超次元ゲイムネプテューヌ Origins Transition   作:シモツキ

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第十四話 調査と侵入

 認知。認識。次元からの干渉。どれも、イリスにはよく分からない事。言葉の意味は分かる。分かるけども、まだ理解が及ばない。

 これは、一つの学び。言葉の意味を知っていても、理解出来た訳ではない。これは、きっと大事な事。それを学べたので、良い事だった?……違う。喜んでいられる状況ではない。それは、イリスにも分かる。

 だから、イリス頑張る。頑張ってまた、ブラン達に色々話せるようにする。ふんす。

 

「イリスちゃん、重くない?大変なら、もう少しわたしが持ってあげるよ?」

「大丈夫。…はっ。イリス、スライヌに似たモンスターが、三つまでならどんな物でも運べるゲームを知っている。つまり、イリスも頭に載せれば……」

「イリスちゃんはそのモンスターでもなければ、そのゲームのキャラでもないでしょ?変な事しないで、普通に運んでね?」

 

 エストに言われて、イリスは頷く。姉の言う事は、聞くべし。エストは姉じゃないけど、ラムみたいに温かいから、好き。ディールもロムみたいに優しいから、好き。

 

「でも本当に、イリスと愛月がいて助かったわ。こうしてあの建造物に辿り着けるようになったのは、二人とファングのおかげだもの」

「そんな、僕は何かやった訳じゃないし……」

「でも愛月君がいなかったらファングもいなかった訳だし、素直に受け取っていいと思うよ?…それから、エリナちゃんもね」

「へ?わ、私ですか?」

「だって、そもそもはエリナちゃんの気付きが切っ掛けになった訳でしょ?だからエリナちゃんも胸を張っていいんだよ、ほらほらっ」

「わわっ、ぱ、パープルハート様…!」

 

 今、イリス達は荷物を運んでいる。イリスと愛月はエリナに感謝されて、エリナはネプテューヌに褒められる。背中を押されたエリナは、驚いている…のに、嬉しそう。少し、不思議。

 後、ネプテューヌはさっきまで両手で持っていた物を、今は片手でバランス良く持っていた。ネプテューヌは、器用。

 

「皆、ありがとー。それじゃあここに置いてくれるかな?」

『はーい』

 

 運んだ先、建造物の近くで、茜に言われてイリス達は荷物を降ろす。その時空から音が聞こえてきて、ワイトのロボットが降りてくる。

 

「大荷物はこれで最後です。これ等もこちらで宜しいですか?」

「問題ないわ、ワイト。…にしても、もう空からでもここに辿り着けるのね」

「いえ、今回はエスト様が作って下さった道の上を低空飛行してきたので、もっと高高度を移動した場合はどうなるか分かりません。…試してみますか?」

「ううん、そこまで気になる訳じゃないからいいわ。それだけの為に一回戻ってもらって、また上空に移動して…っていうのも無駄が多いでしょ?」

 

 ロボットが腕で運んできた大荷物を、セイツがこっちに運んでくる。降ろしたところでイリスも持ってみようとしたけど、凄く重かった。

 女神のパワーは、女神の姿になっていなくても凄い。…女神は、怪力。

 

「ちょ、ちょっとイリスちゃん?」

「女神って一括りで怪力認定するのは止めてほしいかな…」

「……?」

 

 セイツを眺めていたら、何故かエストとディールが変な顔をしていた。…イリス、声に出していないのに伝わった?これが、以心伝心?

 

「…うん、こんなものかな。皆、集まってー」

「おっ、日曜六時ッスか?」

「違うよ、そんな訳ないでしょ…。一先ずこれで、前線拠点…って程でもないけど、休憩場所にはなるんじゃないかな?」

 

 近くで作業をしていたイリゼの声。そこにあるのは、大きいテントとレジャーシートと、それから色々。イリス達が持ってきた荷物、食べ物はその横に置いてあって…もう一つのテントを、荷物の所に移動させる。

 

「ふむ、これならば良さそうだね。こちらもそろそろ完成するよ」

「…こうしていると、なんだかキャンプをやるみたいですね」

 

 ぐるっと見回してから言ったビッキィの言葉に、皆がうんうんと頷く。…ビッキィ、あんな事があったのに元気。怪我もしてない。ビッキィは、凄まじくタフ。…さっきから、学べる事が多い。

 

「ズェピア、ビッキィ。二人は、何を作っていた?」

「窯だよ。これも、あれば助かるだろう?」

「へぇ、そうだったのね。休憩場所、物資、それにピザが「むっ」…こほん、ピザ窯「なんで結局ピザ窯って言うのよ!?何の為に言い直したの!?」「エスちゃん、話進まないから静かにしよ…?」…凄いややこしい事になってるわね、わたしの台詞…。…えーと…とにかく本当に前線基地っていうか、ゲームでいうベースキャンプみたいな感じになったんじゃない?」

「あ、分かる。これから攻略開始って感じだよね!」

 

 理由はよく分からない…けど、エストはぷんすか。反対に、セイツとネプテューヌは楽しそう。

 気になったイリスがディールに訊くと、ディールは「…拘り、かなぁ?」…と言っていた。…やはり、謎。

 

「えっと…準備が出来た訳だから、早速入るの?」

「いや、まだだ。まだ二つ、決めなくちゃいけない事がある」

「ああ…どうやって入るかと、全員で行くのか…ですね」

 

