「……うーん」
独立に向けて準備を進めているサイド3こと新生ジオン公国に所属するニュータイプ研究者の一人であるミンファ博士は、現在ニュータイプ研究に従事しつつもどこかやる気がない様子を見せていた。
「どうしたんだねミンファ君、いつものような熱意がないとは君らしくもない」
「先輩すみません」
先輩研究者から心配されたミンファ博士は謝りつつ溜息をつく。
「何といいますか、夢が叶ったのはいい事なのですが」
「ふむ、フィーリアス君の事かね?」
「ええ、あの子という最高傑作を製造できた事はとても誇らしいですし、私から離れて自立を始めた事で精神的に成長し完全無欠の戦士として完成する事は喜ばしい事です」
ミンファ博士の言葉を先輩研究者は興味深そうに聞いていた。
「今後技術が進歩しMSが進化し続けても、それを動かすのが人間である限りはあの子はずっと最強のニュータイプ兵士として存在し続けるでしょう。研究データについては報告済みですし、ジオンがやろうと思えばあの子の量産も出来る……私の夢だった赤い彗星のクローンを造り最強のニュータイプ兵士を造りだすという夢は叶ったんですよ」
「ああなるほど、新しい目標が見つからず研究意欲が湧かないのだね?」
「そうなりますかねぇ」
夢が叶ったミンファ博士がスランプ状態に陥っていたのを察した先輩研究者は納得した様子を見せる。
「確かに君は赤い彗星こそ最強のニュータイプ兵士だと普段から熱弁していたし、フィーリアス君によってそれを証明できた。夢が叶って燃え尽きるのはわかるよ、でも君はまだまだ若いしこれからじゃないかね?」
「そうなんですけどねー……あの子以上の傑作を造れる気がしないんですよ」
先輩研究者の慰めを聞いてミンファ博士は考え込む。
「それにジオンの独立が達成されてニュータイプ兵士を用意する必要がなくなりましたよね。ニュータイプの研究については今後も続けられるでしょうが、ニュータイプ兵士の研究・製造は無理でしょうし」
「そうだね、プルシリーズ達が廃棄される事なく新しい身分を用意されているしシャア総帥は新しくニュータイプ兵士を造る事は許可しないだろうな」
シャア総帥の命令により既に量産されていたプルシリーズ達は新しい身分を与えられ人間として扱われるようになっており、プルシリーズ達は困惑しつつも人間扱いされる事に喜び新しい人生を歩み始めていた。ちなみにシャア総帥がその決断をしたのは周囲の人間達、特に総帥のお気に入りと呼ばれるニュータイプの説得によるものである。
「じゃあ何をすればいいんでしょうか……?」
「なぁに、そうすぐ決めなくてもいいさ。未来について悩むのは若者の特権だよ」
頭を悩ませてるミンファ博士を見て先輩研究者は苦笑するのであった。
「ウキキ」
「おお見たまえミンファ君、本当に猿がニュータイプになっているぞ」
「へぇ、確かにサイコミュが反応してますね」
その後ミンファ博士達は、E計画の研究者達から提供されたニュータイプ猿の実験を見て興味深い様子を見せていた。
「直感も研ぎ澄まされていますしサイコミュを動かす事ができるとは……猿でもニュータイプになれるんですねぇ」
「まあサイコミュの動きは滅茶苦茶だし、命令も単純な物しか理解できないからニュータイプ兵士としては微妙だね。鉄砲玉にするにしか使い道がないな」
「先輩、それは仕方ありませんよ。お猿さんに複雑な命令を理解しろなんて無理ですよ。ニュータイプになっても知能はそのままなようですし」
「アハハ、それはわかっているのだけどね」
会話を続ける内にニュータイプ論について話題が及ぶ。
「しかしジオン・ズム・ダイクンのニュータイプ論は猿にも適応されるとはねぇ。一部の狂信者達は受け入れられないだろうな」
「ジオン・ズム・ダイクンが提唱したニュータイプと、世間一般で言われるニュータイプは別物だと私は考えますけどね。後から出てきた異能者をニュータイプに当てはめるとか、ジオン・ズム・ダイクンも迷惑だと思いますよ。そもそもニュータイプ論って曖昧な代物ですし、宗教のように絶対視する必要はないでしょうに」
