アクシズで頑張るシャアのクローン   作:すも

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ふと思いついたネタの続きです。前後編の前編になります。


カイ・シデンのレポート~火星の現状・前編~

「火星への取材かい?」

「ええ、火星の現状についてジャーナリストとして取材しようと思いましてね」

 

宇宙世紀0092年、翌年に行われる新生ジオン公国の独立という一大イベントに地球圏が注目している頃、フリーのジャーナリストであるカイ・シデンは三つ巴の争いが行われているという火星の状況を取材する為に火星行きの輸送船に搭乗していた。

 

「アンタも物好きな人だな。木星程じゃないが距離があるし移動に時間が掛かるから、今から火星に行ったら来年のジオン独立に間に合わないぞ?折角の一大イベントを見逃すなんて」

「別に構いませんよ。ジオンの独立については取材するつもりはありませんでしたし」

「へぇ、シデンさんもジオンの独立が認められないタイプなのか?」

「そういうわけではありませんが、まあ少し思うところがありましてね」

「ふーん、そうかい。でもティターンズとエゥーゴは馬鹿な事をしたもんだよ。ネオ・ジオンに勝利を搔っ攫われて壊滅するなんてな」

「……ええ、そうですね」

 

同乗した火星の入植者の老人と雑談していたカイは一年戦争の出来事を思い返して少し寂しげな様子であったが、グリプス戦役の結末について考えた結果形容し難い表情を浮かべていた。

 

(グリプス戦役でティターンズは敗北したが、エゥーゴも甚大な被害を受けた。そしてその隙を突かれネオ・ジオンが漁夫の利を得た事でエゥーゴとカラバは壊滅、ネオ・ジオンはダカールを制圧し地球連邦政府と取引した結果サイド3は新生ジオン公国として独立する事となった、か……傍から見れば喜劇だな)

 

「ほんと勘弁してほしいよ。ジオンの残党共にもウンザリしていたのに、今度はティターンズとエゥーゴの残党達が火星に来るなんて……地球圏の争いの結果を火星に持ち込まないでほしいもんだ」

「心中お察しします」

 

心底ウンザリした表情を浮かべる入植者の老人にカイは同情していた。自分が彼の立場なら同じような感想になるだろうと理解していたのだ。

 

「何で火星でドンパチやらかすのかねぇ?奴等にも大義があるんだろうが地球圏でやればいいと思うのは私の我儘なのか?」

「……お気の毒に」

 

その後も入植者の老人の愚痴は続き、カイは火星の入植者の貴重な証言と考えて愚痴を聞き続けた結果火星の入植者達に深く同情するのであった。

 

 

 

「ここが火星か、中々悪くないな。宇宙世紀初期から入植者達が頑張り続けた結果火星でも人間が定住できるようになるとはスゴイ。ここまで発展させるのにどれほどの苦労があったのだろう」

 

数ヶ月の航海の後、輸送船は火星に到着した。輸送船から降りたカイは人類が定住できるまで火星を発展させた入植者達に思いをはせ感嘆していた。カイの純粋な称賛を聞いて入植者の老人は顔をほころばせる。

 

「そう言ってくれると私達も頑張ってきた甲斐があったもんだ。噂の木星船団程じゃないが入植初期の火星も過酷な場所でなあ、環境に耐えられず火星の土になった者も大勢いる。殉職者達は皆あのデカいモニュメントの下で眠っているよ」

「あそこが入植者達の墓標なのですか?」

「ああ、あの頃は個別に墓を作ってやる余裕なんてなかったから一纏めにしているのさ」

 

入植者の老人の思い出話を聞きつつ移動していたカイであったが、突然警報が鳴り響き周囲が騒然とする。

 

「ッ、警報か。まさかこれは」

「そうだ、ジオンと連邦の敗残兵共の小競り合いだ。フン、落ち武者共め、相変わらず血の気が多いようだ……そんな警戒しなくていいぞシデンさん。ここでは何時もの事だ」

「いや何時もの事って」

 

老人にそう言われ周囲を見渡したカイは、地球圏から来た人間達が慌てているのとは対照的に、火星の入植者達は落ち着いた様子を見せている事に気付く。入植者達は全員ウンザリしつつも何処か諦めの表情を浮かべていた。

