「っ、くぅ!」
「トゥエルブ!陣形を崩すな!それとファンネルの動きが雑だぞ!それでアイツに当たると思ってるのか!」
「わかってる……わかってるよ!」
エンドラ隊に新しく配属されたプルシリーズの一人であるプルトゥエルブは、指揮官のプルツーの指示に従い必死に意識を集中させていた。
「そんな、どうして当たらないの!?あっ!」
「滅茶苦茶だよ、何あの気持ち悪い動き!」
「こっちはプルシリーズ全員で挑んでいるのに!」
プルトゥエルブが必死に迎撃を試みるが、その間にも味方である姉妹たちが続々と撃破されていく。
「私達と彼じゃこんなにも差があるっていうの!?」
「弱音を吐くなトゥエルブ!」
動揺するプルトゥエルブをプルツーが叱咤するが現実は非情であった。
「ぐあっ!?」
「ツー!く、来るなぁ!?」
指揮官のプルツーが撃破され、最後に残ったプルトゥエルブは恐怖しつつも必死に弾幕を張るが……
「よし、これで終わり」
模擬戦の相手であるフィーリアス・ワンが乗るZガンダムがプルトゥエルブの量産型キュベレイを撃破し模擬戦が終了するのであった。
「3分も持たなかったか。オリジナルを除いたプルシリーズ総出で挑んでこの結果とは情けない。いや、プルシリーズが弱いというよりは彼が強いのか。博士、貴方の息子は本当にあの赤い彗星を超えるかもしれないな」
「ありがとうございますグレミー様」
エンドラにて模擬戦の様子を眺めていたグレミー・トトはフィーリアス曹長の強さを再確認し感心していた。
「ですがプルシリーズも決して弱いわけではありません。新兵として見れば十分強いですよ」
「うむ、確かにニュータイプ兵士と言えどもプルシリーズ達はまだ実戦を知らない新兵、先の戦いで旧式機で戦い経験を積んだフィーリアス曹長の相手は厳しいのは当然か」
「はい、経験を積めば彼女達も強くなるかと。もっとも、強くなったところであの子に勝てるとは思えませんけどね」
「それは母親としての信頼かな?」
「研究者としての自負です……まあ、製造者としてあの子を贔屓している自覚はありますが」
「ハハハ、正直だな博士は」
ミンファ博士の言葉を聞いてグレミーは思わず笑ってしまうのであった。
「しかし彼の戦闘記録を見ると、曹長は射撃戦よりも接近しての格闘戦を好んでいるようだな。先程の模擬戦でもオールレンジ攻撃を搔い潜って接近していたが」
「それはオリジナル譲りの癖ですね。教育の一環としてオリジナルの赤い彗星の戦い方を見せたらすっかり気に入って真似するようになりまして」
「ああ、なるほど」
「みんなお疲れ様。模擬戦の相手をしてくれてありがとう。みんな強かったよ」
「嫌味かお前。一発も被弾しなかったくせに」
模擬戦を終えたフィーリアス曹長はプルシリーズ達に礼を言っていた。のほほんとした表情を浮かべるフィーリアス曹長をプルツーはジト目で睨む。
「いや、結構本気だったよ?妹達にカッコ悪いところ見せたくなかったから頑張ったんだ。あのファンネルの集中砲火を回避するのが一番大変だったよ」
「私は妹じゃない。仕掛けた私達が言うのもなんだが、なんであの弾幕の中をわざわざ加速して突っ込んでくるんだ?そしてなんで全部避けられたんだお前……?」
「うーん、勘と気合で回避?」
「「「「「えぇ……?」」」」」
フィーリアス曹長の言葉を聞いてプルシリーズ達は困惑する。
「ねぇ、勘と気合で避けられるものなのアレ?」
「でも実際お兄ちゃんは避けてたし」
「ほら、お兄ちゃんは特別だから……私達とは違うから」
「赤い彗星のクローンだし」
「私達みたいにナンバーじゃなくて名前で呼ばれてるもんね~。さすがお兄ちゃんだね」
「いやお前達それでいいのか!というか妹扱いされて悔しくないのか!?」
プルツーは納得いかない様子であったが、他のプルシリーズ達はフィーリアス曹長の突き抜けた強さを見て妹扱いされる事をあっさり受け入れていたのであった。
「どうですかレイ大尉、ZZガンダムの乗り心地は?」
「ああ、悪くないな。些か癖が強いが慣れればどうという事はない」
