超次元ゲイムネプテューヌ Origins Transition   作:シモツキ

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第三十話(コラボ最終話) また一つ、紡いでいく

 眩いばかりの、全てを包み込む光。絵日記帳が放つ輝き。その光に、現れ続ける物体も、滅茶苦茶に混ぜ合わせたような空間も、その外に広がる形容し難い景色も、本当に何もかもが飲まれていった。光に包まれ、溶けるように見えなくなり……そうなっていったのは、わたし達自身も例外じゃない。あっという間に、視界の全てが光の輝きだけにだけになって…だけど、その時わたしの心に恐れはなかった。上手く言葉にする事は出来ないけど、何となく…何となく大丈夫だと、これで良いんだと、そんな気がしていた。

 

「……っ…」

 

 衝撃や、ダメージと呼べるものはなかった。ただ、単なる光ではないからか…きっと、この次元の在り方の核たる絵日記帳から発された光に包まれたからか、意識が曖昧な状態になっていて……気付けは、光は収まっていた。この時の感覚は、次元の扉を潜る時のそれに似ている…ようにも思える。

 そして、光が収まった後、わたしが見たのは……なんと言葉にすればいいのか分からない、どう表現する事も出来ないような空間。亀裂の内側の空間そのもので…だけど今度は、それ以外の一切がない。ただ、そういう空間が果てしなく続いているだけ。

 

「…皆、大丈夫?怪我…は、私もしてるし今更だけど…えぇと、平気?」

 

 ぐるりと見回し周囲を確認する中、イリゼの声が聞こえてくる。それにわたしは大丈夫だと答え、皆も続く。

 

「イリスちゃんも大丈夫?最後、一発受けてたよね?」

「痛かった…でも、大丈夫。イリスはもう、元気」

「本当に大丈夫?ちょっとでも痛かったら、言ってくれていいのよ?」

「ディールも、エストも、心配?じゃあ、見てほしい。見れば分かる──」

『ちょっ、ストップストップ!』

 

 おもむろに水着を脱ごうとしたイリスちゃんを、ディールちゃんとエストちゃんの二人が止める。…イリスちゃん、こういう事はほんとにまだまだ無知なのね…。

 

「怪我といえば、アイ達はどう?貴女達が、一番危なかったんじゃないの?」

「んっとね、まだ嫌なポカポカ感があるかなー。でも多分だいじょーぶ!」

「まあ、ウチも大丈夫だろ。…つか、思いっきり投げやがったなイヴ…前の時の意趣返しか……?」

「あはは…でも、びっくりしたよ。いきなりアイが投げ飛ばされてたし、そのアイをイリゼと茜が受け止めたかと思ったら、三人で抱き合い始めるし…。……でもね、凄く良いと思う。凄く凄く…良いと、思う」

『な、何が……?』

「良い顔すんなルナ…後、抱き合っちゃいねぇよ…一方的に二人が引っ付いてきただけだっての……」

 

 ゆっくりと、深く頷きながら言うルナの言葉に、イリゼ達は困惑する。状況的に、あれは結構妥当な行動で…でもやっぱりやった事がやった事だからか、顔を見合わせた三人は、ほんのり顔を赤くする。…その瞬間、わたしの心が射止められたのは言うまでもない。ついでにルナもまた一つ、深く深ーく頷いた事も、語るまでもない。

 

「…えぇ、と…あの……」

「……?どうかしたの、エリナちゃん」

 

 良い意味で気の抜けるようなやり取りが続く中、聞こえたのはおずおずとした声。その声の主、エリナにビッキィが首を傾げつつ問えば、エリナは一拍の間を経て再び口を開く。

 

「私達…勝てたんですか…?終わらせる事が、出来たんですか……?」

 

 不安そうな、エリナの言葉。…そう思うのは、当然の事。不安を抱くのも、当たり前だと思う。だからわたしはその思いを理解すると共に、皆と顔を見合わせ……そして、言った。

 

『さぁ?』

「えぇ!?」

 

 思っていた答えと違う!…とばかりの仰天顔を見せるエリナ。でも、仕方ないじゃない。実際どうなのか分からないもの。

 

「そ、そんな…皆さん終わったっていう確信があったから、和やかに会話をしていた訳ではないんですか……?」

「ふっ、甘いわねエリナちゃん。自分達は、そうでなくても流れで和やかな会話をしたり、ボケと突っ込みの応酬をしたりするのよ」

「それは堂々と言う事じゃないがな…。…だが、実際問題現状じゃ判断のしようがない。絵日記帳も、絵日記帳が発生させていたのであろうあれこれも消滅している事を考えれば、これまでより好転している可能性は高いと思うが、な」

 

 今影が言った通り、現状ではどうなったのか何とも言えない。とにかく判断材料がなさ過ぎる。でも…逆に言えば、今は状況から考えたり、話し合ったりするべき状況でもないという事。

 

「…では、全員体調面での大きな不安や問題はない事が分かりましたし、脱出するとしましょうか。先の戦闘と違って今回はまだ機体も十分に動くので、先行します…と、言いたいところですが……」

「…どっちいけばいーの?」

 

 どっちどころか、どの方向へ向かえばいいのかさっぱり分からない。それが、わたし達の置かれた状況。そして、わたし達が今いるのが、次元の亀裂の内側である事も間違いない。だとすると、仮にわたし達の望む決着を得られたのだとしても、まだ安心は出来ない。だってここは、本来入っちゃ不味い…どころか、発生してる時点で異常な空間な上、長居する事でどんな影響があるかも分からないんだから。

