時系列についてはアムロが捕虜になった後になります。
「お母さんおはよう!」
「うん、おはようフィーリアス」
ネオ・ジオンの本拠地であるアクシズの研究区域にある仮眠室にて、ミンファ・ワン博士は自分の最高傑作であり、溺愛している我が子のフィーリアス・ワンから起こされ目が覚める。
「今から朝食を作るから少し待っててね」
「うん!」
目を輝かせて待つフィーリアスを見つつミンファ博士は朝食を作っていた。
(この子を造ってから自分の料理の腕が上がっているのを感じるわね。私としてはエナジーバーとサプリメントだけでいいんだけど……食事を一緒に取るとこの子の調子が格段に良くなるし、作らない理由はないわね!)
かつてのミンファ博士は研究一筋で家事能力は壊滅的であったが、フィーリアスを製造してからは彼のコンディションの維持の為に母親の真似事を行っており、そのおかげで家事能力はある程度向上していた。
母親として振る舞う事でフィーリアスのパフォーマンスが向上するならばと彼女は真剣に取り組んでおり、多少捻じ曲がっていても自分の事を大事に考えてくれるミンファ博士にフィーリアスは自分の自慢のお母さんだと思い懐いていた。傍から見れば歪であったが親子関係は非常に良好である。
「できたわよー」
「はい!」
「廃人になったニュータイプの再利用ですか?」
「うむ、以前グレミー様からあった提案なのだがね」
朝食を食べてフィーリアスと別れた後、いつもの研究区域でニュータイプ研究に従事するミンファ博士は先輩研究者からとある研究の手伝いを依頼されていた。
「あの捕虜になっていたエゥーゴのニュータイプを使うんですか?」
「いや、彼については総帥から絶対に手を出すなと厳命を受けているからね。私もまだ命は惜しいからやるつもりはないよ。プルシリーズになれなかったクローン兵士の落ちこぼれがいたんだが、少し弄り過ぎてね。廃棄する前に実験しようかと思ったのさ」
廃人となったプルシリーズの失敗作を使って実験するという完全に倫理に喧嘩を売っている会話であったが、ここにいるニュータイプ研究者達にとってはいつもの事である。
「……………」
「へえ、この子が。手術痕が幾つもありますし大分弄ってるみたいですけど」
「ニュータイプ能力を高める為に強化手術を複数回行ってみたのだが、限界を見誤ってしまってね」
「なるほど、予定通りならばプルツー並の能力になれたと……確かにこれは再利用出来れば役に立ちそうですね」
「だろう?クローン兵士を量産するのもタダじゃないし、ちゃんと使えるように修理しようと考えたんだ」
カルテを見たミンファ博士は失敗作を再利用する事に納得し実験を手伝う事にしたのであった。
「……………」
「脳波は沈黙、植物状態ですか。何か刺激を与えれば復活しますかね?」
「ふむ。ミンファ博士、君ならどうするかね?」
「ちょっとあの子を連れてきていいですか?」
「……………」
「うわぁ、ボロボロだ」
「フィーリアス君の並外れたニュータイプ能力を使った感応実験か。しかし大丈夫なのかね?君の愛息に悪影響を及ぼすかもしれないぞ?」
「あの子は私の自慢の子ですから。この程度で悪影響が出るような軟な子じゃありませんよ」
「スゴイ自信だねぇ。君がフィーリアス君の事を心から信じているのはわかったよ」
「……………うぅ、あぁ……あれ、ここは……?」
「あ、起きたんだね。よかった」
「見てください先輩、まさかの一発成功ですよ!」
「おお、本当だ。フィーリアス君はスゴイな……でもこれは彼の能力ありきの解決方法だね。廃人を復活させるのにいちいちフィーリアス君を呼び出すわけにもいかないし」
「は?あの子は最高のニュータイプ兵士なんです。あの子が一番輝くのは戦場なんですから、カウンセラーの真似事なんかさせないでください」
「うーん君はぶれないなぁ。そうだ、この後総帥がここを視察されるそうだ。今回の実験を手伝ってくれたお礼に私の方から総帥に要望を出してみようと思うが何かあるかね?」
「本当ですか!?じゃあそれなら……」
