超次元ゲイムネプテューヌ Origins Transition   作:シモツキ

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第十五話 探索開始

 塔を攻略する中で、わたし達は悉く返り討ちにあった。十分用心しながら進んでいた筈なのに、滅茶苦茶な水流に押し流されるとか、転がってきた大玉に追い掛けられるとか、ベタな罠にやられまくった。もっと想像も出来ないような罠なら一回作戦の練り直しを…ってなったと思うけど、ベッタベタな罠にやられまくっちゃったもんだから、わたしもおねーさん達もヒートアップしちゃって、引くに引けなくなって…結果気付いたら、ただただ散々な目に遭っただけになっていた。

 それはすっごい悔しいけど…仕方ない。自業自得だし。わたし達が目を回してる間に別の侵入ルートをイリスちゃん達が見つけた件については、別に妬む気持ちもないし。だから気持ちを切り替えて、今度こそ攻略を、って思ってたんだけど……。

 

『な…何これぇええええぇぇぇぇっ!!?』

 

 突然の光に包まれ、その光が収まった時、わたし達は叫んでいた。絶叫していた。だって…わたしも、皆も、全員スク水姿になっていたんだから。

 

「いや、これ…ほんとにどういう事!?何がどうしてこうなったの!?」

「わ、わたしに訊かないで…!わたしだって何が何だか分からないんだから…!」

 

 思わずディーちゃんに詰め寄っちゃったわたし。この時わたしは…というか全員意味不明過ぎて、後シンプルに恥ずかしくて混乱していた。よく考えたら女神の時の格好…プロセッサユニットが似たような形状してるし、そういう意味では慣れてもいるけど…そういう見た目なだけのプロセッサと、そのまんまスク水とじゃ、色々意味が違う。

 しかも、それに加えて影は皆が動揺する中で訳の分からない事を言うものだから、そこでも余計に混乱が広がった。

 

「これは…魔術の類いではないね。それに実体がある事も間違いない」

「…さ、流石ズェピア君。もう冷静に分析してるとは…。…えと、皆大丈夫?その、メンタル的にじゃなくて、体調的に」

「え、えぇ、問題ありません。…これは、元の服が変化した…という事でしょうか…」

「かもしれないわね…。……って、なんでワイト達は割と普通の格好なのよ!?なんで!?」

 

 聞こえた声にはっとして見回せば、確かにスク水なのはわたし達女の子だけで、ワイトにズェピア、影に愛月の男性陣四人は、アロハシャツにハーフパンツ、サングラスにサンダルの、普通にカジュアルな格好だった。しかもサングラスは頭に掛けてたり首元や胸のポケットに引っ掛けてたりと、ちょっと小洒落てる感じだった。…わたし達はスク水なのに。

 

「な、何故かと申されましても、さぁ…?…としか……」

「うぐ、まあそうよね…。…けどほんと、なんでスク水…?どういう意図があってスク水なの…?」

「作者の趣味じゃないか?」

「突然のメタ発言!しかもかなり憶測強め!さ、さっきの発言もそうだったけど、影君どしたの…?」

「どうもこうもないさ、ネプテューヌ。うん、俺はいつも通りだよ」

「……!え、えー君が滅多に見せないレベルで穏やかな笑みを……」

 

 ただでさえ状況が混沌としてるのに…というより、混沌とした状況なせいで、更にしっちゃかめっちゃかになる。後、影が笑みを見せた直後、セイツおねーさんが「はきゅん…!」とか言いながらへたり込んでいた。…よく分からないけど、今の影は余程の精神状態みたいね…。

 

「えぇと…取り敢えず、状態確認だけはしておきます…?…確認も何も、見ての通りな気がしますけど……」

「ほんとに見たまんまね…。…まさか、今になってこんな水着を着る事になるだなんて…しかも、わざわざ平仮名で『いゔぉんぬ』って書いてあるし……」

「…イヴォンヌさんの名前って、平仮名で書くと途端に緩い感じになるよね」

「いや、それは単に平仮名だからってだけでしょ。『るな』だって、ちょっと緩く見えるもの」

 

 状態確認。ピーシェのその言葉を受けて、わたしは自分の姿を見直す。スク水のインパクトに隠れてるだけで、実は何か他にも変化があるかもしれない。そう思ってよく見てみた…けど、本当に水着がスク水になっちゃってる事以外は、何もおかしな事なんてなかった。わたしも、皆も、お揃い(?)のスク水姿になってるってだけで……

 

(…むぅ……)

 

 おねーさんとか、セイツおねーさんとか、ピーシェとか、ビッキィとか、イヴとか、エリナとか…ほんと、不公平よね。

 

「イリス、問題ない。皆も、問題ない?では、進む?」

「流石イリス、全く動じてないッスねぇ。…まぁ、あーだこーだ言ってても仕方ないッスし、取り敢えず探索を再開するのはどうッスか?」

「いや、でも、このままは流石に恥ずかしくないですか…?水着がこれに変わっちゃうのなら、多分別の格好で出直してきても同じ結果になるだけなんでしょうけども、だとしても羽織るもの位は……」

「であればディール様、私が着ていたものでよければ上着の代わりに……」

『……?』

 

