超次元ゲイムネプテューヌ Origins Transition   作:シモツキ

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第六話 共に過ごす今

 先日、うちに守護女神の皆が遊びに来た。…らしい。丁度神次元に行っていた時に来たって事だから、わたしは何をしていたかなんて全然知らない。くっ…そういう事はお姉ちゃんに一言言いなさい!……とはまあ言わないけど、ちょっと残念だった。

 で、だからって訳じゃないけど…今日は別の子達が、うちの教会に遊びに来る。

 

「こんにちはー」

「あそびに来たわよー!」

「来たよ(わくわく)」

「すみません、玄関先でいきなり騒いじゃって…」

 

 わたし達が住む教会の居住区画には、正面から仕事区画を経由して入るのは勿論、直接入れる玄関口も当然存在している。その出入り口に、明るく元気な声が響き…インターホンでそれを受けたオリゼが、リビングを出ていく。

 

「は、はーい。い、今、行きますっ」

 

 軽快に駆けていくオリゼを見送り、わたしもソファから立ち上がる。今日イリゼは不在で、イストワールも今はプラネテューヌ。だから今日は、わたしが皆の事を見てあげないとね。

 

「いらっしゃい、皆。早速だけど、お菓子あるわよ」

「ほんとに早速ですね…えと、これどうぞ」

「アタシもこれを、詰まらないものですが」

「え?おいしそーよ?」

「じゃあ、おもしろい食べものも、あるの…?」

「いや、そういう事じゃなくて……」

 

 戻ってきたオリゼと共に、リビングに来た訪問者の四人…女神候補生の四人へ、わたしは軽く笑い掛ける。因みにお菓子の内容については…別に描写しなくてもいいわよね?

 と、いう訳で迎えたわたしは、ネプギアとユニからそれぞれ手土産を受け取り…詰まらないもの、の意味を言葉通りに受け取って小首を傾げるロムとラムに、いやいやとユニが手を横に振る。続けてユニはネプギアと二人で、詰まらないものの意味を双子へ教える。

 

「けんそん…?」

「ふーん。別につまんなくないんだから、おいしいものです、って言えばいーのにね」

「それは……うーん、言われてみるとそれもそうだよね…美味しいものですって言ったらハードルは上がっちゃう気がするけど、別にそう言われて嫌な気持ちになる訳じゃないし…」

「…流石小さい子、普通なら『それが普通』だって思って気にしないような事にも着目するのね…」

 

 そっか…としっかり受け止めるネプギアの姿にユニと肩を竦めつつ、わたし自身成る程と思う。ただ別に、今は言葉の勉強をしている訳でもなければ、その為に来た訳でもない。だから数秒後には「ま、いっか!」…とラムちゃんが言い、早速ロムちゃんと共に手を洗って用意したお菓子を食べ始めた。

 

「んふ〜、あまいねロムちゃん」

「うん。このおかし、すき…(ふわふわ)」

「そ、そのお菓子は、私が選ん、だんです。お、美味しいですよねっ」

「そうなのね。じゃあ、オリゼちゃんもいっしょに食べよっ!」

「ふぇ?…あ、え、えと…い、いいん…ですか…?」

「いっしょに食べた方が、おいしいよ?」

「そ、それは…えっと……」

 

 誘われたオリゼは、迷うようにわたしの方を見やってくる。それにわたしは頷きを返し…ぱっと表情を綻ばせたオリゼは、二人の隣に座って一緒に食べる。三人で、美味しいねと笑顔を見せ合う。そしてそのやり取りに、わたし達はほっこりとし…二人も食べて、と続けて勧める。

 

「今日は皆、何して遊ぶ予定なの?」

「んっとね、色々!」

「今日はオリゼさんから誘ってくれたんです。ですよね、オリゼさん」

「は、はいっ。これまでは、誘ってもらって…いたので、わ、私も誘わなきゃ…と、思ったんです…!」

「別にそんな、気を遣わなくても大丈夫ですよ?特にロムとラムなんて…ねぇ?」

「あはは……」

 

 呆れ気味の表情を見せるユニに、ネプギアは苦笑。ロムちゃんとラムちゃんが、「原初の女神との交流」…というそれっぽい事を理由に、それまでも体良くオリゼと遊びに来ている事はわたしも知っている。けどブランやミナに「遊びもいいけど勉強もちゃんと…」と言われないようにする為だけにオリゼと遊んでいる訳じゃない事は、さっきの…そして今も仲良くお菓子を食べている姿を見れば、よく分かる。

