「エゥーゴの新型ガンダムですか」
「そうだ、アーガマの捕虜達を尋問した結果、エゥーゴはエンドラ隊が鹵獲したZガンダムを超える新型MSを既に開発していた」
エンドラ隊がアーガマを引き連れてネオ・ジオンの本拠地アクシズに帰還した。エンドラ隊指揮官マシュマー・セロはアクシズの司令部にて、ネオ・ジオンの指導者であるハマーン・カーンと対面していた。
「ラビアンローズ、エゥーゴの補給艦でアナハイムが保有する大型宇宙ドックですな」
「捕虜の話ではラビアンローズにて補給と新型MSの受領を行う予定だったようだ。指導者と精鋭部隊のアーガマがいないエゥーゴなど最早脅威ではないが、万が一という事もある。マシュマー、戻ってきた所悪いが貴様に新しい任務を与える。貴様はエンドラ隊を率いてラビアンローズを制圧し、エゥーゴの新型MSを確保せよ。援軍としてニュータイプ兵士を与えよう」
「承知いたしましたハマーン様!このマシュマー・セロ、貴方の騎士として必ずや任務を成功させる事を誓います!」
「うむ、期待しているぞマシュマー」
「はい!」
ハマーンから笑顔を向けられたマシュマーは思わず昇天しそうになったが、敬愛する主人の前で無様な姿は見せられないと鋼の精神で耐えて部屋を退出したのであった。
「無駄な事を。アーガマが捕虜になったのはエゥーゴも把握している。新型ガンダムも既に別の場所に移されているはずだ」
「まあそうだろうな。貴様の言う通りだよシャア。だが念の為に確認しておくのは大事だろう?例えガンダムを確保できなくてもラビアンローズを制圧し、戦力に加える事が出来れば十分だ」
ハマーンの隣で話を聞いていたネオ・ジオン総帥……シャア・アズナブルは呆れた表情を浮かべていた。
「君の腹心の青年、マシュマー・セロと言ったか。些か変わっているが強化手術でも受けているのか?」
「いや、マシュマーは強化人間ではないが?あの男はアレが素だよ」
「そ、そうなのか……物好きな青年だな」
ハマーンの部下の性癖にシャアは思わず引いてしまう。
「だが帰還してすぐに出撃とは。私のクローンであるフィーリアス曹長に会ってみたかったのだがな」
「紛い物に会う必要などあるのか?それに今のネオ・ジオンに精鋭を遊ばせる余裕はない」
「ジオンに、いや、ジオンの残滓であるネオ・ジオンに兵なしか。世知辛いものだ」
「シャア、今回は聞かなかった事にするが兵達の前でそれを言うなよ」
ハマーンの言う通り今のネオ・ジオンに戦力を遊ばせる余裕はなかった。現在ネオ・ジオン軍は来たるべき地球降下作戦に向けて地球圏の各サイドのコロニーを制圧しており、ラビアンローズ制圧の為に使える部隊がエンドラ隊くらいしかなかったのだ。
元々ジオン軍の残党の一部でしかないアクシズは、一年戦争時のジオン軍と比べたら涙を誘う程に貧弱であった。グリプス戦役では漁夫の利を得る形で戦力を温存する事ができたが、それでも仮に地球連邦軍と正面から戦う事になれば数の暴力によってネオ・ジオンが敗北するだろう。
「しかし地球降下作戦とはな。最初に聞いた時は正気を疑ったが」
「今の疲弊した地球連邦政府相手なら勝算はある。そもそも地球連邦軍とは戦うつもりはない。詳細を聞いて貴様も納得していたはずだが?来たるべき時には貴様も働いてもらうぞシャア」
「わかっているさ」
その後もシャアとハマーンは暫く話し込んでいた……ハマーン・カーンは楽し気な様子を見せており、シャアは内心はどうあれ表向きは穏やかな雰囲気を浮かべていた。
「そういえばハマーン、君が新たに親衛隊に引き入れた民間人の少年だが、彼は中々いいな」
「ああ、ジュドー・アーシタか。シャアも気に入ったのか?」
会話の中でエンドラ隊が連れて来た民間人の少年……ハマーンの親衛隊に配属されたジュドー・アーシタについて話が及ぶ。
「うむ、彼はいい目をしていた。成長したら一廉の人物になるだろうな」
「そうだな、あの少年は見所がある。思わぬ拾い物をしたよ」
