超次元ゲイムネプテューヌ Origins Transition 作:シモツキ
その存在が観測され、先行調査の為の先行調査…まともに活動する事が出来るか、最低限の安全性はあるかを確かめる為の調査として、わたしとイリゼはこの次元へと訪れた。訪れ、探索する中で、これまでわたしが…というよりイリゼが出会い、関わってきた色んな次元や世界の皆と再会する事となった。皆もこの次元に訪れていた。
砂浜へ、森へと歩き回った末、わたし達は休憩に、拠点に活用出来るという場所へ。全員で歩いて、一名は機体の脚部で移動して、案内された場所へと到着。そこで腰を下ろし…今に至る。
「ははぁ…つまり貴女とカイトは同僚な訳ね、エリナ」
テーブルを挟んだ向かい側へと座る女性…カイトの名前に反応して姿を現した茶髪の女の子、エリナの語った話に言葉を返す。
この場所に着くまでの道中で、概ねエリナの話を、彼女が何者で、どうしてカイトの事を知っていたのかを聞かせてもらった。カイトと同じ、彼女の次元におけるプラネテューヌの特命隊の第四班所属…つまりエリナとカイトの関係は、直接の仲間って事。
「そっかぁ…自分的には、プラネテューヌ特命隊よりネプテューヌ親衛隊の方が良いと思うんだよね」
「あ、同感です。凄く同感です」
「え、そう?…ど、どうしよう…ボケで言ったつもりなのに、真顔で同意されちゃったよビッキィ…」
「どうしようって…そんなのわたしに聞かないで下さい……」
彼女の隣に座るネプテューヌ…というより、ネプテューヌの隣へ座ったエリナは、同感だと言い力強く首肯。
思い返せば、エリナはカイトの名前と共に、ネプテューヌの存在にも触れていた。ただ、これについてはそこまで驚きじゃない。何せネプテューヌは複数の次元に存在している以上、エリナが知っている…即ち、エリナの次元にもネプテューヌがいたんだとしても、そこにおかしいと思う要素はないから。
「ふむ…わざわざ訊くまでもない事だろうが、念の為確認させてくれないかな?この中で、エリナ君と面識がある者は?」
「…それ、本当に訊く必要ない事では…?今の今まで面識あるのにわざと黙ってた…なんて事するような性格の悪い人は、少なくともこの中にはいないと思いますし……」
「いや、前に会った時とエリナの外見が大きく変わっている、一応会った事はあるがその時は一瞬だった為自分の記憶に自信が持てない…この辺りの理由で声を上げるのを躊躇っていた、という事ならあり得るだろう。…確認したのは、エリナが『例外』かどうか確かめる為だな?」
「流石影君、理解が早い。…なに、少し気になってね。もしエリナ君が誰かしらと面識があるなら、現状ここにいる面々には『知り合い』という共通項が生まれる。まあ、結果そうではなかったようだがね」
怪訝な顔でルナが言葉を返せば、意図を理解した様子の影が問い、ズェピアが頷く。…前も思ったけど、この二人だけちょっと見えてるものが違う気がするのよね。なんかいつも、数手先が見えてそうっていうか…。
「…こほん。ともかく貴女の事は分かったわ。ありがとう、話してくれて」
「気にしないで。私としても、パープルハート様やカイトの事を知っている貴女達に会えて良かったもの」
「だったら次は、自己紹介ッスね。エリナにだけ自分の事を話させて、ウチ等はだんまりじゃフェアじゃないッスし」
「…なら、私から良いかしら?」
それは確かに、とわたし達はアイの言葉に首肯する。アンフェアっていうのもそうだけど、エリナからすれば、ネプテューヌを除いてここには分かる相手が誰もいない状況だし、そのネプテューヌだって、彼女の知ってるネプテューヌじゃない。となれば当然、心細い筈で…それを解消する為の、知り合う為の第一歩は自己紹介。
そして初めに名乗り出たのはイヴ。こういう時イヴが名乗り出るタイプだとは思っていなかったから、少し意外だったけど…考えてみれば、前に皆が信次元に来た時は、それこそイヴが今のエリナと近い状況だった。だからその時の事を思い出して、エリナに親身になろうとしている…のかもしれない。
そうしてイヴを皮切りに、わたし達は自己紹介をしていく。人数が人数だし、と伝える情報は少なめに留めて、取り敢えず名前を知ってもらう。
(しかし、結構落ち着いているわね…)
一人一人の自己紹介をしっかりと聞くエリナの様子に、少しわたしは感心する。一応カイトの事を知っている者同士という前提はあるとはいえ、こんな状況じゃエリナは心細い筈。でもエリナは姿を現した当初こそ動揺や困惑を見せていたけど、今は一見普通。少なくとも、普通に見える位の状態ではある。多分それは、彼女がただの女の子じゃない…それなりに色んな経験を積んできているからこそのもので…そうわたしが感心している間に、全員の自己紹介が終わる。
「これで一周したわよね。いきなり十人以上の名前を聞いた形になる訳だけど、覚えられそう?」
「えぇと…大丈夫だと思います、レジストハート…?…様」
「うん?…あ、そういえばネプテューヌに関しては、最初から敬語だったわね」
口調が変わった?と一瞬気になったわたしだけど、そういえばネプテューヌ…女神に対しては、元から敬語で話していた。そしてわたしも自己紹介の中で、女神である事や、女神としての名前を伝えたんだから、エリナからの接し方が分かるのは特におかしな事じゃない。…けども、フレンドリーな口調から敬語に変わるっていうのは、少し残念ね…。
