超次元ゲイムネプテューヌ Origins Transition   作:シモツキ

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第十九話 試した結果

 建造物の中という、場違いにも程がある民家の探索中、イリスが見せた流し素麺への興味。素麺ではなく、流し素麺という…食べ方?遊び?…への、やってみたいという好奇心。それにわたし達は応え、流し素麺のセットを調査する…なんて名目で、やる事にした。わたしも流し素麺なんていつぶりか…って思う位には久し振りで、中々楽しかった。…序盤、イリスが全部取ってしまって流れてこないという事態になった時は、苦笑を禁じ得なかったけども。

 

「じゃ、これで最後よ」

「最後、ね。なら、ビッキィ……」

「えぇ、勝負!」

 

 初めに流す担当をしていたズェピアさんとバトンタッチしたイヴさんが、最後の一玉を竹に流す。セットを挟んで左右に立つわたしとセイツさんは、自分達の目の前にある竹の所まで流れてくるのを待ち…その竹のレーンへと入った瞬間、箸を突き出す。

 刺突の如く伸びる箸。向かう先は、真っ直ぐ麺。寸分違わず、わたしの箸は素麺へと迫り…けれど掴む直前、わたしの箸と、反対側から同じように突き出されたセイツさんの箸が激突。二対四本の箸がぶつかり合い……素麺は、そのまま下流に流れていく。

 

「あ、来た。…イリスはもう沢山食べた…ので、ズェピア、どうぞ」

「いいのかい?ならば最後の一つ、頂くとするね」

「…………」

「…………」

 

「…まあ、こうなるわよね」

「なりますよね」

 

 何となく予想していた通りの結果になったから、特にショックとかはない。イヴさんからは、呆れたような視線を向けられたけども…これも割と予想の範疇。

 

「…さてと。これで流し素麺は終わりになる訳だけど…皆、何か気付いた事はあった?」

「わたしは…特になかったですね」

「わたしもよ。ついでに素麺も普通だったし」

「イリスはあった。流し素麺は、譲り合いの精神が大切。どうぞどうぞ、が重要」

「うん、何故某トリオのお約束ネタっぽく言ったのかは謎だけど、イリス君の言う通りだね。良い心掛けだと思うよ」

 

 流し素麺は、楽しくやる事が出来た。けど調査としては、この通り完全な空振り。…まあ、調査自体がイリスに納得してもらう為の方便みたいなものだった訳だけど…何もなしというのは、少し歯痒い。

 

「…じゃあ、これは取り敢えず片付けて、外の探索を再開しますか?」

「そうね、と言いたいところだけども…ここの敷地内って言える範囲は、もう大方調べてあるわよね?ここからは、更に範囲を広げる?」

「それは悩みどころだね。更に範囲を広げるとなると、ここからはキリがなくなる。敷地内を改めて、より入念に調べてみるのも選択肢の一つではないだろうか」

「だけど、敷地内に何かあるとも限らない。一通り調べてみたのは事実…ふーむ、確かに悩みどころね…。というかそもそも、わたし達は何を見つければいいのかしらね」

 

 範囲を広げる選択肢をイヴさんが出せば、ズェピアさんが別の選択肢を提示する。セイツさんは、そもそもの部分に触れる。

 言われてみれば確かに、何を見つければいいのか現状さっぱり分かっていない。何となく『この空間から出る』って事で、わたしは隠し通路を考えていたけど、仮に出る為の方法や道があったとしても、それは通路とは限らない訳で…。

 

『…………』

 

 沈黙が、訪れる。皆が皆、どうしたものかと考えている。少しの間、沈黙は続いて……それを破ったのは、ズェピアさんだった。

 

「…一つ、提案をしてもいいかな?」

「提案?」

 

 かくん、と首を傾げたイリスにズェピアさんは頷く。わたし達は、無言を返す事で肯定の意思を伝え…全員の顔を見回したズェピアさんは、再び口を開く。

 

「先程から、少し考えていたんだ。素麺と、流し素麺の装置、その両方があったというのは、単なる偶然なのだろうか…とね」

「そういえば、素麺を取りに行く時そんな事を言ってましたね。でも、そんなにおかしな事ですか?流し素麺をやる道具があるのに、肝心の素麺がないなんてなったら、何の為の道具なんだ…ってなりますし」

「…いや、違うわビッキィ。流し素麺の道具があるからって、常に素麺をストックしておかなきゃいけない理由なんてないでしょ?」

「…それは、確かに」

 

 イヴさんからの返しに、わたしは納得。これが最初から、流し素麺をやると決まっていたなら別だけど、そうじゃないなら…例えば、前に使ったセットをそのまま置いておいただけとかなら、素麺がなくても変じゃない。

 

「ありがとう、イヴ君。今言った通り、決してあるのが当然ではないものが揃っている…私はここに、意味や意図があるのではないかと思ったんだ」

「言わんとする事は分かるわ。けど、難しい話ね。何を以て、あるのが当然ではない…って判断したらいいのかしら。こういうのって、人によってラインが変わってくるでしょ?」

