超次元ゲイムネプテューヌ Origins Transition   作:シモツキ

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第十二話 心折れるにはまだ遠い

 日にち…もっといえば時間の認識が正しく出来なくなっている事、そういう状態であると気付きもしなかった事、把握しようとしても恐らく困難な事、それ故に今ある認識すら正確であるかどうか怪しい事……そして、私達は今、自分達が考えているより遥かに長い間、この次元にいるのかもしれない事。どれも私達にとっては衝撃的で、俄かには信じ難い事で…けれど正しく認識出来ていない事実が、これが現実なのだと突き付けてきた。

 そして、一先ず私達は解散となった。この現実を前に、これからどうするかを話し合わなきゃいけない訳だけど…流石にこれは、飲み込む時間が必要だったから。飲み込めようが飲み込まいが、現実はそこにあって、誰かが何とかしてくれるだろうという楽観視なんてまるで出来ない状況だけど…だとしても、合理性だけで生きるのが、生きられるのが人じゃない。だから…一度私達は、今ある現実の前で立ち止まらなきゃいけなかった。

 

「…ん、こんな感じ…かな」

 

 厨房で、あるものを完成させる。レシピなしで作った、これまで特にやった事のないものだったけど…まあ、悪くはないと思う。

 それを持って、私は廊下を歩いていく。もう皆寝ちゃった…訳ではないと思うけど、施設の中はいつもより静か。いや…実際にはいつもこれ位で、ただいつもはこれを特に意識していなかっただけ、逆に今は特別意識しちゃってるだけ、って可能性もあるけど…とにかく今は、静かに感じる。

 

(…大丈夫かな、皆…。私は女神として、皆を元気付けなきゃいけない訳だけど……)

 

 皆が簡単に心折れるような人物だとは思っていない。まだ付き合いの浅いエリナだって、心の弱い女の子じゃない事は知っている。だけどやっぱり、気付かない内に『異常』に侵食されていたっていうのは、ただ困難に立ち向かうのとは違う重さがあって…私自身、堪えている。自分自身でも飲み込みきれていないのに、皆を元気付けようっていうのは…あまり、良くない。鼓舞っていうのは、自分がまずその内容を信じられている方が、より強く熱意を込められるものだから。

 ならこういう時、どうしたらいいか。…そんなのは決まっている。どうしたらいいかなんて…いつもと同じ。

 

「…良かった、まだいた」

 

 目的の場所、施設の出入り口にまで来た私は、一度足を止める。そうして外にまだ彼女がいる事を確認して…声を、掛ける。

 

「ディールちゃん、隣…いいかな?」

「あ、イリゼさん…」

 

 呼び掛けに反応して、くるりと振り向くディールちゃん。目を丸くしていたディールちゃんは、数秒黙って…こくんと頷く。

 ここで首肯のみするのが、ディールちゃんらしい…気がする。そんな風に思いながら、私は歩みを進め…ディールちゃんの隣に、砂浜に立つ。

 

「何してたの?」

「…考え事です。夜風に当たりながらの」

「そっか。じゃあさディールちゃん、これ作ってきたんだけど…どう?」

「これは…ジュース、ですか?」

「うん。使い残しの食材を使ったミックスジュースだよ」

 

 そう言って、私は二つ持っていたコップの内の片方を渡す。両手で受け取ったディールちゃんは、小声で頂きますと言って…一口飲む。

 

「こ、これは……!」

「え?な、何か変だった…?」

「…普通の味ですね。いや、甘くて美味しいですけども」

「あ、な、なんだ…びっくりさせないでよ、もう……」

 

 がくり、と私が肩を落とせば、ディールちゃんはくすりと笑ってまた一口。勿論私も予め味見はしていたし、だからおかしな味になっていない事は分かっていたんだけど…だとしても、いきなり目を見開いた状態で「これは……!」…なんて言われたらびくっとなる。しかもこれ、初めて作ったものでもあるし…。

 

「…でも、いいですねこれ。まったりした甘さで、なんだか落ち着きます」

「でしょ?…ふぅ……」

 

 私も一口飲み、ゆっくりと息を吐く。それから砂浜に腰を下ろした私達は、暫くの間お互い何も言わず、ミックスジュースを飲みながら水面を眺める。

 

「…ね、ディールちゃん」

「…さっきの事、ですよね」

 

 呼び掛けに対して返ってきた問いに、今度は私が無言で頷く。それからまた、少しの間無言があって…その空白の時間を経て、ディールちゃんは言う。

 

「なんていうか…実感、ないんですよね。疑う訳じゃない…というより、それが本当の事なんだって思わざるを得ない状況だと思いますけど…」

「だよね。…だから、より恐ろしいんだと思う。見えている強敵と、見えない敵、どう戦ったらいいか分からない敵だったら、前者より後者の方が恐ろしいもん。私達みたいに、真っ向勝負ならそうそう負けはしない女神であれば、尚更…ね」