 かくん、と首を傾げたルナに、影が答える。続いてピーシェも言う。…イリスは、知っている。影は、建造物の周りをぐるぐる歩いていた。お散歩ではなかったらしい。

 

「どうやって、って…前の仮想空間の時みたいに、四つの塔みたいなところからそれぞれ登っていくんじゃないんですか?」

「俺もそう思っていた…が、どの塔にも入口らしきものが複数あってな。さっき少し、茜にも見てもらったんだが……」

「外からじゃ、入り口付近しか見えないんだよねぇ。いつもならもー少しちゃんと見えるんだけど、まだちょっと認識へのかんしょーがあるみたいで…」

「となると、どうやってというか、どこから入るか…ってなる訳ね。…出来る事なら、あまり戦力は分散させたくないけど……」

『あ……』

 

 ほんの少し、イヴの顔が暗くなる。それを見て、イリゼとルナ、アイがぴくっと肩を揺らす。

…そういえば、前の時は皆、辛そうだった。けれど、イリスは大丈夫だった。イリスがモンスターだから?…途中までしか覚えていないから、分からない。でも……

 

「イヴ、大丈夫。皆が大変な時は、イリスがまた頑張る」

「イリス…。……そうね、頼りにさせてもらうわ」

 

 イヴの前まで言って、イリスは言う。するとイヴは少し黙って…ちょっぴり、笑った。イリゼ達も、頷いていた。

 

「…イヴさん、君の気持ちは分かる。あの件を気に止むのも無理はない。…が、あれを教訓とするならば、尚更戦力を一点に集中させるのは賢明ではないよ」

「そうね。前の時も、全員で行動してたらそれこそ一網打尽になってただろうし。……まぁ、それも結局戦力分散していたから何とかなったっていうより、イリスちゃんがいたからなんとかなった…って感じだけど」

「…えぇ、ワイトとエストが言っている事も理解はしているわ。だから、さっきの言葉は忘れて頂戴」

「…忘れる?う、それは難しい…どうやったら、特定の情報のみを忘れられる?」

「あ、いや、今のは言葉の綾というか、そんな本格的に忘れろって言った訳じゃなくてね…?」

「……?」

 

 覚えるのは、出来る。知る事、知識を得る事は、好き。だけど、忘れ方は分からない。だから忘れてと言ったイヴに訊くと、イヴは何故か困っていた。ディール達に理由を訊こうと思ったら、ディール達も笑っているような、でもちょっと違うような顔をしていた。

…後から訊いたら、それは苦笑い、というらしい。笑うのにも、種類がある…小さな発見。

 

「…話を戻そっか。それぞれに入り口が複数あって、もしもに備えて戦力の一点集中は避けておきたい…ってなると、今回も前の時みたいに何チームかに分かれて、別々に入ってみるのが効率的だと思うけど、どうかな?」

「それには賛成ですけど、万が一の事を考えるなら、待機しているチームもあった方が良いかと。仮想空間の時と違って、今回は時間に余裕がない訳でもないですし」

「どこまで行ったら引き返すか、それとも何もなければ進み続けるのか…中の探索に関しても、進退の判断基準とそのタイミングを決めておくべきだね。このような場合、時間で決めるのがベターではあるが…何せ我々は、その選択肢を取る事が出来ないのだから」

 

 段々難しい話になっていく。イリゼ、ピーシェ、ズェピアが順に話している。

 難しい。だから、イリスは全部をちゃんと聞く。意見?…を言う事は出来なくても、覚えておく事なら出来る。

 

「…あの、パープルハート様」

「うん?どったのエリナちゃん」

「その…もし良ければ、皆の言う『前の時』について、教えてほしいというか……」

「え?あ、そっか。エリナちゃんは知らないんだもんね。勿論いいよ!…けど、どこから話したらいいんだろう…流石に全部話してたら長くなっちゃうし……」

「…エリナ、気になる事がある?イリスに分かる事なら、イリスが教えてあげる」

「ふふ、ありがとう。…そうだ、パープルハート様。手間を掛けさせるのは申し訳ないので、一先ず気になる部分だけを私が質問して、それに答えて頂く形でどうでしょうか?」

「それでもいいの?なら、何でも訊いてねっ!」

 

…と、思ったら、イリスにも言えそうな事があった。イリスは皆から色んな事を教えてもらっている…ので、今日はイリスが教えてあげる番。

 皆はこれからの事を話す。イリスはネプテューヌと、エリナにこれまでの事を話す。恐らくちゃんと、説明が出来た。そしてエリナに分かってもらえた時、皆の話も纏まっていた。

 

「中が分からない以上、女神によるタフな面々で先行偵察。何かあれば、その都度数名が報告の為に帰還し、後を追う二次部隊が随時先行部隊の支援を行う…まあ、こんなところだろう」

「何か、先行部隊…というかわたし達の負担がやたら大きい気が……。わたし、そんなにタフじゃないんですけど……」

「まあ、面白そうだしいいじゃない。やっと思う存分暴れられそうだし、わたしは文句ないわよ?」

「あの、そういう事であればわたしも先行偵察に──」

『あんな事があった後なのに?』

「…いや、まぁ…はい……」

 