「エリナ、困ったらイリスに訊くといい。イリスは皆の名前、しっかり覚えている」
「ふふ、ありがとう。もし分からなくなったら、頼らせてもらうわ」
「優しいね、イリスちゃん」
無表情のまま、気遣いとも取れる言葉をイリスちゃんは口にする。その言葉にエリナは微笑み、同じく笑ったルナはイリスちゃんの頭を軽く撫でる。二人共イリスちゃんにほっこりしているようで…そんな二人の感情に、わたしもほっこり。うんうん、刺激的な感情の揺らめきも良いけど、こういう柔らかさを感じる感情もまた素敵ってものだわ。
「さて、次はどうしますか?自己紹介をしたとはいえ、まだ分からない事も多いと思いますし、エリナさんから質問を受ける時間にでも?」
「あ、それいいかも。さっすがピーシェ、僕もそれに賛成……」
「待った。その前に…皆でご飯の時間にしない?」
今度はこっちから伝えるんじゃなく、エリナから話してほしい事を受け付けよう。そんな流れになったところで、待ったを掛けたのはイリゼ。その手にあるのは、大きな皿。
「お待たせ〜!私とぜーちゃん特製の冷やし中華、かんせーだよっ!」
「わたしとディーちゃんで簡単に副菜も作ってみたわ」
「良かったら食べて下さい。冷やし中華の方も沢山作ってるみたいなので、もし食べられそうなら…で良いですけど」
奥から来たイリゼに続いて、茜にディールちゃんにエストちゃん…この場にいなかった、お料理出来る組の面々がやってくる。
「おー、これはまた美味しそうッスね」
「いいえ、違いますよアイさん。わたしには分かります。これは美味しそうではなく…美味しいと」
謎の確信と共に、ビッキィが言う。あまりにも自信満々に、しかも早く食べたいとばかりの表情で言うものだから、わたし達は思わず苦笑をし…けど今度は、ワイトが口を挟む。
「あの、皆様…完成してから言うのはあまりにも遅いかとは思いますが…使用した食材は、消費期限や傷み的に大丈夫なのですか…?」
「その心配はないわ。だって食材は調理前に一通り、わたしにイリゼ、アイにネプテューヌにビッキィの五人体制で毒味しておいたから」
「い、いや、その方が更に不味いと言いますか…皆様に万が一の事があってはいけませんし、そういう時は私が……」
「分かってないわねワイトは。万が一に備えるからこそ、万が一の事があっても多分何とかなるおねーさん達に毒味をしてもらったのよ」
そうそう、とわたし達は揃って首肯。そして言われたワイトはといえば…なんというか、何とも言い難そうな顔をしていた。…こういう時は否定してくれるか、突っ込みでも入れてくれた方が気持ちとして楽だったんだけど…し、仕方ないわね、うん。
まあ、それはともかく運ばれてきたのは、既に汁のかかった麺と、それぞれの好みで載せてね、という事らしい、トッピングの数々。錦糸卵にゆで卵、ハムにチャーシュー、きゅうりにトマト。人数が人数だからか、誰も沢山用意されていて、ディールちゃんとエストちゃんが作ってくれた炒め物も美味しそう。
「こほん。それじゃあ皆…」
『召し上がれ♪』
料理をしてくれた四人が、ぱちんとウインク(ディールちゃんだけは恥ずかしそうにしていた。可愛い)。わたし達は各々でトッピングを載せ、食事の挨拶。箸を持ち、麺を啜り…咀嚼。
「…うん、ビッキィの言う通りね。これは、美味しいわ」
「うん、同感だよ。私が入っては邪魔になると思って今回の調理は辞退したが…その判断は正解だったようだ。だがその分、片付けの方は任せてもらえるかな?」
「でもほんと、助かっちゃいましたよね。こんな所にお店があったんですから」
そう。わたし達が訪れた場所、ルナ達が見つけて案内してくれたのは、砂浜に立つお店だった。それもただの飲食店というだけじゃなく、シャワー室や休憩スペースなんかもある、レジャー客を想定したような施設。しかも冷蔵庫や倉庫には、それなり食材もあったみたいで…確かにここなら、拠点として活躍するのにもばっちりというもの。
「これは美味しい。とても美味しい。…けどイリス、気になる事がある。冷たい料理だから、冷やしの部分は分かる。けどその後の部分は……」
「それはね、んー…まあなんて言うか、ある地域の名前とか、ジャンル名みたいなものだよ。けどこれ以上掘り下げると色々面倒な事になっちゃうから、そういうものだって納得しなきゃ駄目だよイリスちゃん!」
「…言われてみると確かに、イリスの中の賢いイリスも、これ以上触れるべきではないと言っている。だから、納得する事にする」
「…にしても、勝手に使って良かったのかしら…というか、こんな施設があるって事は、ここは有人島って事…?その割には、私達以外の姿は誰も見当たらなかったけど……」
「その辺りは、後で調べてみるべきだろうな。軽く見てみたが、大して使われた形跡がないにも関わらず、ここはテーブルもカウンターも殆ど埃を被っていなかった上、電力の供給源も何故か見つからない。…勝手に使った事については…まぁ問題になったらなったで、女神の面々に平謝りしてもらえば何とかなるだろ」
『えぇぇ……』
