「エゥーゴのガンダム、ハンガーに固定しました!」
「よし、第一班はフィーリアス曹長の機体のチェックと整備を!残りの手の空いている者は集まってくれ!鹵獲したガンダムのデータ解析を行うぞ!」
エンドラ隊の旗艦エンドラではフィーリアス曹長が乗る高機動型ゲルググがZガンダムを伴って帰還し俄に慌ただしくなっていた。エンドラ直属の整備班はゲルググの整備とZガンダムの解析を並行して行っていた。
「しかしあのアーガマを無傷で制圧できるなんて」
「ああ、多少の犠牲は覚悟していたんだがな、まさか碌に抵抗せず投降してくるとは」
「連中も限界だったんだろうよ。何せあの決戦から半月も経ってないんだ。消耗した戦力の補充なんてすぐにできなかったのさ」
Zガンダムのデータ解析をしつつ整備班達は雑談していた。彼等の言う通り今回アーガマが素直に投降したのはジュドーが乗るZガンダムが一蹴されたのもあるが、何よりもグリプス戦役での最終決戦により疲弊していたからである。
「この機体、スゴイな。少し解析しただけでもウチのガザCとは比べ物にならないくらい優秀だ」
「いや、それはそうだろ。同じ可変MSでもガザCは数を揃える事を優先した量産機で、コイツはエゥーゴのエース向けの高性能機だぞ。比較したらダメだって」
鹵獲されたZガンダムは関節を撃ち抜かれただけで胴体部分やジェネレーター等は無事だったので解析は順調に進んでいた。
「これ、よく勝てたな。旧式のゲルググじゃまず勝負にならないぞ」
「まあフィーリアス曹長はニュータイプだからな」
「マジかよニュータイプってスゴイなぁ。あんな小さな子供なのに……コイツの部品はアーガマにあるかな?」
「当然あるだろうさ。部品はアーガマから持ってくれば修理できるだろう。整備方法についてはアーガマの整備士を尋問すればいい」
エンドラの整備班達は明るい表情を浮かべて作業を進めていた。
「コイツは解析が済み次第ウチのパイロットが乗る事になるだろう。エース向けの高性能機を遊ばせる余裕はウチにはないし」
「だったら曹長が乗る事になるんじゃないか?鹵獲した本人が乗るのが筋ってもんさ」
「まあそうなるだろうな。しかし深緑の彗星にガンダムか、敵さんに同情するよ……そういえばフィーリアス曹長は?」
雑談をしている中でフィーリアス曹長について話題が及ぶ。
「曹長はあれだ、お母さんに甘えているよ」
「ああ……」
そして曹長がいつものように甘えている事を知った整備班達は苦笑するのであった。
「フィーリアスゥ〜〜、貴方ったら本当に凄いわね〜。流石私の自慢の息子だわ〜」
「うん、えへへ」
一方その頃、エンドラの一室ではフィーリアス・ワン曹長が自身の創造者であり母親役の女科学者ミンファ・ワンに褒められ満足気な様子を見せていた。
「まさか一年戦争の旧式MSで新型ガンダムを一蹴するなんて!他の凡庸なニュータイプや強化人間じゃそんな事できないわよ」
「そうかな?」
「そうよ!貴方は胸を張って自慢しても許されるわ!」
「そっかぁ!」
女科学者から頬ずりされながら絶賛されたフィーリアス曹長は笑顔を浮かべる。
「坊や、マシュマー様から呼ばれているのでしょ?そろそろ行かないとダメよ」
「あ、そうだった。じゃあ行ってきますお母さん」
フィーリアス曹長が部屋から退出するのを手を振りながら見送った女科学者は、彼の姿が消えると待ち人に向き直って頭を下げる。
「お待たせして申し訳ありませんグレミー様」
「いや、別に構わないとも。彼が精神的に安定するのなら少しくらい待つさ」
待ち人のグレミー・トトは苦笑しつつ女科学者からの謝罪を受け入れる。
「深緑の彗星と呼ばれるネオ・ジオンが誇るスーパーエースもまだまだ母親を求める子供なのだな」
「お恥ずかしい話ですが、何分あの子はまだ精神的に未熟でして……」
「まあ製造されてまだ一年程度だ。精神的に幼いのは仕方ないだろう」
フィーリアス曹長の事情を知っているグレミーは笑って許した。
「しかしそれ以外は全く問題ないな。他の強化人間達と比べても精神的に非常に安定している。ニュータイプ兵士としては既に完成されているよ」
「ありがとうございますグレミー様。あの子はいずれオリジナルの赤い彗星を超えてくれると私は確信しております!」
「……うむ、そうだな」
(いや、今の段階で既に超えているのだが)
グレミーはハマーン・カーンが秘匿している極秘の情報……グリプス戦役での最終決戦でアクシズがシャア・アズナブルを確保した事、彼が乗っていたMSを撃破したのがシャアのクローンであるフィーリアス曹長である事を独自の伝手で知っていた。極秘情報なので目の前の女科学者に教える事はなかったが、思わず何とも言えない表情を浮かべてしまう。
