超次元ゲイムネプテューヌ Origins Transition 作:シモツキ
──小鳥の囀るような、弦楽器の響きのような、透き通るような……至福の音色。天にも昇るような、凡ゆる苦しみから解放されるような、浄化されてしまうような……魅惑の言霊。比喩でも、誇張でもない……正真正銘、女神の囁き。
『──ルナ♡』
それが聞こえる。それが響く。私の中で、木霊する。夢見心地で、溺れてしまうようで、だけど妄想なんかじゃない…実感のある、福音。
私は理解した。頭で、耳で、心で確信した。ここが、これが、これこそが──楽園だって。
*
「生ハムの原木ってさ、実際植えたらどうなるんだろうね。果物みたいにハムが出来るのかな?それとも、幹とか枝を切ってハムにするのかな?」
「えっと……生ハムの原木っていうのは、見た目がそれっぽいから原木って呼ばれてるだけで、別に植物ではないよ……?」
「……そうなの?」
神生オデッセフィアの廊下。そこを私は、ピーシェと歩いていた。特に目的もなく、やっぱり教会って広いなぁ、ぐるっと回るだけで軽い散歩になるなぁ…とか思いながら回っていたら、お出掛けから帰ってきたところらしいピーシェと会って、そのピーシェにのこのこ付いていって…今に至る。
「…ねぇルナ、もしかしてルナはハムが肉だって知らない──」
「し、知ってるよ!?流石に知ってるし、私も変だなぁとは思ってたよ!?けどほら、ゴムの木からはちゃんとゴムが出来るし……」
「あー……」
わたわたと私が釈明すると、ピーシェは理解してくれた…と思うけど、何かこう、温かい目を向けられている気がする。…うぅ……。
「そ、そんな事よりアレだよ、アレ!」
「アレって…どれ?」
「え、えぇっと……あ!ほら、声がする!」
強引に話を変えようとして、けど何も思い付かない私。だけどそこで、丁度リビングのところに出て…絶好のチャンスだ、と私はリビングの中に飛び込む。
「うぇ?」
「え、るなちゃん?」
「どうしたんッスか?」
リビングの中にいたのは、イリゼ、茜、アイの三人。あれ、この三人って……
「……相棒。相棒って、黄色とか赤とかにピカピカ光ったり出来る?」
『はい。電撃系統の魔法を調整すれば可能ですが…何をなさるおつもりですか?』
「えと、ペンライトの代わりに……」
『幾ら何でも私をそんな使い方しようとしないで下さい…後、危険極まりないので止めて下さい……』
「だ、だよね、ごめん……」
言われてみればその通り。相棒は剣なんだから、それを振り回したら大変な事になる。一瞬で警備員さんに捕まって、出禁になる事間違いなし。
と、私が
「何やってるのルナ…。…皆さんも、何をしてたんです?」
自然な流れで話を逸らしてくれたピーシェに、私は心から感謝。それと共に、ピーシェの言葉で私はリビングのテーブルの上にヘッドホンがある事に気付く。
「あぁ、これ?これは……」
『……?』
質問に答えようとしたのはイリゼ。けどイリゼは途中でぴたっと止まって、それから二人と顔を見合わせる。そして、私達が首を傾げる中、三人は小声で何かやり取りをしていて…十数秒後、視線は再び私達の方へ。
「ね、二人共。二人はASMRって知ってる?」
「え?両親が揃って伝説の傭兵なあの?」
「…光が逆流してくるやつ……?」
「うーん、二人共惜しいけど違うッス」
「いや、全然惜しくないでしょ……」
捻り出すようにして茜の質問に答えたら、惜しかった。…と思いきや、全然違った。アイがイリゼに突っ込まれていた。
「あはは…こほん。ASMRってゆーのは、簡単に言えば何かを聞いたり見たりする事で、心地良さを感じる反応の事だよ」
「そういう反応を引き出す音楽とか動画をASMRって言ったりもするけどね。ほら、食べ物の咀嚼音とか、自然の音とかの動画が人気だったりするの知らない?」
「あぁー、なんかそれは知ってるかも。体験した事はないけど」
「…ひょっとして、それを楽しんでたんです?」
「ちっちっち、ウチ等の狙いは楽しむ側じゃなくて…楽しませる側ッスよ、ピーシェ」
ふふん、とアイは軽く笑う。つまり…三人は動画制作中だった?…と思った私だけど、そうでもないらしい。というか、今私は三人から見られている。見つめられている。え、え?どういう事……?