「見えない、分からない敵…ですか」

「うん。…一つ、ディールちゃんに訊きたいんだけどさ」

 

 そこで一度、私は言葉を切る。でも、ディールちゃんの返答は待つ事なく…一拍だけ置いて、続ける。

 

「…私がディールちゃんに声を掛けてから、どれ位時間が経ったか…分かる?」

「へ?…あ……」

 

 何気ないような調子で言った問い。けれどその問いで、ディールちゃんははっとしたような顔をする。きっと、ディールちゃんはこう思ってるんだ。分からない。全く分からない…って。

 時計を見ていないんだから、正確な時間が分からない…というのは当然の事。だけど、そんなレベルじゃない。大体の時間、ざっくりな予想すら出来ない。殆ど経っていないのか、結構経っているのか、それすら皆目見当が付かないし…今日『時間を正しく認識出来ていない』という話をしたばかりなのに、もうその事が頭から抜け落ちていた。……そんな風に、考えていると思う。だって…私もそう思っているから。私も、時間の事を自然に意識にしなくなっている…それこそ『暫く』とか『少し』とかの曖昧な形でしか時間を認識していない自分に気付いたからこそ、ディールちゃんに投げ掛けられたけど…正直、毎回こうして気付けるような自信はない。

 

「…イリゼさんの言う通りですね。どう戦えば良いか分からない…いえ、ちゃんと戦えるのかどうかすら分からない…こんなの、どうしろって話です……」

 

 ジュースの容器を片手に持ったまま、ディールちゃんは膝を抱える。…追い詰めたかった訳じゃない。ただ…心に余裕がなかった。ディールちゃんにも…私にも。

 

(…今はもっと、明るくなれるような話でもした方が良かった…かな……)

 

 目を逸らしたって、脅威は消えてくれない。目を向けて、考えて、挑まなくちゃ、未来はない。だけど立ち向かう為には、踏ん張る為には、心の準備が、元気が必要で…私は、焦っていたのか。余裕がなくて、前のめりになっていたのか。膝を抱え、俯くディールちゃんの姿を見て、私はそんな不安に駆られて……

 

「……でも、まぁ…多分ですけど、何とかなりますよ。きっと」

 

──だけど、違った。確かにディールちゃんは自信なさ気になっていたけど、今も自信を持って言っている感じは全くないけど…その声は、上げた顔に浮かぶ表情は、怯えてはいなかった。

 

「…え、っと…それは……」

「だって、そうじゃないですか。勿論今も、全然楽観視出来る状況じゃないですけど……だとしても、あの時よりは──わたしとイリゼさんが初めて会ったあの時よりは、ずっとマシだと思えますから」

「あ……」

 

 そうは、思いませんか?…そんな面持ちで、ディールちゃんは私を見て、首を傾ける。側頭部で纏められた髪が、ふわりと揺れる。

 あの時。私とディールちゃんが初めて会った時。…それは、忘れもしない出会いと時間。創滅の迷宮…そこで私は初めて信次元の外に触れて、別次元との繋がりを持った。色んな経験をしてきた今でも、やっぱりあの空間やあそこにいた存在は異質だと思うけど……確かに、そうかもしれない。うん、そうだ。あの時よりは…ずっと、マシだ。

 

「…ふふ、かもね。あの時は最初戦いになっちゃったし、和解出来てからも今と違ってたった二人だったし、私は最後の最後に至るまで女神化出来なかったし、ディールちゃんは今よりずっと小さ……」

「今でも大して変わりませんけど?」

「あはは、だよね」

 

 肩を竦め、ディールちゃんの返しに頷く。…ああ、本当にそうだ。脅威の方向性こそ違うけど、今は皆がいる。単に人数が多いのは勿論、皆それぞれの強みを持っていて、だから対応能力が私とディールちゃんだけだった時とは桁違いだし…そんな皆と私の間には、築いてきた『これまで』がある。今、私達は進む先が、未来が自分の目で見えなくなっているのかもしれない。だとしても、過去は…皆と重ねた時間は今も、いつだって確かなものなんだから。

 

「…うん、良かった。やっぱり、正解だった」

「……?何がですか?」

「今、この話をディールちゃんにしに来て、だよ」

 

 怪訝そうな顔をするディールちゃんへ、私は答える。こうしてディールちゃんと話をしに来たのは、ここにディールちゃんがいたのを見かけたからだけど…誰でも良かった訳じゃない。

 

「わたし、大した事は言ってませんよ?」

「かもね。だけど私にとっては大きな意味のある、そう思える答えをくれた。そしてそれは、ディールちゃんじゃなきゃ駄目な答えだった。…まあ、当たり前だけどね。あの時は、私とディールちゃんだけだったんだから」

