「新型MSの開発を?」
「そうだ、ジオンの新型MSに対抗できる機体の開発を頼む」
サイド3が新生ジオン公国として独立の準備を進めている頃、地球連邦軍はアナハイムに新型MSの開発を依頼していた。依頼を受けたアナハイムのMS開発部門の責任者はビジネスチャンスに内心興奮しつつも表に出す事はなく、表面上は冷静な様子で話を聞いていた。
「承知致しました。我々アナハイムにお任せください!」
「よろしく頼む。ああそうだ、開発するMSについては条件があるのだ」
「条件、ですか?」
意気揚々と依頼を受け入れたアナハイムの責任者であったが、地球連邦軍から条件を提示され困惑する。
「こちらが新型MSに求める条件だ」
「こ、これは…………わかりました。社内に持ち帰って検討します」
要望書に書かれていた内容にアナハイムの責任者は一瞬目を開きつつも、表向きは動揺する事なく会議を終えるのであった。
「いや、無理ですよコレ」
「なんで安請け合いしたんですか」
「弱音を吐くな!始まる前から諦めるんじゃない!」
その後部下達を集め会議を行ったアナハイムの責任者は部下達から文句を言われつつも新型MSの開発を始めようとしていた。
「ですが主任、軍から要求された条件は無理です。頭頂高を16mに制限するなんて」
「そうですよ、しかもそのサイズで性能は既存の機体より高性能、生産コストと維持費用を安く済ませられる機体を開発だなんて……軍の要求は無茶苦茶ですよ」
部下達は困惑しつつ軍の要望書を読む。そこに書かれていたのはサイズを小型化した上で安価で高性能な機体の開発が求められており、「軍は好き勝手言ってくれるなぁ」と部下達はウンザリした表情を浮かべていた。
「何故軍はいきなり小型化を要求してきたのでしょうか?」
「MSの性能が向上するのと比例して機体は大型化しているからな。一年戦争時のMSに比べれば今の機体は一回り程大きくなった。それに伴い現場の負担や維持費用は増大しているから機体の小型化を求めるのはわからなくもない」
部下の疑問に責任者は答える。彼の言う通り今の地球圏で一線を張る機体は連邦軍やネオ・ジオンを問わず皆大型化しており、現場や政府から機体の小型化を求められるのは当然であった。
「我々が独自に開発を進めているジェガンについてだが、軍はジェガンの性能や汎用性を評価しつつも量産機として採用するのは消極的でな、ジェガンの小型化が条件として提示されたのだ」
「ジェガンがダメだと言うのですか!?」
「いや、性能については評価されている。少数生産は認められたからな。後は性能を維持しつつ小型化すればいい」
「無茶苦茶だ、そんな簡単ではありませんよ小型化は」
責任者の言葉を聞いて部下達は苦い顔をする。MSの小型化は技術的に難しく難航が予想されたからだ。
「頭頂高20m級を16mにまでサイズダウンさせるなんて。本気で小型化するならまずは核融合炉の小型化から始めないと」
「核融合炉の出力を維持したまま小型化とは、それだけでも一大プロジェクトですよ」
「そうですよ、それに単純に機体を小型化しても機体バランスの調整やOSの修正等がありますし……最低でも2~3年は時間が掛かりますよ」
「ええい諦めるな!やると言ったらやるのだ!」
問題点が続々と指摘されるも責任者は断固とした表情を浮かべて開発続行を宣言する。
「主任はどうしてそこまで小型MS開発に執着するのですか?もともと機体の大型化を歓迎してましたよね?それに地球連邦政府は軍縮を推し進めているというのに」
「……今の地球圏では復興が優先されている。アナハイムも復興事業に注力して大儲けしているし、我々MS開発部門は規模が縮小された。ここで成果を出して軍を満足させなければ予算は縮小され我々は更に肩身が狭くなるだろう。最悪の場合、結果が出せなかった我々はリストラされるかもしれないのだぞ!」
「「「あー……」」」
