【特別編】逆襲のフィーリアスpart1
「ミンファ博士、貴様ふざけた真似をしてくれたな……貴様は処刑だ。あの紛い物も処分する」
「ふざけんじゃないですよ!どうせ処分するくらいなら好きなようにさせます!行け、行きなさいフィーリアス!大丈夫、貴方はどんな所でも生きていける強い子だわ!」
「亡命ですか?」
「ああ、アクシズからの亡命者だ」
宇宙世紀88年2月末、グリプス戦役が終結しティターンズが壊滅した。決戦を終えた直後のアーガマではブライト大佐がとある亡命者の存在に頭を悩ませていた。
「それにMSパイロット?本当にあんな小さな子が?」
「ああ、信じられないのはわかるが本当のようだ。確認したところ彼のMS操縦技術は卓越している……クワトロ大尉に匹敵する、いやそれ以上かもしれない」
「クワトロ大尉並みですか!?」
アーガマのMSパイロットであるファ・ユイリィは驚愕しつつも自分が抱いていた違和感を訪ねる事にした。
「でも、その、あのフィーリアス君って子はクワトロ大尉によく似てるというか」
「……ユイリィ、これは口外するなよ。彼はアクシズの秘密兵器として開発されたニュータイプ兵士でクワトロ大尉のクローンらしい」
「ッ!?」
苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべるブライト大佐の言葉にファ・ユイリィは絶句する。
「そ、それは本当なんですか?」
「船医のハサン先生が確認したよ。精密検査した結果フィーリアス君は間違いなく強化人間でありクワトロ大尉のクローンだとね」
「そんな……!アクシズは何を考えてるんですか!?」
「ジオンならクローンを造ってもおかしくはないさ。一年戦争でスペースノイドを虐殺し、残党になった後もデラーズ紛争でコロニーを落とした連中が躊躇するものか」
ユイリィは人間のクローンという禁断の存在を製造していたアクシズに怒りを覚えるが、ブライト大佐はジオン残党ならやりかねないと乾いた笑みを浮かべていた。
「彼をどうするつもりなんです?」
「彼は母親の敵討ちとしてアクシズと戦いたいと申し出ている。今のアーガマは満身創痍で優秀なパイロットが加入してくれるのは非常に助かる。彼にはZガンダムを渡すつもりだ」
「そんな、アクシズのスパイかもしれないのに」
亡命者に機体を預けるなど正気の沙汰ではないと困惑するユイリィであったが、ブライト大佐は彼が自分達を裏切る事はないと確信していた。
「……ユイリィも彼の目をみればわかるさ。彼はアクシズと戦う事だけを考えている復讐者だよ。あんな小さな子が暗い目をしているなんてな」
「お兄さん、どうしてここに来たの?死にたいの?」
「あ、あわわわ……」
宇宙世紀88年3月、銃を頭に突き付けられパニック状態になったジュドーはどうしてこうなったのかと自問自答する。野性味あふれる男に唆されてZガンダムを奪おうとアーガマに潜入したジュドー達であったが、突如現れた少年に制圧されてしまったのであった。
「動かないで、殺すよ?」
「ッ」
少年は冷たい目でジュドー達を見ており、少年が本気で自分を殺すつもりだと察したジュドーは恐怖する。
(俺は、俺はリィナを山の手の学校に送りたかっただけなのに!でもコイツ、リィナと同じくらいなのに、なんて暗い目をしてるんだ……)
「リィナって誰?」
「ッ!?い、言うもんか!」
心を読まれた事に戦慄しつつもジュドーは最愛の妹を巻き込ませまいと必死に否定する。
「ふぅん、まあいいや。そこのオジサンはティターンズの人間みたいだけど、どうしてここにいるのかな?」
「俺はまだオジサンじゃねえ!……坊主、お前ただのガキじゃないな。さては強化人間か?」
「そうだよ、でも質問に答えてほしいな」
制圧され無力化された野性味あふれる男……ヤザン・ゲーブルは冷や汗を流しつつもジュドー達とは違い冷静に思考を続けており、目の前の少年が普通の存在ではない事を見抜いていた。
「MSを盗んで売り払って逃走資金にするつもりだったのさ。そこのガキ共は俺に唆されただけの馬鹿なガキ共だ。疑うなら心を読んでみな」
