超次元ゲイムネプテューヌ Origins Transition 作:シモツキ
前に皆が信次元へと来た時は、元から私達が招待をしていて、皆が来る…って事が分かっている状態だった。だから色々と準備も出来たし、予定も考えていた。
対して今回は、紆余曲折を経てそうしようと決まった事。状況が状況だから、当然何の準備もしてないし、出来なかった。これは本当に仕方のない事だけど…そういう経緯があるから、特別何かをやるって事もない。各々が、のんびりと過ごしている。そんな、ある日の事。
「よしよし〜、うりうりうり〜」
「ぬらら〜、ぬらぁ…♪」
「ちるちる〜、るちる〜♪」
なでなで、ふにふにと、頭を撫でて顎の下を擽る。私の手付きに、ライヌちゃんとるーちゃんは気持ち良さそうな鳴き声を上げる。
見ての通り、或いは読んだ通り、今私はライヌちゃん、るーちゃんと戯れている真っ最中。長期間じゃないとはいえ、また私は不在にしちゃった訳だから、戻ってきてからは皆との交流をしつつも、しっかりライヌちゃん達との時間を作っている。
「ライヌちゃん、るーちゃん、ちょこちょこ寂しい思いをさせちゃってごめんね。…あ、でも…こうしていつも一緒にいるから、そんなに寂しくもなかったかな?」
「ちるう」
「んふふ、そう?やっぱり寂しかった?それじゃあもっと沢山撫でて──」
「……ぬら?」
違う、と言っているように聞こえるるーちゃんの鳴き声を受けて、私の頬は自然と緩む。そして言葉通り、更に一杯撫でようとして…そこで不意に、ライヌちゃんが耳を立て、ぴくりと身体を震わせた。
「どうかしたの?ライヌちゃん」
何事かと私が問えば、ライヌちゃんはぴょこぴょこと窓際へ。その行動に、るーちゃんはきょとんとし、私も首を傾げ……けど、静かになった事で私も気付く。
(これは…歌……?)
微かに聞こえるのは、歌っているような音。それも聞こえ方からして、音の発生源は外。
歌が聞こえる…それ自体は、決しておかしな事じゃない。ただ、今は夜で、ここは教会なんだから、近くでストリートミュージシャンが歌っている…なんて事はない筈。聞こえる歌らしき音は大きくもないし、放っておいても良いような気はするけど……ライヌちゃんだけでなく、今はるーちゃんも気付いてその音を気にしている。
「んー…ちょっと、確かめに行ってこよっか。多分、そんなに遠くないだろうからさ」
ならば、と私はライヌちゃんを抱え上げる。るーちゃんにも頭に乗ってもらって、部屋を出る。ぽてぽてと歩いて、廊下から外へ。
「ぬら……」
「ちる……」
「どっちも偉い偉い。……あれ、でもこれって…」
中から出た瞬間、ライヌちゃん達はぴたっと身体の動きを止める。万が一何も知らない人に出くわしても大丈夫なように、ぬいぐるみのフリをする。そんなライヌちゃん達を褒めつつ私は音に耳を傾け…この歌が、教会裏手の敷地内から発されている可能性が思い浮かぶ。
これは一体どういう事か。荒事になる…ってことは流石にないと思うけど、一応警戒しつつ歩みを進める。そして、私は教会の裏手側へと出て……
「ら〜ぷ〜らぷ〜ぷ〜らぷ〜ら〜ぷぷ〜♪」
見つけた。夜空を見上げるようにしながら、気持ち良さそうに歌っている存在……フロストを。
「ちるぅ…ちるっ!ちーるー!」
「うぇっ!?あっ、ちょっ……!」
そういえば、あの子は(というか種族単位で?)歌うのが好きなんだっけ、と私が思っていると、当然るーちゃんが私の頭の上から飛び立つ。嬉しそうに鳴きながら、フロストの方へ飛んでいく。いきなりのその行動に、私は驚き……次の瞬間、フロストの影からも、驚いたような声が聞こえてきた。
「わっ!?あ、るーちゃん!?」
「やっぱり、愛月君もいたんだ…えぇと、愛月君達はここで何を?」
飛び立ったるーちゃんを追い掛けた私は、フロスト…それに愛月君とも合流。ふんわりと滞空するるーちゃんがフロストへと話し掛け、それにフロストが答えている中、恐らく見ての通りなんだろうけど…と思いながらも、私は愛月君へ問う。
「実は…って言う程じゃないけど、フロストが歌いたくなったみたいでね。でも教会の中じゃ誰かの迷惑になるかもしれないし、かと言って外に出て知らない人にフロストがモンスターだと…いや、ポケモンもモンスターなんだけど…思われちゃったら困るから、ここで歌わせてあげてたんだ」
「そっか。あ、そうだ。紹介するね、フロストちゃん。この子はライヌちゃんで、そっちの子はるーちゃんだよ」
私がフロストにライヌちゃんとるーちゃんの事を伝えれば、フロストは理解したように一つ鳴く。すると愛月君も、ファングとハートフルを呼んで、ライヌちゃん達と顔合わせ。
知らない相手が複数いるという状況に、ライヌちゃんは私の腕の中でぷるぷると震える。一方るーちゃんは、自己紹介をするように鳴きながら飛ぶ。…うーん…ライヌちゃんを連れてきたのは失敗だったかな…?でも、最初に歌に気付いて気にしてたのもライヌちゃんだし……。