「それはまあ、そうですね。…うーん……」

 

 言ってる事は分かるけど、いまいちしっくりこない。そんな表情をディールちゃんは浮かべている。その顔は、私の考えている事、思いが伝わっていないって感じで…果たしてこれは、私の表現力が足りないのか、それともディールちゃんが鈍感なのか。…まあでも、どっちでも良いかもしれない。だって……

 

「だからさ、ディールちゃん。私にとってディールちゃんは、すっごく頼りになる…誰かとこの事を話したいって思った時、自然と浮かぶ相手なんだよ。今ここにいる中で、一番長い付き合いのあるのは、ディールちゃんだから」

「え?…それは、その…ありがとうございます…」

「あ、ディールちゃん照れてる」

「べ、別に照れてないです。ちょっと驚いただけですっ」

 

 ぷいっと顔を背けるディールちゃん。うん、可愛い。基本クール…っていうか静かで大人しいタイプだから、こういう反応がよく映える。

 それにやっぱり、これが正解。伝わってないのなら、はっきり直接伝えるだけ。それで伝わってくれれば、それでいい。

 

「…あ、勿論ただ付き合いが長いから…ってだけじゃないよ?だけど、付き合いが長いって事は、積み重ねてきた事も…力を合わせて乗り越えてきた事も、その分だけ沢山ある…そうでしょ?ディールちゃん」

「…分かってますよ、イリゼさん。分かってますし…分かります。わたしにとっても、イリゼさんは、頼りになる相手ですから」

「ディールちゃん……」

「まあ、エスちゃんの次に…ですけども」

「うっ…そ、それは言わなくてもよくない…!?私だってセイツがいる上で、ディールちゃんが…って言ったんだから…!」

「いやでも、本当の事ですし…付き合いだって、エスちゃんの方がずっと長いし……」

「それはそうだろうけどさぁ…!」

 

 そこに不満を持たれても…と頬を掻くディールちゃんへ食い下がる。いや、ほんとその通りではあると思う。エスちゃんを超えられるとは思ってないし、遥かに付き合いが長いっていうのも…まあ、そうだよねって話。けどなんていうか、弄ばれた感があるっていうか、どうにも私はこのままじゃ引き下がれない部分があって……って、うん?

 

「…エストちゃんの次…って、それでも十分凄くない?え、もしかして私って、エストちゃんには及ばないだけで物凄く頼りにされてる?」

「あ、勘違いしないで下さいね?イリゼさんが言ったのと同じように、今ここにいる中では…ってだけですよ?」

「がーん!…うぅ…何この片想い状態……」

「…でもまあ、物凄く頼りにしてるのは間違ってないですけど…ね」

「……!」

 

 流石にちょっと凹んだ心。けれど私がしょぼくれる中、隣から聞こえたのは柔らかな声。はっとして振り向けば、ディールちゃんは小さく笑っていて…それからディールちゃんは立ち上がる。そして私に差し出される、ディールちゃんの手。

 

「そういう訳で…これまでみたいに、頑張りましょう、イリゼさん。いつもと同じように──一緒に」

 

 声と同じように柔らかく微笑むディールちゃん。そんなディールちゃんの手を…小さくて、でも凄く心強い手を握って、私も立ち上がる。

 不思議なもので、この手を握るだけでも、ちょっぴり大丈夫な気がしてくる。…いや、不思議なものなんかじゃないよね。私達の間には、何度も一緒に困難を乗り越えてきた経験があって…私がディールちゃんを、信頼してるって事なんだから。

 そうして私達は、砂浜を後にする。話す前はなかった、確かな『自信』を胸にしながら。

 

 

 

 

「……あの、ところでイリゼさん…。なんか、わたしも思わず解決した気になっちゃいましたけど…これからの具体的な話は、何一つしてませんよね…?」

「あっ……」

「あっ、って……」

 

 

 

 

 前の時…仮想空間の中で起きた事も、全くの予想外だったし、とんでもない困難だった。なんとかなったとはいえ、ギリギリもギリギリ、何かがほんの一つでも欠けていたらきっと駄目だったと思うような、壮絶な戦いだった。

 あの時と今とは、色々違う。単純な比較は出来ない。ただ、方向性は違うけど…今もまた、あの時と同じような窮地に陥っている。それは…間違いない。

 

「うーん…どこにいるのかしら……」

 

 施設の中を、うろうろと歩き回る。別に散歩してる訳じゃない。わたしは今、人探しをしていて…ついさっき見てみた部屋も、また空振り。

 さて、どうするか。このまま根気よく探すか、それとも何か手を考えてみるか。少しの間、わたしはその二択で迷い…ふと、ある事を思い付く。

 

