超次元ゲイムネプテューヌ Origins Transition   作:シモツキ

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 前話(本編第十五話)の後書きにてお知らせした通り、今話より再びOriginsシリーズがこれまでコラボしてきた全作品との合同コラボを開始します。方向性としては、今回ならではの要素やコンセプトもありますが、それを抜いた部分ではOSにて行ったものと近い…つもりですので、今回の合同コラボも(長くなると思いますが)楽しんで頂けると幸いです。


コラボエピソード 再び歩みは繋がり重なる
第一話 見知らぬ次元に降り立って


 一期一会。たった一度の出会いと別れ。そこには尊さが、美しさがある。二度とはないひと時だからこそ、いつかの未来に不安と期待を抱くからこそ、それは綺麗な思い出に、大切な記憶になる。

 けれど…それがどれだけ美しく綺麗なものだとしても、一度きりの出会いと別れで物語が閉じ、輝かしく温かい思い出として封をされてしまうのは、寂しいと思う。私が望むのは、思い出という過去にしてしまう、なってしまう事ではなく、今を、これからを、皆と描く事。紡ぎ、思い出を重ねていく事。さよならじゃなくて、またねにする事。私は、そうしてきた。初めは偶然で、自分ではどうにもならない事で、だけど確かに私は出会いを重ね、出会いを『再会』へと繋げて…そうして、ここまで来た。今の私を築くものの中には、確かに皆の存在があるし…きっとそれは、これから先もそう。

 これは、この思いは、間違っていない。私はそう信じている。でも…いやだからこそ、誤ってはいけない。終わらない事、終わらせない事と、変わらない事は、まるで違うと。同じように動いていても、進み続けるのと、その場で足踏みをする事では…前進と停滞は、まるで別だと。

 

 

 

 

 寄せては返す、波の音。透明度の高い水と、白い砂浜。よく晴れた空に、砂浜から続く広い森。一言で言うならここは…バカンスにぴったりな島。

 

「あっつー…灼熱って程ではないけど、暑いねここ……」

「まあ、この景色で寒かったら違和感があるっていうか、なんか嫌よね」

 

 襟を指で引っ張り、逆の手で仰いで風を送る。大概こういうのって焼け石に水だけど、引っ張って仰ぐ位コストなんてないも同然だし、いちいちそんな事を気にしていたらキリがない。

 

「ともかくまずは回ってみましょ。ぐるっと一周…するのは時間がかかるでしょうけど、一周もすれば何かしら情報は得られるだろうし」

「そうだね。じゃあ…っと、その前に…イストワールさん、聞こえますか?」

「大丈夫です、聞こえていますよd(^_^o)」

 

 インカム越しにイストワールさんと会話を交わす。インカム越しで…そして更には次元越しで、ちゃんと交信出来ている事を確認する。

 ここは、信次元じゃない。神次元でも、零次元でもなく…何もかもが未知の、小さな次元。次元を大小で語るのは適切ではない…けど、便宜的に、私達はそう称している。

 

「これから私達は、この次元…というか、島?…を回ってみようと思います。手筈通り、一度扉を閉めてもらっていいですか?」

「分かりました。そちらの状況に関わらず、時間になったら、或いは何か異常が観測された場合は再び開きますが……」

「扉を閉じて、接続が途絶えた状態で、こっちと信次元との時間の流れが同じかどうか…違う場合、どの程度差があるかは現状なんとも言えない、でしょ?分かっているわ」

 

 理解している、と同じくインカムで話すセイツが答える。それから幾つかの確認のやり取りを交わし…私達がここへ来る為に潜った次元の扉が、空間へ溶けるようにして消滅する。

 信次元との繋がりが切れた事で、当然インカムも繋がらなくなり、シェアエナジーの供給も途絶える。シェアクリスタルも持ってきているとはいえ、もし時間の流れがあまりにも違っていた場合、イストワールさんが再度扉を開いた時にはもう、私もセイツも完全にシェアエナジーが枯渇していて…となる可能性もゼロではない訳だけど、それを気にしだしたら何も出来ない。それに、開きっ放しには出来ない理由もある。

 閉じた次元の扉。それを見届けた私はセイツと顔を見合わせ、頷き合い…歩き出す。

 

「…あ、そういえば一周っていっても、何か目印がないと分からなくなるよね。どうしよう?」

「そうね…あ。丁度あそこに、ちょっと突き出た地形があるじゃない。あれを目印にしましょ」

 

 セイツが発見したのは、水中へ飛び込みをするのにおあつらえ向きな場所。ちょっとあそこから跳んでみたい衝動に駆られたけど…今は我慢。

 その場所に足を運び、位置や周囲の光景をしっかりと記憶した上で、私とセイツは再出発。

 

「にしても、随分と良い景色よね。もし神生オデッセフィアにこういう場所があれば、良い観光スポットっていうか、レジャーにぴったりな地になりそうなんだけど……」

「案外探せばあるのかもよ?勿論全部の要素を満たす…ってなると難しいけど、これ位透き通った湖とかだけなら、まだ探索しきれてない場所のどこかにあったりしてね」

「…やるわねイリゼ。そうやって言う事で伏線にして、後々本当に出てくる展開への導線を作った訳ね?」

「いや、そんなメタ視点全開の思考なんてしてないんだけど…」

 

 変化球過ぎる評価のされ方をされても…と突っ込む私。一方セイツは分かった上でふざけていたみたいで、期待通りだとばかりの表情で笑う。その後私達は砂浜を歩いていき…そんな中で、私はふとある事を思い出す。

