超次元ゲイムネプテューヌ Origins Transition   作:シモツキ

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第十二話 手合わせ・姉妹

 イリゼとの勝負は、読み合いの戦いだった。別に「イリゼ戦は体力より頭を使うせいか、どうも肩が凝るなぁ…」…みたいな感じに思う訳じゃないし、普通に力や技を駆使してぶつかり合ってもいるんだけど…やっぱり、他の誰かと戦うよりも頭をフル回転させ続ける必要があった。

 理由は単純。わたしとイリゼの戦闘スタイルは近しいものがあって、だから読めるし逆に読まれる。加えてその戦闘スタイルは相手の思考を掻き乱すものだから、自分の策を通し、その効果がどの位出ているかをはっきり把握する為に相手の動きへ意識を向ければ向ける程、相手の策へ気付かぬ内に嵌まってしまうリスクが高まるという、どうにもし難い実情へ常にぶつかる形となってしまうから。

 けれどだからこそ、燃え上がるものがある。イリゼの感情に対してじゃない。これまで経験した事のない戦いに、自分と近しいけど同じではない戦い方をする相手に、そんな相手と鎬を削る事に、女神として心が踊る。その熱に突き動かされるように、思う。イリゼに、勝ちたいと。

 

「良いわ、良い動きよイリゼッ!」

 

 左右どちらも逆手持ちにした双剣形態の連結剣で、素早くイリゼを攻め立てる。斬撃に加え、体術を交える事で、攻撃と攻撃の間を着実に潰す。

 

「そっちこそ…ッ!」

 

 左の連結剣でフックを入れるように斬り付け、右の連結剣をアッパーカットの要領で斬り上げる。こうして殴るように振る事が出来るのが、逆手持ちの特徴の一つ。殴る軌道で、殴るのとは違う攻撃を放てるとちうのは、戦闘慣れしている…殴打の動きをよく知っている相手程、その知識が仇になって引っ掛かり易い。引っ掛からなくても、相手の意識をその差へ引き付ける事が出来る。…まあ残念ながら、イリゼには大して効いていないみたいだけど。

 そのイリゼは、後ろに飛んでわたしの間合いから離れたと思いきや、着地の寸前…着地すると思わせるタイミングで圧縮シェアエナジーの解放を行い、突っ込んでくる。普通に着地し即座に地面を蹴るよりも、一瞬早く詰めてくる。

 

『ふ……ッ!』

 

 突進と共にイリゼが振り出す、片手持ちの袈裟懸け。わたしも逆袈裟を放つように右剣を振り上げ、斬り結ぶ。恐らくわたしとイリゼの力はほぼ同じで…でも突進していた分、イリゼの斬撃の方が重い。

 でもそんなのは、この場で振るった時点で分かっていた事。だから右剣での斬り結びは、押し負ける事を前提とした『防御』であり…攻撃を担うのは、立て続けに放つ左剣の一撃。最短距離の攻撃…即ち左ストレートを打ち込むように左剣を突き出し、イリゼの首を狙う。女神の姿でわたしが振るう連結剣は、刃が護拳の様に柄の前まで伸びているから、この攻撃も斬撃となる。右剣に打ち勝ったからこそ、イリゼの長剣は振り抜かれた、左剣の迎撃には間に合わない状態で……だけど、それは読まれていた。私の左剣がイリゼの首へ迫る中、イリゼの左手も手刀の形でわたしの首元へと迫っていた。恐らくイリゼは、こうなる事を見越して片手で長剣を振っていた。

 

(やってくれる、じゃない…ッ!)

 

 恐らく先に届くのはわたしの攻撃…だけど、イリゼの手刀が届くのもまた、わたしの攻撃でイリゼが沈むよりも先。このままだと相打ちになるという状況の中、わたしの攻撃も、イリゼの攻撃も限界まで迫り…殆ど同時に、わたし達は腕を引っ込め横に飛ぶ。互いに回避を選んだ事で、お互い無傷となる。

 

「…遠慮ないね。あのままだったら、私首が飛んでたかもしれないよ?」

「わたしだってあのままなら喉笛を掻っ捌かれてたでしょうし、お互い様よ」

「それはまぁ、ね」

 

 わたしは勿論、今度はイリゼも普通に着地し、軽いやり取りと共に肩を竦める。別に首を刎ねてやろうと思ってた訳じゃない。ただ、容赦なんてしてたら敗北必至だというだけの事。多分これは、イリゼだって同じように思っている。だから怒る事も恨む事もなく…わたしは地面を蹴る。今度はわたしから距離を詰めつつ、左剣を順手へ持ち替える。

 左、右、左左右。待ち構え、カウンターの姿勢を見せたイリゼに対して連続攻撃を仕掛け、その全てを防がれる。防がせる。五度目の斬撃を受け流したイリゼは、逸らす動きから流れるように刺突へと繋げてくる。突くと同時に踏み込んできているその動きは、明らかに本命のそれで…でもこれだけだと、わたしが狙って防がせた事に気付いているかどうかは分からない。分からない、けど……

 

(乗ってくるのであれば、狙った通りに動くまで…!)