「あはは、るーちゃんご機嫌だね」
「るーちゃんも歌うのが好きだからね。同じ趣味を持つ相手に会えた、って感じで喜んでるんじゃないかな?」
そう。歌うのが好きなのは、るーちゃんも同じ事。それにるーちゃんにとってフロスト達は、広い意味でポケモンという『仲間』な訳だし、そういう意味でも会えて嬉しいのかもしれない。
「ちーる、ちるちるぅ!」
「らぷぅ?」
「ぐる、ぐぁう!」
「ふゅー、ひゅぃ……」
「…ぬ、ぬら……」
宙で身体を揺らすようにしながらるーちゃんが何かを言い、それに対してフロストは首を傾けながら、ファングは笑みを浮かべるようにしながら返す。一方ハートフルは愛月君の後ろに隠れるようにしながらこちらを覗いていて、ライヌちゃんは変わらずぷるぷる。…そういえば、ハートフルは人見知りだって愛月君が言ってた気がする。人見知りなハートフルと、怖がりなライヌちゃんなら、少しは気が合うかもしれない。まあ…そんなライヌちゃんとハートフルだからこそ、仲良くなるには時間が掛かりそうだけど。
「ねぇ、愛月君」
「うん?何?」
「こうやって、皆が仲良くしてる姿を見ると…なんか、癒されるよね」
「分かる。ほっこりするよね」
皆が交流を交わす中、私と愛月君はうんうんと互いに頷く。こういう光景は、普段は見られないものだし、そういう意味では愛月君やグレイブ君がちょっと羨ましいなとも思う私。
とまあ、そんなこんなで暫し話していたるーちゃん達だけど、ある時るーちゃんとフロストもさっきの私達の様に頷き合う。そしてるーちゃんは、地面に降りて……どちらからともなく、鳴き始める。
「ちーる〜ちちる〜ちるち〜ちる〜♪」
「らーぷ〜ららぷ〜らぷら〜ぷら〜♪」
『……!』
それを見て、顔を見合わせる私達。間違いない。これは…るーちゃんとライヌちゃんによる、合唱……!
「輪唱だ…輪唱してる……!」
「え?あー、確かに輪唱って感じもあるけど…って、もしかして……輪唱って名前の技もあるの?」
「うん、あるよ。フロストやるーちゃんにはぴったりだよね」
まさか本当にあるとは…と、あっさり答えた愛月君に内心で私は驚く。しかもその輪唱って技は、数値の上ではるーちゃんのエアカッターと同じ位の威力で、誰かに続けて使うと威力が倍になる性質もあるんだとか。…うーん、相変わらずポケモンはちょいちょい謎が多いというか、すぐには納得出来ないような事柄があるなぁ……。
(…まあ、それはそうと…楽しそうで良かった)
気持ち良さそうに歌うるーちゃん達の姿を見て、私はほんわかとした気持ちになる。それは多分るーちゃんやフロスト達自身もそうで、どちらの鳴き声も歌としてよく伸びている。夜空の下の合唱っていうのも、中々雰囲気として良いものがあって……っと、そうだ。
「歌っている途中にごめんね。るーちゃん、歌うんだったら…あっちの姿の方が、もっと良くない?」
「ちるる?ちるっ!」
私の意図が伝わったようで、るーちゃんはぴょこんとその場で跳ねる。そして私は意識を集中し…私からの力を受け取ったるーちゃんは、チルットの姿からチルタリスの姿へと変化。フロストちゃん達が目を丸くする中で、翼を広げたるーちゃんは一つ鳴き…軽く歌ってみせる。
それは、これまで以上に綺麗で、これまで以上に伸びのある歌声。チルットのままでも元気良く、楽しそうに歌えてはいたけど、今は大きく成長した姿も相まって、その透き通るような歌には美しさすらも感じさせる。本当に素敵なソプラノで…ハミングポケモンという種別も納得出来ると、私は心から思う。
「ちーるぅ、るっちる〜♪」
「らぷっぷ〜、らぷぅ!」
一度歌うのを止めたるーちゃんは、フロストちゃんとまたやり取りを交わし、再度歌い始める。
そうして夜空の下、再び奏でられる合唱。高く響くるーちゃんの歌と、柔らかな音色のフロストちゃんの歌が折り重なり、心地良さが心を包む。これには私や愛月君だけでなく、活発なタイプらしいファングもじっと耳を傾けていて…愛月君の後ろからこちらをちらちら見てばかりだったハートフルや、やっぱりまだ私の腕の中からは出ようとしないライヌちゃんも、今は静かに聞いていた。
「…ね、イリゼ。るーちゃんって、普段からこうやってチルタリスの姿になったりしてるの?」
「え?うーん、全くない…って事はないけど、頻度としては偶に…ってところかな。さっきもそうだったけど、普段の姿で歌えない訳じゃないし、教会にいる限り戦闘能力が必要になる事もないし…今の姿になるのには私のシェアエナジーが必要になる以上、無闇矢鱈と使う訳にもいかないからね」
「あ、そっか。それなら仕方ない…けど、やっぱり時々はチルタリスの姿にさせてあげてほしいな。今のるーちゃん、ほんとに伸び伸びしてるみたいだから」
「…そうだね。アドバイスありがと、愛月君」