 

「はふぅ、ごちそーさま!それじゃあさいしょは、マーリョカートやりましょ!」

「ワールド、やろ?」

「えっ…そんな、この話が投稿される時点では、まだ発売されてない筈じゃ…!?」

「せ、セイツさんマーリョです。ゲイムギョウ界の、マーリョってシリーズの方であって、セイツさんの思ってる方じゃないですから…!」

 

 なんですって!?…と反応するわたしに、ネプギアがわたわたと説明をしてくる。でも当然、わたしはそれを分かった上で、わざと冗談として言った訳で…ふふっ、ネプギアは素直よね。こういうところ、イリゼとちょっと似ているわ。

 

「…うん?でも、そのゲームって一度にやれるのは四人までじゃなかった?けどアタシ達とオリゼさんだと五人、セイツさんも加えたら六人よ?」

『あっ……』

「そこは考えてなかったんだ…一応、オンラインプレイにすれば五人以上でもやれるけど……」

「その場合、人数分のハードとソフトが必要なのよね」

 

 だよね、とユニの返しにネプギアは頷く。まぁ、女神だし不足分を揃える位なんて事ないんだけど…この為だけに買うのは、流石に…ね。

 

「ど、どうしよう…(おろおろ)」

「全く…じゃ、取り敢えずアタシは見てる事にするわ」

「わたしもいいわ。そもそもわたしは、誘われた訳でもないしね」

 

 ここでわたしがやりたい、って言うのもね?…と、ユニに続いてわたしも遠慮。全員でやれない事に、ロムちゃんとラムちゃんは少し残念そうだったけど…数秒後には切り替えて、二人でゲームの準備をしていく。

 そうして、あっという間に準備が完了。人数分のコントローラーが置かれ…一回目のプレイヤーが、それを構える。

 

「さぁ、しょーぶよ!」

「負けない、よ?」

「わたしだって、本気でいくよ?」

 

 

『……あれっ?』

 

 張り切るラムちゃん。やる気を滾らせるロムちゃん。笑みを浮かべつつ、闘志を見せるネプギア。そして…持ち主のいない、四つ目のコントローラー。ネプギア、ロムちゃん、ラムちゃんが持ってて、わたしとユニは元から見ているつもりでいた。と、いう事は……

 

「……?」

 

 ちらりと横を見てみれば、そこにはソファに座ったまま、わたし…というか、わたし達全員に見られてきょとんとしているオリゼの姿。…えぇ……?

 

「…オリゼ、やらないの…?」

「あ…わ、私は、やった事ない…ので、最初は見ていよう、かな…って…」

『それなら先に言って下さい……』

 

 がくっ、と肩を落として突っ込む二人、その指摘を受けて理解したオリゼはわたわたと慌てて謝罪をする。ただでも、初めてのオリゼがいきなりプレイっていうのは、確かにちょっとハードルが高い。という訳で、オリゼは希望通り暫く見ている事になり、空いたコントローラーはユニが持ってゲームスタート。

 

「よっし、スタートダッシュ成功!悪いけど、このまま行かせてもらうわ!」

「逃がさないよ、ユニちゃん!」

「ラムちゃん、まずはきょうりょくして……」

「わたしたち二人で、わんわんフィニッシュね!」

「わ、わんわん…?わんこ、さん…?」

「うん、多分だけどワンツーフィニッシュの事じゃないかしら」

 

 両手を丸め、手首を曲げた状態で構えるオリゼに、今度はわたしが指摘する。…ワンツーフィニッシュで合ってる筈。二人で同時にゴールするつもりだから、ワンツーじゃなくてワンワン…って事では、ない…と思う。…っていうか、アレね…自分の親であり、妹と同じ顔をしたオリゼがわんこポーズをしてるっていうのは…何かこう、一言じゃ言い表せない心境になるわね…。……可愛いけど。

 

「…あっ…セイツ。えと…あ、アイテム?…みたいなのが、出てきてます…けど、あれは……」

「見ての通り、レースを盛り上げる要素の一つよ。アイテムボックスに触れる事で入手出来て、下位の順位になる程強力なアイテムが手に入り易いの。種類も加速系、攻撃系、罠系って感じに色々あって……」

