超次元ゲイムネプテューヌ Origins Transition   作:シモツキ

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第十話 これからの繋がり

 皆も知っての通り、わたしは信次元の女神であると共に、神次元の女神でもある。わたしのルーツは信次元にあるし、自分の国は?…と言われたら、それは勿論神生オデッセフィアなんだけど、わたしの女神としての在り方、目指すべき形を築き上げてきたのは、間違いなく神次元での日々。だからわたしは、どちらかじゃなくて、どちらでもある。

 って訳で、わたしは平時であれば定期的に信次元と神次元を行き来している。いつもはわたし一人で神次元に行ってるんだけど…今回は、違う。

 

「いらっしゃ〜い。よく来たねぇ〜」

 

 次元の扉を潜り、信次元から神次元に移動したところで聞こえてくる、のんびりとした声。それにわたしは、声を返す。今日は二人で、それに答える。

 

「いつもお迎えありがとね、三人共」

「お邪魔するよ、皆。今日は宜しくね」

 

 挨拶として軽く手を挙げたわたしに続く、もう一つの声。わたしの妹、イリゼの声。今回は、イリゼも神次元に来てくれた。…っていっても、イリゼは遊びに来ただけで、何日もいる訳じゃないんだけどね。

 

「お迎えも何も、ぴぃ達は普段からここに居るだけだけどね。特にぷるるとなんて、やる事がないとずーっと教会の中でのーんびりしてる位だし」

「えへへ〜、褒めてもキャラメル位しか出ないよ〜?」

「いや褒めてないんだけど…っていうかこのキャラメル、大丈夫…?いつからポケットに入ってたの…?」

「……これ、あたしの好きなキャラメルなんだ〜」

「そんな事訊いてないんだけど…!?ちょっ、要らない要らない!怖いから要らないって!」

 

 不安を掻き立てる謎の間の後、質問には答えず渡そうとしてくるプルルート。冷や汗を滲ませつつ、それを全力で断るピーシェ。よく見る、いつ見ても変わらないような二人のやり取りに、わたしは苦笑し…同じように苦笑していたイリゼと軽く肩を竦め合う。

 

「それからイストワールも、いつも扉を開いてくれてありがと」

「お世話になりますね、イストワールさん」

「いえいえ、今日はゆっくりしていって下さいね

(о´∀`о)」

「それならお任せ〜」

「うん、ぷるるとが言われた訳じゃないから」

 

 再び光る、ピーシェの突っ込み。これはうかうかしてると突っ込み役ポジションを取られちゃうわよ?…とわたしが言うと、イリゼはいや別に…と答えた。…答えたけど…イリゼの目は、ピーシェの突っ込み能力を見定めようとしていた……ような気がする。

 

「あぁ、そういえばセイツさん。今日は確か、この後……」

「えぇ、まだ来るわよ。けどそっちはイストワールの手を借りなくても大丈夫って事だから、気にしなくてもいいわ」

「…なんていうか、ほんと意外だよね…ここ最近で、一番の驚きっていうか……」

「まあ別に、改心した…って訳じゃないみたいなんだけどね。あくまで一番楽しい、こう在りたいって思うものが変わっただけみたいだから」

「あたしはよく分からないけど、もう悪い事をしようとはしてないんでしょ〜?なら、それで良いんじゃないかなぁ〜」

 

 よく分からないと前置きした上での、プルルートの呑気さすら感じる言葉。だけど、大事なのは今プルルートが言った通りの事で…確かにね、とわたし達はそれに頷く。…一体何の事を話しているのか、って?それはこの後分かるから、待っていて頂戴。

 

「さてと。それじゃあ早速だけど、お茶にしない?丁度良いお菓子があるの。ね?イリゼ」

「お菓子があるのっていうか、私が作ってきたんだけどね…。アプリコットのタルトなんだけど、どうかな?」

 

 そう言って、イリゼは包んでいたタルトを皆に見せる。折角だから出来立てを食べてほしいという事で、直前にイリゼが作ったタルト。ふわりと匂いの香るタルトは、きっとまだ温かくて…美味しいのは、間違いない。だってイリゼの作ったお菓子だもの、美味しくない訳がないわ。それに、作ってる時のイリゼの気分の良さっていったらもう…それを感じるだけで、わたしはお腹一杯になっちゃうわ!……それはそれとして、タルトも食べたいけど。

 って訳で、全員移動。リビングに移って、全員分の食器とフォークを用意して、飲み物も準備しテーブルを囲う。

 

「はい、切れたよ。それじゃあ皆、召し上がれ」

『頂きまーす』

 

