シルバニアファミリー 森の迷子さん   作:蒼マル

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第5編 家族のかたち

茂みの中を小さな影が動いていた。

 

「きたわね」

 

「ほんとにのってるの…?」

 

「ママがでんわでいってた、まちがいないわ」

 

「ふぅん…」

 

「さっ、いくわよ…!」

 

その頃、僕とリンネアはバスでシーサイド村へと向かっていた。

初めて来た時と同じように、白い灯台が見えてきた。

 

「そういえば…あの灯台の形、風車小屋に似てるような…」

 

「ブルース〜」

 

「ん…?」

 

「うみだよ〜」

 

リンネアの声に呼ばれ反対側を見ると、日差しに照らされた海が輝いていた。

バスが到着し下車すると、目の前にはマイラさんが車で待っていた。

 

「久しぶり!アヴリルから話は聞いてるよ。どうぞ乗って」

 

「あっ、ありがとうございます…」

 

僕たちはマイラさんのお家へと向かった。

 

「ブルースくん」

 

「はい…!」

 

「まっすぐ向かわないで、ちょっとドライブしようよ」

 

「ドライブ…ですか…?」

 

「そうそう!いい場所があるんだ」

 

しばらく走った後、マイラさんはレストランの隣の駐車場に車を停めた。

 

「ここからは歩きだよ〜」

 

「リンネア、おさんぽするの〜」

 

「そうだね。マイラさん、案内よろしくお願いします…!」

 

「任せてっ!」

 

山道を歩いていくと、先ほどバスで通った道路が崖の下に見えた。

 

「ここって…」

 

「もうすぐ着くからね〜」

 

波の音が聞こえる、開けた場所が現れた。

そこに建っていたのは、さっきの灯台だった。

丘の上からは一面に海が広がって見える。

僕は息を呑んだ。

 

「綺麗でしょ?私が小さい時に、アヴリルたちとよく来たんだ」

 

遠くには大きな船が荷物を運んでいる。

優しく風が吹き、ゆったりと時間が流れていた。

 

「あの…」

 

「おや、こんなところに来客とは珍しい」

 

僕が言葉を出しかけた時、背後から誰かの声がした。

マイラさんが振り返ると、笑顔で返事をした。

 

「あっ!リースさん…!」

 

僕も振り向くと、うさぎのお爺さんが杖をつきながら立っていた。

 

「マイラちゃんか、久しぶりだねぇ」

 

リースという名前に何故か聞き覚えがあるような気がした。

しかし、はっきりとは思い出せなかった。

 

「君たちは…初めて見る顔だねぇ」

 

そう言うと、彼は少し微笑んだ。

 

「あっ、はじめまして、僕はブルースといいます…!」

 

「リンネアだよ〜」

 

「はじめまして〜」

 

リースさんに挨拶をすると、何やら茂みから音がした。

 

「ちょっと…とおくまできすぎよ…」

 

「もうだめ…ぼくあるけない…」

 

「せんちょ!パフィ!」

 

リンネアは2人に駆け寄りハグした。

 

「ちょっと…あついでしょ…」

 

「いまはスリスリしないでぇ…」

 

そんな様子を、リースさんは微笑ましく見守っていた。

 

「疲れているなら少し上がっていきなさいな」

 

そう言うと、僕たちを中に案内してくれた。

灯台の中は海辺らしい家具が並んでおり、リースさんの家になっていた。

 

「妻は手芸仲間に会いに行っててね」

 

「そうなんですね!久しぶりに会いたかったなぁ」

 

「また今度、暇があったらいつでも遊びにおいで」

 

僕たちはリビングのテーブルに案内された。

 

「マイラさん、お知り合いなんですか…?」

 

「うん!灯台に遊びにくると、いっつも面白いお話を聞かせてくれたんだぁ」

 

「そうだったんですね…!」

 

部屋の壁には船を操縦するリースさんの姿が写っていた。

 

