超次元ゲイムネプテューヌ Origins Transition 作:シモツキ
サプライズパーティー。それを受けるのなんて、初めてだった。初めは驚きがあって、次に困惑があって……それから喜びが、嬉しさが湧き上がってきた。凄い人数が集まっていたから、驚きや困惑の時間が少し長くはなったけど……その分、湧き上がる歓喜の気持ちは一入だった。心が温かくなって、一杯になるようだった。
それは間違いない。本当に間違いない。ただ、でも…私にとっては、そこからもう一つサプライズがあった。──これがOriginsシリーズ十周年記念のパーティーだという、予想外過ぎるサプライズが。
「むぅ…むぅぅ……」
プラネタワー内にある大広間、パーティーの飾り付けが施されたこの場所の奥に設置された主役席に、今私は座っている。『本日の主人公』という、見た事ありそうであんまりない感じのタスキを肩から掛けながら。
「どうしたのよイリゼ、そんな納得がいかない感じの顔しちゃって」
「納得がいかないからそういう顔してるんだよ…私を祝ってくれるパーティーだと思ってたのに、作品の十周年記念って…後、本日に限らず私はこの作品を代表する主人公だし……」
「ふっ、確かにこれまではそうだったね。けど…果たしてこれからもそうなのかな?」
「え…?…って、思わせぶりな事言ってるけど、ネプテューヌだって実際のところどうなのかは何も知らないよね?」
調子良く言ってくれるセイツとネプテューヌへ、それぞれ私は言葉を返す。絶望はただ味わうよりも、希望が絶望に変わる形で味わう方がより辛い…というのはよくある話だけど、本当にそうだった。喜び、嬉しいと感じていたからこそ、祝われてるの私じゃないじゃんと思った瞬間の切なさは凄まじかった。
「んー…でもさイリゼ。真面目な話、イリゼの言った通りじゃん?」
「…私の言った通り?」
「さっき言った、私はこの作品を代表する〜…ってやつ。勿論わたしだって主人公の一角だし、原作シリーズといえば看板はわたしだけと…やっぱりOriginsシリーズの代表、看板といえばイリゼでしょ?だから、十周年記念って事でイリゼをお祝いする…それって、変かな?」
「それは……」
ネプテューヌからの、意外な切り返し。その言葉に、皆もうんうんと頷いている。私がこの作品を代表する存在だから、記念のお祝い対象として扱われる…そういう事であれば、確かに筋は通って……
「…いや、だとしても作品の大きな節目を記念してるのに、看板キャラとはいえ個人を祝うのは変でしょ」
『えぇー……?』
……いないと思うんだよなぁ…やっぱりちょっと…いやかなり違和感が拭えないというか…。
「うぅん…これはちょっと、予想以上にイリゼが受け入れないわね……」
「まあ、確かにすんなり受け入れられる流れではないというか、すんなり受け入れたらそれはそれでイリゼらしくないとは思いますけれど……」
「最初のサプライズで大いに喜んでくれたのが、まさかこうも仇となるとは……」
これはどうしたものか、と腕組みをしているノワール達三人。割と本当に困ってるみたいで…そうなると、私もちょっと気不味くなる。これはドッキリではなく、あくまで真っ当に祝ってくれようとしてる事自体は伝わっているからこそ、私の中にももやっとしたものが生まれて……そんな中、不意に私は「い、イリゼ。イリゼ」と呼び掛けられる。
「……?え、と…オリゼ?」
「イリゼ、も…ここには、イリゼを祝って、くれようと…思って、多くの人達が集まってる事は…わ、分かってます…よね?」
「それは、まぁ…分かってる、けど……」
「分かってる、のに…そ、そんな態度、するんですか…?人の生を祝い、歩みを祝福し、在り方全てを讃えるべき女神が、逆に人から祝ってもらってるの、に…そんな態度を取っていて、良い訳が──」
「ちょっ、オリゼ!オリゼすとーっぷ!」
「お、落ち着いて下さいイリゼ様!お気持ちは分かりますが、ここでイリゼさんを叱ったらいよいよ本当にパーティーの雰囲気じゃなくなってしまいますから!(><)」
肩を掴み、冷めた声で私を詰問してくるオリゼ。そのオリゼに、もう一人の私に失望されてしまったのかもしれないという状況に私が息を詰まらせる中、ばっと背後から現れたセイツとイストワールさんがオリゼを確保。二人掛かりで宥めてくれると共に、私に視線を送ってくる。
正直、ぞっとした。イストワールさんの危惧した通り、今の時点でなんか空気が凄い事になっていて……だけど、オリゼは大事な事も、大切な事も言っていた。確かに理由は滅茶苦茶だけども、ここに集まってくれた皆は、私を祝ってくれようとしている。祝いの気持ちで集まって、その気持ちを私に向けてくれている。それこそが、本当に大事で、本当に大切。だって、私が嬉しかったのは……その気持ちなんだから。
「…うん。ごめん、オリゼ。ごめん、皆。そうだよね…私が楽しまなくっちゃ、このパーティーは始まらないよね」
『イリゼ……』
「と、いう訳で…私ももう、気持ちを切り替えたよ。気持ちを切り替えて、ギアも上げて…ここからは私自身、心から祝っちゃうんだから!それじゃあ皆、Originsシリーズ十周年…おめでとーっ!」
