シルバニアファミリー 森の迷子さん   作:蒼マル

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サイドストーリー 波打ちぎわの一歩 [後編]

「さあ!島に着いたわよ!」

 

アモラの船は砂浜に乗り上げていた。

パフィ達は初めて島に上陸した。

 

「ここが…しま…」

 

「みて!きれいなかいがあったよ…!」

 

スパイクは虹色に輝く貝殻をパフィに渡した。

 

「ほんとだ…きれいだね…!」

 

アモラは2人の様子を微笑みながら見守った。

その横で、リンネアは船をジーッと見つめていた。

 

「おふね、およげないの」

 

「大丈夫よ〜。私だけでも押せるくらいの重さだから!」

 

アモラはそう言うと、実際に船を押して海へ出た。

 

「あっ!青い箱にジュース入ってるから、一緒に飲んでね〜!」

 

「うん!ありがと〜!」

 

アモラは笑顔で手を振り、村に戻っていった。

彼女を見送ると、缶ジュースを持って砂浜を散策した。

辺りを見回したスパイクがリンネアに尋ねた。

 

「それで、このしまはなにがたのしいのかな?」

 

「リンネア、きたことないからわからないの」

 

「いや、ぼくもはじめてで…」

 

「…」

「…」

「…」

 

「いったん、あるこうか…」

 

3人で砂浜を歩いていると、大きな海賊船が現れた。

 

「これはこれは…!」

 

スパイクは目を輝かせ、すぐに船の上へと駆け上がった。

 

「いい!とてもかっこいいよ!」

 

パフィとリンネアは下からスパイクを見守っていた。

 

「おちないようにね〜」

 

「あぁ、まかせておいて!」

 

「でも、さっきプールおちてたの」

 

「こらこら…」

 

パフィとリンネアも船の上に登り、一緒に砂浜と海を眺めた。

遠くでは他の子ども達がクジラの滑り台で遊んでいる。

 

「すべりだいがにんきなんだね…」

 

「ふねもかっこいいけどね!!」

 

「かっこいいの〜」

 

そんな時、ふたり組の赤ちゃんが船に近づいてきた。

 

「なにしてるの〜」

「もしかして、かいぞくさん?」

 

彼らの質問を聞き、スパイクは船首に胸を張って立った。

 

「いや!ぼくたちはゆうかんな、ぼうけんかさ!!」

 

「わぁ〜!」

「わぁ〜!」

 

スパイクの姿に、ふたりは目を輝かせた。

 

「なんだか、マノンみたいだね!」

 

「うんうん、スパイクたいちょーだね!」

 

「またこんどは、きみたちといっしょにあそぼう!きょうはパフィとリンネアがいるから、すまない!」

 

「はーい!」

「はーい!」

 

ふたりは楽しそうに話しながら、滑り台の方へ戻っていった。

 

「マノンもスパイクもにんきなの」

 

「そうだねぇ」

 

「マノン、みんなのせんちょーなの?」

 

「いまはそうだねぇ、でも、さいしょは…

 

 

パフィとマノンは今日も一緒に山を冒険した。

 

「つかれたぁ」

 

「はんぶんでかえってきたじゃない!」

 

「だって…やまたかいんだもん…!」

 

夕焼けの海岸線を歩くパフィたちの前から、何やら子どもたちが近づいてきた。

 

「あ、クルーズボートのかえりかな?」

 

そう言ったパフィの陰に、マノンは隠れていた。

 

「どうしたの…?」

 

「ちょっと…」

 

少しずつ近づくパフィ達に子どもたちも気がついた。

 

「あっ!パフィちゃんだ!ひさしぶり!」

 

「うん、ひさしぶり…」

 

「あれ、だれかいるの…?」

 

子どもたちはパフィの後ろを覗くと、マノンと目が合った。

 

「あっ…」

 

彼女の存在に気づくと、子どもたちは早足で通り過ぎて行った。

 

「パフィちゃんまたね…!」

 

彼は不思議そうに子どもたちを見つめた。

マノンも彼らが去ったことに気付き、再び歩き始めた。

 

「あっ、ねぇ!なにがあっ…た…」

 

パフィは言葉をすぐに押し込めた。

数歩前のマノンの手は小さく震えていたからだ。

その夜、パフィは帰り道での出来事を思い出していた。

 