 羽織るもの、と聞いてすかさず返したワイトの反応で思い出すのは、仮想空間でのカジノの事。あの時もワイトはわたし達に羽織るものを渡してくれたし、ほんとそういうところは一貫してるわよね、と感心していたわたしだったけど…何故か途中で、ワイトの言葉が切れる。暫くワイトはもぞもぞしていて、それから言う。

 

「…脱げません」

『えぇ……?』

「さ、サイズ的な問題ではないと思うのですが…愛月くん、手伝ってくれないかな…?」

「あ、はい。それじゃあ…って、あれ…?…ほ、ほんとだ…くっ付いちゃってるみたいに、全然脱げない…!?」

「…ふむ、どうやら私もそうらしい。服装の固定化とは、また奇妙な……」

「ちょっ、じゃあわたし達もスク水固定って事?何よその馬鹿みたいな縛り──」

 

 起こっている事は普通じゃない、重く見なきゃいけない事態な筈なのに、その結果が今のスク水とかアロハシャツとかってなると、どうしたって馬鹿馬鹿しさが拭えない。それに疑う訳じゃないけど、脱げない…っていうのもどうにも信じられなかったわたしは、まさかそんな筈…って思いながら、スク水の肩の部分を降ろして……

 

「…って、脱げるじゃない!だ、騙したわね!?」

『騙して(ない・ません)よ!?』

「わわっ、えー君見ちゃ駄目!」

「う"ッ…い、今首から嫌な音が……」

 

 慌てて胸元を押さえ、本気でワイトと愛月を睨むわたし。…おねーさんにも試してもらって分かったけど、スク水は脱げるみたいだった。後、慌てた茜に両手で横を向かされた影の首辺りからは、多分全員に聞こえるレベルでぐきっ…という音がしていた。

 

「…エスちゃん、大丈夫?」

「え、えぇ…もう、どうしてわたしがこんな目に…。こういうのは、おねーさんとかイヴの役回りじゃない……」

『ちょっ、そんな嫌な役回りを私のものにしないでくれる…!?』

「ほんと、滅茶苦茶過ぎるわね…こんな事で振り回されるのもちょっと癪ですし、行きましょう皆さん」

 

 そんなこんなで色々あったわたし達だけど、エリナの言葉に頷いて、今度こそ行動再開。まずは全員で、扉の方に歩いていって…聞こえてくるのは、ぺたぺたという音。

 

「…そういえば、裸足……」

「すみません、皆様…サンダルも脱げないばかりに……」

 

 ビッキィの言う通り、わたし達はスク水に素足。一方男性陣四人は、一応普通の服で、サンダルも履いている状態。…別にワイト達は何も悪くないんだけど…そこはかとなく屈辱感が否めないわたしだった。

 

「んー…この扉は普通で、これの向こう側も見える範囲でおかしな部分はないって感じかなー」

「魔法による罠もなさそうですね。…まあ、そうじゃない罠にさっきまで引っ掛かりまくってたわたし達ですけど……」

「よーし、じゃあ次いってみよー」

 

 何もしてないのに調子の良いネプテューヌちゃん…は置いておくとして、わたし達は四つの塔を順にチェック。結果どの扉も、気になるような部分はなくて…けど正直なところ、何かあってくれた方が良かった。だって、何か…例えばこの扉は罠だって分かるようなものがあれば、それ以上は探索しないで済むか、そうでなくても後回しに出来るんだから。

 でも、何もなかった。判断材料が全部の扉でゼロだったから、四ヶ所全部調べるしかない。時間がない訳じゃないけど…ちょっと面倒ね。この格好で長くいなきゃいけないってのも嫌だし。

 

「扉及びこの場所に、発見出来る異常は何もなし、か…。となると……」

「扉の向こう、恐らくは各塔へと向かうしかなさそうですね」

 

 腕を組みながら呟く影の言葉に、ピーシェが続く。このやり取りに、反対する人は誰もいない。となると、チームの割り振りと、どういう形で進むかだけど……

 

「えぇと……はい」

「何かな、セイツ君」

「焦る訳じゃないけど…ここはペースを優先して、同時攻略しない?その…これ以上、変な事されたくないし……」

『…………』

 

 変な事。その言葉に、わたし達は自分の姿を見て、ゆっくりと見回して…それからイリスちゃん以外の女の子全員が、ゆっくりとセイツおねーさんの提案に頷くのだった。

 

「そ、そうと決まればチーム編成ですね。わたし達は十七人だから……」

「普通に考えるなら、四人チーム三つに、五人チームが一つ…よね。あの、前回…の時は、どういう風にチーム編成をしたんですか?」

「んっとねぇ、前回の時は…はないちもんめで決めたんだっけ?」

「そんな訳ないでしょう…メンバーはほぼ同じだし、前回のチームをベースに改善案を出して、それに沿ってメンバーの入れ替えをする感じでどう?」

 

 仕切り直すように言ったビッキィからエリナに続いて、ネプテューヌちゃんがボケて、おねーさんが突っ込みつつ提案をする。それで良いよねって事になって、一旦前回のチームに分かれて(エリナは一先ずカイトの代わりとしてピーシェチームに行って)、各々思い出しつつ意見を言い合う。そして……

 

