超次元ゲイムネプテューヌ Origins Transition   作:シモツキ

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第十七話 鍵となるのは

 まさか、女神様…それもパープルハート様の前で歌う事になるなんて思いもしなかった。それが必要な事、形としては歌だけど実質的には調査である事は理解していたし、何か私に期待してくれているのならその思いに応えたいとは思うけど、だとしても凄く緊張した。噛んだり歌詞を間違えたりしなかっただけでも、自分を褒めてあげたい位に。

 そして、歌い終えて女神のお二人から拍手を貰った時は、自分に少し感激してしまった。パープルハート様の歌を聴いた時には遠く及ばなくても、心の中に熱くなるものがあった。…ただ、私の感想や感情と、結果がそのまま結びつくかと言われると、そうではなくて……むしろ、すっ転んでしまいそうな結果だった。…うぅ…あんな肩透かしな反応されるだなんて…。

 

「はー…手詰まりだねぇ…」

「手詰まりですね……」

 

 ステージの縁に座って、脚をぷらぷらさせるパープルハート様に私は頷く。…女神様にこう思うのは失礼かもしれないけど…可愛い。凄く可愛い。いや、人の姿のパープルハート様が可憐なのは元からだけども。

 

「これはアレかな…ここへの侵入の時と同じように、がらっと考えを変える必要があるのかな」

「…と、いいますと?」

「ここで歌以外の事をしてみるんだよ。例えば歌じゃなくて漫才とかさ」

「これは歌…コンサート用のステージだ、という前提を見直す訳ですね。けど、歌と違って漫才となると一人じゃ出来ませんし、そうなると打ち合わせや練習が必要になりますね……」

「…あ、そういう事なら私、ネプテューヌとならやった事あるよ?厳密には漫才じゃなくてショートコントをだけど」

「あるんですか…いや、なんであるんですか……」

 

 少し離れたステージ横で影と話していたオリジンハート様が、出来るよ?…とこちらを振り向いて軽く手を挙げる。…オリジンハート様は常識的な方っぽいのに、ちょこちょこびっくりする言動を見せるのよね…姉のレジストハート様も…その、もっと分かり易く個性的だし…。

 

「…じゃ、やってみる?」

「うんまあ、私はそのつもりで答えたんだけど…」

 

 ぱっ、と立ち上がったパープルハート様に、オリジンハート様が答える。そうしてお二人は、ステージ上でひそひそと話す。

 

「……これ、私達に聞こえないように話す必要ってあるのかしら…」

「…さてな。だが、やる以上は適当な感じにしたくないんだろうさ」

 

 漫才をステージ側?…が判定するなら、私達に内容が漏れても問題ないんじゃ?…と思った私が呟くと、いつの間にか観客席側に移動していた影が返答をしてくれた。…確かにそれはそうかもしれない。

 と、いう風に考えながら待っていると、暫くしたところでお二人の打ち合わせが終わる。更にそこでパープルハート様は影を呼んで、全員がステージの裏に移る。その事に対して一体何なのか、もしかして歌ネタとかリズムネタとかをやるつもりなのかと私が疑問を抱く中…お二人は出てきた。凄く聞き覚えのある、出囃子をバックに受けながら。

 

(えっ、これってあの、某漫才コンクール決勝戦のじゃ……?)

 

 物凄く攻めた選択と共に出てきたお二人は、軽快な調子で漫才をスタート。予想通り、パープルハート様がボケ、オリジンハート様が突っ込みというスタイルの、所謂しゃべくり漫才を自然な調子で展開していく。そして……

 

「もうっ、いい加減にしてよ!ほら終わり終わり!」

「という訳でー、ここからは第二部スタートだよっ!」

「しないよ!?」

 

 最後までパープルハート様がボケ倒して、漫才は終了。まさか漫才を見る事になるとは思っていなかった私は、取り敢えず何か反応しなくちゃと思って拍手を送る。そうして私の拍手を受けながら、お二人はステージ裏に去っていって……何か凄くやり切った表情を浮かべながら、観客席へと戻ってきた。

 

「どうだった!?面白かった?」

「え、えぇと……は、はい。とっても…」

「…あれ、面白くなかった…?」

「そ、そんな事はないですよ!?ないわよね!?」

「いや、まあ…ぶっちゃけ、普段の二人のやり取りとあんまり変わらなかった気がするな」

『あ、あー……』

 

 私がパープルハート様に問われて感想に迷う中、影がストレートな言葉で返す。するとお二人は、納得したような反応をした。…その感想、素直に言ってよかったんだ……。

 

「っと、そうだ。スクリーンの方は……」

「濃いめの赤二つに、薄めの赤二つ…うーん、またぱっとしない結果だね。エリナちゃんにも参加してもらって、トリオ漫才にしてみる?」

「多分、そうやってもあまり変わらないんじゃないかな……」

 

 返答しながら、ちらりとオリジンハート様は私を見てくる。やりたい?…という視線に、思わず私は目を逸らす。

 

「そっかー……あっ、っていうか影君は何も歌ってないじゃん。曲を流してくれるのはありがたいけど、このまま歌わずに済まそうなんてそうは問屋が卸さないよ?」

「…俺が?」

「うん、それは正直私も思ってた。もうただ色々試しても意味ない事は分かってきてるけど、だとしても影君が歌った場合…っていうデータはあって困るものではないと思わない?」