 今は不在なコンパやアイエフの分もイリゼが切り分けてくれたところで、わたし達は食事の挨拶。早速一口分を切って、口に入れて、アプリコットとタルトの生地、それぞれ違う甘さを楽しむ。まずはそれを楽しんで、それから皆の反応に耳を傾ける。

 

「んん〜♪甘いと思ってたけど、やっぱり甘〜い♪」

「…美味しい…うん、これは美味しい……」

「お菓子作りが趣味だとは聞いていましたが、ここまでのものとは…これを普段から食べられる、そちらのわたしが少し羨ましいです( ̄▽ ̄)」

「いやいや、流石に普段から作ってる訳じゃないですよ?…よく作ってるのは事実ですけど」

 

 プルルートにもピーシェにもイストワールにも、イリゼのタルトは皆に好評。因みに神次元のイストワールも信次元の…つまり、わたし達の姉であるイストワールと同じく小さいから、彼女の分はミニマムサイズ。

 

「そういえば〜、イリゼちゃんはどうしていーすんにだけ敬語なの〜?」

「あー、それは信次元のイストワールさんにも敬語だから、かな。何かこう、イストワールさんに対しては敬語の方がしっくりくるというか……」

「慣れというやつですね。切り替えて話していれば、その内敬語でない話し方も慣れるのかもしれませんが…お互い今のままで良いと思っているのなら、そのままでも良いと思いますよ(´・∀・`)」

「ですよね。今はイストワールさん以外で敬語なんて、何か特別な理由がなければ使っていないので、逆に特別感があるって意味でそのままの方が良いかなー、って思ったりもします」

「え、じゃあわたしは?わたしに対しては、何か特別な接し方ってないの?」

「アプリコットの甘酸っぱさと、タルトのバターを感じる甘さ、それにアーモンドの食感が良いアクセントになっていて…これはどんどん食べたくなる……!」

「…黙々と食べてるね、ピーシェ」

「あはは…昔からピーシェさんは、食欲旺盛なんです(^◇^;)」

 

 タルトを食べながらの、穏やかな談笑。話題は自然と、普段こっちにはいないイリゼに纏わるものになって……そんな中、ピーシェだけは黙々とタルトを食べていた。某ダミーサークルの料理が得意な女の子ばりに、獲物を狙う鳶みたいな目をして食していた。

 

「そっか…ここじゃピーシェが食欲旺盛なんだ……」

「……?どういう事〜?」

「あ…ひょっとして、せいつが言ってた別次元の……」

「うん。別次元のピーシェは貴女より小さい姿のまま変わってなかったり、見た目はほぼ同じだけど食欲旺盛なのは親しい部下の方だったりで、大なり小なり違いがあるんだ。前者に関しては、私も直接会った事がある訳じゃないんだけどね」

「ほぇ〜、そうなんだ〜。別次元には、あたしもいたりするの〜?」

「いるみたいだよ。というかそれこそ、こことは違う神次元自体が複数あるっぽいし」

「そうなんだ…。…ちょっと、気になる…かも」

「あたしも〜!ねぇねぇいーすんー、今度別の神次元に遊びに行ってみたいんだけど、その時は扉開いてくれる〜?」

「気になる気持ちはわたしも分かります…が、取り敢えずピーシェさんはお仕事をして下さいね?…お願いですから、して下さいね……(ノ_<)」

 

 何とも切実そうなイストワールの訴えに、わたし達は苦笑。イストワールって、どの次元でも女神を支える中で苦労してそうね…。そしてプルルート、任せて〜…なんて返してるけど、全然貴女からは任せても大丈夫そうなオーラが出てないわよ…?

 

「…あ、そうだ。二人共、色々ご迷惑をお掛けしました…って、ネプテューヌとネプギアが言ってたわよ」

「ううん〜、気にしてないよ〜」

「あぁうん、わたしにそれを言われても困るから、二人に代わりに伝えておくわね…」

「事が片付いた後も次元間交信で謝ってくれたんだから、もういいのに…全くもう、二人ったら……」

 

 頼まれていた伝言を二人に伝えると、プルルートは調子を一切崩さず答えた一方、ピーシェは少しだけ頬を膨らませる。この拗ねた感じの感情も中々良いものだけど…うん、気持ちは分かるわ。

 