拳を突き上げ、私も祝う。フルパワーで、おめでとうと叫ぶ。心のエンジンフルスロットルで叫んでみたけども、どうやらこれが功を奏したみたいで、皆は再び盛り上がってくれた。…何か、信仰してくれる皆との…特に私が国を興す前にやっていた交流会でのテンションを思い出すなぁ…今は立場的にも進行してくれる人達の規模的にも難しくなってきちゃったけど、形を変えてまたやりたいな…。
「ネプギアちゃん、ネプギアちゃん。ギアも上げる…だって(つんつん)」
「ネプギア上げちゃう?わっしょい、ってしちゃう?」
「いやいや…イリゼさんが言ったのは、わたしの事じゃないからね?…にしても、なんかさっきから、凄まじくメタ発言が乱発されてるような……」
「まあ、それはもう仕方ないでしょ。そもそも今回の話のコンセプト自体が作品の外にあるんだから」
「それはそうなんだけども……」
取り敢えずこういう時は乾杯だよね、と飲み物を取りに行く中、聞こえてきたのは女神候補生組のやり取り。私の意識とテンションは切り替わったけど、今度はネプギアが釈然としないような顔になっていた。…うん、まぁ…そこを指摘してくれてありがとね、ネプギア。絶対誰か突っ込まなきゃいけない事だったけど、私はちょっとそこまで突っ込む余裕がなかったから…。
「さて、それじゃあ皆、飲み物は持ったかな?」
「持ったよー。って訳でイリゼ、良い感じの乾杯挨拶をお願い!」
「えぇー?…こほん、それでは皆様お耳を拝借」
「あ、やるのね。っていうかその反応、実は喋る前提で何か考えてたわね?」
「イリゼちゃん、お願いしますです〜」
ジュースを入れたコップを手に、私は再度主役…もとい、主人公席へ。コンパやアイエフからの言葉を受けつつ、ゆっくりと会場を見回し…言う。
「まずは皆、今日は集まってくれてありがとう。それからさっきはほんとごめんね?…と、何度も謝ってたら気持ちも沈んじゃうから引き摺るのはこの位にして…Originsシリーズ十周年、これは凄くおめでたい事だと思うの。十年という時は、決して短いものじゃない。その十年の間、物語が描かれ続けたっていうのが、本当に途切れる事なく進み続けたっていうのは、紛れもなく凄い事…そう思うの。そしてそれは、勿論単独で出来るような事じゃない。色んな人との関わりがあって、その中に喜びがあって、続けたいと思える活力に繋がったからこそのの十年だろうし…何より皆がいたから、ゲイムギョウ界という存在があったからこそ、Originsシリーズも存在している。だから…これは皆が私の為に用意してくれたパーティーだけど、私が…ううん、私達が皆に感謝するパーティーにもしたいって思ってるんだ。本当に、本当にありがとう皆。それから…これからも頑張っていこう!これからも続けられるように、もっともっと進んでいけるように!でも今は、これまでの十年を振り返って、楽しまないとね!そういう訳で……乾杯!」
『乾杯!』
たっぷりと時間を掛けて、私は語った。私の思いを、皆への思いを。そうして私は、乾杯の音頭を取り…会場には、コップ同士の奏でる小気味の良い音が響いた。……さっきも音頭っぽい事してたとか、改めてもう一度…みたいになっちゃった事とかについては触れないで。
「いやぁ、流石いりっち。ちょっと長い気もしたけど、良い事言うな」
「あはは、ありがとうずめ。皆も忙しいと思うのに、わざわざ来てくれて嬉しいよ」
「内容が内容なんだ、顔を出さない訳にはいかないよ。にしてもほんと、気持ちの伝わる良い音頭だったね、少し長い気はしたけど」
「そ、そっか。えぇと…祝われてる私が言うのも変だけど、折角のパーティーなんだから皆も楽しんでいってね?」
「勿論だ。今日はしっかり楽しんで、明日からお互いまた頑張ろうぜ?まあ、さっきのは俺もほんのり長い気がしたけどな」
「ねぇそこまで言う!?わざわざ皆で言う程長かったかなぁ!?」
各々ビュッフェ形式で用意された食事を食べたり、談笑したりでパーティーを楽しみ始める。そんな中で投げ掛けられた、うずめ達の言葉。これは絶対わざとだ、うずめの発言にくろめとウィード君が悪ノリしたパターンだ…というのは分かっていたけど、突っ込まずにはいられなかった。…な、長いのは私のせいじゃないもん…書き手の問題だもん……。
「何か大変そうね、イリゼ」
「あ、スカネク…大変どころじゃないよ、もう…というか、皆は結構馴染んでるね…。こういう場には、慣れてるの?」
「慣れてる、という訳ではないけど…私も自分の次元の仲間と、お祭りとかでこうして集まる事はあるわね。…私の仲間も、結構皆個性的だし」
「ふふ、わたしも似たようなものだ。まあ、これも君の人徳あっての事ではないかな」
軽くしょげてた私のところに来てくれたのは、スカネク、東ザナちゃん、乙戦ちゃんの三人。暫く信次元に滞在してくれてる三人も、こうして皆に混じって来てくれていた。それも嬉しいし、皆と馴染んでくれているのも嬉しいと思う。
「…あ、そうだイリゼさん。突然だけど、今後私の名前が前触れなく変わってたり、亰ザナって妹が増えていたりしても、驚かないでいてくれると嬉しいわ」
「何それどういう事!?何があるの!?何が起こったらそんな事になるの!?」
「貴女も凄い事言うわね…。…私は一先ず、近い内にそんな事が起きる気配はないから安心して。こっちもこっちで、近々記念になりそうな2000日目を迎えそうだけど」
「それはそれで何の話!?それも凄いけど、何を言いたいの!?」
「わたしは……はは、本当に特に何もないかな…うん…」
「な、何もないなら言わなくていいよ…!?悲しくなるからむしろそういう事は言わないで……!」