歌を聴きながら、私と愛月君は話す。確かに今のるーちゃんは、本当に自由に歌っているように見える。ひょっとすると、成長し身体が大きくなる事で、物理的にもより自由を感じる…って事もあるのかもしれない。…るーちゃんに戦闘能力を求めてる訳じゃない…けど、やっぱりずっと戦闘から離れていたら折角の勘とか技のキレも鈍っちゃうだろうし、そういう意味でもこれからは、これまでよりもう少し今の姿になれる機会を増やしてあげようかな。いつまでも、グレイブ君に負けっ放しなのも嫌だしね。
「…ライヌちゃんは、歌わない?」
「ぬぁ…?…ぬら、ぬら…ぬー」
「ふふっ、そっかそっか。それじゃあ今は、一緒に聴いていようね」
頭を撫でながら私が問えば、ライヌちゃんはくるりと腕の中で反転し、私を見上げながら答えてくれる。実際のところ、何と言ったのかは分からない…けど、雰囲気からこのまま聴いていたいんだって事は伝わってきた。そして私達のやり取りを見ていた愛月君は、微笑んでいて…それに気付いたのか、またくるりと反転したライヌちゃんは、愛月君を見つめた後、頷くように小さく頭を動かしていた。…そもそも一頭身なライヌちゃんがどう頷いているかについては訊かないで。私も変だとは思うけど、実際頷いてるように見えるんだから。
「らっぷぅ…らぁぷふ〜♪」
「ちーるちるー!ちちるる〜♪」
そうして歌い終えたるーちゃんとフロストちゃんは、互いにその長い首を伸ばし、頬擦りをするようにして顔をくっ付け合う。そんなるーちゃん達に私と愛月君が拍手を送ると、またるーちゃん達は嬉しそうに鳴いた。
「るーちゃん、フロストちゃん、本当に良い歌だったよ。…それじゃ、キリもいいし…私、何か飲み物取ってくるね。一生懸命歌って、喉乾いてるでしょ?」
という訳で、私はるーちゃんの事を一旦愛月君に任せて、飲み物を取りに教会の建物内へと戻る。台所にまで行ってから、フロストちゃん達の好みやそもそも飲んじゃ不味いものがあるかどうかを確認してない事に気付き、あちゃー…と思いつつも、取り敢えず色々用意してコップと共にお盆に載せる。
それからまた、私は来た道を引き返す形で外へ向かう。お盆を待ってる事もあって、今ライヌちゃんは私の横をぴょこんぴょこんと跳ねる形で付いてきている。凄く怖がりで初対面の相手にはほぼ必ず怯えちゃうライヌちゃんだけど、とっても良い子だし、皆共仲良くなってほしい。…けど、やっぱり時間を掛けなきゃ難しいかなぁ…ライヌちゃんがすぐに仲良くなれたのなんて、もう一人の私であるオリゼか、色々特殊なイリスちゃんか位だし…。
(…けど、歌かぁ…いつかコンサート活動をする時、るーちゃんも一緒に…は、ハードルが高過ぎるけどやりたいな……)
外へ出ても、ライヌちゃんは変わらずぴょこぴょこ。でも段々と私を見る頻度が増えてきて、そろそろまた抱っこした方が良いかな…と、思ったところで。
「……あれ?」
「ぬら?」
私は気付く。るーちゃん達はまた歌っているようで、歌声が聴こえているんだけど…その歌声の中に、さっきまでとは違う響きが加わっている事に。
真っ先に思い付くのは、ファング君やハートフルちゃんが歌っているっていう可能性。でも、聞こえてくる歌声は、どっちもそんな感じじゃない。むしろ、この歌声…っていうか、声は……
「〜♪〜〜♪」
やっぱり、と私は心の中で呟く。建物の角、裏手の手前…そこから覗き込む事で、直接見て、理解した。るーちゃんとフロストちゃんの歌に加わっていたのが、愛月君であった事に。
目を閉じて、愛月君は歌っている。その歌声は、特別上手いって訳じゃないけど、一緒に歌っているライヌちゃんやフロストちゃんは楽しそう。愛月君自身も、歌うのに夢中なようで……歌っている愛月君の姿は、ほんのちょっぴりとだけ普段より大人にも見えた。
(…どうしよっかな…今出ていったら、折角の雰囲気が途切れちゃいそうだし……)
気持ち良く歌っている時、盛り上がっている時に誰かが来たら、大概その瞬間気不味くなる。皆の中にも、カラオケの最中に店員さんが入ってきて、「あっ……」ってなった経験をした人がいると思う。…まあ、店員さんの場合は仕事をしてるだけなんだから、何も悪くないんだけど…ともかく今の雰囲気に、水を差す事はしたくない。だから、私は歌い終わるまで待っていよう、と思った…んだけど……
「……ぬらー」
「──えっ!?」
「あっ……」
隣からおもむろに発された、ライヌちゃんの鳴き声。そこはもっと気を遣ってよ!…なんてライヌちゃんに言える筈もなく…その鳴き声で、愛月君は私達の存在に気付いてしまう。
「えぇ、と…ごめんね?愛月君……」
「ちるるぅ?」
こうなってしまった以上、もう誤魔化しようはない…と出ていく私。きょとんとしているるーちゃん達の視線を受けながら、私は愛月君に謝る。ただまあ、その…私達の存在を、もっと言えば私に聴かれていた事を把握してしまった様子の愛月君は、みるみる内に顔が赤くなっていって……
