「ニュータイプ兵士の研究ですか?」
「うむ」
地球圏ではジオン、連邦共に軍縮を行い復興に向けて本格的に動き始めていた頃、地球に存在するとあるニュータイプ研究所の所長が地球連邦政府上層部に呼び出されていた。
「君も知っているかもしれないが、ネオ・ジオンはニュータイプのクローン兵士を製造し運用しているようだ。件のクローン兵士は既存の強化人間よりも強力であり、驚異的な戦果を上げている事が判明している」
「その対抗策として我々にクローン兵士の研究を行えと?」
「そうだ、今の地球圏は戦後復興に集中していて当分の間は戦争が起きる事はないだろうが、仮想敵国となるジオンへの対抗策を用意するべきだと我々は判断した……ジオンのニュータイプ研究は地球連邦よりも進んでいるが、これ以上遅れを取るわけにはいかんのだよ」
「わかりました、我々ムラサメ研究所にお任せください!」
「ああ、よろしく頼むよ」
政府上層部の依頼についてムラサメ研究所の所長は喜んで受け入れるのであった。
「諸君、我々ムラサメ研究所はクローン兵士の研究を行う事になった」
研究所に戻った所長は研究者達を集めて会議を行っていた。研究者達はジオンがクローン兵士を実用化している事に驚きつつも、ニュータイプのクローンを造るという今までとは違うアプローチの仕方に興奮した様子を見せていた。
「面白いですね、クローン兵士、それもニュータイプのクローンをジオンは製造して運用しているとは。ジオンは一体誰のクローンを造ったのですか?」
「気になるかね。聞いて驚くなよ……あの赤い彗星だよ」
所長の発言に研究者達は驚愕の表情を浮かべる。
「あ、赤い彗星?ジオン・ズム・ダイクンの遺児である赤い彗星のクローンを製造したと?しかし、まさか指導者のクローンを兵士として運用するとは」
「うむ、ジオンのニュータイプ研究者達の思い切りの良さについては私も感心しているよ。普通なら考えはしても実行には移さない」
困惑する研究者の言葉に所長は同意する……まあ赤い彗星のクローンであるフィーリアスを製造したのはミンファ博士の独断で、アクシズ上層部は知らなかったのだがムラサメ研究所の研究者達がそれを知るわけがなかった。
「件のクローン兵士は深緑の彗星という渾名を持ち驚異的な能力を見せている。地球連邦政府が調査し判明しただけでもその性能は圧倒的だ」
所長は端末を操作しモニターにフィーリアスの写真を表示させる。
「クローン兵士はエゥーゴの旗艦であるアーガマを制圧し、鹵獲したZガンダムに乗ってエゥーゴの掃討作戦で活躍して、そして白い悪魔と戦って生き延びた。最新鋭MSであるZZガンダムに乗った白い悪魔と戦い生き延びている時点でその強さは折り紙付きだな」
モニターに映った深緑の彗星の戦闘の様子を見て研究者達は感嘆の声をあげる。彼等からみても件のクローン兵士の実力は驚異的であった。
「このクローン兵士の性能についてはわかってくれただろう。だがそれ以上に問題なのはニュータイプ兵士が量産されるかもしれないという事だ」
「量産、ですか」
「そうだ、従来の強化人間の製造方法では素体となる人間の出来に左右され性能が安定せず、数を揃える事が難しい。だがクローン兵士ならばニュータイプを安定して量産できるのだろう……それも深緑の彗星レベルのニュータイプをだ」
「ッ」
所長の言葉に研究者達は息を呑む。
「ニュータイプはたとえ単騎でも戦場では脅威となる。ましてやこのレベルのニュータイプで数を揃えてくればオールドタイプの軍人達では碌に対抗できんだろう。地球連邦政府が我々にクローン兵士の研究を依頼したのは当然だな。戦争の気配がないとしても、地球連邦の仮想敵となるジオンが既にクローン兵士を実用化し運用している以上、連邦もニュータイプのクローン兵士を研究する必要があるのだよ」
「……政府が我々に依頼した理由はわかりました。では我々ムラサメ研究所は誰のクローンを製造する予定なのですか?」
納得した様子の研究者達だが、一体誰のクローンを造るのかとふと疑問を覚える。
「地球連邦軍を代表するスーパーエースだよ。ジオンが赤い彗星のクローンを造るのならば、地球連邦は白い悪魔のクローンで対抗するまでだ」
地球連邦軍、いや地球圏を代表するスーパーエースであり民衆がニュータイプと聞けば最初に想像するであろう人物……白い悪魔ことアムロ・レイのクローンを造ると聞いて研究者達がどよめく。
「あのアムロ・レイを!?」
「うむ、必要となるアムロ・レイのDNAについては政府から提供されているから心配しなくていい……君達が一丸となって貢献してくれる事を期待する。では早速準備に取り掛かれ」
