色のZガンダムがプルとプルツーのキュベレイMark-Ⅱ、他のプルシリーズ達の量産型キュベレイ達を先導するのであった。
「みんな、死なないでね」
「わかってるって!お姉ちゃんを信じてよ!」
「心配するな、自分の力で乗り切るさ。それとこの戦いが終わったら妹扱いはやめろ」
「「え、何で?」」
「妹扱いが嫌だからだよ!お前はともかくオリジナルも不思議そうにするな!」
「やれやれ、こちらの居場所を完全に把握しているとは。本当にエゥーゴの上層部は俺達を売ったんだな。ボッシュ、ルー・ルカ少尉達は既に退避させたんだな?」
「ええ、お嬢ちゃんは最後まで残ると五月蠅かったですが何とか言い聞かせましたよ」
「それはよかった、こんな戦いに彼女達を巻き込みたくないからな」
対するエゥーゴもアムロ・レイ大尉達がエンドラ隊を迎え撃とうとしていた。
「深緑の彗星か。シャアのクローンらしいが、確かにこの感覚はシャアに似ているな……こちらに気付いたか。ニュータイプ能力はシャアより上で、俺かララァ並、いやひょっとしたらそれ以上か?確かにこれは強いな、シャアが不覚を取るわけだ」
「噂の深緑の彗星、そこまで強いのですか」
「ああ、厳しい戦いが予想されるな……まずは彼等と戦い生き延びるぞ。ボッシュ、後の準備はよろしく頼む」
「任せてくださいレイ大尉」
「よし、アムロ・レイ、ZZガンダム出るぞ!」
「初めましてサイアム殿、ビスト財団の創始者とお会いできるとは光栄です」
「ああ、貴方がジオン・ズム・ダイクンの遺児、スペースノイドを導く指導者キャスバル・レム・ダイクンなのか……私のような老いぼれの提案を聞いてくれて感謝する」
エンドラ隊と連邦の白い悪魔の戦いが始まろうとする頃、アナハイムが保有するコロニーの一つであるインダストリアル7、ビスト財団の屋敷にてネオ・ジオンのシャア総帥とビスト財団の創始者であるサイアム・ビストが会談していた。
「まさか御爺様がラプラスの箱を譲るとはな……確かにジオン・ズム・ダイクンの遺児ならラプラスの箱を上手く使いこなせるとは思うが」
(冗談じゃないわ、何を考えているのよこの老いぼれは)
会談に立ち会っているカーディアス・ビストは祖父のサイアムの判断に納得していたが、マーサ・ビスト・カーバインは内心不満を覚えていた。
(ビスト財団がここまで成長したのは箱の存在があってこそなのに、まさか自ら手放すなんて!……腹立たしいけど私に出来る事はないわね。今の疲弊して腑抜けた地球連邦政府じゃネオ・ジオンを止められないし、瀕死のエゥーゴなんて何の役にも立たないもの)
サイアムの決断があまりにも早く、そしてネオ・ジオンと敵対するエゥーゴが使い物にならない為マーサはラプラスの箱の譲渡を妨害する事ができなかった。内心で愚痴を言いつつマーサはネオ・ジオンの総帥……の隣にいる女傑ハマーン・カーンを観察していた。
(ふぅん、まだまだ小娘だけどこれは中々、能力は一流かしら……でも危ういわね)
アクシズのトップであるハマーンについて、マーサは彼女の立場が非常に危うい事に気付いていた。
(いくら能力があったところで本人に求心力がないもの。所詮はザビ家の威光を利用しているだけの小娘。赤い彗星でジオン・ズム・ダイクンの遺児であるシャア・アズナブルには民衆を導く指導者として到底及ばない……この小娘も当然理解してるでしょうけど、ネオ・ジオンに赤い彗星がいるなら小娘は別に必要ないのよね)
(どうも調べてみたら赤い彗星と小娘は不仲のようだし……まっ、小娘の行く末なんて私には関係のない話だわ。それよりネオ・ジオンが勝利するのは確実だし彼らに恩を売って利益を確保する事を考えないと)
思考を打ち切ったマーサは傍迷惑な祖父の行動に溜息をつきつつも、商人としてネオ・ジオンにどうやって恩を売ろうかと考え始めるのであった。
その後サイアムと話し合ったシャア総帥はあっさりとラプラスの箱を譲渡された。ハマーンとしては拍子抜けしたが、余計な手間が省けたと考え直した。