「セイツの言う通りね。ズェピア、その辺りはどう考えているの?」

「残念ながら、それについては私も悩みどころでね。ただ、別に制限時間がある訳でもなければ、選べる数が限定されている訳でもないのだから、自分の中で気になる、引っ掛かるものがあれば、そしてその道具や準備が揃っているのなら、取り敢えず確保する…というスタンスでどうだろうか」

「気になったら、確保…イリス、理解した。早速探す」

「あ、待ったイリス。そういう事なら、確保した物を試すのは後にしません?下手に動かすと危ないものや、流し素麺みたいに一人で準備するのは手間が掛かるようなものがあるかもしれませんし」

 

 くるりと背を向け歩き出したイリスを呼び止めて、一つ確認。それからわたし達は、また家の内外を探し始める。セイツさんが気にしていた通り、これはあって当然なのか、そうじゃないのかの判断…特に、「当然じゃないかもしれない」…の部分は難しくて(テーブルとかお皿とか、あって当然の判断はそんなに難しくもなかった)、思った以上に苦労する。

 ただ、気になっても単品で完結しているものなら、取り敢えず確保する対象にはならない。そのおかげで、あれもこれもと大量に物が積み上がってしまう…なんて事にはならなくて……暫くの探索の末、わたし達はまた庭に、厳密に言えば縁側に集合をした。

 

「さてと。それじゃあ一度確認に入りましょ」

「そうですね。えーっと、この中で一番気になるのはやっぱり…これ、ですかね」

 

 首肯と共にセイツさんへ答えて、わたしは集まった物を見回す。そしてその中で、一番異彩を放っている物品はといえば…古めかしいストーブと燃料のタンク、それに燃料を入れる用のポンプというセット。

 とはいえ見てるだけじゃ何も起こらない。だからわたし達は顔を見合わせ、取り敢えずストーブに燃料を入れてみる。

 

「じゃ、入れてくわよ?んーと、まあこれ位圧を加えれば……」

「おお、何もしていないのに流れていく…これは、魔法のポンプ?」

「いいや、これは魔法ではなく科学だね。サイフォンの原理…というのを聞いた事はあるかな?」

「…個人用情報端末?」

「うん、それはサイフォン違いだね。少し難しい話になるから、説明はまた後でしてあげよう」

「けど、ほんとにこの場でストーブは違和感が凄いわね…準備してる私達の格好を加味すると、最早体温感覚がバグってるのかってレベルだし……」

『確かに……』

 

 半眼で言ったイヴさんの言葉に、わたしとセイツさんは苦笑する。水着でストーブを用意するなんて、まあまずまともじゃない。というかそうだ、今はスク水を着てるんだった…段々この格好に慣れてきてる自分が恐ろしい…。

 

「ふむ、もう燃料は十分ではないかな?」

「そうみたいね。じゃ、ストーブを点けるわよ。故障してて即爆発…なんて事もあり得るから、皆はちょっと離れていてくれる?」

 

 そう言って、セイツさんが点火。すると、ちょっと調子の悪そうな音が聞こえて……それからストーブに火が灯る。最初不安になったけど、一先ず故障はしていないようで……

 

…………。

 

『……暑い…』

 

 ちょっと点けて、すぐにわたし達はストーブを切った。だって、暑いんだもの。距離を取ったとしても、ストーブに火が点いているのを見るだけで、なんだか暑くなってくるんだもの。

 

「…取り敢えず、点けたからって何かが起こる…みたいな事はありませんでしたね」

「なかったね。となると、単に片付けを忘れていたか、片付けるのが億劫だったか…といったところかな。無論、ここに家主がいるなら…だが」

 

 という訳で、ストーブについての確認は終了。済んだという事で脇に置いて、次に気になるものへと取り掛かる。

 

「これも結構目を引くというか、あったら気になるわよね」

「イリスも気になる。これは、玩具?」

 

 イヴさんとイリスが、それぞれ置いてあった物を…掌よりも少し大きいサイズの車型模型を手に取る。

 それは、この家の屋根裏にあったもの。そしてあったのは、模型の車だけじゃなく、コース一式。

 

「玩具…まあ、確かにそうだね。イリス、これはラジコンといって…って、うん?このラジコン、リモコンがないような……」

「え?これは元々リモコンのないタイプでしょ?」

「うむ。セイツ君の言う通り、これは基本的に操作の出来ない、スイッチを入れたらひたすら直進を続ける類いの玩具だね」

『へー』

 

 電源スイッチらしきものはある。でも、それだけ。リモコンっぽいものは何もないし、それがなくちゃ操作が出来ない。まさか某狐の大泥棒みたいに小さくなって乗り込む…なんてやり方をする訳がないし、一体これはどういう事?