宇宙に上がったアムロ・レイ大尉は受領したZZガンダムの習熟訓練を行っていた。ZZガンダムは強力無比なMSである反面操縦難度が非常に高かったが、ブランクはあれど地球連邦軍を、いや地球圏を代表するスーパーエースであるアムロは少し時間をかけるだけで完全に乗りこなす事が出来ていた。
「すごい、あの機体を完璧に乗りこなしてる……さすがレイ大尉だわ」
自由自在に動くZZガンダムを見て、ZZガンダムのコア・ファイターを託したルー・ルカ少尉は感嘆の声を上げる。
「そりゃそうだ。アムロさん以上にガンダムを乗りこなせる人間なんてこの世に存在しないさ」
ルー・ルカ少尉の言葉にアムロの部下であるボッシュ・ウェラーは苦笑する。
「レイ大尉の乗るZZがあれば、私達は、エゥーゴは勝てますよね?」
「……ああ、そうだ。アムロさんがいる限り俺達は負けない。だから君は心配しなくていい」
「あの噂、本当なんですか?赤い彗星がネオ・ジオンに寝返ったって話……」
「おいおい、落ち着けお嬢ちゃん」
不安な表情を浮かべるルー・ルカ少尉をボッシュは落ち着かせる。
「それについてはウチの上層部が否定してるだろう?事実無根だってな……噂の真偽はどうあれ、ネオ・ジオンを放置する事はできないんだ。どのみちやる事は変わらないさ。そうだろ?」
「そ、そうですよね。すみません変な事を言って」
「そうか、彼女は不安がっているのか」
「ええ、でもお嬢ちゃんだけじゃありません。皆不安がっています。今のエゥーゴでネオ・ジオンに対抗できるのかとね」
「無理もないな、今のエゥーゴは酷い有様だ」
ZZガンダムを降りたアムロは部下であるボッシュの報告を聞いて無理もないと納得していた。
「アーガマがネオ・ジオンの捕虜になってから、冗談抜きでレイ大尉の存在が最後の希望となっています。貴方がいるからエゥーゴという組織が保てていると言ってもいいくらいですよ」
「笑えないな。ボッシュ、あの噂は事実だと思うか?」
アムロは声を潜めてとある噂……エゥーゴの指導者であるシャア・アズナブルがネオ・ジオンに寝返ったという噂についてボッシュに尋ねる。噂についてはエゥーゴ上層部が否定していたが、地球圏で徐々に拡散されておりエゥーゴの兵士達が少なからず動揺していた。
「元ジオン兵として昔の伝手を使って確認しましたが……どうやら事実のようです。少なくともネオ・ジオンでは周知の事実のようで、連中の士気が上がっています」
「そうか。だからエゥーゴを抜ける兵士が続出しているわけだな」
「ええ、エゥーゴには元ジオン兵出身も多い。ハマーン・カーンの事は気に入らなくても、クワトロ大尉、いやシャア・アズナブルになら従ってもいいと考える奴等は大勢います。脱走せずスパイとしてエゥーゴに残っている裏切り者もいるでしょうね」
「最悪だな……シャア、お前がよりによってネオ・ジオンに寝返るなんて一体何があったんだ?」
エゥーゴの惨状を確認したアムロは呻きつつも宿敵の豹変に困惑するのであった。
「シャア、エゥーゴにいるスパイから報告があった。エンドラ隊が取り逃がした新型ガンダムは白い悪魔の手に渡ったようだ」
「そうか、アムロが……」
一方その頃、スパイによってエゥーゴの内情をある程度把握していたネオ・ジオンは慢心する事無く対策しようとしていた。
「白い悪魔についてはエンドラ隊を派遣する予定だ。あの紛い物とプルシリーズ……我が軍の精鋭であるニュータイプ兵士達をぶつける。オールドタイプでは新型ガンダムに乗った白い悪魔に勝てるわけがない、ニュータイプにはニュータイプで対抗する」
「彼らでアムロに勝てると思うのか?」
「紛い物は実力は本物だ。最低でも消耗させる事はできるだろう。それともシャア、貴様は白い悪魔に勝ってほしいのか?」
「……」
ハマーンの言葉にシャアは沈黙する。
「まあいい、紛い物や連邦の白い悪魔より優先すべき事がある。シャア、いやキャスバル。準備はできているか?」
「ああ、問題ないさ」
『地球圏に住む人類よ聞くがいい!私はネオ・ジオンの宰相ハマーン・カーンである!』
『我々は長きにわたって暗黒の宇宙に隠れ潜み屈辱の時を過ごしてきた。だが、それも過去の事である!我々は宇宙の力を手にしたのだ!サイド3の解放の為、スペースノイド独立の為に我々は再び立ち上がった!』
