「カミーユ、聞いてくれないか。アムロやブライト達といったエゥーゴの捕虜の処遇についてなのだが」
「僕も捕虜だって事を忘れてませんかクワトロ大尉」
ネオ・ジオンの総帥シャア・アズナブルが呑気に話すのを見てカミーユは思わず呆れていた。
「フッ、君になら話しても問題ないとも」
「捕虜に機密情報をベラベラ喋っているなんてハマーンが知ったら怒ると思います。いやハマーンじゃなくても怒りますよ」
「心配しなくていい、組織のトップである私を止められる人間はいないさ。それに君に色々と話している件についてはハマーンも納得している」
「よく彼女が認めましたね」
「カミーユと会う事でストレスが解消されて落ち着くのなら見逃すと言っていたな」
「……ハマーンは随分と変わったみたいですね」
自分の知るハマーンとは様子が違うのを知ってカミーユは困惑する。
「私も彼女の変化には驚いているよ。ジュドー君の存在がいい影響を与えているのだろうな」
「ジュドー君ですか、確かに彼ならハマーンも心許せるでしょうね」
「そうだな、彼は君と同じニュータイプだが性格は全然違って、まるで太陽のような少年だ。ハマーンが彼を気に入るのがわかるよ」
ハマーンの変化に驚きつつ二人は会話を続ける。
「それで、捕虜になったエゥーゴの人達はどうなるんですか?」
「そうだったな。私が手を回した甲斐があって殆どの捕虜は無事解放できそうだよ。彼等については解放次第月へ送る予定だ」
「それはよかったです。でも殆どって事は解放されない人もいるんですか?」
捕虜が解放されると聞いて安心したカミーユであったが、ふと解放されない人達の事が気になりシャアに尋ねると、シャアは一転して難しい表情を浮かべた。
「ああ、ブライトやハヤト達、特にアムロがな」
「どういう事です?何故アムロさん達がダメなんですか?」
「彼等がエゥーゴやカラバの主要メンバーで容易に解放できないのはある。これは新生ジオン公国独立の際に恩赦を出せばいいと思うが、一番の問題は解放した彼等が暗殺されるかもしれんからだ。元々地球連邦政府は自分達を脅かしかねないアムロ達を疎ましく思っていて、我々ネオ・ジオンに処分させようと企んでいた」
「地球連邦政府のせいで……もしかしてアムロさん達はクワトロ大尉の手元にいた方が安全なのですか?」
「ブライト達に関しては地球連邦軍で飼い殺しにされるくらいだろうが、アムロは解放したら命の保証がないだろうな。それについてはアムロに説明して納得してもらった。彼も自分を切り捨てた地球連邦には見切りをつけていて、何なら私の手伝いをしてもいいと言ってくれたよ」
「そうですか」
最悪の事態は防げそうだとカミーユはホッとするが、同時に疑問が湧く。
「でもジオンで再雇用するといっても大丈夫ですか?アムロさんって、その、ジオンだと」
「そうだな。一年戦争で活躍した連邦の白い悪魔を敵視する者は多い。素直には受け入れられないだろうし、最悪の場合私怨で暗殺されるかもしれん。そんな事は起きないと言いたいが、ジオンでは独断行動は日常茶飯事だ」
「全然安心できないですよ」
「心配しなくていい。新しい戸籍を用意し、私の親衛隊として活動してもらうからな」
「クワトロ大尉の側なら確かに大丈夫でしょうね。でもアムロさんはよく受け入れましたね」
「お前から目を離すと碌な事にならないから側で見張っておくと言われたよ」
「なんで嬉しそうな顔をしてるんですか……まあそれくらいは言われても仕方ないと思いますよ。いくら事情があったとはいえエゥーゴを裏切ったのは事実ですし」
「私としても不本意だったのだがな」
カミーユからそう言われたシャアは少し悲しげな様子を見せていた。
「でも殴られずにすんでよかったですねクワトロ大尉」
「いや、普通に一発ずつ殴られたぞ。事情はわかったがとりあえず殴らせろとな。指導者の仕事があるので顔はやめてもらったが腹にキツい一発を入れられてな」
「やっぱりそうなりましたか、でも一発ですませてくれるなんて皆さん優しいですよ。特にハヤトさんは柔道の心得がありますし、下手すれば柔道の技で投げられてたかもしれませんよ?」
「ぬぅ」
そんな感じでカミーユとシャアは楽しげに会話をしており、その後も事ある毎にシャアはカミーユを訪ねて愚痴を言うのであった。
「へぇ、特務部隊にアムロさんを配属させるんですか」
「ああ、旧ジオン軍の置き土産が大量に残っていて、新生ジオン公国がその後始末をする必要があるのだ。フィーリアスが軍学校に行く間アムロにZZを任せようと思ってな。アムロ本人も笑って承諾してくれたよ」
「そうですね、子供は学校に行くべきです。でもアムロさんが仮面を被っている姿はちょっと面白いですね」
「おや、似合ってないのか?私が用意した特注の仮面なのだが」