 

「うぅん、ここじゃ穴から抜けられる紐も使えないみたいだし……そうだ、ズェピアさんも何が糸みたいなの用意してましたよね?あれって……」

「すまない。確かに脱出時の為に魔力の糸を伸ばしてはいたが、空間が塗り替わる際に切れてしまってね」

「……えっ、じゃあこれ、相当不味い状況なんじゃ…?」

 

 冷や汗を額に滲ませながらの、ビッキィの発言。それに、誰も答える事が出来なかった。一人一人の顔を確認した訳じゃないけど…多分全員、同じように冷や汗をかいているんじゃないかと思う。

 

「……あっ…そういえば、エスちゃんって次元を超える術も使えたよね?だったらそれで、ここから脱出するって事は……」

「正直、難しいわね。ここってまともな状態の次元なら入れる訳がない、某狩りゲーにおける裏世界的な場所だし、こんな場所じゃ碌に開けないか、開けてもどこに繋がるか分かったもんじゃないのよ。最悪、開いた時点でもっと異常な…それこそこの空間どころか次元全体が一瞬で消し飛ぶような何が起こるかもしれないけど、試しにやる?」

 

 ゆっくりと、首を横に振るディールちゃん。さっきまでは気の抜けた雰囲気だったけど、段々と不安感が広がり始める。絵日記や出現する物体に対する、何も通用しない…って戦況も相当キツいものがあったけど、今の状況は下手するとそれに匹敵するかもしれない。

 

「と、取り敢えず皆で手分けして探索してみる…?もしかしたら、それで私達が入ってきた亀裂が見つかるかも……」

「それは危険過ぎるな。こんな何もない場所で手分けして動けば、二度と合流出来ない可能性が高いぞ」

「私も影くんに同感だよ、ルナさん。遭難時…と言うと少し語弊があるかもしれないが…はとにかく動きたくなるものだけど、闇雲に動くのが功を奏する事はまずないからね」

「ど、どうしよう…こういう時、グレイブだったら『次元の亀裂の中なんだから、どっか切れば出られるんじゃね?』…とか言いそうだけど……駄目だ、何も参考にならない……!」

 

 散発的に意見が出てくるけど、どれも「それだ!」って内容には至らない。そんな中で、愛月は頭を抱える。確かにグレイブはそういう事を言いそうだし、でもそれが参考にならないっていうのも理解出来……

 

『……あっ』

「……?…えっと、何……?」

 

 その時だった。わたしが、いけるかもしれない…と思ったのは。そして恐らく、イリゼにアイ、イヴも同じ事を思い付いたのは。

 

「ネプテューヌ。貴女、次元を斬った事はある?」

「次元を?…流石にないわね…そもそも次元って、斬ろうと思って斬れるものなの?」

「斬れるよ。少なくとも、信次元のネプテューヌはそうだし、アイやイヴの知ってるネプテューヌもそうみたいだからね。だから、やった事はなくても、今のネプテューヌにその力がなかったとしても……可能性は、ある筈だよ」

 

 わたしの問いに質問で返したネプテューヌへ、イリゼが言う。出来ると、ネプテューヌにも可能性はあると。それを聞いたネプテューヌは、一度黙って……それから、頷く。

 

「…分かったわ。やれるかどうかは分からない…どころか流石に無茶な話にも思えるけど……さっきエリナちゃんに、皆に発破をかけたのは自分だものね。有言実行する姿を見せてあげるわ」

「ネプテューヌならそう言うと思ってたぜ。…で、具体的にどうやろうってプランはもう思い付いてんのか?」

「え?それは皆が考えてくれるんじゃないの?」

『…………』

 

 折角格好良い姿を見せてくれたネプテューヌだけど、次の言葉で即台無しに。とはいえ確かに、一方的な根拠で丸投げするのは無責任というもの。どうやるかのプランはわたし達が出すか、或いは一緒に考えるのが筋ってもので……でも、これがまた難しい。

 何せわたしやイリゼが考えているのは、多分アイ達が考えているのも、ネプテューヌのネクストフォームの力。だけどそれは、決して説明すれば出来るようになるものじゃない…筈。言っておいてアレだけど、わたし達はネプテューヌに相当な無理難題を求めている訳で…けれどここでまた、彼が口を開いた。

 

「では、私とエスト君でサポートするとしよう。実を言うと、その気になれば世界の壁を破けるような家族が私にはいてね。流石に私一人で同じ事をするのは無理でも、間近で見て得た知識は役に立つ筈だよ」

「よく知りもしない力だってのに、軽々しく言ってくれるわね…。…でもまあ、わたしだってこんなところで終わりたくはないし…いいわ、やってやろうじゃない。ネプテューヌちゃんはとにかく全力を出して頂戴。わたし達が、何とかしてみるわ」

 

 いつも通りの調子で言うズェピアに、一度呆れてから腹を括ってくれるエストちゃん。…ありがたいのは間違いないけど…ズェピアって、ほんと何から何まで対応してくるわね…何かもう、そういう概念を纏ってる存在な気がしたわ…そういう存在って何?って話でもあるけど…。

 とまあ、そんなやり取りを経て、ネプテューヌは構える。エストちゃんとズェピアも術の準備をする。そしてわたし達女神一同も、恐らく大量にシェアエナジーが必要になるだろうと思って、受け渡しが出来るルナの側へ。

 