 

 オリゼと二人でレースの内容を眺めつつ、ゲームについて説明していく。ふんふん、と頷きながら、オリゼは興味深そうにゲームを見つめる。

 遥か昔の存在であるオリゼだけど、最新…というか、現代の技術や知識に対する抵抗であったり、苦手意識だったりはない。むしろ人の努力や叡智の結晶なのだからと触れる事には積極的で、飲み込みだって悪くない。…まぁ、そういう女神らしい理由じゃなくて、興味も飲み込みも単に人の姿の時は精神面がとにかく幼いから…って事だったりする可能性も、なくはないけど…その方向については、あまり考えない事にする。

 

(…でも、そうよね。わたしだって、大きく進歩した人の技術や文化を見た時は、興奮したし嬉しくなったもの)

 

 思い出すのは、自分の経験。あの時代の皆と共にレイを打ち倒し、眠りについて、現代の神次元で再び目覚めた時は、何もかもが驚きだった。ここまで変わるものか、と最初は翻弄されっ放しで…だけど嬉しかった。自分が守り、信じ、愛した『人間』は、こんなにもポテンシャルに満ちていて、それを腐らせる事なく、努力や協力、それに後世へ託す事を積み重ねてきた事で、実現と発展に繋げてきたんだと思うと、誇らしくて仕方なかった。…きっと、オリゼが抱いているのも同じ思い。私はイリゼと違ってオリゼの複製体じゃないし、イストワールの様にオデッセフィア時代でのオリゼとの繋がりがある訳でもないけど…現代で再び歩む道をオリゼが選んでくれて、わたし達がそれを実現出来た事で、わたしはオリゼにシンパシーを…わたしにしか共有出来ない思いを持つ事が出来た。…それも、嬉しい。

 

「んふ、んふふふふ……」

「…せ、セイツ…?」

「あっ…な、なんでもないわよ!?シンパシーを感じて嬉しくなっちゃったとか、全然そんな事ないんだからねっ!」

『何故いきなりツンデレ風に!?』

「あ、チャンス…!」

「よーし、今こそレンコンぬきよ!」

「ラムちゃん、それを言うならごぼう抜き…ってわわっ、ほんとに抜かれた…!」

 

 思わず出てきた変な口調に、ネプギアとユニが突っ込んでくる。そしてそれに気を取られたのか、二人の操作は甘くなり、まずネプギアが、続いてユニもロムちゃんとラムちゃんに抜かれてしまう。…な、なんかごめんね、二人共…わたし別に悪くない気もするけれど…。

 と、変な逆転劇も挟みつつ、レースは進んでいく。双子はこのゲーム…というか恐らくはシリーズをやり慣れているようで、猛追するネプギアとユニを巧みに躱し…そのままゴール。

 

「えへへ、やったねラムちゃん」

「センゲンどーりね!」

「やられた、っていうか本当にほぼ同着ね二人共…。ま、それはともかく…オリゼさん、どうします?替わりますか?」

「あ…そ、その、もう少し見てても…いい、です、か…?も、もうちょっと、見て覚えたい、ので……」

「分かりました、じゃあ…ネプギア。ロムとラムは強敵よ。勿論アタシは、アンタに一位を譲る気なんてないけど……」

「一位争いをするまでは、こっちも協力しようって事でしょ?ふふ、いいよ」

 

 負けた事で、一層やる気を燃やすネプギアとユニ。その様子を見て油断出来ないと思ったのか、喜んでいたロムちゃんとラムちゃんの表情もふっと引き締まる。

 そうして続く、レースゲーム。チーム戦でこそないものの、ネプギアとユニ、ロムちゃんとラムちゃん、タッグを組んでのレース展開が繰り広げられ、見ているこっちも熱くなる。そうして更に、数度の勝負を重ね…また一つレースが終わったところで、遂にオリゼが声を上げた。

 

「…あのっ。そ、そろそろ…私、も…や、やりたい…と、思い…ますっ」

「はーい。それじゃあ、ユニちゃん替わる?それとも、わたしが替わろっか?」

「んー…待って。オリゼちゃんがやるなら、わたしがかわるわ!」

『え?』

 

 ならば自分が、と名乗りを上げたラムちゃんに、わたしとネプギア、ユニが驚く。まさかこういう時にラムちゃんが替わろうとするだなんて…と、三人揃って目を瞬かせる。

 