「……………」
「……………」
そしてアクシズに帰還する彼らは長年秘匿されていたラプラスの箱の中身を確認したのだが……
「なんだ、このふざけた条文は」
「傍迷惑な代物だな」
ラプラスの箱、宇宙に適応した新人類の参政権の保証が記された宇宙世紀憲章の石碑を見てシャアとハマーンは揃って頭を悩ませていた。
「宇宙に適応した新人類だと?まさかニュータイプの事なのか?いやしかしこれは、抽象的過ぎるぞ」
「シャア、私としてはこれは絶対に公表すべきではないと思うのだが」
「奇遇だな、私も君と同じ考えだよ……」
どう考えても混乱を招くだろうと察した二人はラプラスの箱を秘匿する事に決めたのであった。
「うむ、こんな物がなくても我々ネオ・ジオンの勝利は揺るがん……いっその事公表してみるか?ダイクンの遺児である貴様から公表されれば地球連邦政府も無視できないだろう」
「やめろハマーン、どう考えても碌な事にならないぞ」
<人物紹介>
●ニュータイプ研究者達
→あの白い悪魔が相手だということで流石に緊張している。かーっ、シャアシリーズがいればなー!アムロ・レイだって怖くないのになー!
●ミンファ博士
→シャア総帥に自分の思いとシャアシリーズ量産の直談判をした事を一切後悔していない心のつえぇ女である。グレミーと今後について話し合っており、シャア総帥に忠誠を誓うようだ。
●シャアのクローン(フィーリアス・ワン)とプルシリーズ達
→フィーリアス君はアムロの存在を感じ取って「あ、この人が連邦の白い悪魔なんだ。勘だけどいい人みたいだな……でもエゥーゴの兵士なら排除しないとダメだよね」と考えている。
1.3シャアではあるが色々と未熟だし機体の性能差があるので苦戦は免れないだろう。
●エンドラ隊
→ニュータイプ兵士達を前に出し、他のMSパイロット達はエンドラ隊の護衛として残った。ネオ・ジオンの為に白い悪魔を討ち取るべし!と士気は高い。
ちなみにハマーンに忠誠を誓うのはマシュマー・セロを筆頭にエンドラ隊の約4割であり、残りの一年戦争からのベテランやその同僚達はシャア総帥を支持している模様。
●アムロ達
→ルー・ルカ少尉達のような未来ある若者達は既に退避させており、戦うのはアムロやボッシュ達ベテランだけである。
●サイアム・ビスト
→ダイクンの遺児にラプラスの箱を引き渡し満足気な様子を見せる。ジオン・ズム・ダイクンの遺児がスペースノイド解放の為に立ち上がったのなら箱を引き渡すべきだ、自分が死ぬ前にラプラスの箱を然るべき人物に渡せてよかった、これで心置きなく死ねる……と思ったとか。マーサがサイアムの考えを知ったら真顔で殴っていただろう。
●マーサ・ビスト・カーバイン
→箱を渡したくなかったがネオ・ジオンを止められる相手がおらず渋々諦める。ハマーンの事は高く評価したが立場の危うさに他人事ながら少しだけ心配する。
●ハマーン様
→シャアと一緒に行動できて機嫌がよかったが、ラプラスの箱の正体を知って困惑する。こんな物民衆が知ったら絶対暴走するだろ……と考えている。
●シャア・アズナブル
→ラプラスの箱を渡され頭を抱える。こんなん公表できるか!と珍しくハマーンと意見が一致した彼はラプラスの箱を秘匿する事に決めたのだった。
●ラプラスの箱
→宇宙世紀憲章の石碑のオリジナル。この世界ではシャアの手に渡った。原作UCの自称赤い彗星の再来が率いる袖付きなんてテロリスト集団より、スペースノイド解放を唱えるジオン・ズム・ダイクンの遺児の方がラプラスの箱を受け取る相手として相応しいだろう。
UC計画?今は宇宙世紀0088年なのでそんなものはないです。この世界ではユニコーンガンダムは開発されないので、バナージ君は戦争に巻き込まれる事なく平和に暮らせるだろう。
Gジェネエターナルとまどドラが楽しいので前作のような更新速度は難しいですが頑張って書いていこうと思います。
今後は少しずつ投稿していく予定ですがよろしくお願いします。