 

 斬っ先へと意識を集中し、身体を半身にする形で避ける。刺突は威力も速度も高い上、点の攻撃な分防御や打ち払いも難易度が高い攻撃だけど、反面きちんと見切る事が出来れば、小さな動きで躱す事が出来る。あくまで斬撃に比べればではあるけど、軌道修正も効き辛いからこそ、見切ってしまえばその後は楽。

 回避の為に振った身体、その遠心力を利用し右剣を振る。大した威力はないけど、自分から突っ込んでくる相手の側面へ仕掛ける訳だから、威力は低くても効果は十分望める。後はイリゼが対応してくるかどうかで……結果は予想通り。予想通りに、刺突の挙動のまま圧縮シェアエナジーの加速で駆け抜けわたしの斬撃から逃れると、同じタイミングで精製していたシェアエナジーの剣を置き土産が如く襲ってきた。

 

「やっぱり読んでいた、のねッ!」

 

 どう仕掛けてくるかまでは分からなかったけど、回避も反撃もしてくるだろうと思っていた。どうせ躱されると思っていたから、碌に力は使わずほぼ遠心力だけで振っていた。

 迫る剣と離れていくイリゼ、その両方へ素早く視線を走らせ、わたしは両腕を振る。逆手の右剣で飛んできた剣を弾き、順手の左剣でイリゼの背に向け圧縮シェアエナジー弾を放つ。駆け抜けたイリゼは振り向き…けれど次の瞬間、大きく跳ぶ。跳んだ直後に、圧縮シェアエナジー弾は炸裂する。

 

「こうして相手にすると、やっぱり厄介…だねッ!不可視の、炸裂弾、っていうのは…ッ!」

「でしょう?真似しても、いいのよ?真似、出来るなら、ねッ!」

 

 回避している隙に連結剣を双刃刀形態へと合体させ、その片側からもう一撃発射。その一撃で対応を強いて、対応している間に接近をする。イリゼと斬り結び、互いに両手持ちとなった得物で何度も打ち合う。

 不可視と言っても、本当に見えない訳じゃない。目を凝らせば何か飛んでくると分かるレベルだし、女神は元より、手練れだったり感覚が鋭かったりすれば、圧縮シェアエナジーという高エネルギー体故に見えずとも感覚的に察知する事は十分に可能。だけど当然、戦闘中にじっくり目を凝らす余裕なんてそうそうないし、爆ぜる性質上、その爆裂範囲まで見越して避けなければ回避にはならない。この二つが合わさる事で、単に回避や防御がし辛いだけじゃなく、対応出来る場合でも『念の為』大きく避けたり、早めに防御したりを心理的に強いる事が出来るのが、圧縮シェアエナジー弾の強み。

 

「真似、か…私達は、お互い基盤を同じくする身。その私が、真似の一つや二つ出来ないとでも?」

「そうね、その気になれば出来るのかもね。でも…その揺さ振りは、効かないわよ?」

 

 互いに放った袈裟懸けが激突し、お互い弾いた形となってから、わたしもイリゼも左手を離して後ろに引く。そこからわたしは貫き手を、イリゼは掌底を放ち、同時に回避行動も取った事で、わたし達の攻撃はどっちも外れる。顔の横を貫き、髪が揺れる。

 真似出来るかもしれない。そんなイリゼの言葉に、小さく笑い…それは無駄だと、はっきり返す。出来るか否かは別として、今のはわたしを揺さ振る為のもの。揺さ振りはそうだと分からないから通用するものであって、そうと分かっていればなんて事ない。そしてわたしの返しに、イリゼはぴくりと肩を震わせ、小さく吐息を漏らし…掌底の形のままだった左手の手首を回し、爪て後頭部を狙ってくる。わたしは下がる事でそれを避けて、真正面へと蹴り付ける。

 

(言葉による揺さ振りは効かない。それは、わたしからの揺さ振りも意味がないって事。だったら、動きは?攻め方による翻弄は?)

 

 双刃刀の独特な連続攻撃をわたしが仕掛ければ、イリゼも長剣の持ち方を片手両手と機敏に切り替えてくる。片手と思わせて両手、両手と思わせて片手…では終わらず、一度の攻撃の中で数度の切り替えを組み込んでくる。

 それは手の込んだ…手の込み過ぎた仕掛け。流石にイリゼもやり辛いだろうし、単なる攻撃として見れば、無駄な手間が増えて非合理的になっているとすら言える。わたし以外にやっていれば、そこまでしなくても良い…それこそ本当に、無駄になるような事。

 だからこれは、対わたし用の攻撃。普通にやるだけじゃ戦法が通用し辛い事を前提にした…手が込み過ぎている、そのせいで気にならざるを得ない攻撃。つまり…こういう思考をしている時点で、わたしは既に嵌められている。やってくれるじゃない、イリゼ…!