基本まともな三人なら、落ち着いて会話が出来る筈。…そう思っていた私が甘かった。東ザナちゃんの謎発言から始まり、スカネクが更に謎の事を言い、乙戦ちゃんが凄く居た堪れない発言をしたものだから、私は全員に突っ込まざるを得なかった。くっ…まさか皆も、信次元に染まりつつあるというの…!?信次元に染まるっていうのも、よく考えたら中々に意味不明だけど……!…こほん。
余談だけど、この後意外にも相性が良いのか、スカネクはビーシャと談笑していて、更に東ザナちゃんは第一期パーティー組のファルコムと同郷である事が判明した……んだけども、東ザナちゃん自身は第二期パーティーのファルコムの事も知ってるみたいで…これもまた、謎だった。
「つ、疲れた…ちょっ、今のペースで突っ込んでたら身が持たないんだけど……」
「そっか、じゃあわたしもとびきりのボケを……」
「なんで!?身が持たないって言ったばかりだよねぇ!?」
「あははははっ!ごめんねイリゼ、でもこの流れで何も言わないのはとてもじゃないけど出来なくてさー」
「おーおー容赦ねーな、と言いたいところだが…これに関しちゃ、イリゼの反応がいちいちおもしれーのも要因だよな」
「皆それ言うけど、私に原因があるみたいに言うのはほんと止めてくれないかなぁ…!…もー…ちょっと、このパーティー出し物とかないの?」
碌に休む間もなく今度は大きいネプテューヌとクロワールに絡まれ、流石に私はこれじゃヤバいと退避を図る。とにかくまずは、私を弄るという流れを変える…そう考えて私が問えば、女神のネプテューヌがんー…と頬に指を当てて数秒思考し……言う。
「ぶっちゃけ、お祝いするのが目的だったから、中身はノープランなんだよね」
「ほんとにぶっちゃけたね!?こんな大人数なのに、まさかの見切り発車だったの!?」
『…あはは……』
「あははじゃないよ!?ちょっ、ノワールベールブラン!?三人も多分主催側だよね!?守護女神が揃いも揃って出たとこ勝負で企画進めるとか、信次元の未来が心配過ぎるんですけどぉ!?」
駄目だった。流れを変えて休むつもりだったのに、結局突っ込みからは逃れられなかった。ついでに皆のぶっつけ本番具合も酷いもんだった。駄目だこの守護女神達&パーティー…早く何とかしないと……。
「…こほんっ」
「ほぇ〜?イリゼちゃん、もしかして喉痛めちゃった〜?」
「幾ら何でもさっきから突っ込みし過ぎですよ…まあ、気持ちは分かりますけど」
「いや今のはそうじゃなくて……えぇい!出し物とかないなら十周年記念なんだし振り返りやろう振り返り!昔を懐かしんだり、あの頃から変わったよねーって話したり、そういう事やるよ皆ッ!」
これ以上は本当に身が持たない、或いは私のメンタルが持たないと、プルルートやピーシェに言葉を返しつつ強引に流れを変える。眼力と語気で、ボケも異論も完全にシャットアウト。…まあ、ボケはともかく異論は元からなかったんだけど…とにかくやっと、十周年らしい事が始まった。
「振り返り、振り返りですか…大きく変わった事といえば、やっぱり神生オデッセフィアの建国だと思いますけど……」
「何かこう、今話す話題としてはちょっと違う気がするわよね。他っていうと……」
「……あっ。わたし、イリゼちゃんの性格…っていうか、雰囲気が出会ったばかりの頃から変わったかなぁって思うです」
『あー』
ぽんっ、と手を打って話すコンパに、ここにいるメンバーの半分位が理解を示す声を上げる。
約半数。その時点で、私はちょっと感慨深いものを覚えた。こんなに沢山の人がいるのに、コンパの言う頃の私を知る人は半分程度なんだなって事と、逆に半分位はその頃からの付き合いで、今もこうして私との交流を待ち続けてくれてるんだなって事の、両方の面から。
「雰囲気が変わったっていうと、どんな感じなの?え、まさか今とは全然違う…とかじゃないわよね?」
「それについては、イリゼ本人から答えてもらおー!ささ、イリゼっ」
「どこからそのマイク持ってきたのネプテューヌ…。…うーん…変わったっていうと、やっぱり女神の姿での喋り方とか?」
「それもそうですけど、前のイリゼさんは、ちょっとネプギアさんに近い雰囲気がありましたよね(´・∀・`)」
『あぁー』
『えっ、そう(なの・なんですか)?』
セイツからの問いに私が言葉を返せば、それにイストワールさんが反応し、再び理解の声が上がる。でも今度は、その反応に私とネプギアが顔を見合わせる。
雰囲気が変わった事そのものの自覚はある。何せ、変わったっていうか、意図して変えた部分もあるし。だけど前の自分がネプギアと似てたって自覚はまるでなかったから、それについては本当に驚いた。
「そっか…前の私って、皆にはそんな風に見えてたんだ…。…喋り方については、私なりに『女神の在り方』を模索する中で生まれたもの…かな。その喋り方が、オリゼと同じだった事はほんと意外だったけど」
「そこはやはり、複製体…もう一人の原初の女神であったからだろうな。…しかし、そうか…思えば私が君達に止めてもらったのも、もう随分と前になるのか……」
懐古するように呟くマジェコンヌに、私は…私とネプテューヌ達は頷く。あれがもうずっと前の事に思う程、あれからも沢山の事があった。…いや、違う。実際結構前の事ではある。ただ、実際の時間以上に前の事であるかのように、私も皆も感じている…と、思う。