「…あぁ、分かった分かった。なら、イリゼはちょっと自販機で飲み物でも買ってきてくれ。その間に俺はフリージアを歌うから」

「え?なんで自販機……ってちょっとぉ!?それ私撃たれるよねぇ!?」

「駄目か?だったら、ちょっと付き合ってくれイリゼ。俺はあいむしんかーって歌うから、その間にイリゼは……」

「やらないよ!?絶対やらないよ!?」

 

 凄く食い気味なオリジンハート様の突っ込み。それを影が軽く流していると、オリジンハート様はがっくりと肩を落として影を恨めしそうに見ていた。その時パープルハート様は、二人のやり取りを愉快そうに眺めていた。

 

「…まあ、冗談はさておき、漫才の発想は悪くなかったのかもしれないな」

「え?そんなに目を引くような結果ではなかったわよね?」

「結果そのものはな。だが、ここまで『複数人で試す』って事はしていなかっただろう?」

「あ、そっか。じゃあ今度は二人で歌ってみよ?」

 

 そういう事ね、と私が納得する中、パープルハート様はオリジンハート様を誘ってまたステージへ上がる。再度歌うという事で、影もまた曲の準備に……って、

 

「…貴方、上手い事女神様達を煙に巻いて歌うのを回避したわね?」

「…俺は、歌わないとは言ってないからな」

 

 肯定も否定もせず、ただ背中越しに事実を述べていく影。…何かこう、彼からは女神様達…というより、オリジンハート様のあしらい方を熟知してる雰囲気を感じるわね…。

 

「さって、それじゃあ何歌っちゃう?」

「まあ、二人で歌うならデュエット曲とかの方が良いよね。…さっきネプテューヌは、初っ端から一人でデュエット曲歌ってたけど」

「いやぁ、インパクトのある先陣を切りたくて」

 

 今度は私にも聞こえる、普通の声量でやり取りをした後、またお二人は影に曲を頼む。その上で今回は最初からステージにいる…所謂板付きの状態で始めるつもりのようで、ゆっくりと深呼吸をした後頷き合ったりお二人は…叫ぶ。

 

『私達の歌を聴けーっ!』

 

 二人で歌うんだからデュエット曲で、という方向性で選ばれた曲。その発想は理解の出来るものだったけど……選曲されたのは、まさかのメドレーだった。しかも特盛りの方だった。

 

「はふぅ…やー、歌った歌った!爽快感凄いよね、イリゼ!」

「あはは、同感。観客が二人しかいないのは残念だけど…その二人に楽しんでもらえたら、やっぱり嬉しいよね」

 

 歌いきり、お二人は満足気な様子で笑う。楽しんでもらえたかどうか。楽しめたかどうか。それについて、私が答える必要はない。だってそんな事をしなくても、今私が送っている拍手で、私の気持ちはきっと伝わっていると思うから。

 

(良かった。パープルハート様が素晴らしいのは勿論だけど、オリジンハート様もやっぱり上手い。でも……)

 

 真っ赤が一つ。濃い赤が二つ。それなりの赤が一つ。これまでの中ではかなり良い線を行っているけど…だとしても、良い線止まり。

 

「……イリゼ。またちょっと大変だけど…」

「このまま二人で、これまでみたいに色々なパターンで試してみよう…って事でしょ?」

 

 振るわない結果。けれどパープルハート様はめげる事なく、すぐにオリジンハート様へもっと試そうと誘う。それを最後まで聞く事なく、すぐにオリジンハート様は答える。そうして二曲目、三曲目と試していくお二人はタフで、前向きで…私も、もっと頑張らないと。そんな思いに駆り立てられる。

 

「あ、あの!私も、お手伝いします!」

「おっ、エリナちゃんもノってきた感じ?」

「えぇと、そういう訳ではないですけど…」

「そーなの?まあでもそういう事なら、自分とデュエットしちゃう?それともイリゼと……」

「パープルハート様とでお願いします!」

「そ、即答…いやまあ、分かりきった答えではあるけど、即答……」

 

 思わず前のめりに答えた私は、流石にオリジンハート様に失礼だったと反省。ステージに登りつつ先にオリジンハート様へと謝って、それからパープルハート様と曲の打ち合わせ。

 といっても、私も色々歌える程のレパートリーがある訳じゃない。だからパープルハート様も知っていて、尚且つ私も歌えそうな曲を何とか探し出し、影へと伝えて流してもらう。

 

「…そういえば、私の次元とパープルハート様の世界?…とは全然違うのに、同じ曲を知っている…というのは、よく考えたら不思議ですね」

「あー、言われてみると確かにね。うーん…まああれじゃない?素敵な歌は、時空を超える…みたいな?」

「そ、そんなロマンチックな理由なんでしょうか……」

「信じるか信じないかは、エリナちゃん次第…なーんてね。それよりほら、始まるよっ」

「あ、は、はい!」

 

