超次元ゲイムネプテューヌ Origins Transition 作:シモツキ
前編 長き歩み
思えばそれは、随分と長い道のりだった。平坦などではない、山も谷も数多くある、苦労に満ちた道だった。立ち止まりそうになった事、行く先に迷ってしまった事、進めど進めど光明が差さぬままであった事…そんな事も、決して一度や二度ではなかった。
されど、歩いてきた。歩いてこれた。多くの人に支えられて、多くの人と共に、これまで、ここまで、進む事が出来た。これは、奇跡の様で奇跡ではない。出会いは、巡り合わせは、一つ一つが小さな奇跡でも、ここまで辿り着いたのは、私の力であり、皆の力であり…紡いだ思いと願いの力。奇跡の力が切っ掛けになった……人の力。
そしてこれは、終わりじゃない。だからこの道は、終わりはしない。これまでのように、これからも私は歩みたい。進んでいきたい。そんな望みを、感謝と新たな意思に変えて……こうしてまた、踏み出していく。
*
今日私は、いつものように朝食を作り、オリゼ、セイツの二人と食べていた。いつも通りに、普段通りに、休日の朝を過ごしていた。
「ふふ。イリゼ、今日は嬉しそうじゃない」
「え?そ、そうかな?」
味噌汁のお椀を持ちながら、セイツは頬を緩めて言う。…自分の中では、普通な調子でいたつもりだったけど…セイツにはそう見えていたらしい。…うーん、やっぱり姉妹だと分かっちゃうって事かな…それとも単に、相変わらず私が分かり易いだけ……?
「わ、私も、そう、思います。でもそう、ですよね。だって今日は──」
「ポイント二倍デーだものね」
「何の!?スーパーか何か!?だとしたら、流石にそれじゃ朝から嬉しくはならないよ!?」
「そんなの…!?くっ、だったら…お店もって頂戴!三倍ポイントデーよ!」
「だからそれじゃ嬉しくならないって!私を何だと思ってるの!?」
何か言おうとしたオリゼに被せる形でボケてくるセイツ。全く、朝から妹を弄って遊ぼうだなんて、酷い姉だよセイツは。…まあ、これ位の弄りはそれこそ色んな人からこれまで散々やられてきたし、もう慣れたものだけど。
とまあ、こういうやり取りもしつつ私達は朝食を済ませる。片付けも済ませて、身嗜みと準備を整えて、そうして再びリビングへ。
「セイツ、オリゼ、今日私は出掛けてくるから、ライヌちゃんとるーちゃんを宜しくね?ライヌちゃん、るーちゃん、帰ってきたら一緒に遊ぼうね」
「ぬらぬらー、ちるちるー」
「鳴き真似しなくていいからセイツ…それと今日は、お昼の用意してないけど……」
「だ、大丈夫ですよ、イリゼ。そうです、よね?ライヌちゃん、るーちゃん」
「ぬらっ!」
「ちるっ!」
元気一杯に鳴くライヌちゃんとるーちゃんに、私はほっこり。それと共に、流石に心配し過ぎだよねと私は思い直し、軽く手を振って私は歩き出す。外に出て、教会を後にし…女神の姿で、プラネテューヌへ。
「このペースなら…ん、丁度良い時間に着けそうかな」
誰かと会う予定がある時、遅刻しないようにするのは当然だけど、だからってやたらと早く着けばいいってものでもない。特に仕事の場合、あまり早過ぎると相手の予定を狂わせる事にもなりかねないから、基本は予定時刻のちょっと前がベスト。プライベートだとしても、待ち合わせの相手に「しまった、長時間待たせてしまった」と思わせたりしないよう、程々の時間で動く方が何かと良い。
そんな事も考えながら、私は空を飛び続ける。時々意味はないけどバレルロールなんかもしつつ、真っ直ぐプラネテューヌへと向かい……待ち合わせ場所に、到着する。
「よ、っと。お待たせ、ノワール、ブラン」
「おはよ、イリゼ」
「わたしも今来たところよ」
「うん、知ってる。実はブランがここに降りる姿、ちょっと見えてたから」
肩を竦めつつ、女神化を解く。待ち合わせ場所にいた二人…ノワール、ブランと合流する。
一番最初がノワールだったっていうのは、なんというかイメージ通り。ブランの姿が見えた時、全速力を出して一気に追い付こうかな?とも思ったけど…子供っぽい事をしている、と思われるのは嫌だから止めた。
「こうやって、プラネタワー以外を集合場所にするのは久し振りだよね」
「そうね。まあ、基本はわざわざ他の場所で集合する必要もないし」
「プラネタワーにしても、現地集合だものね。さて、後はベールだけど……」
後は、と言いながらブランは空を見上げる。私とノワールも、同じようにリーンボックスの方を見上げて……
「──既に、わたくしが来ているとしたら?」
「…………」
「…………」
「…………」
『いや、普通に歩いてきた(わ)よね?』
やたら意味深な事を言いながら現れたベールに、私達は揃って突っ込んだ。なんでこんな、普通にバレる嘘吐いたんだろう…まあ多分、ただふざけただけなんだろうけど。
「まあまあ、いいではありませんの。というか別に、わたくし間違った事は言ってませんわよ?」
「まあ近くまでは来てたし、そういう意味じゃ確かに間違ってはいないけど…なんかこう、納得がいかない……」
「間に受けなくてもいいのよ、こういうのは」