 

「…でも、良い。凄く良いわ」

「良い?」

「この手合わせは、やられた事がそのまま学びに、自分の糧になるって事よッ!」

 

 非合理的だ、と意識してしまった以上、もう頭をまっさらにする事は出来ない。無駄が多いなら、そこから突き崩せば…というのも、イリゼの術中に更に嵌まるだけ。だからわたしは、『対処』や『対応』という思考を捨てる。

 連結剣を分離し、斬撃を左剣で受ける。すぐさま右手、右剣を突き出し、バックステップを掛けたイリゼに向けて近距離から圧縮シェアエナジー弾を発射。それにイリゼは目を見開き、一気に飛び退き…思った通りの反応に、くすりと笑う。

 

「イリゼ、多分知らないと思うから教えてあげるわね。イリゼは今、即座に炸裂してくると思ったんだろうけど…わたしがプロセッサに装填している圧縮シェアエナジーは、基本予め装填しておいたものだし、剣を芯にしたバレルで撃ち出す遠距離攻撃も、本当にただ撃ち出してるだけなの。だから…そんなにしっかり避けなくたって、当たりさえしなければ即座に爆ぜたりなんてしないわよ?」

「……っ…」

 

 わざと一度構えを解いて、肩を竦めてまでみせる。対するイリゼは、何も言わず…でも、見えた。イリゼの表情が、一瞬歪むのが。そこに、悔しげな感情が浮かぶのが。

 ハッタリじゃない。加速に使うのと同じ要領で、射出と同時に炸裂させる事は出来ても、炸裂のタイミングを調整する事は残念ながら本当に出来ない。まあ、全く出来ない訳でもないんだけど…少なくとも、激しい攻防の中で瞬時にぱぱっと済ませられるものじゃない。だけどそれが、今は活きた。それを隠さず、敢えて明かす事で、イリゼに動揺を与える事が出来た。この戦い、イリゼとの勝負において、これは隠したまま、誤解させたままにするよりも、『揺さ振り』に繋げた方が強い。

 そう。わたしとイリゼの戦いで何が勝敗を決するかといえば、きっとそれはどちらが相手をより揺さ振る事が出来るかどうか。戦法が似ているからこそ、どっちがその中で上回れるかどうか。

 

「さてと、それじゃあ貴女への流れは断ち切ったし、今度はこっちの番よ。わたしの、お姉ちゃんの時間だわッ!」

 

 言い放つと共に、地面を蹴りつつ再連結。双刃刀形態へ組み直した連結剣を投擲し、弧を描いて飛ぶ連結剣とは逆の機動でイリゼへ仕掛ける。わたしと連結剣とで挟撃の形を取り、構えたイリゼへ突っ込む勢いそのままに飛び蹴り。迎え討つイリゼは、いやイリゼも長剣を投げて連結剣を撃ち落とすと、わたしの飛び蹴りをしゃがんで躱す。そしてそこから、回転を加えたアッパーカットを返してくる。

 

「今度も何も、大して私のターンだった気はしないけどね…ッ!」

「そう?まぁそれよりも、今は言うべき言葉があったんじゃないかしら…ッ!」

「…龍翔閃?」

「いや昇龍拳でしょう!?確かにそっちも上向きの技だけども…ッ!」

 

 すっとぼけたイリゼに、思わず突っ込んでしまう。側から見たら冗談を言ってるだけに見えるだろうけど、実際にはこれも駆け引き。こんなボケには突っ込まざるを得ないという、女神の心理を突いた一計。

 それに引き摺られるものかと、装填済みの圧縮シェアエナジーの加速を用いて躱していたわたしは身を翻して後転。オーバーヘッドキックを放ち、イリゼが両腕を交差させて防御した瞬間に、脚のプロセッサの圧縮シェアエナジーで再度加速を、押し込みを掛ける。こうなれば、後は単純な力勝負になる。そして防御の態勢的に、腕で押し返そうにも爆発を顔や胴で受けてしまうイリゼは同じ方法で対抗する事が出来ない。

 

「このままッ!沈ませてッ!あげるわッ!」

 

 連続加速で、無理矢理押し込む。一発毎にイリゼの体勢は崩れ、膝を突く。もう、イリゼの防御も崩れかけ。こっちも今使える脚のカートリッジの圧縮シェアエナジーは後一発だけど…その一発で、押しきれる。押しきってみせる。

 出し惜しむ必要はない。このチャンス、逃す理由はどこにもない。そしてわたしは僅かに爪先の角度を変え、変える事で踵側の噴出口の向きを変更し、押しきる為の最後の加速を……

 

「沈まないよ。まだ…終わりなど、しないッ!」

「んな……ッ!?」

 

 わたしは掛けた。押しきるつもりで加速し、脚を振り抜いた。振り抜けた。…けれど、イリゼには躱される。まるで押し出されるように、イリゼの身体が前へ…上下逆さとなっているわたしの頭の下を潜り抜ける形で、イリゼは危機的状況から脱する。

 

「イリゼ、何を…!」

「ふふ。実は私も前に、似たような状況になった事があってね。──私の足の動き、よく見えなかったでしょ?」

(あ……)

 

 すぐさま着地し振り向くわたしに対し、距離を取った状態のイリゼは小さく笑い…踵を上げる。それを見て、気付く。イリゼは押し込まれそうになる中、踵を上げて、地面との間に空間を作って、そこに圧縮シェアエナジーの展開と解放を行ったんだって。踵と土踏まずで爆発を受けて、横向きの推力を得て、わたしの蹴りを受け止めながら脱出したんだって。

 

「…さて。とはいえ今のはかなりひやりとさせられた。防御出来たとはいえ、大分腕に負荷を蓄積させられた。だからその分は…ここから返させてもらおうかッ!」

「なんの…ッ!」

 