…と思っていると、これはそういうものなのだとセイツさんとズェピアさんが言う。それは、わたしは勿論イリスやイヴさんにとっても寝耳に水の情報だった。

 

「ひたすら直進を続ける……レベル20で進化した?」

「うん、それだとしたら一応曲がれるからね?…しかし、これはネタとしてややこしいわね…ここに愛月やグレイブがいたら、今の発言はどういう扱いになったのかしら……」

「……?セイツは何を言っている…?」

「あんまり気にしなくていい事よ。…こほん。それで、じゃあ操作はどうするんだって話だけど……」

「ひたすら直進といっても、タイヤが稼働しない訳ではない。だから、専用のコースがあればそれに沿う形で曲がってくれるのさ」

 

 二人の説明を、わたし達はふむふむと聞く。進行方向の操作も出来なければ、速度を決める事も出来ない、ただスイッチを入れたらフルパワーで直進するだけの電動式模型。だからこそ、組み立てる際のパーツやカスタマイズ、それにコースが走りを左右するのだと、セイツさん達は教えてくれた。聞いてみれば割と単純な話(勿論カスタマイズは奥が深そうだけども)で、わたし達はすぐに理解出来た…けど……。

 

(…この二人は、どうして知ってるんだろう……)

 

 これをズェピアさんが知っているのは分かる。この人…というか吸血鬼は、割と何でも知っていそうだから。けどこれについてはセイツさんも知っていて、しかも二人共、偶々知識だけはあったという感じでもなくて……まあでも、そこは重要でもなさそうだしいいか。

 

「皆も気になってるみたいだし、確認も兼ねてこれも早速動かしてみる?」

「そうしようか。二人共、スイッチを入れた状態でコースに置いてくれるかな?落ち着いて置かないと即座にコースアウトしてしまう事もあるから、気を付けてね」

「分かった。イヴ、せーので置く?」

「え?…そうね、そうしましょ」

 

 こくりと頷いた二人は、コースのスタートがある場所へ。そこから二人は自分が置く場所を確かめ合い…スイッチを入れる。そしてわたし達が見つめる中、二つの模型はコースへ置かれる。動力を有した車型模型は、二人の手を離れた瞬間勢いよく走り出……さなかった。

 

『……あれ?』

 

 コースの中で、ぴくりともしない車型模型。これが全く動かない。というか…そもそも、電源が入っている気がしない。

 

「…えーっと…お二人共、これは……」

「…どうも、故障しているみたいだね」

「全然音がしないから、もしやと思ったけど…うーん、どこが悪いのかしら。イヴ、貴女なら分かる?」

「いや、玩具っていっても流石に初めて見る物の診断は…。…まあ、見てみるだけ見てみるけど……」

 

 やっぱり故障だったらしく、二人は首を捻る。壊れてるとなったら、試しようがない。取り敢えずイヴさんも見てくれてるけど…表情からして、本人が言っていた通り難しそう。

 

「イヴ、どう?直る?」

「…駄目ね。シンプルな構造だからこそ、逆に手の打ちようがないわ。電源関係で、交換用のパーツとかがあれば別だけど……」

「そうか…残念だけど、仕方ないね。悲しくはあるが、これも一つの思い出…かな」

「確かにそうね。その時は嫌な気持ちでも、後になれば思い出の一つになる…そんなものじゃないかしら」

 

 直せそうにない、と返されたイリスが無表情で模型を見つめる中、ズェピアさんとセイツさんがそれも思い出になる、と言って肩を竦め合う。…なんだろう、この達観した感じ…達観というか、正直今おいくつですかと言いたくな──

 

「ビッキィ、女神にそれを訊くのはナンセンスだし、わたしだって女性なのよ?」

「あ、はい、すみません」

 

……こほん。それはともかくとして、動かない以上これも終わり。そしてここからもわたし達は一つ一つ動かしてみたり、組み立てみたりして試したけれど、上手くいかない。壊れていて使えないとか、きちんと動いても最初のストーブの様に何も起こらなかったりと、空振りが続く。

 そうして気付けば、最後の一つも試し終えていた。最後はビニールプールと空気入れのセットで、これは膨らませた上で水も張って、軽く遊んでみたけど…もう殆ど予想通り、ただ遊んだという結果が残っただけだった。

 

「…何も、起きませんでしたね……」

「思い切って水の掛け合いやってみたけど、窮屈感があっただけだったわね……」

 

 セイツさんの返しに、小さく頷く。ただ膨らませて水を入れただけじゃ試した事にならないだろうと思って、わたしとセイツさんは子供用であろうビニールプールに二人で入って水を掛け合ったけど…本当にただ、微妙な心境が残っただけ。特にイヴさんの、何とも言えない感じの面持ちは忘れられそうにない…。

 

「これで全て試した事になる訳、か…すまない。私の見立ては外れていたかもしれない」

「大丈夫。イリス、色々なものを見る事が出来た。学びもあった」

「まあ、外れていたかどうかも試さなければ分からない事でしたしね。切り替えていきましょう」

 

 確かに空振りにはなったけど、この方向で…というのには全員が同意をした以上、ズェピアさんだけが悪い訳ではないし、そもそも誰が悪いかなんて考えても仕方がない。今必要なのは、だったら次はどうするかという事で……と、わたしが思案を巡らせようとしていた時だった。

 

「うん?あ…待って。まだ一つ試してないのがあったわ」

 

 そう言って、縁側の端…廊下の外壁の影になるような位置にあった物を取ってくるセイツさん。その手にあったのは、ライター…それに、花火の詰め合わせ。

 

