和平条約が締結されネオ・ジオンは地球から撤収を開始していた。撤収作業は速やかに行われ、地球に残って作業するごく一部の部隊以外は既に宇宙へ戻っていたのであった。その様子を見ていたシャア総帥はネオ・ジオンが手際よく撤収するのを見て感心しており、それを指揮していたハマーンを称賛していた。
「随分と手際がいいな」
「事前の取り決め通りに進めただけだ。それに今回撤退したのはネオ・ジオン本隊だけで、地球に潜伏していた同志達の撤収作業は始まったばかりだ」
地球に潜伏していたジオン残党達も続々とネオ・ジオンに合流しサイド3へと帰還しようとしていた。だが彼ら地上のジオン残党は予想以上に数が多く、すぐには撤収できなかったのだ。
「彼らを運ぶシャトルやHLVの数が足りない。地球連邦政府には既に通達しているが、撤収が完了するには最低でも1年以上はかかるだろうな」
「地上の同志達があそこまで集まるとはな……正直に言えば多過ぎる気がするのだが」
シャア総帥はダカールに集結したジオン残党の軍勢を思い出して呟いた。意気揚々とネオ・ジオンに合流した残党達はネオ・ジオン本隊をも上回る程の数であった。その殆どが一年戦争時代の旧式MSであったが、中にはアッザムのような大型MAまで持参した連中もおりシャア総帥は困惑していた。
「フフッ、私も続々と集結する同志達を見た時は面食らったよ。だがシャアのお陰で統制が取れていたな。感謝するぞシャア、ミネバ様の後見人でしかない私では彼らを従えられなかっただろう」
ハマーンの言う通りダカールに集結していたジオン残党達がある程度統制が取れていたのは赤い彗星の存在があったからである。赤い彗星ことシャア・アズナブルはジオン・ズム・ダイクンの遺児である事は地球圏で周知の事実であり、彼になら従ってもいいと考えるジオン残党達が大勢いたのだ。
「しかしダカールに集まった人間達以外にも同志達がいるはずだ。地球に残ろうとする彼らについても帰還させるのか?」
「取り決め通り彼らも帰還させるさ。連邦政府が不法に居座ろうとするのを許容するはずがない。いずれ地球から追い出されるのだから我々と共に帰還する方がいいと思うが?」
「それはそうなのだが」
地球連邦政府との取り決めでは、地球に潜伏していたジオン残党については例外なく地球から撤収させる事になっていた。連邦政府としては地球に残ろうとする残党については如何なる事情があっても容赦するつもりはなく、ハマーンの言う通りネオ・ジオンと共に撤収するのがジオン残党にとって最善ではあった。
「まあ同志達については共和国と協議する必要があるだろう。貴様にはネオ・ジオン代表として共和国の交渉でも働いてもらうぞ」
「ハマーン、君もネオ・ジオンの指導者だろう」
「私のような小娘では共和国に足元を見られる。所詮私はミネバ様の後見人でしかないからな。ダルシア首相と対等に渡り合えるとしたら貴様だけだよシャア。私は貴様の補佐に徹するとしよう」
「ぬぅ」
ネオ・ジオンの代表者として今後も仕事に追われる事を察したシャア総帥は渋い顔をするのであった。……まあドズル・ザビの妾の妹でしかないハマーンと、ジオン・ズム・ダイクンの遺児である赤い彗星ではどちらがネオ・ジオンの代表者に相応しいかと言えば後者なのは事実である。
「……無重力か。この感覚も久しく忘れていたな」
ネオ・ジオンの本隊と一緒に宇宙に戻ったロンメル隊の指揮官であるデザート・ロンメル大佐は、久しぶりの無重力に感慨深い表情を浮かべていた。
「貴様ら、成果はどうだ?」
「お恥ずかしい話ですが、かなり梃子摺っています。時代に取り残されていたのを痛感しますよ」
「フッ、そうだろうな。私も同じだ。だが我々に愚痴を零す暇はない。ミネバ様の御役に立つ為に早く遅れを取り戻すぞ」
「わかっております」
現在ロンメル隊は移動している間も座学やシミュレーター、模擬戦等を精力的に取り組んでいた。一年戦争から8年が経過しMSの性能や戦術が大幅に進歩しており、ロンメル隊は時代に追いつこうと訓練に励んでいたのだ。
「全天周囲モニターとリニアシートは便利ですね。これが今の時代では標準装備とは。それに我々に新しく与えられたあのドライセンの性能は驚異的です。あの機体があればロンメル隊は無敵ですよ!」