 腕を軽く振った後、イリゼは突っ込んでくる。迎え討つように、わたしも地を蹴る。お互い跳び、瞬時に距離は詰まり…格闘戦の間合いとなる直前に、わたしは地面へ片脚を突き出し強引に方向転換。横に飛んでイリゼを躱し…ぶつかり合う事で落ちたわたしの得物を、回収に走る。

 背後にイリゼの気配を感じるけど、一手先に動いたわたしの方が当然早い。そしてわたしはヘッドスライディングをするように飛び込み、左手で連結剣を掴むと共に、右手でイリゼの長剣を跳ね除ける。続けて右手を地面に突き刺し、その腕を軸に回転する事で速度を落とさないままぐるりと回転。背後を追ってきていたイリゼへ向けて、片手持ち且つ双刃刀形態の連結剣を突き出し……

 

「……──ッ!」

 

 イリゼは、受け止めた。交差させた、二振りの剣で。双剣で。唾がなく、片手で振る剣としては幅の広い……まるでわたしの連結剣の様な、シェアエナジーの刃で。

 

 

 

 

 相手の心を掻き乱し、調子を崩す…それを主戦法とする私とセイツは、似ている。似ているけど、その為の手段は違う。私が色々な武器で、時には武器ですらないものも使い、奇策や相手の思い込みも引き出す事で崩していくのに対し、セイツはあくまで連結剣のみで、その持ち方や組み合わせ方、使い方を変幻自在に駆使する事によって、相手に焦燥感を…結局はたった一つの武器なのに翻弄されていると感じさせて、心を乱す。思い込みを引き出す、意図的に先入観を抱かせる事については…どの程度行うのかは、まだ私にも分からない。

 似ているけど、違う。そう表現すると、ある事を、ある人を思い出すけど、私とセイツは決して対極ではない。あくまで近しい…その上で同じではないのが、私とセイツ。だからこそ、私は踏み込む。似てるけど違う、同じではないとセイツも分かっているであろうからこそ…同じへと、踏み込んでみる。

 

「気分はどうかな、レジストハート!鏡合わせの戦いを、するというのはッ!」

 

 作り出した、二つの剣。セイツの連結を模倣した、二振りの片手剣。それでセイツと打ち合う。左剣同士で斬り結び、指と手首の動きで右剣を回転させ、逆手持ちとなった右剣で横薙ぎを放つ。そしてその攻撃も、ほぼ同じ動きを取ったセイツの右剣とぶつかり合う。

 煽る私の言葉に対し、セイツは一瞬表情を歪ませる。それからすぐに次の斬撃を打ち込んできて、そんなセイツに私は合わせる。意図的に薄く笑い…その笑みを何とか保ちながら、奥歯を噛む。

 

(やっぱり響くな…力比べだから避けないと……)

 

 敢えて相手の土俵に乗る、相手の戦い方を真似して互角に立ち回ってみせるのは、大きく相手の心を揺さ振る戦法の一つ。ただ今回は、攻勢を掛ける為だけじゃなく、防御の為…さっきの蹴りを受け止め続けた結果、腕が大きな負荷を負った分を補う為でもあった。真似の方へ意識を向けさせ、気取られないようにする為だった。

 勿論回復しつつはあるし、ある程度回復してしまえば懸念はなくなる。そうなれば、より攻勢を仕掛ける事も出来る。

 

「だったら…ッ!」

 

 サイドステップで攻撃を避け、反撃として放つ斜め十字斬り。それをセイツは大きく後ろへ飛んで避け、空中から圧縮シェアエナジー弾を左右で二発、若干の時間差を付けて撃ってくる。

 その攻撃は、予想の範疇。だから私は慌てる事なく、複数の短剣を目の前に精製。それ等を纏めて射出し、対空迎撃。複数同時に撃ち込む事で、ほぼ不可視の圧縮シェアエナジー弾を確実に捉える。圧縮シェアエナジー弾は宙で爆ぜ、その炸裂は二発目も巻き込む。

 

「撃ち合いの手数勝負なら、私が有利…!」

 

 セイツを、撃ち込んだ短剣を追って私も飛翔。飛びながら更に剣を射出し、斬り掛かる。圧縮シェアエナジー弾は強力且つ厄介だけど、次々放つ事には向かない。近接戦の合間に逐一放つのであれば、私の射出の方が圧倒的に向いている。

 着実に回復している腕。そうでなくとも、私の方へ寄りつつある流れ。けど私は油断せず、立体機動重視の形態へ翼を可変させる事で距離も取らせず細かな攻撃を続ける。双剣である事も活かして、手数で攻め立てる。

 

「…そういえば、オリゼはバスタードソードを二刀流で扱っていたわね。今の貴女は、それを意識してもいるのかしら?」

「それはどうだろうね。されどお望みならやって見せよう」

「あぁ、別にしなくていいわよ?それより…もッ!」

「……っ!」

 