「…でも、最初は意図して変えていた喋り方も、今は結構板に付いてるっていうか、意識せずとも出てきてる感じあるし、これも私としては変化の一つ…かな。…皆は、前の私の方が良かった?」
「んーん。前のイリゼも良かったけど、今のイリゼだっていいよね?ネプギア」
「うん。だって前も今も、イリゼさんはイリゼさんだもんね」
顔を見合わせ、すぐに答えてくれるネプテューヌとネプギア。勿論私も真剣に悩んでる訳じゃなくて、話の流れの中でちょっと訊いてみただけの事。…だとしても、こうして迷いなく答えてくれたのは、嬉しかった。皆がそれに頷いてくれた事にも、幸せを感じた。
「あ、けどそういえば、最近はあの決め台詞を言わなくなったよね。えっと……愛と勇気だけが友達さ、だっけ?」
「それはあんぱんヒーローだよ…私は言った事ないし、そのヒーローも別に決め台詞として言ってる訳ではないよ……。…もしかして、大事な人と、大事な人が守りたいものを守る…ってやつ?」
そうそうそれ、とネプテューヌは首を縦に何度も振る。言われてみると、確かに最近言ってないような…みたいな様子が周囲に広がり、何それ?って反応もちらほらと出てくる。…うん、それはそう。私自身、言っていない自覚はあった。だって…今の私はもう、違うから。
「…それってさ、私は女神であっても国を守護してる訳じゃない、皆みたいに信仰してくれる多くの人の思いを背負って立つ女神じゃないからこそ、身近な友達や仲間の為の女神で在ろうって気持ちからの言葉だったんだ。だけど、今はもう違う。神生オデッセフィアの守護女神だし、建国前からも沢山の人が私を信仰してくれていた、信次元の女神の一人として私を見てくれていたからこそ、言わないようにしてた…っていうより、自然と考え方が変わってた…んじゃないかな」
「それを含め、イリゼの変化…いえ、成長と呼べますわね」
「長く付き合っている身としては、感慨深いわね」
「イリゼが目覚ましい成長を遂げてくれて、嬉しいわ」
「ちょっ、確かに守護女神としての経歴は皆の方がずっと長い訳だけど、だからって先輩面しないでくれないかなぁ…生まれそのものは、私の方が遥かに先なんだからね?」
「え?…あ、そうか。せいつもそうらしいけど、いりぜも生まれはずっと昔だから……」
「イリゼちゃんって、お婆ちゃんだったんだね〜」
「うぐっ…お、おばあちゃんはヤメテ……」
悪意も弄る気も皆無そうな声音でまあまあな一撃を放ってくるプルルートに、私はがっくり肩を落とす。まあそれはそれとして、私が言わなくなったのは、私の中での意識の変化。同じ守護女神の皆に言われるのは少し不服ではあるけど…確かにこれは、成長…なのかもしれない。
「…っていうか、さっきから私の事ばっかりじゃん。他に何か、懐かしんだり変化を感じたりする事ってないの?」
「他っていうと…文字数とか、投稿間隔の変化とか?」
「もうメタ発言はいいって…確かにそれもそうだけど、作中の話をしようよネプテューヌ……」
「まあ、それで言いますと、わたしはネプギアさん…いえ、女神候補生の皆さんの成長も感じますね。やはり生まれと『妹』という在り方故か、誕生したばかりの頃は、皆さん今よりずっと未熟さがありましたし(´・ω・)」
「えぇ、そうですわね。そんなネプギアちゃん達が、今では頼れる存在なのですから、わたくしは鼻が高いですわ」
『人の妹で勝手に鼻高々にならないでくれない(かなぁ・かしら)……』
成長。その言葉は、私よりネプギア達の方が遥かに相応しい。そう思う程に…本当に、ネプギア達は変わった。強く、頼もしくなった。…その一方、ベールはほんと相変わらずで……
(…いや、ベールだけじゃないか。ネプテューヌも、ノワールも、ブランも…守護女神の皆は、大きく変わらないまま時を重ねている。変わる強さもあれば、変わらない強さもある…成長していく事を望まれる在り方もあれば、変わらない事を望まれる在り方もある……そうだよね。女神は人の願いの体現者…そこに、正解なんてないんだから)
お約束みたいなやり取りに苦笑をしながらも、私は何となく……何となく、そう思っていた。
「成長、か…確かに『うずめ』も守護女神だった頃は、昔と変わったなぁ…って感じるような事はあんまりなかったと思うし、そこが守護女神と女神候補生との違いなのかもな」
「何かこう、成長してる…って言われるのは、嬉しいですけどちょっとこそばゆい感じもありますね……」
「こそばゆい?っていうのはよくわかんないけど、わたしたちはがんばってきたんだから、成長してるのもトーゼンよね!」
「うん。でも、もっとがんばって…もっともっと、成長…するね(ぐっ)」
「だよね、これからも一緒に頑張ろう!」
謙遜気味の反応をユニが見せれば、ラムちゃんは胸を張り、ロムちゃんはそれに微笑んで返す。そしてネプギアの言葉に、三人が頷く。これも、ネプギア達女神候補生の変わった部分であり、変わらない部分。当たり前だけど、出会ったばかりの頃の四人は(双子のロムちゃんラムちゃんは別としても)まだぎこちない感じで、今の様に一致団結出来るようになったのも暫く先の事で…だけどそれから先は、ずっと変わる事なく皆仲良し。私含め、守護女神同士は友達だけども立場もあって競い合う事が少なくない…って間柄だけど、候補生の四人はより支え合う、協力し合う関係って面が強いと思う。