「そういえば…私達、ここでも結局シェアエナジー不足にならなかったよね。信次元との繋がりが絶たれてる以上、少なくとも私は不足状態に陥りそうなものなのに……」

「言われてみるとそうね。塔についてはそういう性質がありそうだって話をしたし、この次元の亀裂は塔と半ば融合してるような状態だった訳だから、その性質を引き継いでいるだけ、って事かもしれないけど……」

「…なんというか、腑に落ちるよね。同じ内容が繰り返されてた絵日記帳の事を思うと」

 

 ゆっくりと深呼吸をし、ネプテューヌが気持ちを整える中、わたしはイリゼと言葉を交わす。実際どうなのかは分からないけど、枯渇に陥らなかったのは事実。でももし、本当にわたしの思った通りなら…ここはやっぱり、凄まじい状態だと言わざるを得ない。

 

「…ふー、ぅ。エストちゃん、ズェピアさん、頼むわよ?」

「任せて頂戴」

「ああ、承った」

 

 凛とした面持ちとなったネプテューヌは、二人に声を掛け…この空間に立ち入って以来、三度目となるあの姿へ。ネプテューヌ自身、その姿…その力について特に語った事はないし、わたし達も聞いた事はないけど……わたしとイリゼは、知っている。多分、この力は…信次元のもう一人のネプテューヌが手にしたのと同質の力。

 

「何度も試すつもりはない。この一撃で、この一太刀で決めてみせるわ!はぁああああぁぁぁぁッ!」

 

 ゆっくりと振り上げられた大太刀。渾身のものだと分かる声をと共にネプテューヌはそれを振り抜く。振り下ろされる刃の先にあるのは、エストちゃんとズェピアの展開した魔法陣。そして、それ等を斬り裂くように繰り出された大太刀は、一瞬強い煌めきを放ち……

 

「…………」

『…………』

「ネプテューヌ、何も起きていない。失敗した?」

「ぐふっ……」

 

……ただただ大太刀が振り下ろされただけの結果と、ある意味情け容赦ないイリスちゃんの発言により、ネプテューヌは心に大ダメージを負っていた。

 

「だ、大丈夫ですパープルハート様!私は出来るって、信じてますから!」

「え、えぇ、ありがとうエリナちゃん…そうね、一度でへこたれてちゃ出来るものも出来ないわよね……」

 

 慌てたようにフォローするエリナの言葉を受けて、ネプテューヌは気を取り直す。…何かこう、今のエリナはネプギアみたいだったわね……。

 

「もう一度やるわ、大丈夫?」

「……?ネプテューヌ、何度も試すつもりはないと言っていた。…あれは、嘘だった?」

「げふっ……」

「そ、そういう事じゃないよイリスちゃん…!ネプテューヌさん、集中したいだろうから黙ろうね……(あせあせ)」

 

 全く容赦のないイリスちゃんの発言Part2で再び心にダメージを受ける流れを経て、再度ネプテューヌは試す。二度、三度と大太刀を振り……けれどやっぱり、何も起こらない。

 

「……っ…もう一度…!」

「…ねぷてぬ、だいじょーぶ?」

「…妙に消耗しているな…本当にただの素振りにしかなっていないなら、数度でここまで消耗はしない筈。だとすると……」

「うむ。私とエスト君の術式に反応して、次元を斬り裂く…いや、断ち斬るかな?…力の片鱗は引き出されている。だが、まだ足りない。後一歩、届いていない」

「それなら、私達のシェアエナジーも使って。大変だと思うけど、目一杯やってみて」

 

 イリゼの言葉にわたし達は頷いて、ルナにシェアエナジーを送ってもらう。そうして大量の、そしてそれぞれ違う思いが根底にあるシェアエナジーを受け取ったネプテューヌの次の斬撃は、これまでより強い煌めきを見せてくれたけども、結果は同じ。

 次第に、ネプテューヌの顔に焦りが浮かんでいく。弱音は一言も口にしないけど…焦るのは、当然の事。だって、最高の可否はネプテューヌに掛かっているんだから。無茶なお願いで、責任を背負わされてしまっているんだから。

 

「ねぷ姉さん、一度休憩した方がいいんじゃ……」

「私もそう思うよ、ねぷちゃん。一度深呼吸するだけでも違うんじゃないかな」

 

 そのネプテューヌを心配し、皆が声を掛ける。それにネプテューヌが頷く中…わたしも少しだけ考えて、言う。

 

「…ネプテューヌ。失敗しても大丈夫、責任はわたし達が持つ…とは言わないわ。わたし達の言葉に応じた時点で、貴女にも責任は生まれているんだもの。女神である以上、常に守る責任は自分で背負っているべきなのよ」

「…容赦ないわね」

「当然よ。後になって気休めを言う位なら、最初から無茶振りするなって話でしょ?だけど…わたし達はついさっき、勝ち目なんてまるでないような戦いを乗り越えてきたのよ?貴女の言う通り、皆で未来を心に描いて、わたし達の手で掴んだ。だったらもう、次元を斬り裂くなんて大した事じゃない…そうは思わない?」

「セイツ……ふふ、そうね。そうかもしれないわ」

 

 ふっ…と緩むネプテューヌの顔。これ以上の事は言わない。それなりに言ったつもりだし…もう十分だって事は、ネプテューヌの顔を見れば分かる。

 

「…すぅ…はぁ……。……あっ…」

『……?』

 

 もう一度、深呼吸するネプテューヌ。そうしてネプテューヌは構え直し……ぽつりと何か呟いた。何かに気付いたような声が漏れた。それが何かは分からない。続く言葉なんてなく、ネプテューヌは大太刀を振り上げたから。