 皆に言われて、しゅんとするビッキィ。イリスもディール、エストと一緒に行きたかったけど、駄目と言われた。…でも、帰ってきた時に「お帰りなさい」と言ってもらえると嬉しい…ので、イリスはそれを言ってあげる役をする事にする。

 

「何かあれば、即帰還して下さい。いつでも出撃出来る準備を整えておきます」

「僕もカレー作っておくから、疲れたら戻ってきてね?」

「着々と、私達が行く他ない状況になりつつありますね…。…まぁでも実際、鉄火場には慣れてるし…ここは一つ、頑張りましょうか」

 

 ゆっくり振り返ったピーシェに、イリゼ達が頷く。それからイリゼ達は、塔の一つ…その前に立つ。

 

「えぇと…多分ここが入り口だよね?けど、どうやって入るんだろう…扉っぽくなってるみたいだけど、押しても引いても開く気配がないというか……」

「横開きなんじゃないッスか?というか、どんな扉も横開きにするウチの知り合いがいれば解決するんッスけどねぇ」

『あー』

「か、神次元の面々が皆納得してる…。…いやでも、横開きでもない…って、あれ?……えっ、まさかのシャッタータイプ…?」

 

 ぐぐっ、とイリゼは下から上に扉?…を開ける。開いたところでイリゼは首を傾げて、それから一番最初に中へ……

 

『閉店ガラガラ』

「ちょっとぉ!?」

 

……入ったところで、セイツとネプテューヌが扉を閉めようとしていた。ギリギリでイリゼが指を滑り込ませて、怒った顔でまた開いていた。

 

「な、何ふざけてんの!?今ふざけるべきところじゃないよねぇ!?」

『いやぁ、つい』

「だろうねッ!扉の開き方から思い付いちゃって、やらずにはいられなかったんだろうねッ!…もしこれで私が閉じ込められたらどうする気だったの…」

「え、そんなの勿論全力で扉をぶち壊して助けるに決まってるじゃない」

「うん、当たり前だよね」

「…お、怒り辛いなぁもう……!」

 

 むぐぐ…となっているイリゼを見て、セイツとネプテューヌはちょっぴり笑う。…イリゼは、怒りたかった?女神には、怒りたい時がある?気になる…けど、もっとイリゼはぷんすかしそうなので、止めておく。

 

「ね?なんか楽しそうでしょ?」

「エスちゃんの言ってた楽しいって、こういう事なの…?…まあ、いいや…待っててね、イリスちゃん」

「行ってらっしゃい、ディール、エスト。…お夕飯までには、帰るんですよ?」

「あはは、それミナちゃんの真似?じゃ、遅くなってイリスちゃんに叱られるのも嫌だし、ぱぱっと行っちゃいましょ」

 

 塔の中へ入っていく皆を、イリスは手を振って見送る。ディール、エスト、イリゼ、セイツ、ネプテューヌ、アイ、ピーシェ…女神の七人が、入っていった。

 と、そこでイヴが出入り口に近付く。イリスがじーっと見ていると、イヴは大きい石…じゃなくて、小さい岩?…を、出入り口に置いた。

 

「…イヴ、それは何?」

「この扉が急に閉まって開かなくなったら困るでしょ?だから、そうならないようにする為の保険よ」

「成る程、イヴは賢い。イリス、皆にもイヴの賢さを教えてくる」

「ちょっ、そんな事しなくていいわよ…!?多分それをすると私が生暖かい目で見られる事になるから止めて…!?」

 

 賢いは凄い。凄いは素敵。だからルナ達に伝えにいこうとしたら、何故か止められた。理由は、よく分からない。

 

「よし。それじゃあ僕は、カレーを作ろっと」

「それなら手伝うわ。…って、それはキャンプの道具?」

「うん。…あ、そっか、エリナさんは知らなかったよね。僕は普段、グレイブと色んな所を旅してるんだ。で、キャンプと言えばカレーでしょ?」

「私はどうしよう…あのー、誰か私にお仕事を……」

「なら、一先ずルナは茜と塔を見ていてくれ。何かあれば、すぐに対応せにゃならんからな」

「ダブルチェック体制だね!二人でがんばろー!」

 

 愛月はエリナと料理の道具を広げる。ルナと茜は二人で塔をじじーっと見る。他の皆も、それぞれ何かしてて…イリスもルナと茜の横で、一緒にじーっ。

 

「…さて、そろそろ我々も行くとしよう。イリゼさん達なら、もうそれなりに進んでいるだろうからね」

「そうね。離れ過ぎると支援も行えなくなるし、もう出発……いや、待って。何か聞こえない…?」

「…確かに聞こえるね…これは、地響き…いや、違う……」

 

 何か音がすると、イヴとワイトが言う。初めは分からなかった…けど、耳を澄ますと、どどどど…という音がイリスにも聞こえてくる。

 これは、何の音?…分からない。でも、段々近付いてくる。音は大きくなって、上の方から聞こえている気がして……

 

『うわぁああああああぁぁぁぁっ!?』

『えぇええええぇぇぇぇぇぇッ!?』

 

 声、聞こえた。イリゼ達の大声が、上の方から聞こえてきた。それから…水も、沢山出てた。ばっしゃーんと、塔から水が出てきていた。

 