…いつか、私にも妹が…神生オデッセフィアにも女神候補生が生まれるのだろうか。それは分からない、分からないけど…今はまだ、私の時代。私が、セイツと共に国を栄えさせていく時代。そういうもしもは…実際に、そうなってから考えればいい。
「あ、そういえば…うずめやくろめ達こそ、前と今との違いを色々感じてるんじゃないかしら?それこそ三人…もっと言えばオリゼも、元は違う時代にいた訳だし」
「それに関しちゃ、俺は何も言えねぇな。何せ、覚えてねーし」
「色々感じるというか、確かに違うところは沢山あるよ。ただ……それを語ったところで、ただの昔語りにしかならないというか、十周年…OAのプロローグから今に至るまでを振り返るという趣旨にはそぐわないんじゃないかな?」
「そういう性格とはいえ、えらい穏やかにメッタメタな事言うのな、くろめ…。…んー、でも振り返りっていうと…やっぱ皆、凄ぇと思うよ。くろめやクロワールもそうだが、マジェコンヌだって前は敵対していた訳だし、他にもそういう『敵対関係の相手と和解した』って事が沢山あるんだろ?」
セイツの振った話から派生するように、ウィード君が感心混じりの声を発する。…それも、そう。マジェコンヌやくろめ、クロワールだけじゃなく、最初は反目し合うような関係だった相手と手を取り合えるようになった…そういう経験を、沢山している。他でもない守護女神同士でもそうだし、仲間…とは言い切れないだろうけど、犯罪組織の四天王や、何だかんだ何度も遭遇する事になった元犯罪組織構成員のあの二人(一人も一匹)に、今もどこかにいるらしいアフィ魔Xの二人だって、ただの敵で終わる事はなかった。
「…多分それも、繋がり…じゃないかな。敵であっても、平和の為の障害であっても、個として確かに存在するんだから……ただ排除して終わり以外の道を探す事も出来る。分かり合える、手を取り合えるとは限らなくても、対話は出来る。たとえその結果、相手の主張や目的に納得出来なかったとしても…知る事が出来ただけでも、全く違う。…なんて、真面目に言ってみたけど…そんな色々考えてる訳じゃないよ。だよね、皆」
肩を竦め、女神の皆へと視線を送る。皆もまた、小さく笑みを浮かべて頷いてくれる。
本当に、今話した事は後付けでそれっぽい理由を考えただけの事。少し格好付けていうのなら、そういう思考をする事なく、私も皆も『可能性』を模索してるんだって事。そして、可能性を手放さなかったからこそ、今がある。そうして結べた繋がりが、幾つもある。
「…そ、それで…良いと、思います」
「え?あ…オリゼ…。そっか…オリゼも……」
「私、は…そうは、思いません。そ、そうではない形、で…私は、オデッセフィアを、人々を、守ってきました。…けど…昔と、今とは…違い、ます。そして……違う、形でも…ひ、人を、幸せに…出来る、のなら…その…幸せを守、れるのなら…きっと、それが…今の、女神の…在るべき姿、なんです」
おろおろとした、ロムちゃん以上に自信なさ気な雰囲気で…でも言葉の奥に、強く深い芯を感じさせるオリゼの言葉。思えば、オリゼだってそうだった。言葉を、思いをぶつけ合い、自らの信ずる…自分を思ってくれる人達の為に自分の道を貫き通したからこそ、分かり合う事が出来た。きっと分かり合う必要なんてなかった、我が道を歩むだけで人を守り続けられたオリゼにすらも、違う道を、可能性を示す事が出来る……そういう強さがあるのが、繋がりってもの。
(やっぱり、それが女神の…シェアの本質だよね。だから、私達は自然と繋がりを大切にする…っていうのは、考え過ぎかな)
そうかもしれないし、そうじゃないのかもしれない。そしてそれについて考えるのは…今は、止めておこうと思う。だって今は、真面目な時間じゃなくて…楽しいパーティーの時間なんだから。
「けど、こうやって振り返ると、ほんとに人の部分が殆どっていうか、信次元として変わった…って話は、案外出てこないものですね」
「あー…四つの大陸が離れなくなったとか、新たな大陸が生まれてそこに神生オデッセフィアを建国したとか、友好条約の変遷とか、変化自体は色々あるけど…まあ正直、どれも盛り上がるような話じゃないしね。…っていうのを、言い出しっぺの私が言っちゃうのもアレだけど」
「信次元として変わった、かぁ…うん、ほんと変わったよね。ここまで変わるなんて、きっと最初は誰も予想しなかったし、出来なかったんじゃないかな…」
「えぇと…ネプテューヌ?それは一体、何の話をしてるの…?」
「何って……原作超次元から大きく変わったなぁって話だけど?」
「結構ヘビーなのきたねッ!基本原作沿い、ってタグをもうとても付けられないっていう、滅茶苦茶ベビーなのぶっ込んできたねッ!」
「い、いやまあそこまで言うつもりはなかったんだけどね……」
ここにきてまた放たれる、ネプテューヌからの相当なメタ発言。いやほんと…十年積み重ねてきた結果って、大きいよね……。
「はぁぁ…結局またフルパワーで突っ込んでしまった…ほんと私、突っ込みからは逃れられないんだ……」
「まあまあ、そう気を落とさないで。ここからまた、嬉しい事があるんだし。ね?皆」
「……?」
ぱちん、とノワール達へウインクするセイツ。何だろう、さっきは出し物とか特に考えてないって言ってたのに…と私が首を傾げていると、守護女神の四人が前に出てくる。