 

「…あのさ、前に私、皆と信次元のある浮島にバカンスに行ったんだ。そこもこういう感じの場所で、皆で目一杯楽しんで…懐かしいなぁ…」

「へぇ…くっ、その場にいられなかった事が残念だわ…!懐かしむ気持ちだけでも楽しさが伝わってくるんだもの、もしその場にいられたら今よりもっと、ずっと激しく煌めくイリゼの…ううん、皆の感情に触れられたのに…!」

「あはは…まず出てくるのがそれな辺り、ほんとセイツはセイツだね…。…また今度、こういう場所に行こ?こういう場所で、皆と一緒に楽しもうよ」

「誘ってくれるのは嬉しいですけど、こんな暑い場所はちょっと…わたしとしては、避暑地というか、もっと涼しい場所が良いというか……」

「そっか…でも、一緒にって事自体は嫌じゃないんだね」

「わたしはこういう場所でも構わないわよ?なんならちょっと、今から遊ぶのも悪くないと思うし」

「気が合うわね、実はわたしもそう思っていたわ。調査を二の次にする訳にはいかないけど、折角こんな良いロケーションなんだし、何もしないのは勿体無い……」

 

「…………」

「…………」

 

 ぴたり、と会話を止め、セイツと顔を見合わせる。何気なく話していたけど…今、明らかに私でもセイツでもない声が混じっていた。しかも一人じゃなくて、二人いた。そしてゆっくりと声のした方を見てみれば、そこには飴色の髪をした、瓜二つな容姿の女の子達がいて……

 

『って、二人共いつからいたの!?』

 

 私達は、ぎょっとした。それはもう驚いた。だって、いつの間にか…しかもさも当然のように、幻次元の双子の女神、ディールちゃんとエストちゃんがいたんだから。

 

「気付くの遅くないですか…?」

「いたならもっと早い段階で声を掛けて頂戴…で、いつからいたの?」

「おねーさん達が信次元にまた来てくれた三人の友達と、ゲーセンで異文化ならぬ異次元交流してた辺りから?」

「OT第四話の時点で!?嘘ぉ!?」

「うん、嘘だけど?」

「だろうね…!」

 

 堂々と嘘を吐くエストちゃんに、私は片手で頭を抱える。…そんな訳ない?言われるまでもなく、嘘に決まってる?…だ、だとしても突っ込むのが信次元の女神なの…!

 

「まあ今のしょうもないやり取りは置いておいて」

『しょうもない…!?』

「イリゼさん、セイツさん、二つ訊きたい事があります…。お二人は、どうしてここに?あちらの方には行きましたか…?」

「どうして、っていうと…さっきも言った通り、調査の為…かな」

「あっちって、森の方よね?わたし達は砂浜をぐるりと回っていたところで、そっちには行ってないわ」

「ふぅん…って事は、ここにはわたし達の他にも、まだ誰かいるみたいね」

 

 ばっさり切り捨てられた私とエストちゃんの反応を気にする事なく、ディールちゃんは訊いてくる。そしてそこからのやり取りを経て、エストちゃんが気になる事を口にする。

 なんでも、二人は森の方で足跡…それもかなり新しいものを見つけて、さっきまで調べていたんだとか。で、そうしている内に砂浜に出て、私達を見つけて…しれっと会話に加わったらしい。

 

「敵か、味方か、それともどちらでもない第三者か…何れにせよ、誰かいるなら確かめる必要があるわね」

「だね。…二人共、協力してくれる?」

「んー…ま、わたしはいいわよ?丁度良くおねーさん達がいたから、後は任せてはいさよなら、なんてつもりはないし。けど……」

『けど?』

「…見ての通り、ディーちゃんは暑さでやられてるから、あんまり期待しない方がいいわよ?」

「失礼な…わたしだって別に、任せきりにするつもりはないよ…。…出来る限り動きたくはないけど……」

 

 ほらね?と肩を竦めるエストちゃん。確かに今のディールちゃんからは、やる気はあるけど活力がないというか、暑さでへろへろになってる感じがある。…うーん、やっぱり雪国の女神だから、暑いのは苦手なのかな…けどエストちゃんは平気そうなんだよね…。

 

「いや、わたしだって暑いし暑さは鬱陶しいと思ってるわよ?ただ、ディーちゃんはわたし以上に弱いってだけで」

「そ、そうなんだ。……なんかもう、当たり前のように地の文読んでくるね…」

「おねーさん達と何度も関わってるせいでこうなっちゃったのよ、どうしてくれるつもり?」

「いやそれをこっちサイドのせいにされても……」

 

 殆ど言い掛かりレベルの文句に私は肩を落とす。とはいえ、エストちゃんが本気で文句を言ってる訳じゃない事は分かっているし、気を取り直して行動再開。パーティーにディールちゃんとエストちゃんを加え、まずは二人が見つけた足跡を確認しに行く。

 

「これが、二人の見つけた足跡…確かに最近、っていうか出来たばっかりな感じがあるね…」

「しかも、多分複数よね。…痕跡見つけたし、調査ポイント手に入るかしら?」

「無理でしょ」

「無理でしょうね…」

「そもそもこれモンスターの痕跡じゃないでしょ多分」

「んもう、ちょっと位乗ってくれても良いのに…」

 

 不満そうなセイツを尻目に、足跡をよく観察する。ただ、新しい割には分かり辛いというか、所々で飛び飛びになっていて、進路を…或いは来た道を辿るのが難しい。

 