「なっ、何事ー!?皆がとんでもない勢いの水流に押し流されてきたぁ!?」

「おお、凄い。もしやこれは、ウォータースライダー?」

「この勢い、あのアイススライダーに匹敵…ってあぁっ、落ちた!?」

 

 ぴゅーん、と飛んでいくイリゼ達。ルナは叫ぶ。ビッキィははっとした顔をしてる。そして…イリゼ達、落ちた。沢山の水と一緒に、森の中に飛び込んでいった。…あれは、痛そう…。

 

「…恐らくだが、対侵入者用のトラップ…といったところか」

「冷静に分析してる場合じゃないと思うんだけど!?ぱ、パープルハート様ー!」

 

 真っ先にエリナが走っていく。同じように、イリスも走る。森に入ると、イリゼ達はひっくり返っていた。イリゼとピーシェは高い木に引っかかっていて、ディールとアイは低い木に頭から突っ込んでいて、エストとセイツは水溜まりでうつ伏せになっていて……ネプテューヌは、地面に刺さっていた。

 

「あ、あはは…これは酷いね……」

「ふむ…うん、ネプテューヌ君はどうなっているのかな。一人だけ明らかにおかしくないかね?」

 

 茜が立ち止まって言う。ルナとエリナがネプテューヌの足を掴んで引っ張り出していたので、イリスはディールを引っ張る。よいしょ、よいしょと引っ張って…イリス達は、全員救出。

 

『ひ、酷い目に遭った……』

「い、一体何があったの……?」

 

 建造物の前に戻ったイリゼ達は、全員ずぶ濡れでがっくり状態。イリゼ達へ、心配そうに訊いたのは愛月で…顔を見合わせたイリゼ達は、言う。

 

『なにも』

「なんだその、体験と意志が欠如してるような返答は…。…何か、トラップのトリガーになるスイッチを踏んだか触れたかしたんじゃないのか?」

「いや、カメラやセンサーで探知している可能性もある。もしそうであれば、皆様が気付かなかったのも無理はありません」

「あー、きっとそッスよ。そんな、女神が揃いも揃って罠のトリガー一つ気付かないなんてチョンボ、する訳が……」

『……?』

「……ありそうな面子だったッス」

『し、失礼な。(私・わたし・自分)はそんな事しないん(だけど・ですけど)?』

「…してそうな雰囲気凄いわね……」

 

 おおお、これも凄い。イリゼ達の声、揃っていた。でもイヴはイリゼ達を変な目で見ていた。

……と、いうのが少し前の事。ずぶ濡れだったイリゼ達は、どうせ水着だしいい、と言って、同じ塔に別の入り口から入っていった。

 

「ぜーちゃん達、休まなくて大丈夫かなぁ…。…色々な意味で」

「やっぱりこれ、わたし達が代わりに行った方が良かったのでは?」

「いやいや、ここで交代となっては彼女等から挽回の機会を奪ってしまう。誰一人として心は折れていなかったのだから、このまま任せるのは間違いではないと思うよ」

「ですよね。それに大丈夫だよ、茜、ビッキィ。だって、イリゼ達だよ?大概の事なら跳ね返せちゃう女神様達なんだよ?」

「ついさっきは跳ね返すどころか、水流に押し流されて来たんだけどねー……」

 

 二回目のチャレンジをするイリゼ達を、茜とビッキィは…心配?…してて、ルナとズェピアは大丈夫だと言う。イリスも大丈夫だと思っている。

 そう、イリゼ達ならきっと大丈夫。でも、待っていてとは言われたけど、もし大変そうなら助けに行くのもやぶさかでは……

 

「……あ。また音がする」

「へ?…わっ、ほんとに音がしてる…!ま、まさかまた水に流されて……」

 

 また聞こえてくる、ごごごご…という音。さっきとは、少し違う。だけどこの音も、近付いてくる。

 皆は、塔の方を見てきょろきょろ。イリスも真似してきょろきょろ。すると、今度は塔の壁が大きく開いて……イリゼ達が、出てきた。

 

『おわぁあああおああぁぁぁぁっ!!』

「今度は何事!?…ってあれ?今、『あ』の中に『お』が一個だけ混じってたよーな……」

「どうやらそんな事を気にしてる場合じゃなさそうだがな…!」

 

 凄まじい勢いで、イリゼ達は駆け抜ける。髪がぶわっとなった。ちょっと涼しい。

…と、イリスが思っていると、塔からまた何か出てくる。けど、イリゼ達じゃない。あれは……

 

「…大きい球?鉄球?おおぉ、ごごごご…といっていたのはあれがころがってくる音……」

「観察してる場合じゃないよ…!?(あせあせ)」

「ちょっ、あーもう逃げるわよイリスちゃん!」

 

 がしっ、と両手をディールとエストに掴まれるイリス。そのまま走る二人に引っ張られて、イリスも猛ダッシュ。

 あのままだったら、ぺしゃんこになっていた…と、イリスは二人に怒られた。ぺしゃんこになるのは嫌なので、イリスは反省。でも、二人に引っ張られて逃げるのは、前にやったケイドロみたいで…ちょっと楽しかった。

 

 

 

 

 一度目は、ダムが決壊したような水流で、二度目は鉄球らしき巨大な球体が迫ってきた事で、イリゼ達は塔から強制退去させられる事となった。全員女神なんだから、女神化すればどうにかなったんじゃないかと思うが…まあともかく、二回続けてイリゼ達は追い返された。