「も、もぉぉぉぉっ!いるならいるって、言ってよぉぉぉぉおおおおっ!」
この日、夜闇が包む教会裏手へ何よりも響いたのは顔を真っ赤にした愛月君の叫びだった。
*
「唐突だけど、飲み会をしましょ?」
神生オデッセフィアで過ごす、ある夜の事。今回の件を、解決した今の段階から再分析し、今後に備えた対策を考えておきたい…という事でズェピアさん共々影くんに呼ばれた私は、リビングにてその話をしていた…のだが、そんなところでセイツ様がやってきた。…その手に、酒瓶やワイングラスらしき物を色々と抱えた状態で。
「本当に唐突だね、セイツ君」
「悪いが取り込み中だ、他を当たってくれないか?」
「何よー、わたしの酒が飲めないって言うの?」
「何故飲む前から酔っているような台詞を言うのですかセイツ様……」
言いながら、セイツ様はソファに座ってくる。それ自体は、別に何の問題もない。ここは神生オデッセフィア…即ちセイツ様とイリゼ様の国の教会であり、言うなればここの家主の一人なのだから。
ただ、だからと言ってその発言までも受け入れられるかと言われれば、当然そんな事はない。
「まあ、折角だから付き合って頂戴。お酒は好きに飲んでくれればいいし、おつまみも用意するから」
「ふむ…そもそもの話として、どうして飲み会をしたいのかな?セイツ君はお酒好き…ではなかったと記憶しているのだが」
「大方、酔った時にどんな感情を見せてくれるか気になる…ってところだろうさ」
「正解、よく分かってるじゃない。それじゃあ理解も得られたところで早速……」
『いやいやいや……』
流れるように、私達の前へとアルコールを置いていくセイツ様。因みに影くんの前にはリキュール、ズェピアさんの前にはワイン、私の前にはウイスキーだった。
「えぇと、セイツ様。その、日を改めるという事は……」
「改めるって言ったって、皆そんなに長い間滞在するつもりじゃないでしょ?で、もしも二日酔いになっている時にさぁ帰るよ、ってなったら大変でしょ?だから、今が良いと思うの」
「…それはまあ、一理ありますが……」
「流されるなワイト。そもそも付き合わなきゃいけない理由がない」
「相変わらず鋭いわね、影は。けど…それなら訊くけど、貴方達何もせずただ泊まっていって、悪いなぁとは思わない?別にそんな事思う必要はないし、思ってないならいいけど…もし思ってるなら、ここはわたしのお願いに応える事でその借りをチャラにするチャンスよ?」
そういう意味では、貴方達にもメリットがあるでしょう?…とばかりにセイツ様は言う。…この流れで、悪いとは思っていなかった、或いはそもそも悪いという発想自体にならなかった、という返しをするのは非常にハードルが高い…即ち、質問の時点で回答を狭めているという事に、セイツ様は気付いているのだろうか。仮に気付いていたとすれば、それはわざとやっているのか、我々ならこのような訊き方をしてもちゃんと自分の意思を表現出来ると見越しての事なのか。
何れにせよ、問われた以上は返す他ない。そして私は、二人と顔を見合わせ……答える。
「…分かりました。お付き合いさせて頂きます」
「ありがと。…あ、今更だけどこれってアルハラには……」
「当たるな」
「クク、これは裁判所案件だね」
「残念です、セイツ様」
「ちょっとぉ!?」
という訳で、急遽飲み会をする事に決まった。ハラスメントについては…それを受けた側がどう思うかが重要。その点において「よし、弄ってやろう」という雰囲気が一瞬で発生、全員がそれに乗るという土壌がある事を踏まえれば、実際には恐らく当たらないだろう。…それに、私自身は一理あると思っていた、これでささやかながらも宿泊の返礼が出来るなら悪くないとも感じていた為、どちらにせよ本当は残念でも何でもなかったりする。
「さて、それでは飲ませてもらうとしようか。乾杯の合図は……」
「他にやりたい人がいなければ、わたしがするわ」
「それで構わない。…ところで、なんだそれは」
慣れた手付きでズェピアさんがワインをグラスへと注ぐ中、影くんが怪訝な表情を見せる。何の事かと思ってそちらを見ると…確かにそこには、妙なボトルがあった。一体どういう訳か、そのボトルは取り外し可能なダイアル錠によって蓋がロックされていた。そして、問われたセイツ様はボトルを手にして…言う。
「あぁ、これ?これは、アルコール…っていうか色んな耐性が軒並み高い女神でも、がっつり酔えるようにって事で特別に作られた──なんとアルコール度数1000%のトンデモなお酒よ!」
『度数1000%!?』
「因みに名前はマジアル1000%が最有力候補!」
「知るか!」
色んな意味であり得ないセイツ様の発言に、全員揃ってぎょっとする。名前については、更に影くんが突っ込む。ど、度数1000%…?それはまず、物理的に可能なのか……?