「マノン…どうしたんだろ…」

 

そう考えていると、ふと自分のことを思い出した。

 

「ぼくもふるえてたっけ…」

 

マノンと出会ってからの楽しい日々が、彼の不安を忘れさせていたのだ。

 

「なにか…できないかな…」

 

翌朝、パフィは久しぶりにクルーズボートにやってきた。

 

「よし…!」

 

クルーズボートが出発すると、パフィは以前すれ違った子たちを探した。

 

「あっ、いた…」

 

彼は声をかけるのを少し躊躇った。

しかし、あの時のマノンを思い出して、一歩を踏み出した。

 

「ねぇ!マノンのこと、しってる…?」

 

「パフィちゃんだ!うん、しってるよ…」

 

彼らはパフィに昔のことを語ってくれた。

 

「マノンちゃん、いつもひとりであそんでるの」

 

「そうなの…?」

 

「うん…まえに、せんいん?になりなさいっていわれたけど、ならないよっていったら、そのままボートにこなくなっちゃったの…」

 

「そっか…」

 

「マノンちゃん、きらいじゃないんだけど、よくわからないのがちょっとこわいなって…」

 

「うん…わかった…!きかせてくれて、ありがとうね…!」

 

分からないことが怖い。ふと彼らから出た言葉はパフィの頭を巡った。

寝る前にも、その言葉の意味をベッドで考えた。

 

「よくわからない…か…」

 

次の日から、パフィはとある準備を始めた。

 

「シェーンさん…!」

 

「パフィくん!どうしたんだい?」

 

「あの、じつはクルーズボートでやりたいことがあって…」

 

1週間が経った頃、パフィはマノンと一緒に海に出ていた。

 

「あんた、なれてきたわね」

 

「せんちょーがじょうずだからだよ」

 

「なによ!きゅうにほめて!」

 

「ほめてもおこられる…」

 

そんな2人の近くで、大きな汽笛が響いた。

視線を向けた先には、クルーズボートがゆっくりと島を目指して進んでいた。

 

「あのさ…」

 

「ん?なによ?」

 

マノンは不思議そうな顔でパフィを見つめた。

 

「えっと…」

 

言葉に詰まったパフィだったが、覚悟を決めて話を切り出した。

 

「あした、ひさしぶりにのってみない…?クルーズボートに…」

 

少しの沈黙に、パフィの顔を汗が伝った。

 

「うん、いいわよ…べつに…」

 

「ほんと…?」

 

「そのかわり、パフィもいっしょにきなさいよね…!」

 

「もちろん…!」

 

 

「しゅっぱつだっ!!」

 

スパイクの希望で、パフィたちは島の頂上を目指すことになった。

 

「なにがあるんだろう…!たのしみだなぁ!」

 

「パフィ、はやくするの〜」

 

「ちょっとまって…ふたりとも…はやい…」

 

スイスイと坂道を登るスパイクとリンネアに、パフィはなんとかついていった。

 

「ここだねっ!」

 

見晴らしのいい場所に出ると、スパイクは切り株の上に立ち、景色を眺めた。

 

「きれいなの〜」

 

彼らの少し後から、パフィが追いついてきた。

 

「ついた…やっと…」

 

パフィ達はしばらく木陰に座って休憩をした。

 

「おつかれ!がんばったね!」

 

「ううん、スパイクはやっぱりすごいね…さっきもはじめてのともだちと、げんきにはなしてたし…」

 

「そうかなぁ?ぼくはパフィもすごいとおもうけど」

 

「ぼくが…?」

 

「あぁ!きょうだって、まよわずぼくのあんないをひきうけてくれたし…!」

 

「うぅん…それはあたりまえというか…だれでも…」

 

「そんなことないよ」

 

スパイクは立ち上がって、パフィの頭を撫でた。

 

「きみのやさしさは、すごいことさ!あたりまえじゃない…!