「そうそう。イリゼはもうちょっとスルースキルを磨いた方がいいわよ?」
「えぇ…?ノワールがそれ言う……?」
さっきはベールへ向けていた半眼を、今度はノワールに向ける私。でも、ノワールは華麗にスルーしていた。全然私の発言が効いてない感じだった。…確かにスルースキル、私よりは磨かれてるかも…ネプテューヌに対しては、あんま機能してないのに。
「それより、全員揃ったし行きましょ。雑談なら別にどこでも出来る訳だし」
「そうですわね。今の段階で文字数がやたらと増えるのも良くありませんし、異論はありませんわ」
「うん、まぁ…うん。い、行こうか……」
何で言わなくてもいいのにそんなメタ発言を…と返したくなった気持ちをぐっと堪え、私は三人と共に歩き出す。…もうね、これだけで分かる。やっぱり私、スルーとは相性が悪いって。スルーしようとする方がむしろ疲れるって。
「けど、残念だったね。後で合流するとはいえ、ネプテューヌは来れないなんて。なんか、やる事があるんだっけ?」
「…えぇ、そうよ。今頃、大忙しじゃないかしら」
「でしょうね。不安なのは、やる事をほっぽり出してこっちに来ちゃわないかだけど……」
「流石に今日は大丈夫ではないかしら。あいちゃんにコンパさん、それにネプギアちゃんも手伝いつつ見張ってくれるのですから」
こくりと頷いたブランに続いて、ノワールとベールも言う。こうして守護女神組で集まる中、ネプテューヌだけ来られないのは少し残念というか、可哀想だけど…よく考えたら、五人で集まる事はそんなに珍しくもない。むしろネプテューヌ以外の四人で集まる事の方が少ないし…そういう意味では新鮮かも。
そんな風に私は気持ちを切り替え、三人と暫し歩く。他愛ないやり取りを交わしながら、街中を進み……今回の目的地である、ショッピングモールへと到着する。
「へぇ。話には聞いていたけど、本当に大きいところね」
「少し前だけど、ロムとラムが女神候補生の四人で行った時には、広いし人も多いしで迷子になりかけたって言ってたわ」
ここは、暫く前に開店した施設。オープン当初は大混雑も大混雑だったみたいで、今日もかなりの人がいる。だから、のんびり見て回れるような雰囲気ではないけど…活気を感じられるのは、悪くない。
「じゃ、どうする?各々興味のあるお店は違うだろうし、一旦解散する?」
「その方が良いと思いますわ。…いや、でも…ここは全員で回る事を推して、上手い事三人を書店のBLコーナーに……」
「はい、一旦解散に賛成の人挙手」
何かをベールが企む中、ノワールの一言で多数決実施。私とブランは速攻で挙手し、賛成3で一旦解散は決定した。
という訳で、私達は案内板を確認した後一度別れる。私はエスカレーターで上の階に登っていき……訪れたのは、とあるサブカル専門店。
「ふむふむ…中々品揃えは悪くないかも……」
ゆっくりと、店舗内を見回しながら進んでいく。ラノベ、漫画、各種グッズと流し見をしていって……アニメコーナーで、足を止める。そこからは、じっくりしげしげと棚を眺める。
ここが、私の見てみたかった場所。ブランが本好きなように、ネプテューヌやベールがゲーム好きなように…私は、アニメが好き。アニメっていうのは、映像、音、物語と様々な方向から楽しむ事が出来るし、じっくり見る事も、何かをしながら見る事も出来る。原作がある作品なら、その作品の良さや魅力をぎゅっと詰めたものを楽しめて、興味を持ったらそこから原作に移る事で、二度楽しめる。逆にオリジナル作品は、原作がないからこそ、皆が先の分からない状態で視聴出来る。今挙げた良さは時に短所になったりもするけど、それはどんなコンテンツでも同じ事。初めは他の媒体より時間が掛からない…謂わば『消化』し易い媒体として見ていたんだけども、気付けば私はアニメというもの自体が好きになっていた。
「…こうやって見ると、ほんとに多いよね…今日も誰かが新しい作品を作ったり、続きを描いたりしてるんだから…うん、凄い」
ずらりと並ぶ、作品の数々。でもここにあるのは、世の中にある作品のほんの一部で、当然これからも、新たな作品は生まれていく。…そうやって、絶える事なく、尽きる事なく、創作し続けていけるのが、人の凄さであり素晴らしさ。だからそういう視点でも、私は楽しみ…あるアニメ作品のグッズを買って、店舗を出た。
今のご時世、わざわざ実店舗に出向かなくても色々なものが買える。だけど、実物を見ながら選んだり、ついでに他の商品も眺めたりしながら買う楽しさっていうものも、あるよね。
(…っていうか、誰も来なかったな…ベール辺りは来ると思ったんだけど……)
三人共サブカルは好きだし、別々に行動していたのに鉢合わせ…って展開があると思っていたからこそ、誰も来なかった事は正直意外。まあでも考えてみればこことは別に書店があるし、ゲームショップもあった筈だから、そっちに行っているのかもしれない。そんな感じの事を考えながら、私は次の店舗…製菓店に向かう。