 これからパープルハート様と一緒に歌う。その事実が、直前になってまた私を緊張させる。もし音を外したらどうしよう、私の歌声がパープルハート様の邪魔になったら、パープルハート様の期待に応えられるような歌い方が出来なかったら…そんな不安が、次から次へと頭の中で広がっていって……

 

「エリナちゃん。ガンガン引っ張っていくけど、着いてこれる?」

「……──!」

 

 無意識の内に、隣を見ていた私。そんな私の視線に気付いたのか、それとも私の雰囲気が伝わっていたのか、パープルハート様もいつの間にか私の方を見ていて…にっ、と笑う。可憐で、愛らしくて…でも女神としての姿を思わせる、凄く凄く頼もしい笑顔を私へと見せてくれる。それを、そんな顔を見てしまったら……馬鹿馬鹿しくなる。自分の不安が。上手くやれるか、足を引っ張らないかって、パープルハート様の方はきっと微塵も気にしてなんかいない事で悩んでいた自分自身が。

 パープルハート様は、私を引っ張ってくれようとしている。だったら私は、着いていくまで。そしてその為に必要なのは…余計な事なんて考えないで、全力を尽くす事だけ。

 

(着いていってみせる…全力で、目一杯に……!)

 

 そうして私は、パープルハート様と歌った。正直、歌っている最中の事はあまり覚えていない。力の限り歌っていた事と、パープルハート様と一緒に歌えた喜びとで、覚えているだけの余力なんてなかった…って事だと思う。多分。

 歌いきったパープルハート様と私に、イリゼ様から拍手を送られる。全力で歌ったからこそ、その拍手は心地良く……ただ、それでも望む結果にはならない。遂に真っ赤が二つになったけど、残りは濃い赤と普通の赤で、恐らくまだ何かが足りない。

 

「はぁ…はぁ……今のは、良かったと思ったのに…」

「だね…だけどさエリナちゃん、自分はすっごく楽しかったよ!一緒に歌ってくれてありがとね!」

「…か……」

「か?」

「…感無量、ですっ……!」

「あはは、大袈裟だなぁ」

 

 ここまで言ってもらえるなら、もうこれで良いんじゃないか。実際には良くないけど、一度は割と本当にそう思った。敬愛する女神様にこんな言葉を掛けてもらったんだもの、これが至福でないというならなんだというんだって話よね。

 

「…ね、二人共。次は、私も一緒にいいかな?」

「三人で、って事ですか?」

「うん。三人で歌ったらどうか、って事も確かめたいし…それに、二人と一緒に歌ってみたいな…って」

「あはは、そういう事なら大歓迎だよ!ね、エリナちゃん!」

 

 にこり、と笑ったパープルハート様に続いて、私も頷く。断る理由なんてないんだから、と私はパープルハート様と共にオリジンハート様をステージへ迎え入れて…三人で、歌う。

 

(……っ…女神様は、歌っても凄い…そんなお二人と、女神様達と、一緒に歌える事が…私は、それが……)

 

 引っ張られる感覚がある。パープルハート様とオリジンハート様、お二人がリードをしてくれる。一曲パープルハート様と歌うのを経験したからか、さっきよりは少しだけ余裕があって…だから私は、さっきよりも意識して着いていく。女神様に応えて、自分も前に出る…なんて事はしない。ほんの少し慣れていても、まだ私は着いていくのに精一杯だかは…出来る事に、精一杯になる。

 まさか、こんな形で女神様と肩を並べる日が来るなんて思いもしなかった。同じ戦場に立った事は、自分の次元でもあったけど…多分ここまでの協同をするのは、これが初めて。勿論畏れ多い気持ちもあるけれど、着いていくので精一杯な自分はまだまだだ、という気持ちもあるけれど、だとしても私の中には深い充足感があって……

 

「ふー、ぅ…皆、ありがとー!…なーんて、ね」

 

 誰もいない観客席へ声を飛ばして、オリジンハート様は肩を竦める。…やっぱり、オリジンハート様からは慣れを感じる。そういう意味では、パープルハート様よりオリジンハート様の方が上手だけど…その分パープルハート様には洗練されていないからこその良さを感じる。それが私は、凄く良いと思う。

 

「はふぅ、やっぱり皆で歌うのっていいよね。もうかなり歌ってきたけど、どんどんテンション上がってる気がするなー!」

「ふふ、それは分かるかも。歌って、歌えば歌う程エンジン掛かってくる感じあるよね。…まあ、幾らでもエンジンが掛かる訳ではないけど」

 

 それはそうだよ、とパープルハート様は苦笑。ですよね、と私も肩を竦める。それと共に、頬が緩むのを感じる。

…と、そこで感じたとは、お二人からの視線。女神のお二人は、共に私の事をじっ…と見ていて、私は何か反応を間違えただろうか、と慌ててしまう。でも、お二人が私を見ていたのはそういう事ではなくて……

 

「エリナちゃん、楽しかった?」

「え?…あ……」

 

 楽しかったか。それを問われて、初めて私は自分が楽しんでいた事、胸の中にある充足感は楽しさなんだと気が付いた。

 最初私は、遊びじゃないんだから…と歌う事を決めた。この空間から先へ進む為の方法を探す為に、真面目にやるべき事として、歌おうと思った。だけど確かに今、私は楽しいと思っていて……そんな自分を、素直に受け入れる事が出来た。だから私は、お二人を見て…言う。