『紹介しよう。こちらはミネバ・ラオ・ザビ王女、サイド3の頂点に立つ御方である!そしてもう一人紹介したい人物がいる……ジオンが誇る英雄である赤い彗星、そしてジオン・ズム・ダイクンの遺児であるキャスバル・レム・ダイクン殿だ。彼こそ我々スペースノイドを導く指導者であり救世主なのだ!』
『私はシャア・アズナブル、世間から赤い彗星と呼ばれていた男だが今はキャスバル・レム・ダイクンとしてこの場にいる。エゥーゴの指導者であった私がネオ・ジオンの総帥となっている事に驚く方も多いだろうがどうか落ち着いてほしい』
『いかなる理由があれど私がエゥーゴを捨てたのは事実であり、無責任な裏切り者だと非難されるのは当然である……だが、スペースノイド独立という我が父ジオン・ズム・ダイクンの、スペースノイドの悲願を達成する為に私は腐敗したエゥーゴを離れ、ネオ・ジオンに戻ってきたのだ!』
『我々ネオ・ジオンはスペースノイドの独立という崇高な目的の為に過去の遺恨を水に流し団結したのだ!父ジオン・ズム・ダイクンが夢見たスペースノイド解放の為に私は喜んでこの身を捧げよう!』
『地球圏に住むスペースノイドよ。どうか我々を恐れないでほしい!自らの道を開くために、スペースノイドによる政治を手に入れるために、貴方達の力を我々に貸していただきたい!』
『そして私は、父ジオン・ズム・ダイクンの許に召されるであろう!』
ネオ・ジオンの各サイドの制圧作業が一段落した頃、ネオ・ジオンの本拠地アクシズから発信された演説は瞬く間に地球圏に広がり人々は衝撃を受けたのであった。
<人物紹介>
●プルシリーズ
→プルスリーからプルトゥエルブまで揃った。この世界ではちゃんと自意識があるニュータイプ兵士である。模擬戦でフィーリアス君に多対一でボコボコにされ、妹扱いされる事をあっさり受け入れた。
●プルツー
→気持ち悪い動きで攻撃を回避したフィーリアス君に引いていた。
●シャアのクローン(フィーリアス・ワン)
→妹がたくさんできて呑気に喜んでいる。
●ミンファ博士
→我が子が模擬戦で圧勝したので褒めてあげた。
●グレミー・トト
→フィーリアス曹長強いなぁ、彼に勝てるパイロットなんているのか?と吞気に考えている。
●アムロ達
→エゥーゴが瀕死な状況に憂鬱になる。そしてシャアがネオ・ジオンの総帥になって演説してるのを見て困惑し宇宙猫になった。
アムロはシャアがエゥーゴを裏切った事に怒りつつも、何か事情があったんだろうなとニュータイプの勘で察している。
●ハマーン様
→白い悪魔が新型ガンダムを手に入れたとスパイから報告があったので一応対策する。ニュータイプにはニュータイプだとエンドラ隊を派遣する事にした。まあでもこの演説でエゥーゴにトドメを刺せるから大丈夫だろうと考えている。
シャアと一緒に演説できて内心ウキウキだった模様。
●シャア・アズナブル
→すごく嫌だったが表に出す事なくネオ・ジオン総帥として表舞台に立ち演説を行った。
アムロについては「フィーリアス曹長強いからなぁ、奴もブランクがあるし負けるかもしれん」と「アムロ……!貴様は私の宿命のライバルなのだから私のクローンなんかに負けるんじゃないぞ!」という気持ちがあるようだ……心がふたつある~。
●ネオ・ジオン
→演説を聞いて「「「「「うおおおおお!!!」」」」」となり士気が大きく上がる。地球圏に潜んでいたジオン残党や元エゥーゴの兵士、ティターンズの敗残兵が続々とネオ・ジオンに参加している。赤い彗星の、キャスバル・レム・ダイクンの名は伊達じゃないのだ。
●エゥーゴ
→脱走兵が相次ぎスパイも潜り込んでいるなど組織として既に詰んでいたが、ネオ・ジオンの演説によってトドメを刺される。
でもそれでも……それでもエゥーゴにはZZガンダムに乗ったアムロさんがいる……!(ボッシュ並感)
Gジェネエターナルとまどドラが楽しいので前作のような更新速度は難しいですが頑張って書いていこうと思います。
今後は少しずつ投稿していく予定ですがよろしくお願いします。