『諸君、遂に我々ジオンは正式に独立する事になった!我が父ジオン・ズム・ダイクンも天国から祝福しているだろう。スペースノイドの地位向上の為にジオン独立を唱えた我が父や、あの一年戦争でジオンの為に戦い散っていった英霊達の為にも、我々新生ジオン公国は団結し未来へと進んでいく義務があるのだ……』
「まさか本当にジオンが独立できるなんてなぁ。ううっ、夢みたいだぜ」
「仕事中に中継映像なんか見るんじゃない。まあ気になるのはよくわかるがな」
宇宙世紀0093年1月1日、この日地球圏にあるサイド3が新生ジオン公国として地球連邦から独立する事になった。スペースノイドの独立、いやジオンの独立という一大イベントは地球圏全域で中継され大勢の人間が中継映像を見ていたのであった。
交易の為に月のフォン・ブラウンからサイド3へ向かっていた輸送船のブリッジでは中継映像の様子を見ていた船員の一人が感動して涙ぐんでおり、同僚が職務怠慢だと注意していた。
「ああすまん、どうしても気になってな。本当ならサイド3で独立式典に参加したかったんだが」
「仕方ないだろ、サイド3への物資の輸送は重要な仕事だしサボるわけにもいかないだろう」
「それはわかっているさ」
本国で見る事ができなかったのを残念に思いつつも船員達は明るい表情で雑談を続ける。一年戦争で達成できなかったジオンの独立が今になって叶った事にサイド3の住民の殆どが喜び歓喜していたのだ。その後も彼等は上司から叱責されるまで呑気な様子で雑談をしていたのであった。
「ネオ・ジオン様々だよ、彼等のお陰でジオンが独立できたんだから」
「いや、ネオ・ジオンの功績も大きいが独立の決め手は地球連邦が弱体化していたからさ。ティターンズとエゥーゴが内ゲバで争ったお陰でネオ・ジオンが漁夫の利を得たんだ……フン、連邦の奴等は一年戦争のジオン軍を内輪揉めばかりする軍隊擬きと蔑んでいたが、奴等に俺達を馬鹿にする資格なんてなかったんだよ」
「ハハッ、確かにな」
「戦友達よ、ヴァルハラで見ているか?俺達の悲願であるジオンの独立が叶ったぞ」
「……」
輸送船の護衛として同行している警備会社の駆逐艦(連邦軍のサラミスが民間に払い下げられた)の格納庫では、MSに乗って待機しているパイロット達が一年戦争で散った戦友達に思いを馳せていた。
「お前達の死は無駄じゃなかったぞ……俺達の戦いもな」
「ああ、そうだな」
パイロット達は一年戦争終結後も地球に残り抵抗を続けていた元ジオン残党であり、ジオンの独立が決まりサイド3へ帰還し軍を退役していたが、彼等はMSの操縦技術を活かして民間警備会社の一員として活動していた。
「できれば軍に残りたかったけどな」
「ロンメル隊のような歴戦の勇者でもない限り軍に俺達ロートルの居場所なんてないさ。さっさと見切りをつけて民間警備会社に就職したのは悪くない判断と思うぞ?」
「それはわかってる。だけど新時代のザクに乗ってみたかったよ」
「今のハイザックだっていい機体じゃないか。前のザクより遥かに高性能だしな」
「おいおい、骨董品の旧式を比較対象にしたらダメだろ。というか今じゃハイザックだって旧式扱いだぞ?」
「マジか、MSの発展速度は凄まじいな」
パイロット達は地球で乗っていた旧式の機体を思い出し苦笑する。ザクⅡやグフなど意地で乗り続けていた機体であったが時代の流れは残酷でありハイザックの足元にも及ばず、パイロット達は今の愛機であるハイザックに満足していた。
「何はともあれジオンの独立は目出度い事だ。サイド3に帰還したら飲みに行こうぜ」
「いいなそれ。どうせなら同じ地球からの帰還組を集めて飲み会でも開くか?」
「おお、それも悪くないな!」
パイロット達はジオンの独立を祝いサイド3に帰ったら盛大に飲んで騒ぐ事を決意したのであった。
「艦長、船員達は気が抜けてしまっているようです。まったく情けないものですな」
「やれやれ、独立を喜ぶ気持ちはわかるが大人としてしっかりしてほしいものだ」
「修正しますか?」
「よせ、我々はもう軍人ではなく民間企業の一員なのだ。鉄拳修正なんてしたらパワハラになるぞ?それに今日ぐらいは見逃してやれ」
輸送船の艦長と副長は吞気な船員達に苦笑しつつジオンの独立を祝っていた。
「しかし独立したのはいいですが、ティターンズやエゥーゴの残党達は投降せず抵抗しているようです」
「まあそうだろうな、我々ジオンに漁夫の利を掻っ攫われて納得できるはずがない。彼等は地球圏の片隅や暗礁宙域に潜んで抵抗を続ける事だろう」
「ええ、我々がそうしたように彼等も戦い続けるでしょう……しかしこうも立場が逆転するとは世の中わからんものですな」
「うむ、それは私も同じ思いだよ」
立場が逆転した事に艦長達は何とも言えない表情を浮かべる。地球圏のジオン残党は殆どがジオン本国に帰還したが、その代わりに地球連邦軍から追い出されたティターンズやエゥーゴの一員、地球連邦政府の決定に反発したテロリスト達が潜伏し抵抗を行っていた。
「地球圏で活動する輸送船への襲撃事件が相次いでいる。彼等も敗北を受け入れ大人しく武装解除してくれればいいのだが」
「……それは難しいかと。何せその、我々は素直に武装解除せず抵抗を続けていましたし、彼等も決して諦めないと思われます」
「はぁ、確かにそうだな」
