「アーガマ聞こえるか?こちらヤザン、先走ったネオ・ジオンの馬鹿共を殲滅した。坊主とガキは無事だ。これより帰還する」
「こちらアーガマ了解した。よくやってくれた、子供達と一緒に帰還してくれ」
「了解、まったくピクニックみたいに簡単だったな」
ガンダムMarkⅡに乗ったヤザン・ゲーブル大尉(仮)はアーガマへ報告を入れた後一息つく。紆余曲折あって最終的にアーガマに雇われた彼は持ち前の経歴と経験を評価され攻撃隊の隊長となっており、そしてネオ・ジオンの先遣隊の一つを軽く殲滅していた。
「このガンダムは癖がなくて扱いやすい。性能は少し物足りないが我儘言う余裕はないか……坊主、いやフィーリアス。さっきは大した活躍だったぞ、流石は赤い彗星を素体にした強化人間だな。正直言ってオリジナルより強いと思うぜ」
「ありがとうございます。お世辞でも嬉しいです」
「世辞じゃないんだがな。それとガキ、初めての実戦にしては上出来だったぞ。この調子で慣らしていけ」
「俺はガキって名前じゃないよ、ジュドーと呼んでくれよ!」
「へッ、半人前のガキなんてガキ呼びで十分だ……だが無茶はするなよ。ガキは生き残る事を最優先に考えろ」
「へいへい、わかってるよ。リィナを残して死ねるもんか」
味方のフィーリアスとジュドーを連れてアーガマに帰還するヤザンであったが内心で溜息をついていた。
(しかし元ティターンズの俺がエゥーゴの一員に、しかもMS隊の隊長に任命とは。そして同僚はコソ泥のガキと赤い彗星のクローンか。いや滅茶苦茶だな、アーガマも本当に追い詰められてるみたいだ)
アーガマが危機的状況に置かれているのを再認識したヤザンは頭を振って思考を切り替える。
(だが坊主は味方として非常に頼りになる。そしてガキも光る物があるし成長すれば頼もしい仲間になるだろうな……………ニュータイプか)
ニュータイプについて考えが及んだヤザンは渋い顔を浮かべる。
(いくら強いとはいってもクローン兵士を製造したりガキを戦場に出すなんて正気じゃないぞ。だが綺麗事を言ってる余裕はない。ニュータイプに対抗するにはニュータイプを用意する、たとえそれがガキでも使うしかないか……まったく酷い時代だぜ。平和な時代だったら坊主は生まれてないしガキは学校に行ってただろうに)
「僕達の事を心配してくれてるんですか?隊長は優しいですね」
「へぇ~、見た目によらず優しいんだなオッサンって」
「オイ!お前ら勝手に心を読むな!デリカシーがないのか!それと俺はまだオッサンじゃない!今度言ったらぶん殴るぞクソガキ!」
心を読まれた事に驚きつつもヤザンは大人として注意する。そしてぎゃあぎゃあと騒ぎながらも子供達を連れて無事アーガマに帰還したのであった。
「今回はこちらの完勝だった。だが一つ懸念事項がある。艦長殿に報告しておくか」
「敵の強化人間?」
「艦長殿も理解しているだろう?ネオ・ジオンの強化人間は坊主一人だけじゃない事は」
帰還したヤザンからの報告を受けたブライト大佐は渋い顔をする。
「ああ、フィーリアス君から話は聞いている。彼の話によれば自分の対抗馬としてエルピー・プルという少女がいたと」
「チッ、やはりそうか。今後も楽勝とはいかないみたいだな」
「ゲーブル大尉はネオ・ジオンが強化人間を出してくると考えているのか?」
「そうだ、奴らはイカレてるが馬鹿じゃない。坊主の強さを見たら並みのパイロットじゃ対抗できないのはわかるはずだ……最悪の想定だとそのエルピー・プルって娘のクローン共が押し寄せてくるかもしれん」
「ッ」
ヤザンの言葉にブライト大佐は思わず唸り声をあげる。フィーリアスの驚異的な活躍を知るブライト大佐にとって彼に比肩するニュータイプが集団で襲撃するかもしれないという予想は考えたくもない悪夢であった。だが指揮官であるブライト大佐は現実逃避はできず努めて冷静でいようとしていた。
