うちは 転生伝 作:織田
「珍しい所で会うもんじゃのう」
「……なぜ、貴様がいる。ヒルゼン」
「なぜも何も儂にとっては、日課みたいなもんじゃ」
猿飛ヒルゼンとダンゾウ。
木の葉の陽と陰を象徴した人物が、一堂に会していた。
二人は木の葉の上役として、会う事は多い。だが、方針の違いから幼少時の様に気軽に接する事が無くなり会えば、政治の駆け引きをするというのが常だった。だからこそ、二人が一堂に会しているのは珍しいのだ。
特にこの忍者アカデミーでのイベントに参加しているというのは。
「本日は来てくださって、有難うございます。火影様。それと…ダンゾウ様?」
アカデミーの職員である忍びが、よく訪ねてくれる火影に対しては気さくな喋りで応対しダンゾウに対しては幻術か、と疑いながらも応対する。
実際、二人を遠巻きに見ている他のアカデミーの職員は、お互いにチャクラを流し合いながら幻術を解こうとしている。
「フン、不審な視線を投げつけるとは失礼じゃが。まあ良い。はよう、案内せい」
ダンゾウは自分に向けられている視線を不快に思いながらも、応対役の忍びに対して急かす。二人は別に忍者アカデミーに対して遊びに来たわけではない。経験豊富な忍びである事を生かしてボランティアとして授業しにきたのだ。
戦乱が収まったとはいえ、いつ再び始まるかもしれないという状況において経験はモノを言う。火影であるヒルゼンはだからこそ、次世代に向けたメッセージを残すべく日課の様に特別講師としての役割を負っていたのだ。
問題は、今日その授業にダンゾウが講師として参加するようになったことだろう。応対役の忍びは現実逃避しつつ、言葉を繋ぐ。
「はい、それでは
道徳の授業をお願いします」
…………マジで?
「おい!!解けないぞ。この幻術」
アカデミーの職員は必死にダンゾウが道徳の授業をするという幻術(現実)を解くべく未だチャクラを流し合っている。
取敢えずキレなかったダンゾウは成長したかもしれない。
「……不審者?」
「はい、先輩知らないんですか?最近不審者が木の葉で激増中らしくて、警邏署が大忙しらしいですよ」
「九尾襲来以降、不安定な時期だっていうのに大変ですよねぇ。カカシ先輩」
「気軽に言ってくれるな。この時期だからこそ暗部である俺達の役割が問われるんだ」
死んだ魚のような目を持つ白髪男と常時レイプ目ではないかと疑われる年下の少年が木の葉の通りを歩いていた。二人の名前ははたけカカシにテンゾウ。木の葉の暗部に若年ながら所属している面々であった。
「でも七不思議のような奇妙な噂も聞こえてきて、楽しいですよ」
「…噂?」
「はい、何でも最近幼児が瞬身の術を使いこなし飛び回っているとか。おまけに、透遁の術を使って、幽霊の如く消えたり現れたりしているとかです」
「ハァ…そういう有り得ない噂は真実を見えなくさせるぞ。テンゾウ」
「というと?」
「いいか。親は子供の自慢を過剰にしてしまうものだ。どこかの保護者が過剰表現しただけだろ」
「フーン…そんなもんですかね。では、もう一つ不審人物の方はどう思いますか?」
「…不審人物?…ガイのことか」
何気に酷いことをいうカカシである。
「違いますよ。何でも女性に対してセクハラを行う青年男子がいるらしくて、おまけに逃げ足が速いもんだから捕まらないんですよ」
「……警務の忍びが捕まえられないとすると、犯人は忍びだな。もしもの時はオレが動くか」
「さ~すが先輩。頼りにしてますよ」
木の葉の暗部二人は噂をしながら通りを歩いていく。そして状況を俯瞰するものがいるとしたら、その会話に対してこう判断するだろう。
アカンそれはフラグや、と
「……である。これを忍びの心得とせよ」