「リースさんって…」

 

「そうそう!リースさん、船の船長なんだよ!」

 

「そんな、ただ船が好きなだけじゃよ」

 

リースさんはお茶を運びながら、恥ずかしそうに話した。

 

「それに、もう船長は退いたからのぅ」

 

「そうなんですか…?」

 

驚くマイラさんにマノンが嬉しそうに呟いた。

 

「いまはシェーンおにいさんだもんね〜」

 

「シェーンおにいさん…?」

 

「去年から弟子入りしたいと言ってくれてな、私ももう歳だから彼に継ぐことにしたんじゃよ」

 

「そっかぁ…確かに、私たちの中でもたまに話してたんです。クルーズ船が無くなっちゃったらどうしようって」

 

「私も手放すのは少し寂しかったがねぇ。未来の子どもたちが楽しむことを考えたら、それも幸せに思えたんじゃ」

 

そう話すリースさんの目は、どこか嬉しそうに見えた。

その後も昔の船の話や、シーサイド村の話を聞いた。

夕方になるとパフィを送り届け、僕たちはマイラさん達のお家に泊めてもらった。

 

翌朝、僕たちは早速港にやってきた。

 

「じゃあ、楽しんでおいでね!」

 

マイラさんはそう言い残し、仕事に向かった。

 

「さぁ、こっちよ」

 

「おふねなの〜」

 

桟橋には大きなクルーズ船が停泊しており、子ども達が次々に乗船していた。

 

「あれ、パフィくん達はチケットいらないの?」

 

「わたしたちはいらないわよ〜」

 

「ぼくら、ねんぱすなんで」

 

マノンとパフィは颯爽と乗り込んだ。

 

「さすが…常連さんだ…」

 

僕たちもチケットをシマネコのお兄さんに渡した。

 

「大人と子どもですね〜」

 

「ブルースとリンネアなの〜」

 

「ブルース…?」

 

お兄さんが顔を上げ、僕を見るとハッとした表情を浮かべた。

 

「あなたがブルースさんですか!!」

 

「えぇ…はい…一応」

 

「街で妹たちを助けてくださったんですよね!?本当にありがとうございます…!」

 

「いえいえ…!うちも丁度困ってただけで…」

 

「ブルースまいごになっちゃったの〜」

 

「本当は逆なんだけどね…」

 

「それでも助けていただいたのは事実ですから!あっ、申し遅れました。僕、シェーンと言います」

 

「あなたがクルーズ船の…?」

 

「はい、まだまだ新米ですけどね…今日はぼうけん島に向かうので、ゆっくり楽しんでください…!」

 

「わかりました、よろしくお願いします…!」

 

「よろしくね〜」

 

船の中では子ども達が船の中を歩き回っている。

1階の部屋に入ると、中には昔の船や星空の写真が壁に飾られていた。

 

「綺麗だね…」

 

「おほしさまなの〜」

 

リンネアが高い場所に飾られた写真を指差して背伸びをしていた。

僕は彼女を抱き上げて写真を見せてあげた。

 

「おほしさま、みたいね〜」

 

「そうだねぇ。今日の夜、マイラさんにお願いしてみよっか」

 

「するの〜」

 

リンネアを下ろすと、2階から水の音が聞こえた。

2人で上がってみると、上にはプールがあり、みんなで泳ぎながら楽しんでいた。

 

「あ、パフィいるの〜」

 

パフィは浮き輪に座り、ぷかぷかと漂っていた。

 

「やほ〜」

 

「パフィおよげないの〜?」

 

「まぁ…そうだけど…」

 

「あれ、せんちょーいないの〜」

 

「ぜんぜんきいてない…」

 

その時、茶色い頭がプールの底から上がってきた。

 

「あれれ」

 

「ぷはぁっ!」

 

浮上してきたマノンはゴーグルを外し、頭を振って水をはらった。

 

「おそかったわね」

 

