アクシズで頑張るシャアのクローン   作:すも

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ふと思いついたネタの続きです。暫くの間は閑話が続きます。


カイ・シデンのレポート~地球の現状~

「いやスゴイな、ジオン残党がここまで集結するとは」

 

フリーのジャーナリストであるカイ・シデンはダカールに集まったジオン残党達を見て感嘆する。ネオ・ジオンが地球連邦の首都ダカールを制圧して一週間が経過した頃、ネオ・ジオン総帥シャア・アズナブルの呼びかけに呼応したジオン残党達が続々とダカールに集結していた。

 

「旧式MSばかりとはいえこれ程の数が集まれば脅威だな……赤い彗星の、ダイクンの遺児の威光は伊達じゃないか」

 

ジオン残党達がネオ・ジオンに呼応し合流した理由は何と言ってもシャア・アズナブルの存在があったからである。ジオン公国軍を代表するスーパーエースの赤い彗星、そしてジオン・ズム・ダイクンの遺児である彼のカリスマは凄まじく、残党達は熱狂し派閥を超えて集結したのであった。

 

(それに彼らが熱狂している理由は赤い彗星の存在だけじゃない、ジオンの独立が現実味を帯びてきたからだろうな)

 

ネオ・ジオンがダカールから撤収する代わりにサイド3が譲渡され、ジオンは独立するという噂は既に地球圏に広まっていた。最初はその噂を信じない者が大勢いたが、地球連邦の首都が無血で制圧された事、そしてダカールが制圧されても地球連邦軍が沈黙している事で噂は本当だったと民衆は察していた。

 

(しかし地球連邦政府がここまで譲歩するとは。政府の影響力の低下は避けられないだろう。地球圏の復興を優先したいのはわからなくもないが……)

 

「考えたところで仕方ない、ジャーナリストらしく調査してみますかね。まずはダカールに集まっている残党達を取材してみるか」

 

疑問を抱きつつも、カイはジャーナリストとして取材しようと決意するのであった。

 

 

 

 

「「「「「ジーク・ジオン!ジーク・ジオン!ジーク・ジオン!ジーク・ジオン!ジーク・ジオン!」」」」」

 

「お祭り騒ぎですね」

「それは否定できないな。だが勘違いしないでほしいが、あんな馬鹿騒ぎしてるのは一部だけさ」

 

ジオン残党達への取材申し込みはあっさりと通った。残党の一人に案内されたカイはジオンの国旗を振る旧式MSとその周りで騒ぐ残党達を見て何とも言えない表情を浮かべる。元WBのクルーとして有名なカイだが、ジャーナリストとして活動している時にジオン残党達と面識が出来ており特に問題なく受け入れられていた。

 

「彼らがあそこまで喜ぶのは、ジオンが独立すると思っているからですか?」

「ああ、少なくともダカールに集まった連中はそう信じているよ。ネオ・ジオンの同志達も否定してなかったしな」

「なるほど、道理でここにいる人達は皆明るい顔をしているわけだ」

「そりゃそうさ、俺達の悲願だったジオン独立が達成されようとしているんだ。これを喜ばないジオンの人間はいないよ……あそこまではしゃぐ気にはならないけどな」

 

案内人と会話しつつ周囲の様子を観察していたカイは、多種多様なMS達を見て困惑する。

 

「ザクやグフ、ドムが多いな。でもゲルググや連邦のジム、ズゴックなどの水陸両用MSまでいるし、大型MAもチラホラと……まるで戦争博物館だ。マニアが見たら喜ぶでしょうね」

「ハハハ、実際レアな機体については物好きな金持ちから高値で買うから売ってほしいという打診があったよ」

「えぇ……?ダカールが制圧されているのに呑気な金持ちだなぁ」

「他人事なんだろうさ、俺達としても廃棄するしかない機体を買ってくれるのは別に構わないけどな」

「機体を捨てるのですか?」

 

カイは機体を廃棄すると聞いて驚く。

 

「ああ、俺達はネオ・ジオンの協力で宇宙に戻る事が決まっている。だが旧式MSについては持ち込めないという事だ。じゃあ廃棄するしかないだろう?」

「貴方達はそれで納得しているのですか?」

「それは仕方ないさ。陸戦型MSを宇宙に運んだところで役に立たないのは理解しているし、それに俺達の戦争は終わったんだ。もう戦うためのMSなんて必要ない」

 