でも、ここでの目的は、お菓子を買う事じゃない。勿論冷やかしで終わらせるつもりはないけど、メインはプロのお菓子を見て、出来ればちょっと店員さんと話もして、自分のお菓子作りの糧にする事が目的。こういう事は、これまでにも結構やっていて…こっちもまた、中々に有意義な時間だった。そのお礼の気持ちも込めて、そのお店でも買い物を行い…集合時間が近くなってきた事で、私は一階へと戻った。
「えぇと、皆は……あ」
「うふふ、今度はわたくしが一番最初でしてよ」
今本人が言った通り、今日二度目の待ち合わせで一番先に来ていたのはベール。考えてみれば、さっきは三番目だった私も今度は二回目な訳で、ここまではさっきと逆の流れ。
「こうなると、次に来るのはさっき二番目だったブランだったりしてね」
「では、ブランが先に来るか、ノワールが先に来るかで賭けてみまして?無論、勝った方は…角砂糖を一つ得るのですわ」
「得られるものがしょっぱ過ぎる…砂糖なのにしょっぱいよベール……」
何が無論なのか謎なベールの発言。それに私ががくりと肩を落としつつ突っ込んでいると、ベールは「あら…」と呟いた。何かと思い、ベールが向いている方向を見てみると…そこにはノワールとブランが、二人で並んで歩いてきている姿があった。
「…これは…ドローだね」
「ですわね。という事で、角砂糖は仲良く半分こで……」
「要らない要らない、っていうか今のボケを引っ張らなくていいから…」
「…ボケ?」
「よく分からないけど、待たせちゃったみたいね」
ううん、気にしないで、と私はノワールへ首を横に振る。そして集合した私達は、ここからどうしようかという話になり…休憩も兼ねて、軽くお茶をする事に決定。けどお昼はプラネタワーで食べる予定だから、ドーナツ屋さんへと入り、ドーナツとドリンクのセットを注文。商品を載せたトレイを持って席へと座り、私はふぅ…と一息吐く。
「さっきロムちゃんとラムちゃんが迷子になりかけた…って話あったけど、確かにほんと賑わってるよね。特に飲食店なんて、ここ含めてどこもそれなり以上に人が入ってるし」
「それだけ期待されていた、って事でしょうね。今は、オープン当初は人が多過ぎて来るのを躊躇っていた…って人達も足を運んでるでしょうし」
「その上で、きちんと期待に応えられている…って事でもあると思いまさわ。でなければ、賑わいが継続する事はありませんもの」
「こういう場所は、そこだけで一日過ごせるかどうかも結構大きいものだけど…その点でも、ここは強いと思うわ」
「ああ、確かに。娯楽施設も多い…っていうのもそうだけど、若年層からシニア層、個人や友達間からファミリー層まで、幅広くカバー出来るのは本当に強いよね」
そうだよね、と私は皆の言葉に頷き、皆も私の言葉に頷いてくれる。こういう場所は楽しいけど、同時に女神としては色々刺激を受けるところがあって……って、
「…なんかこう、アレだね…全員プライベートで来てるのに、自然と思考が経営側になってるというか……」
『あー…』
確かに、と私達は全員で苦笑。…これも、一種の職業病なのかなぁ…でも、こういう形で皆と感覚を共有出来るのは嬉しいかも。昔…それこそ、自分が守護女神になる事なんて全然考えてなかった頃は、知識はあっても無意識の内にこういう思考をしてた…って事はなかったと思うし。
「皆、こういう時ってどうしてる?上手い事思考を切り替えてる?」
「いや…わたしはそうでもないわ。仮に思考を切り替えても、気付いたらまた同じ視点になってるし」
「私もそうね。っていうか、さっきみたいに指摘されなきゃ基本気付きもしないし」
「ですわね。そもそも問題のある考え方でもないですし、あまり気にしなくてもいいのではなくて?」
「あー、やっぱそうなんだ。セイツと出掛けた時もこういう感じになるし、気にしない方がいいのかな」
「その点は、うちとは違うわね。ロムもラムも、流石にまだこういう視点で物事を見てる感じはないもの」
「うちは……思い返してみると、あんまりユニと出掛けてないわね…何気なく話している中で、自然と視点が…って事はちょくちょくあるけど…」
「むぅ…わたくしがいる前でいもうとーくをするなんて酷いですわ!わざとですの!?わざとやったんですの!?」
「いやわざとではないんだけど…っていうか、いもうもーくって何…?後、私は姉じゃないからね……?」
ぷんすかと怒るベールに、私達は辟易。…何かこう、妹絡みでベールが荒れるのも久し振りな気がする…でもほんと、改めて聞くと難癖が凄い…確かに姉妹絡みの話になったらベールは蚊帳の外になる訳だけど、今のは流れ的に仕方ない訳だし……。
「…まぁ、いいですわ。どうやらわたくしにも、遂に妹が生まれるようですもの」
「あぁ、まだ発売されてもいない新作の話を…現状じゃ定かじゃない部分も多いのに……」
「いやむしろ、これに関しては分かってる部分だけでも妹じゃないって判明してるような……」
「それだけ妹に飢えてるんでしょうね。大目に見てあげましょ」
「くぅっ、妹が二人もいるからといって余裕を見せ付けてくるとは…!その余裕がルウィーの名を過去のものにしてしまったのかもしれませんわよ…!」