 

 

翌朝、パフィはマノンの家を訪ねた。

呼び鈴を鳴らすと、中から出てきたのはお母さんのマイラだった。

 

「あら!パフィちゃん!」

 

「あっ…どうも…」

 

パフィはマイラがすぐに自分の名前を呼んだことに驚いた。

 

「マノン…いますか…?」

 

「ここにいるわよ!」

 

「えっ…?」

 

パフィが横を見ると、マノンが立っていた。

 

「この子、朝からソワソワしちゃって、ずっと木登りしてたのよ…!」

 

「ちょっとママ!それはないしょでしょ!」

 

「ごめんごめん!今日は楽しんできてね!」

 

お母さんに送り出された2人はクルーズボートへと向かった。

他の子どもたちは先にボートに乗り込んでいた。

 

「おはよう…!もう準備はバッチリだよ…!」

 

船長のシェーンが手招きをしながら2人を呼んだ。

 

「なによ、じゅんびって」

 

「いいからいいから」

 

ボートの2階に上がると、みんなが船の先頭を向きながら座り込んでいた。

 

「ほら、おいでおいで」

 

パフィはマノンの手を引いて、みんなの前に立った。

 

「みんなおはよう…!」

 

「おはよ〜!」

「おはよ〜!」

 

パフィは服の中から紙を取り出し、読み上げ始める。

 

「えっと…きょうはよくあつまってくれた!これから、このふねのなかにかくした、たからのちずをさがしてもらう!」

 

「ちょっと…どういうこと…?」

 

「いいからきいてて」

 

パフィは再び話を始めた。

 

「きょうはみんなはかいぞくだ!このマノンせんちょーのいちいんとなるのだ!」

 

みんなは拍手をすると、パフィはマノンを真ん中に立たせて、目の前に座り込んだ。

 

「ほら、せんちょーのひとことちょうだい…!」

 

マノンは少しモジモジとしたが、パフィの目を見て、気持ちを切り替えた。

 

「みんなよくあつまったわね!このマノンかいぞくだんにはいれたこと、よろこぶといいわ!」

 

マノンの言葉に、みんなは手を叩いて答えた。

 

「じゃあ、さっそくちずさがしをはじめるわよ!」

 

「お〜!」

「お〜!」

 

ボートが出港し、船内で宝の地図探しが始まった。

 

島に到着する頃、しおかぜウサギの男の子が棚の裏に隙間があることに気がついた。

 

「これなんだろう…?」

 

隙間には1冊の本が挟まっていた。

彼は手を伸ばしてそれを取り出すと、中から1枚の紙が出てきた。

 

「ねぇ!あったよ!宝の地図!」

 

彼は2階のマノンのところに地図を持ってきた。

その様子を見て、他の子どもたちも集まってきた。

 

「どれどれ…」

 

マノンはじっくりと地図を見回した。

 

「これは…」

 

「これは…?」

 

「たからのちずよ…!!」

 

マノンの一言に、みんなは大盛り上がり。

パフィもその様子を遠くから見守っていた。

 

「じゃあ、たからものをさがしに、しまにいくわよ…!」

 

「お〜!」

「お〜!」

 

地図を受け取ったしおかぜウサギの男の子を筆頭に、子ども達は次々と海に飛び込んでいった。

最後に、マノンとパフィの2人がまだ船にいた。

 

「せんちょー、みんなをひっぱってきて」

 

「パフィ…」

 

パフィの後押しで、マノンは船の滑り台へゆっくり歩いていった。

彼はその様子をみていた。

 

「ごめんね…いっしょにいけなくて…」

 

「なによそれ…」

 

浮き輪があっても、パフィは船から飛び込むことができなかった。

 

「マノンせんちょ〜!はやく〜!」

 

島の砂浜で、子ども達がマノンを待っていた。

 

「ほら、せんちょーがいかなきゃ…!」

 

マノンはグッと手を握りしめ、子ども達の方を見た。

 

「せんちょーはふねをみはってるわ!あなたたちがみつけてきなさいっ!」

 

突然の言葉に、パフィは驚いた。

 

「えっ…いかないの…?」

 

「せんちょーがふねにのこらないで、どうするのよ!たからさがしは、ぶかにおまかせよ…!」

 

そう言うと、マノンはパフィに浮き輪を被せた。

 

「うっ…」

 

「ほら!プールであそぶわよ…!」

 

パフィは浮き輪でプールに入ると、いつものようにマノンと遊んだ。

そんな2人の様子を、シェーンも遠くから見守っていた。

 

「なんか、シルバニアにいた頃を思い出すなぁ」

 

マノンと一緒に浮かびながら、パフィは空を見上げた。

 