「いや、そういう問題ではないですけど。というかコレで周囲を誤魔化せるんですか?」
「大丈夫だ、ジオン軍では仮面を被って活動していても受け入れられるのだ。少なくとも私は問題なかった」
「……赤い彗星が言うと説得力がありますね」
「やっぱり軍縮を受け入れられない人が多いんですか」
「皆が理性的に考えられるわけではないのさ。財政的に無理だと説明されても認めたくない人間が多くてな」
「じゃあどうするんですか?」
「それについてはハマーンから提案があってな。共和国の政治家達が言っても拒否する者が多いだろうから、ハマーンの手で軍縮を主導する事になった。兵士達のヘイトはハマーンに集中するだろうが、ハマーン本人は別に構わないらしい」
「ハマーンがクワトロ大尉の身代わりを買って出たんですか……本当に献身的になりましたね」
「うむ、私としては非常に助かるのだが、あまりの変わり様に少し気味が悪いと思ってしまう」
「クワトロ大尉、ハマーンは貴方の為に頑張っているのにそう考えるのは可哀想ですよ」
「むぅ、そうだな」
「えっ、猿がニュータイプに?」
「ああ、一年戦争からE計画という極秘の研究を行っていた者達から連絡があってな。猿がニュータイプに覚醒するなど正直言って信じられないのだが、証拠となるデータを送ってきたので確認したが本当のようだ」
「へぇ〜、興味深いですね」
「……カミーユはあまり驚かないのだな」
「いや、人が宇宙に適応したらニュータイプになれるんですから、宇宙にいる猿がニュータイプになっても別におかしくないでしょうに。もしかしたらイルカだってニュータイプになれるかもしれませんよ」
「そ、そうか」
「あ、そうだ。それなら今後ニュータイプ研究で実験する時は猿を使えばいいのでは?実験体になる猿が可哀想ですが人間が使い潰されるよりは遥かにマシですよ」
「確かにそうだな……ハマーン達は研究結果を廃棄させろと言っていたが、使い道があるかもしれん」
「ハマーン達は何が気に入らないんですか?」
「この研究は私の父ジオン・ズム・ダイクンが提唱したニュータイプ論を否定しかねない代物だからな、彼女達が危惧するのはわからなくもない」
「大袈裟だなぁ、別に猿がニュータイプになってもいいだろうに」
「……なんか、話を聞いてるだけでも色々と大変なんですね」
「カミーユ、わかってくれるか」
シャアから愚痴を聞き続けていたカミーユは思わずシャアに同情していた。
「国の指導者って多忙なんですね。貴方の苦労を少しでも軽減できるなら話し相手になれてよかったですよ」
「ああ、カミーユには助けられているよ。私の愚痴をわざわざ聞いてくれて本当にありがとう」
「別にお礼はいいですよ。僕は苦ではありませんし、これからも遠慮しないで愚痴を言ってください」
シャアのストレス解消になるならとカミーユは今の立場を前向きに受け止めており、シャアは自分の愚痴を聞いてくれるカミーユに心から感謝するのであった。
<人物紹介>
●カミーユ・ビダン
→シャア専用のカウンセラーとなっている。シャアの精神が安定するならばとハマーンも許容している。でもカミーユが女だったら修羅場になっていたかもしれない。
シャアの苦労話を聞いて民衆を導く指導者も大変なんだなぁと思ったとか。
●シャア・アズナブル
→捕虜達が酷い目に遭わないよう手を尽くした。アムロが側で支えてくれるようになって少しテンションが上がったが、新生ジオン公国建国の準備や旧ジオン軍の置き土産の後始末で多忙となり、よくカミーユに愚痴を吐いている。
●エゥーゴとカラバの捕虜達
→シャアのおかげで全員助かった。ブライトとハヤトはシャアにも事情があったのは理解しているが、とりあえずムカつくから一発殴ってから許す事にした。ブライトは軍人はもう懲り懲りなので家族と合流したら嫁の実家頼ってでも退役してレストランを開きたいらしい。
●アムロ
→シャアに再雇用された。変な仮面を被って周囲を誤魔化す事に当初は困惑したが、普通に受け入れられた事で宇宙猫になった模様。
それと副官として元部下がついた。一体誰ッシュ・ウェラーなんだ……
●ニュータイプ猿
→ジオンが独立する事を知ったE計画の研究者達が意気揚々と接触してきた。猿がニュータイプになった事に困惑し拒否感を持つ者が続出したが、カミーユの言葉を聞いたシャアが研究を続行させた。今後猿達はニュータイプ研究の為に犠牲になるが人間が犠牲になるよりはマシだと思いたい。
ちなみにニュータイプ猿達について研究者達は興味深いと評価したが、兵士として運用する事については「それプルシリーズでよくね?」となった模様。猿達は今後のお話で少しだけ登場する予定です。
Gジェネエターナルが楽しいので前作のような更新速度は難しいですが頑張って書いていこうと思います。
今後は少しずつ投稿していく予定ですがよろしくお願いします。