暑い中食べるにはぴったりな、さっぱりした味付けの冷やし中華。それを食べつつイリスちゃんとネプテューヌが反応に困るやり取りをしたかと思えば、イヴと影の義手コンビが真面目な表情で言葉を交わし合い…もしもの時はわたし達に謝らせよう、というスタンスに女神総出で半眼を向ける。
「…こほん。そろそろ中断していた話を再開してもいいのでは?後イリゼさん。特に理由はありませんがわさびをどうぞ」
「辛いの要らないよ!?」
「じゃあわたしも、わさびをチューブごと差し上げますね」
「だから要らないよ!?わ、私辛いの苦手だって……」
「ならウチも、わさび田をプレゼントするッス!」
「栽培地諸共!?それは最早どういう事!?エディンの土地をちょっとくれるの!?」
「イリゼさん、叫んでないでエリナさんの質問に答える時間にしませんか?」
「こうなった発端はピーシェなんですけどぉッ!?」
神次元組三人による、イリゼへのわさび弄り。同じく神次元の女神であるわたしとしては、是非追従したいところだったけど、乗るより先にピーシェに閉められてしまった。残念。
とはいえ、会話は食事中の方がリラックス出来て弾んだりするもの。エリナもそういう空気の方が訊き易いだろうし、ピーシェの判断は良いと思う。そしてわたし達が視線を向ければ、エリナは一度箸を置き、皆を見回すようにしてから言う。
「質問…というか、気になっていた事なんですが…女神様や皆さんは、一体どうやってここに…?」
「あ…っと、そうね。それはわたしも訊きたかった事よ。わたしとイリゼはこの次元の調査の為に、イストワールに扉を開いてもらって来たんだけど…まさか皆も同じ、って事はないでしょ?」
皆は一体どのようにしてここへ来たか。前の時はわたし達が招待した訳だけど、当然今回は違うし、これはわたし達としても確認をしておきたいところ。
「わたし達は、セイツさん達と似たようなものです。グリモ…グリモワールも、ここを気掛かりな次元として観測しまして…」
「観測…という程ではないが、意図して訪れたという意味では私もかな。少し、娘に世界の境界同時を繋げて…いや、破いて?…もらってね」
「へ?ズェピアさんに、そんな娘さんがいるんです…?」
「そういえば話していなかったね。血縁こそないものの、彼女の義理の妹含めて大切な家族さ」
「……!感じる、感じるわ…穏やかだけど深い、家族愛に満ちたズェピアの思いを……!」
一分も汚れのない、家族への愛情。全く構えていなかったところへのどストレートな思いはわたしの心へ食い込むように直撃し、思わず席から立ち上がる。いきなりなんだ、とエリナにはぎょっとされたけど、むしろその驚きの感情も良し。くっ…この話を掘り下げたい、掘り下げたいけど…流石に今は自重しないと……。
「皆凄いねぇ。私とえー君なんて、偶々次元の歪みを発見したから、何か面倒事が起きる前に対処しようって入っただけだよ?」
「お、それならウチ等と同じッスね。いやまさか、珍しくイヴが一人で遊びに来たタイミングでこんな事が起こるとは…メカニックなだけあって、イヴはトラブルメーカーの素養もあるんじゃないッスか?」
「要らないわよそんな素養…念の為ってヤマト達へ連絡は入れておいたとはいえ、さっさと入っていっちゃうアイの方がずっとその素養あるわよ絶対」
「でも、迷わず行けよ、行けば分かるさって言ってたじゃないッスか、イヴ木は」
「言ってないけど…!?自分だって軽くもじればアイトニオとかになるのに、よく言ったわね…!」
よく分からない弄りをした挙句、はっはっはと笑うアイ。話は変な方向に行ってしまったけど、どうやらどこの次元でも、自分達で扉を開いた…って訳じゃないらしい。
「うーん、皆しっかりしてるんだね。自分は不思議な穴?…を見つけて、その先に楽しい出会いと再会がありそうな気がしたから、えいやって飛び込んだんだけど…これは黙っておいた方がいいかな」
「全部喋っちゃってるよネプテューヌ…というか、次元の扉に対する嗅覚凄まじいね…私ももう何度も経験してるけど、そんな直感一度も効いた事ないよ……」
「あはは…じゃあ、『これって別次元への穴…みたいなやつじゃない?え、どうしよう?取り敢えず外見から分かる事を調べるだけ調べて後は報告をしに戻っ…うわぁ躓いた!嘘でしょ!?』…って感じで入っちゃった私も、恥ずかしいから黙っていた方がいいよね……」
「それはもう、思考ダダ漏れが過ぎるよルナ…。…まあ、でも…それで言うと私達は、事故…としか言いようがないよね…•」
「そう言うしかないですね…まさか部屋の扉を開いたら、丁度そこに次元の扉まで開いていただなんて……」
ギャグなのか素なのか分からないネプテューヌとルナの発言(とイリゼの突っ込み)を経て、顔を見合わせたピーシェとビッキィが肩を落とす。流石にそれは不運過ぎるというか、回避が困難過ぎてわたし達も揃って苦笑。…でもこれ、確率の話だけで言うなら脱衣所からお風呂に繋がる扉に並ぶ形で開いてて…って事もあり得る訳よね…。さぁお風呂に入ろうと思ってて、全裸になった状態で浴室に入ったつもりが別次元だった…なんて事があったら、ピンチ過ぎて洒落にならないわ…。
「イリスもそう。イリスも、前に見たのと似てる、次元の扉…?…見たいなもの、見つけた。…ので、入ってみた。でも、大丈夫。今回はレポートを書いてから入った為、もしもの時は電源を切れば……」
『それはゲームの中限定の話だよ!?』