「んじゃ、宜しく頼むッスよ」

「はい、宜しくお願いします」

「アイが前衛、ルナが中衛、ワイトが遊撃…ってなれば、まあわたしは後衛よね。その場その場でチャンスがあれば前に出るつもりだけど」

「あ、うん。がしがし前に出て大丈夫だよ!その時は私も、こそこそ後ろに下がるから!」

 

 なんで堂々と胸を張って言う内容がそれなのかしら…というのは置いといて、わたしのチームは編成完了。他のチームも、ディーちゃんにピーシェに茜に愛月、おねーさんにネプテューヌちゃんにエリナに影、イリスちゃんにセイツおねーさんにビッキィにイヴにズェピア…って感じでそれぞれ決まる。

 しっかし、こうして見るとどのチームもがらっと変わったわね…これやっぱり、前と似たようなチームだと展開的に面白くない──

 

「エストちゃん、それ以上は考えないでほしいかな」

「ま、そうよねー」

 

 おねーさんの地の文キャンセル。まあ別にそれは拘る事じゃないからそのまま受け入れて…わたし達は、それぞれ扉の前へ。

 

「それじゃあ皆…頑張って」

 

 端的な…ほんとにシンプルなおねーさんの言葉。それをわたしは背に受けて、皆もそれぞれ頷いたり答えたりして、扉を開く。そして、大広間から扉の先へ、四つの塔へと向かう。

 

 

 

 

「えっと…さっき攻略…って言ってたけど、一応目的としては調査…だよね?」

「そッスね。正解?…の塔は一つだけで、他三つは外れっていう面白くない展開もあり得る訳ッスし」

「詰まらないかどうかはともかく、その可能性はありますね。下手に動き回って結果罠に…となっては間抜けですし、何もなさそうであれば一度引き返す事も考えるべきでしょう」

「…っていうか…そういえば、三人は出会ったタイミングが同じなんだっけ?」

「うん。…なんか、懐かしいなぁ……」

 

 通路を進みながら、ルナがぼんやりと言う。その時も色々あったみたいだし、少しだけ羨ましい。だって、楽しそうだし。そりゃ、ディーちゃん達からすれば楽しいとか言ってられる状況じゃなかったんだろうけど…それでもルナが懐かしんで、アイやワイトもそんなに嫌じゃなさそうな顔をしているのが、辛いだけでもなかった事の証拠よね。

 そんな風に思いながら歩いていると、くすりとした声が聞こえてくる。何かと思って横を見ると…アイがわたしを見て頬を緩めていた。

 

「…どうかした?」

「いやぁ、改めて見るとほんとにスク水が似合うッスね、エスト」

「……それ、アイもじゃない?」

「…………」

「…………」

「…その、正直申し訳なかったッス……」

「いや…こっちこそごめん……」

 

 さっきまでの雰囲気はどこへやら。一気に微妙な気持ちになるわたしとアイ。…まあ、でも、うん…アイとは通じ合える部分があると思う。アイもお姉ちゃん…っていうか、『ブラン』と仲良いみたいだし。

 

「…お話中申し訳ありません。どうやらまた、扉です」

「っと、みたいッスね。…敵か何かが待ち構えてると思うッスか?」

「それも可能性としてはあるかと。扉の向こうはレーダーに映っていないので、あり得ないとは言えません」

「んじゃ、ここはきっちりと警戒をして…よっと!」

 

 実は機体に搭乗して移動していた(つまり扉も大きいのよね)ワイトからの返答を受けて、アイは扉の前へ。それからアイは身構えるように、ぐっと身体を屈めて…扉を蹴り開ける。

 

「ええぇぇッ!?け、警戒をしてって言ってやるのがそれぇ!?」

「勢い良く開ける事で相手を驚かせて、そのまま機先を制するって事ッス!」

「あはっ、そういう発想わたしも好きよ!」

 

 飛び出したアイに続いて、わたしも突っ込む。魔法でも大剣でも、なんでも良いからまずはぶち込むつもりで突撃を掛けて……

 

「……っ…これ、って……」

 

 けれどわたしは、足を止める。足が止まる。扉の向こう側、多分塔の中へと入った瞬間にがらりと変わった、目の前に広がる光景に。

 沢山の屋台と、提灯。一面の石畳みと、夜の様な暗さ。敵の姿や気配なんて、どこにもない。どこからどう見ても、これは……

 

『…縁日?』

 

 わたし達は、顔を見合わせる。幻影とか幻覚とか、そういう魔法でもないっぽい。…だから、余計に意味が分からない。

 

「…アイ、エスト…女神の皆で塔に入った時も、中ってこんな感じだったの…?」

「いや、そんな事はなかったッス…ウチ等が入った時はもっと、外からイメージする通りの塔って感じで……」

 

 困惑気味にアイが答える中、不意に後ろから物音が聞こえてくる。それは、開けたままにしていた扉が勝手に閉まっていく音。縁日の光景を見てぽかんとしてしまっていたわたし達は、それへの反応が遅れてしまって…触れた時にはもう、扉は動かなくなっていた。

 