 だが、二度の失敗でイリゼ達が諦めたかといえば…勿論否。ディールやピーシェ辺りの熱量は低かったが、他の面々は二度返り討ちになった事でむしろ火が着いたのか、攻略への意思が強まっていた。士気が高いのは良い事だとして、俺達も止める事なく続けてもらう事にした。……悪い流れ?先は見えている?…まぁ、言ってやるな。

 

「皆、いい加減本気でいくわよ!水流だとか鉄球だとか、こんなベタな展開にわたし達女神達がしてやられるなんて、このまま引き下がるなんて、出来る訳がないもの!」

『おーっ!』

 

 セイツの掛け声で、イリゼ、エスト、ネプテューヌ、アイの四人が拳を突き上げる。ディールとピーシェも、一応小さく拳を上げる。

 

「…本当に止めなくていいの?」

「気になるなら、イヴが止めたらどうだ?」

「私じゃ止められる気がしないわ。女神って、我が強い傾向があるし」

「同感だ。…で、俺なら止められると思うか?」

 

 言葉を返せば、イヴは理解したように黙る。そうして俺達は女神一行を見送り…俺も行動を開始する。といっても、特別な事をする訳じゃないが。

 

「じーっ…」

「イリスも、じーっ…」

「あははっ、じゃああかねぇもじーっ…」

「…じーって、わざわざ言う必要あるの?」

「んー、ないかなー。まあでもほら、折角だからりなちゃんも一緒にっ」

「えっ?あ、えっと…じーっ…」

 

 塔を見張る三人に、一人加わって四人になる。エリナは元々、愛月のカレー作りを手伝うという話をしていたが…さっきの球体の件でここでの料理は巻き込まれる危険があると判断し、愛月は一旦止める事にしていた。

 で、その愛月はといえば、荷物の確認をしている。なんでも愛月の世界には、使うと塔の中だろうが洞窟の奥深くだろうが、一発で外に出られる紐があるらしい。凄いものがあるんだな…と思ったが、よく考えたら似たような効果のボタンが自分の次元にもあった気がする。意外とありふれているのかもしれない。

 

(…やはりどの塔も、外観上の差異はほぼない。せいぜい出入り口の数や位置が違う位だが…さて、これ等をどう見るべきだ…?)

 

 ぐるりと建造物の周りを一周し、思考に耽る。二度の失敗と、側から見る分には馬鹿馬鹿しい…だが女神でなければどちらも大怪我の危険があった罠の存在から、支援部隊の行動も一旦保留しに、今は残るメンバーが全員待機状態。イリゼからの結果待ち。

 と、そこでこちらへ近付いてくる足音が聞こえてくる。この音と歩くペースは……。

 

「ビッキィか」

「あ、よく分かりましたね。影さんは何をしてるんです?」

「情報収集だ。イリゼ達が上手い事やれればいいが、根本的に見当違いという事もあるからな」

「……?それは、どういう……」

 

 途中で止まるビッキィの言葉。止めた理由は単純明快。また塔の方から何かの音が聞こえてきたから。

 今度は何が起きたのか。どうやってイリゼ達は出てくるのか。…そんな風に思っていたのは、最初だけだった。初めこそエリナの様に、毎回イリゼ達を心配していたが、途中から誰も何も言わなくなった。何せ……

 

『ひぇええええぇぇぇぇぇぇっ!!』

『うぎゃあぁぁぁぁああああッ!?』

『いたたたたたた痛い痛い痛い痛いッ!』

『おわわわわわわわわわわぁッ!?』

『…………あっ、美味し』

『ひょえぇええええええぇぇっ!!』

『いやぁああああああああああッ!?』

『あははははははははははははッ!!』

『ちょっ、待っ……せめて優しくしてぇええええええええッ!!』

 

……とまあ、こんな感じだったからである。何回繰り返すんだこれ…と言いたくなる程に、退去させられては突入し、突入しては退去させられ…をイリゼ達は繰り返しまくったからである。というか途中、何度か変なのも混ざってたしな…。

 

『はらほろひれはれ〜……』

「ディール?エスト?……返事がない…ただの、しかばね…?」

「う、うん、違うよイリス。ただのしかばねじゃなくて、呻くしかばね…じゃない、そもそもしかばねじゃないよ…!?」

「落ち着き給え、ルナ君。…しかし、うん…ここまでくると、逆に自分から罠に引っ掛かりに行ってるんじゃないかと思う程、悉くやられているね……」

 

 目を回してぶっ倒れるイリゼ達を見て、流石のズェピアも肩を竦める。ネプテューヌへの信仰が篤いエリナや、軍人として常に女神の面々を気遣うワイトすら、これには困り顔だった。

 

「…えぇと…それで、どうする?皆の事だから、まあ少しすれば回復するだろうけど…この調子だと、流石に体力が持たないと思うわよ?」

「でも、だからって私達が代わりに行く訳には行かないよね…?皆でもこうなるんだから、私だったら喋る屍になってる事間違いなしだし」

「喋る屍は最早ゾンビだね。…うん?ゾンビと吸血鬼って……」

「同じではないが、関係性が深いのは事実だね。少なくとも私の世界及び、主人公が女装ゾンビな世界ではそうだよ」

「…こほん。ともかく、方針の転換は必要そうだね。一旦探索は中止して、これまでの事を女神の皆様に訊きつつ作戦の練り直しを……」

「いや、待て」

 