 

「……本当に何時もの事みたいですね。ですが戦闘に巻き込まれる危険性が」

「ここは中立地帯だ。落ち武者共も国際空港があるこの区域を攻撃しないだけの理性は一応ある。ここにまで戦闘が波及する事は……まあ滅多にないから安心してくれ」

「いやまったく安心できないのですが」

 

老人と会話しつつカイは急いで移動するが、その時ふと妙な声を感じ取っていた。

 

―ラ……………ラ……………―

 

「!?……今のは、一体?」

「おいどうしたシデンさん」

「ああいえ、すみません。何か聞こえた気がしたんですが、多分空耳でしょうね」

 

妙な声について幻聴だと判断したカイは老人の指示に従い国際空港を出るのであった。

 

 

 

「おお、あの伝説のホワイトベースのクルーが取材に来るなんてねぇ。アンタ達の活躍は辺境の火星でも有名だよ」

「ありがとうございます。でも俺は大した事はしていませんよ。ホワイトベースの活躍はブライトさんとアムロの2人によるものが大部分ですから」

 

その後カイは火星の中立地帯の繫華街にて入植者達へ取材を行っていた。当初は疑っていた入植者達も老人の取り成しによって警戒を解きインタビューに応じていた。

 

「火星に降り立った直後に警報が鳴り響いていましたが、火星ではよくある事なんですか?」

「そんなものは日常茶飯事だ。でも最近になって本当に酷くなったよ」

「数年前より酷くなったと?」

「ああ、ジオン以外にもティターンズやエゥーゴの敗残兵共まで来てから治安が更に悪化したんだ。連中はしょっちゅう小競り合いをしているし、戦闘の余波で少なくない数の施設が破壊されて……本当に傍迷惑な連中だよ」

 

苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべる入植者達にカイは同情していた。

 

(火星に住む彼等からすればジオンと連邦の争いなんて他人事だものなぁ。地球圏の争いを持ち込まないでほしいという気持ちは本当によくわかる)

 

「そういえば聞いたか?あそこの定食屋のミランダさんの息子夫婦が戦闘に巻き込まれて死んだ話」

「知ってるよ、中立地帯で平然と戦闘を始めた馬鹿共のせいで死んだんだろ?気前のいいミランダ婆さんが憔悴していて見てられなかったよ。お孫さんは助かったのは不幸中の幸いだったな」

「ったく敗残兵共は軍規もクソもないな」

「そりゃそうだ、偉そうな事を言ってるけどアイツらは所詮敗残兵なんだし軍規なんかあるわけないだろ」

 

「……大変なのですね」

「わかってくれるかいシデンさん。俺達も敗残兵共には心底ウンザリしているんだ。出来る事なら俺達の手でブチ殺したいが、奴等の武力は俺達を圧倒しているし返り討ちにされるのがオチだろうな……地球連邦政府は地球圏の事で頭が一杯なようだが火星にも目を向けてほしいよ」

 

火星の混沌とした様子を確認したカイはインタビューを終えて入植者達と別れた後、繫華街を散策しながら考え込んでいた。

 

(地球圏で聞いていた以上に酷い有様だな。地球圏の争いが火星に持ち込まれ無関係な入植者達が巻き込まれるなんて間違っている。この状況を打開するには入植者達だけでは難しいだろう。地球圏から何らかの支援が必要だ)

 

そこまで考えたところでカイは頭を振って溜息をつく。

 

「……無理だろうなぁ。今の地球圏は復興を優先していて火星に手を出す余裕なんかない。地球連邦政府も火星の現状はある程度把握しているだろうが、地球圏の復興を差し置いてわざわざ支援をするなんて酔狂な真似は絶対にしないだろうな。一年戦争の傷跡があまりにも大きすぎる」

「おい」

 

「新生ジオン公国もそうだ。独立国家として準備をしている今はゴタゴタしているし、火星に遠征する余力なんてないだろう。いや待て、彼等の方から火星のジオン残党達を説得すれば……説得できるならもうやっているか。派閥の違いで言う事を聞かないんだろうな」

「おいアンタ」

 