(…まあ、試してみるだけならただだものね)

 

 頭に浮かんだのは、馬鹿馬鹿しい案。でもこう、なんというか…微妙に可能性がある気がする。そんな作戦。わたしはきょろきょろと周囲を見回し…それから、言う。

 

「こほん。…そろそろ姿を見せてくれてもいいんじゃないかしら?ズェピア」

 

 廊下の奥で、振り向く事なく呼び掛ける。落ち着きと余裕を漂わせた、もう分かっていると示すような声と態度で。

 とはいえ勿論、分かっている訳じゃない。漫画やアニメでよくあるシチュエーションをふと思い出したから、試しにやってみただけの事。いきなり現れたりする事のあるズェピアだから、ほんの少し「もしかしたら…」と思う部分こそあるものの、基本はちょっとふざけてみたとか、その程度の感覚。だからまあ何にも起こらないだろうけど、初めから大して期待もしてな──

 

「ふふ、流石は女神。本来の姿でなくとも、その感覚に衰え知らず…と言ったところかな」

 

……いた。本当にいた。さも当然の事のように…背後から、わたしが探していた人物の声がしてきた。

 

「……まあね。けど、凄いのは貴方の方よ。だって、大して気配を消す気もないのに、今の今まで存在を隠匿していた訳でしょ?」

「こういうのは、得てして自然体の方が気付かれないものさ。女神たる君に言うのは釈迦に説法だろうが、変に身構えると、むしろ相手を強く意識してしまって、視線なり何なりで相手に察知され易くなるものだからね」

 

 全身全霊で何とか取り繕い、わたしは自然体を装う。けど、果たして気付かれていないかどうかは分からない。変に身構える…なんて表現をする辺り、私が意識して平静を装っているのを見抜いてるんじゃないかと思わされる。…まぁ、でも、何にせよ……び、びっくりしたぁぁ…。

 

「…して、私に何の用かな?」

「ちょっとした事よ(何の用って…これ明らかに、わたしが探していた事を把握してないと出てこない言葉じゃない…。これ、結構前から見られてたんじゃ……)」

 

 わたしが探しているのを分かってた上で泳がせていたんだとしたら、とんだ食わせ者。こっちから呼び掛けるのは、思い付きでの行動とはいえ、ズェピアに踊らされてた感があって何か悔しい。…けど、恐ろしいのはそんな事なんて微塵もない…即ちただわたしの顔を見ただけで、用事があると見抜いた可能性もあるって事。

 でも、取り敢えず今それは重要じゃない。だからわたしはその事を脇に置き、言葉を続ける。

 

「それよりも…ズェピア、ちょっとお時間頂けるかしら?」

「うん?どうして半端に敬語…ああ、私が教職の経歴もある事を踏まえたパロディという訳だね」

「い、いいのよそんな分析しなくても。…で、大丈夫?」

「勿論。レディからのお誘いとあれば、いつでも」

「なら、場所を移しましょ?こんな廊下で話すのも…ね?」

 

 応じてくれたズェピアと共に、空き部屋の一つへと入る。…レディからのお誘い…なんて気取った言い方をしてる割に、あんまり感情が揺れてない感じなのよね、ズェピア。まあ、こういう事をさらりと言えた方が、確かに紳士っぽくはあるんだけど。

 

「それじゃあ、本題に…といきたいところだけど、あまり身構えないでほしいの。だから、甘いものでも食べながら話しましょ」

「という事は、もしや……」

「えぇ。食べて頂戴」

 

 察した様子のズェピアへと、わたしは肩を竦めてみせる。そして……バナナを、渡す。

 

「…セイツ君、えぇと…これは、その……」

「スベールバナナよ?」

「…何か作ってきたとかでは……」

「ないわよ?だってわたし、そんなに料理得意じゃないもの」

 

 出来ない訳じゃないけど、とても積極的に披露するようなレベルじゃない。だったら下手な事はしないで、既に出来ているものとか、最初から美味しいものを用意した方が得策よね。

 

「…そうか…うん、そうだね…バナナはそのまま食べても美味しいものだからね……」

 

 そっかー…この流れでそれかー…みたいな雰囲気を出しつつ、皮を剥いて食べるズェピア。それを少しの間、わたしは眺め…頃合いを見て、改めて話を切り出す。

 

「……悪かったわね。貴方一人に、この次元の在り方と向き合わせちゃって。わたしにせよイリゼにせよ、それに全く気付けなくて」

「…それは、謝る事ではないよ。この次元の在り方は、私が独自に調べ、誰にも伝えず進めていた事だ。故に、自己責任以外の何物でもない」

「だとしても、よ。貴方が何かやっている事は分かっていたんだから、わたしは訊く事が出来たし、訊いていればもっと早くから知る事だって出来たかもしれない。そしてそうすれば、貴方が一人で向き合う時間は減っていたかもしれない…そうでしょう?」