 尤もなワイトの言葉に、待ったを掛ける。一旦探索は中止する、その判断に文句はない。ただ…そこからの事について、俺には一つ考えている事がある。

 

「まだ推測の域を出ないが…手伝ってほしい事がある」

「手伝ってほしい事?」

 

 首を傾げた愛月に首肯で返す。それから俺は考えを伝え、全員の協力を得る。

 

「改めて見ると、本当に出入り口多いな…一つの塔だけでこんなに多いって、なら四つ全部合わせた場合は……」

「それに、中の通路はそれぞれ別になってるみたいだよね。今更だけど、これ普通の塔なのかなぁ…私にもよく見えないし、ひょっとして中って異空間になってたり?」

「あり得るわね。っていうか、これまでの経緯からして建物自体は普通…だなんて方がむしろ違和感あるレベルだもの」

 

 現状イリゼ達が倒れているといっても、こっちにはまだ俺含め十人いる。人手としては十分であり…暫くしたところで、イリゼ達は目を覚ます。

 

「うぅん…ま、まだまだぁ……!」

『お、おぉー……!』

「二日酔いでダウンしてるみたいなテンションのところ悪いが、塔への突入作戦は一旦中止中だ。どうしてと言うなら止めないが…これ以上やると、悲鳴のネタ切れで変な声出す羽目になるかもしれないぞ?」

「えぇ…?何よその変な忠告…。……まぁ、それは嫌だから止めておくけど…」

 

 イリゼの掛け声にふらふらしながら応じたところで、俺が声を掛ける。セイツに続いて、他の面々も止めておこうかという表情になり…今度はピーシェが口を開く。

 

「ところで、中止と言ってもただ手をこまねいているだけのつもりではないですよね?というより、皆さんの事ですし、もう何か代案があるのでは?」

「ふふ、勿論ですよピーシェ様」

「え、自信満々に言ってるけどビッキィ、案出しには殆ど貢献出来てないよね?」

「うぐっ、なんで知ってるんですかねぷ姉さん……」

「あー、やっぱり?」

「なっ…は、図りましたね!?」

「図ったっていうか…ねぇ?」

 

 肩を竦めるネプテューヌに、何人かが苦笑をしつつ理解を示す。…要は、イメージ通りという事だろう。しかしビッキィは、(本人の空回りもあるが)どうにも弄られ体質らしい。…まあ、イリゼ程じゃないが。

 

「で、代案はなんッスか?」

「ナンスカ?」

「ほらイリゼ、ネプテューヌがボケてるッスよ。突っ込みチャンスッス」

「そんなチャンス求めてないし…自分で突っ込んでよ」

「えー……こほん。…誰がネオ七賢人の森ガール担当ッスか!」

「何の話!?何に突っ込んでるの!?」

「架空のボケにッス」

「なんでそんな訳の分からない事するかなぁ!?」

 

 と、思っていたら今度はイリゼが弄られていた。凄いな、最初にボケたネプテューヌが一瞬で置き去りだ…。

 

「はいはい、おねーさん達漫才やりたいならあっちでやっててね?」

「それもそッスね。じゃあイリゼ、あっちの茂みの辺りで……」

「行きませんけどぉ!?…うぅ、代案…代案話して……」

「あはは、ぜーちゃんお疲れ様。じゃあ代案の話をしよっか。あ、『だいあん』って言っても別にお笑いコンビの話じゃ「あ、茜さん。もうイリゼさんの身が持たないので、更に突っ込ませるような事は……」…うん、確かにそれもそうだね…なら、えー君お願いっ」

「あぁ。…まあ、代案というか…単刀直入に言えば、発想の転換、視点の変更だ。塔にある扉から中に入る、複数ある扉の内どれかが正解の通路に繋がっている…そういう先入観からの、な」

 

 またダウンしそうなイリゼをディールが支える中、俺は女神の面々に伝える。聞いたイリゼ達は初めきょとんとしていて…だが段々と理解が追い付いてきたのか、すっと視線を塔へと向ける。

 

「確かに…言われてみれば、わたし達自然とそう考えていたわね。塔があって、その上に更に建造物があるんだから、これは塔から登っていくものだろう、って。その塔も四つあるんだから、もしかしたらそれぞれ攻略しなきゃいけないのかも…って」

「普通に考えたら、そんなの当たり前の事ですけど…この場において『普通』に当て嵌めようとするのは、短絡的だったかもしれないですね」

「つまり…別の侵入経路がある、もっと言えば『塔から入る』って考え自体から、一旦離れた方がいい…って事ですか?」

「そういう事だ」

 

 俺の頷きを受け、再びイリゼ達の視線は建造物へ向く。それも今度は、塔の上にある部分を見据える。

 今セイツやピーシェが言った事もそうだが、あの仮想空間ではそれぞれの塔をまず攻略した、謂わば似たような前例があった事も、先入観を助長させた要因だろう。

 