「…ラムちゃん、いいの?」

「いーの。ふふん、見てたって言ってもオリゼちゃんはショシンシャでしょ?だからわたしが、セカンドになってあげるわ!」

「セカンド…?…あ、セコンドか。ふふっ、そういう事なのね」

 

 尋ねるネプギアに、ラムちゃんは胸を張って返す。セカンドもとい、セコンドをというラムちゃんの言葉で、わたしはその意図を理解する。

 要は、オリゼをお世話してあげたいって事。ラムちゃんはロムちゃん共々最年少組で、そのロムちゃんの妹でもあるからか、お姉さんぶりたい一面があるのよね。思えば超次元のラムちゃんも、まだ小さかった頃のピーシェに何かと構っていたし。

 

「…あ、でも一応訊くけど、セコンドってどういうものなのか知ってる?セクシーコマンドーの事じゃないわよ?」

「いや、それは誰も間違えないかと…」

「もちろんわかってるわ!ぶきを渡してあげたり、相手の注意をひいたりするのよね?」

「こっそりこうげきしたりもする、よね…?」

「うん、それはプロレスのセコンドね。しかもヒールじゃない…」

 

 ユニにわたしが突っ込まれたのも束の間、わたし以上のボケをラムちゃんが仕掛けてくる。しかもロムちゃんもそれに乗ってくる。…え、これ冗談よね?最初からそういう妨害するつもりでセカンドに付こうとしていた訳じゃないわよね…?

…と、変な不安に駆られたわたしはきっちりとセコンドの意味を伝え、その上でオリゼのサポートに付いてもらう。実際、初心者であるオリゼのサポートをしてくれるのならありがたい。わたしよりラムちゃんの方が、このゲームの事をよく知ってるだろうしね。

 

「オリゼちゃん、まずはスタートダッシュよスタートダッシュ。わたしが今っていったら、このボタンをおすの。いい?」

「う、上手く、やれなかったら…ど、どうなっちゃいますか…?」

「どかーんってバクハツしちゃうわ」

「ば、爆発…!?そ、そんなに過激なゲームだったん、ですか…!?」

「あの、そんな本格的な爆発じゃないので大丈夫ですよ…?」

 

 あわわ…と震えるオリゼにネプギアが伝え、頬を掻く。それからネプギアはわたしの方を見てきて、「普段からこんな感じなんですか…?」…とばかりの視線を送ってくる。…えぇ、こんな感じよ。単に驚いているだけであって、爆発が怖いとか、そういう事ではないけども。

 なんてやり取りも経て、ゲーム再開。レースのカウントダウンが始まる中、ラムちゃんは指示を出し…オリゼがしっかりそれに合わせた事で、スタートダッシュは成功。三人も同じように成功させ、この四人での勝負が幕を開ける。

 

「ふっ…ほっ…!えい…っ!」

「ラムの指示ありきとはいえ、やりますねオリゼさん…!」

「まさかここでインコースを攻めてくるなんて…けど、わたしもそう簡単には抜かせません…!」

 

 逐一出される指示に沿って、オリゼは先行する三人へ喰らい付く。ゲーム中に横からあれこれ言われるのは嫌だって人もいるけど、オリゼは全く気にならない…というより、圧倒的に不足している知識やテクニックの情報をラムちゃんから受け取る事で、三人との差を埋めてきている。そして、得た情報を即座に反映させるだけの反応速度と集中力が、オリゼにはある。……因みに画面上のカートの動きに合わせて、自分も動いちゃったりしてるんだけど…まあそれは別にいいわよね。そうなっちゃう人って、偶にいるし。

 

「いけるいける、まだかてるわオリゼちゃん!そこはぐって行ってがーってやってごーっ、よ!」

「ふ、ふぇぇっ!?え、あ、あっと…ぐっ、がーっ、ごー…っ!」

「あーおしい!それじゃあぐっ、がーっ、ぐぉーになっちゃってるわ!」

「…ユニちゃん、今のどういう事か分かった…?」

「いや、全然…なんでオリゼさんはある程度分かってた感じなのかしらね……」

 

 ここに来て精神年齢の近さがプラスに働いたのか、滅茶苦茶な指示を理解するオリゼ。ただ完全に指示通りとはいかなかったのか、逆転のチャンスを掴む事は出来ず…オリゼは四着、NPCには勝ったけど四人の中じゃ最下位という形で終わってしまう。