「けど、本当にありがとね。私がいない間に、色々…ほんと、色々あったんでしょ?」

「え?…あ、そっか。いりぜは……」

「囚われの女神様だったんだもんね〜。捕まってた時って、どんな感じだったの〜?」

「うーん…どんな感じって…別にどうもこうもないっていうか、封印?…されてるような状態だったから、そもそもあんまり捕まってたって実感すらないというか……」

「そうなのー?…そっかぁ……」

「…えっ、なんでちょっと残念そうなの?ね、ねぇ?ちょっと…?」

 

 若干動揺した目でプルルートを、それからわたし達を見てくるイリゼ。それにピーシェは微妙そうな顔で目を逸らし、イストワールは申し訳なさそうな表情で返す。…わたし?わたしは勿論、無言よ。だってほら、その方が面白そうだし。というかイリゼもプルルートの…というか女神メモリーがどんなものかは知ってる筈だしね。

 

「あっ、そうだ〜。いりぜちゃんは、この後何がしたい〜?」

「唐突!え、今さっきの問いに対する答えは!?誤魔化し!?答えたくないが故の誤魔化しなの!?」

「…違うよ、いりぜ。これがぷるるとの…平常運転、だから」

「だとしたら天然が過ぎる…。…で、えぇと…この後何がしたいか、だっけ?それなら…ここの案内をしてほしい、かな」

「ここ…というのは、教会のですか?(・・?)」

「はい。今はもうプラネタワーになっちゃってますけど、信次元のプラネテューヌの教会と、神次元のプラネテューヌの教会の違いはちょっと気になりますし…一回ちゃんと知っておけば、今日にせよ今後またこっちに来た時にせよ、いちいち皆に教えてもらわずに済みますから」

 

 気を取り直すように答えたイリゼは、イストワールの返しを受けて更に答える。そして最初に質問をしたプルルートは、いいよ〜と答え…そこでピーシェが、感心したように小さく笑う。

 

「…ピーシェ?」

「あぁ、いや…いりぜって、ねぷぎあと同じで姉より真面目でしっかりしてるタイプなんだな…って」

「ちょっと!?イリゼが真面目なのは同感だけど、わたしだって真面目でしょ!?」

「えっ?」

「なんで驚くのよ!?わ、わたし真面目よね!?そうよねぇ!?」

「え、えぇまあ…。……普段は…(¬_¬)」

「ぼそっと一言付け加えるのは止めて!?」

 

 本気で驚いているっぽい(多分わざとだけど)反応をしたピーシェもそうだけど、それ以上にイストワールの一言が突き刺さる。そこに悪意や、からかってやろうって意図がない事は分かっている。だからこそ余計に、その一言がわたしを貫く。

 

「うぅ…言っておくけど、イリゼはそんなにしっかりしてないんだからね…?しっかりしてるようでしっかりしてない、で有名なイリゼなんだからね…?」

「そんな事で有名になってたりはしないんだけど…!?」

「あはは〜。せいつちゃんといりぜちゃんって、やっぱり姉妹なんだね〜」

『どこでそれを感じてるの!?』

「そういうところだと思うよ、二人共…」

 

 終わる気配のない談笑。なんかさっきからわたしとイリゼが弄られてばっかりな気もするけど、ともかく賑やか。楽しい雰囲気の中では、タルトを食べる手もどんどん動いて…いつの間にか、最後の一口も食べてしまっていた。

 

「ご馳走様、イリゼ。美味しかったから、また作って頂戴」

「あ、感想の流れのままそれ言うんだ…ふふ、いいよ」

「それじゃあ、案内する〜?」

 

 全員の完食から数分後。食器類を手早く洗ったわたし達は、話していた通り教会内の案内に出発。単に案内をするだけなら、プルルート一人…だとちょっと不安だけど、わたしとピーシェ、イストワールの内誰か一人が着いていけばそれで十分。だけどその案内には、わたし達全員が同行する。だって…そっちの方が、楽しいでしょ?

 

「まずはここがー、えっとー…リビング〜」

「あ、ここからやるんだ…うん、リビングね」

「それで〜、ここからが廊下〜」

「それはそうだね…えー、っと……」

 

 ボケみたいな案内…いや、今の段階だとまだ案内ですらないのかしら…を初手から行うプルルートに、イリゼはたじたじ。何が恐ろしいって、プルルートにボケる気はゼロな事よね…本人はしっかりやってるつもりなのが伝わってくるから、突っ込むのにも抵抗感が生まれちゃうし…。

 とはいえ、この調子だと不要な説明もしまくる気がしてならない。何とかしてっ、ってイリゼからの視線もきている。だからわたしとピーシェはイリゼの代わりに軽く突っ込んで、別に片っ端から説明する必要もない事を伝えて、改めて出発。

 