「ならアナハイムが入植者達を支援すれば……残党達に物資を強奪されるだろうな。武力で脅されたら入植者達も従うしかないか。ああもう、本当に残党達は厄介だな」

「んな事はわかってんだよ。火星人共が俺達を鬱陶しく思ってることくらい気付いてるぜ。じゃなくてアンタ、そっち行ったら命の保証はねぇぞ?」

「ッ」

 

突如肩を掴まれたカイは振り返ると、ティターンズの制服を着ている髭の生えた中年男性が呆れた様子で引き留めている事に気付いた。

 

「火星人共から聞いてねえのか?そっちはジオン兵やジオンと繋がっている連中が大勢いるエリアだ。ホワイトベースにいた有名人様が行ったらどんな目に遭うかわかったもんじゃねぇぞ?」

「えっ?あっ、ああ……すみません、不用心でした」

 

元ティターンズの男が心配して自分を引き留めた事を察したカイは素直に感謝する。

 

「んで、伝説のホワイトベースクルーの英雄様は何の御用で火星にいらしたんで?俺が言うのもなんだがよ、観光の為に今の火星に来るのは自殺志願者だと思うぞ?」

「違いますよ、ジャーナリストとして取材に来たんです。火星の現状を知りたくてね」

「ほうそうかい!まあアンタ有名なジャーナリストだしそんな事だろうとは思ったぜ……エゥーゴとカラバの協力者だったアンタなら信用できる。付いてきな、俺達元地球連邦軍人が贔屓にしてる店に案内してやるよ」

 

思わぬ提案に困惑しつつもカイは目の前の元ティターンズの男に付いて行く事を決める。

 

「ええ、わかりました。そこには元エゥーゴの人達もいるんですか?」

「おうよ、ティターンズ、エゥーゴ、カラバ……以前は殺し合ってたが今じゃ同志として上手くやってるぜ。アンタの知り合いもいるかもしれないな」

 

腹を括ったカイは元ティターンズの男と会話しつつ移動するのであった。

 

 

 

 

<人物紹介>

●カイ・シデン

→ジオンの独立に思うところはあるが中立の立場で取材する事を心掛けるジャーナリストの鑑。火星の現状を把握し入植者達に同情する。

 

 

 

●入植者の老人

→宇宙世紀初期から火星の開拓に人生を捧げてきたスゴイ人。火星でもこれだけ大変なんだから木星船団は本当に過酷なんだろうなぁと木星船団を率いるクラックス・ドゥガチを尊敬している。元々ジオンは嫌いだったが最近は地球連邦軍も嫌いになってきた。自分達を巻き込まないでほしいと強く思ったとか。

 

 地球に来ていたのは火星の現状を訴え地球連邦政府に直訴するためである。連邦軍を火星に派遣してほしいと必死に訴えていたが地球連邦政府も余裕はなく、とりあえず物資を提供するとお茶を濁され失意の内に火星に帰還した。

 

 

 

●火星

→元からいたジオンマーズにレジオンとティターンズ&エゥーゴ連合が参加し三つ巴の争いが繰り広げられている。小競り合いが頻発した結果火星の施設が破壊され、入植者達も戦闘の余波で死んでいる模様。勝手に戦え!(火星の入植者達並感)

 

 火星の惨状を知った木星船団のトップは「おおっ……うん……」とドン引きしつつ火星の入植者達に深く同情したようだ。

 

 

 

●元ティターンズの男

→一体誰ナルド・モンシアなんだ……カイが危険地帯に入ろうとするのを心配して引き留めた。火星の入植者達が自分達の事を唾棄しているのは察している。

 

 元ティターンズとしてエゥーゴやカラバへの恨みは既にないが、ジオンについては毛嫌いしている。ジオンマーズにレジオンとティターンズ&エゥーゴ連合については後編で書く予定です。

 

 

 

●謎の声

→一体誰ノクローンノテレパシーナンダロウナー……小説版初代ガンダムではカイさんもニュータイプらしいので多分聞こえるはずです。




前作のような更新速度は難しいですが頑張って書いていこうと思います。



現在別のWARHAMMER二次小説も書いたりしておりますが、今後は少しずつ投稿していく予定なのでよろしくお願いします。
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