「……困った、イリスまた怒られる…」
「ま、まあ誤解故なら、そちらのブラン様も許してくれる…んじゃないかな。…こほん。私の場合は、機体の一部が穴に飲み込まれてやむなく…といったところですね。…実験機がシグナルロストしたという事で、こちらも大分騒ぎになっているのではないかと思うと、正直気が重いです……」
「わ、ワイトさんも大変だね…。…僕は…うーん、グレイブから代わりに調べてくるよう言われた…って感じかな」
「あ…そうだよ、グレイブ君は今回一緒じゃないの?何かあったの?」
無表情でイリスちゃんが、そこはかとなく哀愁を感じる雰囲気でワイトが落ち込む中、愛月君の言葉にイリゼが反応。同じくわたしも気になって視線を向ける中、愛月君はこくりと頷く。
「うん。何かあったっていうか…グレイブ、チャンピオンなのに普段は仕事を放り出してあっちこっち行ってるからさ。でも今回は、遂に逃げられなくなって……」
「…子供が仕事に追われる、か…ああでも、そっちのトレーナー…は、大人の扱いなんだっけ?」
「あ、大丈夫だよピーシェ。仕事って言ってもインタビューに答えるとか、チャンピオンとしてイベントに参加するとかだから。それに、仕事が大変なら、チャンピオンの座を返上してもいいって言われてるんだよ?それなのにグレイブ、負けてもいないのに返上なんか出来るかー!…って言うものだから…ね……」
『あー』
言いそうだ、いやグレイブだったら絶対言う。…彼の事を知っているエリナ以外の全員が揃って納得の声を上げ、でしょ?と愛月君は肩を竦める。
ともかくこれで、前に皆で集まった時の面々の内、この場にいない二人の一方が今どうしているかは分かった。そうなれば当然、もう一人…カイトの方も、気になるというもの。
「ね、エリナ。貴女はどうしてここに?」
「私はある調査任務の途中だったんです。第四班で動いていて、その最中に奇妙なもの…多分、皆さんの言う次元の扉だと思いますけど…を見つけて、調べてみようと思ったら、という感じで……」
「第四班…確か、カイトも同じ班だと言っていたな。…もし、次元の扉がランダムに開いているんじゃなく、『人』がトリガーになっているのたとしたら……」
「本来は…って言い方も変だけど、カイトがトリガーになっていた扉に、エリナが入っちゃった…って事なのかもね。まあ、ただの想像だけど」
「…もし、そうだとしたら…カイトには悪い事をしたわね…」
『悪い事?』
「はい。カイトなら、折角また皆と会えるチャンスだったのに…って残念がるでしょうから」
自信があるかのように言うエリナに、推測を口にした影やエストちゃんは勿論、わたし達も揃って苦笑。うん、確かに彼ならそう思うでしょうね。熱い熱い戦いを交わして、デートまでしたわたしがそう感じるんだもの、間違いないわ。
「…けど、本当に驚きです。私もカイトから皆さんの事…というより、別次元での経験の事は前に何かの機会で軽く聞いてましたし、別次元や、違う次元の同一人物の存在も、全く心当たりがない訳ではないんですけど…なんというか、まだ飲み込みきれてない部分が多くて……」
「大丈夫ですよっ、エリナさん。私も初めて経験した時は、何から何まで訳が分かりませんでしたから」
「ルナの言う通りッス。人は誰しも、次元移動を繰り返して大人になるもんッスよ」
「いや、普通の人は次元移動なんて一生経験しないでしょう…」
ご尤もなビッキィの突っ込みを受けて、あちゃーとアイは頭を押さえる。そのやり取りを見て、エリナは小さくだけど口元を緩める。…やっぱり彼女は、不安がない…って事は恐らくないにしても、心に多少の余裕は持てている様子。それなら良い。それなら安心出来るし、仮に不安に苛まれる事があったとしても、その時はわたし達が支えるまで。
「あ、ところでエリナちゃん。自分…っていうか『ネプテューヌ』を知ってたって事は、エリナちゃんの次元にも自分がいるんだよね?」
「それは勿論。偉大な女神パープルハート様として、多くの者から羨望の眼差しを向けられています」
「いやぁ、照れるなぁ。けどそっかぁ、自分は割と色んな次元にいるのかぁ…イリゼ達みたいなオンリーワンじゃない事を残念がるべきか、それとも色んな次元に愛されてる事へ胸を張るべきか、迷うなぁ。エリナちゃんはどっちが良いと思う?」
「断然後者で」
色んな次元にいる=愛されてるという思考は少々飛躍し過ぎじゃないのか、そこを指摘せずエリナは即答するのか、と幾つか突っ込みたくなる部分のあった、二人の会話。…初手でネプテューヌの隣を取っていた辺り、エリナってネプテューヌの信仰者なのかしらね。
と、食事をしつつの話は(それが目的ではないけど)結構盛り上がった。わたし達はしっかり休めたし、これだけの面子がいる訳だから、料理担当をしてくれた四人がこの後休んでくれても問題ない筈。…と、そう思っていた時。
「あ……イリゼ」
「うん。時間みたいだね」
不意に懐で振動を始めた私の携帯端末。それは、予め設定しておいたアラームのバイブレーション。同じタイミングで設定していたイリゼとわたしは頷き合い…用意しておいた機材を設置。皆が小首を傾げる中、手早く機材を置き、起動させ…数分後、イリゼの端末に着信が入る。それにイリゼが応答し…スピーカーモードになった端末から、声が聞こえてくる。