「グレミー様?」
「いや、何でもない。ああそうだ、フィーリアス曹長から何か要望はなかったか?アーガマを確保した功労者である彼から何か要望があれば私に出来る範囲で叶えようではないか」
グレミーはとりあえず誤魔化しつつ女科学者と会話を続ける。
「そういえば、フィーリアス曹長と戦った民間人の少年だが」
「はい、検査を行いましたが、あの子の報告やグレミー様の予想通りあの少年……ジュドー・アーシタはニュータイプでした」
「なるほど、まあそうだろうな。フィーリアス曹長に一蹴されていたが、民間人の少年がいきなりガンダムに乗って操縦できる時点で異常だ」
会話の中でジュドーについて言及される。
「軽く検査しましたがニュータイプとしてかなり高い素養を持っているようでして。強化人間の素体として欲しいと同僚から頼まれています」
「いや、それはダメだ。マシュマー様から彼等民間人については丁重に扱うよう厳命されている。手を出すな」
「わかりました。彼もマシュマー様に保護されて幸運ですね」
ネオ・ジオンに保護されたジュドー達だったが、女科学者の言う通りマシュマー・セロに保護された事は幸運であった。
なんの後ろ盾も持たない少年など問答無用で強化人間の素体として利用されてもおかしくはなかったが、変態でもハマーンの騎士として振る舞い一応は良識もあるマシュマーはそれを決して許さなかった。女科学者もそれを理解しているので特に惜しむ事もなく納得したのであった。
「そうか、フィーリアス曹長はMSに不満があるのだな?」
「はい、機体の反応が鈍いと言う事です」
女科学者との会話を終えたグレミーは上官のマシュマーへ報告を行っていた。
「彼の不満は当然だな。旧式のゲルググでは彼の要求には応えられないのは当たり前だ」
「マシュマー様、今回鹵獲したエゥーゴのガンダムですが、解析が完了次第フィーリアス曹長に与えては如何でしょうか?あのエース専用機なら曹長も満足するでしょう」
「うむ、私もそう思う。ネオ・ジオンのエースパイロットが一年戦争時代の旧式機に乗ったままでは軍の威信に関わるし、兵士達の士気にも関わる……後で私からハマーン様にご説明しよう」
マシュマー・セロは変態であるが上官としては真っ当であり、グレミーの提案であるZガンダムをフィーリアス曹長に渡すという案をあっさりと了承した。現場判断だがマシュマーは責任は自分にあるとしてハマーンに説明するつもりであった。
「マシュマー様、アーガマの曳航準備が完了しました」
「うむ、では予定通り我々エンドラ隊はアクシズに帰還する!」
そして色々あったもののエンドラ隊は鹵獲したアーガマを引き連れて意気揚々とアクシズに帰還するのであった。
<人物紹介>
●シャアのクローン(フィーリアス・ワン)
→お母さんに褒められて満足し、高機動型ゲルググからガンダムに機種転換する事になり喜んだ。真面目に頑張ってよかったなぁと呑気に考えている。
●女科学者
→我が子が活躍したのでいっぱい褒めてあげた。結果を出し続けるフィーリアスの事は大変可愛がっている。でもニュータイプ研究者の例に漏れず外道であり、自分が外道という自覚は一応ある。
●グレミー・トト
→シャアのクローン強いなあ、自分の部下に欲しいなと考えている。ネオ・ジオン上司ガチャではまあまあ当たりの部類ではある。フィーリアスが存分に甘えているのも見てほんの少しだけ羨ましかったとか。
●マシュマー・セロ
→変態だがネオ・ジオン上司ガチャの中では大当たりの人。部下から要望があれば出来る限り応えてあげたり、ジュドー達民間人を丁重に扱う人間の鑑である。
フィーリアスにZガンダムを渡す件はマシュマーがハマーンを説得したおかげで、不承不承ながらも了承される事になった。
●Zガンダム
→データ解析が完了次第フィーリアスに渡されることになった。カラーリングは深緑色である。整備方法等についてはアーガマのクルーから聞き出したので問題ない。
●ジュドー達とアーガマのクルー達
→ジュドー達民間人はアクシズで保護された後ネオ・ジオンに志願()する事になる予定。実質強制だが問答無用でモルモットにされるよりは遥かにマシだろう。ネオ・ジオンとしてはかなり有情な対応である。
アーガマのクルー達は尋問された後拘留された。ハマーンがとある人物を説得する為に利用される事になる。説得が失敗したら?とある廃人がニュータイプ研究者達によって再利用されるだろう。
Gジェネエターナルとまどドラが楽しいので前作のような更新速度は難しいですが頑張って書いていこうと思います。
今後は少しずつ投稿していく予定ですがよろしくお願いします。