「対抗できるか?」
「坊主はオリジナルよりも強いし量産型のクローン兵士なんざ余裕だろう。俺もベテランとして負けるつもりはないが……問題はガキの方だ。いくら素質があっても経験が足りなさすぎる」
「ジュドー君が、死ぬか」
「残念だが数で囲まれたらフォローしきれない。お嬢さんはアーガマを護る必要があるし、ガキの仲間を出しても付け焼き刃で生き残れるわけがない。なあ、増援はまだ来ないのか?」
苦虫を嚙み潰したようなブライト大佐を見てヤザンは増援がいつ来るのか確認する。
「本部に問い合わせた結果、新型のガンダムと一緒にMSとパイロット達を送ってくれる事になった。それにハヤト達にも頭を下げて
「ほう、あのエースオブエースが来てくれるのか。それは頼もしいな、奴が味方になるのなら非常にありがたい。しかしよく向こうが了承したな」
「こちらの状況を包み隠さず話したからな。上層部やスポンサーやハヤトから正気を疑われたよ。まあハヤト達からは同情もされたがね」
「ハッ、まあそうだろうな。元ティターンズとアクシズの強化人間と民間人のガキ共を雇って何とか対抗していると聞いたら正気を疑うのは当然だ。それと新型ガンダムは誰が乗る事になるんだ?」
「フィーリアス君に任せたいが、上層部が認めないだろうし
「そうかい。まあそれが妥当だな……俺はガキが生き延びられるように扱いてくるとするよ」
「ああ、よろしく頼む」
頼もしい援軍が来るとわかったヤザンは少し明るい表情を浮かべてブリッジを退出したのであった。
「ひどいもんだね、まさかここまで被害を受けるなんて」
戦死したマシュマー・セロの後任としてエンドラ隊の指揮を執っていたキャラ・スーンは被害状況を確認し溜息をついていた。
「たった一機のガンダムによってマシュマーが戦死しMS隊は壊滅状態。そして先走った連中も返り討ちか。疲弊しているはずの相手を襲ってこれとは……流石はエゥーゴの精鋭部隊アーガマだ」
「いかがしましょうか?」
「正面からぶつかるのは愚策だよ。あのガンダムを倒すまでにどれだけの被害が出るか考えたくもない……我々ネオ・ジオンは連邦軍みたいに人材豊富じゃないし貴重なパイロットを浪費するわけにはいかないからね。仕留めるならばもっと準備をしないと」
戦闘記録に残されていたZガンダムの出鱈目な機動力を確認したキャラは眉をひそめつつも、副官のゴットン・ゴーと共に今後の方針について考えていた。キャラがここまで消極的な対応をしているのには理由があった。ジオン残党の一部でしかないネオ・ジオンは深刻な人手不足であり、先のグリプス戦役の一大決戦でネオ・ジオンにも少なくない被害が出ていた為これ以上の消耗は可能な限り抑えておきたかったのだ。
「生き残ったパイロットは怯えて使い物にならないか」
「はい、まるで彗星のごとき速さだったと震えています」
「彗星、彗星ねぇ……まさか、赤い彗星がガンダムに乗っているのか?」
生き残りの証言を聞いたキャラはとある可能性について考える。エゥーゴの指導者であるクワトロ・バジーナ……一年戦争の英雄であるシャア・アズナブルが乗っているのならマシュマー達が対抗できないのも無理はないと納得する。
「赤い彗星が?た、確かに赤い彗星がアーガマに乗っているとは私も聞いておりますが、エゥーゴの指導者がわざわざ前に出てくるとは考えられません。それに赤い彗星は先の決戦で戦死したとの噂も」
「死体は確認できてないらしいし生きててもおかしくはないさ。だが仮に赤い彗星だとしたらエゥーゴの総大将様が単機で出陣とは、それだけ向こうも余裕がないみたいだね」
暫く考えて埒が明かないと判断したキャラは最終的にハマーンに増援の要求をする事にした。