 斬り結び、離れ、また斬り結ぶ。その中でお互い言葉で揺さ振りを仕掛け、同時に飛び回り次の攻撃へと繋げんとする。

 そんな中で、またセイツは圧縮シェアエナジーを発射。先と同じように私は精製した短剣で撃ち落とし…けれど予想外だったのはその先。セイツは発射後退避ではなく前進をしていて、それに私は面食らう。炸裂の範囲に入ってしまう事も厭わない…或いは範囲を正確に理解しているからこそ出来るのかもしれない前進を見せられた事で、私の動きは一瞬鈍り、その隙を突いてセイツは連結剣を縦に繋げる。大剣状態に切り替え、そこからの横薙ぎを放ってくる。それ自体は回避出来たけど…少し、いやかなり不味い。

 

「…手数には、パワーで勝負という事かな?ふっ、だとしたらそれは安直──」

「そうかしら?それよりもイリゼ…これは、真似をしてくれないの?」

 

 余裕を装い発した言葉へ、セイツは上段斬りと共に被せてくる。真似をしないのか。その問いへの反応を即座に出来ていたのなら、まだ可能性はあったのかもしれないけど…一瞬遅れてしまった結果、セイツは確信する。セイツに、気付かれる。

 

「…やっぱりね。真似はしないんじゃなくて…出来ないんでしょ?」

 

 反撃の刺突。それをセイツが体験の腹で受けたところからの、左剣での斬り上げ。セイツは刺突を受け止めたまま、連結剣を回す事で斬り上げも防ぎ…笑う。

 

「…いつから気付いてたの?」

「最初から気になってはいたのよ、一体どこまで模倣されてるのか…ってね」

 

 そう。大剣形態へ移行したセイツに対し、私は双剣のまま戦っていた。そうするしかなかった。だってこの双剣に、連結剣の様な機能はないから。シェアエナジーの圧縮による武器の精製は、単純な構造の物でなければやれないという欠点があって…連結状態でも十分な強度を確保しつつ、即座の連結と分離を可能とするような結合部分の再現までは、とてもじゃないけど無理だったから。

 詰まるところ、これは連結剣っぽい見た目をしただけの、ただの双剣でしかない。ここまではセイツに連結させないよう立ち回っていたけど、その事がバレてしまった以上、もうこれを使っていても意味はない。

 

……と、実情を見抜いたセイツは思っているんだろうね。だからまだ…いける…ッ!

 

「隙有りッ!」

「く……ッ!」

 

 力技で跳ね除けてきたセイツは、跳ね除けた勢いで回転し、前進しながら再び横薙ぎ。まだ少し腕に負荷が残っていた私は、防御しきれず大きく仰け反る。回避の選択肢もあったけど、私は防御を選び…多分こうなると思った通りの形になる。

 弾かれた事を利用し、落下と共に下がる私に対し、セイツは横から背中側へ連結剣を引き付けるようにして構えながら追い掛けてくる。私は両腕を振り上げ、セイツは真っ直ぐ突っ込んでくる。そして私もセイツも両腕を振り出し……()()()()()ぶつかり合う。

 

「なッ…!?」

「貰ッ、たぁッ!」

 

 激突し、弾き合う大剣。落下してるだけの私と、急降下の加速を乗せていたセイツでは威力に差があって、私の方がより強く弾かれる…けど、それで良い。それも、想定の内。大きく弾かれた私は、そのまま大剣を手放し、弾かれた衝撃を活かしてさっきの意趣返しが如くオーバーヘッドキック。咄嗟に気付いて減速を掛けるセイツを逃さず、爪先を腹部へ打ち付ける。

 

「くぁ……ッ!」

 

 姿勢制御重視へ翼を可変させ、一気に体勢を立て直すと共に精製した投げナイフの投擲でセイツへ追撃。表情を歪めながらもセイツは大剣形態の連結剣を分離させ、投擲を弾く。その隙に、今度は翼を直線機動へと変える事で、私は下からセイツへ肉薄。これで決着を付けるつもりで、作り出した細剣での刺突を打ち込む。

 

「舐……めるなぁぁぁぁッ!」

 

 突き出した刃。それは直前で、間一髪で防がれる。カッと目を見開いたセイツは膝蹴りで細剣の刀身を捉え、私の手から弾き飛ばす。…もしこれが普通の剣なら、刃を縦にして突き出していたら、この防御は成立しなかった。したとしても、それは片膝を犠牲にする必要のあるものだった。

…なんて、もしもを想像しても意味はない。そうはならなかったんだから防御をされたんだし、仮にそうしていたとしても、その時は別の対応をセイツがしていた可能性はある。だから見るべきは、防御されたという事実のみ。

 

「舐めてなど、いないさッ!」

 

 細剣と共に弾かれた右腕の代わりに、左手にトンファーを精製。殴る動きで真っ直ぐ打ち込み…けれど今度は、右の連結剣を手放したセイツの掌で、トンファーを持つ手を掴まれ止められる。直後に左の連結剣を振り出され、それを細剣で受け止める。左右両方の腕で力比べとなり…至近距離で、睨み合う。

 

「まぁ、そうでしょうね…ッ!…やってくれるじゃない、まんまと騙されたわ…!」

「違うな、間違っているよセイツ。あれは連結機能があった訳じゃない。ただ…双剣から大剣に、作り直しただけなんだから」

 