「ふふ、イリゼ。今日わたくし達が、イリゼと買い物に出たのはここでの準備の時間を稼ぐ為ですけれど…ただの時間稼ぎだけの為だと思ったら大間違いですわよ」
「え、いやあの…それ以前に、時間稼ぎだった事自体今知ったんだけど……」
「あ、そうなの。…因みにネプテューヌがこっちに残ったのは、ネプテューヌも連れていくとどこかでぽろっとサプライズの事を言いそうだったからよ」
「あー、やる事ってこの準備だったんだ…それは普通にありそうかも」
「でしょ?まあ、話を戻すとして……今日私達が一緒に買い物に出たもう一つの理由。それは、イリゼへのプレゼントを選ぶ為よ」
そう話すノワール達の手にぶら下がるのは、ショッピングモールで買った物の紙袋。そうか、そういう事だったのかと私は納得し…まずはブランが、私の前へ。
「それじゃあ、わたしから。イリゼ、開けてみて」
「これは……ペン?」
「えぇ。わたしも同じシリーズの物を使ってるんだけど…聞いた事ない?インク切れのしないペン、って」
紙袋の中、品のある箱に包まれる形で入っていたのは、白を主体に金色のラインが入った、スタイリッシュさを感じさせる複数のペン。それを手に取りながら、私は頷く。インクを必要としないペン、無限に書ける鉛筆…本当に無限な訳じゃなくて、普通の鉛筆やボールペンとは別格で長持ちするっていうのが実情ではあるけど…だとしても、何年も…或いは何十年も替える事なく使い続けられるというのは、凄く魅力的。
「左から順に、鉛筆、ボールペン、万年筆よ。これなら仕事でもプライベートでも使えるし、見た目も品性を感じるでしょう?」
「確かにこれは場所を問わず映えそうだし、持った感じもしっくりくるかも……って、うん?…ブランのプライベートって……」
「何か、問題ある?」
「な、ないかな……」
ひょっとして…いや、ひょっとしなくてもそれは執筆活動では?…と思った私だけど、言わない事にした。特に問題がある訳じゃないから、言わない方が良いような気がした。…というかブラン、原稿用紙に書くタイプだったって事かな…?或いは、その時々で電子と使い分けてるとか、メモ書きで使ってるとかかな…?
「じゃ、次は私ね。先に言っておくと、私も普段使ってるメーカーの物を選ばせてもらったわ」
「そうなんだ……って、え?ワイヤレスイヤホン?」
「そうよ。…何か、意外そうね……」
「い、意外というかその…これは全員、自分の趣味絡みの物を出す流れかな…って…」
ペンと同様丁寧な作りの箱の中に収められていた、黒ベースに金が差し色となったワイヤレスイヤホン。色合いもそうだけど、デザインも何となく高級感を感じさせる。充電器を兼ねる箱もまた、ぱっと見宝石が収められていそうな雰囲気がある。
そしてそういえば、今私はイヤホンを持っていない。それをノワールが知ってて選んだ…とは思い辛いけど、だとしてもありがたい。凄くありがたい。
「…こほん。ブランじゃないけど、これだって仕事とプライベートの両方で使える代物よ。単に音楽を聞くだけでもいいし、何かのついでに曲を覚えるのにも役立つも思わない?」
「そっか、そっち方面でも役立つのか…。……あ、イヤホンっていえば、声優とコラボした物もあるよね」
「な、なんでその話になるのよ!?」
「えぇ…?なんでって、単に連想しただけなんだけど……」
絶対そんな反応するような事じゃないよね、と軽く面食らいつつも私は答える。するとノワールも、しまった…という顔で冷静になってくれる。…でも、ワイヤレスイヤホン…耳元で音や声を聴けるアイテム、か…声優コラボじゃないけど、女神コラボとして私達の声を収録とかやったら、ASMRみたいになる……なーんて、ね。
「それでは、お次はわたくしですわね。あ、イリゼ。先に言っておきますけれど、陶磁器ですから落とさないようにして下さいまし」
「陶磁器…って、もしやティーセットだったり?」
「むぅ…それは思っても、開けて確かめるのを先にしてほしかったですわ」
「あ、ご、ごめん…。……わっ、ほんとにティーセットだ…ほんとにティーセットなんだ……」
「なんで先に予想してたのに、開けてから軽く驚いてるんですの…?」
だってほら、趣味関連の物ならベールはオタクグッズをプレゼントしてきそうだし…という理由は黙っている事にして、ティーセットに触れる。翡翠を思わせる緑の地色と金色の紋様が目を引くティーセットは、高貴さと落ち着いた印象を同時に与えてくれる。思えばティーセットも私は持っていなかった…勿論カップやポットはあるけど、セットとしては有していなかったし、これなら飾るだけでも映えると思う。
「まあ、それはともかくとして…イリゼもお菓子を作った際、紅茶を淹れる事もあるでしょう?そういう時、ティーセットで入れた方が、よりお菓子を楽しむ事が出来ると思いませんこと?」
「ベール…だよね、私もこれお菓子作った時に使えば…って今思ったもん。でも、どうしようかな…見た目もいいし、仕事場で使うようにするのも捨て難いというか……」
「それはイリゼの自由ですし、実際に何度か使ってみてから決めてといいと思いますわ」
確かにそれもそうだ、と私はベールの言葉に首肯。…あれ、でも…ノワールとベールの時にはそれぞれ「うん?」ってなる場面があったのに、ベールの時は終始まとも…?基本私と同じ側なノワールと、ボケる時もあるけどどちらかといえば突っ込み側なブランじゃなくて、ベールがまともなプレゼントとやり取りだけで終わるなんて……と思っていたら、それをベールに見抜かれたのか、本人から半眼で見られていた。