「ルナ。今から私達に、協力してくれないかな?」
「へ?…い、いいけど……」
三人にじっと見つめられながら言われて、思わず私は頷く。真剣な眼差しだったから、つい頷いちゃって…でも、それに対する後悔はない。だって三人は大事な友達だし、これまでも色々助けられてきてるんだから。その三人にお返しが出来るなら、それは嬉しい事だから。
「あ…もう、内容も聞かずに了承して…。…まあ、この三人なら悪いお願いはしないと思うけど……」
「う、ごめんピーシェ……」
「ふっふっふ、心配せずとも悪いようにはしないッスよぉ?」
「なんで怪しい言い方してるんですかアイさんは……」
それから三人は、また顔を合わせて内緒話…をしていたかと思いきや、今度は三人でじゃんけんを始める。じゃんけんぽん、あいこでしょ、と数度やって…イリゼ、敗北。そして勝った二人は、小さく頷き合い……私はイリゼに、リビングのソファへ誘導される。
「……?座ればいいの?」
「うん。それじゃあアイ、茜…最初の番を譲ってあげたんだから、頑張ってよね?」
「譲ったってゆーか、じゃんけんに負けただけだけどねー。じゃあ始めるよー、るなちゃん」
「は、始める?私は何をすれば……?」
「ルナはじっとしてて、終わったら感想を言ってくれるだけでいいッスよ〜」
何をするのか全く分からず困惑する中、茜とアイは私の左右に座ってくる。そうして二人は、それぞれ私の方を向いて……
「──まずは、おはようボイスからやっていくね」
「──要は、そういうシチュって事ッス」
「ぴぁっ…!?」
次の瞬間、耳元で聞こえた二人の声。茜とアイの、囁き声。直後、驚きで私は変な声を上げてしまって…恥ずかしくなった。だってほら、四人全員に見られてるし…。……って、うん?おはようボイス…?そういうシチュ…?…こ、これって…これって、もしかして……。
「わ、私今から、二人の声をASMRとして受けるの…!?」
『そう(だ・ッス)よ?』
左右からの、同時の答え。今から私は囁かれる。茜とアイに、耳のすぐ側で。それを理解した事で、一気に緊張とドキドキ感が湧き上がってくる中…囁きASMRが、始まった。
「こほん。──おはよー、るなちゃん。もう朝だよ、起きなきゃ駄目だよー?」
最初の声は、茜の声。優しい声が、間近で聞こえて…次に聞こえたのは、アイの声。
「──ふぁぁ…もう起きるんスか?ルナ。折角なんスから、もうちょっとウチと一緒に寝ようじゃないッスかー」
ふわりとした、ふにゃりとした声が、反対側から聞こえてくる。私を起こそうとする茜と、まだ寝ようと誘ってくるアイ、真逆の言葉が左と右から聞こえてきて…それが、続く。
「こーら、起きようねるなちゃん。もう朝ご飯出来てるよ?今日のおかずは、あまーい卵焼きだよ?ふふっ、るなちゃんは甘いの好きだよね?」
「ルナー、お布団の中はぬくぬくッスよー?お布団も、まだルナに行ってほしくないって言ってるッスよー?だから一緒に二度寝して、のーんびりするッスよね?」
「ほらほらるなちゃん、起きよ?頑張って、お布団から出よ?」
「のんびりぬくぬく、レッツお寝坊タイムッス〜♪」
(ふ…ふぉおぉぉぉぉ……っ!)
まるで子供を見てあげているような、甘々チックな茜。緩〜く私を二度寝に引き込もうとする、猫撫で声全開のアイ。それは、凄く…凄く刺激的だった。私は茜がもう子供のいるお母さんだって知ってるからこそ、茜がこうやって子供を起こしてる姿を用意に想像出来ちゃうし、同じように寝起きのアイのゆるゆる具合をよく知っているから、本当に誘われている気分になる。
しかも何が凄いって、ここには実際に二人がいる。息遣いも聞こえるし、触れようと思えばすぐにでも触れられる。その事実が、とんでもなく私の心を高鳴らせていて……うん、ほんとこれ…すっごい…。
「良かった…凄く良かったよ、二人共……!」
「お、そッスか?いやぁ、新たな活動として思い付きで初めて見た訳ッスけど、結構好感触みたいッスねぇ」
「うんうん、なんかちょっと自信出てきたかも!」
力強く、私は感想を口にする。普段の二人を知っているからこその楽しみ方が出来たのは事実。だけど間違いなく、これは普段を知らなくても楽しめる。
「さてと、じゃあ次は私だね。最初は初めてって事でシチュの指定もこっちでやった訳だけど…ルナ、何か希望はある?付き合ってもらってる訳だし、出来る範囲でやってみるよ?」
「い、いいの?それじゃあ……はっ…!」
「……?」
「そ、その…お姉ちゃん、とか…出来たりする……?」
「えっ?お姉ちゃん…ルナお姉ちゃん……?」
「あ、ごめんそっちじゃなくて…!」
実際にお姉ちゃんがいるからか、イリゼのお姉ちゃん呼びも悪くない…けど、私が言いたかったのはそういう事じゃない。私が言いたかったのは…その、逆。
勿論、イリゼに対するお姉ちゃん願望がある訳じゃない。だってイリゼは友達だし。だからあくまで…そう、あくまでそういうシチュエーションとして、ある種の遊びとして、お姉ちゃんなイリゼを感じてみたいと思っただけ。……なんか前に、冗談でお母さん呼びはした事もあったけど。