「そんな訳あるか…!…普通にメタな事情でしょ、そこは…うちは元から、名前ががらっと変わりがちだし……」
予想外の反撃(?)を受けて、憤慨するブラン。そしてブランは、身も蓋もない事を言い…変な空気になってしまった。
「……えぇ、っと…取り敢えず、食べよ…?」
『そ、そう(ですわ)ね……』
そういえば食べていなかったドーナツを手にして、一口ぱくり。私が選んだのは、球が連なったようなもっちり系ドーナツで、食べた瞬間口の中に甘さが広がる。ふわふわ感も、「これだよこれ!」って気持ちにさせてくれる。
「あ、そうだ。ドーナツって別に、リング状のお菓子の名称って訳じゃない…って言うのは、流石に皆知ってる?」
「そうだね、ドーナツは輪っかの形をしたリング・ドーナツが種類的にも知名度的にも主流だから勘違いされがちだけど、あくまで揚げ菓子の名前であって、リング状であるかどうかは関係ないんだよね。だから実は、チュロスとかマラサダなんかもドーナツの一種なんだよ」
「へぇ、そうなんですのね」
「流石イリゼ。お菓子の事になると知識も豊富ね」
「ふふふ、まぁね。だからドーナツは、個別の名前っていうより、揚げ菓子が内包するジャンルの一つの名前…って言うべきかな」
自分でもお菓子やスイーツの知識についてはそこそこ自信があったから、私は軽く胸を張る。因みに、名前としてはドーナツとドーナッツのどっちが正しいかというと…別に決まっていないというか、どちらも正しかったりする。ピーナツとピーナッツ、スパゲティとスパゲッティ…みたいなのと同じなんだよね。
「しかし、思えばイリゼのお菓子作り好きもすっかり定着しましたわよね。今やイリゼの作るお菓子はハズレ無しのレベルですし…正に好きこそ物の上手なれ、ですわよねブラン」
「ちょっと、どうしてそこでわたしに振るのかしら…?」
「あはは…けどやっぱり、私はあくまで趣味のレベルっていうか、プロの作るお菓子とは色々違うなぁって思うよ。正直、味だけだったらプロに迫る事も出来ると思うけど、時間や費用が限られる中で、安定して同じ味を出す…っていうのは、本当に難しいし」
「そういう考え方をしてる時点で、もう単なる趣味とも言い切れない気がするけどね。…けど、時間やコストのパフォーマンスを考慮した上での安定配給、か…確かにそれは、お菓子作りに限らず多くのプロとアマを隔てる要素の一つかも……」
「ノワール〜、またさっきのような視点になってますわよー?」
顎に指を当てて考え始めたノワールに、緩めの声でベールが突っ込む。言われたノワールは、こほんと一つ咳払いをする。
けど正直、これは仕方ないかなぁとも思ったりする私。意識を切り替える、なんて言葉はあるし、私も使ったりはするけど、実際本当に切り替わってる訳じゃないんだから。…まあ、それならそれで、さっきはなんで指摘したんだ…って話になるけど。
「…ふぅ…まあそれはともかく、落ち着くわね」
「それは私も思ったわ。さっきちょっとそっちの二人が荒ぶってたけど、逆に言えば騒がしいのなんてその程度だったし」
『荒ぶってたとは失礼な……』
「ま、まあそうだね。…やっぱり、これって……」
((ネプテューヌがいないから、(だろうなぁ・でしょうね)……))
誰も、頭に思い浮かべた言葉を、その人物の存在を、口に出したりはしない。でも…言わずとも、全員分かっていた。ノワールも、ベールも、ブランも、同じ事を考えていた。…まあ、そりゃそうだよね、という感じに。
「本来なら、これ位落ち着いてる方が自然な筈よね。だって私達は、それぞれが一国の長なんだから」
「と、遠回しにdisってるね、ノワール……」
「でも実際、そう思うでしょ?」
『それは、まぁ……』
ゆーっくりと、視線を逸らす私達三人。ここで誰も否定出来ない辺り、いやもうほんと、なんというか…ある意味他の追随を許さない、オンリーワンの存在だよね。…良い意味か悪い意味かについては、ノーコメントとさせてもらうけども。
「…べ、別の話をしようか、別の話を。というかこの話を掘り下げると、後でネプテューヌと合流する時凄く気不味くなるよね…?」
「あ、名前言っちゃうのね」
「あっ…」
「ふふ、そこで言ってしまうのがイリゼですわよね」
「ネプテューヌとは違う意味で抜けているというか、隙があるというか……」
当人はこの場にいないとはいえ、この流れは可哀想だ…と思って、私は話を変えようとした。でも、ここで見切り発車をしてしまったのが運の尽き。ノワールの指摘で気付いた私に、にやっと口角を上げたベールてブランが追撃をしてくる。
「うぅ…油断した…抜かった……」
「え、油断していたんですの?」
「油断も抜かりもなく、でもこうなっちゃうのがイリゼでしょう?」
「誤魔化さなくてもいいじゃない。私達、友達でしょ?」
「優しく追い討ち掛けてくるの止めて!?真っ直ぐな目で見るのも止めてぇええええぇっ!」
弄れる隙を見せたが最後、こうなるのは必定であり女神の
「やはりイリゼはハイテンションで突っ込んでこそですわね。今日はまだそれが出ていなくて、正直物足りなかったんですのよ」