「…こほん。取り敢えず、向き的にはあっちに行ってるみたいね。二人はあっちも調べた?」

「いえ、それより前にお二人を見つけたので……あっ」

「え?ディーちゃん、何か見つけたの?」

「うん…あそこ、涼しそう……!」

『ディー(ル)ちゃん……』

 

 嬉々として駆けていくディールちゃんに、私達は揃って何とも言えない気持ちになる。…因みに数十秒後、ディールちゃんは「そんなに涼しくなかった…(しょんぼり)」と言いながらとぼとぼ戻ってきた。

 まあともかく、私達は足跡を、この辺りを歩いていたのであろう人達を追跡。同時に下だけじゃなく周囲にも目をやり、耳を澄まし、どこかにいる筈の『誰か』を探す。

 

(私達と同じように、この足跡の主達も砂浜を歩いてくれてたら追跡も楽なんだけど…なんて考えても無駄か……)

 

 次第に森の奥側へと進んでいく足跡。追跡という事もあってか、段々皆静かになっていく。静かに、黙々と、追跡に集中する形になり…ある時、私は気付く。

 

「…あれ?…あ、待って…!ここで急に、足跡が慌ただしい感じになってる…!もしかしたらこの辺りで何かあったのかも…!」

「ちょっ、イリゼさん…!」

 

 突然散乱するような状態となった足跡を見て、私は駆け出す。ひょっとしたらここで、何者かに襲われたのかもしれない。だとしたら、一刻も早く見つけないと……そう、思った時だった。

 

「──え?」

「……ッ!イリゼッ!」

 

 風を切るような音が聞こえた次の瞬間、何かの影が襲来する。側面から私に肉薄し、勢いそのままに刃を突き出してくる。

 本能的に振り抜く腕。手動で横から刃を、それを持つ腕を弾き…直後、それも想定の範囲内だとばかりに逆の腕が私の顔を正面から掴む。そのまま私は押し倒され、押し倒されながらも私もまた指で貫手の形を作り…背後を、抜剣したセイツが取る。抜いた剣を後ろから首元へと向け…そこで、別の影が姿を現す。背後を取ったセイツの、更に背後を取る形で大剣を振り上げ……

 

「…って、あれ?えっ…ぜーちゃんにせーちゃん?」

「その声…茜さん…?」

 

 次に聞こえたのは、驚きの声だった。その声は、少し特徴のある愛称で私とセイツを呼び…その声の主をエストちゃんと挟撃する形で展開していたディールちゃんが手始めに、それに続いて私達も、赤い髪をした彼女が茜である事に気付く。…と、いう事は……。

 

「…なんだイリゼか」

「な、なんだとは酷いんじゃないかなぁ、影君…!」

 

 至極落ち着いた様子で私の顔から手を離し、コートを払って立ち上がる影君。悪びれる様子もなければ謝る素振りも全くない影君に私は憤慨し……けれどあんまりな態度を取った癖に、先に立った影君は私に手を差し出してくる。…そういうところあるから、尚更タチが悪いんだよ…もう…。

 

「こ、これは…イリゼのこんな、普段は殆ど見る事のない感情をあっさり引き出すだなんて…やっぱりやるわね、影……!」

「あぁ、うん。…褒められてここまで何も響かないのは久し振りだな…」

「セイツおねーさんも相変わらずよねー。で、二人はここで何やってたの?」

「あ、ううん。私達二人だけじゃなくて……」

 

 違うよ、と茜が首を横に振る中、ガサガサと急に音を立てる茂み。そして次の瞬間、小さな女の子が現れる。

 

「影、イリゼを虐めるの、駄目」

『えっ、イリスちゃん?』

 

 ぽてぽてと私と影君の側にまで来て、女の子…イリスちゃんは影を諫める。意外な人物の登場に、私達は目を丸くし……って、

 

「い、イリスちゃん?私は別に、虐められてた訳じゃ……」

「そうだな。虐めてすまなかった、イリゼ」

「だから、虐められてないからね!?」

 

 虐められていた、という誤った評価を訂正しようとするも、影君はそれを肯定してくる。しかも皆それを面白がって、誰もイリスちゃんの誤解を解こうとはしてくれない。ぐ、ぐぬぬぅ…!

 

「こほん。すーちゃんとはさっき会ってね。その後えー君の判断で、誘い込みをしようってなったんだ」

「あ…じゃあ、妙な足跡は意図的なものだったんですね…」

「そーゆー事。あれで追跡出来なくなる程度の相手ならどちらにせよ取るに足らないし、逆にしっかり追跡出来るレベルの相手なら、不意打ちしても対応出来るだろうから敵じゃなかったとしても大丈夫…ってね」

 

 ちょっと影君の声真似をしながら話してくれる茜。因みに足跡が散乱してたのも、さっきの私みたいな反応を引き出す為のものらしくて…その足跡を作ったというイリスちゃんは、ちょっぴり胸を張っていた。

 

「敵じゃなかったらその時はその時…なんか、影らしいわね。わたし、そういう思考は嫌いじゃないわ」

「いやエストちゃん、やられた方は堪ったものじゃないんだからね…?というか私も、危うく喉の辺りに反撃しちゃうところだったし…」

「安心しろイリゼ。その場合、そうなる前に仕留めてる」

「それのどこに安心しろと!?もうっ、ほんと影君はいい性格してるよね!そのままの意味じゃなくて、皮肉的な意味で!」

「心配するな、自覚はある。…だが、まぁ…ここでイリゼに会えて良かった。さっきはなんだ、なんて言ったが…イリゼを見て、安心した」

「…影君……」

 