ただ、これだけだと理由としては半分。お姉ちゃんなイリゼを感じたいというのは本当だけど…それだけでも、ない。
「あ、あー…うん、まぁ…やってみようか」
「ほ、ほんと?なら……えっと、ピーシェも出来たり…する…?」
「へ?わ、私?」
こくり、と私は頷いてみせる。お姉ちゃんシチュを希望した、もう一つの理由がピーシェ。というより、まずピーシェの存在から、お姉ちゃんシチュが頭に浮かんだ。
そんな私の言葉と首肯を受けて、ピーシェは動揺する。まあ、それはそう。ピーシェは私と一緒に来ただけで、ASMRをやろうってしていた訳じゃないんだから。
「ぜーちゃんとぴぃちゃんかぁ…私達は二人で同時にやったし、それもいいんじゃないかな?」
「い、いやでも…その、正直恥ずかしいっていうか……」
「気にする事はないと思うッスよ?ここにいるのは受けるルナと、同じようにやるかもうやったウチ等だけッスし」
「そうかもしれませんけど…だとしても、何というか…こういう形で、ルナのお姉ちゃんみたいに振る舞うのは……」
結構茜とアイは乗ってくれてる感じだけど、ピーシェ本人はそうじゃない。渋りながら、私の事をちらちらと見てくる。その様子は、嫌って感じではないけど、やろうって感じでもなくて……
「…だよね、そうだよね…困らせてごめん、ピーシェ……」
「うっ…べ、別に困らせられたなんて事は……」
「ううん、ピーシェは優しいもんね…でも、聴きたかったな…ピーシェがお姉ちゃんって絶対似合うし、絶対似合うんだから絶対ときめくに決まってるから、聴きたかったけど…そうだよね、無理を言っちゃ駄目だよね……」
「ちょ、ちょっと…?いや、あの、その…ルナ……?」
「…聴きたいな…凄く凄く、聴きたかったな…ぐすん……」
「…ぅ、ぐ……」
分かっている。これが我が儘だった事は。分かっているのに、私はしょんぼりとしてしまう。これじゃそれこそ駄目だって理解してるのに、私は私が思っていた以上にしゅんとしてしまって、自分でもよく分からない内に思いが口から漏れ出していて……そんな中、聞こえたのは一つの声。
「…わ、分かった…!そこまでやってほしいなら…やるよ、ルナ」
「……!ほんとに?ほんとにいいの?」
「ほんとにいいの。もう…一回だけ、だからね?」
ちょっと困ったように、でも優しい声で言ってくれるピーシェに、私はこくこくと何度も頷く。そして今度はイリゼとピーシェが私の左と右に座って…スタンバイ。
「ど、ドキドキ…ドキドキ……」
「口でドキドキって言ってる…なんか、流れでそのまま座っちゃいましたけど、どういう感じにやります?」
「うー、ん…ルナ希望のシチュだし、各々思い付くままにやる…でどう?それとも、打ち合わせしておきたい?」
「いえ、それでいいです。…このシチュできっちり打ち合わせをやったら、余計恥ずかしくなりそうなので……」
二人は少しだけ確認の話をして、それぞれ私の方を向く。さっき一度ASMRを経験した、知ったからこその緊張感が湧き上がってくる中、二人は小さく深呼吸をして……始まる。
「──ただいまー。ルナ、お留守番お疲れ様」
「──ごめんね、ルナ。急にお留守番させちゃって。寂しくなかった?」
シチュエーションは、お留守番してるところに帰ってきたお姉ちゃん二人。打ち合わせなしなのに、ピーシェは速攻でイリゼの始めたシチュエーションに追従していて…二人の言葉に、私はぶんぶんと何度も顔を縦に振る。っていうか、気付いたら振っていた。頷きまくっていた。
「私達が出掛けてる間、何もなかった?誰か来たりはした?」
「いつもありがとね、お留守番してくれて。ルナがお留守番をしてくれてるおかけで、すっごく助かるな。ちゃんと一人でお留守番出来るんだから、もうルナもちょっとお姉ちゃんだね」
「…あれ、この食べかす…こーら、帰ったらすぐご飯だって言ったのに、ルナったらお菓子食べてたね?全くもう…ほらほら、ご飯の前にお菓子食べちゃった、悪い口はこれかな?悪い子さんは、反省してもらう為にむにむにさせてもらうからね?」
「あらら…でも、ルナはちゃんとご飯も食べられるよね?いつも美味しい、って言って食べてくれるもんねー。…だけど、無理して食べちゃ駄目だよ?お腹一杯で食べられない時は、素直にそう言わなくちゃ駄目だよ?」
「また甘やかして…って、え?…私達の為に、お菓子残しておいてくれたの?…もう、ルナったら……うん、ありがとね。それじゃあこれは、ご飯の後に皆で食べよ?これは私達に残しておいてくれたものだけど…皆で一緒に食べた方が、美味しいでしょ?」
「それじゃあルナ、すぐにご飯を作っちゃうから待っててね。今日はルナも大好きなカレーだよ。…っと、そうだ。だけどその前に、ただいまの……」
『ぎゅー♪』
いつものイメージとは違って、ちょっと厳しい感じのイリゼ。そのイリゼとは対照的に、ひたすら甘くしてくれるピーシェ。だけどそのギャップが良い。そのギャップが凄い。厳しいっていってもキツい感じはない、むしろすっごく優しさを感じる言い方だし、しかもそこからシンプルに優しい姿を見せてくれるから二度素敵。ほんのり厳しめイリゼからの優しいイリゼを流れるように感じられるなんて、素敵過ぎる。