 ただ、オリゼの顔に陰りはない。最後まで走り終えられた事への安堵と、初めてのプレイで感じた喜びが滲むような表情をしていて……そんなレースの一位は、ロムちゃんだった。何気にラムちゃんと組まなくても強いロムちゃんであった。

 

「うーん、惜しいなぁ…だけどやったね、ロムちゃん」

「ふふん(ぶいっ)」

「オリゼさんも凄かったです。ひょっとして、このゲームが初めてなだけで、レースゲーム自体は割とやった事あるんですか?」

「ちょ、ちょっと…あり、ます。イリゼと、セイツ…も、い、色々なゲームをやる、ので…それを、やらせてもらったり…して……」

 

 こくん、とユニの問いに頷いたオリゼはわたしの方を見やってくる。今言った通り、オリゼはわたしやイリゼのやっているゲームをプレイする…って事が、これまでに何度もあった。…というより、わたし達がやっている姿を、或いはゲーム自体を興味津々な目で見つめてくるものだから、わたし達の方から「…やってみる?」と訊いているのが実際のところ。

 

「負けっぱなしじゃいられないわね!オリゼちゃん、めざせ二位よ!」

「は、はいっ!…あれ…?い、一位、じゃなくて…二位、なんです…か…?」

「うん。だって一位にはロムちゃんがなってほしいんだもーん」

「あ、精神的にちょっと裏切ってるわよこのセコンド」

「ま、まあラムちゃんだしね…」

 

 しれっとサポート相手よりロムちゃんの事を優先するラムちゃんのスタンスには、オリゼもロムちゃんも「あ、う、うん…」みたいな顔になる。それにわたしは苦笑をし…二レース目がスタート。さっきと同じくオリゼはラムちゃんの助言を受けて、果敢にネプギア達へ追い縋る。

 ただ、中々勝てない。情報面のサポートがあるっていっても、それはオリゼの不利を大きく埋めてくれるだけで、アドバンテージにはなりはしない。特に、ロムちゃんの知識はラムちゃんとほぼ同等だろうから、情報伝達の手間がない分明確にロムちゃんに対しては遅れを取ってしまっている。…とはいえ、これは遊び。皆真剣だけど、あくまでも遊びとして。だから勝った相手の事は褒め称えているし、負けた事を悔しがりはしても、変に引きずったりはしない。…あ、今わたしや守護女神の皆より、女神候補生の方が大人だって思ったわね?言っておくけど、わたしはイリゼ達は、たとえゲームや遊びであっても勝負であれば妥協しない、常により良い結果を目指すってだけよ。

 

「ふー、なんとか勝った…これでネプギアとは五分五分、だけど……」

「ほんとに強いね、ロムちゃん…ほぼ必ず二位以上にはなってきてるし、とにかくどのコースでも走りが安定してるっていうか……」

「そういうところ、ブランに似てるわね。どこの次元のブランも、基本スイッチが入らなければ冷静さが安定してるし」

「そ、そう…かな?そっか…(そわそわ)」

『……?』

 

 更に何レースか走った後。わたし達の言葉にロムちゃんは喜ぶ…かと思いきや、何やら気になる事がある様子。何かしら、とわたしはネプギアやユニと顔を見合わせ、ロムちゃんの視線の先に目をやって…気付く。

 

「うぅ…ご、ごめんなさい、ラムさん…。せ、折角教えて、くれてる…のに、全然勝てなく、て……」

「ほぇ?どうしてあやまるの?わたしは楽しいわよ?」

「ほ、本当…です、か…?ほんと、に…た、楽しい…ですか…?」

「だってオリゼちゃん、見てておもしろいもん!」

 

 自分が負けた事より、教えてくれてるラムちゃんへ結果で返せない事を気にして泣きそうになるオリゼ。そんなオリゼに、ラムちゃんは快活な笑みを見せる。…見てて面白い、っていうのはオリゼのダイナミック且つ不必要な動きの事を言ってるんだろうけど…だとしてもラムちゃんは、きっと無自覚な内にオリゼの事を励ましてくれる。

 そんな二人のやり取りを、どこか羨ましそうにロムちゃんは見ていた。…そういう事ね…だったら。

 