自分達がそうだったようエゥーゴやカラバの残党達は決して諦めないだろうと確信した艦長達は溜息をつくのであった。
「……………チッ!」
同じ頃地球圏に潜伏し抵抗を続けるエゥーゴ残党のメンバーの一人は、モニターに映る新生ジオン公国の指導者……キャスバル・レム・ダイクンを見て思わず舌打ちをしていた。
「おい、チャンネルを変えてくれ。あの裏切り者の顔を見ると虫唾が走るんだ」
「お気持ちはわかりますが今日はどのチャンネルでもこんな感じですよ」
「いや、流石に一つぐらいはあるだろ。子供向けの教育番組とか」
「確かにありますけど、それを見るくらいならモニターの電源を切った方がいいのでは?」
「……それもそうだな」
部下の提案に素直に従った隊長はモニターの電源を切ると盛大に溜息をつく。
「はぁ、クソッたれな裏切り者を見るとイライラする。酒を飲んで酔い潰れたい気分だ」
「すればいいのでは?我々はもう軍人ではありませんし軍規もないのですから隊長の好きにすればいいかと」
「そういうわけにもいかんだろう。テロリストに墜ちたとはいえ最低限の立ち振る舞いをしなければ」
「隊長は真面目ですねぇ」
マイペースな部下と話をしつつ隊長は今後について考え込んでいた。
「テロリストとして潜伏する事になったが、補給については各地の同志達から融通してもらっている。火星の同志達への補給も問題ないらしいな」
「それだけ連邦政府の決定に反発している人達が多いんですよ。あの一年戦争の結果をなかった事にされてジオンの独立が決まったら、そりゃ内心ブチギレる人達が続出しますよ」
「ああ、そうだな。俺達の戦争は終わっていない。こんな結末は絶対に認められるかよ」
地球圏の同志達から補給を受けている隊長達は今後も抵抗を続ける事を決意するのであった。
「ではいつもの輸送船の襲撃を始めるか。特にサイド3所属の船を優先して狙うぞ」
「了解しました。しかしジオン残党の真似事をする事になるなんてねぇ」
「チッ、奴等の抵抗を嘲笑っていたが、まさか自分達も同じ事をする羽目になるとはな……惨めなものだな」
……サイド3が新生ジオン公国として正式に独立した後も地球圏では問題が山積みであった。地球圏の復興を優先する地球連邦政府と、国として独立した新生ジオン公国は平和を求めており大きな戦乱が発生する事はなく表向きは平穏であったが、小規模な戦闘が各地で頻発する事になる。そして火星ではティターンズとエゥーゴの残党連合軍や、ジオンマーズとレジオンの三つ巴の戦いなど地球圏以外にも火種は存在していた。
「ずっと立ちっぱなしで疲れたな、レイナに慰めてもらおうか。ギュネイは大丈夫だったか?」
「お前相変わらず呑気だなぁオイ」
そんな中でもフィーリアスはマイペースな様子で軍人として活動する事になるのであった。
「シャア総帥に顔はそっくりなのに中身は全然似てないよなお前」
「フッ、お母さんの子だからな」
「ああうん、あのミンファ博士の子供ならこうなるかぁ……」
幕間 「地球圏に訪れた平穏」完
<人物紹介>
●輸送船の船員達
→お仕事中だったが新生ジオン公国独立の中継を見て感極まって泣き出す者がそこそこいた模様。元ジオン軍人であり元ジオン残党。一年戦争後も抵抗を続けていたがネオ・ジオンによってジオンの独立が達成されたので堅気になって運送業者として頑張っている。
ちなみに一年戦争のジオン軍は内ゲバばかりだと地球圏では馬鹿にされていたが、この世界では「地球連邦軍だってティターンズとエゥーゴで内ゲバした挙句ネオ・ジオンに漁夫の利を搔っ攫われてるじゃないか」と言われて沈黙する事になった。
●警備会社のパイロット達
→輸送船の船員達と同じく元ジオン残党。新生ジオン公国軍に自分達ロートルの居場所はないと早い段階で察して警備会社に就職した。支給されたハイザックの性能に満足しつつも「MSの発展速度すごいなー」と思ったとか。
サイド3に帰還した後はジオンの独立を祝ってどんちゃん騒ぎした。
●輸送船の艦長と副長
→潜伏したエゥーゴやティターンズ残党の襲撃を警戒するという数年前と立場が逆転した事に何とも言えない気持ちになった。自分達と同じく彼等もずっと抵抗を続けるだろうなと確信している。
●元エゥーゴの隊長達
→残党として地球圏に潜伏し抵抗を続けている。隊長はエゥーゴ創設当初から参加しブレックス准将とも面識があった歴戦のパイロットである。エゥーゴを裏切ったシャア総帥については存在自体が許せない模様。
●シャアのクローン(フィーリアス・アズナブル)
→士官学校を成績トップで卒業した後も相変わらずマイペースに生きており、レイナとは結婚を前提に交際を続けている。
シャア総帥の若い頃にそっくりだが性格が全然似ていない事をよく揶揄われている。シャア総帥は「私のクローンだが性格は全く似てないな……あの博士の子だし図太い性格になるのは当然か」と納得しているようだ。
●地球圏
→地球連邦政府による地球圏の復興は順調に進んでいるがテロリスト達は抵抗を続けている。
火星?なんか滅茶苦茶な事になってるのは把握しているが連邦政府は地球圏の復興を最優先にしており放置されている。
前作のような更新速度は難しいですが頑張って書いていこうと思います。
現在別のWARHAMMER二次小説も書いたりしておりますが、今後は少しずつ投稿していく予定なのでよろしくお願いします。