でもそれ以上に普段とのギャップを感じさせてくれるのがピーシェで、本当に甘くっていうか、もう甘やかされちゃってる。褒めてくれるし肯定してくれるし、しかも心配までしてくれるなんて、こんなのもうお姉ちゃんでしかない。というかそうだった、お姉ちゃんシチュだった。後、ピーシェの作った流れの中での私は結構幼いみたいで…ナイス過ぎる。ピーシェも小さい子が相手だとこうなるんだって思うと、ほんと良い。良いオブ良い。良いオンザ良い。
それに何より、何より何より……最後の、ぎゅー。イリゼが察した事による、左右からのダブルぎゅー。イリゼの柔らかな声と、ピーシェの静かな声で、同時に耳元にぎゅーっと囁かれて、その声には確かな温かさがあって……
「…私、妹になります。なりました。これから宜しくお願いします」
『ルナ!?』
気付いたら、妹宣言していた。立って、振り返って、二人に頭を下げていた。
「……あ…ご、ごめん二人共…!二人のASMRがあんまりにも良くて、良過ぎて、なんか私の中の常識とか倫理とか色々吹っ飛んじゃって……」
「そ、そっか…えぇと、じゃあ感想としては……」
「最高過ぎて最高。超絶最高超最高」
「語彙…!語彙力がやたら貧相になってるよルナ…!」
確かに我ながらレベルの低い感想だとは思うけど…仕方ない。だって本当に、二人の事で頭が一杯になっちゃったんだから。っていうかこれ以上はいけない。これ以上は間違いなく私、イリゼお姉ちゃんとピーシェお姉ちゃんって呼んでしまう。ほんと、冗談抜きにそう思っちゃう位に良くて…イリゼもちょっと困った顔をしながらも、そんなに嫌そうにはしていなかったからほっとした。
…んだけど、そこで私は、ピーシェが静かになっている事に気付く。で、何だろうと思ってピーシェの顔を覗き込んでみると、ピーシェは何故か顔が真っ赤っか。これ、ひょっとして…。
「…ピーシェ…もしかして、恥ずかしくなってる…?」
「……っっ!そ、そそ、そんなんじゃないしっ!」
……やっぱり、照れてた。滅茶苦茶恥ずかしく感じてた。本人は否定してる?いやいや…これが嘘だって事は、流石の私でも分かる。
「あはは…まあ、そうだよね。私も正直、ちょっと恥ずかしかったし」
「けど、中々良いお姉ちゃんっぷりだったと思うッスよー?」
「だよねー。私も良かったと思うよ、ぴぃちゃん」
「だ、だから違っ…!……っ、〜〜〜〜っっ!」
皆も嘘だと見抜いたみたいで、イリゼは苦笑し、アイと茜はにこにこと笑う。でもそんな皆の反応が、更にピーシェの恥ずかしさを加速させちゃったみたいで、ピーシェは顔どころか耳まで真っ赤になり……
「い、一回って言ったから!一回って言ったからぁああああぁぁぁぁっ!!」
凄まじい勢いで、リビングから走り去ってしまった。ちゃんと掃除されているからか、埃が立つ事はなかったけど、外なら砂埃が思いっきり立ちそうなダッシュで私達の前から逃走してしまった。
「…ほんと、ピーシェって瞬間的に凄く可愛いよね」
『うんうん』
何気なく呟いた私の言葉と、三人の首肯。…けど、ほんと良かったなぁ…やっぱり、お姉ちゃんって良いなぁ……。
「…むむ……」
「……?えと、どうしたの茜」
「どうもこうも…るなちゃん、私達の時よりぜーちゃん達の時の方が、明らかに嬉しそうだったよね…?」
「え!?い、いや、そんな事は……」
ない、とここで否定出来なかったのが私の悪いところ。それはアイも感じてたみたいで、何とも言えないような表情をしている。…いや、違う。違うんだよ?だってほら、イリゼ達の時はシチュの指定までさせてもらった訳だし、逆に二人の時は最初の一回で二人も手探りだったと思うし。だから別に、茜とアイがイリゼとピーシェに思ってたなんて事は……
「だから、今度は本気でやらせてもらうね、るなちゃん」
な、なんですとー!?え、何!?これ二回目!?もう一回やってもらえる流れなの!?
…と、私が驚愕する中、茜はしゅるり、とサイドテールの髪を解く。その状態になるのは、お風呂に入る時か、寝る時位で…次の瞬間、再び私の隣に座った…しかも今度は身体全体で私の方を向いた茜が、耳元で囁く。
「──ねぇ、まだ起きてる?起きてるんだよね?寝たふりしても、私には分かるんだから。それとも…ほんとに寝ちゃった?」
「…そっかぁ、ほんとーに寝ちゃったかぁ…それじゃあ、今からイタズラしても、気付かないし分からないよね?もう、実は起きてました…って言っても無駄だよ?」
それは、さっきまでとは打って変わって静かな…それなのに、何か情熱を感じる声。どきりとする。自分でも何故か分からないのに…今の茜の声は、声から感じる雰囲気には、凄くドキドキさせられる。
「ふふっ、それじゃあ何をしちゃおうかなぁ…?こーんなに無防備で、寝てるから何も出来ないるなちゃんに、何をしてあげようかなぁ…?…あ、そーだ…んっ……」
(な、何!?何をしてるの!?どういう設定で、私は何をされちゃってるのぉぉぉぉっ!?)