ジオン残党達は機体を廃棄する事をある程度受け入れていた。

 

「アンタに特別に話すけど、俺個人の意見を言うとな、もう意地を張らなくてすむとホッとしてるんだ。地球の片隅で抵抗を続けていたけど、こんな事してもジオンの独立に貢献できるのかと思った事は一度ならず何度もあった。俺はこのまま意地を張って時代に取り残され、いずれ朽ち果てるんじゃないかとな……そう考えてた奴は俺以外にも結構いるぞ」

「……」

 

案内人の言葉をカイは静かに聞いていた。

 

「そしたらネオ・ジオンのお陰でジオンの独立が達成された。正直こんなあっさりと悲願が達成されるとは思わなかったよ。もう俺達は意地を張らなくていいとわかったし、俺は兵士として残るつもりはない。退役して一般人として暮らす事にするよ。兵士として戦う以外にもジオンの役に立てる事はあるはずだからな」

「そうですね、その方がいいと思いますよ」

 

案内人の決断にカイは賛同していた。その後ジオン残党達を取材したカイは案内人のような考えを持つ者が少なからず存在するのを確認した。

 

「地球に潜伏していたジオン残党達も戦争にはウンザリしている人が多い……8年も潜伏していたら戦意を維持できないのは当然だな。だが連邦軍はジオンの独立についてどう考えているのだろうか?」

 

 

 

「いや、納得できるわけがないじゃないですか」

「……でしょうね」

 

ジオン残党達と別れたカイはダカール近辺にある地球連邦軍基地の一つで取材していた。ジオンの独立を受け入れられないと言う青年士官の言葉にカイは当然だなと納得する。

 

「貴方も一年戦争に従軍したならわかると思いますが、地球連邦政府の決定はあの戦争で戦って散った英霊達を侮辱しています……これは軍の総意ではなく、僕個人の考えですけどね。ですが僕と同じ考えを持つ人は大勢いますよ」

「ええ、わかります」

 

不満気な様子を見せる青年士官にカイは同意する。一年戦争に参加した身としてあの戦争は一体何だったのかと思うのは当然であった。

 

「だが僕は地球連邦軍の一員です。政府に納得できなくても、ジオン残党のような勝手な行動を取るわけにはいきません。政府がそう言うなら軍人として従うだけです」

 

(理性的だな。今の地球連邦軍はある程度真面になっている……独断専行をするような人間はティターンズやエゥーゴに行ったからか。残っているのはこの青年のような真面目な軍人か、やる気のない連中ばかりなんだろうな)

 

カイは目の前の青年士官が真面目な事に感心していた。今の地球連邦軍はやる気がない事で有名だったが、彼のような真面目な軍人も少なからず存在していた。

 

「僕の部隊は地球環境再生事業に従事する為北米に向かう事になっています。ジオンについては未だに納得できませんが、地球圏の復興を優先しようとする政府の考えは理解しています。本当に北米は酷い状況ですからね」

 

(北米か、デラーズ紛争でコロニーが落とされ壊滅的な打撃を受けたというが……ここまできたら行ってみるか)

 

興味が湧いたカイは北米大陸に向かう事を決意したのであった。

 

 

 

「……凄まじいな。この巨大なクレーターは」

 

北米大陸に渡ったカイは目の前に広がる巨大なクレーターを見て唖然としていた。

 

「宇宙から撮られた写真で知ってはいたつもりでしたが。これは、酷いな」

「ああ、本当に酷いものだよ」

 

カイの取材相手である地球連邦政府の一員で、地球環境再生事業に従事する老紳士はカイの言葉に同意する。

 

「ここは世界でも有数の穀倉地帯だった。宇宙世紀以前から、西暦の時代から穀物を生産し人類の発展に貢献してきた重要な場所だったのだがデラーズ・フリートのコロニー落としで壊滅状態となった。穀倉地帯としての価値は殆どなくなったと言ってもいい」

 

老紳士はカイに今の北米の穀倉地帯の現状を話す。

 

「コロニーが直撃した部分は当然として、その周囲も甚大な被害を受けたのだ。衝撃波や有害物質が撒き散らされたせいで土壌に深刻なダメージを受けた……穀倉地帯として再び復活するにはどんなに短く見積もっても20年以上はかかるだろう。もしかしたら半世紀後も回復してないかもしれんな。宇宙人共め、スペースノイド独立を語るのはいいが人類が衰退してもいいと思っているのか?」