「ここは〜、倉庫〜。食べ物とか〜、食べ物以外とか〜、よく分からないなとか、色々あるの〜」

「よ、よく分からないの…?そんな、よく分からないものが置いてあるの…?」

「それは恐らくプルルートがよく分かっていないだけだから、あんまり気にしないで……」

 

「こっちはお風呂〜。このお風呂に〜、ねぷちゃんと〜、ノワールちゃんと、一緒に入ったんだ〜。…あれぇ?それって、最近の事だっけ〜?」

「最近ではなく、もうずっと前の事です…セイツさんが目覚める前どころか、ピーシェさんが産まれるよりも更に前です……( ;´Д`)」

 

「ふふふ〜、この部屋はね〜、ぴーしぇちゃんのお部屋だよ〜。それじゃあ中に、れっつご〜!」

「いやレッツゴーしないでくれる!?いいから!ぴぃの部屋の中までは案内しなくていいから!」

 

「次に案内するのは〜…」

「ちょっ、ストップストップ!さっきから凡ゆる部屋で何かしら突っ込みところがあるんだけど!?ぷ、プルルートは一人で部屋大喜利でもしてるの!?」

 

──廊下に響く、イリゼの突っ込み。案内が始まってから、十数分後。痺れを切らしたように、我慢が出来なくなったように…イリゼは思いっきり叫んでいた。

 

「部屋大喜利って、な〜に〜?」

「そんなの私が訊きたいよぉ!」

 

 相変わらず自覚のないプルルートが発揮する、超マイペースムーブ。こんなの慣れてなきゃ振り回されるのは当然……

 

「教会の案内は、プラネテューヌの女神代表であるプルルートさんに…と譲っていたのが間違いでした…まさか、まさかここまでとは……(~_~;)」

「今日のぷるると、絶好調過ぎる…たっぷり昼寝した上でお腹も満たされたぷるるとの調子の良さを、完全に見誤ってた……」

「むしろこれは、教会内で良かったって話じゃないかしら…もしこれを屋外の、もっと広い範囲の案内で発揮されてたらって思うと、それだけで頭が痛くなりそうだわ……」

 

…ではなく、慣れていても振り回されるわたし達だった。もう、プルルートに案内はやらせないようにしよう。させるにしても、メインを担当させるのは止めよう。…そんな学びを得る、わたし達だった。

 

「ねぇねぇ、もう案内しなくていいの〜?まだ教えたい場所があるのに〜」

『教えたい場所…?』

「うん〜。あたしの部屋、まだでしょー?」

 

 あぁそういえば、とプルルートの言葉でわたし達は気付く。自分の部屋の案内は特にやりたいだろうし、プルルートの部屋の場所はイリゼも覚えておいて損はない筈。ならまあいいか、とわたし達は頷き合い、首を傾げるプルルートへ首肯。そしてプルルートを先頭に、わたし達は移動し…プルルートの部屋の前へと着く。

 

「じゃーん。ここが、あたしの部屋の前〜」

「部屋の中じゃなくて、部屋の前を紹介する人初めて見た…。…部屋の前、か…前はここに来るの、ちょっと切なかったな……」

「…ごめんね、ぴーしぇちゃん…ずっと、ありがとね」

「…うん」

 

 ぽつりと声を漏らしたピーシェへプルルートが伝える、謝罪と感謝。それにピーシェは小さく頷いて……二人の感情、互いが相手に向ける思いへ、わたしがハートキャッチされた事は言うまでもない。

 

「良い…とても良い…凄く良い……」

「セイツちゃんは放っておいて〜、皆中にどうぞ〜」

「とびきり良い…すこぶる良──あれ?」

 

 この感動、この感激をどう表現したものか。400字詰めの原稿用紙2、300枚に纏めるか、それともOTの話の一つに仕立て上げるか…と考えていた内に、いつの間にかいなくなっていた皆。一瞬困惑した後、部屋の中に入ったんだと気付いたわたしは、「んもう、酷いわね」と思いながら皆を追って部屋の中に……

 

「って閉められたぁ!?ちょっ、ちょっと!?」

「うわっ、入ってきた…」

「うわって何よ!?わたしをなんだと思ってるの!?」

『変態』

「全員で揃って言わないで!?」

 

 ピーシェ一人ならまだしも、妹のイリゼ、ほんわかしてるプルルート、生真面目なイストワールの三人にも言われ、流石にわたしも大ダメージ。…まぁ、プルルートは女神としての性格を思えば、あり得なくはないんだけど…だとしてもばっさりいかれた。わたしの心は一刀両断状態だった。

 