「…否定はしないよ。だがそれは、決して君の落ち度ではない。わたしは、そう思うよ」

「平行線ね。まあでも……」

「それは別に、拘る事でもない…だろう?であれば同感だよ、セイツ君」

 

 それでいいだろう?…と肩を竦めるズェピアに、わたしは頷く。よく分かっているわね、とついでに苦笑もズェピアへ見せる。

 これが、わたしの話したかった事。ズェピアの話で、わたしも皆もかなり動揺したものだけど…なら話したズェピアは、そこまで調べ上げた彼は、どう思っているか。…掴みどころのないズェピアだから、正直よく分からない。分からないけど、少なくとも平気である筈なんてないんだから…気になった。放置してはおけなかった。

 

「でも、本当にびっくりしたわ。驚いたというか、ゾッとした…って感じだけど」

「当然の事だ。私も影君やワイト君に主導してもらっている内側の調査と合わせて、こちらの面からも分かる事があれば…というつもりで始めたのだが、まさかこんな真実に直面してしまうなんてね」

「全くよ。皆の困惑、動揺、焦り、恐れ……あぁ、今思い出してもちょっと興奮しちゃうわ…!」

「……セイツ君?」

「…こ、こほん。あれよ?普段は動じない面々ですら動揺してたりして珍しいものが見れたっていう感動と、そもそもわたしは方向性問わず感情が好きだって前提での話だからね?わたしは決して、加虐性欲に駆られた訳じゃないからね?」

「いや、そこの訂正は別に求めていなかったのだが……」

 

 思わず口走ってしまったわたしが勘違いしないでほしいと伝えると、ズェピアは何とも微妙そうな顔をする。…けどほんと、さっきはゾクゾクしちゃったわ…これで今直面してる問題を早期に解決出来れば文句なしだけど……流石に難しいでしょうね。

…とは思うけど、諦めるつもりなんてない。わたしは恐れや失意、何なら怒りや敵意といった感情も好きだけど…そういう感情に飲まれたり、苦しんだりする人を見たい訳じゃないから。そういう人がいたのなら、助けるのが女神なんだから。

 

「…ねぇ、ズェピア。あまり考えたくはないけど、わたし達が認識出来ていないだけで、もう既に気が遠くなる位…それこそ、もうここ以外は凡ゆる次元や世界が無くなっているって位の時間が経った後って事も…考えられるのよね?勿論、遥かな時間の果てにあるのが『終わり』だとは限らないけど……」

「可能性の話でいえば、あり得ない…とは言えないね。…不安かい?」

「それはそうよ。わたしだって、皆だって、不安に決まってるわ。…貴方は、大丈夫?」

「心配には及ばないよ。幸か不幸か、絶望には少しばかり経験があってね。…まあ、あの戦いの際には、むしろそれを掘り起こされたような結果となってしまったが」

「あれは、まぁ……」

 

 それを言ったら、わたしや女神の皆は全員完全に無力感されちゃった訳だし…と肩を揺らす。ズェピアもあの時の事について掘り下げるつもりはないようで、さらりと流して更に言う。

 

「だからこそ、私は言える。我々は今、目を覆いたくなる状況に直面しているが…まだ、絶望的には程遠いと」

「…大したものね。貴方の事は、底知れないと思っていたけど…今の言葉だけでも、それが貴方の持つ『深み』故だと分かるわ」

「なに、私は少しばかり能力があって、他者よりそれなりに長く生きているだけさ。少なくとも人の持つ可能性、そう呼ぶべき輝きにおいては、私よりここにいる皆の方が遥かに強く美しい」

「分かるわ。わたし達女神は、そういう可能性の輝きが形を得たようなものだけど…それを生み出しているのは、他でもない『人』だもの。…まあ、直接的か、間接的か…って違いはあるけど」

 

 同じシェアを力とする女神であっても、信次元や超次元は思いがそのまま女神となる一方で、神次元は女神メモリーを介して人が女神になるものだし…直接的に生まれたオリゼが創り出したわたしやイリゼは、女神としては間接的な存在。まあでも、そこはそんなに重要じゃない。直接的だろうと間接的だろうと、人の思いの強さ、美しさは同じように感じられるものだから。

 

「でも…ううん、だからこそよ。……大丈夫?ズェピア」

「…だからこそ、というのは?」

「貴方、一度も弱音を吐いていないでしょう?誰でもゾッとするような事態に、たった一人でぶつかっていたのに、それを一人で抱えたまま、平然としていた。それは貴方の精神力…それと貴方の言う、真に絶望と言うべきものを知っているからこそって部分もあるんだろうけど…だとしても、心配になるわ。一番辛かった筈の、貴方が普通そうにしていたら」