 誰もが黙る。ネプテューヌの集中が伝わってくるから。だけどもう、ネプテューヌに緊張からくる硬さはない。真面目ながらも、どこか柔らかさを帯びているのが今のネプテューヌ。そして静かに、研ぎ澄まされた一太刀が振り下ろされ……次の瞬間、ネプテューヌの目の前の空間が、僅かに歪む。

 

「……!ルナ、こっちにもシェアエナジー回して!こじ開けるわッ!」

 

 目を見開いたエストちゃんが、歪みに向けて拳を突き出す。それに合わせるように、ズェピアもまた手をかざす。二人の手が、力が歪み干渉し…少しずつ、空間の弛みが広がっていく。そうして歪みは細長く、ヒビの様になっていき──割れる。砕ける。風穴が如く…開く。

 

「や、やった…やったぁ!成功したわ!」

「へ?…あ、お見事です、パープルハート様!」

 

 余程嬉しかったのか、或いは安心したのか、何かこう…某無印的な喜び方をするネプテューヌを見て、一瞬ぽかんとした後エリナは称賛の言葉を送る。わたし達も、それに頷く。実際に開いたのは、エストちゃんとズェピアだけど…その為の切っ掛けを、楔を打ち込んだのは、ネプテューヌに違いない。

 

「提案したのは私達だけど…正直、驚いたわ。まさか、本当に出来るだなんて……」

「あら、イヴは信じてくれていなかったの?…っていうのは冗談で、自分自身びっくりしているわ。…けど、これもセイツのおかげね」

「ふっ…言った通りだったでしょう?あれだけの戦いに勝った後なんだから、次元を斬り裂くなんて容易い……」

 

 肩を竦めた後、ネプテューヌはわたしを見て柔らかく笑う。そのネプテューヌの言葉に、わたしは髪を払いながら堂々と答える。ネプテューヌにはああいう言い方が良いと思った、わたしの判断もまた間違ってはいなかった。だから、わたしからすればこの結果は意外でも驚きでもない、予想した通りのもので……

 

「あ、違うわよ?自分がセイツのおかげだって言ったのは、セイツの言葉の中にあった『未来を心に描く』って部分から、さっきの自分の言葉を思い出して、それで自分がこれからやりたい事を思い浮かべたら自然と肩の力が抜けたからであって、セイツが思ってるような理由ではないからね?」

「…………」

 

……わたしの言葉、全然役に立ってなかった。偶々言葉選びが良かっただけで、内容的にはそうでもないっぽかった。…しくしく。

 

「あ、セイツおねーさんがディーちゃんの真似してる」

「え、これわたしの真似なの…?それはその、反応に困るというか……」

「カット。浮かれているところ申し訳ないが、どうやらもう呑気に話していられる状態ではないらしい」

『……?それって……』

 

 急に何を言い出すのか。ズェピアの発言に、恐らく誰もがそう思った次の瞬間、激しい振動が身体を襲う。

 それはまるで、巨大地震。でも、地震である訳がない。だってここに、大地なんてないんだから。

 

「な、何!?何事!?今度は何が起きてるの!?」

「落ち着き給えルナ君、恐らくこの次元はもう、相当に不安定な状態なのだ。天や地を裂くような亀裂が幾つも生じている時点で今更といえば今更だが、とにかくそこへ新たな裂け目が、それもこれまでとはまた別の要因でこじ開けられたものが発生した事により、一層危険な状態になった…という事だろう。つまり……」

『つまり……?』

「一刻も早くここから出なければ、どうなるか割と本当に分からない…!」

 

 いつもの芝居掛かった口調とは違う、焦りを滲ませたようなズェピアの声。その声にわたし達は顔を見合わせ……

 

『て、撤収!撤収ーー!!』

 

 再びの振動。それもただの揺れとは違う、空間そのものがぐらついているような衝撃に揺さぶられながら、わたし達は開いた裂け目へ次々と飛び込む。次元の亀裂、あり得ない空間から漸く脱出し……戻ってきた。島の様な次元、その本来あるべき領域へと。

 

「あ、危なかった…って、これは……」

 

 全員が脱出し、安堵の吐息を漏らす中、イリゼが呟く。わたしも、皆も、すぐにイリゼの呟きの意味に気付く。

 突入前の時点で、幾つもの亀裂が走っていた次元。どんどん崩壊へと進んでいた空間。それが今や、無惨な光景となっていた。至る所に亀裂が発生し、それにより島は切り裂かれ、ズタズタになっていた。完全に寸断され、バラバラになった大地も一つや二つではなかった。

 そして、もう一つ。この次元は、ボロボロになった上で……光の粒子の様になって、消え始めていた。

 

「…イヴ、ワイト。二人が突入した時点で、ここまでなってたのか?」

「いえ…我々が突入する時点では、まだ島としての原型を残していました。それに、あのような消滅もなかったかと」

「って事は、ずっとほーかいが進んでる…んだよね?それか、もしかすると中での戦いの影響で、崩壊が加速したって可能性も……」

「…僕達、亀裂の中にどれ位いたのかな……」

「分からん…が、体感的には数十分から数時間といったところだろうな。だがそもそも、亀裂の内側に時間の概念があるかどうか分からな──」

 

 ぽつりと漏らしたような愛月の声に、影が反応する。喋りながら、顎に手を当て……その瞬間、わたしは、わたし達は、はっとする。

 

「ね、ねぇ皆、今時間を……」

 