「分かる。ハイテンション突っ込みは、イリゼのお家芸みたいなところあるし」
「ないよ、それが私のお家芸だと思った事は一度もないよ…!」
「でも、一度も力一杯突っ込む事なく一日が終わったら、何か違う…って感じたりするわよね?」
「そ、それは確かに……って、いやない!それもないから!」
もうヤラレチャッタ状態だったのに、三人からの猛攻は続く。ダメージを受けていた私は、思わずノワールの発言に頷きかけてしまう。ひ、酷い…こんなのもう、死体蹴りだよ死体蹴り……。
「っていうか、ハイテンション突っ込みはノワールもするじゃん…ベールやブランだってやらない訳じゃないじゃん…なんで私ばっかり……」
「それはまあ…イリゼの弄り力が低過ぎるからじゃない?」
「ひ、否定のしようがない事を言わないで…!?」
「そこで認めちゃうから弄りに回れないのよ、イリゼは。…まあ、イリゼはそれが良いところだと思うけどね」
「私もそう思うわ」
「ええ、そうですわね」
「…むぅ、むぅぅぅぅ……」
そういう事を言うのはズルいじゃん、と頬を膨らませる私。そんな私に対し、三人は顔を見合わせ、肩を竦めて……
『相変わらずちょろい(です)わね』
「ちょっとぉぉぉぉおおおおッ!?」
付き合いが長いだけあって、三人は私の事をよく分かってくれている。それは嬉しい事ではあるけども、こうも弄られるのは堪ったものじゃない。そう強く思う私だった。
*
「ふんだ。今後私がボケに対して冷めた目でスルーする女神になったとしたら、それは三人のせいだからね」
『いや、なる訳ないでしょう』
「うっさいよっ!もうっ!」
ドーナツ店を出て、私達はまたショッピングモール内を回り始める。今度の買い物は、プラネタワーに行ってから食べるお菓子の買い出しで、これを済ませたところでプラネタワーへと向かう予定。
「あ、ところでイリゼって、普段お菓子を買ったりはするの?」
「流石にするよ?流石に毎回手作りじゃ手間が掛かるし、スナック菓子なんかは手作りするより買った方が手間もコストもずっとかからない場合が多いからね。…まあ、スイーツ系も割と買った方が安上がりな事があったりはするけど」
「そこは材料の調達ルートと大量入荷によるコストダウンの有無が大きいわね。…というか、また経済的な話に……」
「まあ、今のは仕方ないと思いますわよブラン」
歩きながら、私達は会話を交わす。基本私は甘いものが好きなんだけど、それこそTHE・スナック菓子って感じの塩っぱいお菓子を食べたくなる時も結構あるんだよね。
と、話している内にお菓子コーナーへと到着。ここでの買い物を後に回したのは、単に先に買うと荷物になってしまうからで……
「そうだ。皆は何を買ったの?」
『それは秘密』
「え、突然の定められた一言……?…まあ、秘密だって言うなら追求しようとは思わないけど……」
なんで全員秘密なのかはよく分からないけど、買い物の内容なんてプライベートだし、秘密にしたいなら仕方ない。
「んー…一応プリンも買っておこうかしら……」
「それはネプテューヌ用ですの?」
「だろうね」
「でしょうね」
「うぐっ…色々あった方が良いと思っただけよ、文句ある!?」
『いやそんな、プリンを次々籠に入れながら凄まれても……』
お得な物からちょっとお高い物まで、凄い勢いで手に取っていくノワール。全力で誤魔化そうとしているのが明らか過ぎて、思わず苦笑をしてしまう。…別に、誤魔化すような事でもないと思うんだけど…こういうところ、ほんとノワールは相変わらずだよね。
「ではわたくしも、あいちゃん用に何か…何か……」
『……?』
「…よく考えたらわたくし、あいちゃんの好物を知りませんわ……」
「えぇ…?なんでベールは知らないの……」
「し、仕方ないじゃありませんの!だって……好物については、原作からして特に設定がないんですもの…!」
「いや、まぁ…それを言われたら、そうだねとしか言えないけど……」
物凄く身も蓋もない理由に、私は辟易。何か今日のベールはいつもよりメタ発言が多い気がするけど…アレかな、ネプテューヌがいない分頑張ってくれてるのかな…。確かにパロディもメタ発言も全然しない日常パートなんてやったら、これ何の作品?…ってなっちゃいそうな気もするし……。
「全く…この二人に任せておいたら、お菓子のラインナップが変な事になりそうね……」
「…と、言いつつブランもお煎餅とかひねり揚げとか、チョイスが全体的に偏ってるよね…?」
「それはほら、ブラン饅頭をルウィーの名物お土産にしている身としては、こういう系を好むって描写をしておいた方が良さげだし」
「そ、そう……」
誤魔化すノワール、身も蓋もない事を言うベールと違って、ブランはまとも…かと思いきや、ブランもブランでかなり独特な事を気にしていた。…これはもう、私だけはしっかりと選んでいかなくちゃ…いざプラネタワーに行ってから、皆に「えぇ…?なんで皆で食べる用なのに、こんな趣味全開なの…?」とか思われないように、色んな系統から選ばなくちゃ……!