 少しだけ柔らかな表情をしながらの、影君の言葉。…ひょっとすると、未知の敵がいるなら茜やイリスちゃんを守らなくては、と影君は気を張っていたのかもしれない。そしてそれが、私を見て解けたというなら、そういう安心感を持ってくれているというなら、それは凄く嬉しい事で……

 

「イリゼだったら、あのままうっかり刺しててもなんとかなりそうだからな」

「はっ倒すよ!?」

 

 前言(いや口にしてないけど)撤回。全然嬉しくなかった。やっぱり影君は非常にいい性格をしていた。

 

「…イリゼと影、仲悪い?」

「あー、違うわよイリスちゃん。あれは(影が)遊んでるだけだもの」

「うん、(一方的に)遊んでるだけだね…」

「そう。ならイリスも、後でディールとエストと遊ぶ。とても楽しみ」

 

 そんなこんなで、私は茜、影君、イリスちゃんとも合流。…そういえばさっき、モンスターの痕跡ではないでしょって返したけど…まさか、イリスちゃん…と茜達の足跡だったとは、ね…。

 

「っと、そうだ。皆に聞きたいんだけど、ここに来るまでに歌とか歌ってた?」

「……?わたしやイリゼは歌ってないわよ?」

「そっか…じゃあすーちゃんが聞こえたっていう『歌』は、また誰か別の人か何かなのかな……」

「だろうな。さっきまでは三人だったから下手に動く訳にはいかなかったが…これだけの面子なら、こっちから調べに行くのも有りだろう」

 

 歌。イリスちゃんが聞いたというその情報により、まだ誰か、或いは何かがいる可能性が浮上する。そして影君の言葉に私達は顔を見合わせ…首肯。

 

「二度ある事は…じゃないけど、こうして再会が続いてる事を思えば、歌の主を調べに行く勝ちはある筈よ。影の言う通り、これだけの面子がいれば、敵だったとしても何とかなるでしょうしね」

「セイツおねーさん、そういう発言は軽くフラグになりそうなんだけと…。…まあでも同感よ。どっちにしろ次はどう動く、って段階だし、何かがいるなら早かれ遅かれ調べる必要があるでしょ?」

「つまりこれから、調べに行く?イリス達、調査隊結成?…イリス達は、謎の歌を調べる為に、凍て地や銀河中心領域へ……」

『行かない行かない…』

 

 無表情なせいで冗談なのか本気なのかすら分からないイリスちゃんの発言に全員で突っ込み、それから歌が聞こえた時の場所と、分かる範囲でその方向を確認。周囲に気を配りつつ、私達はその場に向かう。

 

「…にしても、イリスちゃんと二人の組み合わせは意外かも。まあ勿論、偶々会っただけなんだろうけど…」

「そーかな?最近のゆーちゃんはすーちゃんと同じ位色んな事に興味津々、知識欲旺盛で、私としてはむしろ親近感湧く位だよ?あ、因みに最近のゆーちゃんと言えばね…」

 

 さも当然のように始まる、茜の娘話。話しているのは娘について、即ち母親としての話なのに、その口振りや声音は初めて会った時から何も変わっていなくて…多分似たような事を考えていたんだろう影君と私は目が合い、どちらからともなく肩を竦め合った。……後、それに気付いた茜がちょっぴり「む〜…」となっていた。

 

「…着いた。この辺り」

「そういえば、なんだかんだで砂浜の方に戻ってきましたね……あ」

 

 先頭を歩いていたイリスちゃんが足を止め、ディールちゃんが見回し…次の瞬間、何かの音が、歌らしきメロディが聞こえてくる。

 ただでもそれは、人が歌っている…って感じじゃない。人の声とは違うように感じられる。

 

「あっちから聞こえてるわね…念の為、陣形を組んでおきましょ。わたしとイリゼでまずは突っ込むわ」

「なら茜が中衛、ディールとエストは後衛だな。俺は遊撃する」

「イリスは?イリスは何をすればいい?」

「イリスちゃんは…んー、念の為必殺技の準備しておく?」

「必殺技って…エスちゃん、イリスちゃんに何を求めて──」

「分かった。イリス、オフィシャル・デ・バルバロッサ・デンジャラス・キャノンの準備する」

『出来るの…!?』

 

 それぞれの動きを確認し、私はセイツと共に小さく息を吐く。さっきは思わず独断専行しちゃったけど、もう同じ轍は踏まない。

 バスタードソードを片手で持ち、少しだけ姿勢を比較する。そして地面を蹴り、私とセイツは木々の間を抜けて砂浜へ突出。そのまま更に砂浜を踏み締め、歌の発生源へと一直線に向かおうとし……気付く。

 

「……ッ!何者……って、お?」

「…イリゼに、セイツ?それに……」

 

 砂浜にあった、五つの影。その内の一人、黄色の髪をした女の子が真っ先に反応し、素早く振り向く。そうして私と片脚を軽く引いた彼女は目が合い…お互い気付いた。彼女は私が誰なのかを。私もその人物が、黄色い髪をした彼女が、アイであると。

 そのアイに続く形で振り向いたのは、すぐ近くに立っていた女性。砂浜へ脚を突き立てるようにして急ブレーキを掛けつつそちらへと目をやった事で、私は彼女の事も、彼女がイヴである事を認識する。