「って事は…もしかして、あの上の所が本当の入り口なの?」

「その可能性はある、って事だと思うよネプテューヌ。でも…うん。確かにこれは、調べてみる価値は十分にあるかも」

「そうよね。流石にあの高さだから、飛ばずに辿り着くのは厳しいけど…ワイト、ちょっと機体に乗せてくれるかしら?そうすれば後は、わたし達が……」

「あ…えっと、その事なんだけど……もう、見つけてるんだよね…」

『え?』

 

 気不味そうに言う愛月の言葉に、イリゼ達は目を丸くする。どういう事?と俺達の方を見やってくる。…だが、どうもこうもない。ただ、愛月の言う通りであって…それ以上でも、それ以下でもない。

 

「見つけてるっていうのは…出入り口を?」

「うん」

「わたし達が、ダウンしている間に…?」

「うん」

『つまり…(私・わたし・ウチ・自分)達の行動は、全部無駄だったって事…?』

『…はは……』

 

 ぽかんとしたまま、ディールとエストが問う。愛月がそれぞれに頷く。そして全員からの、ある意味核心に迫る言葉を受けた俺達は…流石にちょっと不憫過ぎて、乾いた笑い声を漏らすしかなかった。

 

「…さて、その出入り口についてだが……」

「え、えー君…?流石に切り替えが早過ぎないかな…?」

「変に慰めても、居た堪れなくなるだけだろう。それに、自分で成果を上げられなくて拗ねるような面々でもないしな」

「…まあ、影くんの言う通りではあるね。それに、我々が発想の展開へ行き着いたのは、皆様が失敗を重ねた事…そのような状況があるからこそという部分が大きいです。ですので、そういう意味では皆様の行動は決して無駄ではないと思います」

「流石ワイト、その気遣いが心に染みるッス…。…それじゃあ、その出入り口っていうのは……」

 

 予想通りの、当然の疑問。それを受けた俺は、歩き出す。塔の上にある建造物の真下、四つの塔からの距離が最短になるような位置、そこで俺は足を止め……振り向く。

 

「ここだ」

「ここ…って、あの…わたしには何も……」

 

 何もない。ディールはそう言おうとしたのだろう。だが言い切る前に口を噤む。その視線は俺よりも上に向かい…他の面々も、目を見開く。そして俺は、頃合いを見て下がり……建造物から降りてきた足場が、地面へと到着する。

 

「…これ、どうなってるの?魔法…でもなさそうだけど……」

「それは私にも分からない。ただ一つ言えるのは、これが我々の見つけたもう一つの侵入経路という事さ」

「これ、イリスとビッキィが見つけた。イリス、驚いた」

「偶々この辺りに立って話していたら、足場が降りてくるのに気付いただけですけどね…」

 

 ズェピアの言う通り、これについて分かっているのは一つしかない。…が、今はそれだけ分かっていれば十分。そして、既にこれを用いた侵入が可能である事も確認済み。すぐに戻ったから探索は一切していないが…それはこれから行う事。

 状況を全て把握したイリゼ達は、顔を見合わせる。それから、頷く。そうして俺達は足場に乗り…建造物の、中へ。

 

『ここは……』

 

 上部にあった建造物。その内装は、大部屋といったところ。四つの扉が、それぞれの塔と同じ方位にある事からして、ここは下から登っていくのではなく、上から降りていくのが本来のルートという事なのだろう。

 

「…今更だけど、ここもいざ進んでみたらトラップだらけ…って事はない、よね…?」

「それはもう、進んでみなきゃ分からない事だと思うわ。ルナ」

「そうそう、エリナちゃんの言う通り!って訳で、もう気持ちは切り替えて…改めて頑張るよー!」

『おー!』

 

 今度こそ攻略してやる、という気概なのか、女神達の士気は高い。言うまでもなく、俺達の方も体力を温存出来ている。ここを見つけるまでの手間こそかかったが、状況としては悪くない。

 そして、ここからが本番。ここには手練れが揃っているが、これまでの経緯からして、力押しが通用しない展開に直面する事も考えられる。その事を念頭に置きながら、俺達は探索に踏み出そうとした……その時だった。

 

『──え?』

 

 まずは四つの扉の確認をと、足場からある程度離れた時、よく見れば床に薄っすらと描かれていた円から全員が出た瞬間、どこからか光が集まってきて、その光に身体が包まれる。反射的に飛び退いたが、光は身体に追従し、一際強い輝きを見せる。

 だがそれも、一瞬の事。目の眩むような光が収まった時、痛みや不調は特になく……

 

「……うん?」

 

……ただ、服装が変わっていた。これまでと変わらずのダイバースーツから、アロハシャツに膝下丈のハーフパンツ、それにサングラスという、何ともバカンス的な学校になっていた。

 

「…いや、なんだこれ…は……」

 

 訳が分からず見回せば、ワイトやズェピア、愛月も似たような格好になっていた。多少のデザインや色は違うものの、全員が休暇中の様な装いだった。一方茜達女性陣は大きく違い、これまたどういう訳かスクール水着となっていた。

 

…………。

 

………………。

 

……………………。

 

 

 

 

(こ、これは……ッ!)