そしてジュドー・アーシタの良さについて意見が一致したハマーンとシャアは「「ジュドーいいよね……」」と珍しく裏のない笑顔で雑談していたのであった。
「はあぁ~~~ッ、なぁんでこんな事になっちゃったのかねぇ」
その頃ネオ・ジオンのトップ二人から高評価を受けている親衛隊見習いのジュドー・アーシタは盛大に溜息をついていた。
「おい新入り、手を休めるな」
「ゲッ、わかってますよ先輩」
親衛隊の先輩から注意されたジュドーは嫌々ながらもハマーンから命じられた任務……礼儀作法等の勉強を行っていた。
「あの、なんで俺だけ親衛隊入りなんですか?ジャンク屋のガキがいきなり親衛隊だなんておかしいでしょ」
「さあな、ハマーン様のお考えは私にもわからないよ。だがハマーン様はお前を見て一目で気に入られたようだ」
ジュドーの当然の疑問に褐色肌の先輩親衛隊は苦笑する。
「お前は幸運だよ。ハマーン様の御眼鏡に適って親衛隊入りできるなんて。お前の妹さんもミネバ様のお付きになれたしお前達兄妹は恵まれてるな」
「そうかなぁ?」
「そうだぞ、わかったらハマーン様に感謝しつつ勉強を続けろ。ハマーン様のご期待を裏切るんじゃないぞ」
「はぁい……」
その後もジュドーは先輩から親衛隊として必要な知識を叩き込まれており、妹リィナの為にも頑張っていたのであった。
(ったく、何が幸運なんだか。本当に幸運だったらこんな事にはなってないよ)
勉強から解放されたジュドーは与えられた私室に戻りつつ心の中で愚痴を言う。
(ここは、ネオ・ジオンは異常だ。アイツみたいな子供が兵士として戦っている時点でおかしいし、マシュマーさんは変態だし……いや、悪い人ではないのはわかるけど)
(大人達はまた戦争をするつもりみたいだ。勝手にやればいいけど何で俺やリィナ達が巻き込まれなければならないんだよ!何でこうなっちまったんだ!?)
「……自分のせいじゃん。わざわざ大人達の争いに頭突っ込んだの俺じゃん!?」
心中で愚痴を言い続けていたジュドーは何故こんな状況になったのかと自問自答した結果、一番悪いのは自分だと思わず頭を抱えてしまう。
「あーっ、バカバカ俺のバカッ!なんであのオッサンの誘いに乗ってアーガマに潜入したんだ!」
「……」
「いや本当何考えてたんだよ!軍艦に潜入してMSを盗むとか冷静に考えたら滅茶苦茶だなオイ!?リィナが巻き込まれたらどうするんだよ!ってもう巻き込まれてるし!」
「ふむ、若さ故の過ちか。私もそうだったな」
「こうなった経緯を話したらイリア先輩達から「お前マジかよ」って目で見られるし!いや俺も他人事だったらそんな反応になると思うけどさぁ!ああッ、過去の自分を殴りたい!」
「ジュドー君、そう自分を責めなくていい。若者は失敗しながら成長していくものだ。君はまだ少年なのだから前を向いて進むといい」
「あ、ありがとうございます……ってあれ?聞こえてたんですか?」
「うむ、声に出ていたぞ。少し迂闊だったな」
偶々ジュドーの言葉を聞いていたシャア・アズナブルと護衛の人間達は苦笑しており、一方でとんでもない無礼を働いたとわかったジュドーは顔色を青くする。
「そ、その!すみませんでした!」
「なに、気にしなくていいさ。そんなに怯えなくてもいい」
(なるほど、まるで太陽のような少年だな。ニュータイプだがカミーユとはまた違ったタイプだ。妹の事が第一とは……復讐の為にアルテイシアを捨てた私とは大違いだ)
平謝りするジュドーを落ち着かせつつ、シャアはジュドーの事をすっかり気に入っていたのであった。
「フィーリアス!次の任務では一緒に戦う事になったからよろしくね!」
「うん、プルお姉ちゃんが一緒に戦ってくれるなら心強いよ」
「えっへへ~~、そうでしょ!フィーリアスはお姉ちゃんが守るから安心してよ!」
「うん、ありがとうお姉ちゃん」
アクシズを出発したエンドラ隊では新しく配属されたエルピー・プルがフィーリアス・ワンと一緒に戦う事になった。楽しそうに会話する二人はまるで仲の良い姉弟のようであった。