責任者の危機感を持った発言を聞いて部下達は納得する。現在のアナハイムは復旧事業に本腰を入れており、莫大な利益を確保していたが、その反面MS開発部門は縮小され以前のような勢いはなくなっていた。
「なるほど確かに、リストラ対象になるのはゴメンですね」
「わかってくれたようだな、ではこれより小型MSの開発を始めよう。諸君らの奮闘に期待しているぞ」
そうして彼等アナハイムのMS開発部門は小型MS開発に着手するのであった。
「気軽に言ってくれるよなぁ。小型MSの開発だなんて」
「ああ、今までのMS開発とは毛色が違う。開発は難航するだろうな……何せウチは技術者がゴッソリと抜けてしまっているし」
その後部下達は苦い表情を浮かべ雑談をしていた。
「あーあ、ジオンに戻ったアイツらがいればなぁ」
「仕方ないだろ、彼等が古巣に、サイド3に戻るのは当然の事さ」
ネオ・ジオンによってサイド3が新生ジオン公国として独立する事になった影響はアナハイムにも及んでいた。一年戦争後にサイド3のジオニック社などはアナハイムに合併されアナハイムの社員として働いていたが、今回ジオンが独立する事が決まったのを聞いた彼等はサイド3の悲願が達成されたのを喜び、アナハイムを退職してジオンに戻ろうと考える者が続出したのだ。
「そういえば主任が言ってた話って本当なのかな?ジオンの連中が小型MSの開発を進めていて、既に開発は大詰めを迎えているって」
「あの危機感を持った顔を見るに本当だろうな。恐らくネオ・ジオンの連中が主導して開発を進めているんだろう」
「……なぁ、ネオ・ジオンの技術力おかしくないか?一年戦争後は辺境の暗礁宙域に引き籠ってたくせに、地球圏を代表する大企業であるアナハイムよりも進んだ技術を持ってるっておかしいだろ。技術革新って資金力が物を言うはずだろ?」
「ああ、俺だっておかしいと思う。まああれだろ、ジオン脅威のメカニズムってやつさ。そろそろ主任が戻ってくるはずだ。雑談は止めて仕事に取り掛かろうぜ」
ネオ・ジオン脅威の技術力に困惑しつつも部下達は小型MS開発に集中するのであった。
「核融合炉の小型化は難航していますね」
「試作機が造られたしある程度形にはなっているようだ。核融合炉については引き続き開発を進めてもらい、我々は小型核融合炉の試作機を使う」
「試作機は不具合が多発しているという事ですが……」
「だが悠長に待っている暇はないのだ!」
「今のままですと機体バランスに問題がありますね」
「まあ当然だな、20mからいきなり16mに縮小されたのだ。ただ小型化しただけではそうなるだろう。修正していくぞ」
「武装もジェガンの物は使えませんし、新規に開発する必要がありますね」
「防御面ですが……やはり小型化すると防御に問題が出ますよね」
「仕方ない、ビームコーティングしたシールドを持たせるしかないだろう。ビームシールドは……コイツの出力では到底無理だ。大型MSにすればあるいは」
「それだと本末転倒ですよ。それと小型化によって生じる核融合炉の爆発のリスクが問題です。核爆発の危険性がありますが大丈夫なのでしょうか?」
「我々は軍の要求に応えているだけだ。軍が何とかするだろうさ」
「主任、見てください。サイド3の、新生ジオン公国の建国の様子が中継されていますよ」
「お前達、今は勤務中だぞ。サボっているんじゃない」
「いやそれより見てくださいよ!ジオンの小型MSが宣伝されてるんですよ!」
「何ィ!?…………本当だ。連中は既に小型MSを実用化し量産しているのか!」
「新時代のザク、ザクⅣだそうですよ。ジオンの奴等はザクⅣによっぽど自信があるようですね」
「ぐぬぬぅ……」
「えぇ!?ヘビーガンの量産が決まった!?」
「ああ、軍の高官達がそう決定した。新生ジオン公国の小型MSに対抗するべくヘビーガンの量産を行うと」
「し、しかしヘビーガンはまだ開発が完了したわけではありません。小型核融合炉の開発も一段落し一応形にはなりましたがまだまだ改善点が多く、今の完成度で量産するのは問題がありますよ」