「…セイツ様、それは誇大広告か、何かしら情報が誤って伝わっているとかではありませんか……?」
「うーん、まあその可能性もないとは言い切れないけど…少なくとも、皆は絶対飲んじゃ駄目よ?普通の人が飲んだら…いや、吸血鬼がここにはいるけど…一瞬で急性アルコール中毒からの即死ルートも普通にあるから」
「最早それはただの猛毒か何かでは……?」
そんなものを女神様に飲ませて大丈夫なのかと不安になるが、セイツ様はイリゼ様同様、基本はしっかりとしている方。だから恐らく、大丈夫だろう。…そうであってほしい。
「さてと、暗証番号は…確か、1111だったわね」
『セキュリティ……!』
「ふふっ、冗談よ。1111じゃなくて8931、白菜って覚えて頂戴」
「うん、それは某絶叫系芸人のキャッシュカードの暗証番号だね。…セイツ君、君本当にシラフかい?普段はここまでボケる女性ではないだろう?」
「勿論シラフよ?シラフだけど…この面子じゃ、わたしがボケなきゃ延々と真面目な会話が続くだけになりそうじゃない……」
『それは、まぁ……』
ご尤もといえばご尤も。まあともかく、飲むと決めた以上、いつまでも乾杯しないのはむしろ焦ったい…という事で、各々アルコールをグラスに注ぎ(セイツ様はボトルごと持っていた。注ぐと速攻でアルコールが吹き飛ぶかららしい)、私達はセイツ様を見やる。
「こほん。それじゃあ…今日はわたしに付き合ってくれてありがとう。どうこう言ったけど、貴方達とこういう交流をしてみたかったのは本当よ。だから極力皆に楽しんでもらえるように頑張る…なんて言ったら、逆に興醒めよね。だからどうこう言うのはここまでにして、始めるとしましょ?──乾杯!」
『乾杯』
小気味の良い音が、部屋に響く。それからゆっくりと、私はグラスを口へと持っていき……ぐっ、と一気に中身を飲み干す。
「…一口でいくのか」
「アルコールの種類にもよるけど、一杯目は景気付けも兼ねて…ね。ただ勿論、慣れてもいないのに一気飲みをするのは良くない。ズェピアさんの飲むワインの様に、味わって飲んでこそのものもあるしね」
「うむ。ワインはまず香りを楽しみ、次に舌の上で転がして味うものさ」
「流石に詳しいんだな」
言葉を返した影くんのグラスには、まだ半分以上残っている。ズェピアさんも、ワインの色を(目を閉じている為確信はないが)じっくりと見ている。アルコールは、種類に合わせた飲み方があるのは勿論として、個々に合った飲み方をするのが最適であり、飲みの場を楽しいものにする為のマナー。そしてセイツ様はといえば、先程の説明からして仕方ないのだろうが、ボトルからそのままぐびぐひと飲んでおり……
「くーっ!この飲んでるんだか飲んでないんだかよく分からない激烈なスッキリ感と、喉が焼けるどころか爛れてる感のある刺激と、炎を丸呑みしたような熱さ……やっぱり他とは一線を画するわね!」
……本当に、そのお酒と呼ばれているボトル内の物体(最早液体かどうかも怪しい)は大丈夫なのだろうか。セイツ様の反応を見た瞬間、「絶対飲み過ぎないようにしよう。いつでも介抱、或いは救命処置の出来る状態を保とう」…とアイコンタクトで意思の疎通を図る我々だった。
「あ、ところで皆は普段お酒って飲むの?」
「あまり…いや、滅多に飲まないな」
「付き合いとしてはそれなりに飲みますが、普段から積極的に飲んでいる訳ではないですね」
「酒は嗜む程度だね。勿論タバコも吸わない」
「へぇ、そうなの。あ、そういえばおつまみ用意してなかったわね。ちょっと持ってくるわ」
すっ、と立ち上がり、さっさと台所へ向かっていくセイツ様。ここは自分が…と言いたいところだったが、どこに何があるかまだあまり把握していない以上、見送る他ない。
「しかし、あれだね。普段の食からも感じられる事ではあったが、ここに並べられているアルコール類も、殆どは一般的に流通しているもののようだね。無論、安酒ばかり…という訳でもないようだが」
「そんな事も分かるのか、ズェピアは」
「ふふ、先程嗜む程度とは言ったが、社交界で色々と飲んではきていてね。ただ正直なところ、酒も食事と同じで、値段と味が比例する訳ではない。まあ、高価な酒程案外飲み易かったり、質も良かったりする傾向は確かにあるが……」
「それと個々の好みは別、という事だね。それに酒は何かで割ったり、そもそも作る段階で果実を使っていたりするものも多くある。そこでも好みが分かれるだろうから、自分の好みに合う種類を見つけるのが一番ではないかな」
二杯目としてビールを飲みつつ、ズェピアさんに続く形で軽く語る。そんなものか…と影くんも、ちびちびと飲み進めながら聞いている。本来の話を中断する形で始まった飲み会だが…これはこれで、結構いいんじゃないだろうか。
「お待たせ、良さそうなのを幾つか見繕ってきたわ。それから水とかお茶とかジュースとか割るのに使えそうなのも持ってきたらどんどん飲んで」
「なら、早速何かで割らせてもらうか。何にするかな…」
「では、私もバーボンをロックで……」
「……!それ実際に言う人いるのね!」