 案の定、セイツは誤認していた。私が騙していたと思っていた。そう思うのは当然の事で…だけど真実は、今言った通り。早い話が、一本になるようくっ付けただけ。だからもう分離は出来ない(というかもう消えている)し、二本を完全にただのシェアエナジーへ戻して再構成するんじゃなく、一部のみシェアエナジーに戻して結合するっていうやや複雑な事をしているから、一本になったといっても結合部分の強度は低い。それでも、一発浴びせるのには繋がった。本当はもっと深く蹴りを入れたいところだったけど…それを許してくれる程、セイツは甘くなかった。

 

「それは……。…つまり、結局わたしはしてやられた訳ね。全く…あぁ、全く…ここまでやってくれたんだから、キッツイお返しをさせてもらわなきゃ…割に、合わないわよねぇッ!」

「……っ!(なんて無理矢理…!)」

 

 一撃与えたのと引き換えに、フルスロットルとなったセイツの心のエンジン。より強く私の手を掴んだセイツは、言葉と共に躊躇いゼロのヘッドバット。私の額に自分の額を打ち付け、私が怯んだ隙を付く形で右手の拳を打ってくる。

 でも、驚きはしたけど、そんな簡単には私もやられない。ヘッドバットは痛かったけど、それは恐らく仕掛けたセイツ自身も同じ事。私は下がり、打撃を躱し…身を翻す。今度は私も急降下を掛け、今度こそ長剣を回収に飛ぶ。

 

「悪いけど、こっちだって…まだまだやらせてもらうつもりだッ!」

「いいわよ?それ位でなきゃ、張り合いがないものッ!」

 

 私と同じように、セイツも手放した右剣を回収に入る。私は武器の射出で、セイツは圧縮シェアエナジー弾で妨害を仕掛けながらも地表付近まで一気に降り、得物を掴むと共にほぼ直角にターンを掛ける。垂直の急降下から、地面スレスレの低空飛行へと移行し…同じように回収したセイツと、すれ違いざまにお互い一閃。攻撃と回避を同時に行った事で、互いの攻撃は当たらず、刃同士が掠めるに留まり…そこから私は、一切減速せずに離脱。その上で脚を振り出す事で急反転をし、周囲に多数の武器を精製する。

 

「天舞伍式・葵!」

「真巓解放・信頼!」

 

 直進、回転、曲射と武器毎に射出する上での性質を変え、セイツへ向けて一斉射。着弾のタイミングもズレるように、ただ左右や上へ避けただけでは凌ぎきれない物量で私は打ち込み…けれどセイツは大剣形態となった連結剣へシェアエナジーを纏わせ、超巨大剣を作り出して薙ぎ払う。その巨大さで私の遠隔攻撃を纏めて間合いに捉え、尽くを叩き落としてくる。

 お互いほぼ同じ技を持つからこそ、的確な対処をするのも容易。だからセイツは私の攻撃を一掃出来た訳だし…だからこそ、私も即座に動く。

 

「よッ、とぉッ!」

 

 軽く長剣を上に投げ、左手に手斧を、右手に槍を精製。すぐさま槍を投げ放ち、続けて手斧もセイツへ投げる。するとセイツは予想通り、どうしたって素早くは振れない超巨大剣を解除し更に連結剣も双剣へと戻す事で、手斧と槍を二振りそれぞれで弾いて落とす。

 だけどその時にはもう、私は圧縮シェアエナジーの解放を翼に受けて接近へと入っていた。緩く上に飛ばした長剣を、槍と手斧の投擲後すぐに掴む事で、落とさず迫って斬り付ける。

 

「ここまで私は、色々と考えて戦ってきた。セイツと、私に近しくも同じではない戦い方をする相手と、どのように戦うべきか、立ち回るべきかとね…ッ!」

「奇遇ね、わたしも同じ事を考えていたわ…!貴女に勝つ為に、イリゼを上回る為に、どうしたらいいかってね…ッ!」

「だが、漸く分かったよ。結局のところ、有効な手などないと!私が私である限り、セイツがセイツである限り、完全な『予想の外』には出られないと!」

「そうね、その通りよ!だってわたしの予想出来ない事は、イリゼにも想像出来ない事だもの!わたし達の思考の穴を突けるとしたら…残念ながらそれは、わたし達以外よ!」

「故にッ!」

「だからッ!」

『この戦いは、粘り強い方が勝つ…ッ!』

 

 長剣の横薙ぎと、連結剣二振りの上段斬りが激突する。互いに左側へ回るように跳び、再接近からまた斬り結ぶ。

 通用しないから、もう考えない…じゃない。考えず、自分の戦い方を捨てようものなら、それこそ勝てない。だから逆。考えても、手を打っても、それでも中々通用しない…それでも粘り続けて、最後の最後で勝つ。大きな隙を引き出したり、弱点を狙うんじゃなく、消耗戦で勝利を掴む。容易ではないけど、そんな事は関係ない。負けたくないから。勝ちたいから。

 

「はぁああぁぁッ!」

 

 片手の逆袈裟。それを途中から両手持ちに変える事で、加速しながら斬り上げる。けれどセイツは両手持ちに変えた時点で私の長剣に向けて左剣を突き出してきていて、十分に加速する前…つまり威力が乗る前に押し留めてくる。