「……」

「それに問題は北米のコロニー落としだけではない。一年戦争でオーストラリアに落ちたコロニーは大規模な津波を引き起こした。沿岸地域の都市は壊滅し海洋生物も大勢死んだ。あの世界規模の災害は地球環境に多大なダメージを与えたのだ。それについても対応しなければならんが、今まで戦争ばかりで碌に手が付けられていないのが現実だ」

 

溜息をついた老紳士はウンザリした表情を浮かべる。

 

「わかるかね?今の地球圏に戦う余裕などない。地球圏の未来の為に、人類の未来の為に地球環境の再生は急務なのだよ。このままではいずれ地球環境が取り返しのつかない事になり、最悪の場合人類が共食いをするまでに追い詰められるかもしれんのだ」

「それは悲観的過ぎるのでは?」

「そうだろうか?人類が想像以上に愚かだというのは君も知っているはずだ。一年戦争で総人口の半数が死に、デラーズ紛争ではコロニーが落ち、先のティターンズとエゥーゴの内乱ではジャブローを核爆弾で自爆させる暴挙に出た。そして挙句の果てには両者は共倒れしてネオ・ジオンに勝利を搔っ攫われた……私からすればアースノイドも、スペースノイドも皆愚か者だ。更に悲惨な状況に陥っても私はもう驚かんよ」

「……」

 

老紳士の嘆きを聞いたカイは反論できなかった。

 

「おっと、愚痴を聞かせてすまなかったな。世間では色々と言われているが地球連邦政府の決定について私は英断だと思っているよ。政府の上層部がどこまで本気なのかはわからんが、戦争よりも復興を優先してくれたのだからね。願わくば平和が長続きしてほしいものだ。少なくとも私の残り少ない寿命が尽きるまでは平和であってほしいよ」

「ええ、そうですね。平和が一番ですよ」

 

老紳士と別れたカイは地球圏の現状を振り返り溜息をつく。

 

(確かに今の地球圏は戦争どころじゃないか、あの御老体が予想したような悲惨な未来は流石にないとは思うが、それでも何が起こるかわからない……地球圏の未来の為にも復興を優先するのは正しい。ようやく訪れた平和が長続きすればいいけどな)

 

カイは地球連邦政府の決定に納得しつつ、この平和が出来るだけ長続きしてくれるよう祈るのであった。

 

 

 

 

 

<人物紹介>

●カイ・シデン

→一年戦争に参加した身としてジオンの独立については少し納得いかなかったものの、地球圏の現状を知って確かにこれは復興を優先するべきだと考えた模様。

 

 

 

●ジオン残党達

→ネオ・ジオンがダカールを制圧し、ジオンの独立が確定事項となった事でお祭り騒ぎとなる。旧式MS達を地上に廃棄して宇宙に帰還する事になったが、戦いに疲れていた兵士達の多くは素直に受け入れていた。

 

 残党達の今後については軍に残ろうとする者が6割、それ以外は社会復帰して一般人として暮らす事を決めている。だが軍縮が予定されている新生ジオン公国軍に原隊復帰するのはかなり狭き門である。

 

 

 

●地球連邦軍の青年士官

→連邦政府の決定には理解できるが納得していない。でも軍人なら政府に従うのは当然と考えている軍人の鑑。地球環境が滅茶苦茶になっているのは知っているので、これからは地球環境再生に全力を尽くすつもりのようだ。

 

 

 

●老紳士

→長年地球環境再生事業に従事してきたお爺さん。ティターンズ長官と個人的な面識があったようだ。

 

 一年戦争のコロニー落としで地球環境が滅茶苦茶になった事に呆然としつつも必死に職務に励んでいたが、その後のデラーズ紛争でのコロニー落とし、グリプス戦役でのジャブロー自爆を見て怒りを通り越して虚無になった。何やってんだジャミトフと思ったとか。

 

 もう戦争には心底ウンザリしており、ジオンが独立してもいいから地球環境再生に集中させてほしいと願っている。

 

 

 

●地球

→ズタボロである。これでも第一次ネオ・ジオン紛争があっさり終わりダブリンのコロニー落としがなくなったので原作よりはマシな模様。とりあえず地球連邦政府は地球圏の復興を優先し、地球環境再生に注力するようだ。




Gジェネエターナルが楽しいので前作のような更新速度は難しいですが頑張って書いていこうと思います。



今後は少しずつ投稿していく予定ですがよろしくお願いします。
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