「ねぇ、どうしてのこってくれたの?」

 

「あんたといるのが、いちばんたのしいからよ」

 

「そっか…」

 

しばらく黙った後、パフィは更に尋ねた。

 

「あのさ…はじめてあったとき、どうしてこえかけてくれたの…?」

 

「…。ヒミツよ…」

 

「ヒミツって…」

 

そんな話をしていると、みんなが島から帰ってきた。

 

「せんちょ〜!」

 

「みつけたよ〜!!」

 

子ども達は船上に上がると、マノンの元に金色の王冠を持ってきた。

 

「見張り台の上にあったんだ!」

 

マノンはパフィに目配せをすると、彼は笑顔で頷いた。

 

「あたり!よくみつけたわね!これでみんなもマノンかいぞくだんのいちいんよ!」

 

みんなは次々に喜びながら拍手をした。

 

「マノンせんちょー!ばんざーい!」

 

「せんちょー!」

「せんちょー!」

 

マノンを中心に盛り上がる姿を、パフィは遠くから見守っていた。

誇らしい反面、少し寂しくもあった。

 

「みんな、そろそろシーサイド村に帰るよ〜!」

 

シェーンがそう言うと、クルーズボートが汽笛を鳴らし、村に向かって進み出した。

パフィとマノンは夕焼けに照らされた街を眺めた。

 

「いつもより…きれいにみえるね…」

 

「そうね…」

 

マノンはそっと、パフィに何かを手渡した。

 

「えっ?」

 

「あんたにあげる」

 

マノンが差し出したのは、宝箱の王冠だった。

 

「あんたが、かんがえてくれたんでしょ」

 

「バレちゃったか…」

 

「あたりまえでしょ…」

 

照れ臭そうにマノンは呟いた。

 

「ありがとね…」

 

「うん…ぼくもありがとう…」

 

 

パフィ達3人は、来た道の反対側を降っていた。

 

「だれもいないよ…?」

 

「だれもいないところに、たからはあるのさ〜」

 

「そういうものなのね…」

 

草の生えた道を降りていくと、薄暗いトンネルが現れた。

 

「トンネルなの〜」

 

「あの…ここいくの…?」

 

「もちろん!」

 

スパイクは元気にトンネルへ向かっていった。

 

「リンネアもいくの〜」

 

「あっ!ちょっと!」

 

スパイクの後を追って、リンネアもトンネルへ進みだした。

 

「リンネアはこわくないの?」

 

「ちょっとこわいの、でも」

 

リンネアは振り返って、パフィの手を取った。

 

「こわいことのあとに、うれしいことがあるの」

 

「うれしいこと…

 

 

船が桟橋に戻ってくると、子どもたちは次々に降りていった。

 

 

「マノンせんちょー!またね〜!」

「つぎはいっしょにあそぼうね!」

 

そんな声を受けながら、マノンとパフィは桟橋を歩いていた。

 

「あっ!マノン!」

 

遠くから手を振っているのは、マノンのお母さんのマイラだった。

 

「あっ!ママ〜!」

 

マノンは笑顔で手を振りながら、マイラに駆け寄った。

パフィもその後をゆっくりと追いかけた。

 

「降りてくる子たち、みんなマノンの話してるじゃない…!」

 

「パフィのおかげよ」

 

「あっ、どうも…」

 

パフィはぺこりとお辞儀をした。

その様子を見たマイラも笑顔でパフィを見た。

 

「パフィちゃんありがとう…!本当に、アモラに紹介してもらって良かった…」

 

「しょう…かい…?」

 

紹介という言葉に、パフィは何のことか全く分からなかった。

 

「あっ…ごめんね!気にしないで!」

 

「ママが…なにかしたの…?」

 

パフィは不安で目の前が歪み初めた。

 

「マノン…しょうかいされたの…?」

 

「パフィ…!ちがうの…!」

 

「ごめんねパフィちゃん!」

 

咄嗟にマイラが伸ばした手を、パフィは思わず叩いた。

 

「だから…ふたりとも、ぼくのなまえしってたんだ…」

 

彼の目からは涙が溢れた。

 

「ぜんぶママがつくったことだったんだ!ぜんぶウソだったんだ!!」

 

「パフィ…!」

 

「しんじてたのに…!」

 

パフィは桟橋から勢いよく走り去った。

 