「やられた…!…ワイト、強引に開ける事は出来ない?」

「……駄目ですね。ビクともしません。…撃ってみますか?」

「ううん、そこまではしなくていいわ。けど、これでわたし達は閉じ込められた…って訳ね…。皆はこの状況、どう見る?」

「どうもこうも、閉じ込められた…ってなったら、脱出出来る場所を探すか、扉を開ける方法を見つけるかしかないッスよね」

「こういう時、ゲームだったら出る為の方法に屋台が関わってくる…よね?」

 

 そうよね、とわたしは二人に頷く。屋台のどれかが隠し通路の入り口になってるとか、屋台を制覇すると扉が開くとか、後は…実は屋台に化けたモンスターがいて、それを倒す事で…って辺りかしら。

 勿論、ゲームと現実は違う。けど、じゃあ現実的に考えた場合何か思い浮かぶかっていえば、特にそうでもない訳で…だからわたし達は(ワイトは機体から降りて)、屋台を順に調べ始める。

 

「わたがし、たこ焼き、唐揚げ、チョコバナナ…ラインナップとしては普通ね…」

「射的、ヨーヨー掬い、お菓子釣り…こっちも普通ッスねぇ」

「気になる点があるとすれば、こうも縁日としての準備は整っていながら、我々以外誰もいない…という事でしょうか」

「なんていうか…不気味、ですよね…。縁日を始めようとしたところで、人だけ急にいなくなっちゃった、って感じで……」

「…案外、その通りかもしれないッスよ。ウチ等も最初は全員いた筈が、一人、また一人と消えていって……」

「ちょ、ちょっと…!怖い事言わないでよアイ……!」

「んー…まあ恐れてても仕方ないし、見るだけじゃなくて触ってみる?」

 

 言いながら、取り敢えずわたしは輪投げゲームの輪っかを手に取る。ひらひらと軽く揺らしてから、適当にぽいっと投げて……

 

「あ、外れた」

「外れたッスね」

「うっ…い、今のは試しに投げてみただけだし…!ちゃんと狙ってやれば……ほら!」

 

 わたしはノーコンなんかじゃない。それを示す為に投げた二投目は、狙い通り棒に掛かる。それを以て、どうよ!…とわたしは胸を張り……けれど二人は、肩を竦めて軽く笑っていた。ぐぬぬ…。

 

「けど、こうなったら片っ端から触っていってみるしかなさそうッスね。ほほぅ、ベビーカステラの機械の裏側ってこうなってるんスか…」

「では、私はこちらから。…通電はしていて、ガスも通っている…その辺りは、施設と同じか……」

「…ねぇ、今思ったんだけど…試すのって、食べ物も?」

 

 気を取り直すように…って、気を取り直すって何よ。それじゃまるでわたしが変な雰囲気にしたみたいじゃない。…こほん。とにかく三人も手分けする形で、それぞれ屋台を触り出す。アイはぺたぺた触って、ワイトはしげしげと見て……ルナは頬に指を当てた状態で、首を傾げる。

 確かにそれはそう。食べ物だって調べられるなら調べた方が良いし、だけど食べるっていうのは見たり触ったりする以上にリスクのある行為。だからわたしはアイと顔を見合わせて……

 

「…エスト」

「はいはい。それじゃあ……」

『じゃんけんぽんっ!』

 

 互いに全力で突き出す腕。わたしはぱー。アイはぐー。勝者はわたしで…一番ハードルの高い、最初の毒味役はアイがする事になった。

 

「あの、アイ様…最初の食事の時も言いましたが、やはり毒味は私が……」

「だから、その必要はないって言ってるじゃないッスか。それよりもし食べてお腹が痛くなった時は…頑張れ、頑張れと声を掛けてほしいッス」

「いやそれはモッヂボールにおける対応では…?」

「まあそれはどうだっていいんスよ。どうしてもって言うなら、ウチを張り倒して食べろって話ッス」

「安全の為の毒味で女神様を張り倒したら、本末転倒もいいところです…。…そこまで言うのなら、私も退きますが……」

 

 のらりくらりと躱すような発言で、アイはワイトを言いくるめる。おねーさんは立場を利用して反論を封殺してたけど、アイもアイで上手いっていうか、真面目でちょっと堅い相手への対応がよく分かってる感じよね。それか、それぞれの次元のお姉ちゃん繋がりでシンパシーを感じる相手だから…って感じなのかしら。

 ともかくワイトとのやり取りを経たアイは、毒味をする食べ物としてかき氷を選ぶ。自分でかき氷機を使って、苺のシロップを掛けて…がっとかき込む。

 

「ん〜、我ながらこれは中々……うっ…!あ、頭が……ッ!」

「え…!?そんな、やっぱり罠──」

「いや、今のはかき氷を一気に食べたからでしょ」

 

 狼狽えるルナへわたしが半眼で突っ込めば、確かにそうだと気付いた様子でルナはちょっと赤くなる。素直なルナの反応が気に入ったみたいで、アイは愉快そうにはっはっはと笑う。…一応これは調査及び毒味であって、多分この休み時間的雰囲気は間違ってるんだろうけど…何か、わたしもかき氷食べたくなってきたわね……。

 

「…アイ、ブルーハワイってある?」

「おっ、何の味だかよく分からない、でも美味しいブルーハワイッスか?確かに氷だけじゃなくて、シロップの方も色々調べる必要があるッスよねぇ」

「そうそう、分かってるじゃない」

 

