ネオ・ジオンのパレードが終わって数日が経過した。ダカールにある首相府ではネオ・ジオン首脳部と地球連邦政府の要人が集まり和平交渉を行っていた。
「……」
条約締結の書類にサインしているシャア総帥は表面上は平静を装いつつも、内心忸怩たる思いを抱いていた。
(エゥーゴを裏切りネオ・ジオンの指導者として地球連邦と和平条約を結ぶなど、とんだ道化だな私は)
ブレックス准将から託されていたエゥーゴを裏切り、ネオ・ジオンの総帥となってサイド3の、ジオンの独立を達成しようとしている今の自分について、酷い恥知らずだと自嘲する。
(しかしこのような形でサイド3が独立するとは。だが地球連邦政府が我々に譲歩してでも地球圏の復興を優先するのは理解できる。そもそも総人口の半数が死んだ一年戦争の傷跡が未だに癒えていないのだ)
シャア総帥は復興を優先する地球連邦政府については納得できずとも理解を示していた。
(地球連邦政府が腐敗しているのは確かだが、それでも政府としての義務を果たそうとしている……あの計画を決行する事になれば最終的に地球圏に住む大勢の人々を巻き込むだろう。彼等を巻き込む資格が私にはあるのだろうか?)
来たるべき逆襲の時について考えるシャア総帥を他所に、和平交渉は特に問題なく進んでいくのであった。
「勝ったなシャア。我々ネオ・ジオンの勝利だ」
「ああ、これでサイド3は、ジオンは独立する」
交渉が纏まり無事和平条約が締結された。事前の取り決め通りサイド3はネオ・ジオンに譲渡され、ネオ・ジオンは地球に潜伏していた残党達と一緒に地球から撤退する事が決定された。
「シャア、ジオンは無事独立するがこれで終わりではない。これからが本番なのだ。貴様も気を抜くなよ」
「ああ、わかっているさ」
上機嫌なハマーンの言葉にシャア総帥は同意する。彼女の言う通りサイド3は新生ジオン公国は独立する事になったが、彼等を待ち受ける未来は前途多難である事は容易に想像できた。
「よかった、無事に交渉が終わって。父が生きていたら一緒に喜んでいただろうか」
ミネバ王女は和平条約が締結した事にホッとする。ネオ・ジオンの兵士達がこれ以上犠牲になる必要はなくなったとわかり彼女は安堵していた。
「私は嬉しい。シャアとハマーンがネオ・ジオンの為にまた手を取り合ってくれて。これからもジオンの為に協力してくれるか?」
「はい、ミネバ様。私とシャアはミネバ様の為に今後とも尽くす所存です」
「……ああ、私もハマーンと同じ考えだ。君が心配する必要はないさ」
「そうか、それならよかった!」
二人の返事を聞いてミネバ王女は無邪気に喜んでいた。
「そうだハマーン。お前のお気に入りであるジュドーなのだが元気にしているだろうか?」
「ジュドーですか。彼なら問題ありません。未熟ですが己の職務を全うしようと努力していますが」
「それはよかった。彼が上手くやっているかリィナが心配していたのでな。あの兄妹は仲がよくて見ていると笑顔になれる。私もジュドーの様な兄がいたらと時折思う時があるのだ」
「ミネバ様……ジュドーは現在警護の為に近くで待機しておりますが、お望みならば此処へ呼び出しましょうか?」
「いいのか?そうだな、ではリィナも呼び出すとしよう。リィナも会いたがっていたし好都合であるな」
ジュドーが来るとわかりミネバ王女は機嫌をよくする。ミネバ王女にとってアーシタ兄妹は心が綺麗で優しくて、年も近いので親しみやすい存在であり、二人の事を非常に気に入っていたのだ。
「ハマーン、いきなりジュドー君を此処に呼び出すのは。何も知らない彼が緊張するぞ」
「シャア、あのミネバ様の嬉しそうなお顔を見て貴様は止められるのか?」
「むぅ」
「心配せずともジュドーは強い子だ。すぐに慣れるさ」
「……確かにそうだな」
その後彼等は「「「ジュドーいいよね……」」」と語り合っており、呼び出されたアーシタ兄妹は何故自分達が呼び出されたのかと緊張していたが、すぐに落ち着いて兄妹で会話していたのであった。
「ふむ、地球連邦政府がここまで譲歩するとは」
ネオ・ジオンと地球連邦政府との間で和平条約が締結された事は地球圏で大々的に報道されていた。月のフォン・ブラウン市内にあるアナハイム本社にてニュース速報を見ていたメラニー会長は、今後アナハイムの方針について側近達が会議しているのを眺める。
「これはビジネスチャンスです。疲弊した地球圏の復興事業は莫大な利益が見込まれます。この商機を掴みましょう。それと今までの様な利益が期待できない軍需部門については縮小するべきかと」
「待て、ジオンが仮想敵国となる事で連邦政府も軍事費を確保するだろう。彼等に兵器を売る機会はまだある」