「花火、ですか…。けど、どうしてそんな分かり辛い位置に……」

「…その…それを持ってきたのは私よ。持ってきたんだけど、いざここまできたら、何か違うような気がして……」

「だから隠して…って程ではないにせよ、離れた場所に置いておいたのね。もう、そんなの気にしなくていいのに」

 

 若干恥ずかしそうに目を逸らし、頬を掻きつつ言うイヴさんに、セイツさんが柔らかな表情で答える。…けど、わたしは見逃さなかった。答えた後に、イヴさんが抱いていたであろう恥ずかしさへ対して興奮の顔を見せたセイツさんを。

 

「確かに環境的にはそこまで大きな違和感がある訳ではない…が、それを言うならビニールプールも同じ事。他の物は全て試したんだ、これもやるだけやってみるのはどうかな?」

「わたしもそれでいいかと。花火をやりつつ次の事を考えれば無駄もないですし」

 

 別にいいよね、というやり取りを経て、花火をやって見る事に決定。セットの中には蝋燭もあったから、まずはライターでそれに火を点け、それからわたし達は各々手持ちの花火を装備。ライターと蝋燭を使い分けながら、順番に点火し…花火、開始。

 

「おおー…これは凄い…前に見た花火とは違う、けど綺麗……」

「こういうの、風情がある…っていうのよね。…うん、この花火だけじゃなくて、この場全体がそうかも……」

「さて、それじゃあわたしはこれで……」

「ビッキィ君?花火を振り回したい気持ちは分かるし、ある意味定番のネタではあるが、イリス君の教育上宜しくないような遊びは控えるようにね?」

「あっ、はい」

 

 振り上げかけたススキ花火を降ろす。線香花火をしている二人の隣にしゃがんで、同じように静かに見つめる。

 

「……凄いな…ただ見つめてるだけでも、何か引き込まれるものがあるんだから…」

「分かるわ。まあ、もっとド派手で動きのある花火もわたしは面白いと思うけどね」

「ふふ、こういった花火も種類は様々だからね。出来る事なら、もう少し暗い環境の方がより綺麗に見えただろうが……」

「流石にそれは本来の目的を見失い過ぎでしょう…」

 

 もっと暗い方が、というのには同感。けど何の為にこれをやっているのかと思えば、突っ込まずにはいられない。…しかし、金の長髪にアロハな服装に手持ち花火って、ズェピアさんの格好も異彩が凄いな…。スク水で花火やってるわたし達も、相当なものだと思うけど……。

 

「…なんか、いいわよね。こういうのって」

「また、随分ふわっとした言い方ね、セイツ」

「実際、漠然とそう思ったんだもの。…皆はこういう経験、した事ある?」

「イリス、ない。セイツは、こういう場所に閉じ込められるのが初めてではない?」

「あ、いや、そういう意味じゃなくてね?」

 

 何ともイリスらしい誤解を解くべく否定するセイツさんに、わたし達は苦笑。…でも、こういう経験…か…。

 

「…わたしは、なかったと思います。こういう事への興味も、正直あまりありませんでしたし…」

「私も、昔ならあったけど…って感じね。花火っていうか、火薬ならしょっちゅう扱ってるけども」

「確かに、花火をする機会というのはあまりないものだからね。かく言うセイツ君はどうなのかな?」

「わたしもそんなところよ。…それに多分、貴女達が支えてる女神もそうなんじゃないかしら」

『それは…確かに』

 

 イヴさんと顔を見合わせ、それから頷く。わたしはあまり興味がないと答えたけど…多分ピーシェ様は、わたしと同じかそれ以上に興味がない。仮にあったとしても、自分からやろうだなんて言わないタイプ。そしてわたし達の反応を見たセイツさんは、肩を竦めて小さく笑う。

 

「うちもそうだけど、女神って自分では休んでたり、リフレッシュの時間を取ってるつもりでも、意外と根を詰めてる事が多いのよ。何せ女神は色々頑丈な分、自覚なく無理も出来ちゃうからね。でもそれって、本人は大丈夫でも、見てる側からすれば心配になるものでしょ?」

「…そうね。頑張りたい気持ちは分かるし、大変でも充実してるんだなっていうのは伝わってくるけど…うずめは元から無茶しがちなタイプだから、気に掛けてあげなきゃって思ってるわ」

「…だから、そういう時はこっちから声を掛けて、こういう事に誘うのよ。ただ休めって言っても中々聞いてくれないなら、自分がやりたい事に付き合ってほしい…ってね」

「…そうですね。ピーシェ様にリフレッシュしてもらうなら、セイツさんの言う通り自分から巻き込む形の方が良いような気がします。…いきなり花火に誘ったら、怪訝な顔をされるどころか、こっちの意図を見抜かれそうですけどね」

「その時はその時よ。でもきっとピーシェなら…それにイヴが支えてるうずめだって、仮に見抜かれたとしても、付き合ってくれると思うわ。そうして慮ってくれる、側にいる相手の気持ちを無碍にするなんて思えないもの」

 

 そこまで言ったところで、セイツさんの持っていたスパーク花火が消える。わたしのススキ花火も勢いが弱くなっていて…会話が途切れた空白の中、ズェピアさんが言う。

 