 

「びっくりした…皆も、この次元に来てたんだね」

「それはお互い様よ。…というか今、私達に仕掛けようとしてなかった…?」

「それは、まぁ…さっきわたし達は、誰かさん達に襲われたものだからね」

「そ、そうなの?うぅ、皆と出会える前にそうならなくて良かったぁ…」

 

 肩を竦めた後、イヴは私達へ半眼を向けてくる。その視線にちらりと後ろを見つつセイツが返せば、多分ここにいた中で一番驚いていた男の子、私達から見て一番奥にいた愛月君がほっとしたように吐息を漏らす。…因みに、前に会った時から愛月君は髪を伸ばした(元々セミロング位あったけど)みたいで、今はそれをポニーテールの髪型にしている。そのおかげもあってか、なんかちょっと凛々しい感じ。

 これで四人。でも影は五つ。つまり、ここには四人以外の存在もいた訳で…私達全員が注目する中、その存在は鳴く。

 

「ぷらぁーぷ!」

「愛月君。もしかして、その子は……」

「うん、僕と一緒に来た乗り物ポケモン、ラプラスのフロストだよ。この子は泳げるし、背中に誰かを乗せるのも好きだから、さっきまで調査を手伝ってもらってたんだ」

 

 水色が目立つ身体に長い首、紹介通り泳ぎに適していそうな四つ足に、背中へ背負う形の甲羅。フロストと呼ばれたポケモンは、私達を見ても特に怯えたり威嚇したりする様子はなくて…多少なりともポケモンや人に敵意を持たないモンスターと接してきた私には分かる。この子は、人懐っこいって。

 

「…乗り物ポケモン?なんというか…凄く、人間視点の種別ね…」

「ポケモンの事はよく分からない…が、種別自体自己申告ではなく人間が決めているのであれば、人間視点になるのも当然の事だろうよ」

 

 何とも言えなさそうな顔をするセイツの言葉に、影君が淡々と返す。…そういえば、るーちゃん…チルットは綿鳥ポケモンで、チルタリスはハミングポケモンらしい。チルットの時点で歌うのが好きだし、チルタリスになっても綿要素は減ってないどころかむしろ増量してるのに、どうしてこういう種別になってるんだろう…。

 

「こんにちは、フロスト。イリスはイリス、宜しく」

「ぷらぷ、らーぷ!」

「うん、仲良くなれたら嬉しい。…おぉ、すべすべ…ちょっとひんやり…」

「え、ひんやりしてるの?…触ってもいい…?(そわそわ)」

「ねぇディーちゃん、さっきからちょいちょいキャラ崩れ気味じゃない…?」

 

 一方フロストにはイリスちゃんが近付き、その首を撫でる。肌がひんやりしてると聞いた途端、ディールちゃんも側に寄り、呆れ気味にエストちゃんが着いていく。そしてフロストの鳴き声を聞いている内に、私は…というか、全員が気付いた。多分さっき聞こえたメロディは、フロストのものであると。

 

「あいくん、ひょっとしてフロストは暫く前も歌ってた?」

「え?うん。ついさっきもそうだけど、ここの景色を見て上機嫌になったフロストが、調査に出る前にも歌ったんだよ?フロスト…っていうかラプラスはるーちゃんと同じで、歌うのが好きなんだ〜」

 

 確認が取れた事で、歌の件も正体が発覚。…にしても、人懐っこくて、歌うのが好き…るーちゃんに会わせてあげたいなぁ…。穏やかそうな雰囲気もしてるし、もし出来たらライヌちゃんとも仲良くしてほしいな……。

 

「さて、それじゃあ無事に合流出来たって事で、ここからは仲間探しの探索再開ッスね!」

「うん、そうだね…ってなんでアイは私達が探索してた事知ってるの!?というかその口振り…他にも誰か来てるの!?」

「さぁ?」

「さ、さぁって…なら何を根拠にそんな事……」

「いやでも、なんかそんな感じじゃないッスか。現にこうも見知った面々が集まってる訳ッスし」

 

 何か問題でも?とばかりに言ってのけるアイに、私はがっくりと肩を落とす。そうだった…アイって中々鋭い割に、適当に喋る事がまぁまぁあるんだった…。

 

「まあ、アイの言う通り歌の正体は分かったし、ここからは探索再開ね。結構人数増えたし、チーム分けして行動する?」

「待って。その前に一つ、気になる…というか、確かめたい事があるの」

「え、なんスか?何か気付いたんッスか?」

「なんで貴女がそれを訊くのよ、フロストが何かを見つけたみたいだって話をさっき私達でしたでしょうが……」

 

 そうなの?と私達が目をやれば、フロストは答えるように一鳴き。なんでもラプラスというポケモンは知能が高くて、人の言葉を理解出来るんだとか。

 

「実は僕達、休憩してたところだったんだ。その最中にのんびり泳いでたフロストが何かを見つけてくれたから、後でそれを確かめにいこうって話をしてたんだよ」

「だったら、先にそれを調べてからの方が良さそうね。ほらディーちゃん、移動するわよ」

「待って、もう少しだけ…後体感で五分だけ……」

「なんで眠い時みたいな反応なのよ、しかも体感って……」

「…それなら、フロストに乗ってく?」

「……!イリス、乗りたい」

 

 ぱっ、と愛月君の提案にイリスちゃんが手を挙げ、続いてディールちゃんも妙に真面目な顔で首肯。そうして二人が乗ったところで、イリスちゃんは「エストは乗らないの?」と問い…私達は歩きで、イリスちゃん、ディールちゃん、エストちゃんはフロストに乗って移動する事となった。