「パフィ…」

 

マノンはマイラを鋭く睨んだ。

そして、すぐに彼の後を追いかけていった。

 

パフィはいつもの高台にやってきた。

崖際に座り込み、海を眺めた。

 

「もういやだ…かえりたくない…」

 

夕日が沈み始めた海は、涙で滲んでいる。

 

「ずっとひとりなんだ…ずっと…」

 

「パフィ…!!」

 

彼の背後から、誰かが大声で叫んだ。

 

「わぁ!?」

 

立ち上がり、振り返ると、そこにはマノンがいた。

 

「マノン…」

 

「ねぇ!…」

 

マノンが何かを言いかけたその時、パフィの足元が崩れた。

 

「あっ…」

 

彼はそのまま海へ落下した。

 

「うわぁ…!!」

 

荒れた海は彼をすぐに飲み込んだ。

顔は沈み、息もできない。

崖からはどんどん離れていった。

 

そっか…ぼくはこのまま…

 

薄れる意識の中、微かに見えたのは、何かが海に飛び込む様子だった。

 

その頃、マイラはパフィの家を訪ねていた。

 

「アモラ!アモラ!!」

 

「マイラじゃない!どうしたの…?」

 

「パフィちゃんが…!」

 

マイラの一言に、アモラは目を見開いた。

 

「何があったの…!?」

 

荒れた海の中、マノンの声が響き渡る。

 

「パフィ…!!」

 

マノンは必死に泳いで彼を追いかけた。

荒波に飲まれながら、暗い海へ潜った。

日が落ちた水中は、ほとんど視界がない。

その時、微かに泡が浮いてるのが見えた。

 

泡を辿って沈んでいった先に、小さな光が反射している。

目を凝らすと、パフィが持つ王冠が月明かりを反射していた。

 

マノンは彼を抱え、水面に向けて上がっていった。

顔を出した時には、パフィの息は既になかった。

 

「はぁ…はぁ…」

 

パフィを片手で抱きしめ、もう片方の手でがむしゃらに水をかいた。

 

「だめ…ぜったいだめ…」

 

なんとか砂浜にたどり着いた彼女は、足を引きずりながら、パフィを仰向けに寝かせた。

 

「おきなさいよ…」

 

マノンは必死にパフィの胸を押し込んだ。

 

「あんたがいなくなったらどうするのよ!」

 

声をかけても、反応はなかった。

 

「おいてくなんて!ゆるさないんだから!!」

 

マノンは泣きながら、彼をギュッと抱きしめた。

 

「こえをかけたのは…ママにいわれたからじゃないの…」

 

パフィがどこかへ行ってしまう。

そんな恐怖がマノンを襲った。

 

「あんた、さみしそうだったから!わたしとにてたからよ!」

 

その時、パフィが微かに唸り声を上げた。

 

「うぅ…」

 

「パフィ…!?」

 

パフィは咳き込みながら水を吐き出した。

そして、ゆっくり目を開いた。

 

「マノン…くるしいよ…」

 

マノンはパフィを更に強く抱きしめた。

 

「ばか…!」

 

「えぇ…どうしたの…?」

 

「いいのっ!」

 

「うぅ…やっぱりくるしい…」

 

 

「わぁ…!」

 

パフィ達は砂浜の反対までやってきた。

そこには、見渡す限りの海が広がっており、大きな船が行き交っている。

 

「いいながめだ…!」

 

パフィ、リンネア、スパイクだけが、広い海を静かに眺めていた。

 

「きれいだね…」

 

「がんばったごほうび、たりたかい?」

 

「そんなの…」

 

波の動き、風の音、全てがパフィの中に入ってきた。

 

「あたりまえでしょ…」

 

夕日が沈む中、パフィ達はアモラの船で村へと戻った。

リンネアとスパイクは後ろの席でぐっすりと眠った。

パフィはアモラの横にちょこんと座っている。

 

「パフィ…楽しかった…?」

 

母の問いに、パフィはすぐに答えた。

 

「うん、たのしかったよ…!」

 

パフィの目を見て、彼の気持ちがしっかりと分かった。

アモラは思わず涙をこぼした。

 

「私ね…あの時後悔してたの…マイラとか、他のひとに助けを求めるんじゃなくて、自分が真っ先に助けてあげるべきだったって…」

 