「マノンはいつもギリギリまで、プールのそこにかくれてるんだ」

 

「なによ、ダメなの?」

 

「いいけども、たまにはおともだちとあそんであげてよ〜」

 

「しかたないわね」

 

マノンはプールから上がると、他の子たちに挨拶をしに行った。

 

「せっかくなかよくなれたんだからさぁ」

 

しばらくすると、船が出航した。

僕たちが海の眺めを楽しんでいると、リースさんが上がってきた。

 

「楽しんでくれとるかい?」

 

「はい!リンネアもプールで遊んでます」

 

「何よりじゃのぅ」

 

僕は数分間、リースさんと一緒に海からシーサイド村を眺めた。

 

「海は好きかね?」

 

「はい、落ち込んだ時はいつも海を眺めた気がします…」

 

「気がする、面白い表現をするんだねぇ」

 

「あっ、これは特に深い意味は…!」

 

「そうかそうか…」

 

リースさんは少しの間、遠くを見つめてから話しを続けた。

 

「彼のようなことを言うんだねぇ…」

 

「彼…?」

 

「あぁ、古い友人の話じゃ。不思議な出来事だった…」

 

30年前…

 

ある朝、灯台に住んでいたリース達の元に、来客がやってきた。

 

「すみません…道に迷ってしまって…」

 

「あらら、シーサイド村は初めてですか…?」

 

玄関の前には1人のシロクマが立っていた。

話を聞くと、彼は目覚めたら近くの浜に漂着しており、それまでの記憶がないという。

 

「つまり、どこから来たか分からないと…?」

 

「はい…そうなんです…」

 

「それは…こんな家でよければ、しばらくうちで休んでください…」

 

「えっ、いいんですか…?」

 

「困った時はお互い様ですから」

 

それから数年間、シロクマのシェイマスはリースのお家でお世話になった。

クルーズ船では料理を乗客に振る舞い、大好評だった。

そして、いつしか2人は親友になった。

 

「シェイマスは本当に料理が上手いなぁ」

 

「そんなことないさ」

 

「いやいや、息子のフレイジャーも、シェイマスさんみたいな料理人になるんだ!っていつも言ってるよ」

 

「それは言い過ぎだよ!でも、よく手伝いをしてくれるから助かってるかな」

 

「これからも沢山可愛がってやってくれ…」

 

「それなんだが…リース…」

 

シェイマスはリースに語った。思い出した別世界の記憶。

料理人として生きていたが、ある日、急に目の前が炎に包まれ、その後にシーサイド村についていたことを…

 

「おぼろげではあるんだが、以前からフライパンを握っていたような…そんな気がするんだ…」

 

「そんなことが…」

 

「多分、僕はもう元の世界には戻れない…」

 

「それなら、こちらの世界で思う存分やりたいことをやってみたらどうだい…?」

 

「やりたいことか…」

 

 

「それから数ヶ月後、彼は夢を見つけ、遠くに引っ越してしまった」

 

リースさんは寂しそうな目をしていた。

 

「会えなくなっちゃいましたか…?」

 

「いやいや、たまに手紙を出し合ったし、贈り物もしたさ」

 

「そっか…よかったです…」

 

「でも、彼がいなくなった時は…」

 

リースさんの言葉を遮るように、汽笛が鳴り響いた。

 

「おや、そろそろ島に着くみたいだ」

 

船の正面には小さな孤島が浮かんでいる。

島の浅瀬に船が停泊すると、子ども達は次々に海へ飛び込んで上陸した。

 

「リンネア、およげないの」

 

「そっかぁ…」

 

浜に泳いでいく子ども達を見ながら、リンネアがそう呟いた。

 

「そういえば、マノンちゃん達は…」

 

「ここよ…!」

 

マノンは腰に手を当て、舵の前で仁王立ちをしていた。

 

「えっと…2人は行かないの…?」

 