 

「けど、一体何を見つけたんだろーね?」

「それは多分、○○○○ッスよ」

『今なんて!?ほ、放送禁止用語か何か!?』

「いや、まるまるまるまるって言っただけッスけど?」

「あ、なんだ、そのまま言ってただけなんだね…びっくりさせないでよ、もう……」

「活字媒体だからこそ出来る芸当だな…だからなんだって話だが」

 

 一体何を言ったのかとぎょっとした私は、返答を聞いてほっと胸を撫で下ろす。それから暫くの間、三人を乗せて機嫌良さそうに泳ぐフロストの後を追う形で、私達は砂浜を歩いていき……『気になるもの』を、発見する。

 

『あれ、って……』

 

 それを見つけるのは、容易だった。何せ、目立つんだから。近くに行けば誰でも発見出来る位、大きかったんだから。

 私達が目にしたのは、水中から上半身部分を出した状態の、人型をした巨大な鉄騎。過半数のメンバーはそれを見て、「ロボット…?」という反応をしているけど、私はそれに見覚えがあった。ディールちゃんや茜、アイも多分同じような反応をしている。そして、私の記憶が正しいならば、もしかすると……。

 

「……っ!…貴女方は……」

「…やっぱり、君の機体だったんだね。ワイト君」

 

 正に私達が近付いたタイミングで、ロボットの近くにある岩陰から出てきた男性。私達に気付いた彼は、一瞬険しい顔をし、でもすぐに目を丸くして…彼に、ワイト君に向けて、私は手を振る。

 

「お久し振りです、皆さん」

「お久ッスよ、ワイト。通りで見た事ある気がした訳ッス」

「あぁ…そういえば一度、アイ様達はあの空間で見ていましたね。厳密には同じ機体ではなく、派生機種なのですが…」

 

 そう。水中から上体を出したその機体は、前にあの別次元とも違う空間でワイト君が操縦していたものとよく似ていた。けど考えてみれば、これって軍用機だろうし、ここにいるのがワイト君と同じ次元の人ではあっても、ワイト君ではない…って可能性もあったんだよね。…まあ、実際にはそんな事なかったんだから、別にいいんだけど。

 ともかく気になるものがワイト君の機体、味方の存在だったという事でこの件も解決…と思っていたけど、そこで更に、今度は森の方から二つの人影が姿を現した。

 

「聞き覚えのある声が、と思ったら…」

「大体勢揃いですね」

「あっ、ビッキィとピーシェ!」

 

 もうこっちの声で誰がいるのか予想出来ていたのか、特に驚く様子もなく出てきた女の子二人。セイツのいた神次元とも、アイの国のある神次元とも違う神次元の女神であるピーシェと、その従者であるビッキィが、こっちへ向けて歩いてくる。大きく手を振る愛月君に、二人は軽く手を振り返し…ワイト君に続いて、二人も合流。

 

「大体勢揃い…言いたい事は分かるけど、何か言葉として違和感を抱くわね……」

「ふふ、勢揃いって言葉はなにも、全員集まってる時だけに使える訳じゃないんだよゆりちゃん。だから大体集まってるねー、って使い方なら問題ないの。以上、あかねぇ先生からのちょこっと授業でした!」

「おお、それは為になる。イリス、記憶した」

「…あれ?わたし達、今出てきたばかりなのに速攻で会話の流れから置いてかれてません…?」

「それはまぁ…。あー、皆さん。ビッキィが何か話したいみたいなので、聞いて下さい」

「別にそういう事ではないんですけど…!?」

 

 そうなの?と私達がビッキィを見やれば、ビッキィはばたばたと両手を振って否定を示す。…とはいえ、私も皆も分かっている。これはピーシェのおふざけであると。だから私達はそのおふざけに乗っただけ。

 

「こ、こほんっ。皆さんは、最初から集まった状態だったんですか?」

「ううん、方々を歩き回って少しずつ合流していった感じよ。わたしとイリゼは最初から一緒だったけど」

「というか多分、同じ次元にいた面々は皆そうじゃない?わたしとディーちゃんもそうだし、茜と影もそうでしょ?」

「そうだな。二人は森で何をしていたんだ?」

「情報収集です。ワイトさんの方はどうですか?」

「暫くレーダーとセンサーで索敵をかけていましたが、これといった反応はありませんでしたね。尤も、早期警戒や偵察用ではない、この機体で分かる範囲では…ですが」

 

 それでもあるとないとでは大違いだと、ピーシェはワイト君へ肩を竦めて返答する。そのやり取りで、ワイト君とピーシェ、ビッキィは私達が来る前から合流していたんだという事も理解をする。

 

「そっちはいつ合流したの?やっぱり二人も、ワイト君の機体…アームズ・シェルだったよね?…を見つけて来た感じ?」

「あぁいや、わたし達とワイトさんとはいきなりばったり会ったんです。本当にいきなりだったので、危うく戦闘になりかけました」

「なりかけただけならセーフだよ。ね?皆」

『えぇぇ…?』

 

 うんうん、と頷く六名の反応に、皆は困惑の顔を見せる。いやでもほんと、誰も怪我してないからセーフ。なんなら多分、軽傷位なら負ってもセーフ。何せ影君には致命傷からの服没収&同じベットで寝るというコンボを決められた事もあるし。

 