「へぇ、本当みたいだ。オジサンはともかくお兄さん達も無茶な真似をしたね……ユイリィさん達が来たから引き渡すよ。オジサンとお兄さん達は営倉で反省してね」
アーガマのクルー達が駆け寄ってくるのを見たジュドー達は諦めて観念するのであった。
「本気なんですか?彼をZガンダムに乗せるなんて!」
「ああ、自分が滅茶苦茶な事をしている自覚はあるよ。だがもう時間がない。接近してくるネオ・ジオンの新型MSに対抗できるのは彼だけだ……Zガンダム発進準備急げ!」
「フィーリアス・ワン、Zガンダム出ます……ネオ・ジオンは敵だ」
「来たかっ!アーガマのガンダム!このハマーン様の騎士であるマシュマー・セロがお相手しよう!」
アーガマから出撃したZガンダムを見たマシュマーはエンドラ隊の指揮官として迎撃の指示を出しつつ自らMSに乗って出撃していた。
「さて、お手並み拝見といこッ!?」
「なんだ、動きが鈍いや。ただのオールドタイプか」
Zガンダムが急接近したのを見たマシュマーは慌てて迎撃しようとするが、強化人間であるフィーリアスから見ればあまりにも遅い動きであった。
「こ、この殺人的な加速は!?」
「死になよ」
機体のリミッターを解除し驚異的な機動力で白兵戦に持ち込んだZガンダムはビームサーベルを敵MSのコックピットに突き刺す。そしてマシュマーはビームサーベルの熱で蒸発した……指揮官があっさりと殺された事にエンドラ隊のパイロットは硬直するが、フィーリアスは彼らの事情など一切気にせず襲い掛かる。
「な、なんだコイツは!?は、はや」
「弾幕だ!弾幕を張れ!近づけるなぁッ!」
「く、来るなぁ!?」
ガザCに乗るパイロット達は必死に抵抗するがフィーリアスのZガンダムは凄まじい加速をしつつ正確無比な射撃で撃墜していく。そして1分後エンドラ隊のMS達はたった一機のZガンダムによって全滅した。
「よし、後は船を墜とせば……帰還命令?んー、このまま続けたいけどしょうがないなぁ。僕は雇われの身だし我儘言ったらダメだよね」
アーガマから帰還するよう指示を受けたフィーリアスは素直に従い帰還するのであった。
「スゴイ、初めて乗るZガンダムであそこまで動けるなんて」
「ああ、彼の能力は疑っていなかったがまさかここまでとはな」
フィーリアスの驚異的な活躍を見たアーガマの整備クルーは驚愕しつつもネオ・ジオンの攻撃を凌いだ事に安堵していた。
「本当に彼はクワトロ大尉のクローンなんだな」
「赤い彗星の再来を目指したクローン兵士、か。滅茶苦茶だ、狂ってるよネオ・ジオンは」
ブライト大佐達は口外していなかったがフィーリアスがクワトロ大尉のクローンである事は公然の秘密となっており、倫理を完全に投げ捨てたニュータイプのクローン兵士についてクルー達は苦い表情を浮かべる。ブライト大佐の決定に反発しつつもそれ以外の方法がない事を理解しているクルー達はフィーリアスに頼るしかない現状に忸怩たる思いを抱いていた。
「ブライト大佐はあの子をどうするつもりなんだろう?」
「とりあえず身分をでっち上げて地球連邦軍人にするつもりらしいな」
「早く本部から応援が来てほしいよ、今の状況は間違ってる」
「……ああ、そうだな」
子供を前に出して戦わせる事に苦い感情を覚えつつもクルー達はZガンダムの整備のために動き出すのであった。
「そうか、ネオ・ジオンは撤退していないのか」
「はい、観測したところ敵の増援が確認できました。連中は諦めていないようです」
「クソッ、まだやる気なのか」
クルーの報告を受けたブライト大佐は眉間に皺を寄せつつ考え込む。
(先の戦闘はこちらのZガンダムが圧倒していた。シャアのクローンである彼は驚異的な実力がある……だが彼一人だけでは防衛は難しい)
いくら強力なニュータイプのパイロットがいても単機で防衛するのは難しいとブライト大佐は理解していた。そして彼は民間人であるジュドー達の存在を思い出し使えないかと考えたのであった。
(フィーリアス君とユイリィだけではアーガマを護りきれないかもしれない……………拘束した子供達はニュータイプらしい。彼らにも協力してもらえればあるいは?)
