僕がシルバニア村を後にしてから数ヶ月、その噂は村を越え、さまざまなひとに広まったらしい。
「郵便で〜す!」
「あ!ビリーさん!」
ヤギのビリーは、トイプードルのメリンダに手紙を持ってきた。
彼はメリンダに僕のことを伝えた。
「えー!帰っちゃったんですか!?」
「そうそう、不思議な話だよねぇ」
「でも、ブルースさんの腕前は凄かったなぁ」
そう振り返る彼女たちの前に、クマのパトリックがやってきた。
「やぁ2人とも。おっ、メリンダちゃんは店先の掃除か、朝から偉いねぇ」
「そんなそんな…!あ、パトリックさんも、最後にブルースさんに会ったんですか?」
「うん、村長として、村のみんなを助けてくれたことに感謝をね」
「みんないいなぁ。私も食材の買い出しで遠出してなければ会えたのに…」
「そうだねぇ、でも、きっとまた会えるさ」
パトリックが丘を見上げると、風車が風を受け、力強く回っていた。
「大丈夫さ…君だからね…」
その頃、シーサイド村ではパフィとマノンが浜辺で海を眺めていた。
「かえっちゃったねぇ」
「そうね、あ、わたしもあしたからいないから」
「えぇ!?マノンもぼくをおいて…」
「なにいってんのよ!いっしゅうかんいないだけなんだから!りょこうよ…!」
「あぁよかった…」
「そういえば、リンネアもこんどこっちくるわよ」
「そうなの…?なんで…?」
「さぁ、りょこうじゃない?」
「ふーん…みんないろいろやってるんだな…」
「ほら、そろそろかえるわよ!」
おひさま保育園では、シエルたちが帰りの会をしていた。
座って並ぶみんなに向けて、アリアがお話しをしている。
「では、明日はいよいよお泊まり会です!」
彼女の言葉にみんなは声をあげて喜んだ。
「みんな、おきがえをもってきてくださいね…!」
シエルが呼びかけると、みんなも元気よく返事をした。
「カレブくん、きいてますか…?」
「きいてるよ〜…ねるんだよね…さいこ〜…」
「あいかわず、いねむりさんです…」
さよならの挨拶をして、園庭からみんなでバスに乗り込んだ。
カールミミネコのバロウとマロウは茂みに隠れていた。
「みつかるかな?」
「バス、いっちゃったりして…!」
「あれ、バロウ、なんかある」
「あら、ほんとだ」
「こら!ふたりとも!」
急に茂みが割れ、シエルが怒った顔を覗かせた。
「わぁ、バレちゃった」
「あたりまえです!しゅっぱつまえにかぞえるんだから!」
シエルに引っ張られ、2人はバスに連れられてしまった。
街ではカールミミネコのお兄さんがレストランのディナーを準備していた。
「どうしたんだい?そんなにボーっとして」
少し早く来店していたペルシャネコのフィンがコーヒーを飲みながら声をかけた。
「いやぁ、弟たちがまた悪さをしてる様な気がして…」
「可愛い双子ちゃんだもんね、僕も兄妹が多いからわかるよ」
「そうか…」
「あぁ、そういえば、この間妹のライラが街に引っ越してきたんだ」
「えっ?ライラちゃんが?」
「そうそう、すっかり美人に成長して…会ったら惚れちゃったりして」
「ちょっと…!」
「冗談だよ。まぁ、今度紹介するさ」
フィンはカップを置くと、本を手に取った。
「やっぱりこのレストランは落ち着くね」
「居座る人が多くて、少し困っちゃうけど?」
「それがいいんだよ。きっと素敵な出会いが沢山待っているさ」
シーサイド村の灯台では、ショコラうさぎのリースが夕日を眺めていた。
「元の場所に帰ったか…彼は君の思いを受け止めてくれたようじゃ…」
少しづつ暗くなる空に、小さな光が1つ流れた。
「私も、そろそろかのぅ…」
「リースさん!」
後ろから声をかけたのは、シェイマスの娘のヤーナだった。
「おやおや、どうしたんだい?」
「ご飯ができました!パパの味になってるかどうか、しっかり確かめて欲しくて!」
「それは楽しみだ…!早くいただかないとねぇ…」
リースは彼女に手を引かれ灯台に戻った。
中ではヤーナの家族の声が賑やかに響いていた。
日が沈んだシルバニア村では、ラテネコのメイベルがお兄ちゃんと手を繋いで歩いていた。
「ブルースさんとたんけん、たのしかったね」
「そうだねぇ」
少し寂しそうな横顔を見て、メイベルはミックの手を引っ張った。
「あしたのおとまり!なにもっていけばいいかな!」
「えぇ!?そうだなぁ…望遠鏡とか…?」
「たんけんじゃないのに〜」
「確かに、お泊まりじゃ使わないね…!」
2人は笑い合いながら帰路についた。
「おにいちゃん」
「なあに?」
「またあえるよ…」
メイベルの手を、彼も強く握り返した。
「うん、楽しみにしてなきゃね」
ハスキーファミリーの庭ではリンネアが芝の上に寝転んでいた。
「そろそろ、おへやかえるの」
一緒に遊んでいた双子のアンバーとジェレミーを彼女は呼んだ。
「ジェレミー、こっちくるの〜」
ジェレミーは微笑みながら芝の上をゴロゴロと転がっていた。
リンネアは仕方なく、彼を抱っこして家に戻った。
「おねえちゃんも…らくじゃないの…」
その頃、僕は新しい仕事の初日を終えた。
「明日からもよろしくお願いします!」
「よろしくね〜、なんか嬉しそうだね。なに、楽しみでもあるの…?」
「はい…ちょっと思い切って買ったものが届きまして…」
「いいねぇ、就職祝いって感じかな?楽しんでね!」
「ありがとうございます…!」
家に帰ると、宅配ボックスに荷物が入れられていた。
扉から出てきたのは、想像以上の大きさのダンボールだった。
「でっかいなぁ…」
両手で抱えながら自分の部屋に上がると、早速ダンボールを開いた。
箱の窓からはブルースとリンネアが覗いていた。
「久しぶり…」
箱から建物を出し、部品の小箱を開けた。
中には見覚えのある家具が詰まっていた。
「お手伝いしてくれる…?」
リンネアを中に置き、風車の羽や2階の床を取り付けた。
家具を整えた後、リンネアの周りにハスキーファミリーのみんなを並べる。
みんなの視線は、どこか暖かかった。
僕にも帰る場所ができたような、そんな気持ちになれた。
「ただいま…リンネア…」
微かな声に、リンネアも振り返った。
「ブルース、おかえりなの」
〜おしまい〜