「では、君はどうかな?セイツ君」

「わたし?わたしは大丈夫よ。だって、現に今凄くリフレッシュ出来てるもの」

「…因みにそれは、花火で…かい?」

「ふっ、それは勿論…花火を見て、感動や静かな楽しさを感じている皆の心のおかげよ!」

 

 一体何を誇っているのか分からないけど、とにかく誇らしげに胸を張るセイツさん。…さっきまで良い事を言ってた気がするのに、締まらないなぁこの人はほんと……。

 

「…女神は、無理するもの?」

「あー…まあ、そうだね。皆が皆、同じようにって訳ではないだろうけど……」

「ブランやロムラム、ディールやエストも?」

「そう…かもしれないわね」

「じゃあイリスも誘う。休んでほしい時は花火、休んでほしい時は花火……」

「いやいやイリス君、花火でなくてはいけない訳ではないからね?あくまで案の一つという話だからね?」

 

 問いに答えたわたしとイヴさんの言葉を受け、しっかり覚えようとするイリスの様子に、ズェピアさんが若干困った顔をしながら突っ込む。そしてわたし達は苦笑をした後花火を続け…花火はどんどん減っていく。残りは僅かになっていく。

 

「…あ、これで手持ちの花火は最後ね…こうやって物悲しさを感じるのも、花火らしさの一つかしら…」

「花火は消耗品であり、短い間に強い輝きと感動を与えてくれるからこそ、終わりが悲しくなるのだろうね。しかし、安心し給え。実はもう、打ち上げ花火やロケット花火、それに張物仕掛け花火を準備済みだ」

「いつの間に…。…けど、助かるわ。だったらわたしも手伝うから、二人で一気に点けちゃうのはどう──」

「ふふ、既に即席の点火装置を作ってあるから、これ一つに火を点ければ後は順に点火していってくれるよ」

「ほんといつの間にそんな事やってたのよ!?相変わらず滅茶苦茶な手際の良さね!」

「…イヴさんも、所謂メカニックタイプですよね?そのイヴさんから見てズェピアさんは……」

「彼はもうジャンルが違うわ。だから、お願いだから比較はしないで」

「な、何かすみません……」

 

 すっ、と遠い目をしたイヴさんへの謝罪を経て、わたし達は地面に配置してあった花火を見易い位置へ移動。四人全員移動したところで、ズェピアさんが点火装置の端を持ち、火を点ける。火が点火装置…というかありもので作ったっぽい導火線を伝っていって、破裂音や高い音と共に次々と花火が空へと打ち上がる。

 

「これは、前に見た花火の小さいやつ?…小さくても、凄い」

「そうね、わたしもそう思うわ。火薬は使い方次第で兵器にも、こんな綺麗なものにもなる。刃物だって危険な武器から便利な道具にもなるんだから、ほんとどんなものも使い方次第よね」

 

 個人で出来る打ち上げ花火と、プロがやるものとを比較した場合、遠くで見たら雲泥の差だろうけど、近くで見ればイリスの言う通り、こっちだって十分凄く見える。ロケット花火も、飛んでいくさまに爽快感のようなものがある。

 そして一頻り飛んだところで、フィナーレの張物仕掛け花火が始まる。二つの物干し台の間に掛けられた紐、そこに括り付けられた花火のシャワーが順に降り注ぎ滝の様になる。これも綺麗。どれも綺麗。だけど長くは続かない、ひと時のものだからこそ…綺麗で、儚い。

 

「…いいわね、こういうのも」

『え?』

「いい、って言ったのよ。今はのんびり遊んでる場合じゃない…とは思うけど、もし今みたいな状況じゃなかったら、こんな時間を貴女達と過ごすのもいい、って思ったの」

「イリスもそう思う。イリス、流し素麺楽しかった。今も、楽しい…とは少し違う気がするけど、いい気持ち」

「そうね。わたしだって楽しいし…それに、今はのんびり遊んでる場合じゃ…なんて思わなくていいと思うわ。感情を、理性で抑える必要なんてない。感情のままに行動するのは危なかったり他人に迷惑を掛けたりする事になるけど…自分の内で秘めてる間なら、目一杯そのままに感じれば良いのよ」

 

 感情が大好きなセイツさんらしい言葉。それを口にしたセイツさんは、ちらりとわたし達の方も見る。貴女達は?…そんな視線を、送ってくる。

 

「…わたしも、楽しいって思います。こうやって、普段は接する事の出来ない皆さんと過ごす時間…っていうのも含めて」

「これも正に思い出、だね。こっそりと準備した物で皆が喜んでくれて、私も嬉しいよ。やはり私は、楽しむより楽しませる方が性に合っているのかもしれないな」

 

 全ての花火に火が点き、最後の感動を感じて、花火の勢いは少しずつ弱まっていく。そうして全て消えてしまえば、今度こそ花火は終了。残念ではあるけど、仕方ない。気持ちの部分は別としても、まだわたし達にはやるべき事があるのだから。先へ進む為に、その為の手掛かりを得なければいけないのだから。…と、思っていたんだけど……。

 

『……あれ?』

 