「うんうん、三人共良いプレゼントじゃん!それじゃあ次は、うずめ達から…と、言いたいところだけど……」
「……?」
「実は皆、自分もイリゼに何かプレゼントを…って思ってくれててね?けど、皆から貰ったら流石にイリゼも大荷物になり過ぎちゃうでしょ?だから皆からのプレゼントは、着払いのカタログギフトって事になりました!これも皆の気持ちだと思って、遠慮せずに注文してね!」
「皆……って、着払い!?それじゃあ支払いは私持ちじゃん!全然プレゼントじゃないじゃん!」
「えっ…イリゼ、女神なのにお会計は皆持ちにする気なの…?ロムちゃんやラムちゃんにも支払いさせるの……?」
「盛り下がる事言わないで!?」
それを言ったらそもそもプレゼント自体が成り立たないよ!?…と私が突っ込む中、ネプテューヌは「じょーだんじょーだん!」と笑って言った。…良くないよ…良くない冗談だよネプテューヌ……。
「よっし、それじゃあわたしのプレゼントいくよー!わたしからのプレゼントは…なんと!」
「な、なんと?」
「じゃーん!マコトジュエルにガラスのハート、そしてリピドークロスの変身アイテム三点セット!…の玩具!」
「なんか思ってたのと全然違う!?ちょっと!?幾ら何でも私はそういう玩具で楽しむタイプじゃ…って、最後だけおかしくない!?色んな意味で対象年齢上がり過ぎてないかなぁ!?」
「えぇと…対象年齢の話をすると、二つ目も結構ややこしいような気がします、アタシ……」
「あ…いいなぁ……」
「ネプテューヌちゃんわたしほしい!わたしにもちょーだい!」
まるで前者三人がボケずにいた分を取り返すかのように、ネプテューヌは思いっきりふざけてくる。ある意味ネプテューヌらしいといえばネプテューヌらしいけど、ほんととんでもない。……因みにその玩具に関しては、ブランと相談の末、女神としての勉強を頑張るという約束でロムちゃんラムちゃんに譲る事になった。
「あはは、ごめんねイリゼ。…じゃあ…改めて、わたしからのプレゼントだけど……」
「う、うん」
「…困ったな、思い付いた時は『これだ!』って思ったのに、いざ渡すってなるとちょっと緊張してくるっていうか…三人が普通に実用性高いプレゼント用意したから、自信無くなってきたっていうか……」
「ちょっとネプテューヌぅ?自分は前から用意してた癖にその事黙ってて、尚且つ前日に突然『折角だしパーティーだけじゃなくて、プレゼントも用意しようよ!』って言ったもんだから、私達は今日のパーティー前にプレゼントを用意するしかなくなったってのに、ここにきて尻込みなんて何を考えてるのかしらー?」
「あっ、ちょっ、ノワール!?」
後ろ手の状態で何やらネプテューヌがもじもじとする中、ノワールがその背後に周り、ばっと両手を上げさせる。そうしてネプテューヌの背中から出てきたのは……二つの色紙。
どちらの色紙にも、沢山のメッセージが書いてある。それはどれも、お祝いのメッセージで…一枚目のメッセージに添えられている名前は、ネプテューヌを始めとする、ここにいる皆の名前だった。そして、もう一枚の色紙は……
「…凄い…ここにいない皆まで、こんなメッセージを……って、待って!?ちょっ、この辺りに書いてある名前って……」
「あ、うん。コラボの皆も呼ぼうかなって思ったんだけど、ちょっと前に合同コラボをやったばっかりなのにまた登場…は流石に何か駄目そうじゃん?だから、寄せ書きしてもらった……みたいな?」
「また凄まじい事しようとしたねネプテューヌ……メタネタ全開の回とはいえ、一応これ本編なんだよ…?…でも、そっか…皆からの、寄せ書きか……」
「…やっぱり、もっと使える物の方が良かった?」
「ううん。嬉しい。とっても嬉しいよ、ネプテューヌ」
そんな事ない、と私は首を横に振る。ネプテューヌを見て、皆の事を見回して、それから微笑む。
確かにこれは、実用性なんてない。だけどこれには、皆の思いが込められている。私を思ってくれる気持ちが、ここにメッセージとして形になり、記されている。それが嬉しくない筈がない。むしろ嬉しいに決まってる。それに…きっとこれは、ネプテューヌが一人一人にお願いして、集まる事の出来ない相手には自分からそれぞれ出向いて、そうやって集めてくれたもの。だからこれは間違いなく…私の宝物の一つになる。
「皆も、ありがとう。こうやって、寄せ書きしてくれる皆がいる…そう思えるだけで、私は幸せだよ」
「そ、っか…はふぅ、良かったぁ……」
「ふふっ、寄せ書きにしようっていうのも、いざ土壇場になってから不安になるのも、なんかネプテューヌらしいよね。…でも、一つだけいい?」
「ねぷ?なになに?」
「十周年記念で寄せ書きを渡されると、その…主人公卒業とか、それこそOriginsシリーズの完結が決まったみたいになっちゃう気が……」
「あ、あー……ひょっとして、実は本当にそうだったり…?」
「し、しないよ!?私はまだまだ主人公やるし、Originsシリーズだって続くんだからね!?」
そう思ってもらっちゃ困る、と私は全身全霊で否定。いやほんと、違うからね!?OUみたいに長期離脱する事は今後もあるだろうし、舞台となる時代や次元によっては私が出てこないって事もあるだろうけど、私卒業なんてしないから!Originsシリーズも終わらないから!