「うぅ、変態って結構な悪口なんだからね…?」

「そんなの身から出たサザビーだよ」

「それは総帥専用のMSでしょう!?変な角度からボケないでくれる!?」

「っていうか〜、今セイツちゃん部屋の扉横に開いてなかった〜?」

「開いてない開いてない、どんな扉も横開きするのはわたしじゃないから……」

 

 精神的に摩耗したわたしは、部屋の中にあるクッションへと座り込む。そんなわたしを見てイリゼは苦笑していたものの、慰めてくれたり擁護してくれたりはしなかった。…しょぼん……。

 

「…にしても、ここがプルルートの部屋…なんかちょっと、部屋全体の雰囲気としてはネプテューヌとネプギアの部屋に似てるね」

「…信次元の二人も、こういう部屋なの?」

「うん。と言っても、似てるっていうのは二人の共用部屋との事だし、あくまで雰囲気の話だけどね。…因みに、あれは……」

「あたしが作った、皆のぬいぐるみだよ〜」

 

 興味深げにイリゼが見ているのは、皆…即ちわたし達のぬいぐるみ。その製作者であるプルルートは、ご満悦そうに胸を張る。実際プルルートの裁縫能力は凄いもので、ぬいぐるみは皆の特徴をよく捉えつつもぬいぐるみとしてデフォルメ化した、きっと誰が見ても『上手い』と思うようなもの。…因みに棚の上とかソファとか色んな場所に配置されてるぬいぐるみだけど、ノワールのものだけ近くに他のぬいぐるみがないのは、単に置き場所の関係上そうなっちゃっただけ…だと思いたい。

 

「ところでプルルートさん。少し前、わたし達も手伝ってお部屋の片付けをしたのに、またごちゃごちゃし始めてるじゃないですか…(。-_-。)」

「それは…な、何の事かな〜……」

「いやこれを誤魔化すのは無理でしょぷるると…はぁ。また手伝ってあげるから、今度こそ整理整頓ちゃんとしてよね?」

「わ〜い、ありがとうぴーしぇちゃん〜♪」

「……ねぇセイツ。私この二人から、ネプテューヌとネプギアみたいな関係性を感じるんだけど…」

「ふふ、大体合ってるわよ?文句は言うけど基本ピーシェってプルルートの事を気に掛けてるし…プルルートの事が、大好きなんだもの」

「ぶ…ッ!?ち、違うし!ぴぃは別に……」

「…違うの……?」

「…違わなくはないけど!ないけど別に、ぷるるとだけじゃないし!他の皆の事も好きなんだからッ!」

 

 わざと本人に聞こえるようにわたしが言えば、ピーシェは否定しようとし…しゅんとしたプルルートの姿に、そうではないと翻す。ただ、そのまま認めるのはやっぱり恥ずかしかったのか、勢い任せに凄い事を言っていた。顔を赤くし、皆好きだと宣言していた。…くぅっ、可愛い!思わず感情云々関係なしに「はぅっ…!」ってなっちゃったわ!っていうかこれにはイストワールもきゅんとしてる感じだったわ!でも当然の事よねっ!

 

「んふふ〜、わたしもピーシェの事好きよ?」

「わたしも好きですよ(*´꒳`*)」

「あたしも〜」

「あはは、私もこれからもっと仲良くしたいな。勿論プルルートも、イストワールさんともね」

「ちょっ、い、いいっ!そういう事言わなくていいからっ!…ううぅ……」

 

 かぁっと更に赤面したピーシェは、隠れるようにわたしが座るのとは別のクッションへ顔を突っ込む。その姿に、わたし達はほっこりとし…これ以上は言わないであげる事にした。

 

「やっぱりぴーしぇちゃんは、あたし達だけの時より、皆がいる時の方が元気だねぇ〜。…ふぁぁ……」

「…え、プルルートさん…?もしや、眠いんですか…?Σ(・□・;)」

「うん〜…お腹一杯になって、あっちこっち行ったから、ちょっと眠くなっちゃったかもぉ……」

「お腹一杯…はまだしも、歩き回ったのは教会内のみですよ…!?しかもセイツさん達が来る前もお昼寝してましたよね…!?(><)」

「そんな事言われても〜……」

 

 眠いものは眠い、とこれまた別のクッションにぐでーっと身体を預けるプルルート。こうなるともう駄目だと分かっているからか、イストワールはがっくりと肩を落とし、客人であるイリゼへ申し訳なさそうな顔を見せる。プルルートの昼寝好きを知っているイリゼは、プルルートの行動とイストワールの表情へそれぞれ苦笑をし…わたしと顔を上げたピーシェは、揃って乾いた笑い声を漏らす。