 一つ、また一つと消えていく仕掛け花火。けど、おかしい。端から一つずつ点火していった筈なのに、真ん中から両端へ向けて消えていく。カーテンが、或いは扉が開いていくように、外側へと広がっていく。

 

「…ズェピア、これは……」

「いや、これは私も意図したものでは……」

 

 尋ねるイヴさんに、ズェピアさんは困惑気味の声を発する。そしてそのまま、花火は奇妙な消え方で最後まで広がり……わたしは、気付く。消えた花火の、物干し台の向こう側にあった家の壁面が真っ二つに割れて、その奥に下への螺旋階段があった事に。

 

「…どういう、事……?」

「分かりません…分かりませんけど…何か、正解を引き当てられた…とか……?」

 

 ゆっくりと、イヴさんの言葉へ首を横に振る。本当に、さっぱり意味が分からない。ただ、見えている螺旋階段は確かにある。つまり…花火をする事が、道を開く条件だったって事…?

 

「だとしたら…イヴとズェピアのお手柄ね。これは気になるものをって提案したズェピアと、花火を見つけて持ってきたイヴがあっての事だし」

「恐縮だよ、セイツ君。…だが、どうだろうね」

「どう?どうとは、どうという事?」

「花火をする事が条件…確かに一見そうだが、これでは完全に運次第、ただ花火を見つけてやる気になるかどうかという話になってしまうだろう?もし端から脱出させる気がないのなら、道を開く方法なんて用意する必要はないし、逆に突破させる意図…それこそ謎解きゲームの様な事をしたかったのなら、もっとちゃんと推理をして花火に辿り着けるヒントを仕込む筈。偶々や当てずっぽうで答えを得る脚本など、デウス・エクス・マキナ以上に興醒めなのだから」

「確かに、ヒントっぽいヒントはなかったわよね…となると、どういう事なのかしら……」

 

 腕を組み、首を傾げるセイツさん。イヴさんも、同じように考え込むような表情に変わる。

 言われてみれば本当に変。一体どういう事なのか気になる、凄く気になる。でも……

 

「…それは、後にしませんか?それか、移動しながら考えるでもいいですし」

「…そうね、言われてみればその通りだわ。もしかしたら、皆は私達よりずっと先に進んでるかもしれないし」

 

 疑問について、考えるのも大事。だけど、目の前に進む道があるなら、本来の目的の為に動く事も大切。…べ、別に難しい話で頭が回りそうになかったから、流れを逸らしたとかではないですよ…?

 ともかく道は開いた。進む事は出来る。だから、わたし達は階段を降り、塔の下層へと向かっていく。…けど…そういえば、花火は砂浜でやるイメージもある。この場にあった物は使い切ってしまったけど…もし出来るのなら、ディールさんやエストさんに錬金してもらって、またピーシェ様や皆とやるのも良いかもしれない。そうすれば、今度こそ…純粋に楽しめる、そういう思い出になる気がするから。

 

 

 

 

 四つのチームに分かれたイリゼ達は、それぞれが障害を突破し、塔を下へ、降りていく形で踏破していった。そして、螺旋階段を下りきった先……そこにあったのは、最初に侵入した大広間以上の広さを持つ、広大な地下空間であった。

 

「ふー、到着〜。いやぁ、疲れたねぇ」

「確かに驚きの長さでしたね…これ、殆ど塔の中は階段だけだったのでは…?」

 

 階段から硬い床へと足を下ろし、吐息を漏らしたのは茜。彼女の言葉に、最後まで軽快な足取りで降りてきたピーシェが答える。そんな二人に続いて、ディールと愛月も螺旋階段を下りきる。

 

「もー、遅いわよディーちゃん。待ちくたびれちゃったんだから」

「あ、エスちゃん…っていうか、もしかしてわたし達が最後…?」

「もしかしなくても、ディールちゃん達が最後だね。でも、良かった。全員無事に、ここまで辿り着けて」

 

 ぐるりと見回すディールへ、イリゼが言う。その言葉通り、地下空間には四チームの全員がいた。そしてそれは即ち、どのチームも塔の踏破に成功したという事であった。

 

「ちょっとちょっとエストちゃん、待ちくたびれたって言うけど、エストちゃん達より自分達の方が先に来てたんだからね?」

「タイミング的には、わたし達より少しだけ早かった…って感じでしたね。まあ、機体に乗ったワイトさんよりはわたしの方が先に階段を降りてましたけど」

「いやぁ、高速で螺旋階段を駆け降りてウチ等の最後尾にいたワイトよりタッチの差で先に降りたビッキィの姿と、それを何も気にせず普通に降りてきたワイトの比較は見物だったッスねぇ」

「えぇ…?ビッキィ、そんなグレイブみたいな事してたの…?」

 

 困惑気味に言った愛月の言葉に、ビッキィはゆっくりと目を逸らす。その分かり易い反応に、周囲の面々は苦笑を漏らす。そうして一同は、地下空間の中央に集まり…ズェピアが、口を開く。

 