「ハハハ、君の歯に衣着せぬ物言いは私も気に入っているが、それを公共の場で言わないようにね」
「それはわかってます」
その後もニュータイプ猿の実験を眺めつつミンファ博士達は研究者として議論をするのであった。
「先輩!いい事を思い付きました!」
「どうしたのだね急に。元気なのはいい事だと思うが」
一ヶ月後、興奮した様子のミンファ博士を見て先輩研究者は困惑する。
「猿がニュータイプになれるのですから、人間のオールドタイプもニュータイプになれると思うんですよ!猿がなれたんですよ猿が!」
「ええと、オールドタイプがニュータイプになれると?」
「はい!猿でもニュータイプになれるサイコミュ装置の構想についてはこんな感じです!」
モニターに映し出された図についてミンファ博士が説明を始める。
「脳の特定の部位を刺激し、サイコミュの補助を受ける事によって疑似的にニュータイプとして覚醒させるのです!」
「ふむ、面白い発想だね。オールドタイプを疑似的にニュータイプにする装置か。猿で実験してみようか」
「もう試しましたよ!なんか上手くいきました!」
「えぇ……?」
ミンファ博士の言葉に先輩研究者は再度困惑する。
「実験データはこちらです!」
「うわ、本当だ。猿で結果が出ているじゃないか……これは、使えるかもしれないな。他の研究者達も集めて会議をしよう」
実験データを見た先輩研究者は急遽同僚を集めて会議をする事にしたのであった。
「これが、ニュータイプの世界なのかッ!」
半年後、完成したオールドタイプを補助するサイコミュ装置……シュッツラーダーを使った模擬戦が行われていた。
「隊長、後ろにファンネルが!うわっ!?」
「ニキ!各機、ファンネルに気を取られるな!ファンネルの攻撃を躱しつつ目の前の敵に集中しろ!」
撃墜された部下の一人を見つつ模擬戦に参加していたロンメル隊の指揮官であるロンメル大佐は必死に敵を迎撃する。
「左、右、下、いやフェイントか!……ええい、敵意を感じ取れるようになったのはいいが、避けるのに精一杯で碌に反撃も出来んとは不甲斐ない!」
自分を責めるロンメル大佐であったが、客観的に見ればロンメル隊はかなり善戦していた。なにせ最強クラスのニュータイプを相手にオールドタイプのロンメル隊で勝負が成立している時点で驚異的であった。
「流石は砂漠の勇者達だ、ここまで梃子摺るとは思わなかった……だがこれで決めさせてもらおう!」
「ッ!迎撃するぞ!」
急接近する敵を感じ取りロンメル隊は迎撃せんと待ち構えるが……現実は非情であった。
「そこだ、うぁ!?」「後ろッ!ぐぉぉ!?」「速い!?」「こ、これが赤い彗星……!」
部下達はある程度抵抗できたものの、相手に一度も攻撃を当てる事が出来ず撃墜されていく。
「これ以上はやらせん!」
ビームランサーとビームトマホークの二刀流で斬りかかったロンメル大佐のドライセンは数合ほど斬り合いを行い、絶好の勝機を見出す。
「これならば回避でき、なぁ!?」
いざ斬りかからんとしたロンメル大佐であったが、相手が斬り合う寸前に放棄していたバズーカから発射された砲弾を察知し慌てて回避を行う。
「いや、これはフェイント……!?」
「勘がよくなったのも一長一短だな」
そして一瞬の隙を見せたロンメル大佐のドライセンは敵機に斬り捨てられ撃墜判定となり、ロンメル隊は模擬戦で敗北したのであった。
「……流石は本物のニュータイプですな。我々のような機械頼りのニュータイプ擬きでは傷一つ負わせる事ができないとは」
「ロンメル大佐、そう自分達を卑下しなくていい。君達は強かった」
模擬戦が終了し、ロンメル大佐は自分達の不甲斐なさを嘆きつつも対戦相手である赤い彗星……シャア総帥の腕前に感嘆していた。