 

「…はい!」

 

 これが、遊びでない事は変わらない。手を抜く訳にはいかない。でも、だとしても…私はここでお二人と歌えて、楽しいと思えて、良かったと思う。

 

……え?それはそうと、歌った結果はどうだったのか…って?…それは、まあ…うん。あれよ。触れてないって事はつまり…そういう事よ。

 

「うぅーん…なんか一色だけ薄いよね…というかここの色は、全体的に薄い気がしない?」

「言われてみるとそうですね…最初に比べると、それなりの濃さで出るようになってきたと思いますが……」

「そこが難所、ってところだね…。影君、さっきから口数が少ないのは、ごちゃごちゃ考えてるからでしょ?何か思い付いた事とかはない?」

「そうだな…まあ、あるにはある。根拠に乏しい、単なる予想レベルだが」

「ほんと?それでもいいから訊かせて」

 

 オリジンハート様に頼まれた影は、何のつもりか一度沈黙。その上で、見つめるオリジンハート様の前で小さく息を吐き…再び口を開く。

 

「なら……イリゼ、これを付けてくれないか?」

「これ、って…サラシ?……え、待って。今どこから出したの?アロハシャツに内ポケットなんかないよね?自分で巻いてたの?」

「まあ、それはいいじゃないか。それよりも、付けてくれ」

「それよりもって……どこに?」

「胸に」

「嫌ですけども?」

 

 余程嫌だったのか、突然オリジンハート様の口から発される敬語。…けど、気持ちは分かる。私だって、異性からいきなりサラシを胸に巻けと言われたら、確実に拒否する。

 

「うん、何言ってるのかな影君…今のは自分もどうかと思うよ?」

「だが、話を振ってきたのはイリゼの方だ。俺だって、自分からこんな事を言ったりはしないさ」

「そんな理由じゃ全然納得出来ないんだけど…っていうか、影君から今の私はどう見えてるの…?」

「似合ってない」

「どストレートに酷過ぎる!?」

 

 信じられない位に無遠慮な影の返答。そのあんまりな返しに私もパープルハート様も唖然とする中、ショックで崩れ落ちるオリジンハート様の前で影は片膝を突く。そして肩に手を置き…言う。

 

「イリゼ。馬鹿げてると思うかもしれないが…これは、切実な頼みなんだ。そして、こんな事を頼めるのも、イリゼ位だと思ってる。だから…どうか頼む。これを、胸に巻いてくれ」

「…影君……。…そこまで、言うのなら……」

(受け入れた!?)

 

 こんな頼み聞き入れられる訳がない…と思いきや受け入れたオリジンハート様に、再び私は唖然。そして影が背を向ける中、本当にオリジンハート様はスクール水着の肩部分を降ろし、お腹の辺りまで下げてから、受け取ったサラシを巻いていく。かなり強めに、胸を圧迫する形で締めていく。そうして最後に、巻いたサラシの上からスクール水着を着直して……オリジンハート様は、嘆息。

 

「…はぁ。出来たよ、影君」

「そうか。…………」

「…こ、今度は何?」

「…胸元の布地の余りが気になるな」

「誰のせいでこうなってると思ってるのかなぁッ!?」

 

 喰らい付かんばかりに、烈火の如く怒るオリジンハート様。そんな様子を見ても尚、影は涼しい顔で……ただ一つ、最初に晒しを巻いたオリジンハート様の姿を見た時は、腕を組んで確かに頷いていた。

 

「…………」

「影君、エリナちゃんから冷たい目で見られてるよ?何なら自分も普通に引いてるからね?」

「まあ、それ位は甘んじて受け入れるさ。…それよりも、もう一曲歌ってみてくれ」

「え?…うーん、まあいいけども……」

 

 何故この流れで…と私は疑問を抱いたけれど、パープルハート様は少し考える素振りを見せてから、私とオリジンハート様に視線を送ってくる。何か考えがあるんだろう、そんな判断を私は感じる。

 

「オリジンハート様、歌えますか?」

「それは、圧迫状態でも大丈夫?って事?…それとも、精神的に……?」

「えぇと…強いて言えば、両方です…」

「そっか…うん、大丈夫…多分大丈夫……」

 

 一抹の不安が残る回答。でもすぐにオリジンハート様は切り替え、表情を引き締める。そんなオリジンハート様や、同じくそれはそれ、というように気持ちを切り替えた様子のパープルハート様と共に、また私は一曲歌い上げる。

 その内容としては、そこそこ良かったと思う。もう大分喉も開いているし、まだ緊張はするけど慣れてもきた。ただ、だからといって目覚ましい程の向上をしているかといえば…そういう訳でもない。それにそもそも、上手ければ良い訳ではない事ももう結果から分かっている。そんな状態で、そこそこ良かった止まりの歌がどれ程の意味を持つかなんて正直……そんな風に、私は思っていた。けど……

 

「…やはりか。全く…我ながら何をしているのやら……」

 

 歌い終えたところで、聞こえてきたのは影の呆れた声。初めその声に失礼な、と思った私だけど、すぐにそれが私達…少なくともパープルハート様達に向けられたものではないと気付く。