「けど、砂浜いきなり会って一悶着起こりそうになり、近くには待機状態の巨大ロボット、ねぇ…もしかして今回のタイトルは、『三人だけの戦争』かしら?」

「あの機体は変形機構もなければ赤色になったりもしないのですが…。…まあ、何はともあれこれだけの面々が集まったとなると……」

「まだいそうな気がするわね。前に神生オデッセフィアにお邪魔した時にいた人で、まだ見かけてない相手も何人かいるし」

 

 確かにそうだ、と私達はイヴの言葉に頷く。勿論全員が来てるとは限らない、そう考える根拠は薄いけど…ここまで集まっている以上、可能性は十分にある。それに、なんだかんだでまだこの島を一周出来ていないし、そういう意味でも探索の続行はしておきたい。

 

「さっき…あ、ワイトと会う前ッスよ?…チーム分けして動くって話が出たッスけど、今度こそ何チームかに分かれて探索するッスか?」

「それなら森や砂浜だけじゃなくて、水上を探索するチームもあった方がいいと思います。島から離れる事で見えるもの、分かる事があるかもしれませんし」

「あ、ディールちゃんが復活してる…っていうか絶対それ、フロストにまだ触れていたいからだよね…?」

「…………」

「無言スルーは止めて!?」

「復活…というのはよく分かりませんが、私もチーム訳には賛成です。この島を全員で固まって回っていたら、結構な時間が掛かりそうですしね」

 

 目を逸らすとか話を脱線させるとかもせず、本当にただ無言無表情で無視してくるディールちゃんに私が変な精神的ダメージを受ける中、ピーシェも賛同を示し、概ね皆そうしようという意見で固まる。となれば当然、次に決めるべきは、そのチームを分ける方法。

 

「どうやってチーム決めます?やはり定番のぐーちーですか?それともぐーぱーですか?」

「いやビッキィ、そこはどっちでもいいっていうか、出す手が違うだけでやる内容としては一緒だと思うんだけど…?」

「そうッスよ、エストの言う通りッス。ここはぐっちーかぐっぱーで決めるべきッス」

「それも言い方変わってるだけじゃない…なんでそこで被せするのよ…」

「んもう、駄目だなぁ二人共。こういう時は、ゆーぞーかぐっぴーで決めなくっちゃ」

「最早それはタレントと小魚じゃない!ちょっ、わたしにこんな突っ込ませないでくれる!?ディーちゃんもさっきから実質ボケ担当になってるし、なんでわたしがこんな突っ込みばっかり……って、」

『今ネプテューヌいなかった!?』

「YES!I'M NEP!」

 

 驚きながら全員で振り向けば、奇妙な返答と共に一人の少女が謎のポーズを見せてくる。もう既に全員分かっている事だけど…そこにいたのは、ネプテューヌ。何なら既に、本人もそうだと言っている。

 

「ね、ネプテューヌさんいつの間に……」

「それは勿論、ついさっきだよピィー子!ふふん、今回の第一話でも登場が遅れ気味になっちゃったけど、これならインパクトはばっちりだったよね!」

『…………』

「……え?なんか四名程、凄く微妙そうな顔してるんだけど…なんで…?」

「えぇと…言い辛いんですが……その登場方法、さっきわたしとエスちゃんもやりました…」

「まさかの二番煎じ!?くっ…自分がこんな失態を犯すなんて…!」

 

 上機嫌になったかと思えば、今度はショックを受けてネプテューヌは脱力。現れて早々に空気を全部自分の方へ引き込む感じは、ほんと皆もよく知る『ネプテューヌ』のそれで…そこでまた一つ、いや二つ声が耳に届く。

 

「あ、いた!ネプテューヌ、やっと追い付いた…ってあれ!?皆がいる!?」

「何やら大所帯が…と思っていたが、これはまた勢揃いだね。ああ、因みに勢揃いという言葉は何も全員集合した場合のみにしか使えない言葉ではなく……」

「ズェピア、残念だがその知識は既に茜が紹介している。二番煎じだ。しかもネプテューヌに続いての、二番煎じの二番煎じだ」

「おや、それは残念だ」

 

 小走りで駆けてきたかと思えば、近くに来てから漸く私達の存在に気付いた女の子と、残念と言いつつ大してそうでもなさそうな表情を見せる男性。どうも口振りからして、ネプテューヌと行動を共にしていたらしい、ルナとズェピア。…やっぱり、まだいた。本当に、色んな次元や世界が、ここと接続しているらしい。

 

「ネプテューヌ、ルナ、ズェピア、久し振り。イリス、いつもは会えない皆に会えて嬉しい」

「ふふ、私もだよイリスちゃん。…けど、びっくりしたなぁ…ズェピアさんとネプテューヌに会ってからは全然誰の事も見かけなくて、私達三人だけなのかなって思ってたら、いきなり皆と会えたなんて……」

「うん、分かる。こういう時に知っている人と会えると、驚くけどほっとするよね」

 

 もう何度も別次元やそれに近い空間に飛ばされている私としては、そういう時の心細さも、誰かに会えた時の驚きも、そこからの安心も、全部分かる。…まあ、今回については自分からここに訪れた訳だけど…それでもやっぱり、というかこういう事態関係なく、いつもは会えない相手と会えたら嬉しいよね。

 

