アクシズで頑張るシャアのクローン   作:すも

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ふと思いついたネタの続きです。暫くの間は閑話が続きます。


地球圏の軍縮

「はぁ、来る日も来る日も土木工事だなんて。どうしてこうなってしまったんだろうかねぇ」

「おい新入り、サボるんじゃない。今日のノルマを達成しないと監督にどやされるぞ!わかったらジムを動かせ!」

「あ、すみません!」

 

地球のとある港湾都市にて土木作業に従事する新入り作業員は退屈な毎日に辟易しつつも先輩作業員に指導されながら作業していた。彼はつい最近まで地球連邦軍に所属する若手のMSパイロットであったが、地球連邦政府が進める軍縮の影響で軍からリストラされ、土木作業員として再就職していたのであった。

 

「軍を追い出されて不満なのはわかるが仕事に集中しろ……でもお前は恵まれている方だと思うぞ。MS乗りの経験を活かせる仕事に就けたんだからな」

「ええ、それはわかってますけどね。軍が再就職先を紹介してくれて正社員として再就職できたのは幸運だと」

 

先輩の言う通り新入り作業員はまだ恵まれている方であった。元MSパイロット達は作業重機となったMSを動かす事を期待されて就職先にはそれほど困らなかったのだ。

 

「給料はそこまで変わらないし、福利厚生が充実してるから俺的にはそこまで不満はないですよ」

「それはよかった、なら会社に感謝して仕事に励んでくれ」

「ええ、そのつもりですけど……何時になったらこの土木工事終わるんですかね?」

 

作業に取り組んでいた新入り作業員はふと疑問を覚えて先輩に尋ねる。自分達が従事している土木工事は港湾都市としての機能を復活させる為の重要な作業である事は知っていた。

 

「ここについては今年中に工事を完了させる予定だ。ここが終われば別の場所に移動して同じ作業をするだけだ……ここと同じくらいズタボロな港湾施設は地球上で無数に存在している。政府が掲げる海運の完全復活の為には最短でも10年はかかるんじゃないか?」

「そんなに」

「最短でだからな?他の会社の奴等も頑張っているが一年戦争以前のような海運の規模に戻すにはまあ20年、下手したらお前が定年を迎えても工事してるかもなぁ。一年戦争の時にジオンのクソ共が落としたコロニーのせいで海運は壊滅状態だからな」

「うわぁ……」

 

自分が想像していた以上に大変だと知って新入り作業員は絶句する。

 

「でもなんで海運の復活なんて。今は空輸で補えるのに」

「あのなぁ、確かに今の地球の流通については空輸で何とかできているが、一年戦争より前は海運が主流だったんだぞ。海運が復活すれば輸送コストが段違いに安く済むようになるし政府が海運の復活を進めるのは理解できる……クソジオンの独立が決まって地球にしがみついていたクソ残党共が宇宙にお帰りになったお陰でシーレーンの安全は確保できたしな」

「ああ、なるほど」

 

先輩の言う通り海運の復活は地球連邦政府にとって重要な事であった。ジオンの独立が決定し地球各地に潜伏していたジオン残党達が続々と帰還したお陰で地球のシーレーンについては比較的安全が確保できており、連邦政府は海運の復活を決定していた。

 

「そもそも全部空輸にするなんてコストがかかり過ぎるんだよ。地球連邦だからできる力技だが、政府だってできれば安く済ませたいだろうよ。わかったら作業を進めろ、俺達には仕事が山積みなんだ。サボっている暇なんてないのさ」

「わかりました」

 

先輩の言葉に納得しつつ新入り作業員は土木作業に集中するのであった。

 

 

 

―独立の準備が進められているサイド3ではネオ・ジオンと共和国軍の統合が行われており、同時並行で進められている軍縮では……―

 

「……アイツらも軍縮してるのか」

 

昼食を取っていた新入り作業員はテレビで放送されているサイド3の軍縮のニュースを見て少しだけシンパシーを感じていた。

 

「俺みたいに追い出される奴等が多いんだろうなぁ」

「そりゃあそうだ、クソジオン共だって予算の問題がある。一年戦争並の軍の規模なんて維持できるわけないぜ。アイツらも所詮地球圏に複数あるサイドの1つでしかないからな」

 

新入り作業員の言葉に先輩は同意する。サイド3は裕福ではあったが地球連邦と比較すれば国力は大幅に劣っており、ネオ・ジオンやジオン残党達を纏めて原隊復帰させる余裕などなかった。