 

 一拍置き、問う。ここまで冷静な、或いは前向きな発言をしているズェピアだからこその、感じた不安を。思っていた事を。

 わたしの言葉に、ズェピアは目を丸く…はしてない(というか相変わらず目を閉じている)けど、そんな感じの表情を見せる。

 

「…ふふ、これは予想外だね。しかし、先程言った通り心配は無用…と言っても、それだけでは納得しないのだろう?」

「ちゃんとわたしの目を見て、はっきり言い切れるのならまあ、納得はするわよ?」

「ほう…ならば信じてもらう為、私も開眼を……」

「え、するの…!?ちょ、ちょっと待って…!流石にそれは、心の準備が……」

「しないのだがね」

「いやまあそうでしょうねっ!」

 

 こんな流れで開眼するの…!?…と慌ててしまったわたしへの、流れるようなズェピアの返し。いいように翻弄されて悔しいような、でもこの流れでの開眼にはならなくてどこか安心したような…そんな心境になるわたしだった。

 

「全くもう…。……そうやって煙に巻くつもりなら、わたしは騙されないわよ?」

「そのようだね。ただ、言わせてもらうなら、本当に心配は無用だよ?正直なところ、君達にきちんと伝える事が出来てむしろ安心すらしているところさ」

「…それは、肩の荷が降りたとか、そういう?」

「まあ、それもあるといえばある。だがそれ以上の理由として…君達は先程、私の話を正しく認識し、セイツ君は今もその内容を覚えている。私だけが認知と記憶を出来る訳ではないと分かったのが、私としては大きいのだよ」

 

 だから先の話は、自分にとっても進歩だったのだとズェピアは言う。彼の言葉は筋が通っているし、違和感も特に感じない。自分の心をそのまま口にした…って訳ではないんだろうけども、嘘…というより、取り繕っているようには思えない。だからきっと…本当に、大丈夫なんだと思う。最初から大丈夫だったのか、わたし達に話して、その反応を見て大丈夫になったのかは分からないけど……わたしの懸念は杞憂だった。そう結論付けて、恐らく問題ないと思う。

 

「…まあ、長い時が経っている可能性を考えると、娘達の事で不安にはなるのだけどね…」

「娘達の?…もしかして、まだ小さいの?」

「いや、そうではないんだ。そうではないし、次女の方はしっかり者だから心配はないのだが、逆に心配させてしまっているかもしれないし…長女の方は、長期間不在にしたのだから、それ相応のお土産があるよね?…と圧を掛けてきそうな気がしてね…スベールバナナやら何やらを、山の様に持っていったら満足してくれるだろうか……」

「…父親っていうのも、大変なのね……」

 

 急に普通の親の様になったズェピアの雰囲気に、わたしは思わず苦笑する。…割とほんとに、これが一番ズェピアにとっての悩みというか、気掛かりな部分なんじゃないかしら…。

 

(そういう意味では、ズェピアより優先してルナや愛月君辺りを気遣ってあげた方が良かったかもしれないわね。…イリスちゃん…は、そもそも理解出来ているかどうか微妙だけど……)

 

 自分の空回りっぷりに、わたしは軽く頬を掻く。不要…ではないと思うけど、決して必須ではなかった気がする。でも、それが分かったという意味では、無駄ではなかった筈。そうわたしは結論付けて…こほんと一つ、咳払い。

 

「ありがとう、ズェピア。突然の話に付き合ってくれて」

「礼には及ばないよ。私も君とじっくり話す事が出来たのだからね」

「そう?じゃ、ついでに訊かせて頂戴。貴方は別に、今日漸くこの次元の性質に気付いた…って訳じゃないわよね?ならどうして、今まだ話さなかったの?」

「勿論それは、まだ話せる域になかったからだ。良い方向であれ悪い方向であれ、不明瞭な話で振り回してしまうのは良くないからね。加えて重大な話であればある程、いつ、どこで、どのように話すか気を遣う必要がある…そういうものではないかな?」

「ま、そうね。だから要は、わたし達に配慮をした…そういう事でしょ?」

「…ああ、そうとも言えるね」

 

 わたしの言い方に引っ掛かりを覚えたような、そういう風に見えるズェピアの反応。そんな反応に、全く本当に鋭いんだからと思いながら……結局一度も大して調子を崩さなかったズェピアへと、わたしは言った。

 

「なら…これからは、そんな気遣いは不要よ。少なくともわたしには、わたし達女神には必要ない。貴方の配慮は間違ったものじゃないけど……こんな程度で揺らぐ程、足が竦んでしまう程、女神は柔な存在じゃない。もしこれまでの交流で、ズェピアがそれを理解出来てなかったのなら…安心して頂戴。この苦難を乗り越える中で、たっぷりと分からせてあげるから」

