「……なんか、物足りないな」
サイド3のズムシティにある学校の教室にてツヴァイ・プル……プルツーは机に突っ伏して気怠い表情を浮かべていた。彼女はニュータイプ兵士であるプルシリーズの一人としてネオ・ジオンで製造された一人であったが、ネオ・ジオンの働きによってサイド3が新生ジオン公国として独立する事が決まりお役御免となっていた。
とあるニュータイプの説得を受けたシャア総帥の意向によりプルシリーズ達は軍の備品ではなく人間として扱われるようになり、彼女達は新しい身分を与えられ環境の変化に戸惑いつつも、一人の人間として扱われる事を喜び新生活を楽しんでいたのであった。
「私、いや私達は恵まれている。本来なら不要となったクローン兵士は廃棄されてもおかしくなかった。それが身分を用意されて一般人として暮らせるなんて本当に幸運なんだ。それはわかっているんだけどな」
プルツーことツヴァイは他のプルシリーズ達と違い少しだけ不満な様子を見せていた。クローン兵士が廃棄される事なく軍から離れて学校生活を送る事が非常に幸運であるとは理解していたものの、軍にいた頃の刺激に満ちた日々に比べて平和な学校生活は退屈極まりないと感じていたのだ。
「私は今のジオン軍では必要ないのか?……ないんだろうな」
自分を妹扱いしてくるフィーリアス・アズナブルの顔を思い返してツヴァイは何とも言えない表情を浮かべる。ツヴァイから見たフィーリアスは戦場を共にした信頼できる戦友であったが、自分を凌駕する強さを持つ彼について複雑な感情を抱いていた。
「アイツくらい強くなければダメか。それにアイツも出鱈目だがシャア総帥や白い悪魔も理不尽な強さだった。あのお二人は強化手術を受けてないのに強過ぎるだろう……ハァ、大して強くもないニュータイプ兵士なんか必要ないよなぁ」
フィーリアスのオリジナルであるシャア総帥と、連邦の白い悪魔であるアムロ・レイのコンビに模擬戦で戦い惨敗した苦い記憶を思い出したツヴァイは乾いた笑みを浮かべる。
ちなみに二人の理不尽な強さを痛感したツヴァイはプライドが木っ端微塵にされ自分なんか大した事ないなと攻撃的な立ち振る舞いをやめて随分と大人しくなっていた……まあ比較対象の彼等がおかしいだけで彼女もニュータイプ兵士として十分な強さを持ち、地球圏でも上位の腕前があるのだが彼女が知る由もなかった。
「でも一般人として暮らすと言っても何をすればいいんだ?ネオ・ジオンにいた頃は上官の命令に従っていればよかったが、これからは自分で考える必要があるし……ダメだ、将来についてとか何も思いつかないぞ。マズいなコレは」
「ツヴァイさん、何か悩み事があるみたいだけど大丈夫?」
「ああいや、大丈夫だ。心配しなくていい」
暫く考え込んでいたツヴァイは自分の進路や将来について漠然とした不安を覚えて思わず頭を抱えていたが、クラスメイトから心配されて気を取り直すのであった。
「もー、何だそんな事?ツヴァイったら考えすぎだよ~」
「オリジナルが能天気過ぎるだけだと思うけどな」
「あ、またオリジナルって言った!お姉ちゃんって呼ぶようにいつも言ってるでしょ!」
「え、いやお前は私のオリジナルだろ?」
「オリジナルじゃない!お姉ちゃん!」
「ああもう、わかった、わかったよお姉ちゃん」
「うん、それでよろしい!」
学校から帰宅したツヴァイは同居するエルピー・プルに自分の悩みを相談しており、プルは妹の悩みを聞いて笑いつつも相談に乗っていた。
「自分の将来とかそんな今すぐ決めなくてもいいのに」
「オリジ、お姉ちゃんはパティシエになるって決めてるじゃないか」
「私はそうだけどツヴァイは特にやりたい事があるわけじゃないでしょ?これからじっくり考えればいいよ」
「そうなのか?」
「そうだよ!」
ツヴァイの悩みについてプルは急ぐ必要はないのだしじっくり考えればいいと諭す。
「そんな呑気に考えていいのか?」
「いいんだよ!学校にいる他の人達を見てみなよ、ツヴァイみたいに難しい顔して考えてる人なんている?いないでしょ」
「交友関係がないからわからないな、最低限の会話はするけど、他人にそこまで興味はないし」
「あー、うん、そっか。ツヴァイは将来を考えるよりまずは学校で友達を作る事を目指した方がいいと思うな。それに将来なんて今の学校生活で決めなくても、高校や大学の時に決めれば大丈夫だよ」
「えっ」
プルの言葉を聞いてツヴァイは少しだけ困惑する。
「とりあえずコミュニケーションを取るようにしなくちゃ。そういえばツヴァイって気になる男の人とかいるの?」
「別にいないが、この前学校の帰りにクラスメイトの男から告白されたな」
「へぇ!告白されたんだ!ねぇねぇ、その子どんな子だったの!?」
「忘れた、特に興味もなかったし、お前の事なんて知らないし気持ち悪いから消えろって言ったら泣いて走ってたのは覚えてるけど」
「……流石にそれは言い過ぎじゃないかな。謝った方がいいと思うよ」
「そんな事言われても顔覚えてないぞ」
その後ツヴァイの学校生活について色々と聞いたプルは「うん、ツヴァイは私がいないとダメだね!お姉ちゃんに任せなさい!」と張り切った様子を見せており、ツヴァイはプルの決意を見て大いに困惑するのであった。
「カミーユ、体調は大丈夫?」