 それと共に振り出される右剣。左剣で長剣を押さえ込みながらのカウンターに対し、私は左手を長剣から放しつつその場で跳ぶ。背中から倒れるように、それでいて脚は振り上げるように身体を動かし、斬撃を躱すと共に左手と両脚でセイツの右腕へ腕挫十字固めを仕掛けに入る。

 

「ぐ、ぅッ…!…甘いッ!」

 

 手首を掴み、腕を、肩を太腿でホールドし、自分の背中を逸らしてセイツの肘を可動域以上に無理矢理曲げる。一瞬セイツは激しく表情を歪めて…直後、左剣を手放し脇腹への貫き手を放ってくる。その動きが見えた時点で私は左手も両脚も放して、脇腹を抉られる前に離脱する。

 こうして反撃してくる事は分かっていたから、離脱は初めから考えていた。長剣は手放さずにいた。結果ダメージを与えられたのは一瞬だけだったけど、こうして少しずつ、でも着実にダメージを蓄積させて……

 

「甘いって…言った筈よッ!」

「なぁ……ッ!?」

 

 けれど、誤算があった。セイツの次の行動を、私は読み違えていた。手放した左剣を掴み直すと思っていたセイツは、そうする事なくそのまま手を伸ばし…離脱する私の足を、足首を掴む。そこから私の股側に身体を回転させ、足首を起点に捻ってくる。

 

(これは…ドラゴンスクリュー…!?)

 

 しっかり足首を固定している訳じゃなく、あくまで片手で掴んでいるだけとはいえ、動きや狙いは完全にドラゴンスクリューのそれ。掴まれる事で離脱を強引に止められた私は振り解く事が出来ず、そのまま無理矢理回される。足首に、鋭く激しい痛みが走る。

 ただ幸い…というか恐らくセイツも捻れるだけで十分だと思っていたのか、上昇の軌道を取っていた私は地面に打ち付けられる事はなく、捻られながらも長剣を振る事で足首を手放させる。捻られた足を庇うべく私が片足で着地する中、セイツは瞬時に左剣を拾い上げ…同時に肉薄。両足で地面を蹴る事は出来なかった私の両手斬撃と、右腕を庇いながらのセイツの左手斬撃の威力はほぼ互角となり、刃と刃でせめぎ合う。

 

「やるじゃない、イリゼ…ッ!」

「そっちこそ……ッ!」

 

 このまま押すか、それとも引くか、角度を変えて流すか。ただ斬り結ぶだけでも駆け引きはあり、目一杯力を込めれば良いってもんじゃない。

 そしてそれは、斬り結びの『次』も同じ事。時間にすれば数秒、けどその内に私も、きっとセイツも、幾つもの攻撃と逆に相手がしてくるであろう動きへの対応を考え…互いに強く押す。押し合い、相手の力を用いて下がり、私は両の腕を上へ。

 

(ここは、ここで……ッ!)

 

 振り上げた長剣の峰側へ、圧縮シェアエナジーを展開。眼前のセイツは視線を長剣へ向けると共に、二振りの柄尻を刃の向きを揃えて連結。再び打ち合う姿勢を見せ……だから私は、振らずに圧縮シェアエナジーを解放する。手を開く事で、爆発を受けた長剣は吹っ飛んでいき…空いた両手に、それぞれバスタードソードを精製する。振り上げた長剣を吹っ飛ばす事と、二振りのバスタードソード…さっき言われた内容を本当にやる事とで二重にセイツの驚愕を引き出し、左手で一撃。反応が遅れ、十分な体勢を取れていないセイツの連結剣の防御を、一太刀の下完全に崩す。

 

「せぇええええぇぇいッ!」

 

 声を上げ、気合を込め、右のバスタードソードを振り下ろす。もう、連結剣の防御は間に合わない。今の体勢から回避をしても、その先で更に体勢が崩れて大きな隙を晒すのは必至。いける、届く、叩き込める。そんな確信と共に、私は刃を振り抜き……

 

「──ふッ!」

 

──セイツは、受け止める。連結剣ではない、別の剣で。連結剣から放していた左手、その手に握ったシェアエナジーの刃で。圧縮したシェアエナジーによって精製された…私やオリゼが、基本の技術として扱う武器で。

 

(抜かった…ッ!この、私が……ッ!)

 

 失念していた。完全に失念していた。でも、何も不思議な事はない。何もおかしな事はない。こうしてセイツが、シェアエナジーを用いて武器の精製をする事は。戦闘スタイル的にあまり『やらない』だけで、決して『出来ない』訳ではない事は。

 ひょっとすると、これは咄嗟の判断じゃなく、前々から狙っていた事なのかもしれない。私の虚を突くとっておきとして、その瞬間を待っていたのかもしれない。そしてそうなのであれば…完全に、私は乗せられた。セイツの策に、やられてしまった。

 

「逃が、すかぁああああああッ!」

「ぅ、ぐ……ッ!」

 

 押し切る事は出来ない、と判断した私は下がるも、セイツの追撃は早い。先のオーバーヘッドキックとは逆に、私の方が対応しきれず、セイツの飛び込むようなショルダータックルを諸に受ける。セイツの方も右腕は弾かれ、左腕も防御に回してという状態だったおかげで、十分な威力は乗せられなかったようだけど…だとしても、無防備なところに叩き込まれる一撃は重い。

 