「しかし、まさか四つの塔が全てここに繋がっていたとはね」

「もしかしてこれ、わざわざ四つのチームに分かれる必要も、同時に攻略する必要もなかったのかしら……」

「現状だと、その可能性は否めないね…。…一先ず、ディール様達がここに至るまでの経緯を教えて頂けますか?我々もお話しますので」

 

 イヴの言葉に軽く肩を竦めたワイトは、そこから情報共有の為に、とディール達四人へ言う。既に他の三チームは経緯について共有済みであった為、ディール達が話し、それを聞いたワイトが各チームの事を簡単に説明をし…四つの塔で起こった事全てが明かされた事で、何人かが思案の表情を浮かべる。

 

「コンサート会場、縁日、プール、古い民家…見事にバラバラだな。内容に関しても、関連性があるとは思えん」

「これといって、戦いらしい戦いも特になかったのよね。まあ、それ自体は悪い事じゃないんだけど、何とも拍子抜けっていうか……」

「…ここから先は?ここが、ゴール?」

 

 多くの者が予想していたのは、セイツが言うように塔内部での戦闘。しかし戦闘は勿論、敵と呼ぶべき存在もこれといってなかった。

 加えてイリスが言及した疑問もある。この地下空間には、それぞれが降りてきた階段以外何もない。扉も、先に進む道も、何一つとしてなく…一見すれば、行き止まりにしか思えない。されど行き止まりとしては、あまりにこの空間は広い。

 

(ここにも何か、先に進む為の条件があるって事?でも、ここは……)

 

 腕を組み、イリゼは考える。イリゼ達やセイツ達が突入した塔の様に、初めは扉や階段の存在が視認出来なかった場所もあったが、今回はそれどころか本当に何もない。これでは、何かを試す事もままならない。そんな行き詰まりのような状況を前に、思考の時間が続き…そんな中で、おずおずと声を上げたのはルナ。

 

「あ、あのー…イリゼ?」

「うん?どうしたの、ルナ」

「凄く、凄く言い辛い事なんだけど、ね?……その、イリゼ…縮んでない…?」

「へ?……あ"っ」

 

 小首を傾げるイリゼに対し、ルナはその視線をすっと下げる。少しだけ、顔から胸元へと僅かばかり角度を変える。その視線の変化にきょとんとしていたイリゼだったが……次の瞬間、ルナの言わんとする事に気付き、イリゼの顔はかぁっと赤くなる。直後にばっと駆け出すと、四つある階段の内一つの裏手側へと勢い良く飛び込み……少ししたところで、どすどすという音が鳴りそうな歩みで以って戻ってきた。──妙に平坦寄りとなっていた胸元が、本来のボリュームを取り戻した状態で。

 

「ふんっ。これ返すからね、影君!」

「サラシ…?…あ、それ巻いてただけって事!?よ、良かったぁ……」

「良かったって…また変な心配してるのね、ルナは…。…っていうか、なんでおねーさんはサラシなんて巻いてた訳…?」

「…ノーコメントで」

「んー…まあ、イリゼの為に細かい事は黙っておくけど、必要な事だったんだよね。後、自分とエリナちゃんの中で、影君の好感度は下がったよね」

「えぇ、まあ正直そうですね」

「あー…うん、なんとなく分かったかも…うちのえー君がごめんね、ぜーちゃん……」

 

 無言で影は目を逸らし、茜がイリゼに謝罪をする。それぞれの様子から、並々ならぬ事があったのだろうと他の面々は想像したが…追求する者は、誰もいなかった。

 

「…けど、ほんとよく訊いたわねルナ。姉のわたしだって訊くタイミングを計りかねてたっていうか、スク水のせいで縮んでるように見えるだけじゃ?…って思ってた位なのに……」

「ルナはちょっと、思考が独特な部分があるッスからねぇ。しっかしまさかサラシを巻いて、胸を小さく見せていただけとは思わなかったッス。……ちっ」

「ちょっと!?今舌打ちしなかった!?」

 

 聞こえるか聞こえないかの微妙な音量で発された舌打ちにイリゼは突っ込むも、当のアイは素知らぬ顔。その割とよく見るような光景に、再びちらほらと苦笑が漏れ、空気が緩んだ……その時。

 

「…うん?…あんな光、最初からありましたっけ?」

 

 怪訝そうなピーシェの声。それと共にピーシェが指差した先にあるのは、螺旋階段の為に空いている天井部分周辺に灯った、赤い光。それは四つの階段全ての部分にあり…全員が見つめる中、赤い光は波紋の様に天井へ広がる。同時に広がった光は、天井の中央でぶつかり重なり……次の瞬間、そこから生まれ落ちるように光は巨大な火球へと変わる。

 

『……ッ!』

 

 何かは分からない。だが、普通ではない。全員が直感的にそう感じ、それぞれの思考が臨戦態勢へと切り替わる。全員が警戒する中、或いは武器を構える中、火球は膨張し…爆ぜる。炎を、多量の火の粉を撒き散らしながら大きく広がり…中から『それ』が、現れた。

 

「こ、これは……」

「な、なんかちょっと生理的に嫌な気配が……」

 