 

「でもまたアイツらが攻めてきたら政府はどうするつもりなんですかね?」

「それはないだろ、アイツらが同じスペースノイド達をぶっ殺して地球にコロニーを落としてでも切望していた独立は達成できたんだぞ?なんで独立したのにまた戦いを挑むんだよ、いくらクソジオンでもそこまで馬鹿じゃないだろ」

「そうですね、そう願いたいですよ」

 

新入り作業員の杞憂に先輩は苦笑していた。

 

「それにクソジオンが血迷ってまた戦争になっても大丈夫さ。連邦は数を用意して囲んで叩けばいいだけだ。それで問題なく勝てるんだからな」

「それはそうですけど。でもジオンのニュータイプは脅威ですよ?」

「そんなもの政府のお偉いさんだって理解してるだろ。きっと対抗策を用意してるだろうさ」

「対抗策?」

「ああ、俺の想像だがバケモンにはバケモンをぶつけるんだろうよ……ア・バオア・クー攻略に参加した時に俺は見たんだ。白い悪魔と赤い彗星の一騎打ちをな。あんなバケモン共に対抗するにはこちらもバケモンを用意するしかないと俺は思うぜ」

 

先輩の過去を知って新入り作業員は思わず驚いていた。

 

「よく生きてましたね先輩」

「へへっ、まあザクを3機ほど落とした後赤い彗星にやられて、大破したジムで必死に死んだふりをしてたんだけどな」

「いや生きていただけでも十分スゴイですって。よければもっと話を聞かせてくださいよ」

「おお、そうか。じゃあ俺がソロモンの悪夢とかいうクソッたれのせいで死にかけたあの観艦式についてだな……」

 

その後話が盛り上がった二人は昼休憩が過ぎた事に気付いて慌てて作業を再開し、何とか本日分のノルマを達成する事が出来たのであった。

 

 

 

 

「俺は納得いかないぞッ!」

「おいおい、気持ちはわかるが落ち着けよ」

 

所変わってサイド3のズムシティでは昼間から酒を飲んでいる中年男性の2人組がいた。

 

「折角地球から帰還したというのに!軍に俺達の居場所がないだとぉ!?」

「落ち着けって、軍縮するんだから仕方ないだろ」

 

彼等は一年戦争後も地球に潜伏していたジオン残党であり、ジオンの独立が決まり意気揚々とサイド3に帰還したのだが、彼らが望んでいた原隊復帰は認められずこうして酒場で管を巻いていたのだ。

 

「あの小娘め!俺達の国を想う気持ちを無視するとは!」

「ハマーン殿にとっては知った事じゃないよなそれ。俺達はお偉いさんの決定に従うしかないのさ」

「キャスバル殿が言うならばまだ納得できたというのに!」

「本当かぁ?赤い彗星殿の主導でもこんな感じで結局愚痴ってたんじゃないか?」

「……………まぁ、恐らくそうなるとは思うが」

「ハハッ、だろうな。お姉さん、ビールを追加で頼む」

 

彼らは酒を飲みつつ軍縮を進めるハマーンへの悪口で盛り上がっていた。

 

「だいたい何なのだあの小娘は。俺の娘と大して歳が変わらないのにキャスバル殿の補佐などできるのか!?」

「今まで出来てたようだし大丈夫だろうさ。そういえば娘さんとは無事再会できたのか?」

「ああ、昨日再会できたよ……家族を放って地球に残った俺の事を妻と娘は暖かく迎えてくれた。もう感無量でその日はずっと泣いていたよ!笑いたければ笑え!」

「笑わないさ、家族が待っててくれてよかったなぁ」

 

 

 

「でもこれは疑問なんだが、ドズル中将の妾の妹でしかない小娘が何故ミネバ様の後見人をしていたのだ?いくら何でも小娘以外にも適任者はいただろうに。誰もおかしいとは思わなかったのか?」

「いなかったんだろうさ。十代の少女がいきなりアクシズの指導者になるなんてハマーン殿も大変だっただろうな」

「……小娘も、ハマーンも苦労しているのはわかる。わかるのだがしかし」

 

 

 

「本当はお前もわかっているだろう?俺達の悲願だった独立は達成できたんだ。もう軍隊は最低限残すだけで十分なのさ。お前の事を待っていてくれた家族の為にも愚痴ってないで前を向くべきだと思うぞ」