「まさかプルシリーズのオリジナルが来るなんて。あの子の足を引っ張らなければいいのですけど」
「問題ない。フィーリアス曹長には劣るが彼女もニュータイプ兵士だ」
「あの子一人で十分だとは思いますが……」
「博士、貴方が曹長の事を信頼しているのはわかるが、他の人間と協力する事は軍人として必要不可欠だよ」
二人の様子を見ていたミンファ・ワン研究員の言葉にグレミー・トトは苦笑する。
「幸い彼とエルピー・プルの相性は悪くないようだ。これなら連携については大丈夫だな。個人でも強いニュータイプ兵士が連携を取れば向かうところ敵なしだろう。プルシリーズの性能向上の為にも戦闘データの収集は必要だし、あの二人には活躍してもらわなければ」
「わかっております」
こうしてフィーリアス・ワンは姉を自称するエルピー・プルと共にラビアンローズ制圧作戦に参加する事になったのであった。
<人物紹介>
●エゥーゴの新型ガンダム
→ZZガンダムの事である。アーガマがネオ・ジオンの捕虜になったこの世界では地球に送られるかもしれない。一体誰ムロ・レイが乗るんだ……
●ラビアンローズ
→エンドラ隊の襲撃を受ける事になった。戦闘の様子はキンクリされる。
●マシュマー・セロ
→ハマーン様の騎士。アーガマを制圧した戦功を称えられ勲章をもらい、ハマーン様からお褒めの言葉を頂き有頂天になるも表向きは平静を装う。変態だが真面目で良識がある有能なのだ。その後エンドラの自室にて悶絶する。フィーリアス曹長とエルピー・プルは感応能力でマシュマーの妄想を感じ取りちょっと引いていた模様。
●ハマーン様
→またシャアと一緒に働く事ができてハッピーハッピーな恋する乙女。エンドラ隊が連れ帰った民間人の少年の一人を見て気に入り親衛隊に配属させる。ジュドーいいよね……
●シャア・アズナブル
→ハマーンが鬱陶しいと思いつつ表に出す事はない。ジュドーについてはカミーユとは違うタイプだと思いつつ太陽のような人柄を見てすっかり気に入った。ジュドーいいよね……
ちなみにまだ世間に公表されていないが赤い彗星がアクシズに戻ってきた事はネオ・ジオンでは周知の事実となっており、兵達の士気が上がっている。
●ジュドー・アーシタ
→志願()させられたと思ったらいきなり親衛隊見習いとなって困惑している。どうしてこうなったと思いつつ過去の自分を殴りたいと後悔する。傍から見れば美女の目に留まって親衛隊に引き抜かれて、褐色美女の先輩から指導を受けているという羨ましい環境だが、本人としては全然嬉しくない模様。
ちなみにジュドーの仲間達はアクシズ勤務となり、妹のリィナはミネバ・ザビの侍女見習いとなった。ミネバはアーシタ兄妹の事をとても気に入ったようだ。
●イリア先輩
→ハマーン様の親衛隊の一人。先輩として親衛隊見習いのジュドーを指導している。ジュドーの事は好ましく感じているようだ。だがジュドーがアーガマに潜入してMSを盗もうとした件についてはドン引きした。
●エルピー・プル
→プルシリーズのオリジナル。子供なので我儘な部分があるが、フィーリアスの事は可愛い弟であり守るべき対象である。だがZガンダムに乗った1.3シャアなフィーリアスは別に守ってもらわなくても大丈夫なのだ。でも連携相手としては悪くないのも確かである。
●シャアのクローン(フィーリアス・ワン)
→「お姉ちゃんが来てくれた、僕は嬉しい」と呑気に考えている。プルシリーズへの対抗意識など一切ないので連携プレイも問題なくできるのだ。
●女研究者
→我が子だけでいいのにと思いつつも、プルシリーズのデータ収集にはニュータイプ研究者の一人として協力するつもりである。
Gジェネエターナルとまどドラが楽しいので前作のような更新速度は難しいですが頑張って書いていこうと思います。
今後は少しずつ投稿していく予定ですがよろしくお願いします。