プールに浮き輪で浮かぶパフィが返事をした。

 

「ぼく、およげないし」

 

「わたしはふねをまもらなきゃいけないわ!」

 

「なるほどね…」

 

僕らも船に残り、ジュースを味わいながら島や海を眺めた。

リンネアはパフィやマノンと一緒にプールの周りで遊んでいた。

 

「マフィげんき〜?」

 

「げんきだよ、いつものしかかってくるし…」

 

「よかったの〜」

 

「リンネアはきょうだいとかいないの?」

 

「いないよ〜」

 

「おかあさんは?」

 

「いない〜」

 

マノンが水面から頭を出すと、リンネアを見つめた。

 

「あんた、どこからきたのよ」

 

「べつのところからきたの〜」

 

「なによそれ」

 

「でも、ブルースがいるの」

 

リンネアは僕の方を見つめた。

僕は彼女に背を向け、シェーンさんと話をしていた。

 

「おひとりでシーサイド村に?」

 

「はい、シルバニア村の友人たちが自分の夢にまっすぐ進んでくのを見て、僕も頑張ろうって思ったんです…」

 

「お互い高め合えるなんて、いい関係ですね…!」

 

「そうですかね…?でも、たしかに子どもの頃からずっと6人で一緒にいたので、家族も同然です!」

 

シェーンの家族という言葉に、僕は引っかかった。

 

「あの…離れてて寂しくなる時ってありますか…?」

 

「そうですね…たまにあるかなぁ。でも、あの時みんなでつけたお揃いのペンダントを見ると、寂しさも和らぎますね」

 

そう言いながら、シェーンさんは胸元のペンダントを握った。

 

「ブルースさんも、そういうものってありますか…?」

 

「いやぁ、僕にはないかなぁ…」

 

確かに、そういうものを探しておかないと僕自身が耐えきれなくなるかもしれない。

見つけなきゃ…

 

「あっ、そろそろ出発の時間です!みんなを呼ばなくては…!」

 

そう言い残すと、シェーンさんは慌てて操縦席に向かった。

子どもたちが乗船すると、船は汽笛を鳴らし、シーサイド村に向けて出発した。

楽しい船旅はあっという間に終わってしまった。

その夜、僕たちはコーブファミリーのみんなと食事をした。

 

「リンネアったら、へんなこというんだから!」

 

「そんなことないよ〜?」

 

笑いが溢れる食卓に、突然ドアをノックする音が響いた。

 

「こんな時間に誰かしら…?」

 

「ちょっと、見てくるよ」

 

コリンさんが席を立ち、玄関へと向かった。

 

「やあやあ、遅くにすまないね…」

 

「リースさん…!」

 

「ハスキーの青年たちが来ているかね…?」

 

コリンさんに呼ばれ、僕とリンネアは玄関を出た。

すると、リースさんが車を停めて僕らを呼んだ。

 

「どうしましたか…?」

 

「いきなりですまないね、少し星を見に行かないか…?」

 

「リンネア、ほしみるの〜」

 

彼女の歓喜の声に、僕も行くことを決めた。

 

「ぜひ、お願いします…!」

 

リースさんの車に乗り、しばらく走ると港の桟橋に到着した。

そこにはクルーズ船が停泊している。

 

「船で沖に出よう」

 

「わかりました…!」

 

クルーズ船は海岸から離れ、海の真ん中にポツンと浮かんでいた。

遮るもののない夜空には、一面に星が光っていた。

 

「きれい…」

 

「そうじゃろう…」

 

星空に見惚れていると、リースさんが話を始めた。

 

「昼間に話した旧友のことを覚えているかね…?」

 

「はい…シロクマのご友人ですよね…?」

 

「そうじゃ、それがのぅ…彼の香りがするんじゃ、君たちから…」

 

「僕たちから…ですか…?」

 

「あぁ、特にブルースくん。君は雰囲気までそっくりだ…」

 