近くで、本当に近くで聞こえる息遣い。茜の声はまるで耳を、心を擽ってくるようで、ドキドキが止まらない。いつもの茜は女の子女の子してて、それが素敵だと思うんだけど、今は大人の女性にしか思えなくて…何だか凄く、イケナイ感じ。
しかもそこから、茜は黙る。黙って、吐息だけが聞こえてくる。良くない、こんなの良くないが過ぎる。黙られて吐息だけを感じさせられちゃったら、色々想像しちゃうに決まってる。何を?って言われても困るけど、自分でも上手く説明出来ないけど、もう私の頭は自分じゃ制御しきれない程フル回転しちゃって……
「──なーんて、ね。イタズラなんて、じょーだんだよ。ふふふっ、驚いた?ドキドキしちゃった?」
「あはっ、顔赤くなってる。やっぱり起きてたね?でも、何もしてないのに顔赤くしちゃうなんて、かーわい♪……だけど…そんなところも好きだよ、るなちゃん♪」
「はぁうっ……!」
ひっくり返すような、冗談宣言。途端に私をからかう言葉と、全部茜の思い通りだったんだっていう、湧き上がるような恥ずかしさ。だけど最後の最後で、特大の一言が投げ込まれて……遂に私は、声を出してしまった。ここまではどのシチュでも何とか我慢していた声が、最後の一言で抑えきれなくなった。
「…よくない…よくないよ茜、こんなの……」
「え、あれ?…こういうの、嫌だった……?」
「逆だよ、逆…!こんなの聞かされちゃったら私…影さんに、ちょっとジェラシー抱いちゃうじゃん……!」
「そ、そこまで…!?」
どうしてくれるつもり!?と、私は精神的に茜へ問い詰める。冗談じゃない…冗談じゃないよ!これ絶対ジェラシーだよ!乙女のジェラシーだよ!私が乙女かどうか怪しいけど!抱くと同時に敗北が確定してる、悲し過ぎる感情だけど!うぅ、なんにせよ影さんが羨ましい…!これを毎日聴き放題なんて、幸せ以外の何物でもないじゃん…!
「はは…けど確かに、なんかこう色々ヤバいっていうか、囁かれてる訳でもないのにこっちまでゾクゾクする感じあったよね……」
「あったッスね…これはウチ等には出せない魅力っていうか、流石はウチ等のリーダーッス……」
「そっか…そっかそっかぁ…。ふふっ、それなら…そこまで好評なら、えー君もきっとイチコロだよねっ♪」
「うん、影さんもイチコロ……えっ?」
そうに決まってる、と頷いたところで、私ははっとする。茜の楽しみで仕方ないって顔を見て、気付く。…これは、影さんへ向けた予行練習みたいなものだったんだって。
「…うぅ、そうだよね…考えてみたら、それはそうだよね……」
「あぁ、るなちゃんがほんとに落胆してる…。…えっと、一応言っておくけど、これ元々はヴィオレンス・ブルームでまた何かやりたいってところから始まったんだよ?勿論個人的にはえー君への事も頭にあったけど……」
「──話している時は、るなちゃんの事だけを考えてたよ♪」
肩を落としていた私の側にまた気配が…と思った次の瞬間には、もう一度耳元で茜が囁く。その不意討ちに、私の事だけを考えていたんだって言葉に、傷心の私はあっさりと撃ち抜かれ……
「付き合ってくれてありがとね、るなちゃん。ああは言ったけど、やっぱり利用しちゃった形だし…もしるなちゃんが望むなら、また今度やってあげるね♪」
私の心をがっしりと掴んだまま、小躍りするような軽いステップで茜はリビングから出ていった。向かう先は……考える、までもない。
「…茜って、実は肉食系なんスかね……」
「かもしれないね……」
あぁ、行っちゃった…と私がぼんやり考える中、イリゼとアイが小声で呟く。そして数拍の間があって…二人の視線が、ゆっくりと私の方を向く。
「さて、と…さっきの茜じゃないけど、なんかこう、茜にインパクトを全部持ってかれた感じなのは、ちょっと悔しいんだよね」
「奇遇ッスねぇ。というかウチの場合、まずイリゼとピーシェに上書きされて、更に茜に再上書きされてようなもんスから、これでお終い…は納得がいかないってもんッス」
「……!」
二人のやり取りに、私の心は反応する。座ったままな私の前で、どうしよっか?って顔を二人はする。つまり、これは…今度はイリゼとアイが同時にやってくれるパターン……!
(な、なんだろう。今度はどんなシチュだろう…?それともまた、シチュをリクエストさせてもらったり……?)