「私だってそれはわかっている。私も今の段階でヘビーガンを出すのは技術者として納得がいかないよ。だが軍の決定を覆す事は出来ないのだ……初期型に不具合が起こるのはよくある話だ。今後少しずつ改善していけばいいさ」
「……ううむ、悪くはない、悪くはないんだが」
新生ジオン公国が独立して1年が経過していた。地球連邦軍に所属するヴァースキ・バジャック大尉は新しく配備された新型MS……地球連邦軍初の小型MSであるヘビーガンに搭乗して習熟訓練を行っていた。
「このサイズでジェガン並みの性能が出せるのは驚異的だ。操作性も素直だし製造コストや維持費用も安いのは軍としても魅力的だろう……だがかなり荒削りだな。少し乗ってみたが不満点が幾つかある。まあ初の小型MSだしこんな物か」
ヴァースキ大尉は何とも言えない表情を浮かべつつ新型MSヘビーガンのテストを行う。そしてテスト中にアラートが鳴りモニターに機体の異常が表示されたヴァースキ大尉は苦い顔をする。
「チッ、また不具合か。コイツはジェガン並の性能だが信頼性はジェガンの足元にも及ばないな。いくら初期型といっても不具合が多発し過ぎだろう……これで真面にジオンの小型MSと戦えるのか?」
文句を言いつつもヘビーガンが配備された事情を知るヴァースキ大尉は開発部に文句を言うつもりはなく、むしろ同情していた。
「まあ仕方ないか、ジオンのザクⅣに対抗する為とはいえ、開発が完了していない機体を無理矢理出せばこうなるよな……今後暫くの間はジオンと戦う事はないから、その間に改良を進めればいい」
その後地球連邦軍の新型MSであるヘビーガンは当初エリート部隊向けに量産され、不具合が多発した事で現場から文句が噴出したものの、時間を掛けて改善が進められた結果信頼できるMSとなり地球連邦軍を支える機体となったのであった。
<人物紹介>
●アナハイムのMS開発部門
→地球連邦軍から小型MSの開発を依頼される。貴重なビジネスチャンスを無駄にはしないと「できらぁ!」と応じて必死に開発に取り組み、色々とあったもののジェガンを小型化したヘビーガンを開発した。開発途中の機体を出す事になり不満を覚えたが仕方ないと割り切り地道な改善を進める事にした。
ヘビーガンの不具合が多発した事で現場から苦情が殺到したものの、事情を知った現場は「それはしゃーない」と同情する者がそこそこいた模様。
●ジェガン
→独自に開発を進めていた機体。原作のジェガン並の性能がある優秀な機体であったが、ジオンが開発を進める小型MSに目が眩んだ地球連邦軍は量産に消極的であり、少数が生産されたものの量産は見送られた悲劇の名機である。
●アナハイム
→地球圏の復興事業を主導し莫大な利益を確保する。ちなみにサイド3が新生ジオン公国として独立する事になりサイド3出身の技術者がアナハイムを退職する事態が続出している。
●ヴァースキ・バジャック大尉(ヤザン・ゲーブル)
→オールドタイプ最強の男。グリプス戦役でティターンズが壊滅しシャングリラコロニーに流れ着いたりして色々あったものの、最終的に地球連邦軍に戻りMSパイロットとして活動している。
初期型ヘビーガンについては性能は悪くないし機体コストも安くていいが信頼性に問題があると微妙な表情を浮かべており、その前に乗っていたジェガンの方がよっぽどいいと思ったとか。
●ヘビーガン
→新生ジオン公国で開発された小型MSザクⅣに地球連邦軍が触発されてフライング登場する事になり、この世界では史実のジェガンポジションとして量産される事になった。性能はジェガン並ではあるが無理矢理小型化を進めた影響で初期型は不具合が多発し苦情が殺到する。
その後地道に改善が進められ信頼できるMSとなり、地球連邦軍を長い間支える事になるのであった。
Gジェネエターナルが楽しいので前作のような更新速度は難しいですが頑張って書いていこうと思います。逆シャアシナリオ楽しみです。
現在別のWARHAMMER二次小説も書いたりしておりますが、今後は少しずつ投稿していく予定なのでよろしくお願いします。