「そんな…僕はただのハスキーですよ…?」

 

「私には分かる。あの風車小屋に住むことになったのは、きっと偶然ではないはず」

 

「えっ…どうして風車小屋のことを…?」

 

「知っておる。あの小屋は、私が彼に贈ったものだからのぅ…」

 

シェイマスが現れてから5年が経ったある日、彼は灯台にリースを呼び出した。

 

「なんだい、改まって話だなんて」

 

「いや、急に言ってすまない…今度、シルバニア村に引っ越そうかと思うんだ…」

 

「シーサイド村を出るのかい…?」

 

「あぁ、自分がやりたいことをずっと考えてた。それで、シルバニア村にレストランを開こうと思うんだ」

 

「そうか、寂しくなるが…君が決めたことだ」

 

「ありがとう…」

 

「そうだ…!」

 

それから、リースはシェイマスの為に家を建てた。

 

「これは…」

 

シェイマスが完成した家を訪れると、そこには灯台小屋にそっくりな風車小屋が建っていた。

 

「君がシーサイド村を思い出せるように…なんてのは後付けでな、たまたま似てしまったよ」

 

「いや…」

 

シェイマスは大粒の涙を溢し、ゆっくりと回転する風車を見上げた。

 

「こんなに素敵なプレゼントは一生ない…ありがとう…本当にありがとう…」

 

「…、そうか、私も嬉しいよ…」

 

リースは彼の肩に手をかけた。

風車はシルバニア村の爽やかな風を受け、力強く回っていた。

 

それから、彼はシルバニア村でレストランを営み、家庭を築いた。

そして、20年後…

 

「シェイマス!シェイマス!!」

 

「お父さん…!」

 

妻と娘に見守られながら、シェイマスは旅立った。

 

「シェイマス…!」

 

リースも急いで病院に駆けつけたが、彼は眠った後だった。

 

「そんな…」

 

リースは悲しみに暮れながら、思い出の風車小屋に立ち寄った。

彼の残したものを眺めていると、とある物が目についた。

 

「これはなんじゃ…」

 

自分とお揃いに作った木製のボートの中に、1枚の手紙が落ちていた。

彼はそれを手に取り、中のメッセージを読んだ。

 

リースへ

この手紙を読んでいるということは、僕はもう星になってしまったんだね。

シーサイド村とシルバニア村で過ごした日々はとても楽しかった。

レストランを営み、家庭を持って、諦めてしまった夢が叶ったようだった。

この世界で君と過ごせたことをいつも幸せに感じていたよ。

一度は迷子になった僕を助けてくれて本当にありがとう。

君が元気に過ごせるように夜空で見守っているよ。たまには会いにきてくれ。

 

シェイマス

 

それから、リースは毎晩夜空を見上げ、彼のことを探した。

白く、綺麗に輝いている星を…

 

「君たちがあの風車に住んでいるのは、会った時から気づいておった。微かに彼と同じ匂いがしたからのぅ…」

 

「そうなんですね…」

 

リースさんは夜空を見上げ、僕に語りかける。

 

「星になって見守るのもいいが、もっと、もっと彼の声を聴きたかった…それが本音じゃ…」

 

一筋流れた彼の涙は、星のようだった。

 

「すまない…ひとつ頼みがあるんじゃ…」

 

「はい…僕たちに出来ることなら…!」

 

「ありがとう…ちょっと、こっちに来てくれないか…」

 

「わかりました…」

 

僕とリンネアはリースさんの前に立つと、彼は優しく僕たちを抱きしめた。

リースさんの顔は見えなかったが、彼の呼吸は今は亡き親友をたしかに感じていた。

しばらくすると、リースさんはそっと手を下ろした。

 

「久しぶりに彼に触れたような気がした…本当にありがとう…」

 

「いえいえ…」

 

「さぁ、もう少し星を眺めて帰ろうか…」

 

「ほしみるの〜」

 