「イリゼさん、セイツさん、お疲れ様です。そちらの調子は如何ですか?(´・∀・`)」
「イストワールの声?久し振り、イストワール。イリスの調子は上々、今日も元気」
「ああ、イリスさんお久し振りです。……え、イリスさん…?(・・?)」
「おおっと、自分を忘れてもらっちゃ困るよいーすん!」
「ワイトの事も忘れてもらっちゃ困るッスよイストワール!」
「え、何故そこで私を…?」
「…これは、ひょっとして……( ̄◇ ̄;)」
通話を受けたイリゼ…より先に、ぴくっと肩を震わせたイリスちゃんが反応。続けてネプテューヌとアイも反応し、イストワールは困惑気味声を出す。けどその声は、全く訳が分からないというより、ある程度の予想が付いているといった様子。
だからわたしはイストワールにここまでの経緯を説明。その間にイリゼも、連絡を取れるように準備をしておいた事やその為の機材の事、更にエリナにはもっと根本的な部分まで、色々と話していく。
「そういう事でしたか…実は幻次元のグリモワールさんから連絡がありまして、そちらにディールさんとエストも行っている事は知っていましたが…まさか、ここまで様々な次元や世界と繋がっていたとは…( ̄▽ ̄;)」
「へぇ、グリモはそっちに連絡を取ってたのね。って事は、この次元についてももうある程度調べてるのかしら…」
「…信次元と二人の次元って、貴女達以外にも交流があるの?」
「ううん。一応女神の皆なんかは次元間交信で顔合わせをしてたりもするけど、基本的には私達とイストワールさん、それにそっちのグリモワール位のもので…ただでも、信次元と幻次元は、ご近所さんみたいなものらしいんだよね?ディールちゃん」
「みたいですね。次元に近所も何もないでしょう、とは思いますけど…」
疑問を口にしたイヴに、イリゼが答える。更に話を振られたディールちゃんは、軽く肩を竦める。ディールちゃんの言う通り、次元同士を物理的に測る事は出来ない、そもそも距離という考えを当て嵌める事自体がナンセンスな訳だけど、その上で概念レベルで敢えて言うのなら、うちと幻次元は割と近い…謂わば、ご近所次元であるらしい。近いから、イリゼが初めて出会った別次元の相手がディールちゃんになったのか、ディールちゃんやエストちゃんと、幻次元との交流が繰り返された事で次元同士も近くなったのかは分からないものの、とにかく近いものは近いんだとか。…まあそれはそれとして、何気ないやり取りから二人の気心が知れてる感が伝わってくるのが、何か悔しい。そんな二人の感情は見ていて心が躍るんだけど。萌えるんだけどもっ!
「イストワール君。その口振りだと、この次元の事や、今後我々が取るべき行動についても大凡考えが纏まっているようだね。差し支えなければ、聞かせて頂けるかな?」
「あ、はい。ではまず皆さんがいる次元についてですが、初めに観測した時点でも分かっていた通り、小さい次元のようです。不安定、或いは不完全な次元と評する方が良いかもしれません(・ω・`)」
「不安定、不完全…だから店内の状態といい電力といい、妙な状態でここが成立している訳か。普通の、まともな次元ならばあり得ない事でも、まともではない次元だからこそ成立してしまう…腑には落ちるが、そうなると他にもあり得ない事象がありそうだな…」
「と、なると…我々の下に次元の扉が開いたのも、次元として安定していないから…なのでしょうか?」
「えぇ、それについても説明させてもらいますね
( ̄∀ ̄)」
「…ねぇビッキィ、こういう時にズェピアさん達がいると……」
「話、進むよね…多分これ、わたし達は静かにしてた方が絶対手早く、且つ分かり易く話が纏まる気がする…」
大人の男性三人による、スマートな導入、推測、そこからの質問。それにルナとビッキィが小声で呟き…結構な人数が、それにうんうんと頷いたのは言うまでもない。
「今ワイトさんが仰った通り、皆さんの次元にも扉が開いたのは、この次元が不安定な状態故に、次元と次元を隔てる壁も不完全な状態だからです。…といっても、これは理由の半分ですが(´-ω-`)」
「つまり、他にも理由が?」
「そういうこった。この次元のイストワールはそこまで次元関連に精通してる訳じゃないからな。こっからは俺が説明させてもらうぜ」
『…この声、聞いた事があるような……』
問い掛けたピーシェへ返したのは、イストワールとは違う声。その声に、ぴくりとアイやイヴが肩を震わせる。…そっか、二人はうずめやくろめの事も知ってたし、となれば恐らく彼女の事も……。
「そっちの次元の壁が不完全なのは事実だ。けど、それだけで色んな次元と簡単に繋がる訳じゃねぇ。片方が不完全でも、もう片方の壁がしっかりしてりゃ、そうそう接続なんかしねぇからな」
「えっと…じゃあ、もう片方もしっかりしてない…って事?僕もそういうのは全然分からないけど…それって、不味いんじゃないの…?」
「ま、本来の状態じゃねーな。けど、不味いっつーのとは少し違うっていうか…概念の域で少し変容してる、って言うべきか」
『……?』
変容と言われ、首を傾げるわたし達。はっきり言って、全然分からない。けど今の説明じゃ伝わらないというのは、その声の主…今回来てもらったクロワールも分かっていたようで、そのまま続ける。