(…いや、でも…ここで普通の選択をしたら、私は弄られキャラから脱却出来ないんじゃ…?ここで私も個性を、我を出す事こそが、現状から脱却する第一歩になるんじゃ……?)
自分だけは普通に…という思考になっていた私へ、待ったを掛ける心の声。…そう、確かにそうだ。私はこれまで、こういう時にふざける事をしなかった。口先だけでボケる事はあっても、結局ちゃんと普通の…平凡な選択をしていた。それは悪い事ではないだろうけど…私は現状を、弄られてばかりな今に甘んじるつもりなんて、毛頭ない。
ならば、選ぶべきは一つ。やるべきは、迷わず趣味に走る事のみ。そして心を決めた私は、皆に負けず劣らずの事を……
…………。
「……?どうしたんですの、イリゼ」
「…お菓子で趣味に走るって、難しいというか、考えなしにやってもそんなに突破な結果にはならないんだね……」
『え、何事…?』
……無理でした。趣味に走ったつもりが、籠の中を確認したら「あー、やっぱりイリゼは甘い物好きだね」と言われて終わり程度の、まともなラインナップになっていました。…それでもまだ、甘い物だけ選んでたら軽く突っ込まれたかもしれないけど…し、仕方ないじゃん…!今は、塩っぱい物も買いたい気分だったんだから…!
「…こ、こほんっ。私の事はいいの、それより皆もちゃんと選んでよね!個人的に食べる物を買ってる訳じゃないんだから!」
「分かってるわ。だから、ほら」
すっ、とプランが見せてきた籠の中には、いつの間にかポップコーンやチョコレートが入っていた。視線を移せば、ノワールやベールも、割と満遍なく選んでいた。…うん、まあ、うん…それで良いんだけど、宜しいんだけど…だとしたら、私の葛藤は何だったんだろう……。
「…慣れない事、自分に合わない事をしても、空回りするだけだよね…はは……」
『えぇ…?だから、何事(ですの)……?』
何とも悲しい教訓(?)を得た私は、皆を連れてレジに移動。支払いを済ませ、ショッピングモールでの買い物を終了する。
「これで後は、プラネタワーに行くだけね。…時間は…まあ、大丈夫か……」
「時間?確かにそこそこゆっくり買い物してたけど、まど大丈夫かどうか気にする程の時刻でもないよね?」
「あ、う、うん。けどほら、やっぱり仕事柄プライベートでも時間をついつい気にしちゃうというか…イリゼもそういうの、分かるでしょ?」
「あー、そういう事ね」
成る程、確かにそれはそうだ、と納得する私。けどこのやり取りの直後、ベールとブランはノワールに対し半眼を向けていて、ノワールは若干気不味そうにしていた。…なんだろ?
「しかしまあ、あれね。本当にプラネタワーは大きいというか、電波塔的な活用をする訳でもないのにここまで大きい建物を作ろうとする辺り、プラネテューヌは独特だわ」
「豪華な建物を作るのは、権威を示す手段の一つではありますけれど、ネプテューヌやイストワール達がそういう目的で建てるのを提案ないしは承認したとも思えませんものね。後、今更ですけど結構見た目は美的センスを感じられるというか……」
「それはわたしも前々から思っていたわ。プラネテューヌは独創的な人が多いけど、芸術方面では真っ当という事かしら…」
まだ距離がある状態でもよく見えるプラネタワー。それについてブランとベールが言葉を交わす。私もまた、プラネタワーは建築家のセンスが感じられるとは常々思っていて……そんな中、不意にノワールから呼び掛けられる。
「…ねぇ、イリゼ。この際…というか、今日という日だからこそ訊きたい事があるんだけど……」
「…何かな」
何やら改まった様子のノワールに、私も内心気を引き締める。そして少しだけ歩速を緩め、ベールやブランと数歩分の間を空けて…ノワールは、言う。
「……ネプテューヌの事よ」
「…それって……」
ノワールは、無言で頷く。言い方は、漠然としたものだったけど…私にはその意味が、ノワールの訊きたい事が、自然と分かった。だから、私もまた頷き……答える。
「…今でも好きだよ。だけどそれは、ノワールやベールやブランと…友達や仲間の皆に抱いているのと、同じ好き。だから…前の私の想いが勘違いや気の迷いだったとは思わないけど……前と今とは、やっぱり…違うと思う」
「……そっか」