 だったら何か。何が影を呆れさせたのか。そう思う中、影は私達ではなく、その後ろを見ている事にも気が付いた。…そして、それが答え。

 

「…これ、って……」

 

 振り向いた私の目に映る、四つの色。それぞれに差はあるけど…今は四つ全てが濃い赤以上。初めての…最大の、結果。一体何故、何がこの高評価へと繋がったのか全く分からず…そんな中、スクリーンへ縦の線が走る。上から下に、一直線に黒い線が現れ…そこからスクリーンは、左右に開く。…まるで、閉ざされていた扉が開放されたかのように。

 

「…え、っと…全然状況が読めないんだけど…クリア出来た、って事…?」

「恐らくはな。中は…螺旋階段か」

「ちょ、ちょっと待って!なんで!?なんで私がサラシを巻いたらこうなったの!?っていうかサラシ関係あるの!?」

 

 目的は達成された。けど、達成された理由が分からな過ぎて、私達は混乱する。それから当然、私達の視線は唯一何かを理解している様子の影へと向かい…開いたスクリーンの奥、螺旋階段へと目をやりながら、振り向く事なく影は答える。

 

「…四つの赤は、それぞれの満足度…或いはもっと単純な、楽しいとか面白いって思う気持ちの度合いだろうな」

『そ、それって……』

 

 言うだけ言って、影は先に階段へ向かってしまう。発された答えに私はぽかんとなり…それからお二人と顔を見合わせる。

 言われてみれば、腑に落ちる部分もある。思えば最初からずっと、パープルハート様が歌う時はほぼ毎回真っ赤になっていた部分があった。逆に一ヶ所、ずっと濃い赤以上にならない部分もあって…それが今、オリジンハート様がサラシを巻いて歌ったところで初めて濃い赤を示した。と、いう事は…四つそれぞれの色が示していたのは、歌やパフォーマンスの評価じゃなくて……

 

『…は、はは……』

 

 自然にハモる、私達の乾いた笑い。確かに道は開かれた。結果としては、間違いなく良い。良いんだけども……何かこう、もにょっとした気持ちが心に残る。

……でも…私はこの結果を、疑う気持ちはなかった。むしろ、素直に受け入れられた。…やっぱり、楽しくはあったから。楽しかったし…パープルハート様達も楽しんでくれていたのなら、嬉しいから。…いつかまた一緒に、今度は普通の時に…なんていうのは、流石に高望みし過ぎ…かしらね。

 

 

 

 

 四地点への、同時攻略。これが判断として正しいかどうかは、結果を得るまで分からない。分からないけど…複数の場所へ、どの地点へも充分と言えるだけの戦力を向けられるのは、私達の、この集団の強みだと思う。

 

「何があるんだろう…やっぱりまた、戦いかな…」

「んー、どうかなぁ。でも何が起きてもだいじょーぶなように、落ち着いていこうね?」

 

 少し緊張した様子で廊下を見回しながら、愛月が歩く。その横では、一見気楽そうに…でもしっかりと周囲への警戒はしている茜さんが声を掛ける。

 その後ろを、私とディールさんが歩く。ディールさんは黙っていて…けどただ黙っているんじゃなくて、魔法による探知を行っている真っ最中。けど今のところ、ディールさんから何かを見つけたといった話はなくて…その内に扉の突き当たり、そこにあった扉の前へ辿り着く。

 

「この扉の先は…んー、ダメかぁ。ここもよく見えないみたい」

「外からこの建造物の中を見ようとした時も、同じような事を言ってましたよね。わたしの探知にも何一つ引っ掛かりませんし、探知系能力への対策がされているんでしょうか……」

「探知系能力へ…っていうより、ここにも認識への干渉が働いているのでは?…けど、そうなると扉の向こうに何かあっても、事前に対処する事は出来ませんね…」

「…やれる事なら、一応ありますよ?」

 

 そう言って、ディールさんは杖の先端を扉の方へ向ける。その状態で、茜さんへと扉を少しだけ開ける事を頼み、言われた茜さんが扉を開くと、ディールさんは開かれた扉の隙間へと杖の先端を突っ込む。そして……

 

「ふ……っ!」

 

 力を込めるような、小さな息遣いが聞こえた直後、激しい音が扉の向こう側から響く。同時に扉の隙間からは、髪の毛が舞うような強風が吹く。

 

「これって…もしかして、風の魔法?」

「はい。取り敢えず烈風を放ったので、重量級の罠や敵でなければ吹っ飛ばせたかと」

 

 なんて事ないように言ってのけるディールさんだけど…何があるか分からないから、取り敢えず烈風で吹っ飛ばそうというのは、まあまあ遠慮がない気がする。いや、判断的には正しいと思うけど。

 とまあそんなやり取りを経て、私達は扉を潜る。ディールさんの烈風のおかげ…かどうかは分からないけど、扉の向こうに私達を害するようなものはなく……

 

『……うん?』

 

 それどころか、私達は扉の向こうにあった場所、目に映った光景に、困惑してしまった。何があるか、どんな場所か…それを色々予想しながら扉を開けた私だったけど、あったのは予想とはまるで違う空間だった。