「はは、冗談です」
嬉々として反応して下さったセイツ様へ、肩を竦めながら返す。因みに映画なんかではよくある(気がする)この頼み方だが、バーボンはあくまで酒のジャンル…要はビールとかワインとかと同じ段階である為、頼み方としては不適切というか、「どのバーボン?」となるのが関の山だったりする。
「いやぁ、でも早速楽しいわね。これはお酒も進んじゃうわ。──ぷはぁ…!」
「それは良かった。因みに、他の面々も呼ぼうとは思わなかったのかい?」
「他って言っても、当然未成年の子達は呼べないでしょ?それに時間も時間だから、もう寝ちゃってる可能性もあるし…って事で、呼ぼうとは思わなかったの。だけどもっと大人数で飲むのも楽しそうよね」
「その場合、楽しいというかやたら騒がしくなりそうだがな…」
「分かってないわねー。その騒がしさも含めての楽しさじゃない」
でしょう?とセイツ様は視線を送ってくる。それに自分が曖昧な笑みで答えると、またセイツ様はぐいっと飲む。どうやらあのボトルは、中も特殊な構造で中身を密閉出来るようになっているらしい。
そうして私達は飲み進める。ペースが早くなってしまわないよう気を付けながら、三杯、四杯と飲酒を重ねる。ついでに時折おつまみも摘む。
「だからね、アレなのよ。皆もっと、感情をオープンにしたっていいの。だって、何も恥ずかしい事なんてないでしょう?むしろ喜んだり楽しんだり、時には怒ったり困ったりする心こそが、人を人たらしめてると言っても過言じゃないんだから」
「えぇ、そうですね。オープン云々はともかく、心の重要性は私も理解しているつもりです」
「そう?それならいいけど。…まあでも、オープンにしようがしまいが、わたしから隠す事なんて出来ないんだけどねっ!」
「なら何故言ったし…というかそもそも、別にセイツは感情が見えている訳でも、暴ける訳でもないだろう?あくまで感じられる…それもせいぜい薄っすらレベルな筈だろうに……」
テンション高くオチ…のようなものを言いながら、例のお酒とは別のものを一気飲みするセイツ様。そこへ影くんが遠慮なく突っ込み、私はズェピアさんと肩を竦め合う。流石にセイツ様は酔っているらしい。…というより、度数が1000もあるならむしろ酔わなければおかしい。これでシラフだったら、そっちの方が恐ろしい。
「むー…貴方達、飲んでるのよね?その割に結構冷静じゃない!もっとこう、ないの!?」
「そう仰られましても……」
「酒は飲んでも飲まれるな、というだろう?」
「それに関しては、そもそも人選が悪いだろう。それこそ他の女神の面々を呼べば良かっただろうに」
「女神なんてわたし含め、元から多かれ少なかれ皆頭のネジ緩いじゃない!」
『…………』
あ、ぶっちゃけたよこの人。…的な空気が部屋を包む。当の本人、セイツ様自身は全然そんな事を気にしていないようだが…酔いが覚めた時、この発言が虚しくなってきたりはしないのだろうか。
「…ま、まあまあ落ち着いて下さいセイツ様。ここは一つ、私がお酌しますので」
「あらそう?じゃあ、酎ハイをもらえるかしら?」
「酎ハイ……やはり、甘い系の方が宜しくて?」
「ふふん、分かってるじゃないワイト。よろしくってよ♪」
スイーツ好き(というか作るのが好き)なイリゼ様同様、セイツ様も甘いものが好きである事は前回神生オデッセフィアに来た時何となく把握していた為、ぱっと見で一番甘そうな酎ハイをグラスに注ぎ、セイツ様に渡す。するとセイツ様はこれを一気飲みし、気分良さそうな表情を浮かべる。
「んー!ワイト、もう一杯注いでくれるかしら?今度は貴方のセンスに任せるわ」
「ええ、セイツ様がお望みであれば。では…今度はサワー系で如何でしょう?」
「如何様にもして頂戴!」
「しっかり酔いが回りつつあるね…ワイト君、あまり飲ませ過ぎるのも良くないのではないかな」
「いや…セイツの話が正しいなら、普通の酒じゃ殆ど酔わないって事になる。ならその普通の酒を何杯も飲ませてそれで満足させる方が、むしろ安全かもしれないぞ」
酎ハイ同様甘い系のサワーを注げば、またもやセイツ様は一気に飲んでしまう。ただ、今回はズェピアさんが危惧していた事を私も考えていた為、気取られないようにしつつ度数が低いものを選んでおいた。影くんの言う通り、普通の…それも度数低めのアルコールを上手く選んでいくのが、一番安全に終わる道だろう。
「ふむ…そういえば先程セイツ君は我々に普段の飲酒について訊いた訳だが、セイツ君自身はどうなのかな?」
「わたし?わたしも普段はあんまり飲まないわね。パーティーみたいな場で飲む事はあるけど、基本酔った事はないわ」
「けど、酒じゃなくてその場の人の感情に酔っているんだろう?」
「あははっ、上手い事言うわね影!イリゼ!ザブトン二十九枚持ってきて!」
「別にそこまで上手くな……いや多い多い二十九枚は多過ぎる!配給がハイパーインフレを起こしてるじゃねぇか…!しかもその言い方、肉のザブトンだな…!?それを二十九枚持ってきてどうする気だ…!後、イリゼいないからな…!?」