「……最悪な気分だ、子供を利用して戦わせるなんて私は地獄に落ちるだろうな」
「はぁ?俺達を雇うだって?」
「うん、人手不足なんだって」
「いやいやいや、俺が言うのもなんだけどさぁ、泥棒を雇うとか正気かよ?」
独房を訪れたフィーリアスとユイリィからの提案にジュドーは思わず困惑する。
「大丈夫だよ、アクシズから亡命した僕でもガンダムに乗れるし泥棒ぐらいなら気にしないでもいいと思うよ?」
「……協力してくれたらMS泥棒の件は不問にするわ」
「う、うーん?」
泥棒の件が不問にされると聞いてジュドーは心を動かす。うまくいけば脱走できるかもしれないと考えるが……
「逃げたら殺すよ?」
「ヒエッ」
「ちょっと、怖がらせちゃダメよ!」
心を読まれたジュドーは観念しつつアーガマに協力する事にした。
「へッ、盗みに入ったガキを雇うなんざアーガマも相当追い詰められてるみたいだなぁ……おい坊主!俺を雇ってみないか?これでも俺は一年戦争から戦っているエースなんだぞ?」
「オジサンを?」
隣の独房で様子を見ていたヤザンがフィーリアス相手に自分を売り込み始める。
「ああ、ティターンズが壊滅したからエゥーゴに再就職しようと思ってな。元ティターンズとしてネオ・ジオンとか名乗るクソッたれなジオン残党の事は気に入らないし、それに戦うのは好きだしな……心が読める坊主なら俺の言葉が事実だとわかるだろう?隣のガキ達より余程役に立てると思うぜ?」
「ふぅん、確かに本当みたいだ。オジサンはオールドタイプだけど強いみたいだし味方になるのなら頼もしいかも。僕の方からブライト大佐に頼んでみますね」
「おぉ、ダメもとで頼んでみた甲斐があったな。よろしく頼む」
「何言ってるの!?元ティターンズの貴方を雇うわけないでしょう!」
勝手に話を進めていく二人にユイリィは慌てて止めるが二人は不思議そうな顔を浮かべて反論する。
「え、でも亡命者の僕がガンダムに乗れますし別にいいんじゃないですか?」
「コソ泥のガキとアクシズの強化人間がOKなんだから、別に元ティターンズが参加してもいいだろうに」
「それはそうだけど、そうなんだけど……!」
「……この船大丈夫なのかよ」
二人の言葉に反論できずユイリィは思わず頭を抱えてしまう。その様子を見ていたジュドーは協力したのは間違いだったかもしれないと不安を覚えるのであった。
<人物紹介>
●フィーリアス君
→製造者兼母親が処刑されて廃棄される直前にアクシズから逃げ出し逆襲ポイントが天元突破した1.3シャア。逃げ足の速さとしぶといのはオリジナル譲りである。ORIGINシャアのような暗い目をしておりネオ・ジオンは敵判定で躊躇なく殺す模様。プルプル言ってる人?敵だね、殺します。
得体の知れない亡命者の子供にZガンダムを預けるのかと思うが、ZZ本編ではMSを盗もうとアーガマに潜入した民間人のジュドーに任せていたし多分大丈夫だろう。
●ハマーン様
→勝手にシャアのクローンを造っていた事を知り激怒した。ミンファ博士を処刑しフィーリアスを廃棄しようとしたが逃げられた。まあクローン兵士一人に何かできるわけないかと楽観視しているようだ。
●ミンファ博士
→この世界では処刑された悲劇の女性……ではない。勝手にシャアのクローン製造してたらそりゃ処刑されるのは当然である。自分が死ぬのはいいが自分の最高傑作が廃棄されるのは我慢できずフィーリアスを逃がしたマッドサイエンティストの鑑である。
●ファ・ユイリィ
→アーガマの数少ないMSパイロットとして頑張っている。シャアのクローンであるフィーリアス君の事は素直ないい子だけどたまに目が怖いと思っている。ジュドーだけでなくヤザンも参加する事になり頭を抱えるが、今は一人でも多く味方が必要だと思い直した。ヤザンが裏切らないか監視している。
●ブライト大佐
→満身創痍のアーガマを率いてネオ・ジオンと戦う軍人の鑑。亡命してきたパイロットがシャアのクローンだと知り絶句するが、すぐに思考を切り替えパイロットとして雇う事にした。フィーリアスの為に身分を偽造している優しいオジサンでもある。ジュドー達を巻き込むことに忸怩たる思いを抱くが他に対案がないからね仕方ないね。
ヤザンについては一人でも多く戦力が増えるなら問題ない!裏切るならフィーリアス君がすぐ処分すると言ってたし多分大丈夫だ!と開き直った模様。
●ジュドー達
→アーガマに潜入した直後フィーリアスに制圧される。強化人間の身体能力に勝てるわけがなかった。その後アーガマに雇われることになったが本当に大丈夫なのか心配なようだ。
フィーリアスの事は暗い目をしていると苦手に思いつつも何かあったんだろうなと同情している人間の鑑達である。
●ヤザン
→オールドタイプ最強候補の男。フィーリアスを一目見てただの子供じゃないと察していた。ダメもとで売り込んでみたらOKが出たのでアーガマに参加する事になり「いやそれでいいのかよ」と困惑していた。
その後フィーリアスがシャアのクローンだと知って少し引いていた。野獣のような男だが良識はあるのだ。
●マシュマー
→殺意MAXの1.3シャアに襲われ戦死した。相手が悪かった。ちなみにエンドラ隊のMS部隊は壊滅状態である。生き残ったパイロットは「まるで彗星みたいだった」と恐怖に震えていた。
●Zガンダム
→この時期はまだZZガンダムが届いてないのでアーガマの最高戦力である。一発も被弾してないがフィーリアスがリミッターを解除して殺人的な加速をしたせいで機体に少しダメージを受けた模様。現在整備班が頑張って修理している。
久々にスイッチを起動させたら滅茶苦茶楽しくてハマってます。メガテン3とリベサガとポケモンAZが楽しすぎる。
前作のような更新速度は難しいですが頑張って書いていこうと思います。今後は少しずつ投稿していく予定なのでよろしくお願いします。