「私はハマーン様にご報告する。アーガマを放置する事はできないし、もし赤い彗星が生きているのなら総大将様を仕留めるチャンスだ。念入りに準備をしないとね……それまで我々は付かず離れずの距離を保つ」
「よろしいのですか?」
「かまわないさ、功を焦って先走った結果戦死したら意味ないだろう?」
自分で功績を独占せず確実に勝利する為に準備を進める事を決断したキャラはネオ・ジオン本部への通信を繋げるよう指示を出すのであった。
<人物紹介>
●フィーリアス君
→製造者兼母親が処刑されて廃棄される直前にアクシズから逃げ出し逆襲ポイントが限界突破した1.3シャア。MS操縦技術はピカイチだが部隊の指揮についてはわからないのでヤザンが隊長となる事を素直に受け入れていた。ヤザン隊長はオールドタイプだけど優秀だなぁと高評価している。
ジュドーの事は「このお兄さんいい人だな……お兄さんの友達もいい人達だし死なないように護ってあげないと」と考えており戦闘ではよくフォローしている。
●ヤザン
→元ティターンズだが経歴と経験を買われてアーガマのMS隊の隊長に任命された。元敵を隊長にするとか正気の沙汰ではないと思うが、民間人の子供達に任せるよりはマシだとブライト大佐達は苦渋の表情で決断した模様。ユイリィ?いやーキツイでしょ(真顔)
ガンダムMarkⅡの性能は物足りないが文句を言わず乗りこなしている。いくら強いといっても子供達を前線に出すのはどうなんだと考えている軍人の鑑である。フィーリアス君の事は「オリジナルより強くないか?」と評価している。まあZ時代のクワトロ大尉(シャア)ってパッとしないからね仕方ないね。ジュドーをガキ扱いしつつフォローしている。ブライト大佐の事は上官としては合格と高評価である。
●ジュドー
→心がつえぇ光のニュータイプ。応急修理された百式に乗って戦場に出ており、初陣では慌てつつも二人の足を引っ張る事なく無事に生き延びた。ヤザンからガキ呼びされるのは気に入らないが、自分の事を心配してフォローしてくれてるのはわかってるので反発はしていない。でも扱きがキツ過ぎて悲鳴を上げた模様。
フィーリアス君の出自を聞いてドン引きしつつも話し合った結果「ちょっと怖いけど悪い奴じゃないな」とわかり仲良くなった人間の鑑である。それとフィーリアス君から読心術を教わった。
●ブライト大佐
→原作よりも混沌としたアーガマの現状に危機感を抱き恥も外聞も捨ててアーガマの現状を説明し増援を送ってもらう事に成功した。
●エゥーゴ上層部とスポンサーとハヤト達
→ブライト大佐の必死の懇願を受けて増援を送る事を決定する。元ティターンズと赤い彗星のクローンと民間人のガキが主戦力です!と聞いて絶句しブライト大佐の正気を疑っていた。ハヤト達は本気で同情していた。
ちなみにスポンサーの一人であるウォン・リーは「元ティターンズに赤い彗星のクローン!?それに民間人の子供にMSを任す!?正気か貴様!?」とドン引きし
●
→一体何者なんだ……宇宙に上がるのはまだ怖いがアーガマの現状を知ってブライト達を助けなければと考え直した人間の鑑である。ファンの誰ッシュさんもついてくるようだ。
●新型ガンダム
→Zガンダムを超える超高性能機。フィーリアス君が乗る事はないだろう。
●キャラ・スーン
→戦死したマシュマーの後任としてきた。Zガンダムの驚異的な強さを確認し入念な準備が必要だと考え増援を呼ぶ事にした(見た目はともかく)軍人の鑑である。フィーリアス君の事は知らされておらず赤い彗星だと勘違いしている模様。
ちなみに報告を受けたハマーン様はそいつはシャアではないなと確信しているようだ。
前作のような更新速度は難しいですが頑張って書いていこうと思います。今後は少しずつ投稿していく予定なのでよろしくお願いします。