「因みに二十九枚っていうのは、『
「どうでも良いし大して上手くもない…!」
どんどん酔いが回っている様子(ただ、呂律はしっかりしてるし思考も支離滅裂ではない。やはり耐性が高いらしい)のセイツ様へ、影くんががっつりと突っ込む。一頻り突っ込んだ後、こちらを見て「ワイトも突っ込んでくれ、丸投げしないでくれ…」という視線を送ってくる。……任せておけばいいかな、と思っていたのがバレてしまった。流石に鋭いな…楽しようとしてすまない、影くん。
と、やり取りが交わされている間に、ズェピアさんは何かを作っていた。そして、作った一杯を、セイツ様の前に差し出す。
「セイツ君。今度は私の一杯を飲んで頂けるかな?少しアレンジしたカルーアミルクだから、これも君の好みに合うと思うよ」
「カルーア…ズェピアさん、それは……」
「問題ないよ、ワイト君。一般的なカルーアミルクよりミルクの割合を高めて、アルコール度数を抑えてある。ついでに氷も多めにしてあるから、見た目よりも少量だよ」
飲み易いが作り方次第ではそこそこのアルコール度数になるカクテルの名前が出た事で一瞬不安になった私だったが、どうやら杞憂だったらしい。
そして狙い通り、カルーアミルクはセイツ様のお気に召したらしい。更にそこからズェピアさんはおつまみを勧めつつ自分から話を振る事で、次の一杯までの感覚を空ける。先程社交界…と言っていたが、これもその時の経験が成せる技…かもしれない。……ふぅ…お茶割りも美味いな…。
「へぇ?話を聞いていると、ズェピアって結構良いお父さんをしてるみたいね」
「はは、そう言ってもらえると嬉しいよ。……結局うっかりスベールバナナ他独自の食べ物を大量にお土産として持っていく事を忘れてしまったから、長女の機嫌を取るのに苦労してしまいそうだけどね」
「長女…あ、長女といえば、影も娘がいたわよね。影も何かお土産を…とかは思わなかったの?後、折角だし影も何か一杯注いでくれると嬉しいわ」
「お土産か…今更だが、何か石でも拾っておけば良かったな……」
(石…?…某チャンピオンの様に珍しい石好きなのか、それとも何でもないただの小石が好きなのか……)
それもそうだな、と言うように小さく呟いた後、影くんも選び始める。時間にすれば短いものだが、影くんは一つ一つを目にやり……微かに頷くと共に、ワインを手に取る。
「ワイン?それはもしかして、わたしにはワインが似合いそうって事かしら?」
「いや別に」
「つ、冷たい…違うなら違うで、もうちょっと何か言ってくれても良いじゃない…!」
「その絡みが鬱陶しいから短く返したんだがな…。…飲んでみて分かったが、割と冷えてるワインはチョコレートと合う。試しに飲んでみろ」
「あ、そうなの?……ほんとだ、結構合うわね!うんうん、ワインは勿論チョコレートもより楽しめるのはポイント高いわ!」
「だろう?こういう形でチョコレートを楽しめるというのは、俺にとっても意外だった。ワイトとズェピアには感謝しないといけないな」
そう言って、影君は表情を緩ませる。まさかこの流れでこんな事を言われるとは思っておらず、私は軽く驚いてしまった。確かに「自分の好みに合う種類を」とは言ったが…そうか、あの後影くんは本当に色々試していたのか…。
「そうだ、因みに影。茜とは飲まないの?夫婦で晩酌とかしないの?」
「それもしないな。……よく考えたら、なんでそういう事も碌にしてないのに、こんな変な絡み方で飲む羽目になってるんだ俺は…はぁ、こんな事ならどこかのタイミングで先に経験しておくべきだった…ワイトやズェピアだけならともかく、なんでイリゼの姉とも飲み会をやってるんだ俺は…はぁぁ……」
「ちょっとー?そんな分かり易く文句言うー?…でも、今見せてくれた感情は良いわ!良い、とっても良い!普段ほんとに見せてくれない類いだから…あーんもう素敵ぃ!もう一杯!」
がっくりと影くんは項垂れる一方、セイツ様は影くんの感情を肴にまた例のトンデモ酒をぐぐっと飲む。何とも対照的な二人のやり取りを前に、私はズェピアさんと顔を見合わせ…軽く肩を竦め合う。思えば先の表情といいこの様子といい、今の影くんは普段よりも緩いというか…一見酔っていない、落ち着いた様子ながらも、実際には少なからず酔っているのかもしれない。
「嘆いても仕方ないよ、影君。むしろこれを切っ掛けとして、今度茜君を誘ってみるのはどうかな?」
「あー、まぁ、それもそうだな…。…だが、茜は飲めるのか…?茜、調子乗って飲みまくって、翌日酷い二日酔いになって…ってなりそうなんだよな…。…それに…うん、いつかは親子で飲んでもみたいものだ……」
「分かるよ、影君。親子で飲み交わすのは親の些細な夢の一つだからね。…しかし、いざやるとなると恐ろしい…上の娘の方はセイツ君、というか女神同様普通の酒ではまず酔わないだろうが、下の娘はそうでもなさそうというか、基本本当に非の打ち所がないレベルで良い子だからこそ、飲酒を知ってしまったらどうなるか…。…いや待て、親が娘を信じなくてどうするズェピア…!そんな事で道を誤る訳がないだろうに……!」