 にやり、とわたし達は口角を上げ、早速ブルーハワイも試す。ん、美味し。やっぱり縁日といえばかき氷よね。ま、他にも縁日といえばって食べ物は色々あるし、それを一つだけ選べなんてナンセンスってものだけど。

 

「それじゃあ、ウチは次にこの落書きせんべいを…」

「わたしも次はトルネードポテトを試してみようかしら。折角だから自分で揚げて…っと」

「揚げ物もいいッスねぇ。だったらウチも唐揚げを…って、これ冷めてるじゃないッスか…。…けど、冷めても美味い、冷めウマッス!」

「……あの、ワイトさん…」

「はは…これは明らかに、食べるのを楽しんでいる…とも、言い切れないね……」

「ですよね…二人共、ふざけてるように見えて実は…ってタイプですし……」

 

 もぐもぐと、わたしは食べたいもの…じゃなかった、直感的に調べた方が良さそうだと思ったものを口にする。色々食べたいから…ではなく、一口二口なら大丈夫でも大量に食べる事で危険が…ってなる可能性もあるから、試食みたいに少しずつ摘んでいく。

 

「…よ、よし。私も見てるだけじゃ悪いし、何か食べてみよう…!あれだけ食べても二人はけろっとしてるから、ちょっとなら大丈夫…だよね…?」

「大丈夫大丈夫、思い切って食べてみるといいッス。という訳で、林檎飴なんてどうッスか?」

「あ、ありがとうアイ。でも林檎飴って…これ思い切ってはいけないやつじゃん…歯が折れちゃうよ……」

「じゃあ、たこ焼きとフランクフルトはどう?今作ったところよ?」

「そ、それは熱くてガブっとはいけないやつじゃん!いけるけどいったら火傷するやつじゃん!」

『ワイト』

「はい!?……え、えー…では、や、焼き鳥を……」

「それも思い切って食べたら串が喉に刺さっちゃいますよぉっ!…って…あの、これはちょっと弱い気が……」

 

 ぎょっとした顔をした後、きょろきょろと見回して焼き鳥を取ったワイト。それに突っ込みはするけど、何か違う…と首を捻ったルナ。そしてワイトに振ったわたしとアイは顔を見合わせ…嘆息。

 

「駄目ッスよワイト、三番目なんだからもっとインパクトのあるものを出さないと」

「こういう時はいっそ、食べ物じゃないとか食べ物だけど屋台で売ってるやつじゃないとか、そういう選択肢もあったのにねぇ」

「い、いきなり振っておいてそれは流石に理不尽では…!?」

 

 珍しく慌てた様子で突っ込んだ(まぁ突っ込ませたんだけど)ワイトの顔が見れて、わたし達は満足。んー、やっぱりアイとは気が合うわね。わたし的には、アイもちょっとからかってみたいところだけど…多分アイも似たような事考えてると思うし、気を付けないと。

 

「あ、あはは…ワイトさんも、何か食べます…?」

「あー…いや、実は既に私も食べてみたんだ。といっても、焼きそばを一口食べただけだけどね」

「へぇ……え、もしかしてそのパックに入ったやつです…?もう半分位しか残ってないのに、一口…?」

 

 そんな冗談も挟みつつ、とにかくわたし達は色々食べる。焼くものや揚げるものは勿論、冷えてる方が美味しいチョコバナナなんかも常温になっちゃってるから作り直して、全員で食べ物を制覇(?)していく。

 

「ふぅ…トロピカルジュースも良いわよね」

「分かるッス。トロピカルな感じが良いんスよね」

「…アイ、適当に答えてない?」

「そんな事ないッスよ。真面目にトロピカル、トロピカル〜ジュッス」

「ごめん、何を言ってるのか全然分からないわ」

「それはウチも同じッスよ、エスト」

 

 全くもって中身を感じられない、アイの発言。くっ…気を付けてた筈なのに押されるなんて、やるわねアイ…。…後、それはそれとして今のやり取りは時間の無駄感が凄い……。

 

「アイ様、エスト様、見落としがなければ一通り食べてみた筈ですが…何かありましたか?或いは、何かお気付きになった点はありますか?」

「一個あった…っていうか、奥に入口?…と似たような扉があったけど、そっちも開かなかったわ。で、屋台の飲食物については……」

「どれも普通の食べ物だったッスよね。…というか、もう一通りって…何気にワイトが一番食べてないッスか…?」

 

 うーん、とわたし達は腕を組んで考える。一通り調べたっていっても、全部の食品を食べた訳ではないし、本当に全部食べるってなったら、幾ら何でも四人じゃ無理。というか、今更だけど食べてどうにかなるのか、何か判明するのか…って問題もある訳だし…。

 

「と、なると…一旦食べ物系は無しにした場合で考えられるのは二つ、ですね。食べ物以外か、そもそも屋台に着目する事自体が間違っているか……」

「あんまり後者だとは思いたくないわね。その場合、一から考え直さないといけないし」

「えっと…じゃあ、食べ物以外ってなると…ゲーム系?」

「そうなるッスね。ゲーム系は食べ物系より少ないッスし、先に潰すならこっちだと思うッス」

 