シチュ指定させてもらえるなら、それは嬉しいに決まってる。でも、リクエストなしには何がくるか、何をしてもらえるか分からないからこそのドキドキ感もあって、どっちも捨て難い。
その迷いの中で、私は目を瞑る。目を閉じて、お任せの姿勢を示す。頭の中ではどんなシチュがいいか考えつつも、いつでもばっちこいのスタンスで待つ。そうしている内に、私の左側に気配が現れて……
「わッ!!」
「い"ぃ"ッ!!?」
……耳と頭が、爆発した。いや、してない。多分正確にはしてないけど…爆発したような気がした。私はひっくり返った。
「あははははッ!驚いた?びっくりした?」
「ちょっ、え、エスちゃん……!(わたわた)」
「…ぁ、ぇ……?」
キーン、という音がずっと左耳の中で響いている中、どこか遠い感じで聞こえてきたのは、愉快そうな声と、慌てた声。この声って…片方名前出てるけど、この二人の声は……。
「…ディールに、エスト……?」
「ふふん、そーよ?」
「ご、ごめんなさいルナさん…うちのエスちゃんがほんとごめんなさい……」
腕を組んで胸を張っているエストと、ぺこぺこ頭を下げるディール。いつの間にか、二人がいた。ちらりとイリゼ、アイの方を見てみれば、二人は苦笑していて……私は嵌められた、って訳じゃなさそうな様子。
「どうして、二人が……」
「なんか通りかかったら面白そうな事をしてたからだけど?」
「わー、凄くエストっぽい…ところでさっきから、左耳の聞こえが悪いんだけど、これって……」
「鼓膜が弾け飛んでるかも?」
『洒落にならない……!』
スナック感覚で鼓膜を弾き飛ばされたら、流石に私だって平常心じゃいられない。ひ、酷いよエスト…幾ら何でも、これは笑って済ませられるレベルじゃ……
…………。
「…あ、でも、なんか耳の中で何回もエストの声が反響してる気がする…これはこれで、悪くないかも……」
『えぇ……?』
…なんか、気付いたら皆に引かれていた。そ、そこまで変な事言ったかな…?…言ったかも……。
「エスト、鼓膜どころかまともな思考までちょっと弾け飛んじゃってるじゃないッスか。どうするんスか、これ」
「それもわたしのせいなの…?」
「うん、まあ…取り敢えず、ちゃんと謝ろっかエスちゃん」
「えー…でもルナも案外喜んでる──」
「謝ろうね。やっていい事と悪い事があるから、普通に」
珍しく圧のあるディールの言い方。それはそうだよね、って感じでイリゼ達も頷いていて…アウェーなエストは、流石に分が悪いと思ったのか唸る。
「…むぅ…じゃあ、ディーちゃんも一緒に謝ってくれる?」
「な、なんでわたしまで……」
「でもルナも、そっちの方がいいでしょ?よいしょ、っと」
ぐっ、と引っ張られて元に戻った私は、エストに問われる。一緒に…ディールと、エストが一緒に……。
「…うん、そっちの方がいい。出来れば、耳元で言ってほしい」
「ルナさん…!?」
「ほらね?どうするのディーちゃん。ディーちゃんがやってくれなきゃ、わたしも謝らないわよ?わたし悪い子になっちゃうわよ?」
「いや、エスちゃんは今の時点で割と業が深いよね…それこそここにいるイリゼさんにも、前に面白そうって理由だけで襲い掛かってるし……」
「それはまあ、うん…だったらディーちゃん、やらないの?いつもはあんまり自己主張しないっぽいルナの、こんなにも期待に満ちた目を無視出来るの?」
「うぐっ…エスちゃん絶対この状況楽しんでるよね…!?…もう……」
思わず正直に言った私。多分私、いつもと調子が変わってる。でも三連続で素敵に刺激的な直ASMRを聴いてるんだから、調子の一つや二つ変わらない訳がない。
そしてやり取りの末、ディールは観念したように私の右側へと座る。左にエスト、右にディールっていう、前に自分の次元でロムとラムと一緒に本を読んだ時を思い出すような構図になって……二人は小さく、息を吸う。
「──ごめんね、ルナ。わたし別に、ルナを傷付けたかった訳じゃないの。ただ、悪戯したくなっちゃっただけなの」
「──ごめんなさい、ルナさん。わたしは悪くない、って思ってくれるかもしれませんけど…やっぱり、わたしも止めなかったのは事実ですから」
「だって、ルナってば凄くわくわくしてる感じの顔してたんだもの。あんなに楽しそうな顔してたら、混ざりたくなっちゃうじゃない。…けど、それも言い訳よね。本当にごめんなさい。…許してくれる?」
「なんていうか、ルナさんなら怒らないでくれるかな…って、勝手に思っちゃってたんです。本当に、ごめんなさい。自分勝手な理由ですけど……許してくれますか?」
囁き声の、二人からのごめんなさい。それを聴いた時、聴いて頭が認識した時…気付けば私は頭をヘドバンばりに振っていた。視界がぐわんぐわんなって気持ち悪くなる程振りまくっていた。いや許す!許す許す許しまくるよ!こ、こんな二人からのごめんなさい攻撃受けて、許せない訳ないじゃん!ディールの声は心に染み渡る感じだし、エストに至っては普段が明るくて元気な分、ちょっとしっとりしたトーンで言われたら心に響き渡る以外あると思う!?あぁもう許すっ!許します!今なら何でも許しちゃうし許す事を二人にPromise You‼︎だよぉっ!