ダンゾウとヒルゼンの授業は教科書を使ってアカデミーの忍び心得を説く。意外だが授業そのものは、対立することもなく和やかな雰囲気のもと続いている。授業参観している他の先生方もビックリするほどまともな授業であった。
「本日は有難うございました。火影様、ダンゾウ様」
担任教諭が特別講師の二人を労う。年の功があるだけ、話は伝わりやすいのだ。
「では、本日の授業を終えて。皆さんの中で、質問がある人はいますか?」
「「「はーい」」」
子供だけあり木の葉の上層部である二人に対して気兼ねなく、質問したいという子供はたくさんいた。
「では、うちはシスイ君。質問をどうぞ」
「はい、火影様はいつ火影になったのですか?」
ピシッ、と主にダンゾウの方の空気が変わる。何故ならダンゾウにとってそれは、ヒルゼンに対する敗北をトラウマとして刻まれた記憶だからだ。
「そう、あれは金角、銀角という雲隠れの忍びが…」
そんなダンゾウの雰囲気を察すること無くヒルゼンは話を進めていく。子供達も熱心に聞いていく。
そして、
「囮役をすることになってじゃな。そこで「儂が名乗りを挙げたのじゃ」ってダンゾウ!?」
ヒルゼンの言葉に被せる形でダンゾウはサラリと嘘をつく。
「何を言ってるんじゃ。そこで「けれど、其処で二代目様は、言ったのじゃ。『ダンゾウ、お前が死ぬのはまだ早い。儂が囮になる』とな」……聞いとらんな」
ダンゾウは火影の言葉を無視して話を進めていく。自分のサクセスストーリー(嘘)を話して、手柄を独り占めしていく。けれど、嘘は必ずバレてしまうもの。
うちはシスイは疑問を浮かべながら尋ねる。
「?では、活躍されたダンゾウ様?ではなくてヒルゼン様が火影になっているのですか?」
「……………」
実際の火影は、猿飛ヒルゼンであるからだ。
その後、ダンゾウは能面のような顔で教室から出ていった。
けれど、ヒルゼンや子供達はその姿を見て笑う事は無かった。
何故なら、彼は大事なことを教えてくれたからだ。
嘘をつくのは良くない、と
子供達が成長したとある木の葉の授業風景だった。
「きゃあああああああ!!!変態よ、変態がいるわ」
ビクッ!!
「ッ!!コレは」
「先輩!」
カカシとテンゾウは、叫び声を聞いて咄嗟に先程の噂について思い出す。事にあろうか真昼間から変態行為を起こす奴が居るとは、言語道断である。
……変態という叫び声に何もない所から、身動きがした気がするが気のせいだろう。
二人の忍びは叫び声を聞こえた場所に向かう。そしてその場には一人の青年が立っていた。
「もう、大事な事を聞きたかったのに……ん!丁度良かった君たちに聞こうか?」
「変態行為に及びながら、その場に立ちどまるとは図太いやつですね。先輩、捉えますよ……ん、先輩?」
「お、お前は」
テンゾウはカカシに対して協力を投げかけようとするが様子が可笑しい。それはまるで、見てはいけないものをみてしまったような感じ。
呆然としながら、カカシは声を絞り出す。
「お、オビト……なのか」
運命より早く時計は回り始める。
そこは外道魔像の設置している場所。一人の男が漸く事態を把握する。
「……白ゼツ。グルグルはどうした?」
「グルグルならね~諜報活動やってるよ木の葉で」
「…何?俺は命じていないはずだ」
「うん、自主的に行ったからね~」
「勝手な奴だ、回収する。奴はどこにいる」
「木の葉だよ~」
「…木の葉、か」
嘗ての故郷に既に思い入れは無い。その筈だが、何か引っかかるものがある。
青年は、親友と会いまみえることになる。
「え~っと。何これ」
変態という叫び声に無駄に反応した出番なしの主人公は、現状に困惑していた。
透遁の術で姿を隠していて気づかれずにカカシやテンゾウの後を追ってきたコタローであるが目の前には、オビトが仮面を外して…いた。
混迷する世界はどこに行くのか 誰にも分からない。
うん…どうなるのかな この世界