 しっかりと、認識出来ている。勿論、正確な時間は分からないけど、時間についてはっきりと意識出来ている。

 それは、これ以上ない程の答えだった。先へ進む事を拒絶していた、この次元…その在り方が崩れた、或いはそこから解き放たれたのだと、漸くわたし達は実感した。

 

「こうなれば後は、この次元から脱出するだけ…だけど、信次元と連絡を取るには設置した装置が置いてある、あの施設まで戻らないといけないんだよね。皆、まだ動ける?」

「流石にくたくたですけど、大丈夫です。…でも、次元の亀裂に飲み込まれて、もうなくなってる…なんて事はない…ですよね……?」

「ディーちゃん、そんな盛り下がる事をわざわざ言わなくても……あ」

 

 呆れた様子で言葉を返していた次の瞬間、エストちゃんの…それにディールちゃんの女神化が解ける。え?…となっている内にイリゼの女神化も解けて、わたしや他の皆も、多少のタイムラグはあれど人の姿に戻っていく。一瞬何か…例えばゲハバーンの様な力が作用したのかと思ったけど…違う。これは単なる、シェアエナジー切れ。この次元が正常化(といっても酷い状態だけど)した事で、勝手に回復しなくなっただけの事。

 

「…こうなると、私達は飛べないので、ルナや愛月を運ぶ事が出来なくなりますね……」

「では、ルナさん達は私が運びます。マニピュレーターとコックピットにそれぞれ乗ってもらえば、それなりの人数は運べるかと」

「ロボットに乗って、空を飛ぶ?それは楽しみ。イリス、手の方に乗りたい」

「なら、そっちは任せるッス。さぁて、それじゃあ…間に合わなくなる前に、最後のひとっ走りッスかね」

 

 軽く屈伸をするアイに、わたし達は頷く。そして、飛べなかったり身体能力に不安があったりするメンバーにはドリフティングスノーリペアに乗ってもらって、わたし達は疾走開始。今も散発的に発生する亀裂へと注意を払いながら、走る。進路を横断する亀裂や、崩壊して途絶えてしまっている地面は、某最も有名なゲームキャラクターばりのダッシュとジャンプで飛び越える。

 

「あははっ、最後の最後でこーなるとは思わなかったね。……さ、最後まで体力持つかな…」

「その懸念があるなら茜も向こうに乗せてもらえば良かったものを…イヴとエリナは大丈夫か?イヴの装備はボロボロだし、エリナも表情に疲労の色が濃いぞ」

「ちょっとえー君!?私よりも二人の心配だなんて…浮気!?浮気なの!?」

「…まだ結構元気ね、茜……」

「はは……」

 

 どこまで本気なのか分からない茜の発言に、イヴとエリナが苦笑を漏らす。わたしも結構疲労してはいるけど…今の茜の情動で精神的には一気に回復。また一つ、大きな亀裂の前で踏み切り飛び越え着地する。そうしてわたし達は、激変した環境の中を走り抜け……施設のすぐ側にまで到達した瞬間、わたしの携帯端末が音を鳴らす。これは、もしや……。

 

「──!セイツさん、セイツさんですね!?あぁ、やっと繋がりました…!」

 

 着信に出た瞬間、聞こえてきた声。それは他でもない、イストワールの声。…顔文字を使っていない…余程焦っていたのね。

 

「悪かったわね、イストワール。イリゼじゃなくて、わたしの方にかけてきたのは……」

「これまで繰り返し、お二人にかけてきたんです。…何か、あったんですか?」

 

 すぐに通話をスピーカーモードに切り替え、全員に聞こえるようにする。イストワールからの問いに、わたし達は顔を見合わせ…それから頷き合う。

 

「えぇ、今回も色々ね。けど、ゆっくり話していられる状況じゃないわ。…そっちから連絡してきたって事は、もういい…って事よね?」

「…はい。既にそちらの次元は消滅寸前。それも、数時間程前から急速に進んだ為、次元封鎖を解除し、連絡を試みていた訳です( ̄^ ̄)」

 

 不安定で不完全なこの次元がこれ以上どこかと接続しないよう封鎖し、消滅の直前で開いて全員を脱出させる。あれから色々あり過ぎて忘れかけてたけど、元々はそういう予定で……結果から言うと、次元の崩壊は、元々の予定を一気に進める事に繋がった…のかもしれない。

 

「そういう事なら、すぐに扉を開いてもらえますか?端的に言うと、今こっちは零次元の様な状態になってるんです」

「やはりですか…分かりました。それと、各次元や世界との扉を開けて皆さんをお送りするのは時間が掛かるので、まずは全員信次元に来て頂き、そこから改めて扉を開く…という形でも宜しいですか?(・・?)」

「トーゼンの判断ね。今はここからの脱出を最優先にやるべきだし、こんな状態の次元で何度もとびらを扉を開けてたら、それこそ全員送る前に完全崩壊…なーんて事にもなりかねないし」

「イリスもそれでいい。イリス、帰る前にライヌちゃんとるーちゃんに会いたかった」

 

 イリゼの問いに答え、今度はイストワールが問う。エストちゃんもイリスちゃんも…全員が、その提案に同意する。

 

「であれば、これから開きます……が、その前に確認です。何かやり残した事はありませんか?(´・ω・`)」

「やり残した事…何か、思い付きます?わたしは特にないんですけど…」

「僕もない、かな。っていうか…そもそも来たくて来た場所でもないし……」

 

 だよねぇ、と愛月の発言に全員が肩を竦める。そして、イストワールは次元の扉の形成を開始。ゆっくりと、少しずつ空間が歪み始め…でもそこで、イリゼが声を上げた。

 