「ちょっとー?二人して何の話してるのよー?」
しみじみと自分のグラスを見つめる影くんへ語り掛けた…かと思いきや、ズェピアさんは謎の自分との対話を始める。これは、ズェピアさんも結構酔っている…の、だろうか?一見そんな感じだが、娘関係で饒舌になるのは元からだった気もする為、これは全く判別が付かない。顔はそんなに赤くもなっていないのか、余計に判断を困らせる。
「道を誤る、か…俺自身が道を誤りに誤ってきた、そのせいで
「それは分からないね。分からないが、親としてしてあげられる事はあるのではないかな?そして…うん、やはり私の娘達はきっと道を踏み外す事はない筈だ。何せ素晴らしい娘達だからね。姉は自由奔放で色んな意味でルールを凌駕してくるが、その実責任感はちゃんとあって、妹の事も家族として愛情をたっぷり向けてくれているし、妹はもうほんとに言う事がない。むしろちょっと位駄目なところあってもいいんだよ?と言ってあげたい位の良い子なんだから、何を心配する必要があるんだって話だったよ」
「ねぇ、ちょっと…?わたしをスルー?スルーするーの?」
「……良いものなんですね、子供というのも。私はそういう話になると、ただ聞いている事しか出来ませんが…それぞれのお子さんへの思いが伝わってきます」
「す、スルー…!?今のしょぼい駄洒落すらスルー…!?…うぅ……」
「子は授かりもの、なんて言葉もある位だからね。本当に良いものだよ。ただ、私の場合は本当に娘達と縁によって親子になれた訳だから、『夫婦』という家族の形を持つ影君の話を、個人的には聞いてみたいものだ」
「止めてくれ、そんなのを話す柄じゃない。それに第一、俺も一般的な夫婦とは大分かけ離れているというか、出会いから夫婦になるまでが独特過ぎるというか…。…後、うん…子は授かりものというのには頷けないかな…俺的には、というか茜的には、『子は勝ち取るもの』なんじゃないかな…はは、はははは……」
遠い目をして、影くんは乾いた笑い声を漏らす。その反応に、私はズェピアさんと顔を見合わせる。一体彼に、彼と茜さんに何があったのだろうか。…気にはなるが、訊かない方が良い気がする…そんな気がしてならなかった。
そうして、飲み会の夜は更けていく。本当に、誘われた時点では思いもしなかった程盛り上がる飲み会になった。だから誘って下さったセイツ様には感謝しかなく、同時にまたいつか、同じメンバーでも他の誰かを交える形でも、二回目をやってみたいと思う。まあ尤も、まだお開きになった訳ではない……
「…ぐすっ……」
『え?』
「わたしも…わたしも混ぜてくれたっていいじゃない!確かにわたしが入るとちょっと盛り上がりが削がれちゃうのかもしれないけど、一回混ぜるだけ混ぜてみるとかしてくれたっていいじゃないのよぉ!それとも何!?男同士で通じ合うものがあるっていうの!?だとしたら仕方ないわね!それはごめんなさい!うぇええええぇぇんっ!」
((な…泣いたぁぁぁぁああああッ!?))
ボトルを抱えたまま、わんわん泣き出すセイツ様。突然の号泣に、私達は全員ぎょっとする。ついでにちょっと、些細な事でも涙を流してしまう(らしい。まだ接した機会が少ない為断定は出来ない)オリゼ様の事も思い出した…が、今はそんな事を考えている場合ではない。これは大変だ、と全員でセイツ様を宥め、セイツ様も参加出来るような話題を提供し……今日、我々は知るのだった。──セイツ様は、泣き上戸だと。
今回のパロディ解説
・「〜〜マジアル1000%〜〜」
マジLOVE1000%のパロディ。うたプリのタイトルの一部であると共に、曲の名前でもあるんですよね。ラブ、とアル、は母音が同じなので響きも似てますし、我ながら良いパロディになったかなと思います。
・「〜〜8931、白菜って覚えて頂戴」、「〜〜某絶叫系芸人〜〜」
お笑い芸人、サンシャイン池崎こと池崎慧さん及び、彼のネタの一つのパロディ。暗証番号系でパロネタをするとしたら、これかイージス(ガンダムSEED)の自爆コードをまず思い付く私です。
・「酒は嗜む〜〜タバコも吸わない」
ジョジョの奇妙な冒険 ダイアモンドは砕けないに登場するキャラの一人、吉良吉影の名台詞の一つのパロディ。でも寝る前にミルクを飲んだりストレッチしたりはしていない…と思います。
・「〜〜イリゼ!ザブトン二十九枚持ってきて!」
笑点における、大喜利の司会者の代名詞的な台詞の一つのパロディ。我ながら、この台詞一つにかなり色々なボケを詰め込んでますね。これは突っ込む方も大変というものです。
・(〜〜某チャンピオン〜〜)
ポケモンシリーズに登場するキャラの一人、ツワブキ・ダイゴの事。彼の石好きは、手持ちのポケモンの傾向にも表れてますよね。そして彼、ポケモンのキャラの中でも珍しく苗字が明かされてるんですよね。
・(〜〜何でもないただの小石が好き〜〜)
おじゃる丸に登場するキャラの一人、田村カズマの事。石が好きなキャラといえばまず彼を連想するのですが、彼は珍しい石ではなく、ただの小石が好きなんですよね。