 

「…どうする?せいつ」

「どうもこうも、プルルートはもう今にも寝ちゃいそうだし…わたし達も、のんびりする?」

「あはは…まぁ、いいよ。実際私も、もっとこっちの皆と…と言っても、一名既に会話出来そうにないけど…ゆっくり話してみたかったしね」

 

 若干気を遣ってる感がなくもないけど、遊びに来た形であるイリゼがそう言うのなら、誰も文句なんてない。わたしとしても、イリゼがこっちの皆と色々話して、親睦を深めてくれるのなら…それは嬉しい。

 だからそれから暫くの間、わたし達はのんびりと話す事にした。普段何をしているか、女神として最近苦労したのは何か、自分はどんなゲームが好きか…そんな重要性のない、他愛無い…だからこそお互いの『素』を知れるやり取りを、イリゼ達は交わしていた。その内に話は共通してる部分…つまりお互い知ってる信次元のネプテューヌやネプギア、後は本人の前でする!?…と思ったけどわたしに纏わる話にもなっていって……漸く目覚めたプルルートが、「あたしが寝てる間に楽しそうな話してずるい〜!」と言った際には、流石に全員で揃って呆れ笑いをするのだった。

 

 

 

 

 今回わたしが神次元に戻ってきた事に、特別な理由はない。普段から平時は定期的に行き来してるからというだけで、イリゼの来訪があろうとなかろうと、わたしはこっちに戻ってきていた。

 でも、何も特別な事がないかといえば、違う。わたしは今回、わたしは今日…絶対に欠かせない事がある。ある存在との、ある人達との顔合わせに、立ち会う為に。

 

「ふー、やっと着いた…かと思えばまだかかるの…?ちょっと、幾ら何でもVIP待遇過ぎない…?」

「まあ、そりゃ七賢人からすりゃ仲間だろうからな。今も仲間だと思ってるか、元仲間かは分からねぇけどよ」

「…それに、意図的にこんな場所にしているという事もあるだろうね。何せ、彼女なんだから」

 

 先を行く三人…大きいネプテューヌ、クロワール、くろめの三人の後を、少し距離がある状態で歩く。

 わたしとイリゼに遅れる形で、三人も神次元に来た。クロワールがいるから、次元移動はお手のもの。それはつまり、しっかりと準備しなくても別次元へ行けるって事で…やっぱり、クロワールが味方になったのは大きい。こうして味方としているからこそ、尚更もし今も好き勝手やっていたら…と思うと恐ろしくなる。……まあ、普段大きいネプテューヌと行動を共にしているから、問題にならない範囲で二人揃って好き勝手やってると言えばやってるけど…。

 

「しかし、意外だね。君は、彼女の事は顔も見たくないと思っていたけど、まさかオレ達に同行するとは」

「えぇ、見たくもないわ。そういう相手だからこそ、同行してるのよ」

「…一応言っておくが、あいつはもうただの人間だぞ?力を奪った俺が言うんだから、それは間違いねぇ」

「だとしても、よ。万が一にも目を覚ましたら、そしてその時何か予想もしない事が起きたら…それを思えば、備えておくに越した事はないわ」

 

 ちらりと歩きながら(一人は浮遊しながら)こちらを見てくる二人に、わたしは返す。…自分でも、声が少し冷たいものになっているのを感じる。

 それっぽい事を言っているわたしだけど、実際にはそれっぽいだけ。見たくもないからこそ同行してるなんて意味が分からないし、万が一に備えるのなら、もっと頻繁に来なきゃいけない。そもそもその『万が一』については七賢人側も分かっていて、だからこの病院の中でも隔離状態になっているし、常時バイタルサインのチェックと並行して彼女の事はモニタリングを続けてくれている。何かあったのならともかく、何もないならこうしてわざわざ来なきゃいけない理由はない。

 なのに、わたしは来ている。今日会いに来ているのは、この三人だから…っていうのも理由の一つではあるけど……もしかすると、わたしは彼女という存在を、引き摺っているのかもしれない。

 

(…癪だわ、不愉快だわ…。もう女神としての、悪神としての彼女なんか存在していないのに…それでもまた、わたしにこびりついてくるなんて……)

 

 腹立たしい。腹立たしくて、仕方がない。…でも今は、何とかこの感情を胸の内に抑える。…だって、わたしはただ付いてきただけなんだから。傍観に徹するつもりのわたしが、皆の邪魔をするのはいけない。