「あっ…。…えっと、その…実は一個、やりたい事があったというか……」

「えぇ…?あるんです……?」

「そ、そんな呆れた顔しないでよビッキィ…。…ほら、エリナとはこの次元で出会った訳だし、信次元に戻る前にここで写真を撮っておきたいっていうか……」

「ああ、そういう…確かに、いつもそうでしたもんね」

「イリゼはそうやって遺しておくのが好きだものね。それじゃあ、名前も挙がった事だし…お願いするわね、エリナ」

「へ?…あ、は、はい……」

 

 懐かしむようにディールが言う中、わたしは頷き、イリゼが取り出した携帯を借りてエリナへと渡す。困惑した様子のエリナへ、折角だから施設をバックに撮るのがいいんじゃないかとアドバイスもする。そしてイリゼは施設の前へと移動し、エリナは首を傾げたまま携帯を構えて……

 

「…って、毎度言うけどこれじゃ自撮り「あの、オリジンハート様が言いたいのはこういう事ではないのでは…?」お約束への突っ込みに被せられたぁ!?」

「ふぇっ!?あ、だ、駄目でした!?」

 

 今回も、イリゼの自撮りネタをするのだった。分かってるだろうに携帯を渡してきたり、撮られる直前になってからやっと突っ込んだりしてる辺り、ほんとイリゼもノリ良いわよね。

 

「ナイスッスよセイツ。もしお決まりのこれが出来ず終いだったら、ウチは名残惜しさでどうなっていた事か……」

「いやぁ、流石はお姉ちゃん。イリゼの弄り方を熟知してるよねぇ」

「皆も愉快そうにしないでくれる!?もうっ!」

 

 にまにまするアイとネプテューヌ、それに今回も面白いものが見れたなぁ、みたいな顔をしている皆に憤慨しつつ、イリゼは皆に並ぶよう言う。

 真ん中に立つのは、勿論エリナ。本人は自分より女神様が…と言っていたけど、初めて一緒に撮るエリナが真ん中じゃなくてどうするの、と満場一致の意見で押し切り、施設の中から持ってきたテーブルとメニュースタンドに携帯を立て掛ける。そして、今も崩壊が進んでいて、結構ヤバそうな亀裂も近くの砂浜に伸びている…という事をその瞬間だけは頭の中から放り出して、思い出と共に記念撮影。丁度撮り終えたところで次元の扉も完成し…わたし達は、その前に立つ。

 

「ありがと、今回も写真に付き合ってくれて。…それじゃあ、帰ろうか。っていっても、まずは信次元に行く訳だけど」

 

 振り向いたイリゼの言葉に、わたし達は頷く。この次元には散々振り回されたし、肝が冷えるような事もあったけど、嫌な事だけじゃなかった。楽しい事も、面白い事も、嬉しい事もあって…何より、出会いがあった。また一つ絆を深められた。だから今回の事もまた、わたしにとっては大切な経験。そんな風に思いながら、わたしは皆と共に信次元へ……

 

「……あの…ところで、今更なのですが…皆さん、その格好で戻ってくるのですか…?( ̄◇ ̄;)」

『あっ……』

 

 指摘される、わたし達の格好。あまりにも慣れ過ぎていて、馴染み過ぎていて…わたし達は自分が水着やそれに準じる姿である事を、すっかり忘れてしまっていたのだった。

 

 

 

 

 次元の扉を潜り、信次元へと戻ってくる。神生オデッセフィアの教会…私にとっての今の家でもあるこの場所の床を踏んだ瞬間、ほっとした感覚に包まれる。

 

「やっと戻ってこられたわね。…ふぅ、次元の消滅が加速して、まだ脱いでない水着まで消え始めた時は焦ったわ……」

「そ、そんなハプニングあったっけ……?」

「さぁ?どうかしらね」

 

 なんでそんな話を…と私が軽く突っ込めば、セイツは何故かはぐらかす。いやまあ、確かに次元の亀裂から出た時点で、単なる崩壊だけじゃなく、局所的に消滅自体も起こってはいたけども、ほんとにそんな事あったっけ──

 

「よう、皆お疲れさん」

「今回はどうだったよ?やっぱり色々ヤバかったか?」

『……!?』

 

 いきなり聞こえた、聞き覚えのある声。青年と、少年の声。びっくりして私達が目をやれば……そこにいたのは、カイト君とグレイブ君。

 

「か、カイト!?どうして、貴方がここに……」

「な、なんでグレイブまで……え、仕事は…?」

「事情は聞いてる。何か出来る事があればと思って、こっちに来たんだ。…まあ、結果から言うと特に何も出来てないんだがな」

「勿論仕事は終わらせてきたぜ?あーあ、ほんと俺も行きたかったなぁ……」

 

 驚きの声を上げるエリナと愛月君に、二人はそれぞれ返す。ふ、二人が来てくれてたのは正直嬉しいけど…さ、流石にちょっと…いやかなりびっくりした……。

 

「何も出来てない、なんて事はありませんよ。次元の扉を開く上では、手掛かりや目印となるものがあった方がいいんです。そして、愛月さんやエリナさんと同じ次元に住むグレイブさんやカイトさんの存在は、ここにいてくれただけでわたしのサポートになっていたんです(´・∀・`)」

「そうか?うーん…まあ、役に立てたなら何よりだよ」

 