「……いやはや、まさかそんな事を言われるとは。流石はイリゼさんの、彼女の姉と言うべきか。──クク、ならば期待させてもらおうか。此度の物語における、女神の在り方を」

 

 にぃ、と口角を吊り上げたズェピアの、芝居掛かった返しの言葉。演技か、それとも熱の籠った返答と言うべきか。ただ、一つだけ言えるのは…ここまでのやり取りの中で、今が一番ズェピアの心に感情の揺れが起こっているって事。全くもう、ここまで言わなきゃ碌に心を見せてくれないなんて、柔らかい雰囲気の割に相当な堅物なんだから。でも……

 

「…ふー、ぅ…。これよ、これこれ…こうやって出てくる感情がまた……良いっ!すっごく、素敵っ!」

「…君も中々ぶれないというか、ある意味芯が強いね。…それもまた、女神の強さと言うべきかな」

「ふふ、勿論よ。自分を信じ、自分を貫き、そんな自分に誇りを持つ。人の上に立って導く以上は、そうじゃなくっちゃ力不足ってものでしょ?」

「うむ、確かにその通りだね。……まあ、同時に人はそれを、『開き直り』とも言うのだが」

「うぐっ…良いのよ別に。わたしはわたしとして、これがわたしだって、感情や心が大好きだよって叫ぶんだから」

「けどさっきは誤魔化すように咳払いをしていなかったかな?」

「そ、それは……あーもうっ!そうよ、わたしは自分を変える気はないし変えたくもないしそもそも間違ってるとも思わないけど、それはそれとして変な目で見られるのは嫌だって事よ!悪い!?」

「いやいや、悪くないさ。すまないね、ついからかってしまったよ」

「そんな余裕たっぷりの表情をしながら謝らないで!?」

 

 ただ謝られるだけならともかく、こんな返しをされたら敗北感が凄い。弄られたというか弄ばれたというか、とにかく悔しさが凄まじい。けど、流れ的にもここから巻き返せるとは思えなくて…結果わたしはぷいっと背を向け、そのまま歩いていってしまった。…状況的には、完全な敗走。更に悔しい、恥ずかしい。

 でもまあ、元々の目的は果たせた。前向きな答えを得られたんだから、それについての文句はない。そして、今に至るまでにおける気掛かりな事は解決出来たんだから…ここからは、これからの事。まだどうしたら良いかは全然分からないし、アイデアもないけど…やる気はある。これまでだって、一体どうしたら…って状況に陥った事はあって、だけどその都度乗り越えてきたから今がある。だから、大丈夫。わたしは…わたし達は、踏み出せる。

 

 

 

 

 寝て、目覚めた朝。起きた時、私は話した事を、この次元の在り方を覚えていた。まずはその事にほっとして……けれどその話をしたのがいつだったか、寝る前だったかそれよりもう少し…或いは結構前だったかがよく分からなくなっている事に気付いて、背筋が凍るような感覚を抱いた。

 間違いない。今、私達が置かれている状況は、相当な窮地。でも…まだ万事休すなんかじゃ、きっとない。

 

「おはようございます、オリジンハート様。お早いですね」

「ん、まぁね。…エリナ、ちゃんと眠れた?」

「大丈夫です。…流石に、いつも通り…とまでは言えませんけど」

「眠れたなら問題ないわ。休めてさえいれば、次に繋がるんだもの」

 

 私がセイツと朝ご飯の準備をする中、エリナが厨房に来る。でも実は、エリナが来た時点で準備は大分進んでいた。だから今回はテーブルを拭いてもらうとか、飲み物を用意してもらうとかに回ってもらって…私は朝食を完成させる。

 

「…………」

「ほら、えー君ちゃんと歩いて。それは人じゃなくてサーフボードだから挨拶しても意味ないよ?」

「ふらっふらですね、影さん…朝弱いんだっけ…?」

「そーなんだよ、あい君。それなのにずーっと考え込んでたら、多分睡眠不足もあるし…もー、そーゆーところも可愛いからいいんだけどさー」

「ふらふら…ではないですけど、アイさんはぽわぽわしてますね…寝起きにのんびりしてる姿は、信次元でも見ましたけど……」

「あれだけの事実を知って尚、寝起きにここまでぽわんとしていられるのも凄いものよね。見習おうとは思わないけど」

 

 起きているのかどうか怪しい影君を茜と手伝いを申し出た愛月君が座らせ、ぽわわんとしているアイの様子にビッキィとイヴが肩を竦める。厨房の方からそのやり取りと、皆が集まった事を確認した私はセイツと共にお盆を持ち、食堂へと朝食を運んでいく。