 ゲーム系はわたしが最初にちょっと輪投げを触っただけで、それ以降はほぼノータッチ。アイの言う通り、こっちなら同じ総当たりでもまだ屋台以外を…っていうのより労力は少ないだろうしって事で、今度はゲーム系の確認をスタート。

 

「んー…まずは……」

「…エスト様は、また輪投げですか?」

「そーよ。さっきは試しに投げただけで、ちゃんとルールに則ってやった訳じゃないもの」

「ルール…そこも一つ意識した方が良いかもしれませんね。きちんとルール通り行った場合と、ルールを無視して行った場合の二通りは試してみようと思います」

「…ワイトって、ほんとに真面目よね」

「恐縮です」

 

 隣に来たワイトがやろうとしているのは的当て。ボールを投げて、ポイントの書いてあるボードを倒す、輪投げと同じくシンプルなゲーム。…言っておくけど、今わたしがワイトに言った理由は本当だからね?もう一回輪投げやりたくなったとかでは断じてないからね?

 

「よっ、ほっ、ていっと」

「ふ……ッ!」

 

 軽くスナップを利かせて、左手で輪っかを投げる。さっき二回投げた時にコツを掴んでおいたから、今度は最初から全部棒へと引っ掛かる。

 一方ワイトの方は…こっちも次から次へとボールを当てていた。しかもポイントの高いボードへ、連続でヒットさせていた。

 

「へー、上手いじゃない」

「流石に全弾命中とはいきませんが…まあ、大人が大人気なく本気を出せば、こんなものです」

 

 確かに輪投げも的当ても難易度は子供でも出来るレベルになってるみたいだし、そこで大人が本気を出せば…っていうのはその通りかもしれない。そして、一回目はミスのあったワイトも、二度目のプレイでは全部命中(しかも全て最大得点のボード)させていて…だけど、何も起こらない。

 

「…変化なし、ですね。ルール通りであれば、最高得点な筈ですが……」

「こっちも何一つ起こらないわね。じゃ…今度はルール無視してやってみる?」

 

 そう言って、わたしは輪投げ台の前へ。さっきはちゃんと、投げる位置を守っていたけど、今度は棒の真上から輪っかを落とす。ルールなんて完全無視して、ただただ棒のところへ輪っかを落とす。結果、当たり前に今度も全部入ったけど…正直、何も面白くない。

 

「ワイト、そっちは…って、うわぁ……」

 

 当然速攻で終わったわたし。的当てをやってるワイトはどんな感じにルールを無視してるのかと思って横を見れば、ワイトはボールを投げまくっていた。1プレイの内で決まっている球数を無視して、全部のボードを倒す勢いで投げていた。っていうか、投げに投げて全部倒していた。…なんかこう、普段真面目でルールを遵守してる人がキレたらこうなる、っていうのを目の当たりにしてる気分ね……。

 

「……ふむ、また何も起こりませんね。どうしますか?」

「どう…って、他に何か試してみるかって事?うーん…それってキリがないわよね……」

「そうですね…ノーヒントでは、流石に厳しいものがあるかと」

 

 ワイトと二人、頭を悩ませる。もしかしたら輪投げや的当てに道を開く仕掛けがあるのかもしれないけど、もしそれが「一発目は外す、二発目はここで、三発目はここで、四発目はまた外して……」みたいな、一つ一つの結果まで求められる手段が必要だったとしたら、もうそれを引き当てられるような気がしない。

 

「…あ、ところでワイト。貴方って親衛隊の隊長なのよね?じゃあ、そっちの次元のロムちゃんやラムとも関わる事が多かったりするの?」

「お二人とですか?えぇ、そうですね。お二人共、ブラン様の事が大好きなので」

「で、構ってもらおうと悪戯しては怒られる訳ね?」

「そういう事も、ままあります」

 

 肩を竦めるワイトに、わたしも苦笑をして返す。…懐かしいわね、そういうのも…。……まあ、構ってほしくて悪戯してたっていうより、それもあるけど普通に悪戯するのが好きなだけだったんだけども。

 

「でも、ワイトって怖がられたりしないの?背が高いしがっしりしてるし、二人にとっては『大男』って印象が強そうな気がするんだけど」

「しましたね。初めの頃は、ロム様には怯えられ、ラム様には警戒されの日々でした。流石に今はもう慣れてくれたようですが」

「まあ、そうよね。多分今は、厳ついけど優しいし、登ったら面白そうだと思われてるんじゃないかしら」

「はは、そういえば神生オデッセフィアでもその理由で子供に好かれましたね…。…因みにエスト様から見た私は……」

「んー…まあ、もうちょっとユーモアがあった方が良いとは思うわね。あ、でも女神のわたしや歳の離れた人が相手の時は『ちゃんとした大人』の姿を見せてるだけで、同僚とか友達の前ではもっと砕けた態度だったり?」

「それは…どうでしょうね?」

「む、なんで隠すのよ。女神からの質問なんだから、答えなさいよー」

「こんな流れで女神である事を誇示しないで下さい…」

 

 困り顔をするワイトだけど、やっぱり会話をするならこういう感じに色々反応を見せてくれる方が面白い。あ、そうだ。折角話してるんだし、ついでにあれも訊いておこうかしらね。