「ほんと?ふふっ、ありがとルナ。やっぱりルナなら許してくれるって思ってたわ!」
「いいんですか?なら…ありがとうございます、ルナさん。…前から思ってましたけど、やっぱりルナさんって優しいですよね」
「んふふ、優しいんじゃなくてちょろいだけじゃない?…なーんて、ね。でも、ほんとにありがと。許してもらえて、ほっとしちゃった♪」
「もう、エスちゃんったら…でも、痛いものは痛いですよね?だから…わたし達で、治してあげます」
「っと、それはそうね。それじゃあ……」
「キュア」
「キュア」
『──キュア』
(にゅおおおおぉぉっっ!?)
ここに来ての、初めての直接的なやり取り。これまではなかった、明確に反対側の相手へと向けた言葉。そしてそこからの…囁き声の、治癒魔法。急速に、私の耳の痛みが引いていく。癒されていく。
だけど正直…治癒魔法なんて、どうでも良かった。私は断言する。ディールとエストに、二人のこんなにも魅力的な声で囁かれたら、怪我なんてそれだけで治ると。むしろ二人の声そのものが癒しだと。癒し系ボイスだと。だ、だってそうでしょ!?ディールはちょっと高めの声なのに凄く大人しい感じで、静かだけど柔らかくて、心地良い鈴の音色を声の形にしましたと言われても速攻信じるような綺麗さだし、ほんっとエストの快活でやっぱり高い感じの声は元気をそのまま貰えるような、耳と心を声でマッサージされてるような気持ち良さなんだから!あぁ駄目不味い不味い!これこのまま聴いてたら二人の声だけで栄養が取れる身体になっちゃう!ディールとエストの声があれば、食事も睡眠もいらない気がしちゃう!いやほんとこれ女神の二人に言うのはおかしいけど天使の囁きにしか聴こえな……
「これでよしっと。じゃ、最後に…ディーちゃん」
「えぇ、やるの…?…うー……」
『いたいのいたいの、とんでけ♪』
「こふっ……」
オーバーキル。治癒魔法なのに、私のハートは即死した。多分だけど、HPバーが複数あっても一発で全部消し飛んでいた。…へへ…でも、悔いはないや…二人になら、オーバーキルされても本望だよ……。
「ふー…楽しかったわね、ディーちゃん♪」
「そ、そうかな…確かになんかこう、途中から変に乗っちゃった気はするけど……」
いつも通りの楽しそうな声に戻るエストと、恥ずかしさや照れを感じさせる声になるディール。あふぅ、普段の声も良い…ゆっくり心ゆくまでお風呂に入った後の、火照った身体で冷えたジュースを飲んだみたいな安らぎがある…ほんと何これ、なんでこんなに二人の声って良いの…?…あ、違う、間違えた。声だけじゃなくて、全面的に二人って可愛いし素敵だもんね…。
「…放心してるね、ルナ」
「心ここに在らずッスね…多分茜の時とは別ベクトルの状態なんだと思うッスけど、またしても凄まじい打点を二人が叩き出してるというか……」
「……アイ、ちょっと提案があるんだけど…」
「奇遇ッスね、ウチもッス」
ぽわんとした気分の中で、またイリゼとアイの会話が聞こえてくる。さっきみたいに、もう一度二人の視線が私の方を向く。
「ルナ、今度は何が良いッスか?」
「考えてみれば、さっきも中々なリクエストだったからね。余程のものじゃない限り、どんなリクエストでも受けるよ?」
リクエスト、リクエストかぁ…そうだなぁ…ディールとエストの今の状況に合わせた直ASMRも凄く良かったけど、姉妹シチュも素敵だったし、茜のシチュはもう絶対忘れないレベルだから……あ、そうだ…。
「じゃあ、恋人シチュ……」
……あれ?え、待って?今私、凄い変な事言ってなかった?変っていうか、流石にアウトな事言ったよね?だってほら、ディールとエストが目を見開いてこっち見てるし。うん、やっぱ今のは無し──
『──ルーナ♪』
うん、駄目だこれは。はい無理です、もう拒否不可能拝聴不可避。私は今、二人の声を聴く事だけに存在してます。
「ふふっ、こんなところにいたんだ。ね、隣座ってもいい?っていっても、もう座ってるんだけどね」
「全く、ウチがいるのに一人でぼーっと座ってるなんて、何のつもりッスか?あ、勿論ウチも隣座るッスからね?」
「ねぇルナ、今日の予定って空いてる?もし空いてたら…その、一緒にいたいな…なんて」
「今日は良い天気ッスよねぇ。こんな日には外に出掛けて…と見せかけて、中でゆったりするのも良いと思うんス。ルナもそう思うッスよね?ふっ、言わなくてもそう思ってるって顔に書いてあるッスよー」
普通に話す時よりちょっと弾んでいるような、でも同時にほんのり恥じらいもあるような…大きく違う訳じゃない、だからこそ『これまでの延長線上』って感じがじんわり伝わってくるイリゼの声。声音は完全にいつも通りなのに、いつもよりずっと距離の近さを感じるというか、もう既に私の隣にいる事が当たり前であると錯覚させてくれるような、アイの調子と言葉。もうこの時点で、私の心は引き込まれている。イリゼとアイ、二人の事で私の頭は一杯になってる。
「にしてもまさか、ウチとイリゼが纏めてルナに惚れるとは…女神二人を落とすなんて、ルナも罪な女ッスよねぇ」
「しかも、どっちかじゃなくてどっちもなんて…ある意味アイまで惚れちゃった事よりびっくりかも。……まぁ、イリゼもアイも恋人さんに…なんて言われて、それを受け入れてる私達も大概だけど。…あーあ、これも惚れた弱みってやつなのかなぁ」
「あぁ、気に病む事はないッスよ?ウチは現状に納得してるッスし…満足も、させてもらえてるッスからね。ほんと、知れば知る程惚れさせられるというか、もう沼ッスよ。ウチはルナ沼にどっぷりッス」
「私も、もうこれまでの関係になんて戻れないかも。ねぇルナ、ルナって自分が思ってるより…ずっと魅力的な女の子なんだよ?」
囁き声が、その内容が、私の心を狂わせようとする。イリゼもアイも、とんでもなく魅力的な女神様。友達である事だけでも誇れる位の、すんごい存在。その二人に惚れられてるなんて、求められちゃうなんて、そういうシチュエーションだって分かっていても思考とか理性とかが吹っ飛びそうになる。だけど、それはいけない。だって…そういうのが吹っ飛んだら、二人の声が聞けなくなる…!そんなのいけない、この私が許しませんっ!