「…あれ、そういえばズェピアさんは吸血鬼なんでしたよね?吸血鬼がこんな場所にいても大丈夫なんです?」

「ご覧の通り、問題ないよ。無論吸血鬼にはそれなりに弱点もあるが、大概は克服ないしは対処済みでね。とはいえ心配してくれた事には感謝するよ、ピーシェ君」

「あ、別に心配した訳じゃないです。気になっただけで」

「相変わらずドライね、ピーシェは…こういうところは、こっちのピーシェと似てるっていうか…」

「…えぇ、っと…わ、私は大丈夫だって分かって安心しましたよ、ズェピアさんっ!」

「はは、ルナ君は優しいね」

「そういえば、ズェピアは吸血鬼…吸血鬼は怪物、モンスター…。…ズェピア、今後とも宜しく」

「うん?ああ、宜しく頼むよ」

 

 少考の後イリスちゃんが求め、ズェピア君が応じた謎の握手。それを交わした後、イリスちゃんはまた少考し、皆とももっと宜しくしたい、と言ったかと思えば、全員と握手をしていった。最後にはフロストの前足を掴んでにぎにぎしていた。…よく分からないけど、終えた後のイリスちゃんは満足そうだった。

 

「あ、ところですーちゃん。ここまであっちこっち歩いてきたけど大丈夫?休憩したい?」

「休憩といえば、ピーシェ様とビッキィさんも森の中を動き回ってお疲れではないですか?」

「そういえば、わたし達もこっちに来てから特に休憩してなかったわね…まぁわたしもイリゼも女神だし、要らぬ心配かもしれないけど」

「ふむ、そういう事であれば丁度良い場所があるよ」

「ですよね。あそこならゆっくり休めますし」

「休憩っていうか、これから行動する上での拠点にもなるよね?って訳で、一回皆、自分達が見つけた場所に来てみない?」

 

 言われれば確かに、これといって休憩をしていなかった。そしてイリスちゃんと同じく年少組の愛月君は大丈夫かな?…と思った私だけど、考えてみれば愛月君達は私達と会う前に休憩をしていたみたいだし、そもそも愛月君は旅慣れしていて割と体力があったんだって事も思い出す。

 とはいえ、急いでいる訳じゃないし、休憩を取っちゃ不味い理由もない。それに拠点にもなり得る場所なら、当然それは知っておきたい。だから満場一致でそこに行ってみる事にし…待機状態のアームズ・シェルを動かす為に、ワイト君が走っていく。

 

「それにしても、本当によく集まったわね。なんだかあの時の続きみたいな気分になってきたわ。…あ、でも…ねぇネプテューヌ、貴女は……」

「どのネプテューヌかって?それは勿論、前に皆と信次元で遊んだり、仮想空間で一緒に戦ったネプテューヌだよっ!だから、これで後はグレイブくんとカイトくんがいれば、あの時のメンバー全員集合──」

 

 ほんのり頬を緩めるイヴの言葉に、私も同意。そしてまだ姿を見ていない二人の名前を、ネプテューヌが口にしたその時──不意に、小さな音が森の方からした。

 それは本当に小さな、何かを踏む音。でもそれを聞き逃さなかった私や何人かは、ばっとそちらの方を向く。まだ姿を見ていない二人か、それとも危険な存在か。すぐには姿を見せないからこそ、緊張感が漂い始め……

 

「…パープルハート様…?それに、今…カイトって言った……?」

 

 森の中から現れる人影。それはカイト君でも、グレイブ君でもなく……長い茶色の髪に、深みを感じる水色の瞳をした、一人の女の子だった。




今回のパロディ解説

・「〜〜痕跡見つけたし、調査ポイント手に入る〜〜」
モンハンシリーズにおける要素(システム)の一つのパロディ。後に触れていますが、モンスターの痕跡じゃないと思いきや、実はイリス(と影、茜)の痕跡だった訳です。

・「心配するな、自覚はある〜〜」
とあるシリーズに登場するキャラの一人、垣根帝督の台詞の一つのパロディ。仮に影に白の翼があったら…その場合もやっぱり似合わないですね。イメージカラーも真逆でしょうし。

・「〜〜謎の歌を調べる為に、凍て地〜〜」
モンスターハンター:ワールド アイスボーンにおけるストーリーの事。凍て地は寒冷系の新たなフィールドですが、今回のコラボの舞台はむしろ暑い地ですね。

・「〜〜銀河中心領域〜〜」
マクロスシリーズにおける、ある展開…というか、設定の事。謎の歌を調べる為に…という部分は、上のパロディだけでなくこちらにも掛かっています。何なら先に思い付いたのはこちらです。

・「〜〜オフィシャル〜〜デンジャラス・キャノン〜〜」
バトルネットワーク ロックマンエグゼ2に登場する技(?)の一つの事。作中では台詞と効果音しか出てこないのでよく分からない技ですが、名前のインパクトは凄いですね。

・「〜〜三人だけの戦争〜〜」、「変形機構もなければ赤色になったりもしない〜〜」
機動戦士ガンダムSEEDの第二十四話におけるサブタイトル及び、作中に登場するMSの一つ、イージスのパロディ。でも元ネタは三人ではなく二人です。

・「〜〜ゆーぞー〜〜」
歌手であるグッチ裕三こと、高田裕三さんの事。先にぐっちー、が出たからこそのネタです。ゆーぞー単体だと誰だか分からないというか、例えば加山雄三(池端直亮)さんとかも連想しちゃいますね。

・「YES!I'M NEP!」
ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダーズに登場するキャラの一人、モハメド・アヴドゥルの代名詞的な台詞の一つのパロディ。多分この時のネプテューヌはあの動きもしているのでしょう。
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