所長の鶴の一声によってムラサメ研究所の研究者達はクローン兵士の研究を行う事になったのであった。
「まさかクローン兵士とはね、昔からタブーとされてきた人間のクローンを製造するなんてジオンは思い切りがいいなあ」
「そうね、しかも指導者のクローンを兵士として運用するなんて、相変わらずジオンの発想には驚かされるわ」
その後クローン製造の下準備を終えた主任の一人であるナミカー・コーネルは一息ついた後ムラサメ研究所の同僚……もとい研究成果の一つである強化人間の女性と会話していた。
「で、なんで僕を呼び出したのさ?旧式の強化人間なんてそろそろ廃棄されてもおかしくないと覚悟して来たらクローン製造に立ち会う事になるなんて……死ぬ前に見ておけって事?」
「そういうわけじゃないわ、貴方にはこれから製造されるクローンの保護者役を頼みたいのよ」
「は?」
ナミカー主任の言葉を聞いて強化人間の女性は困惑する。
「僕にクローンアムロ君の保護者をやれと?こういうのって保母さんとか雇うべきじゃないの?」
「情報漏洩するリスクを考えたら身内を使う方がいいでしょう?それに緊急時にはすぐ処分できるから問題ないし」
「ああ、僕ならスイッチ一つで始末できるから仮に証拠隠滅する事になっても楽に処分できるって事か。人の心はないのかな?」
「人の心があったならニュータイプ研究なんて出来ないわね」
「確かにそれもそうか」
強化人間は溜息をついた後この任務を受ける事にした。
「はぁ、わかったよ。誠心誠意努めさせていただきますよ、僕に拒否権はないしね……でも僕なんか使わずに主任が保護者として振る舞えばよかったんじゃないの?」
「私に母親役なんて務まるわけがないでしょ」
「自分で言ってて悲しくならない?まあヒステリックな主任じゃ無理だとは僕も思うけどさ」
「張り倒すわよ」
「……………」
「へぇ、あの白い悪魔も人工子宮でふわふわ浮いてる赤ん坊の頃は可愛らしいものだね〜……でも成長速度おかしくない?二週間でここまで大きくなれるものなの?」
「成長促進剤を使っているからよ。元々は牛や豚といった家畜のクローン製造を速める為に使われてた代物だけど、人間にも効果があるのは宇宙世紀初期の実験で確認済みだから安心していいわよ」
「ああ、既に試していたんだ。家畜のクローンについては食肉の為とはわかるけど人間を造った理由は?」
「臓器移植の為のスペア用としてらしいわね」
「うーん、臓器移植の為の使い捨てって倫理的にアウトだと思うけど、クローン兵士を製造するよりはマシ……なのかなぁ?」
「お姉ちゃん!」
「おーよしよし、ニュー君は可愛いね〜。操縦技術は可愛くないけど」
「ニュータイプの覚醒はまだ出来てないようね。人工子宮から出てまだ二週間だし気長に待ちましょう」
「この子まだニュータイプになってないのに模擬戦では僕といい勝負してるんだけどおかしくない?」
「本格的な強化はまだ行ってないけど、MSの操縦技術はオリジナル譲りなのでしょうね。あの白い悪魔のクローンなのだし強いのは当然ね」
「スゴいな白い悪魔」
「うわぁ!やられる!」
「嫌味か!危なげなく避けてるよね!?」
「本当に強いわね。覚醒する前からいい勝負してたし、ニュータイプに覚醒したら旧式の強化人間では勝てないわよねぇ」
「これでほぼ無強化っておかしいでしょ!僕のプライドズタズタなんだけど!?」
「えっと、ゴメンねお姉ちゃん」
「別に謝らなくていいわよニュー。悪いのはそこの不甲斐ないお姉さんよ」
「うぬぅ」
「後ろに目をつければいい?」
「うん、お姉ちゃんもそうしなよ」
「こ、これが天才……!抽象的過ぎて何言っているのか全然わからない!」
「いや、要するにニュータイプなんだから視覚に頼らず感覚に従えって事じゃないかしら?」
「うん!」
「気軽に言ってくれるなぁ」
「そこだっ!」
「おっかしいなぁ。サイコミュを動かしても全然へっちゃらみたいなんだけど。僕や後輩は少し動かすだけでも疲労困憊になったのに」
「スゴい、あの子はニュータイプ兵士として完璧だわ!今までムラサメ研究所が造った強化人間達を凌駕している!……碌に強化せずにこれなら本格的に強化すればどこまで強くなるのかしら!」
「まあ僕が束になっても敵わないと思うし、オールドタイプじゃ対抗できないのは確かだろうね」
「なんかさぁ、ニュー君のせいで僕や後輩達の存在意義がないんだけど。もうこれから製造する強化人間は全部アムロクローンでいいんじゃないかな?」