「あ、あわ、あわわ…は、はい、大事にします…二人以外に、変な気なんて起こしません……」
イリゼとアイの事を考えるのに夢中で、また声を出してしまう。今度は途中で出してしまったし、声震えてるし、しかも変な事言ってる。変な気って…起こす訳ないじゃん!?起こせる訳ないじゃん!?だってイリゼとアイだよ!?スタイル良くて、でも主張し過ぎじゃないところにお淑やかさも見えて、気さくで穏和で気遣い上手で可愛いイリゼと、凄くスレンダーで、翻弄してくるように見えて実は相手の事をよく見てくれてて、明朗で柔和で爽やかさ溢れて可愛いアイの二人が恋人で、女神の姿じゃ頼もしさも格好良さも美しさも何もかもがカンストしてるようなオリジンハート様とローズハート様が両隣にいてくれるのに、変な気なんて起こせる女の子存在する訳……
「そんなの心配してないよ、ルナ。だって…私達が、目移りなんてさせないから」
「そんな余裕なんて一瞬もない位、ウチ等がルナをドキドキさせるッス。今度はルナが、ウチ等にドキドキする番ッスよ」
「ルナ、今は何してほしい?これから私達と、どんな事をしたい?私、ルナが望む事…ルナがしてほしい事を、やってあげたいな」
「ふっへっへ、もう逃げられないッスよルナ。後悔しても遅いッス。…なーんてのは冗談ッスよ。ウチを惚れさせた事、ウチの特別になった事…後悔なんて、絶対させないッス」
『だから、ルナ……』
『──もっともっと、(私・ウチ)を惚れさせて?もっともっと、(私・ウチ)に惚れさせてあげる(ッス)から』
ないってぇええええええええっ!ムリムリ真理論!もう惚れました惚れてます心底イリゼとアイにゾッコンですぅぅぅぅうううううっ!
──そんな風に、私の感情は張り切っていた。イリゼに、アイに、茜に、ピーシェに、ディールに、エストに揺さぶられて、擽られて、蕩けさせられて、これまで体験した事のない至福の領域に上り詰めていた。だからここで終わっていれば、多分後で皆思い出して恥ずかしくなっちゃうんだろうけど、素敵な思い出としてフィニッシュしてたと思う。
でも、そうはいかなかった。ほんとに良くて、良くて、ほんっっっっとうに良過ぎて…だからこそ、ここから色々と大変な事になるのだった。
今回のパロディ解説
・「〜〜両親が揃って伝説の傭兵〜〜」
ARMSの事。文字を入れ替えたら(というかSとRを入れ替えたら)ASMRになるので、ぱっと見だと普通に見間違えそうですよね。意味は(漫画であれ元々の意味であれ)全然違いますが。
・「光が逆流してくる〜〜」
ARMORED CORE for Answerに登場するキャラの一人、CUBEの代名詞的な台詞のパロディ。ただ、ルナの回答としては、彼の台詞ではなく作中の用語の一つであるAMSの事になりますね。
・〜〜乙女のジェラシー〜〜
マクロスF第十五話のサブタイトルの事。凄く前に、これはパロネタとして使った…ような気もしますが、ほんと前の事なので、正直そうだったかどうか微妙です。
・〜〜Promise You‼︎〜〜
小倉唯さんと石原夏織さんによるユニット、ゆいかおりの曲の一つの事。何故この曲をパロネタにしたのかは……勿論、言うまでもありませんよね。
・〜〜ムリムリ真理論
ナナヲアカリさんの曲の一つ、ムリムリ進化論のパロディ。れな子ならぬ、ルナ子…なんて。わたなれにもASMRのネタがありましたが、別にそれに影響されて書いた訳ではありません。