 

「これは……」

「…プール?」

 

 私の呟きへ続くように、茜さんが言う。愛月とディールさんも、怪訝そうな顔のままに頷く。

 そう。扉の先、そこにある空間にあったのは、大きなプール。それも学校や大会で使われるような、競技用のもの。

 

「どうしてこんな場所にプールがあるんでしょう…いや、それを言ったらここの建造物自体が謎ですけど……」

「取り敢えず、調べてみる?あっちの方には更衣室?…みたいなプレハブ小屋もある──」

 

 プールへと数歩近付き振り向いた愛月の言葉は、途中で止まる。背後でがちゃりという音がして、愛月は目を見開く。そうなった時点で私は音の正体を、それが扉の閉まる音である事を理解したけど…気付いた時点で、もう時既に遅し。閉まった扉は力一杯引っ張っても開かず、それどころか初めから扉じゃなかったかのように力を込めてもびくともしない。

 

「わわっ、どうしよう!?これ、閉じ込められちゃったって事!?」

「落ち着いて、愛月。…ディールさん、鍵を開ける魔法みたいなのはありますか?」

「残念ながら、そういうのは…。……鍵を開けるんじゃなくて、宝箱の中身を鑑定する魔法ならありますけど…」

「あ、そんな精度が99%と言われている的な魔法ならあるんですね…。…となると、この扉は破壊するのも難しそうだし……」

「この場所を調べてみるしかなさそうだね」

 

 ここが侵入者を延々と閉じ込めておく為の空間でないのなら、出る為の手段もどこかにある筈。そう思って、私達はプール及びその向こう側にある小屋の調査を開始。まずは分担とかもせず、各々気になるところから調べていく。

 

「…開かない。っていうかこれ、無理に開けようとしたらドアノブが駄目になりそうだな……」

「小窓の方も開きませんね。向こうの扉と同じで、単に鍵が掛かってる…って訳じゃなさそうです」

 

 ガタがきているドアノブから私が手を離すと、ディールさんは杖の先端で軽く小屋の小窓を叩く。この扉にしろ小窓にしろ、壁に描かれた絵…って訳ではなさそうなのに、開く気配が全くない。ならば、と私は側面や裏手にも回ってみるけど、やっぱり入れそうな場所も気になる部分も全然なくて、小屋に関しては収穫ゼロ。

 

「何かしらありそうなのに、何も出てこない…もどかしいですね、こういうのって」

「ゲームだったら、何か仕掛けを解くか、まず先にやる事があるかですけど…現実をゲームで例えても仕方ないですね」

「あはは…そういうところ、独特ですよね」

「…そういうところ?」

「ゲームで例えても…って話です。他の女神だったら、まず言わないような発言ですし」

「あぁ……」

 

 それは分かる、と私はディールさんに頷く。確かに他の女神だったら、普通に言うと思う。言うだろうし、別にそれが間違っているとは思わない。ただ、私は創作で例えても仕方ない…と思うだけ。

 

(…うん、そう。ゲームだったら、未完成とか進行不能のバグが発生してるとかでもない限り、ちゃんと進む為の筋道が、シナリオがある。だけど現実はそうじゃない。探せば何か見つかる筈…って考え自体が、既にもう楽観的)

 

 自分達が探しているのは、あるかどうかも分からないもの。それを忘れていたら、どこかで真実が見えなくなるかもしれない……と、そこまで私は考えたところで、軽く自嘲する。楽観視している事にも気付かずにいるのは勿論良くない。良くないけど…悪戯に悲観ばかりしていても、状況は何も好転しない。何も見つからないかもしれないのはそう。だけどマイナスの「かもしれない」を理由に何もしなかったら、もっと何も出来ないし、何も変わらないから。

 

「…ディールさん、治癒魔法の準備をしておいてもらえますか?」

「え?…もしかして、どこか怪我を?」

「いえ。今はしていませんが、これからするかもしれないので」

 

 声を掛けながら、私は小屋の扉の前に戻る。扉の形から、どう開くタイプの扉なのかを予想して、私はある一点を見つめる。

 ゆっくりと深呼吸。一息毎に集中を高めて、全身の力を掻き集めていくようなイメージを浮かべながら、自分の中で調子を整えていく。そして、何度目かの深呼吸で調子を今の最高潮まで高めた私は……拳を、突き出す。

 

「ふッ…はぁああああぁぁぁぁッ!」

 

 床を踏み締め、全身の捻りを加えて放つ、全力の一撃。女神化こそしていないけど、だとしても普通の扉なら開くどころか木っ端微塵になる位の、フルパワーのパンチ。それを私は開かない扉へと叩き込み……

 

「…………」

「…………」

「……ディールさん…治癒より先に、氷で冷やしてもらえますか…?」

「で、ですよね…!」

 

……それから少しの間、拳から膝まで全体がジンジンと痛む腕を庇いながら、小屋の前で蹲る事になるのだった。…予想通りの結果とか、言わないで下さい……。

 