「そうだね」

 

見上げた夜空には沢山の星が輝いていた。

なんとなく、大きく輝く星が2つ、僕にも見えた気がした…

 

翌朝、僕らはシルバニア村へと出発する。

 

「次は冬にでも遊びにおいで!」

 

「はい…!でも、次はマイラさん達もシルバニア村に遊びに来てください…!」

 

「おっけ〜!絶対遊びに行くからね!」

 

僕は別れの挨拶を告げると、リンネアと一緒にバスへ乗り込んだ。

 

「ありがとうございました…!」

 

マイラさん達は大きく手を振りながら、バスが見えなくなるまで見送ってくれた。

バスはまた灯台の下を横切った。

ふと崖の上を見上げると、リースさんがバスを見守っていた。

僕たちが手を振ると、彼も笑顔で手を振りかえしてくれた。

 

「またねなの〜」

 

「そうだね…」

 

リースさんは僕たちを見送ると、後ろから声がした。

 

「あなた!お客さんですよ…!」

 

「ほほぅ、今日は誰が…」

 

振り返ると、そこにはシロクマの親子が立っていた。

 

「リースさん、お久しぶりです…」

 

「君は…」

 

シルバニア村に着くと、僕は改めて風車を眺めた。

 

「なんか、導かれたような気がする…」

 

「みちびきなの?」

 

「導きの意味わかる…?」

 

「しらないの〜」

 

「そうだよねぇ」

 

音を立てて回る風車の力強さに、どこか勇気づけられた気がした。

その晩、僕は手紙を書いた。夢中になってペンを走らせると、いつの間にか10枚以上の封筒の山ができていた。

 

翌朝、ビリーさんが郵便を届けにやってきた。

 

「おはようブルースくん!今日もお手紙きてるよ〜」

 

「おはようございます!あの、今日は僕からも…」

 

僕はゆっくりと封筒の束をビリーさんに差し出した。

 

「こんなに沢山…どうしたんだい…?」

 

「ちょっと、色々ありまして…」

 

「そっかぁ」

 

「あ、1番上はビリーさん宛てです!」

 

「本当かい?僕宛てってあんまり無いからなんか嬉しくなっちゃうなぁ!」

 

ニコニコしながら、ビリーさんは上の封筒を上着のポケットにしまった。

 

「大丈夫、食べないからね!」

 

そう言うと、ビリーさんは自転車に跨った。

 

「じゃあ、お返事書くからね〜!」

 

彼は鼻歌を歌いながら、自転車で丘を降っていった。

 

「よし、僕も準備をしなきゃね」

 

荷物をまとめて、リンネアと一緒に自転車へ乗り込んだ。

 

「おでかけするの〜?」

 

「うん、ちょっとやらなきゃいけないことがあってね」

 

しばらく村を駆け抜けると、一軒のお家の前に自転車を停めた。

 

「すみませ〜ん」

 

しばらくすると、扉がそっと開いた。

隙間から顔を覗かせたのは猫の赤ちゃんだった。

 

「あっ!」

 

バタッ

と彼女はドアを閉めた。

 

 

「なか、はいれない?」

 

「おかしいなぁ、もしかして気付かなかったのかな…」

 

しばらくするとドアの向こうから声が聞こえた。

 

「ちょっとおにいちゃん!はやく!」

 

「待ってよ〜」

 

勢いよく開いた玄関から、ラテネコ兄妹が飛び出してきた。

 

「ブルースさん!」

 

「いらっしゃいませ!」

 

2人は僕たちをリビングに案内してくれた。

お父さんとお母さんにも挨拶をし、テーブルに座った。

 

「それで、お願いってなんですか…?」

 

「リンネアもしらないの〜」

 

「それなんだけど…」

 

真剣なリンネアたちを見回し、僕は話を続けた。

 

「最後の思い出に、みんなでキャンプがしたいんだ…!」

 

つづく…

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