 ならいいか、と軽く流すカイト君のさっぱりした感じは、良い意味で相変わらずといったところ。グレイブ君の行ってみたかった発言も、やっぱりグレイブ君らしいもので…私は自分の頬が、ちょっぴりだけど緩んだのを感じる。

 

「イストワール。向こうの次元の状態はどうだ?」

「今は……まだ、存続はしています。ですが、皆さんがいなくなった事で、更に消滅は加速。もう間も無く完全に消え去ってしまう事でしょう(。-_-。)」

「そう…。……名残惜しい訳じゃないけど…なんというか、複雑な気持ちね…」

「あー、なんか分かります。あぁ、あの場所が無くなっちゃうんだ…って感じの心があるというか……」

 

 ぽつりと呟いたイヴに、ビッキィが同感を示す。私も、その気持ちは分かるな…と内心で思う。そしてその後、唯一別の次元の扉からこちらに来たワイト君が、大きいネプテューヌに案内される形でこちらへとやってきた。勿論ワイト君も、入るや否やカイト君とグレイブ君に驚いていた。…ワイト君だけが別だった理由?だってほら、アームズ・シェルは大きいし、部屋の中に入らないしで、出口を外にしておかなきゃいけなかったからね。

 

「でも、こうして無事に戻ってこられてほんとに良かったぁ…。…いや、私は信次元の住民じゃないけど……」

「うんうん、これでやっと心から安心出来るよね。うぅ…そう思ったらどっと疲れが……」

「本当に皆さん、お疲れ様でした。…事の顛末は、また改めて伺う形の方が良さそうですね(´∀`; )」

「うーん…皆、それに関しては、わたしとイリゼで伝える形でもいいかしら?もし自分でも話したいって人がいるなら別だけど……」

 

 はふぅ…とルナと茜が脱力する中で発されたセイツの言葉に異論はない。まあ、ただの説明なんだから当然の事。…と、そこで私はある事が気になり、イストワールさんへ問う。

 

「ところでイストワールさん。私達が向こうの次元に行ってから…というより、次元を封鎖してから、どの位経ちましたか?…数ヶ月とか数年とか、そういうレベルで経っていたりとかは……」

「しませんよ?数ヶ月どころか、数週間すら経ってません(。・ω・。)」

「そ、そうなんですか?」

 

 ならば、具体的にはどの程度の日数が経過していたのか。当然次元間で時間の流れが違う場合もあるから、向こうの次元での正確な日数は分からないけど、信次元視点では何日経ったのか。それを私はイストワールさんに訊き…得られた答えに、また一つ驚いた。皆でびっくりした。え、その程度!?…と。

 

「思った以上に経ってないわねー…。でも……」

「よくよく考えてみたら、向こうでわたし達がしてきた事を順に並べてみたら、割とおかしくはない…のかも…?…向こうでは、この思考も上手くいかなかった訳だけど……」

「あ…それでいうと、結局エリナさんだけが認識への干渉にある程度の抵抗?…があったのって、なんででしょう…?」

「それは私も考えていたところだよ、ピーシェ君。正直これは根拠となる要素が殆どなくて、ただの予想…いや、想像程度の事しか考えられないが……」

「……多分、私が皆さんとの記憶を…思い出を、殆ど持っていなかったからだと思います」

 

 エストちゃんとディールちゃんの話に続いて、ピーシェが一つ疑問を呈する。言われてみればそうだ、と思う中、ズェピア君が私見を述べかけて…けどそれに被せる形で、エリナ自身が言う。言って、続ける。

 

「きっとあの次元は、思い出を繰り返す、その中に留まろうとする空間です。そして河原で見た人の幻影?…が複数人だった事を考えると、多分その中には『誰か』との思い出も含まれている筈。だから、『皆』との思い出がある皆さんには効果が強く、逆に私だけの思い出しかなかった私には効果が薄かった…とかなんじゃないでしょうか」

 

 多分こういう事なんだろう、とエリナは語る。…そうなのかもしれない。確たる証拠はやっぱりないんだろうけど、それは違うだろうと言えるだけの要素もない。第一、否定しなきゃいけない事でもない。

 ただ…そうだとしたら、悲しいと思う。思い出がない事が、功を奏したなんて。思い出がなくて良かったなんて。たとえその通りだったとしても、そのおかげで何とかなったのだとしても、やっぱりそれは悲しい事で……だから。

 

「だったらエリナ、今回の事が…向こうの次元で体験した事全部が、エリナと私達との最初の思い出だね」

「──ぁ…」

 

 そうでしょう?と私が伝えた言葉に、エリナは目を丸くする。それに皆は頷いて…ばっ、とネプテューヌが前に出る。

 

「そうそう!それに思い出は、それだけじゃないよ?だってエリナちゃん、皆と思い出を作りたいって書いてたもんね!」

「パープルハート様……え、なんで知ってるんです!?」

「え、見たから?」

「ひ、人の日記を覗き見しないで下さいっ!」

 

 かぁっと顔を赤くするエリナの脇腹を、ネプテューヌがからかうように肘で小突く。それを見て、私達は微笑んだり、肩を竦めたり、人によっては羞恥の感情に思いきり興奮したりする。……え、最後のは一人しか思い付かない?…それはまあ、そうだよね…。

 

「思い出、作る?今から作る?」

「いやぁ、今はまずゆっくりしたいところッスねぇ。けど、ウチも祝勝会をやりたいと思ってたところッスし…ここは一つ、帰る前に何日か信次元に滞在するってのはどうッスか?勿論イリゼ達は歓迎ッスよね?」

「え?それはまあ、その通りだけど…皆はどう?色々大変だったし、早く帰りたかったりする?」

「すみません。機密情報の塊なので、一先ず機体だけは先に送還させて頂かせても宜しいですか?…自分はまあ…ブラン様の事ですから、残って皆と交流してこいと言われるでしょうが……」

 

 それもそうだよね、と私はワイト君の言葉に頷く。だけど、それ以外の返答はない。誰も、早く帰りたい訳ではないらしい。…あ、不味い。また頬が緩む。ここで緩んだ顔を見せたら、分かり易く喜んでるって弄られるから堪えないと……!