「…意外と無茶するんですね、ピーシェさんって…」

「さ、流石に治癒をすぐ受けられるような状況でなければやらないです…うぅ、なんか骨の奥まで痛みが響いているような気がする……」

「むしろよく骨折せずに済みましたね…多分綺麗な打撃フォームだったおかげで、関節が変な曲がり方したり、どこかに衝撃が集中しちゃったりみたいな事は起こらず済んだからだと思いますけど……」

「…ビッキィだったら、破れたかな……」

「さ、さぁ…。なんとなくわたしは、ピーシェさんと同じ結果になるような気がしますが……」

「…ふふ、実は同感です…というかそもそも、こういう役回りはこれまでビッキィが率先してやってきた訳なので……」

 

 こういう時、もしビッキィがいたら、そういう事なら自分が…と言って代わりにやってくれていた。私としても、ビッキィのやる気や気遣いに水を差したくはなかったから、こういう時は任せてきた。…いやまあ、開かない扉を全力でぶん殴るなんて事が、これまでにしょっちゅうあったとか、そういう訳じゃないけども。

 

「…そういえば、今回はビッキィさんと完全に別行動でしたね」

「えぇ。といっても、普段はそんな毎日一緒にいる訳じゃないですよ。ビッキィに遠隔地での仕事を頼んだりする事もありますし、休日は普通に別々に過ごしてたりもしますし。それに別行動なのは、ディールさんとエストさんもそうじゃないですか」

「まあ、そうなんですけどね。…昔は本当に、一緒にいるのが普通で、別々に行動する事自体が不安だったんです。だけどいつの間にか、それも不安じゃなくなったというか、普通に受け入れられるようになったというか…。…多分、離れている期間が長くあったからですね」

「…それも、成長だと思いますよ。それに、別行動する事があっても、なんだかんだ一緒にいるんでしょう?」

「…なんだかんだ、そうですね。ピーシェさんとビッキィさんは……」

「さっきも言った通り、普段はそこまで一緒という訳じゃないです。私にとってビッキィは、唯一無二の、とかかけがえのない、みたいな大仰な相手じゃない…ただの、信用の出来る部下で、付き合いの長い友達というだけですから」

 

 冷やしてもらって、その上で治癒もかけてもらって、やっと引いてきた痛み。癒してくれた事に感謝をし、私はその場で立ち上がる。…今語った言葉に、嘘も誇張もない。私にとってビッキィは、そういう存在。けどそれでいい。それがいい。私が望むのは特別な何かではなく…普通、なんだから。

 

「…さてと。こっちは手詰まりですし、向こうと合流します?」

「そうですね。向こうには何かあるかもしれませんし」

 

 くるりと振り向き、私達はプールの方へ向かう。と、いっても殆ど離れている訳じゃないから、プールサイドを歩いていって、その内側に立つ愛月と茜さんへ呼び掛ける。

 

「そっちは何か見つかりましたー?」

「ううんー、今のところはなんにもー」

「何かありそうなのに、何も出てこないんだよねぇ」

「あ、さっきのわたしと同じような事を……」

 

 うーん、と茜さんは腕を組んで首を傾ける。愛月も排水溝の近くでしゃがんでいたけど、気になるものは何もなかった様子。それから二人は、プールの底を歩いてこっちまでやってくる。

 そう。この空間にあったプールに、水は張っていなかった。プールといえば、水が張られているイメージがあるから、空っぽというだけで少し違和感がある。…でも、そうか…違和感、か……。

 

「…あの、一回水を張ってみませんか?」

「あ、それは私も思った。そこを調べるなら水がない方がいいけど、やっぱり水なしのプールって変だもんね」

「けど、プールって普通水の弁は見えないところにありますよね?ならそれを探さないと……」

「ふふん、それなら既に私が発見済みだよ!」

 

 言うが早いか、茜さんはプールサイドの床に備え付けられた蓋の様なものを開く。そこには大きな弁があって…皆が頷く中弁を開けば、プールに大量の水が流れ始める。

 

「じゃあ、これで後は待つだけですね」

「だねー、あいくん。…にしても…プールでスク水なんて、ある意味ぴったりの格好だよね。これってもしかして、このまま元先生の私に水泳の授業をやれって事なのかな?」

「いや、ぴったり云々にも突っ込みたいところですけど、そもそも先生はスクール水着で授業したりしないでしょう……」

「あはは、それもそっか。確かにそれは、悪い刺激があり過ぎるもんね」

 

 そう言いながら、茜さんは愛月をちらりと見て肩を竦める。…うん、まぁ…それは本当にそう。流石にもう少し慣れてきたっぽいけど、私達がこういう格好になったばかりの時は、愛月顔を赤くしてそっぽを向いてたし。

 とまあ、そんなやり取りを交わしながら、私達は水が溜まるのを待つ。水面を眺めながら、焦る事なく待っていた…んだけども……。

 

「…全然溜まりませんね。まあ、これだけ大きいプールなので、すぐに溜まらないのはわたしも分かってましたけど……」

「んー、こういう時はバケツを持った兄弟のキマイラにも協力してもらう?」

「それ、どれだけ頑張ってもらっても埒があかないやつじゃないですか…。…こういうのって、溜まるのにどれ位掛かるか知ってます?」

「えーっとねぇ、私もよく覚えてないけど、何時間も掛かるんじゃなこったかな」

 