「うん。…多分ね、自分が何者なのかを知る前の私は不安で、知った直後は喪失感で、ずっと私の心の中には穴みたいなものがあって…それを埋めてくれたのが、ネプテューヌだったんだ。それがあったから、ネプテューヌは私にとっての特別な存在だったんだけど……いつ頃かな、気付いたんだ。確かに私の心にあった穴を、誰より深いところまで埋めてくれていたのはネプテューヌだったけど、ノワール達やコンパ、アイエフ達も…私の側にいてくれる皆がそれぞれの形で埋めてくれていて、ネプテューヌだけが私を救ってくれてた訳じゃないんだって。そして今は、その穴は完全に埋まってるの。イストワールさんやセイツ、それにオリゼが…私の存在しない、得られないと思っていた過去が、家族が今はいてくれるから、きっと私が無意識に抱いていた、何かで補いたいって気持ちもなくなっていて……今の私には、信仰してくれる皆もいる。信じてくれる皆の思いが、私の心を強くしてくれている。それが、私。今ここにいる…イリゼで、オリジンハート」
語りながら、私は自分の歩みを思い出していく。今に至るまで、本当に…本当に色々な事があった。良い事も悪い事も、楽しい事も辛い事も、数え切れない程あって……そんな沢山の思い出は、いつだって皆の存在があった。いつも共にいた訳ではないけど、心の繋がりは確かにあった。家族、友達、仲間、信仰者…私には、私と共に歩んでくれる皆がいる。そしてそれは、信次元にも、その外にも。
「だから、そういう意味では私が今の私になるまでの、ひと時の夢みたいなものだった……って言ったら、気取り過ぎかな?」
「…そうね。流石にちょっとキザかも」
「うぐ…遠慮ないね、ノワール……」
「…でも、そういう事なら安心したわ。貴女の想いが、前向きな形に…真っ直ぐな思いに昇華されているのなら」
昇華。その言葉は、私の中でしっくりときた。…うん、そうだ。私は私が抱いていた『想い』を、諦めた訳でも捨てた訳でもない。それは違う形に、違う『思い』に変わっていて…同時にそういう気持ちを抱いていた事実も、消えたりはしない。それも含めて、今の私があるんだから。
「ありがと、ノワール。…けど、あんまりうかうかしてると、誰かにネプテューヌが…っていうより、いつまでも進歩がないままになっちゃうよ?」
「よ、余計なお世話よ。というか、心配しなくても……」
「…心配しなくても?え、待って、何かあったの…?」
「それは……ちょっと二人共、さっきから早足じゃないかしらー?」
「あ、ちょっ……!」
明らかに何かあったような反応を見せたノワール。けどそれについて深く追求するより先に、ノワールはベール、ブランと合流してしまった。は、早足も何も、歩速を落としたのはこっちなのに……。
(…でも、ここで話させようとするのも野暮、かな)
ノリの良いベールとブランならば、ここで問えば加勢してくれると思う…けど、私は興味の気持ちを心の中にしまい込む。…なんていうか…やっぱり、私としては応援したいし、変な水は差したくないからね。
とまあ、話しながら歩いてる内に、気付けばプラネタワーはもう間近。そうして私達は中に入り、エレベーターに乗り……って、あれ?
「ブラン、階数間違えてない?」
「いいのよ。ネプテューヌも把握してる事だから」
「へ?」
プラネタワーの居住エリア、その内自室やリビングに当たる部屋なんかがある階とは違う階の番号を押したブランに疑問を抱いた私だったけど、返答を受けた結果、疑問は晴れるどころか更に深くなってしまう。しかもこれはノワールやベールも分かっている事らしくて、唯一何も知らない私は何だか軽く蚊帳の外気分。
で、エレベーターが止まったのは、大広間がある階。普段は訪れないけど、主にイベントで使われたりする場所だから、来た事自体は割とある場所。
「…もしかして、今日はここで遊ぼうって事?あ、いやでも、身体を動かすならもっと適した回があるし……」
「まあ、当たらずとも遠からずですわ。ささ、イリゼ」
どんどん疑問が深まる中、私は先頭に立たされる。どうも三人は説明してくれる気がないらしくて、答えは自分で確かめるしかない様子。そしてこうなると、もう入ってみるしかない。推理しようったって、現状じゃ情報が少な過ぎる。
とはいえまあ、ここは戦場でもなければ、何かの作戦中でもない。だったら気負う必要もないし、取り敢えず驚かされる可能性があるからそれだけ気を付けていればいいだけの事。そんな風に私は気持ちを軽く持ち、ほんと何かな?と思いながら扉を開け……
『おめでとーーーーっ!!』
──次の瞬間、私は祝われた。多数のクラッカーの音と共に、大合唱のおめでとうに迎えられた。
「え、え?え?な、何?どういう事?」
「おめでとう!」
「おめでとう!」
「おめでとう!」
「おめでとう!」
「ちょおっ!?何!?だから何!?え、最終話!?何を考えてるの!?」
謎の祝い(?)連打に、普通にぎょっとする私。ま、待って…待ってよ!中に入ってみれば疑問が解けると思いきや(いやまだ扉開けただけだけど)、更に疑問が加速したんですけど!?疑問が爆走中なんですけど!?っていうか……
「なんか人数多くない!?」