「余裕そうに見えるがこれでもギリギリでな、特に最後の斬り合いは少し肝が冷えたよ……シュッツラーダーか。オールドタイプのパイロットをここまで強化できるとは悪くないな。エース向けに量産させるとしよう」
「ええ、我々オールドタイプでもニュータイプにある程度対抗できるようになれるこの装置は軍の強化に役立つでしょう」
新型サイコミュの有用性を理解したロンメル大佐はシュッツラーダーを評価しつつも何か言いたげな様子を見せていたが、最終的に意を決して尋ねる事にした。
「しかし、その、何故シャア総帥が模擬戦に参加しておられるのですか?」
「深い理由はないさ、偶には身体を動かしたくてな。いい運動になったよ」
「……そうですか」
釈然としない思いを抱きつつもロンメル大佐は軍人として沈黙するのであった。
<人物紹介>
●ミンファ博士
→三つ編み瓶底眼鏡で20代前半の0.4シロッコ。最強のニュータイプ兵士を製造できて夢が叶ったと若干燃え尽き症候群になっていたが、猿がニュータイプになったのを見て「猿がニュータイプになれるならオールドタイプでもなれるでしょ!」と好奇心が刺激され復活した。
ジオン・ズム・ダイクンのニュータイプ論と世間一般で言われるニュータイプは別物だと考えている。
●先輩研究者
→嫌な顔せずミンファ博士のフォローをする人間の鑑であり、人体実験をしても眉一つ動かさない人間の屑。ミンファ博士の実験データを見てこれは使えそうだと同僚を集めて会議する研究者の鑑でもある。
●ニュータイプ猿
→ニュータイプ研究の為に使われている。サイコミュを一応動かせるが所詮猿なので動きは雑だし、複雑な命令は理解できないのでニュータイプ兵士としては微妙である。まあニュータイプになっても猿は猿なので仕方ないだろう。
●プルシリーズ
→カミーユのお陰で人間として扱われる事になった。プルシリーズ達はカミーユにとても感謝しているようだ。
●ジオン・ズム・ダイクン
→ジオンの国父であり故人。ニュータイプ論を提唱したが、自分の死後に出てきたニュータイプ達を見たら困惑し宇宙猫になるだろうと思われる。
●ロンメル大佐とロンメル隊
→ミネバ王女の親衛隊として頑張っている。模擬戦で新型サイコミュ装置の力に感心しつつも、シャア総帥の強さを実感し本物のニュータイプって凄いなぁ(小並感)となっていた。赤い彗星相手にロンメル隊は10分持ちこたえた模様。
新型サイコミュ装置の補助を受けたロンメル大佐は0.8アムロの強さである。
●シャア・アズナブル
→なんか面白そうな装置を開発していると聞いて興味を持ち、ストレス発散も兼ねて模擬戦に参加した。新型サイコミュ装置の力に感心しエース向けに量産させる事を決めた。
模擬戦で乗った機体は専用のザクⅢにファンネルを搭載した特別仕様の機体。
●シュッツラーダー
→0.4シロッコであるミンファ博士が開発したオールドタイプを一時的にニュータイプ擬きにできるサイコミュ装置。ドイツ語で補助輪と呼ぶ。
フィーリアスやプルシリーズ、ニュータイプ猿達の研究データを参考に脳の一部を刺激してサイコミュに補助させる事で相手の敵意や殺意をオールドタイプでも感じ取れるようになった。だが感じ取れるのは敵意と殺意のみであり、本物のニュータイプのように相手と分かり合う事はできない。一応ファンネルを動かせるようになるが本物のニュータイプに比べれば遥かに劣る動きしかできない。0.4シロッコではこれが限界であり、シロッコならもっと洗練された装置が作れただろう。
ちなみにサイコフレームはまだ開発されていないので、サイコフレームを使えば性能は向上するかもしれない。だがいくらオールドタイプを強化したところで赤い彗星や白い悪魔には決して敵わないのが現実である。
Gジェネエターナルが楽しいので前作のような更新速度は難しいですが頑張って書いていこうと思います。
今後は少しずつ投稿していく予定ですがよろしくお願いします。