……って、なんか今回の私、作者の代弁的な事何度もしてる気がする…まあ、内容が内容だから仕方ないけど…。
「うんうん、Originsシリーズも、イリゼの主人公も…そして同じ主人公たるわたしの活躍も、まだまだこれからも期待して良いんだからね!」
「しれっと自分の存在をアピールするね、ネプテューヌ……」
「それはそうだよ、アピールは人任せじゃなくて自分でやっていくものなんだから。まあ、それはそれとして…プレゼントタイムも終わったし、まだまだパーティーは続けるけど、ここで一つこれからへの意気込みいってみよー!」
「えっ、私が?」
『勿論』
「で、ですよねー……こほん」
満場一致の勿論、を返されて、私は軽く圧倒されながらも首肯する。最後までメタメタな感じになりそうだけど…もう今更だし、だったら最後まで駆け抜けるのみ。
私はゆっくりと、深呼吸をする。そして皆の事を見回して、より多くの人の事を心に思い浮かべて……言う。
「私達には、信次元には、私達の生きるそれぞれの場所には、これまで沢山の苦難や困難があった。多分それはこれからもあるし、今までとは比べものにならない程の窮地に立たされる事だってあるかもしれない。だけど、私達なら…皆となら、大丈夫!だって私達には、それぞれの力が、強さがあって…その強さを束ねて、もっと大きな力に、未来を切り開く希望にする絆があるんだから!そうやって歩み続ける事が出来れば、不可能も限界もないんだから!だから──続けよう!私達で、私達の物語を!」
これが、私の思い。誇張なんて何もない…皆を信じる、私の信念。特別な事なんてない。皆を信じるのも、繋がりの力を貫くのも、これまで私達がしてきた、普通の事で…だからこそ、何よりも力強いものなんだから。
そうして意気込みを、私の中にある確かな希望を伝えた私は、また皆とのパーティーを楽しむ。最初に感謝を、今は意気込みを口にしたけど、これは決起集会じゃなくて、あくまでパーティー。だから一番大切なのは、この十周年記念を楽しむ事で……
「っていう訳で、次があるとしたら十五周年か、二十周年記念かなっ!皆、その時をお楽しみにねっ!」
「ちょっ、こういうのまたやるの!?というか当たり前だけど、次回は大分先だね!十周年でもかなり続いた末って感じなのに、あっさり言ってくれるね!?…あぁ、もう…こうなったら、二十年でも三十年でも出来る限り続けてみせるよ!うっかり忘れてなかったら、また記念の回もやると思うよ!……私じゃなくて、作者さんがねっ!」
……最初から最後までメッタメタ。商業じゃないのをいい事に、やりたい放題。だけど──それこそがこのOriginsシリーズなんだよね、きっと。
今回のパロディ解説
・「〜〜亰ザナ〜〜」
ザナドゥシリーズの一つ、亰都ザナドゥ -桜花幻舞-の事。前話に続いたの、未発売作品のパロディです。そして今後、東ザナの名前がどうなるか、亰ザナが妹になるかどうかは…まだ全くの未定です。
・「〜〜記念になりそうな2000日目〜〜」
SCARLET NEXUSのプロデューサー、穴吹健児さんがX(旧Twitter)にて行っている企画の事。2000日に至ろうとしてるのも凄いですし、この作品のファンとしては作り手の作品愛を感じられて嬉しいものです。
・〜〜駄目だこの〜〜早く何とかしないと……。
DEATH NOTEの主人公、夜神月の名台詞(心の声)の一つのパロディ。何とかしないと、と思っているイリゼですが…まあ、イリゼが何とか出来る事ではないでしょう。
・「〜〜愛と勇気だけが友達さ〜〜」、「〜〜あんぱんヒーロー〜〜」
アンパンマンの主人公であるアンパンマン及び、アンパンマンのマーチにおけるフレーズの一部の事。ただこれ、歌のフレーズであって、アンパンマンの言った台詞とかではないんですよね。
・「〜〜おばあちゃんはヤメテ……」
色づく世界の明日からにおける、第四話のサブタイトルのパロディ。この作品、今でも時々思い出します。シンプルに名作、って言えるような作品ですよね。
・「〜〜マコトジュエル〜〜」
名探偵プリキュア!における変身アイテムの事。ただ厳密に言えば、それそのものではなく、その玩具のパロディですね。そして欲しがったロムラムは、OPで探偵ごっこ的な事をしていたのを今思い出しました。
・「〜〜ガラスのハート〜〜」
魔法の姉妹ルルットリリィにおける変身アイテムの事。こちらもその玩具のパロディです。鬱要素やバトル要素がメインではない、正に正統派って感じがするこの作品、中々良いと思います。
・「〜〜リピドークロス〜〜」
淫獄団地における変身(?)アイテムの事。上記二つと合わせて今やっているアニメ作品のパロディ…という括りですが、作中で突っ込まれてる通りこれだけ全く別です。流石に玩具化もしないでしょう。
読んで下さった方はお分かりかと思いますが、前話及び今話の二話を掛けて、Originsシリーズ十周年の記念回でした。皆様、如何だったでしょうか。
そして、作中でも触れている通り、まだまだOriginsシリーズは続きます。現状、終わらせるという選択肢はありません。ですので、これからも読んで下さると幸いです。