「子供みたいに不貞腐れないの……あれほどの強さを見たら不貞腐れるのはわかるけどね」
アムロ・レイのクローンことニュー・ムラサメの姉となった強化人間の女性はニューの完成度を見て机に突っ伏して不貞腐れていた。
「ニューの成績は驚異的だわ。あの子の成果を見て所長や政府高官も満足していたし、これでムラサメ研究所は今後も政府お抱えのニュータイプ研究所として存続できるでしょうね」
「それはよかった。ティターンズに派遣された時に主任がやらかしたせいでムラサメ研究所は存続の危機を迎えてたけど、無事存続できて僕も助かったよ。僕の居場所はここにしかないからね……それと主任も名誉挽回できてよかったね」
「あれは私のせいじゃないわよ。ティターンズの指揮官が無茶な運用を強制したからよ」
ナミカー主任と会話しつつ強化人間の女性はふと気になっていた事を尋ねる。
「でも本当に量産しないのアムロクローン。ニュー君がダース単位で揃ったら地球連邦に敵なしだと思うけど」
「今の地球連邦は軍縮を進めているのだから使い道がないわ。ジオンも当分の間は戦争する余裕なんてないもの。というかそんなに量産してどうするのよ。どう考えても持て余して廃棄するしかないでしょ」
「あ、それもそうか。じゃあニュー君はどうなるのさ?」
「優秀な被検体として今後も頑張ってもらう事になるわね。それと貴方も引き続きあの子の姉役を頼むわ。あの子は貴方の事がとても気に入ったようだし。よかったわね、廃棄を免れて」
「うわーすごくうれしいなー……いやまあ、旧式の強化人間が未だに処分されずに済んでいるのは凄い幸運だとはわかってるけどさぁ」
「わかっているなら今後もあの子の姉として頑張りなさい」
「はいはい」
強化人間の女性は釈然としない思いを抱きつつも、今後もニュー・ムラサメの姉として振る舞う事を決意するのであった。
「お姉ちゃん!また模擬戦やろ!」
「はいはいわかったよニュー君……ちょっと手加減してくれると嬉しいなぁ」
<人物紹介>
●地球連邦政府
→今のところは地球圏の復興を最優先しているが、ジオンがニュータイプのクローン兵士を運用していると察知し念の為ムラサメ研究所に依頼をした。そして製造されたアムロクローンの強さを見てこれでいざという時はジオンに対抗できるなと一安心した模様。
仮に地球連邦が本気になれば白い悪魔軍団が爆誕する事になるだろう。
●ムラサメ研究所
→サイコガンダムが暴れた件で色々追求され存続危機に陥っていたが、ニュータイプ研究の続行を望む地球連邦政府が上手く誤魔化してくれた。政府からクローン兵士の研究を依頼され試したところクソつよニュータイプ兵士が製造できたので満足している。
●ナミカー・コーネル
→アニメZガンダムでフォウ・ムラサメの側にいた女研究者である。サイコガンダムの件で立場が危うくなったのでアムロクローンの製造と研究に全力を出し、無事結果を出して首がつながりホッとする。
自分が親になるのは無理だと自覚はあったので強化人間に押し付けることにした。
●強化人間の女性
→ムラサメ研究所で製造された強化人間の一人で僕っ娘。強さはゲーツ並であり、一般兵に比べれば強いがアムロやシャア相手では瞬殺される程度の強さである。旧式だが精神的に安定している為処分される事なくサイコミュの試験等に従事している。ナミカーとは結構長い付き合いである。
アムロクローンの姉役を務めている。アムロクローンからは慕われており悪い気はしない模様。
●アムロのクローン(ニュー・ムラサメ)
→ムラサメ研究所が製造したクローン兵士第一号でありクローンガチャSSR。素養自体は0.95アムロであり、今後強化手術を受ければ1.1アムロも夢ではないだろう。フィーリアスでも本気で戦わなければ死ぬ強い子である。名前のニューはνから取られた。
性格は冒険王版アムロ。姉となった強化人間の女性についてはとても慕っているが、仮に死んでも数日したら立ち直れるオリジナル譲りの心のつえぇ奴である。
●クローン兵士
→本来の歴史では地球連邦が造る事はなかったのだが、この世界ではフィーリアス君のせいでニュータイプのクローン量産に意欲を見せた。
仮に第二の一年戦争が起きれば連邦とジオンでクローン兵士達の殺し合いが当たり前となるクローン大戦が勃発し、そして最終的に数の暴力によって地球連邦が勝利するだろう。
Gジェネエターナルが楽しいので前作のような更新速度は難しいですが頑張って書いていこうと思います。
今後は少しずつ投稿していく予定ですがよろしくお願いします。