シャア総帥が視察すると聞いたミンファ博士は目の前の快復した失敗作の事を忘れて目を輝かせる……目を輝かせて期待するその姿はどこかフィーリアスに似ているのは、何だかんだいっても二人が親子だからだろう。
「すごい!すごいです総帥!あの子の動きに付いていけるなんて!プルシリーズじゃそもそも勝負にもならないのに!」
「いやぁ、ダメもとで言ってみるものだねぇ。まさか総帥自らフィーリアス君との模擬戦に応じてくれるだなんて」
その後ネオ・ジオン総帥のシャア・アズナブルと、彼のクローンであるフィーリアス・ワンの模擬戦が行われていた。先輩研究者の要求にシャア総帥は笑顔を浮かべて応じ、急遽模擬戦が始まったのであった。
「やはり確信しました!総帥が一番輝くのは戦場で戦う時です!それも指揮官として後ろでふんぞり返るのではなく、最前線で戦う最強の戦士!それが総帥の真価なんですよ先輩!指導者としてより戦士としての適性が一番あると思います!」
「うん、わかった、わかったから落ち着いてくれないかな?君の情熱は理解できるけど言ってる事はすごい不敬だからね?……まあ、君の気持はわかるけどね。フィーリアス君と勝負が成り立つ時点で凄まじいよ。流石はオリジナルの赤い彗星だ」
ハイテンションで模擬戦の様子を見るミンファ博士を眺めつつ、先輩研究者は赤い彗星の強さを見て流石はフィーリアスのオリジナルだと感心していた。
「フィーリアス君のZガンダムと戦っているあの赤いザク、あれが総帥の専用機か」
「やはり赤い彗星ときたらあのカラーですよね!ああ、あの子と総帥が一緒に戦えば向かうところ敵なしですよ!」
「いやいや、組織のトップが先陣を切って戦うなんて無理だよ。たとえ総帥が乗り気でも周りが絶対に認めないだろうね」
「そんなもん影武者でも適当に置いとけばいいんですよ!影武者に政治を任せて、シャア総帥は赤い彗星として戦場を駆ける……完璧ですね!」
「うん、全然完璧じゃないね。さっきから総帥の護衛である親衛隊の人達がすごい顔してるし、そろそろ口を閉じようか。流石にこれ以上は庇いきれなくなりそうだ」
「なるほど、確かにアムロの言っていた通りだ。凄まじいが未熟な部分がある。これなら落ち着いて対応すれば……そこだっ!」
「うわっ!?」
「素晴らしいです総帥!やはり総帥はニュータイプ兵士として最高の存在です!フィーリアス!貴方もすごかったわよ!いつか総帥を超えられるよう頑張りましょうね!」
「流石総帥ですね!僕も総帥のような最強のニュータイプ兵士になれるよう頑張ります!」
「うむ、ありがとう」
模擬戦を終えてMSから降りたシャア総帥はミンファ博士とフィーリアスから称賛の言葉を受けていた。オリジナルの赤い彗星に負けたものの「「流石オリジナルの赤い彗星ですね!」」とキラキラした目で称賛する二人を見てシャア総帥は何とも言えない気持ちになる。
(雪辱を果たす事はできたが、アムロのアドバイスがあっても厳しかったな。これでまだ子供だと言うのだから末恐ろしいものだ……しかし改めて思うがこの二人はよく似ている。血は繋がっていなくても親子なのだな)
「しかし総帥の仕事をしつつ急遽始めた模擬戦でこの子に勝てるだなんて……!やはりそうですよ!総帥は戦う為に生まれた生粋の戦士なんです!指導者として君臨するなんて総帥には適しておられません!ジオン・ズム・ダイクンの遺児とかいう肩書は戦士として不要なオマケですよ!」
「う、うむ。そうか、君が純粋な気持ちで言っているのはわかるし、誉め言葉として受け取ろう……ククッ、しかし君は全くぶれないな」
ミンファ博士の言葉を聞いてシャア総帥は苦笑しつつ面白い女だと改めて思うのであった。
「総帥、また僕と模擬戦をしてくれますか?」
「ああ、またやろうか。次も私が勝つさ」
「また所長に怒られちゃったわ……」
「よしよし、お母さん元気出して」
その後話を聞いたニュータイプ研究者の上司から叱責されたミンファ博士は凹みつつもフィーリアスに慰められていた。
「つい熱くなっちゃうのは私の悪い癖だわ。直さないと」
「ううん、お母さんは自分に正直に生きるのがいいと思うな。僕はそんなお母さんが大好きだよ」