「…ね、皆。ちょっとわたしもやりたいんだけど…誰か、変わってくれないかしら?」

「あ、それならわたしが……」

「…ネプギア」

「…と思ったけど…も、もうちょっとわたしもやりたい…かなー…?」

「……!…じゃあ、わたしの代わりに…やる…?」

「いいの?ありがとうロムちゃん。じゃあ、お願いついでにもう一つ頼みたいんだけど、ロムちゃんもオリゼのサポートをしてくれる?」

「うん…っ!」

 

 言うが早いか、早速ロムちゃんはわたしにコントローラーを手渡しオリゼとラムちゃんの方へ移る。その様子を見て、わたしは察してくれた二人へとウィンク。

 

「さぁて、オリゼと組んで華やかにトップを…と言いたいところだけど、最初からタッグを組むのも面白くないし、まずは普通に勝負よ」

「ま、負けませんよ、セイツ…!」

「そのイキよオリゼちゃん!わたしとロムちゃんが二人でおしえてあげるんだもん、セイツさんなんてちょちょいのちょいよ!」

「オリゼさん、いっしょにがんばろう…ね(めらめら)」

 

 やる必要はないけど軽く肩を回し、コントローラーをしっかりと握る。ロムちゃんとラムちゃんもオリゼの左右に座り直し…ゲームスタート。カートを走らせ、アイテムを取り、ドリフトやジャンプ台なんかも駆使して勝利を目指す。

 

「あ…ここはね、えっと…(ごにょごにょ)」

「ふぇっ、しょ、ショートカットがあるんです、か…!?じゃ、じゃあそっちに、します…!」

「だ、ダメよオリゼちゃん!せっかくロムちゃんがこっそり教えてくれたのに、言ったらネプギアたちにバレちゃうじゃない!」

「はは…まあ、アタシは元から知ってるんだけどね」

「実はわたしも知ってたり…」

「ふふ、それじゃあわたしも言っておくわ。わたしは知らなかったってね!」

『なんでそんな堂々と……』

 

 わいわいと愉快なやり取りも交わしながら、レースは進行。さっきわたしは、オリゼにとってラムちゃんのサポートは不利を埋める事は出来ても、それ以上にはならない…と評価したけど、そこにロムちゃんが加わった事で、指示やアドバイスが下される頻度は当然上がる。矢継ぎ早に色々言われたらテンパっちゃうものだけど、オリゼは慌てる事なくしっかり指示を活かして走る。そして情報にしろ技術にしろ、このゲームに関してわたしはネプギア達には一歩劣っていた。だから二人には引き離されないよう喰らい付くのが精一杯で、アイテムによる逆転を狙おうとした瞬間逆にオリゼから攻撃を喰らい、大きくスピン。しかも運の悪い事に、スピンした拍子にコースアウトしあっさりオリゼに抜かれてしまう。…いや、違うかもしれない。もしかするとこれは不運じゃなくて、わたしをコースアウトさせられるタイミングを双子が測り、その指示へ正確にオリゼが合わせた事で起こった、三人の狙い通りの結果…かもしれない。

 

「……っ、やられたぁ…やっぱりアイテム一つで状況が一変するわね、このゲームは」

「ですね。でもその分、初心者にも逆転のチャンスはありますし、皆でワイワイやるのには純粋なレースゲームより向いてるんじゃないかな、って思います」

「けどほんと、さっきのタイミングはばっちりだったわね。ちらっと見てたけど、流石に二人はやり慣れてるだけあるし…オリゼさんもよく、二人に合わせられますね」

「え、えへへ…が、頑張り、ましたっ」

 

 嬉しそうにするオリゼに、ロムちゃんとラムちゃんは二人揃ってサムズアップ。わたしはそれにやられた訳だけど…皆の笑顔を見ていれば、こっちまでなんだか微笑んでしまう。

 けどそれはそれとして、やられっ放しは面白くない。いいわ、だったらこっちもやってやるわよ!…あ、いや…こほん。やってやるって!