 

「こほん。それじゃあ皆…まずはお風呂、入りましょ?」

『賛成!』

「うおっ、女性メンバー全員が賛成してる…っと、そうだ。いい加減入ってきたらどーよ?」

『……?』

 

 そうだお風呂!シャワーだけじゃない、湯船に浸かってのんびりとする入浴!…と私達がテンションを上げる中、グレイブ君はちらりと廊下へ繋がる扉の方を見る。なんだろうと思って見れば、扉は何故か僅かに空いていて、グレイブ君の呼び掛けに反応したのか「ぴゃ、ぴゃい!」…という奇妙な声が聞こえてくる。そして、扉はゆっくりと開かれて……

 

「あ、あ、あのっ…わ、私はイリゼ…って、いいます…!で、でも、別次元のイリゼ、とか…じゃ、なくて…だから、えとえと…原初の女神のイリゼ、です…!宜しく、お願い…します……っ!」

 

 おどおど、わたわた、びくびくと、凡そ自信や余裕からはかけ離れた様子で現れ、自己紹介をする…オリゼ。私ではない私。もう一人の私。複製体ではない…私やイストワールさん、セイツを創り出した女神。当然皆は、オリゼの存在に目を丸くしていた。そんな皆とオリゼとのやり取りについては……また、別の話。

 

(…でも、あの次元ってなんだったんだろう…。幾ら不安定で不完全な次元だからって、あんな思い出の中に留まろうとする、過去の何かを映し出してる次元なんて、まるで……)

 

 思い出すのは、零次元の事。あの次元も、色々と普通じゃなかった。私はそれについて詳しい訳じゃないけど…もしかしたら、何かしら関係があったり、無関係でも性質的に近いものがあったりとかしたのかもしれない。或いは、もう一つ…ディールちゃんと出会った創滅の迷宮の事も思い出したけど、あれはまた何か違う気がする。上手く言えないし、私の勘違いかもしれないけど…そう、思う。

 

「イリゼー?何黄昏てるのよ?」

「あ…別に黄昏てる訳じゃないよ。ただちょっと、考え事をしていただけ」

 

 セイツに呼び掛けられ、私は皆がお風呂に行こうとしてる事に気付く。勿論私もお風呂には入りたい訳で、だから一旦今の思考は頭の隅に追いやっておく。部屋を出ていく皆に続く。

 

(思い出、か…うん。どんな場所であろうと、どんな経験であろうと、思い出は生まれる、作れる。そしてそれが、誰かとの…繋がりを紡げた相手となら、大切な歩みの一つになる。記憶に、心に、残ってくれる。そうして積み重ねた思い出が、力に…未来へ進む期待と希望になってくれる。だから…私ももっと、作っていこう。皆との、思い出を)

 

 ちょっと大仰に考えちゃったけど、そんなに難しい事じゃない。難しく捉える必要もない。誰かと、皆と過ごしていれば、色んな経験をして心を震わせていれば、自然とそれは思い出になっていくんだから。これからの時間も、皆が信次元に滞在してくれる間の日々も、その一つ。早速私は、私達はまた、新たな思い出を築いていく。

 皆を追って歩く中、そこでちらりと視界に映ったのは、窓越しに見える神生オデッサフィアの空。きっと間も無く消えてしまうあの次元とも違う、でも同じように青い空。この空の下で、これから私達はまた皆との時間を重ねる。そして、皆が帰った時…きっと私は、こう思うんだ。──また一つ、素敵な思い出を作れたな、って。




今回のパロディ解説

・「〜〜某狩りゲー〜〜」
モンハンシリーズの事。そして触れているのは、そのまんまモンハンにおける裏世界(バグ状態)の事です。そういえば今気付きましたが、OSの合同コラボもバグが起こっていましたね。

・〜〜某無印〜〜
原作シリーズの一作目、超次元ゲイム ネプテューヌの事。原作シリーズといえば、ナンバリングの最新作情報が遂に出てきましたね。さて、一体どうなる事やら……。

・〜〜某最も有名なゲームキャラクター
マリオシリーズの主人公の一人、マリオの事。この作品やキャラクターに関するギネス記録って、結構色々あるんですよね。最速クリアとか最も多くのマリオグッズを持ってる…とか、ほんと色々あるみたいです。




 かれこれ三度目となる合同コラボの本編は、これにて完結です。今回も参加して下さった皆様、お付き合いして下さった皆様、ありがとうございました。やはり今回も反省点が多く、反省どころか失敗したなぁ…という点も色々あったのですが…それでも楽しいコラボでした。やって良かったと、私は心から思っています。反省は多いですが、これは我ながら上手い!…と思える展開もちょっとはありましたしね。だから、反省はあれど後悔はないのです。
…さて、それで…ですが、もう察している方は多いでしょう。えぇそうです、今回もまだ番外編という形でちょっと続きます。コラボ本編の時間軸の話であったり、最終話の後の話だったりと様々ですので、こちらも是非お楽しみ下さいっ!
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