 ディールとセイツ、それぞれの呟きが漏れる。周囲に散った火の粉は、宙で、或いは床に触れて消える。

 炎を纏った薄く巨大な羽と、腕にも脚にも見える複数の部位。黒い甲殻に覆われた、細長い体躯。生物然としたそれは、ゆっくりと頭部をイリゼ達がいる方向へと動かし……直後、猛烈な勢いの火炎を噴き出す。

 

「うわぁ!?」

「避けるわよイリスちゃん!」

 

 放射状に広がる火炎を前に、イリゼ達は左右へ分かれる形で回避。戦闘慣れしている面々は勿論、愛月も悲鳴を上げつつもしっかりと退避の為に動いており、イリスもエストが手を掴んで跳んだ事により、間一髪ながらも炎を回避。

 

「やっぱり敵だったのね…!なら差し詰め、ここのボスってところかしら…!」

「恐らくイヴの言う通りだろうな。ちっ、巨体の割に速い…!」

 

 反撃として射撃や魔法、魔術に忍術が放たれるが、その存在は素早い動きで次々と交わす。続けて火球を撃ち返し、イリゼ達は再び回避を強いられる。

 まだ、戦闘開始直後。殆ど手札は使っていない状況であり、逆に相手の特徴もまだ表層部分しか見えていない状態。しかしそれでも、イリゼ達女神は感じていた。これは、このままではやり合えないと。出し惜しみをして勝てる相手ではないと。

 

「──皆!女神化、いける!?」

『当然!』

 

 であれば、女神化をする他ない。呼び掛けたイリゼも、答えたセイツ達も、全員が即座にその判断を下し……次の瞬間、回避の為に跳びつつ女神化。女神達の姿が、シェアエナジーの光に包まれ、人の姿から女神の姿へと変貌する。そして、全力を出せる姿となったイリゼ達は素足で着地し、突撃するべく再度床を蹴……

 

『って、スク水姿のままになってるぅ!?』

 

……ろうとしたところで、愕然とした。確かに身体は、女神としてのそれになっている。漲る力も、間違いなく女神のもの。しかし依然として、その装いはスク水のままであり…しかも胸元の名前は、ご丁寧に女神としての名へと変わっていた。

 

「ぷ、プロセッサまでスク水に変えてくるなんて、ほんとに一体どうなってるのよ!?」

「しかも飛ぶ相手が敵だってのに、よりによって翼が出てこねーとはな…!」

 

 全員の思いを代弁するようなセイツの言葉に続いて、アイが腹立たしげな声を発する。身体能力そのものは格段に向上しているが、それでも飛行能力が失われているというのは彼女達にとって大きな痛手であり…更に問題を抱えていたのは、女神達だけではない。

 

「…ゆりちゃん?もしかして……」

「バトルスーツが展開出来ないわ。その様子だと、茜もあの鎧を纏えないみたいね」

「どうやら姿が今の格好から変わるものは、一切合切が不可能なようだな。それでもイリゼ達の女神化そのものが封じられてないのは、不幸中の幸いと言ったところか…!」

 

 茜、影、イヴ…装備を纏う事で本領発揮となる三人も、今はその姿が変わらないまま。こうなると、約半数の面々が戦闘能力に少なからず支障が出てしまっている状態。

 しかしだからといって、相手が待ってくれる訳もなければ、攻撃の手を緩めてくれる理由もない。全力が出せずとも、動きに制限が掛かろうとも…敵は、戦いは、そこにあるのだから。

 

「嫌な予想外ね…だけど力を合わせれば、きっと今出来ない事以上の事が出来るわ!だから皆、頑張るわよ!」

『(応・えぇ・うん・はい・ああ)ッ!』

 

 大太刀を振るい、ネプテューヌが見得を切る。それに全員が、力強い声で応じる。

 そう。思い通りにはいかずとも、戦えない訳ではない。そして、自身や仲間が本来の戦いを出来ないというだけで心が折れる程、この場にいる面々の心は弱くなく…それぞれが思う、本当に必要な『強さ』は、誰からも失われていない。

 だからこそ現状を受け入れ、イリゼ達は巨大な存在に立ち向かう。塔を進み辿り着いた先、全員が合流した地下空間…そこに現れた謎の存在との戦いは、既に幕を開けている。




今回のパロディ解説

・「〜〜某トリオ〜〜」
お笑いトリオ、ダチョウ倶楽部の事。どうぞどうぞといえば誰もが知るレベルのギャグ。因みにダチョウ倶楽部って、元々はカルテット(四人グループ)だったんですよね。

・「…個人用携帯端末?」
東亰ザナドゥに登場するアイテムの一つ、サイフォンの事。あまりコーヒーを飲まない私にとって、サイフォンといえばこちらが先に思い浮かびます。そしてこれ、東ザナちゃんは実際持ってるかもですね。

・「ひたすら直進〜〜進化した?」
ポケモンシリーズに登場するポケモンの一匹、マッスグマの事。今回は愛月のいない場という事で、パロネタとしました。…マッスグマ、旅パに加えた事もあるんですよね。懐かしいです。




 コラボの途中、それもこれから山場!…というシーンですが、次話はコラボではなく、ある話を投稿しようと思います。一話完結で、その次はコラボに戻りますので、ご了承下さい。
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