「しかし連邦政府はジオンに大幅な譲歩をしてでも地球圏の復興を優先したいようです。ジオンも独立すればネオ・ジオンと共和国軍の統合を行うでしょう。どちらも軍縮する可能性が高いというのに我々が軍需にこだわる必要はありませんよ」
「いやしかし……」
側近達の会議を眺めつつメラニーは地球圏の今後を考える。
(確かに軍需部門は縮小してもいいかもしれん。地球連邦政府の復興事業がどこまで本気なのかわからんが、今の地球圏は厭戦感情が蔓延していて、長引く戦乱に嫌気が差している人間が大勢いる。軍縮の流れはもう止められない……ならば民需に力を入れるべきだな)
「では軍需部門は段階的に縮小するか。開発については引き続き行わせるように」
「よろしいのですか?」
「客が今求めていない物に何時までも拘ってどうする。お前達も商人ならばさっさと考えを切り替えて客が望む物を用意しろ」
メラニー会長の意向によってアナハイムは軍需部門を縮小する事を決定したのであった。
「「「「「ジーク・ジオン!ジーク・ジオン!ジーク・ジオン!ジーク・ジオン!ジーク・ジオン!」」」」」
「……やれやれ、本当に無邪気だな民衆は」
「彼等も気が早いですな。まだサイド3が正式に独立したわけではないのに。ですが彼等の気持ちは理解できます。一年戦争で敗北し諦めていたジオンの独立が今になって達成されようとしているのですから、彼等が喜ぶのも仕方ありません」
窓から聞こえてくる民衆の歓声にジオン共和国のトップであるダルシア・バハロ首相は溜息をつき、息子のモナハンは苦笑していた。
サイド3、ジオン共和国ではネオ・ジオンと地球連邦政府の和平条約締結のニュースを聞いて民衆は歓喜していた。和平条約ではネオ・ジオンにサイド3が譲渡される事になっており、地球連邦政府がジオンの独立を認めるという事実に市民が歓喜するのは当然であった。
「我々には無邪気に喜ぶ暇などないというのに。ネオ・ジオンと共和国政府の交渉か。共和国を売国奴と呼んでいた連中とこれからは共同でジオン公国を治める事になるのか……始まる前から憂鬱になるな。上手くいく気がせんのだが」
「父上なら大丈夫ですよ。それにネオ・ジオンも我々がいなければ国を統治できない事は理解しているでしょう。武官だけで国を運営できるわけがないのですから」
「モナハン、お前は彼等がそんな物分かりのいい連中だと思っているのか?」
どう取り繕ったところでネオ・ジオンは一武装勢力でしかなく、彼等がサイド3を運営しようと思うならジオン共和国の協力が必要不可欠であった。だがジオン共和国の事を地球連邦に媚びを売っていた売国奴だと考えるネオ・ジオンの構成員が多くいるため衝突が予想された。
「それだけではない。軍の統合や、地球からの帰還兵達の社会復帰……これから我々を待ち受ける仕事は膨大だ。出来るならお前に仕事を押し付けて私は引退したいよ」
「ハハハ、やめてください。私では力不足ですしネオ・ジオンとの交渉は父上にしか出来ませんよ。私や周囲の人間がサポートしますので父上にはこれからも政治家として頑張ってもらいます」
モナハンの言葉を聞いたダルシア首相は、自分は一体何時になれば引退できるのだろうかと再度溜息をつくのであった。
<人物紹介>
●シャア・アズナブル
→和平条約が締結されジオン独立が確定した事に何とも言えない気分になった。来たるべき逆襲で地球圏に多大な迷惑をかける事になるけど本当にそれでいいのかと悩む。情けないがシャアだから仕方ない。それとダイクンの遺児としてミネバ王女とは対等の関係になったので敬語は使っていない。
その後はアーシタ兄妹のやり取りを見て微笑んでいた。ジュドーいいよね……
●ハマーン様
→よーしこれからもシャアと共に頑張るぞー!な乙女である。ジュドーについてはお気に入りではあるが、まだ異性としては見ていない。ジュドーいいよね……
●ミネバ王女
→シャアとハマーンがまた手を取り合ってくれた、私はとても嬉しいと喜ぶ人間の鑑。アーシタ兄妹はとても気に入っている。ジュドーいいよね……兄とはこんな感じなのかな?
●アナハイム
→とりあえず当分の間は地球圏で大きな紛争は起きないと推測し軍需部門の縮小を決定した。今後は民需の稼ぎ時だと考えている。
●ジオン共和国の民衆
→ジオン独立が確実となり「「「「「うおおおお!」」」」」と無邪気に喜んでいた。
●ダルシア首相
→呑気な民衆に溜息をつきつつ今後について色々と考えたり準備を進めたりしている。彼は何時になれば引退できるのだろうか?
●モナハン
→自分ではネオ・ジオンとの交渉は力不足だし無理だと自覚があるので、今後は父親のサポートを全力で行おうと考えている。
Gジェネエターナルが楽しいので前作のような更新速度は難しいですが頑張って書いていこうと思います。
今後は少しずつ投稿していく予定ですがよろしくお願いします。