 そうして、わたし達は奥へと着く。この階の最奥へ…彼女のいる病室へと、四人で入る。

 

「やっほ。久し振りだね──レイ」

 

 呼び掛ける大きいネプテューヌの声に、返事はない。今も彼女は、キセイジョウ・レイは、これまでと同じように…眠り続けている。そしてそれが分かっているからか、大きいネプテューヌの声音はいつもより静かだった。

 

「よう。元気か…って訊くのは、流石に違ぇか」

「君と最後に話したのは、君に皆共々負のシェアの城から落とされた時だったかな。…あれから、色々あったものだよ」

 

 大きいネプテューヌに続いて、二人も声を掛ける。返事なんてない、恐らく聞こえてもいないと分かった上で、言葉を掛ける。それから数秒、沈黙し…くろめがまた、声を発する。

 

「驚いただろう?オレがこうして君に会いに来た事も、ねぷっちやクロワールと一緒にある事も。オレもクロワールも、今や女神のねぷっち達の仲間なんだ。まぁ、君には信じられないだろうけどね」

 

 肩を竦め、本当に世の中何があるか分からないものだ、とばかりにくろめは話す。確かにな、とクロワールは頷く。当然それにも返事はなく…再び、沈黙。

 ただでも、当然の事かもしれない。レイも含めたこの四人は、複数の次元を巻き込んだ災厄を引き起こした元凶で、その戦いの後はどこかへ逃げ去っていたクロワールがアルテューヌの件を経て味方となった…つまり四人が再び集まれる状況となった事で、今日のこれが提案された(多分面子的に提案したのは大きいネプテューヌ)らしいけど…そもそもこの四人は、仲が良かった訳じゃない。いや、くろめは勿論、今思えばクロワールも大きいネプテューヌとの関係はなんだかんだ良かったんだろうけど、レイに対しては別。あの残虐非道、下賤で下劣な女神崩れがまともな人間関係なんて築ける筈がない訳だけど、とにかくそんな相手に会いに来たところで、会話が弾む筈がない。でもまあそんな事予想出来てただろうし、きっとそれも織り込み済みで皆ここに……

 

「うぅ…暗い!暗い暗いくらーーいっ!もうっ、何さこの墓前の前みたいな雰囲気は!わたしこういう雰囲気だとスリップダメージ受けちゃうよー!」

「うわっ、いきなり叫ぶなよネプテューヌ…てか、墓前の前じゃ重語だからな」

 

……来てた訳じゃなかった。少なくとも大きいネプテューヌは、思いきり居心地悪そうにしていた。

 

「そんな事はどうでもいいよ!それより折角こうしてまた集まったんだよ?謂わばこれは同窓会なんだよ?もっとこう、明るくいこうよ!『いやぁ、まさかザ・不死身と言われていたレイが一番の寝坊助さんになるとはね』的な事言うとかさ!」

「いや同窓会ではねぇだろ。例えに上げる内容も変だし、そもそも今のレイは寝坊とかそういうレベルでもねぇし」

「なら、強い女神、弱い女神、そんなのコンパイルハートの勝手…とか言う?」

「言ってどうすんだそんなの。確かにそれはその通りだけどよ…」

「だったら何がいいのさ!わたしは明るい話をしたいの!貴女はクロちゃん?」

「そうだよクロワールだよ、なんで疑問符の位置を誤植状態にしたんだよ…ってか、なんなんださっきから。言ってる事が全部四天王関係じゃねぇか」

「え、だってわたし達、ご迷惑おかけしました四天王でしょ?」

『それは流石に名前がダサ過ぎる…!』

 

 妙なボケにクロワールが呆れ顔で突っ込んでいたけど、最後は堪らずくろめも突っ込む。うんまぁ、確かにダサ過ぎるわね…四天王っていう格好良い響きが、完全に台無しになってるレベルだわ…。

 

「ふぅ、すっきりしたぁ…クロちゃんって、基本ボケをスルーしたり適当にあしらったりしないでしっかり突っ込んでくれるよね。いつもありがとっ!」

「感謝されてこんなにも嬉しくねぇのは初めてだよ…」

「ふっ、君も苦労しているねクロワール」

「うっせぇ、そう思うなら俺の代わりに突っ込んでくれ」

「そもそも別に、ボケは必ず突っ込まなければいけないものじゃないだろう?」

「正論言うんじゃねぇっての…」

 