 

「えぇぇ…?なんでセイツさん、地の文で言い直したんです…?」

「え?うーん…何となく?」

「は、はぁ…セイツさんって、イリゼさんと違って結構ボケるタイプですよね」

「そういうアンタもしれっと地の文を読むっていう、結構なボケをかましてるんだけどね」

 

 そう、わたしはイリゼと違ってボケるタイプ。だって自分からアクションを起こした方が、皆の心の動きを見られるもの。……え?なら地の文でボケるのは適切じゃない?というかそもそも、イリゼ程じゃないにしろわたしもそこそこ突っ込んでる事ある?…それはまぁ…うん…。前者はともかく、後者の場合はボケの猛者が周りに色々いるからだし…。

…というレースとレースの間のやり取りなんかも挟みつつ、ゲームは続く。勿論続く。だってまだ、オリゼにリベンジしてないし…一位を取らないままで終わるなんて、わたしらしくもないんだしね。

 

 

 

 

「こ、この子がですね、新しく来たかめさん、ですっ。の、のんびり屋さん、で…だけど、良い子…なん、ですっ」

「へー、そうなのね!カメさん、わたしはラムよ!よろしくね!」

「カメさん、おかおもおてても丸っこくてかわいい…。…あれ…?でも、カメさんだから、これはおててじゃなくて、足…?」

 

 あれから数十分後。何度もレースを繰り返し、ちょっと疲れた…って事で、ゲームは中断。そこでオリゼが、自分のぬいぐるみ…本人曰く『友達』である子達の新入りである、某王朝の第三王女が持ってそうな位の大きな亀を持ってきて、今はロムちゃんとラムちゃんに紹介中。

 

「…セイツさん。その、のんびり屋さんとか、良い子とかっていうのは……」

「オリゼにとってぬいぐるみは、ぬいぐるみだけどただのぬいぐるみじゃないのよ。…あ、でも別に、魔法の力で妖精化してるとか、劇場版で奇跡の変身をしたりするとかじゃないからね?」

 

 楽しそうに…それこそ本当の友達の様に紹介するオリゼの様子を見て、何とも言えない顔をするネプギア。まあ、その気持ちは分かる。今でこそもう慣れてるけど、わたしもぬいぐるみに対するオリゼの認識を知った時には、流石にちょっと…いや大分驚いたし。

 

「そういえば、イリゼさんもぬいぐるみ好きよね。…もしかして、セイツさんもですか?」

「あぁうん、好きよ?だけどそれって、二人もじゃない?」

「それはまぁ…」

「でしょ?ユニだったら部屋には銃を持ったぬいぐるみとか、ネプギアだったらメカのぬいぐるみとかあったりするでしょ?そんなものよ」

「いやあの、銃を持ったぬいぐるみは普通にないんですけど…」

「わたしも別に、メカのぬいぐるみとかは…というかそういうの置きたいなら、ぬいぐるみじゃなくてプラモデルにしますし…」

 

 和やかに話す三人を見ながら、わたしもネプギア、ユニの二人と会話。わたしの予想は外れたけど、オリゼみたいなレベルになると特殊だけど、女の子なら大体皆ぬいぐるみが好き…っていうのは間違いない筈。だから部屋にお気に入りのぬいぐるみを置いたりするのも、それ自体は普通な筈。

 

「…に、しても……」

『……?』

「本当に、オリゼとロムちゃん、ラムちゃんは仲良くなったなぁ…って。多分精神年齢が近いからだろうし、前の時点で仲良かったみたいだけど…やっぱり安心するわ。オリゼが貴女達と仲良くなれて」

 

 そう言って、わたしは肩を竦める。ネプテューヌ達に比べればまだマシだったらしいとはいえ、前の戦いの時には女神候補生の四人にもオリゼは厳しかったみたいだし、四人からすれば大好きなお姉ちゃんを散々な目に遭わせたのがオリゼなんだから、心の壁を作ってしまっても無理はない…そんな風にわたしは思っていた。だけど実際にはこの通り、本当に仲良くしてくれている。オリゼも歩み寄る姿勢があるのかもしれないけど…やっぱりこれは、皆が受け入れてくれたから、仲良くしたいと思ってくれたからに違いない。それが本当に嬉しいし、ありがたい。

 

「あ、オリゼちゃん!カメさん、わたしたちのおぼうし被せたらもっとかわいくなりそうじゃない?」

「え、でも、わたしたちのおぼうしじゃ大きすぎるかも…」

「お、お帽子…もっとちっちゃいの、なら…似合うかも、です…!こ、今度探して、みます…ね…っ!」

 

 そう。こういう光景、こういう姿を見る事が出来て、心から嬉しい。オリゼもロムちゃんもラムちゃんも、飾ったりしないありのままの自分で、感じたままの思いで楽しそうに話していて……

 

「はぁぁ…純真無垢だからこその感情の揺れ動き、素敵…♪ずっと見ていられる、むしろずっと見ていたい……♪」

「……こういう発言がなければ、良い話で終わりそうだったのにね」

「そ、そんな事言っちゃ駄目だよユニちゃん…同感だけど……」

 

 気持ちに触れ、感情を眺めるのは心の保養。今日も素敵なものが見られてわたしは満足。…代わりにネプギアとユニから残念なものを見る目をされてる気がするけど…ふっ、問題はないわ!それだってまた、心の動きの一つ!そう思われたらそう思われたで、その感情を楽しめば良いだけだもの!