 先が長過ぎる、と質問した私は茜さんからの言葉にがっくり。けど今のところ、他に思い付く事もない訳だし……と思っていると、そこで愛月が声を上げる。

 

「そうだ!フロスト、ファング、お願い!」

「あ、そっか。それならわたしも……」

 

 手を叩いた後、ボールからフロストとファングを呼び出した愛月は、水をプールへ放ってもらう。同じくディールさんも、魔法で水流をプールへと出す。

 それによって、溜まるペースは一気に上がる。上がるけども、やっぱりまだ先は長い。そして私と茜さんは、二人のような事は出来ない訳で……

 

「フロストー、ファングー、ふぁいとー!ほら、ぴぃちゃんも!」

「わ、私もですか?……えー…ディールさん、根性ですよ根性」

「あ、はい…」

 

 そうして私達は待つ。流石にずっと見てるんじゃ時間の無駄が過ぎるから、プールサイドや飛び込み台、その他目に付くものを片っ端から調べに調べて、ひたすら待っていく。ディールさん達にも休憩を取ってもらいつつ、何度もプールの水量を見る。

 凄く、焦ったかった。学校のプールは夜の内に水を入れ始めるというけれど、それもそうだと痛感する時間だった。それでも漸く、遂に……その瞬間は、訪れる。

 

「た…溜まったぁぁ……!」

「フロスト、ファング、お疲れ様。よく頑張ったねっ!」

 

 とにかく疲れたとばかりにぺたんと座るディールさんと、もうへろへろなフロストとファングを目一杯労う愛月。そして…並々と水の溜まった、大きなプール。

 

「いやぁ…なんだか、壮観だね」

「ですね…ただ水を溜めただけなのに、こんなにもほっとするだなんて……」

 

 二人でプールサイドから、プールとその中に溜まった水を眺める。頑張ってくれたのはディールさんとフロストにファング、それにここの設備であって、私達は何もしていない。それでもなんというか、達成感があった。やりきった、という感じがあった。

 けど…意外と、こういうのはありふれているのかもしれない。時間の掛かる事、手間の掛かるものというのは、世の中に色々とあって、けれど私達はそれを知らないだけ、気付いていないだけ。世の中を広く知っているつもりでも、実際に知っているのはその一面だけで、知らないものは沢山ある。そしてそんな一端を、偶然ながらも知って体感する事が出来たのだと思えば、これも悪くなかったのかもしれない。そんな風に思いながら、私達も頑張ってくれた皆を労い、この達成に対して安堵の吐息を……

 

「……って、よく考えたらこれ、ただ水が溜まっただけで、何も起きてなければ何もしていないんですよね、現状…」

『あ……』

 

 深く抱いた達成感。けど、実際には行程が一つ済んだだけで、しかもここから先の展開もよく考えていなかった訳で…それに気付いた私達は、それまでの達成感から一転して、何とも微妙な空気感になってしまうのだった。




今回のパロディ解説

・(〜〜某漫才コンクール〜〜)
M-1グランプリの事。出囃子、つまり芸人が舞台に登場する時の曲の事ですね。そして丁度今日は、M-1グランプリ2025の一週間前。来週だったらタイムリーなパロネタでしたね。

・「〜〜フリージア〜〜」
シンガーソングライター、Uruさんの曲の一つの事。知っている方もいるかとは思いますが、その前の自販機云々は、この曲がEDに使われた鉄血のオルフェンズのボツネタの一つ…らしいです。

・「〜〜あいむしんかー〜〜」
アーマード・コア4のBGMの一つ、Thinkerの事。ただ、直前の「付き合ってくれ」からも分かる通り、より意識しているのは続篇のfAにおける、オールドキングの鼻歌の方ですね。

・『私達の歌を聴けーっ!』
マクロスfrontierにおけるヒロインの一人(二人)、ランカ・リーとシェリル・ノームの代名詞的な台詞の一つのパロディ。勿論これ自体も、熱気バサラの「俺の歌を聴け」のオマージュな訳ですけども。

・「信じるか信じないかは、エリナちゃん次第〜〜」
お笑い芸人、関暁夫さんの代名詞的な台詞のパロディ。この台詞、結構汎用性がありますよね。言葉そのものも、割とどんな場面でも浮かずに入りそうですし。

・「〜〜宝箱の中身を鑑定する魔法〜〜」
葬送のフリーレンに登場する魔法の一つの事。でも、鍵を開ける魔法って、ドラクエにおけるアバカムや、ハリー・ポッターにおけるアロホモラ等、創作の世界ではそこそこあったりしますよね。

・〜〜何もしなかったら〜〜何も変わらないから。
ガンダムSEEDシリーズの主人公の一人、キラ・ヤマトの名台詞の一つのパロディ。でもこれ、地の文という事もあって改めて見ると意外とパロディとは気付き辛い気がします。

・「〜〜バケツを持った兄弟のキマイラ〜〜」
MOTHER3に登場するキマイラの一つ、バケツきょうだいの事。ただ、細かい事をいうとバケツきょうだいはあくまで水をバケツで移すだけなので、そもそもこの場じゃ役に立ちようがないですね。
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