「もうお前等は全員当たり前みたいに別次元や別世界はあって、簡単ではないにしろ行き来出来るものって考えてるだろうが、そもそもそれはあり得ねー事だ。もっと言っちまえば、別次元だの別世界だのが、各次元や世界において存在しねー筈のもんだからな」
「…んん?どーゆー事?あり得ないっていったって、実際にはこうして……」
「ああ、存在してる。けどそれは、別次元の存在を認識したからこそ言える事だ。逆に言うと、元来それぞれの次元や世界は、別次元や別世界を認識してねぇし、そういう概念すらねぇ。信次元なら信次元が、神次元なら神次元が、唯一であり全て…いんや、その表現も正確じゃねぇな。『他』が概念レベルで存在しないって事になってんだから、唯一だの全てだの考える事自体がおかしいって話だ」
茜の問いを肯定し更に進めるクロワールに、全員が黙る。何人かは話を理解している感じで…過半数は、目が点になっている状態。…え?わたし?わたしは勿論分かってるわ。……多分…。
「話に着いてこれてるか?よく分からねーなら、とにかく『本来別次元や別世界はあり得ないもの』って思っとけ。…んで、そういう概念、そういうものになってるからこそ、次元や世界の壁…ってより『隔たり』ってのは強固なんだ。だってそうだろ?あり得ないもん、存在しないもんと接触したり、それと行き来したりなんて出来る訳ねぇんだからよ」
「成る程、確かにそうだね。存在しない存在の影響といえばブラフやハッタリがあるけど、それもその存在を示唆される、或いは想定するからこそ振り回されるのであって、誰にも言われていないし思い付いてもいないのなら、それに影響される事も当然ない…中々哲学的な話だ」
「そういうこった。けどそれは、絶対的なもんじゃねぇ。一度でも別の次元や世界と接触しちまえば、一人でも行き来しちまえば、或いは断片的にでも観測しちまえば、その瞬間から別次元は『あり得ない存在』じゃなくなる。次元が、世界が、他の存在を概念として認識ちしまう。そうなると、隔たりは自然と脆くなるんだよ。たった一度でガバガバになるって訳じゃねぇが、それでも“1”と“0”は違うって事だ。そういう意味じゃ、この中にいる内の何人かは、自分の次元に新たな概念を、認識を生み出した存在って訳なんだぜ?」
「認識、か…何も知らない状態より、把握している状態の方が対処も対応も出来そうなものだが…物理的に存在している、存在出来得る可能性があるものと、それこそ概念の時点であり得ないものとでは話が違う…いやそもそも、その域の話を『常識』に当て嵌めようとする事自体が間違っているという事か」
「理解が早ぇな。…あ、ついでに言っとくと、世界の中にゃ複数の世界で一つの概念を構成してるところもある。そういう世界は、その世界の内側での行き来は問題ねーし何なら世界としても『想定し得る』ってレベルだが、その外側となると…って話だな」
そういう事か、とズェピアと影は深く頷き、それぞれに思案を巡らせる。そんな感じの顔をする。…なんていうか…二人もだけど、クロワールもよくこんな説明出来るわね…これに関しては流石と言う他ないわ…。
「えーっと…こういう時は、アレ言うしかないね!それじゃあ皆、せーのっ!」
『大体分かった』
「それ大体分かってねぇ時の台詞じゃねぇか…」
次元越しに放たれるクロワールからの突っ込みに、掛け声を発したネプテューヌ及びわたし達は目を逸らす。うん、まぁ…うん。後で分かってるっぽい二人に再説明してもらう事にしましょ。それが一番よ、一番。
「皆さん、理解に苦労しているとは思いますが…本題はここからです。不安定や不完全という言葉から想像した方もいるとは思いますが…この次元は、恐らくそう長くは持ちません。流石に今すぐという事はないと思いますが、そう遠くない内に、この次元は次元としての在り方を維持出来なくなり、消滅するかと思われます(´・ω・`)」
「消滅ッスか…なら、その前にこの次元から出ないと不味いんじゃないんスか?」
「仰る通りです。ただ、幾つか問題点がありまして……(。-_-。)」
説明の担当がイストワールへと戻り、話は本題…即ち、これからの事に。問題があるという言葉を受けてわたし達は待ち、イストワールは続きを話す。
「第一に、そちらの次元は不安定故、今後も他の次元や世界と接続してしまう可能性がある事です。そしてそうなれば当然、事故的に次元移動をしてしまう方がいるかもしれない上、もしそうなった上で次元が消滅した場合、どうなるか分かりません。それを防ぐ一番の方法は、外側からその次元を閉じてしまう、出入りを封じる事ですが……」
「それも何か問題がある、って事よね。んー…例えば、閉じると観測が出来なくなるとか?」
「その通りです、エストさん。加えて不安定だからこそ、その次元では何か想定外の事が起こるかもしれません。閉じている間に大変な状態になっていて…という事もあり得るんです( ̄^ ̄)」
「厄介な次元ですね…何か手はないんですか?」
「あるにはあります。…実は、ここまで不安定と言ってきましたが、初めに観測した時よりも今の方が…皆さんがその次元に存在している状態の方が、比較的ですが安定しているんです(`・ω・´)」