「いい年してはしゃぐな。まったく子供のように目を輝かせおって」
興奮する部下を見てロンメル大佐は苦笑する。ロンメル隊は今まで乗っていた旧式MSから、新しく与えられた新型量産機のドライセンに乗り換えていた。ネオ・ジオンの最新鋭の機体であるドライセンは一年戦争の旧式と比較すると雲泥の差があり、ロンメル隊は新時代のMSの性能に感嘆していた。
(まあ部下達が興奮するのはわかる。あのドライセンの性能を実感すればそうなるか。8年の時はMSをあそこまで進化させるとは)
ロンメル大佐はふと旧式MSで新型MSと戦う事になった場合を想定する。
(……前の機体、ドワッジ達では歯が立たんだろうな。戦術や精神論ではどうにもならない程の性能差があるのが実感できた。あのZZのような敵が出てくれば碌に抵抗できず無駄死にしていただろう。ネオ・ジオンに合流できたのは我々にとって幸運だった)
自分達は幸運だったとロンメル大佐は改めて感じていた。
「しかし前の機体を捨てる事になったのは少し心残りですね。相棒とこんな形で別れるとは」
「仕方あるまい、一年戦争時代の陸戦型MSなど宇宙に持ち込んだところで何の役にも立たん。それは貴様らも理解しているはずだ」
「ええ、それは理解しております」
宇宙に戻るにあたって旧式MSは地上に置いていく形になった事に部下達は少し寂しげな様子を見せていた。旧式の骨董品で今の時代では役に立たない事は理解しているものの、彼等にとっては今まで長い間乗っていた相棒だったからだ。
「持ち込んだところで博物館行きにしかならんよ。私の機体のようにな……あの骨董品を飾るなど気恥ずかしいのだが」
「そんな事はありません。大佐の機体がジオン本国で展示されるだなんて光栄じゃないですか」
ロンメル大佐の愛機であったドワッジ改については例外的に宇宙に運ばれており、地球に残り戦い続けた勇者ロンメル隊の象徴として展示される事になっていた。
「ニキ、貴様の妻子はどうだ?」
「妻は初めての無重力に戸惑っています。チビはもう慣れてはしゃいでるようです」
「ほう、子供はすぐに適応するな……故郷を離れてでも貴様に付いて来るとはいい家族を持ったな。大事にするんだぞ」
「はい!」
現地のアースノイドの女性と結婚していた部下を労わりつつロンメル大佐は部下達を見回す。
「諸君、我々ロンメル隊はいよいよサイド3に帰還する!こうやって本国に凱旋する事が出来て私も感無量だ。お前達も私を信じて今までよく付いて来てくれた。お前達のような部下を持てて私は幸運だ……だが我々の戦いは終わりではない!これからも続くのだ!諸君らの一層の努力に期待する!」
「「「「「はっ!」」」」」
一斉に敬礼する部下達を見て頷きつつ、ロンメル大佐は今までの苦労は無駄ではなかったと思わず男泣きするのであった。
「……もうすぐ帰って来るんだよな。ネオ・ジオンと地球に残っていた連中が」
「ああ、そうだな」
一方その頃、ジオン共和国では共和国軍のMSパイロット達が食堂で雑談をしていた。
「アイツらと上手くやれるかなぁ?」
「上手くいくかどうかはわからんが、やるしかないだろ」
「だよなぁ」
共和国軍人達はネオ・ジオンやジオン残党達と上手くやれるのか心配する者が少なからず存在していた。ジオン残党達は共和国の事を売国奴だと罵っていたのは広く知られていたため、彼らが不安を覚えるのは当然である。
「あの噂本当なのかな?ネオ・ジオンがクローン兵士を運用してるって話は」
「マジらしいぞ。同じ顔の少女が何十人もいるって話だ」
「うわぁ……」
プルシリーズが存在している事を知ったパイロット達はドン引きしていた。彼らは一般常識と良識があるのでクローン兵士の存在に忌避感を持つのは仕方ないだろう。
「軍の統合ってどうするんだろうな?ネオ・ジオンはともかく地球から帰還する連中も纏めて原隊復帰させるのか?」
「無理無理、共和国に彼等全員を軍人として活動させる余裕はないよ。地球からの帰還者の殆どについては、社会復帰させて一般人として働いてもらう事になるだろうな」
「それで彼らが納得するかなぁ?」
「だが納得してもらうしかないさ」
その後も彼らはジオンの今後について話し合う。
「ジオンの独立ってすぐじゃないんだな」