そう。大広間には、凄い人数が集まっていた。ネプテューヌやネプギア、コンパにアイエフだけじゃなく、イストワールさんやセイツ、オリゼを始め、女神候補生の皆やパーティーの皆に大きいネプテューヌやウィード君達、教祖の皆に
「いや、ほんと…どういう事…?何が起こってるっていうの……?」
「んもう、分からないの?イリゼ。何って、サプライズパーティーに決まってるじゃん」
「サプライズ……って、誰の…?」
「イリゼのだよ?」
「わ、私の?」
察しが悪いなぁとばかりに肩を竦めるネプテューヌの返答。言われてみれば確かに、大広間はばっちりと飾り付けがしてある。人数の多さで理解が遅れていたけど、完全にパーティー会場の装いになっている。…あれ…って、事は……。
「…もしかして…私を祝う為に、皆集まってくれたの…?」
「そーだよ?」
「え、や、でも…この人数なんだよ…?私達女神と違って、都合を付けるのが大変な人達だって少なくないよね…?それなのに…全員で、合わせてくれた…って事……?」
勿論、とばかりに皆は頷く。当たり前でしょ?と言うように何人も微笑んでくれる。…そんな…そんなのって…いきなりこんな、サプライズなんて……
(…ズルい…ズルいよ、こんなの……)
じわりと、心の中に温かい気持ちが広がっていく。感謝と、喜びと、嬉しさと…そういう思いが、心に広がり包み込んでいく。
偶然…とも言い切れないかもしれないけど、さっき私は、自分のこれまでの歩みを振り返っていた。その中で、皆の存在を思い出すと共に、皆の事を一人一人思い浮かべていた。その皆が、今ここにいる。私を祝う為に、集まってくれている。…そんなの、幸せ以外の何物でもなかった。幸せで、幸せで…まだ祝いの言葉を掛けられただけなのに、もう満たされてしまいそうだった。
「…も、もう…やるならやるって、言ってよぉ……!」
「いやいや、先に言ったらサプライズにならない…って、イリゼー?喜ぶ気持ちはわかるけど、流石に泣くのは早過ぎるよ?パーティーは、これから始まるんだから」
分かってる。我ながら、これは涙のフライングでしょうと言いたくなる。だけどやっぱり、出てきてしまうものは仕方なくて…だから私は、涙と目元を袖で拭う。ネプテューヌの言う通り、パーティーはこれから。だったらまだ、泣いてなんていられない。泣くよりまず、楽しまなくっちゃそれこそ皆が来てくれた意味がない。
ごしごしと拭い、涙の代わりに笑みを浮かべる。大広間の中に一歩踏み出す。
「ご、ごめんね皆。それと、多分また言うだろうけど、それでも最初に言っておくね。…皆、ありがとう」
祝いに対する、感謝の言葉。皆は私が最初にこう言う事を予想していたみたいで、これまた笑みを返してくれる。
嗚呼、分かる。間違いない。今日は、最高の一日になるって。なるに決まってるって。
「…あ、そうだ。因みにこれって、何のサプライズパーティーなの?」
温かく迎え入れられる中、私は何気ない調子で訊く。だって、私には祝われる理由が思い付かなかったから。でも…なんであろうと、私の感謝は変わらない。変わる訳がない。だって大切なのは、どうして祝ってくれるかじゃなく、祝ってくれる事そのもので……
「ふふーん、それは勿論──Originsシリーズの十周年記念パーティーだよ!」
…………。
……………。
………………。
「えぇええええええええっ!?いや…理由それぇぇぇぇええええええっ!!?」
──かくして、私の…と言っていいのか分からない、だけどまあとにかくおめでたい事を記念したパーティーが始まるのだった。
今回のパロディ解説
・「〜〜お店もって〜〜ポイントデーよ!」
DRAGON BALLの主人公の一人、孫悟空の名台詞の一つのパロディ。三倍界王拳を使う時の台詞ですね。まあでも三倍ポイントデー位で経営が危なくなるお店はそうそうないでしょう。
・「〜〜発売されてもいない新作〜〜」
原作シリーズの一つ、超新時空ゲイム ネプテューヌ
・〜〜ヤラレチャッタ〜〜
パルテナシリーズおける、ゲームオーバー時の台詞の事。ぷよぷよのばたんきゅ〜と同じような使い方が出来ますが、地の文はともかく、台詞としての使い勝手はややこちらの方が難しいかも?…と感じました。
・「〜〜定められた一言〜〜」
生徒会の一存シリーズにおける、ネタの一つの事。その中での「それは秘密」だけは、普通のやり取りの中でも使える機会が多いので、ふとこのネタを思い出す事も多いんですよね。
・「おめでとう!」「おめでとう!」「おめでとう!」「おめでとう!」「〜〜最終話〜〜」
新世紀エヴァンゲリオンの最終話及び、その作中におけるシーン(台詞)の一つのパロディ。いやほんと、いきなりこんな展開になったら一体何の悪い冗談だ、ってなりますよね。