「あら、ウフフ、嬉しい事言ってくれるわね……そうね、他人の顔色を伺って生きるだなんて私には難しいし、フィーリアスの言う通りね」
我が子に慰められて機嫌を直したミンファ博士はこれからも自分に正直に生きて行こうと決めたのであった。
「……という事があったのだ。アムロ、お前のアドバイスのお陰で雪辱を果たす事ができた。感謝するぞ」
「それはよかったが、総帥の仕事をサボって何をやってるんだシャア。というか捕虜の俺に気軽に会いに来ていいのか?」
「今の私はネオ・ジオンの指導者なのだ。組織のトップが少しくらい我儘を言っても許されるさ」
「しかしシャアの話を聞く限り彼の母親は、その、随分と個性的な女だな。ニュータイプ研究者だが曲がりなりにも彼に対して愛情があるのか。それとお前の熱烈なファンらしいが」
「ああ、彼女は私の事を最高のMSパイロットとしか見ていない。ハマーンや他の連中のようにジオン・ズム・ダイクンの後継者として見てこないから気楽だよ」
「……シャア、お前も色々と苦労してるんだな」
<人物紹介>
●ミンファ・ワン博士
→フィーリアス君の製造者兼母親で心のつえぇ女。母親として振る舞う事で我が子のパフォーマンスが上がるのならばと嬉々として母親役を全力で遂行している。フィーリアス君に対して情はあるが、我が子が一番輝くのは戦場で活躍する事だと信じて疑わない。実際1.3シャアが一番活躍できる場所は戦場なのは確かである。
赤い彗星の熱心なファンであり、模擬戦でシャア総帥がフィーリアス君に勝ったのを見て流石は赤い彗星!と喜び、やはり総帥は戦場でこそ輝く御方だと確信していた。シャア総帥が血迷ってミンファ博士に体調管理を依頼したら歓喜しつつ全力でサポートに徹するだろう。恋愛感情は一切ないが総帥のパフォーマンスが向上するなら何でもするし、自分を捧げる事も厭わない。
客観的に見て自分が異常者だという自覚はある。周囲のサポートのお陰で何とかなっているのは理解しており、自分って迷惑かけてばかりだなぁ……直すべきだよなぁと思いつつも、まあいいか!と開き直れる心のつえぇ女である。
●シャアのクローン(フィーリアス・ワン)
→お母さんが大好きなニュータイプ兵士。1.3シャアだがまだ色々と未熟なので、迷いのない1シャアが相手だと負けるのは仕方ない。ミンファ博士からオリジナルの素晴らしさを散々聞かされており、流石は赤い彗星ですね!と尊敬しつついつか超えてみせると決意する心のつえぇ奴である。
母親譲りのつえぇ心を持ち、廃人になったニュータイプ兵士の失敗作を感応実験で治療してもケロッとしていた。タフという言葉はフィーリアス君の為にある。その後話を聞いたシャア総帥の命令によりとあるエゥーゴの捕虜と面会する事になった模様。
●先輩研究者
→ミンファ博士のフォローを何度もしているが笑って許す人間の鑑にして、失敗作を弄り過ぎて廃人にしても心が痛まない人間の屑である。快復した失敗作について報告したところ総帥がすごい勢いで食いついてきたので少し引いた。
●失敗作ちゃん
→プルシリーズになれなかった失敗作ちゃん。色々弄られた結果廃人となっていたがフィーリアス君によって復活する。能力が大幅に向上した事でプルツー並の戦闘能力となり、無事ナンバーを与えられプルサーティーンとなった。
●シャア・アズナブル
→研究区域を視察したら模擬戦に誘われたので笑顔で即答しリベンジに挑む事に。ちょうど専用機も完成していたのでついでに試運転も兼ねていた。そして無事雪辱を果たし満足気な様子を見せる。アムロのアドバイスを聞いた迷いのない1シャアは強かった。ちなみに専用機は専用カラーに塗られたザクⅢ改である。
ミンファ博士については相変わらずおもしれー女だと思ったようだ。
●アムロ・レイ
→捕虜になっている。シャア総帥が最初に面会に来た時一度顔面を殴りスカッとしたので許す事にした。シャア総帥が碌でもない連中に囲まれていると知って同情したとか。
Gジェネエターナルが楽しいので前作のような更新速度は難しいですが頑張って書いていこうと思います。
今後は少しずつ投稿していく予定ですがよろしくお願いします。