「当たり前だろ、独立がすぐに出来るわけがない。準備期間を入れて数年の猶予があるだろうな」
「あ、そうか。じゃあ宇宙世紀100年頃に独立するのかねぇ?ちょうどキリもいいし」
「いや、それは流石に悠長過ぎるぞ。準備期間は長くて5年くらいだろ。まあ政府のお偉いさんが考えてくれるだろうさ」
ジオンの正式な独立について彼らは何時になるのかと話し合い、最終的に独立が宇宙世紀何年になるか賭けの対象となったのであった。
「独立したら上手くいけるかな?」
「ジオン・ズム・ダイクンの遺児である赤い彗星がいるから大丈夫さ……あ、でも」
「どうした?」
「いや、火星に行った連中はどうするんだろうなって気になってさ」
「諸君、諸君らも既に知っているだろうがネオ・ジオンの手によってジオンの独立が達成された」
その頃火星では火星独立ジオン軍……通称ジオンマーズの軍人達が部屋に集まり報告を聞いていた。ジオン独立という悲願が達成された事に兵士達は興奮しつつネオ・ジオンを称賛していた。
「我々と協力関係にあったネオ・ジオンがジオン独立を成し遂げた。これは大変喜ばしい事である……だが、このままでは我々ジオンマーズはネオ・ジオンの下に入る事になるだろう」
幹部の言葉を聞いて兵士達は一転して何とも言えない表情を浮かべる。
「無論、ジオン独立の功労者であり、ミネバ王女とキャスバル・レム・ダイクン殿がいるネオ・ジオンが優遇されるのは当然だ。だが、キシリア様の遺児を担ぐ我々はそれをよしとはしない!我々は彼等とは別行動を取る!我々ジオンマーズは火星を完全に掌握し、火星に第二のジオン公国を建国するのだ!」
ネオ・ジオンに負けてたまるかと、ジオンマーズは準備を始めるのであった。
<人物紹介>
●シャア・アズナブル
→今後も激務が予想され嫌そうな顔をするも、逃げようにも逃げられないので仕事はしっかりこなす。地球に潜伏していたジオン残党の数に驚く。赤い彗星の存在は伊達ではなく、ジオン残党達の統制にとても役立っていた。これがハマーン様だけなら従わない者が続出していただろう。ジオン共和国との交渉でもネオ・ジオンの代表者として働く予定。
ちなみに時折模擬戦に参加しストレス発散をしている模様。
●ハマーン様
→シャアのお陰でスムーズに事が進んで上機嫌になる。好きな男と一緒に仕事が出来てハッピーな乙女であり、自分はシャアの補佐に徹するのが一番いいと理解している。
●ジオン残党達
→地球各地からダカールに駆けつけてきた。予想以上に数が多いため帰還作業は時間がかかる模様。ネオ・ジオンに合流せず地球に残ると決めた者もいるが、地球連邦政府が容赦なく排除するだろう。
ロンメル隊のような例外を除き、彼らの殆どは社会復帰し一般人として新生ジオン公国で暮らす事になるだろう。
●デザート・ロンメル大佐とロンメル隊
→ネオ・ジオン本隊と一緒に宇宙に戻った。旧式MSは地上に置いてきており、代わりにネオ・ジオンからドライセンを与えられた。今までの遅れを取り戻そうと精力的に訓練に励んでいる。ロンメル隊の戦いはこれからだ!
地球で家族を作った者は家族と一緒に宇宙に戻っている。
●旧式MS
→骨董品の陸戦型MSをわざわざ宇宙に持ってくる必要はないです。ロンメル大佐のドワッジ改は勇者達の象徴としてジオン本国で展示される事になった。
●ジオン共和国の軍人達
→ネオ・ジオンと上手くやれるかなぁ、と不安になっている。クローン兵士の噂についてはドン引きしていた。同じ顔の幼女達がMSパイロットしてるなんて目立ち過ぎて噂になるのは当然である。
●ジオンマーズ
→ネオ・ジオンがジオン独立を成し遂げた事に喜びつつも、自分達も負けられるかと余計な事を始めようとしている。
ちなみにジオンマーズ以外にも火星にはジオン残党勢力がおり、ネオ・ジオンについては気に入らない模様。
●シャアのクローン(フィーリアス・ワン)とプルシリーズ達
→今回は出番なし。次回は出番がある予定。どうでもいい話だがフィーリアス君はシャア総帥の弟という事になりフィーリアス・アズナブルとなった。
Gジェネエターナルが楽しいので前作のような更新速度は難しいですが頑張って書いていこうと思います。
今後は少しずつ投稿していく予定ですがよろしくお願いします。