 

「ま、それはともかく…ディーちゃんとはどう?初めて会った時に、仲良くなれた?」

「ディール様とは…悪い間柄にはならなかったかと思います。ただ、もうお分かりかとは思いますが、私は饒舌なタイプではないので……」

「ああ、ディーちゃんも積極的に話し掛けにいくタイプじゃないし、自分から距離を詰めにいく機会はお互いあんまりなかった…って訳ね。けどディーちゃん的には、そっちの方が良かったかもしれないわ。ディーちゃん、ぐいぐいくるタイプは得意じゃないだろうし」

「であれば良いのですが…。…やはりエスト様は、ディール様が気になるんですね」

「勿論。ディーちゃんって大人しいだけで冷静なタイプじゃないし、やっぱりなんだかんだ言っても怖がりだから、放ってなんておけないのよ」

「…エスト様は、世話焼きですね。そのようなところは、ブラン様に似ている気がします」

「…ん、ありがと。今のは褒め言葉として受け取っておくわ」

 

 世話焼き…って言葉は、良い意味じゃない事もある。お節介なんて、マイナスイメージの強い言葉もある訳だし。けどなんていうか、今のワイトの声には柔らかいものがあって…わたしはこくり、と頷いた。…うん、確かにワイトは自分から色々話すタイプじゃないし、ユーモラスって訳でもないけど…ワイトの次元のお姉ちゃんが、ワイトを側に置く理由が少し分かったわ。

 

「…さて、それでは再開しますか?」

「そうね。ずっと喋ってたんじゃ、アイとルナに文句言われそうだし。…っていうか、二人は今どこで何をしてるのかしら?」

 

 輪投げと的当てについて確かめるのは、取り敢えず終了。そうわたしは判断して、ぐるりと見回す。

 屋台の数は多いし、この分この場の空間自体も広いけど、普通の縁日と違ってここにいるのはわたし達四人だけ。だから、二人を探すのは簡単だった。見つけた…というか、丁度こっちに歩いてきてるところだった。

 

「首尾はどうッスか、二人共」

「空振りね。そっちはどう…って……」

「…何やら、凄まじい事になってますね……」

 

 ゆっくりとこっちに近付いてくるのは、お菓子を一つ持ったアイと、脚の生えた山の様なお菓子……じゃなくて、上半身が腕以外見えないレベルでお菓子を抱えたルナだった。なんかもう、多過ぎてふらついてるレベルだった。えーっと…何?ルナはお菓子を「ここからここまで、全部」的な買い方でもしたの…?

 

 

 

 

 ルナです。私は今、目の前が見えません。でも、絶望してるとか、バトルで手持ちが皆やられて…とかではありません。物理的に、見えないだけです。

 

「え、エスト、ワイトさーん!好きなの選んで良いですから、ちょっと…いや沢山貰って下さーい!」

「ルナ、方向的に今屋台へ話しかけてるみたいになってるッスよ。もっと左ッス」

「そ、そうなの?これ位?」

「騙されちゃ駄目よルナ。問題なのは方向じゃなくて距離、もう少し下がってもらえる?」

「ふぇ?い、行き過ぎちゃってたって事…?」

「あー、違うッス違うッス。更に下がって、今度は右行ってまた左ッス」

「そうそう、そこからもう一歩前に出て……」

「ちょっと!?二人共ちゃんと指示してくれてる!?っていうか、スイカ割りみたいになってない!?」

 

 絶対ふざけてる、と思って私が叫ぶと、二人は素知らぬ顔…をした気がする。でも、見えないから分からない。

 

「うぅ…っていうかアイも貰ってよぉ…」

「それは、たった一個しか取れなかったウチへの同情ッスか?同情するなら菓子をくれッス!」

「だからあげるって言ってるじゃん!第一、一回やって一個取れるのが普通だからね!?自分で言うのもアレだけど、おかしいのは私の方だからね!?」

 

 自虐…って言えるか微妙なラインで、更に私は叫ぶ。…そんなに大変なら、降ろせばいい?私も最初はそう思ったよ…けどこれ、重い上に絶妙なバランスで持ってる状態だから、降ろそうにも降ろさないっていうか、私自身もバランス崩して転びそうなんだよぉ…!

 

「…えぇと…流石に可哀想なので、貰ってあげては如何でしょう…?」

「ワイトが言うなら文句はないわ」

「そッスね、ワイトが言うなら勿論ッス」

『えぇ…?』

 

 何故…?という私とワイトさんの声がハモる。まあ、ふざけてるだけなんだろうけど…この二人が組むと、私やワイトさんじゃ突っ込みきれないよ…。

…とまあ、こんな感じのやり取りを経て、私は皆にお菓子を取ってもらった。ふぅ、やっと前が見える…それでもまだ大量にあるけど……。

 

「で、一体何がどうしてこうなったの?」

「あ、うん。さっき、アイと千本くじをやったんだけど……」

「千本くじ?…まさかそれで、こんなとんでもない量のお菓子詰め合わせが当たったとか…?」

「ううん。そうじゃなくて、私が引っ張った時に丁度中で紐が絡まっちゃったみたいでね。で、その状態で無理矢理引っ張ったら、絡まったまま全部が引っ張り出されちゃったみたいで……」

「…そんな事、あります…?」

「うぅ、あります…あったんですよぉ……」

 

 驚きのせいか敬語で返してきたワイトさんに訴える。私だってあの時は信じられなかった。でも、そうなったんだから仕方ない。本当にどばーっと、ぐわーっと出てきたんだもん…!