「本来あり得ない次元移動を経験した存在は、それぞれの次元や世界に存在する法則、ルールに複数触れる事で、何もせずとも特殊な存在になるんだよ。んで、その特殊性がある程度の安定化に寄与してるみてーだな。細かい原理なんかは俺もさっぱりだけどよ」
「つまり…わたし達が次元消滅の寸前まで留まっているのが、現状ではベター…って事、ですよね…?」
「…そうなります。安定化の観点でも、何か起こった際の対応力という点でも、総合的に見るのであれば(-_-)」
困ったものだ、とばかりにピーシェが言い、イストワールとクロワールの答えに、ディールちゃんが応じる。
話は分かった。そういう事ならわたしは構わないし、イリゼだってそうな筈。でも……
「対応力があったって、何が起こるか分からない以上、安全には程遠い…そうよね?イストワール」
「はい。ですので次善策として…というより、わたし達からすれば当初考えていた対応の一つですが…皆さんを各次元や世界へ送った後、神生オデッセフィアないしは信国連の戦力をそちらへ展開。その上で次元を閉じて収束を待つという事も考えています(´-ω-`)」
第二の案、それを聞いた皆は黙る。少なくとも、皆の安全を考えるなら、そちらの方がずっと良い。良いけども…これを最善とは言わなかったのには、相応の理由がある。それは、わたしにも分かっている。
「…一つ訊きたいんだけど、そもそも次元を閉じる…というのは、やろうと思って出来る事なの?」
「可能ですよ、イヴさん。わたし一人では無理ですが、グリモワールさんや他の次元のわたしの助力、そしてグレイブさんがコンタクトを取って下さった、とある空間を司る神の方のバックアップを受ければ、閉じる事も、消滅の直前で開いて皆さんを帰還させる事も出来ますd(^_^o)」
「空間を司る…それって、もしかして……」
「あの、イストワールさん。空間を司る神…って事なら、この次元の問題そのものを解決したりなんかは……」
「えぇと…それに関しては、わたしも訊いてみましたが…出来るかどうかでいえば、出来るようです。ただ、その方曰く、『神が安易に救えば、生命は停滞の道を辿る。我はそれを望みはしない』との事でして……( ̄O ̄;)」
「…万事を尽くす為の力は貸しても、解決はあくまで人に、当事者に委ねる…か。ふふ、それが貴公の信条であるのならば、仕方のない事…かな」
ひょっとして…という問いにイストワールが答え、訊いたルナは肩を落とす。その一方で、愛月君とイリゼは顔を見合わせ…それからイリゼは、ふっと笑う。わたしやイリゼと、その神の信条は違うみたいだけど…イリゼが笑ってるんだから、きっと立派な神なんでしょうね。
「自分も一つ訊きたいんだけど、その戦力っていうのはすぐに用意出来るの?」
「いえ、十分な戦力を…となると、時間が掛かります。当然そうなれば閉じるのも遅くなりますし、不安定な次元なので、先の話の中で出てきた『特殊性』も生じるかどうかは怪しいと言わざるを得ません(><)」
だから次善策なのだとイストワールは締める。皆にリスクを背負わせる事になるけど、状況的には一番な策を取るか、問題は増えるけど、皆の安全は確保出来る策を取るか。選択は、二つに一つ。わたしとイリゼは、顔を見合わせ…そうしてイリゼは、口を開く。
「…皆。私は皆に、万が一の事が起こる前に帰って、って言うよ。勿論次善策より最善策の方が良いに決まってる。だけど……」
「そのせいで、皆に負わなくてもいいリスクを背負わせるなんて嫌だもの。大丈夫、わたし達でなんとかしてみせるわ。だから……」
引き継ぐ形で、わたしも言う。これがわたしとイリゼのスタンス。女神として示す在り方。わたし達の言葉に、皆は顔を見合わせて……
「はい皆ー。今の意見に反対の人、挙手」
『うっ……』
エストちゃんの呼び掛けで上がる手。一目で分かる、一目瞭然の…満場一致な、全員反対。そのインパクトにわたし達は思わず肩を震わせて…あちらこちらから、溜め息が聞こえてくる。
「全くもー、そんな事言われて私達が帰ると思ってるの?」
「イリスの頭では、とても理解が難しい話だった。でも、大変だという事は分かる。なのでイリス、イリゼとセイツに協力したい」
「ま、気持ちは分からんでもないッスよ?けど…その場合こっちにくる事になる戦力も、二人の国民とか、信次元の人達ッスよね?そういう人達にリスクを背負わせる事になるのは、女神としていいんスか?」
「お気遣い感謝します、イリゼ様、セイツ様。ですが我々とて、先の騒動でも全員が残留を選んだのです。あの時私は、一部反対の意見も述べましたが…無事解決出来たのは、愛月君やイリスさん達もいたからこそ。故に今回は、彼等を含めた『全員』で事に当たる事を提案します」
「ほんとそうですよ。前の事があったのに、というかほんとイリゼさんとはもう何度も色んな大事を何とかしてきたのに、また自分達に任せて、って…そんなにわたし達は頼りないですか?もしそう思っているのなら…悲しいです」
「…いいじゃないですか、仲間同士ここは協力する…って事で。私もあまり他人の事は言えませんが…ここにいる人達の殆どは、結構頑固だと思いますよ?」
それは、あの時も…ワイトの言う通り、仮想空間の騒動の時もあった公開。あの時と今とは、色々違う。違うけど…同じである、事もある。