 

「お待たせ、皆。今日は心機一転、気合いを入れようって事で…これだよ」

「カツ丼、ですか。いいですね、と個人的には言いたいところですが……」

「朝からカツはちょっと重いんじゃない?まあ別に、わたしも食べられない訳じゃないけど」

「そういう意見もあると思って、普通の朝食もあるわ。ふふん、そして今回はわたしも手伝ったのよ?」

「…因みにどんな手伝いを?」

「お米を研いだり、食材を冷蔵庫から出したり、後味見もしたわね」

「ふぁーぁ、子供のお手伝いレベルッスねぇ…あ、ウチもカツ丼にするッス…」

 

 皆食べられる?という旨の発言をしたワイト君とエストちゃんに対し、胸を張りつつセイツが返答。でもその内容は本人が今言った通りであり、訊いたピーシェも他の皆も、「えぇ…?」という顔をしていた。…私?私はほら、普段は私に任せっきりなセイツが多少でも手伝ってくれた時点で、一応はプラスの評価…かなぁ。

 とまあ、そんなやり取りもしつつテーブルに並んだカツ丼と味噌汁。なんだかんだ割と皆カツ丼の方を選んでいた。やっぱり皆、パワフルだもんね。

 

「トンカツの丼だから、カツ丼。…なら、豚以外でもカツ丼になる?」

「んーと、なると思うよ。カツ丼といえばトンカツだから、それ以外のカツの場合は、○○カツ丼…みたいに表現すると思うけど。…そうだよね…?」

「そうそう、ルナちゃんの言う通りだよ。鶏肉ならチキンカツ丼、マグロならマグロカツ丼、熱血の物語ならカツキング…ってね」

「最後のはちょっと違うと思うけどね…皆、食べる前に少しだけいい?セイツと話した事なんだけど……」

 

 全員に呼び掛け、注目を集める。食べながらでも良いかな…と思ったけど、これから言うのは私自身、意気込みのような意味合いを持たせたいと思っているから、食べる前のタイミングを選ぶ。

 因みにセイツと話したのは、寝る前。それがあったから、今日はセイツも私と同じように早起きをして、簡単な事だけど手伝いもしてくれた。

 

「こほん。私達は今、窮地に陥っていて、それをどう打開すれば良いか分からない状況にある。そもそも、何がどうなっているか、把握しきれているかどうかも怪しい。そんな中でどうしたら良いかなんて、想像も付かない…そうだよね?」

 

 私の問いに対して、返ってきたのは無言。それが示すのは…きっと肯定。否定するつもりがないから、黙って私の次の言葉を待ってくれている…多分、そういう事。

 だから私は、ゆっくりと皆を見回す。そしてセイツからの首肯を受けて……はっきりと、言い切る。

 

「ならばこそ、動こうよ!明確な敵がいるなら、戦いなら、下手に動くのはこっちの動きを知られたり、隙を突かれたりするリスクを伴う訳だけど、今はそうじゃない。もしかしたら、これが人為的なもので、私達にとっての敵がいるのかもしれないけど…それだって今は、分からないんだもん。だったらまずは動く。動いて、状況を変える。受け身じゃなくて、この次元の性質に流されるんじゃなくて、こっちから乗りこなしてやるって位の気概で動く…そうすればきっと、何とかなるよ!だって何とかなる、何とか出来るだけの面子が、ここには揃ってるんだから!」

 

 躊躇いなく、断言する。言い切る事こそが大事。半端な言い方じゃ、自分の言葉に自信を持っていないような雰囲気じゃ、皆にも自信を持ってもらえない。自分にとっても、言い切るか言い切らないかじゃ大きく変わる。そして…これは、虚勢なんかじゃない。皆とならって、私は本気で思っている。

 これに対する皆の反応なんて、気にしない。気にするまでもない。皆の反応は、答えは分かっているから。そうでしょう?皆。




今回のパロディ解説

・「〜〜ズェピア、ちょっとお時間頂けるかしら?」
ブルーアーカイブがYouTubeにて公開している、動画のシリーズのパロディ。別に毎週セイツが誰かにこれを言ったり、途中からイリゼも参加するようになったり…とかは多分ありません。

・「〜〜大好きだよって叫ぶんだから」
Extreme Heartsにおける挿入歌の一つ、大好きだよって叫ぶんだの事。自分の好きに、その思いに正直なのがセイツです。それを曲げるつもりはないので、変態呼ばわりもある意味仕方ないですね。

・「〜〜熱血の物語ならカツキング〜〜」
デュエル・マスターズにおけるクリーチャーの一つ、切札勝太&カツキング -熱血の物語-の事。カツドンやハムカツ辺りをそのままパロディにしようかとも思いましたが、少し捻ってこうなりました。
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