 

 スクール水着。文字通り、主に学校における水泳の授業で用いられる事の多い水着。セパレート型やスカート型等、実のところ割と種類は多いのだが、現在茜達が身に付けているのは、スクール水着…所謂スク水としてイメージされる事の多い、ワンピース型。

 子供用、地味、授業を離れてしまえば基本はニッチな需要。そんな風に思う者も多いだろう。だがそれは、はっきり言って大間違いだ。確かに大人がそれを着ていれば奇異な目で見られるし、華やかな水着でない事は事実と言える。されど、どちらも所詮は印象に過ぎない。そしてその印象を取り除いた上で見れば、まずスク水の無駄のなさ…洗練された作りに目がいく筈だ。水の抵抗や身体の動きを考慮した形状であるのは勿論の事、不必要に露出度を上げていない点には理性と良識、ある種の品性を感じる上に、一方で腕や脚は惜しげもなく晒し、場合によっては背中も見せるデザインからは、女性の魅力を引き出そうとする心意気が見て取れる。一見地味に思える紺色も、その実色白な肌であればそのままそれを引き立てる事が出来、肌の色が濃い場合でも、無機質で静かな水着の紺と、健康的で生き生きとした肌の色とでまた違った良さを表現してくれるベストマッチな色である事は間違いない。加えてここでも布地の多さが生きてきて、比較対象となる紺色の面接が多いからこそ、一層肌が映えるというもの。先程印象を否定するような表現をしたが…逆に大人が着る事により、ギャップ的良さを生み出す部分も勿論ある。

 それに何より、主役は何だ。勿論それは着衣…即ちスク水ではなく、それを着る人間だ。その観点において、今の茜はどうだろうか。そんなのどうもこうもない、語るまでもないのだが、敢えて語ろう。そもそもからして、無駄のない水着のデザインと、同じく余計な部分など何もない茜のスタイルとの相性はばっちりであり、茜の魅力であるきゅっと締まりながらもなだらかな曲線美を水着はしっかりと見せてくれている。傷痕があっても尚白く綺麗な肌と、目が覚めるような美麗さを持つ赤い髪は、どちらも紺色によって殊更華麗に瞳へと映る。細かい点だが、胸元のゼッケンに書かれた「あかね」という文字がきちんと読めるのも、忘れてはいけない要素だろう。更に露出度の低さが、スレンダーな手脚へ視線を自然と誘導し…その上で人は、想像する生き物。隠れていれば、その向こう側を無意識に想像するものであり、最早水着は見せずして、茜の品を一切落とさぬまま、大胆な露出以上のものを提供してくれていると言うべきレベル。ここでも無駄のないデザインが、茜のみに意識を向ける事を妨害しないでいてくれる。完璧なまでに、スク水は茜の魅力を際立たせている。そのスク水を茜は完全に着こなし、スク水が如何に良いものなのかを再認識させてくれる。故に、ひたすらに、果てしなく──美しい。

 

「…ふぅ。控えめに言って……最高だな」

『何が!?』

 

 水着が変化した事に各々が驚愕し騒つく中、小さく吐息を漏らし、天井を見上げ、俺は呟く。

 全く、確かに起こった事について考えるのも大事だが、今の状況に限っては、その結果に対して目を向ける事も大事だろうに。良いものを、良いと思える、そう言える……そんな世の中になってほしいものだな…。




今回のパロディ解説

・「〜〜スライヌに似た〜〜運べるゲーム〜〜」
ドラクエシリーズの一つ、スラもりシリーズの事。そういえば、イリスは元の作品でも基本常に人の姿なので、本来の姿での身体能力がどんな感じなのかは気になりますね。

・「〜〜皆、集まってー」、「おっ、夕方六時ッスか?」
ちびまる子ちゃんのアニメ及び、主人公であるさくらももこの代名詞的な台詞の一つのパロディ。これと「サザエでございまーす!」はアニメ界でも屈指の知名度を誇る台詞でしょう。

・『閉店ガラガラ』
お笑いコンビ、ますだおかだの岡田圭介さんの代表的なギャグの一つの事。ただでもこれ自体は、ギャグ…というより締めというか、一種の合図的なものになってますよね。

・『なにも』、「〜〜体験と意志が欠如してる〜〜」
ONE PIECEに登場するキャラの一人(二人)、ホーディ・ジョーンズ及びフカボシの台詞の一つのパロディ。きっと皆が分析したように、何もないのに水流が出たのではなく、何かのトリガーがあったのでしょう。

・「〜〜返事がない…ただの、しかばね…?」
ドラクエシリーズにおける、メッセージの一つの事。ドラクエでは有名なメッセージが色々とありますが、その中でもこれはかなり有名なものの一つ…だと思います。

・「〜〜主人公が女装ゾンビな世界〜〜」
これはゾンビですか?の事。これゾンのゾンビ(的な存在)と吸血鬼(吸血忍者)はどちらも同じ人物が起源なんですよね。まあ、型月世界では基本ゾンビではなくグール(食屍鬼)と呼ばれていますが。

・「ナンスカ?」
流星のロックマン2に登場する地名及び、その地に挨拶の事。なんすか?…と平仮名で書くと普通なのに、片仮名にした瞬間あの地っぽく…というか、それそのものになっちゃうんですよね。

・「〜〜『だいあん』って言っても別にお笑いコンビ〜〜」
お笑いコンビ、ダイアンの事。上のナンスカネタもそうなんですが、普通に書いているつもりでも、「あ、これパロネタになるじゃん」って気付く事が時々ある私です。
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