「……ッ、ぁぁああああああッ!」

 

 跳ね飛ばされた私へ猛然と迫るセイツ。連結したままの得物を肩に担ぐように構え、横薙ぎと袈裟懸けの中間の様な斬撃を振り出す。

 だけど私だって、まだやられない。やられてなるものか。歯を食い縛り、セイツの姿をしっかりと目で捉え、迫る連結剣へ二本のバスタードソードを打ち付ける。打ち付け、防ぎ、翼を広げて大きく空へ。右の一本は追撃阻止の為にセイツへ向けて投げ放ち、左の一本は追加のシェアエナジーと共に鎖分銅へと作り替え、吹っ飛び地面へ刺さった状態の長剣へと飛ばす。鎖を絡めて引っ張り、着地と同時に手元へ戻す。

 

「…ふー、ぅ……。…確かに、キツいお返しだったよ…流石だ、レジストハート。ほんと…凄いお姉ちゃんだよ、セイツ」

「ありがとう、イリゼ。正直今、貴女の感情を受けて物凄く抱き着きたい思いに駆られているわ。…でも、それは後よ。まだ…わたしのとびきり強い妹、オリジンハートとの戦いは終わってないんだから」

 

 少しだけ、言葉を交わす。私は鎖分銅を、セイツは剣を手放して、ゆっくりと得物を構え直す。

 お互い、打撃や関節への攻撃でそこそこのダメージを浴びてはいる。だけどまだ大きなダメージではないし…だから、続けられる。セイツの言う通り、ここで終わるなんてまだまだ早過ぎる。

 数秒の沈黙と、そこからの突進。最初の一手を思い出す突撃と共に、私もセイツも武器を振り上げる。そしてまた、私とセイツは激突……

 

「イリゼ!セイツ!」

 

──する寸前、長剣と連結剣が触れ合う直前、オリゼの声が耳に響いた。私もセイツも、ぴたりと同時に動きを止め…視線が、交わる。

 

「…気付いた?イリゼ」

「うん。大分、集まってきてるね」

 

 見つめ合ったまま、端的に話す。そして私達は小さく息を吐き…反転。正対する姿勢から、背中を預け合う体勢となって、私は構え直す。セイツも得物の連結を解く。

 感じてはいた。頭の隅で気にしてはいた。どうしたものかと思っていたけど…オリゼがこうして呼び掛けてきた以上、それはもう放置出来る状態じゃないという事。そうして私は目だけを動かし……離れた場所にある森林に集まりつつある、多数のモンスターを捕捉する。

 私達が疲弊したところを狙おうとしていたのか、それとも私達の戦いで闘争本能を刺激されたのかは分からない。けど次々に集まってきているモンスターの大群が、私達を狙っている事は間違いない。

 

「…ごめんなさい。ふ、二人の勝負に水を差す形に、なってしまって…」

「気にしないで、オリゼ。この様子じゃ、どうせその内対処しなきゃいけなかっただろうし。それよりも、オリゼは大丈夫?」

「も、勿論です。私が、一人で全て片付けても…いいん、ですけど……」

「それには及ばないよ。恐らく私とセイツの戦いが原因で寄ってきたんだもん、その対処は私達がやらないと…ね」

 

 同じく臨戦態勢のオリゼは自分一人で…と言っているけど、まあそれもオリゼなら出来るんだろうけど、私達が原因なのにオリゼに任せて戦闘続行なんて、女神としても家族としても間違っている。

 ただまあ、理由はどうあれモンスターに邪魔されるというのは面白くない。…だから。

 

「神生オデッセフィアが女神たる私達の手合わせに、不遜にも横槍を入れようとしたのだ。ならばその力がどれ程のものなのか、見せてもらおう」

「さっさと尻尾を巻いて逃げ出すなら、見逃してあげるわ。だけどそうでないのなら…これからここで果てる未来を、覚悟する事ね」

 

 ここまでの戦い、その中で昂った熱を、多数とはいえモンスター程度で満たせるとはとても思わない。だけど、だからこそ本当に面白くないし…ならばせめて、思うがままにに力を振るわせてもらおうと、心に決める。

 そうしてここから始まるのは、セイツとの共闘。手合わせからの、連携。更に言えば、オリゼとの共闘でもある訳で…それは少し、楽しみでもある。だから今は、それで満足するとして…いつかまた手合わせをしようか、セイツ。今度は、今度こそ…お互いに、満足するまで…ね。




今回のパロディ解説

・「…龍翔閃?」
るろうに剣心に登場する剣術の一つ、飛天御剣流の技の一つの事。これと下記の昇龍拳って、漢字にしろ読み方にしろ(順番は違えど)かなり似てますよね。どちらも上向きの攻撃でもありますし。

・「〜〜昇龍拳〜〜」
ストリートファイターシリーズにおける、技の一つの事。今話においてイリゼが行ったのは、この昇龍拳っぽい技です。それっぽいだけで、そのまんま昇龍拳をやった訳ではないですが。

・「違うな、間違っているよセイツ〜〜」
コードギアスシリーズの主人公の一人、ルルーシュ・ランペルージ(ヴィ・ブリタニア)の代名詞的な台詞の一つのパロディ。要は単なる否定の台詞なので、割と使える場面は多そうですね。
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