「……………ああ、わかってる。わかっているさ。ロンメル隊のような例外を除いて、地球に引き籠っていた俺達ロートル共を軍に置いておく余裕などジオンにはない事はな」

「ああ、そうだ。でも軍に必要とされないのはいい事じゃないか。俺達はもう戦わなくていいって事だしな」

「そうか、そうだな……ガキみたいに喚いても仕方ないか」

 

最終的に軍縮を受け入れた彼らは前を向いて進む事にした。

 

「なら再就職頑張らないとな。政府の帰還兵支援プログラムで支援金は貰っているから今はまだ余裕があるけど、今後家族を養うためには定職に就かないとマズいぞ」

「わかってるさ、俺としてはMSに乗れる仕事なら何でもいいんだが」

「じゃあ建設作業員なんてどうだ?それとこのパンフレットに載っている資源採掘の仕事はなかなか高給取りだぞ」

「うーむ、確かに魅力的だが数ヶ月単位で出張するのがな、俺はもう家族の傍から離れないと決めたんだ」

「おいおい、さっき何でもいいって言ってたじゃないか……まあ今すぐ決めなくてもいいだろ。酒を飲んで酔ってる状態で考えても碌な事にはならないし、明日じっくり考えればいいさ」

 

その後彼らは落ち着いた雰囲気で雑談をした後解散した。そして家族が待つ家に帰った翌日から再就職活動に励むのであった。

 

 

 

 

 

<人物紹介>

●新入り作業員

→地球連邦軍の軍縮により軍を退役して再就職した。地球連邦軍に入隊したのは宇宙世紀0086年で、グリプス戦役ではティターンズとエゥーゴの争いに関わる事なく対岸の火事として呑気に見ていた。ジオンが独立した事については「ムカつくけど別に独立してもいいよ、平和が一番だよな」と考えているようだ。

 

 先輩作業員が歴戦の兵士だったと知って尊敬している。

 

 

 

●先輩

→新入り作業員と同じく元地球連邦軍人でMSパイロットだった。一年戦争から従軍していたベテラン兵士であり、ア・バオア・クー攻略戦ではアムロとシャアの一騎打ちを見てニュータイプはバケモンだと確信する。一年戦争後も地球連邦軍人として活動していたがデラーズ紛争にてソロモンの観艦式に参加し危うく死にかけ、もう軍人はコリゴリだとデラーズ紛争後に退役していた。最終的な撃墜スコアはMS11機、ムサイ級1隻。

 

 ジオンについては地球にコロニーを落として故郷を滅茶苦茶にし、戦後になっても残党が暴れて地球の復興を邪魔していたクソ迷惑な連中だと嫌っている。

 

 

 

●軍縮でリストラされた元地球連邦軍人達

→MS乗りは再就職に困らなかったが、元歩兵達は再就職に苦労しており清掃業者や駐車場の管理人などになっている。ごく一部は反地球連邦を掲げてテロリストになったが、ジオン残党よりは大分大人しいので地球連邦政府は脅威とは認識していない模様。

 

 

 

●地球連邦政府のニュータイプ対抗策

→先輩の想像通りバケモンにはバケモンをぶつけるつもりのようだ。彼らについては次回のお話しで書く予定です。

 

 

 

●地球

→原作に比べれば地球の復興を優先できるだけの余裕があるがボロボロである。一年戦争のコロニー落としで海運が壊滅状態なので政府は復旧作業を行っている。

 

 

 

●ジオン帰還兵の中年男性2人組

→最終的に無事に再就職できた。警備会社に就職した二人は警備用のMSとしてハイザックを受領し「これザクに似てるけど胴体が連邦みたいだな……あっでもすごく乗りやすい。地球で乗っていたザクⅡとは性能が雲泥の差だわ」とMSの進歩を実感していた。仕事に励みつつ再会した家族と仲良く過ごしているようだ。

 

 

 

●ジオン帰還兵達

→意気揚々と地球から帰還したら原隊復帰を認められず納得できない者が続出した。しかしジオンの独立が達成されたので軍に残る必要はない事は理解しており、軍縮を主導したハマーンに不満を覚えつつも再就職活動を頑張っている。帰還兵達については政府が支援プログラムで社会復帰を促している模様。




Gジェネエターナルが楽しいので前作のような更新速度は難しいですが頑張って書いていこうと思います。



今後は少しずつ投稿していく予定ですがよろしくお願いします。
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