「大丈夫だよ、イリゼ。大丈夫っていうか…これで帰ったら、グレイブに何言われるか分からないしね」
「前と違って、今回はイリゼ達が発端という訳でもなければ、責任がある訳でもない。だから…そう気負わなくてもいいんじゃないか?」
「皆でなんとかするのが一番ですよ。わたしもこういうトンデモ展開には慣れてますし…そもそもピーシェ様が残る時点で、わたしだけ帰るとかないです。それこそこっちも皆に後で何言われるか……」
「そうそう、今回も皆で頑張ろ?…ま、まあ私は足引っ張っちゃうかもしれないけど…それならせめて、いい踏み台とかジャンプ台になれるよう頑張るから!なんかそれならいけそうな気がするから任せて!」
「その自信はどこから来るのよ…。…私は別に、皆がいればなんとかなるなんて、楽観視するつもりはないわ。ないけど…これでも崩壊する次元については、多少知識があるの。だから、やれるだけの事はするつもりよ」
「今回の件…というよりこの次元についてはまだ分かっていない事が多い。つまりそれは、どこにどんな危険がどれ程あるかも分からないという事。それに対し、大規模戦力…多人数を当たるというのは、危険に対する情報共有の面で色々と難があるだろう。…ここにいるのは、皆それぞれの力、強さを持つ者達なんだ。ここは一つ、我々を信じてくれないかな?」
「…ね?この通り、皆おねーさん達の考えには反対って訳。だからここは、皆が納得出来る選択をしない?…分かるでしょ?おねーさん達なら」
「だよね、ここで力を合わせなくていつ合わせるのって話だもん!……だけど、結論を出すのはちょっとだけ待って。その前に…もう一人、ちゃんとどうしたいか訊かなきゃいけないでしょ?」
皆の心は、変わっていない。皆の気持ちは、皆との心の繋がりは…今もこうして、強く優しく紡がれている。それはわたしに、わたし達にとって嬉しく、絶対に軽んじちゃいけない、軽んじたくないもので…けれどネプテューヌの言葉で思い出す。わたし達と皆は、友達であり仲間だけど…同時にここには、まだ出会ったばかりの人もいる。今ここに生まれた雰囲気は、わたしには心地の良いものだけど…それが、強制の空気にだけはなっちゃいけない。
「…私は……」
「うん、聞かせて。皆がどうとかじゃなくて…エリナちゃんの、思いを」
沈黙の中、ネプテューヌは問う。真っ直ぐな目で、真っ直ぐにエリナの思いを。そしてエリナは更に数秒沈黙し…ネプテューヌを、それから皆を見回す。決意を帯びた瞳を浮かべ……言う。
「正直、まだ…というより、今はさっき以上に色々飲み込みきれてないです。ちょっと頭の中が混乱もしています。けど…私は女神様の役に立ちたくて、特命隊に入りました。だからここでも、今も、女神様が目の前の問題をなんとかしようとしているのなら…私はその力になりたいと思います。それに……私はパープルハート様に誇れる自分でありたい。パープルハート様が胸を張れるエリナでありたい。その為に…私にも、協力をさせて下さい」
はっきりとした、信念の籠った、エリナの答え。純粋な…だからこそ一片の曇りもない、信仰という意思。…だから、皆は頷いた。わたしも、頷いた。その信仰は、わたしに向けられたものじゃないけど…だとしても、女神を信じる思いを尊重しないだなんて…そんなの、女神じゃないんだから。
「…イリゼ。わたしは決めたわ。貴女はどう?」
「そんなの勿論、決まってるよ。…ごめんね皆、また前みたいな事言っちゃって。だけど、皆がそう言ってくれるなら…思ってくれるなら…力を貸して、皆。この次元の存在が、誰かを不幸にしないように。また一緒に…皆で一緒に、解決出来るように」
そうして皆の思いは一つになった。これまでの話でも出た通り、今回は…いや、今回も色々分からなかったり、未知数だったりなところはある。この選択を、誰も後悔しない保証はない。だけどそれでも、わたしは思う。わたしは言える。わたし達なら、皆となら、きっと……って。
今回のパロディ解説
・「辛いの要らないよ!?」
機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORYの主人公、コウ・ウラキの代名詞的な台詞の一つのパロディ。イリゼ…というかこの家族は、基本子供舌なので辛いのが苦手なんです。
・「〜〜迷わず行けよ、行けば分かるさ〜〜イヴ木は」、「〜〜アイトニオ〜〜」
プロレスラー、政治家であったアントニオ猪木こと猪木完至さん及び、彼の名台詞の一つの事。アイトニオはともかく、イヴ木だと伊吹や息吹を連想しますね。だからなんだという話ですが。
・「〜〜レポートを書いて〜〜切れば……」
ポケモンシリーズにおける、システムの一つのパロディ。主に本編シリーズの事ですね。冒険の書とか他のパターンも色々出来ますが、イリスが言うならこれかな、という気がします。
・『大体分かった』
仮面ライダーディケイドの主人公、門矢司の代名詞的な台詞の一つのパロディ。実際この場面で言ったキャラは多分分かってないのでしょう。因みに言ったのは誰か(何人か)は…ご想像にお任せします。
・「〜〜“1”と“0”は違う〜〜」
ONE PIECEに登場するキャラの一人、モモンガの代名詞的な台詞のパロディ。因みに私は、これの1と0の順番を逆に覚えていました。こういう方、他にもいるのではないでしょうか。