「うん…」

 

「パフィ…遅くなってごめんね…」

 

「だいじょぶ…」

 

彼はアモラにギュッと抱きつた。

 

「ママありがとう…だいすきだよ…」

 

「うん…ママもパフィのこと大好きよ…」

 

パフィとアモラは寄り添ったまま、海の上を進んでいった。

 

彼らが桟橋に戻ると、夕焼けに包まれたシーサイド村にバイクの音が響いた。

 

「あっ!パパがきた…!」

 

「スパイク、お待たせ」

 

彼はお父さんとお揃いのヘルメットとゴーグルを装着した。

 

「スパイク、かえっちゃうの」

 

「うん…でも、ひっこしたらあえるよね」

 

遠くから見守るパフィとリンネアに、スパイクは気づいて駆け寄った。

 

「スパイク…?」

 

戸惑うパフィとリンネアを、彼は両手でギュッと抱きしめた。

手を離した後、彼は2人の目を見た。

 

「パフィ…リンネア…きみたちのおかげで、ひっこしがたのしみになったよ。ありがとう…!」

 

「うん…!」

 

「リンネアもまってるの〜」

 

2人の返事に、スパイクは笑顔を浮かべた。

 

「またあおう…!!」

 

お父さんのバイクに跨り、スパイクはシーサイド村を後にした。

彼が見えなくなる頃、リンネアが横を見ると、パフィが俯きながら涙を流していた。

 

「パフィ、かなしいの?」

 

「ちがう…ちがうよ…ただ…うれしくて…」

 

リンネアはパフィの頭をポンと撫でた。

 

「さわりたくなるの〜」

 

その夜、パフィは机に向かっていた。

彼の手には、昨日の手紙があった。

 

「よし…!」

 

パフィは新しい紙を取り出すと、鉛筆を走らせた。

 

 

エマちゃんへ

おひさしぶりです。

なかなかへんじをかけずにごめんなさい。

シーサイドむらでのせいかつは、とってもたのしいです…

 

翌朝、パフィはリンネアと一緒にポストへ向かった。

 

「これでよし…!」

 

「パフィのおともだちなの?」

 

「うん…まちにいたときのね」

 

リンネアを見ると、藍色の浮き輪を持っていた。

 

「どしたのそれ…?」

 

「パフィのママがくれたの〜」

 

「またかってに…」

 

「ポストでなにしてるのよ?」

 

パフィとリンネアが振り返ると、マノンが手を腰に当てて立っていた。

 

「せんちょーなの〜!」

 

「マノン!?まだりょこうちゅうじゃ…?」

 

「むこうがあめで、はやくかえってきたのよ」

 

「そっか…」

 

リンネアはマノンを抱きしめ、顔を擦り寄せた。

 

「せんちょー、あそぼうなの〜」

 

「しかたないわねぇ…じゃあ、うみにたからさがしにいくわよ…!」

 

「やったの〜!」

 

海に歩いていく2人をパフィは少し後ろから眺めた。

シーサイド村での思い出が、彼の頭を巡った。

 

「やっぱり、ぼくってしあわせだ…」

 

遅れるパフィに、マノンは振り返った。

 

「どうしたのよ、はやくいくわよ…!」

 

そう言うと、彼女はパフィの手を引いた。

 

「パフィはやくするの〜!」

 

「ちょっと、ふたりがはやいんだよ〜!」

 

「そういえば、ブルースはげんきなの?」

 

「うん〜、やわやわのおうどんたべたの〜」

 

「おうどんってなによ」

 

「やっぱりマノンもしらないよね?」

 

今日もまた、パフィの日常が始まった。

 

〜おしまい〜




海に着いたリンネアたちは何かを見つけた。

「ねてるの〜?」

「このこ、みないかおね」

「どうしたの〜?」

少し遅れて、パフィが到着した。

「だれかたおれてるの〜!」

「ほんとだ…たいへんだ…!」

彼らが見つけたのは、アライグマの赤ちゃんだった…

その頃、とある村では家族が部屋を片付けていた。

「お〜いPJ〜!そろそろ引っ越しに向けて整理するんだよ〜」

「はーいパパ〜!」

少年は自身のサスペンダーをパチンと鳴らした。

「まっててね…パフィ・フローター…!」
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