 

「あれを見た瞬間は、ウチも自分の目を疑ったッス…まさかウチが1本引いた直後に、ルナが残りの999本を纏めて引くなんて思いもしなかったッス……」

「…ルナって実は、因果律操作の能力者だったりしない…?」

「し、しないよ!?…しない、筈だよ……?」

『…………』

「…こ、こほんっ!それはともかく、千本くじも何もなかった…訳じゃないけど、脱出に繋がりそうな感じはなかったかな!なかったよね!?」

「まあ、そうッスね。その様子じゃそっちも現状空振りっぽいッスし…やっぱりこれもまずは全部試してみるしかなさそうッス」

 

 だよね、という感じでエストとワイトさんは頷く。そうしてまた私達は、屋台のゲームをやっていく事になって…私も大量のお菓子を抱えたまま、えっちらおっちらと歩く。

 

「ねぇアイ、もっと普通で、安心してやれそうなゲームってないかな…?」

「ウチの認識が間違ってなければ、千本くじってかなり普通で安心してやれるゲームだと思うんスけどね……」

 

 なんとも言えない感じの声音と共に、珍しくアイは困り顔をする。そ、そんな顔しないでよ…私だって今もまだちょっと動揺してるんだから…。

 

「ふーむ…けどま、それならスーパーボール掬いとかどうッスか?変な事をしない限り、これだったら一回で大量に取れるなんて事もない筈ッス」

「だ、だよね。よーし…!……よいしょ」

 

 アイが指差した屋台の前まで来た私は、腕捲り…の前にお菓子を降ろして、改めて腕捲りをして、ポイを持つ。一緒に来たアイもやるみたいで、ポイの紙部分を軽く触る。

 

「ふむ、これは普通のポイっぽいッスね」

「えっと…それは、駄洒落…?」

「そうッス。けど多分滑ったから、もう触れないでほしいッス」

「そ、そっか。…なんかさ、こうしてると思い出すよね」

「前に皆で神生オデッセフィアに来て、最後にお祭りに行った時の事ッスか?」

「うん。だから、そんな風に思ってる場合じゃないんだろうけど…やっぱりちょっと、楽しいなって」

「いやいや、楽しいと思った時は素直に楽しいと思えば良いんスよ。ウチも、似たように思ってるッスから」

 

 そう言って、アイはにっと笑う。その表情を見て、思わず私も頬が緩む。楽しいと思ったのなら、それで良い…そんなアイの言葉は、私の中にあった「楽しいけれど、楽しむんじゃなくて脱出の道を探さなきゃ」…っていう焦りにも似た気持ちを解きほぐしてくれて…だからこそ、私は言う。

 

「じゃあ、皆でもっと素直に、もっと心置きなく楽しめるように、頑張らないとだね」

「その意気ッスよルナ。それじゃあまずは、楽しみながらこの場を突破ッス!」

 

 もう一度私達は笑いあって、それからスーパーボール掬いを開始。アイは軽やかな手付きで一つ、また一つとスーパーボールを掬っていって、ポイが破けてしまう前に幾つもスーパーボールをゲット。その姿におおーと私は拍手をし…折角だから勝負のつもりで、と水に浮かぶスーパーボールへ挑むのだった。

 

 

 

 

 

 

──そしてその結果、私が手にした一枚『だけ』がどういう事かいつまで経っても破れなくて、お菓子に続いてスーパーボールも山の様に手に入ってしまった事と、それを見ていたアイの愕然としたような表情は、忘れられないと思う…。




今回のパロディ解説

・「〜〜次いってみよー」
コメディアンであったいかりや長介こと、碇矢長一さんの代名詞的な台詞の一つのパロディ。そこそこ使い勝手の良い台詞ですよね。前にもパロネタとして使った覚えもありますし。

・「〜〜モッヂボール〜〜」
ギャグマンガ日和シリーズの中で登場した、スポーツの一つの事。つまりは架空のスポーツですね。でも女神は思いを力にするので、もしかすると頑張れという応援が回復に繋がる…かもしれません。

・「〜〜冷めても美味い、冷めウマ〜〜」
お笑いコンビ、霜降り明星のせいやこと石川晟也さんのギャグの一つのパロディ。とはいえこのギャグ(?)はかなり限られたところでしか使っていませんし、知らない方も多いかと思います。

・「〜〜トロピカル〜ジュ〜〜」
プリキュアシリーズの一つ、トロピカル〜ジュ!プリキュアの事。多分アイは、こんな感じに適当にボケを重ねていくスタイル…だと思って毎回コラボを書いています。

・「〜〜同情するなら菓子をくれ〜〜」
家なき子の主人公、相沢すずの代名詞的な台詞のパロディ。直後のルナの突っ込みでも触れている通り、こちらでもノリと勢いだけでギャグを重ねてる感じに書いております。
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