 

「……あ、そうだ。セイツさん、全然違う話してもいいですか?」

「え?…いいけど…駄目って言ったら、止めるの?」

「そ、それはまあ、駄目って言われたらしませんけど……」

「あはは、言ってみただけよ。で、何かしら?」

「セイツさんって、ミラお姉ちゃんの次元…超次元のわたし達とも知り合いなんですよね?やっぱり、わたし達とおんなじ感じなんですか?」

 

 気を取り直すようにしてわたしが返すと、ネプギアは超次元の事…超次元の自分達の事を訊いてくる。思えば確かに、全く交流がない訳じゃないとはいえ、神次元に比べると信次元・超次元間のやり取りは少ないし、あっても真面目なものが殆どだから、こういう『普段』を知らないのも無理はない。

 

「あ、それアタシも気になります。知ってる範囲だと、『あぁ、同一人物なんだな…』って感じなんですけど…」

「んー…そうね。それじゃあ折角だし、超次元の皆の事を教えてあげるわ。っていっても、わたしの知ってる範囲じゃほんとにおんなじ感じ、正に同一人物って感じだけどね?…あぁ、それと一つ訂正しておくわ」

『訂正?』

「えぇ。超次元のネプギア達は、わたしにとって知り合いじゃなくて、仲間よ。…ここにいる皆と、同じようにね」

 

 些細だけど、大事な事。だから真っ先にわたしはそれを伝え…聞いた二人は目を丸くした後、小さく微笑む。

 それからわたしは、わたしの知っている『超次元の皆』の事を二人へ話す。そもそもわたしは皆とどう出会ったのか、皆とどんな経験をしたのか、知っている部分もあるかもしれないけど一つ一つ語っていき…話している内に、ふと気付く。考えてみれば、信次元のネプギア達とも、じっくり話した事はあまりなかったって。オリゼの事をどうこう考えていたわたしだけど…わたし自身、まだ信次元のネプギア達の事は、深く知っているとまでは言えないかもしれないって。

 そう思うと、これは良い機会かもしれない。今話しているネプギアやユニは勿論、オリゼと談笑するロムちゃんラムちゃんとも、これまでより仲良くなる、お互いより知り合う絶好の機会。それに、最近超次元には行ってなかったし……今度久し振りに、向こうの皆にも会いに行ってみようかしらね。




今回のパロディ解説

・「〜〜この話が投稿〜〜されてない筈〜〜」
マリオカートワールドの事。今の時点ではまだ発売されていませんが、もう少ししたら「いやもう発売されてるよ」ってなりますよね。時事ネタは時が過ぎると弱くなるどころか成立しなくなる事もある訳です。

・「〜〜セクシーコマンドー〜〜」
セクシーコマンドー外伝 すごいよ‼︎マサルさん及び、作中で登場する格闘技の事。相手の隙を無理矢理引き出す(作り出す)という点では、イリゼの戦い方が近いですね。いや、イリゼは使い手じゃありませんが。

・〜〜やってやるって!
プロレスラー、越中詩郎さんの代名詞的な台詞の一つの事。後にセイツが誰かと共同で著書を書く…という事はあるかもしれませんが、だからといってそのタイトルをこれにする事は勿論ありません。

・〜〜某王朝の第三王女〜〜
キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦のヒロインの一人、シスベル・ルゥ・ネビュリス9世の事。あの亀のぬいぐるみが、まあまあ印象に残っている私です。

・「〜〜魔法の力で妖精化〜〜変身をしたりする〜〜」
魔法使いプリキュア!シリーズに登場するキャラの一人(一体)、モフルンの事。イストワールを除き、オリゼもイリゼもセイツも魔法に関しては全く使えません。というか無くても別に…って感じです。
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