「心配しなくていいよファ、リハビリもほとんど終わって調子は随分とよくなってるから」
プル達が姉妹仲良く過ごしている頃、ズムシティで一番大きな病院ではカミーユが院内を散歩していた。戦友でありガールフレンドのファ・ユイリィの心配にカミーユは笑って答える程体調は回復していた。
「まあMSに乗れと言われたら難しいけど。随分と鈍っているだろうなぁ」
「地球圏は平和になったしカミーユがMSに乗る必要はないわ。それにクワトロ大尉、じゃなくてシャア総帥が絶対に認めないと思うわよ?」
「冗談だって。本気になるなよ」
カミーユの冗談にファは苦笑しつつ会話を続けており、二人は穏やかな時間を楽しんでいた。
「……思えば遠いところまで来たわね。グリーンノアでカミーユがティターンズの人を殴ったと思ったら、エゥーゴの一員としてティターンズと戦う事になって、そしてティターンズに勝てたと思ったらカミーユが大変な事になって、クワトロ大尉はネオ・ジオンの総帥になってエゥーゴを滅ぼした。怒涛の展開だったわね、本当によく生きてたわ私達」
「うん、そうだな。僕もこんな事になるなんて予想できなかった」
ファの言葉を聞いたカミーユは当時を思い返してしみじみとした表情を浮かべて同意する。ティターンズとエゥーゴの争いに参加し無事に生き延びた事は幸運だったと二人は理解していた。
「シャア総帥のお陰で私達は捕虜になっても丁重に扱われた、あの人が色々と手配してくれてカミーユは快復できた……ねぇカミーユ、シャア総帥のクローンの子、フィーリアス君ってどんな子だったの?」
「クワトロ大尉によく似てるけど、性格は全然違ってたよ。無邪気で大らかというか、図々しいというか」
「フフッ、シャア総帥も結構図々しい人だと思うけどね」
「それは僕もそう思う……ごめんよファ、僕のせいでサイド3に居残る事になるなんて」
穏やかな様子で会話を続けていたカミーユだったが、不意に真顔になるとファに謝罪していた。
「なんだ、そんな事気にしなくていいのに。私は自分の意志でカミーユに付いて行く事を決めたのだし後悔はしていないわ。カミーユは気にせずシャア総帥……いや、クワトロ大尉を支えてあげて」
「うん、ありがとう。あの人は思い詰めたら何をするかわからない危なっかしい人だし、アムロさんと一緒にクワトロ大尉を支える事にするよ」
「あら、国の指導者を危なっかしいっていうのはマズいわよ?不敬罪で捕まっちゃうかも」
「確かにそうだな、でも本当に危なっかしい人だからなぁ」
ファの気遣いに感謝しつつカミーユは今後もシャア総帥を支える事を決めるのであった。
「ところでカミーユ、話は変わるのだけど最近小さな女の子達を侍らしてるけど浮気?」
「やめてくれ、浮気じゃないよ。彼女達は僕の事を命の恩人だと言って護ろうとするんだ。別にそんな事しなくてもいいと言ってるけど話を聞かなくてさ」
「ウフフ、冗談よ。プルシリーズの子達が自分達の命を救ってくれた恩人であるカミーユを慕うのは当然よね……でも中には本気で惚れ込んでいる子もいるようだけど」
「麻疹みたいなものだよ、時間が経てば落ち着いてくれるさ」
「ふーん、そうだといいけどね」
<人物紹介>
●ツヴァイ(プルツー)
→新しい身分を与えられ一人の人間として学校生活を送っている。再調整された結果攻撃的な態度は控えめになった。ニュータイプ兵士として戦っていた頃と比べて学校生活は退屈だと感じているようだがいずれ慣れるだろう。将来については今は特に考えていないが、なんだかんだ上手くやっていけると思われる。
顔はいいので男子生徒にモテるがいつも塩対応である。好きな異性は特にいない。フィーリアス?頼れる戦友だけどマザコンなので論外のようだ。
●エルピー・プル
→ツヴァイと一緒に暮らしつつ学校生活を楽しんでいる。ツヴァイの事は可愛い妹であり、自分の事はお姉ちゃんと呼ぶように指示している。ツヴァイの学校生活を聞いて姉としてサポートせねばと気合を入れた。将来の夢はパティシエ。
美少女なので当然モテる。好きな異性はジュドーお兄ちゃん。フィーリアス?可愛い弟であり恋愛感情は一切ない模様。
●プルシリーズ達
→カミーユのお陰で人間として扱われるようになり皆学校生活を楽しんでいる。プルシリーズ達はカミーユを恩人と慕っており、中には本気で惚れ込んでいる子もいるようだ。
●カミーユ・ビダン
→リハビリも大体終わって体調も大分よくなった。ガールフレンドのファと一緒に過ごす事が多い。クワトロ大尉もといシャア総帥は危なっかしい人なので今後も支えてあげようと考える人間の鑑である。
●ファ・ユイリィ
→カミーユの戦友でガールフレンド。カミーユの傍にいる事を望みサイド3に残った。廃人状態から快復したカミーユを見てホッとする。シャア総帥の事は自分達を守るためエゥーゴを裏切ったのだと知っており感謝している。
プルシリーズ達については恩人であるカミーユを慕うのは当然だと理解しているが、カミーユに本気で惚れ込んでいる子がいるのは女の勘で察しており、カミーユを渡すつもりは一切ない。
Gジェネエターナルが楽しいので前作のような更新速度は難しいですが頑張って書いていこうと思います。
今後は少しずつ投稿していく予定ですがよろしくお願いします。