 さっきまでのある意味病室にあった雰囲気はどこへやら、完全に愉快(?)なものとなった空気感に、わたしは苦笑。思いきりふざける大きいネプテューヌ、律儀に反応するものだから振り回されるクロワール、それを面白そうに眺めるくろめという光景は、それぞれから伝わってくる感情的にも結構良いもので…それからふと、少しだけ穏やかな表情をした大きいネプテューヌが言う。

 

「…ま、こんな感じにわたし達は楽しくやってるからさ、レイもいつか起きておいでよ。女神の力がなくなっちゃったんだから、もうこれまでの事は全部水に流して…とはいかないだろうけど……ずっと寝てたって、面白くないでしょ?」

 

 もしかするとそれは、もしかするとそれを、大きいネプテューヌは伝えたかったのかもしれない。くろめとクロワールも、何も言わず…でも大きいネプテューヌと同じようにレイの事を見つめていて……それからくろめが、行こうかと呟く。それに二人は、小さく頷く。

 

「…もう、いいの?」

「ああ。言うまでもないと思うが…実際のところ、オレも二人もそこまでレイと話したい事柄がある訳じゃないからね」

「つーかぶっちゃけ、話してて楽しい相手でもねぇしな。とんでもねー事をしでかすやつだから見てる分にゃ面白いし、その関係で色々手を貸したりはしたけどよ」

 

 わたしの問いに返ってくるのは、割と遠慮のない答え。でも別に同情はしない。だって当然の事だもの。

 ただもう一つ、気になる事がある。だから歩き出した皆と共に、わたしもエレベーターの方へと向かい始め…大きいネプテューヌに、訊く。

 

「…貴女は、レイに目覚めてほしいの?また、話したいの?」

「んー…正直わたしもレイと仲良かった訳じゃないし、流石のわたしも擁護出来ない性格だとは思うよ。思うけど…やっぱりほら、内容はどうあれ一時は協力関係だったし、このまま…っていうのは嫌かな、って」

「…そう」

「まぁ、レイの方は協力関係だなんて思ってないだろうけどさ。…セイツ的には、嫌な話だった?」

「そんな事はないわ。勿論、わたしはそれを素直に応援する事は出来ないけど……」

「けど?」

「…そう言える、そう思える辺り、やっぱり『ネプテューヌ』は凄いわね」

 

 どんな相手でも切り捨てない、可能性を諦めたりしない。それはわたしの知る、信次元のネプテューヌや超次元のネプテューヌとも共通する事で、やっぱりそれがネプテューヌと言う存在の本質なんだろう、とわたしは思う。

 これから先、レイがどうなるか分からない。前にここに来た時と変わらず、今もわたしの中で心の整理は付いていない。これがいつか、納得のいく答えになるかどうかも分からない。

 だけどレイには、その所業を悪だと断じた上で、それでも『仲間』として受け入れてくれる、見捨てないでいてくれる人がいる。それはピーシェであり、七賢人であり…大きいネプテューヌもそう。くろめやクロワールだって、ここに来たという事自体が、一つの答えのようなもの。だから、どうか…そんな皆の思いが、踏み躙られる事だけはあってほしくない。わたし自身、踏み躙る結末なんて望まない。それが今の、まだ整理しきれていない心でもはっきりとしている……わたしの、思い。




今回のパロディ解説

・某ダミーサークル〜〜得意な女の子
日々は過ぎれど飯うましの主人公、河合まこの事。ダミーサークル、と書きましたが、実際にダミー状態だったのは初期だけで、以降はちゃんとした食文化研究部になってる感じありますね。

・「〜〜サザビー〜〜」
機動戦士ガンダム 逆襲のシャアに登場するMSの一つの事。パイロットは直後の台詞でも触れている通り、言うまでもなくシャアです。体を通して出る力ならぬ、身から出たサザビー…訳が分かりませんね。

・「〜〜ザ・不死身〜〜」
ギャグマンガ日和シリーズに登場するキャラの一人、サイアークの異名の事。四天王というと、マジェコンヌ四天王も原作・OP共にジャッジがやられた際にソードマスターヤマトのネタを入れてましたね。

・「〜〜強い女神〜〜コンパイルハートの勝手〜〜」
ポケモンシリーズに登場するキャラの一人、カリンの代名詞的な台詞のパロディ。コンパイルハートさんは女神の設定上の強さをどの程度詳細に決めてるんでしょうね。守護女神組は負けるのが板に付いてますが。

・「〜〜貴女はクロちゃん?」
トリコに登場するキャラの一人、ココの台詞の一つのパロディ。クロワールの返しにもある通り、誤植として有名な台詞ですね。…何気に二つ上のネタと、誤植的な意味で天丼ネタにもなったな、と思います。
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