超次元ゲイムネプテューヌ Origins Transition 作:シモツキ
切っ掛けは、いつものネプテューヌの思い付き。…いや、いつものっていう程ネプテューヌの思い付きでどうのこうのやってるイメージがないのかもしれないけど、実際にはそこそこあったりする。あのプラネテューヌの大博覧会だって、元々はネプテューヌの思い付きから始まった訳だし。まあ、勿論そのレベルの思い付きはそうそうないにしても、普段はネプテューヌの思い付きで遊びに誘われたり、逆に遊んでる最中に思い付きの提案を受けたり…って事が、ちょこちょこある。
今日もまた、そんな感じ。いつものように思い付きに付き合って、でもなんだかんだ楽しくて…そうなると、思っていた。まさか、あんな事になるだなんて…思いも、しなかった。
「はい、という訳でリクエスト企画をやっていくよ〜」
『なんで開口一番それ言うの!?』
いきなりぶっちゃけたネプテューヌに、全員で突っ込む。ちょ、ちょっとぉ!?私の最初の地の文、モノローグが速攻で否定されちゃったじゃん!リクエストを元に物語を構築していくのが作品なんだから、初手でそれ言ったら即台無しじゃん!
「あ、ごめんね皆。今の言い方じゃ、配信者感あるもんね…」
「そこではないよ!?そんな重箱の隅は誰もつついてないと思うよ!?」
「ならなんて突っ込んだのさ!?」
「なんで分からないのよ!?イリゼが地の文でそこに触れてるじゃない!」
「…ノワールってさ、ちょいちょいわたしに突っ込む時メタ発言するよね…」
ボケを重ねるネプテューヌへ、私とノワールが続けて突っ込みを入れる。…でも、確かに言われてみると、ノワールは突っ込みつつもメタ発言しちゃってるものだから、それがまた別のボケになってる事が、時々ある気がする…。
「まあ、ネプテューヌの突飛な発言は今に始まった事でもないんだし、この辺りで良しとしましょ?」
「そうね。いちいち付き合っていたらいつまで経っても話が進まないなんて、もう分かりきってる事だもの」
「して、今回は何をやりたいんですの?」
突っ込まずにはいられない私達とは対照的に、セイツ達はもう平常運転。さっきは皆も突っ込んでたのに…とは思うけど、突っ込んでてもキリがない…というのもまた事実。だから私とノワールは了承する事にし…ネプテューヌは、頷く。
「うん。今日は…王様ゲームをやりたいと思います!」
『王様ゲーム…?』
「そう!プロポーズじゃなくて、王様ゲーム!」
別に何も凄い事を言っている訳じゃないのに、大きく胸を張るネプテューヌ。何をやりたいか聞いた私達は、取り敢えず顔を見合わせる。
勿論王様ゲームは知っている。それについて訊き返した訳じゃない。ただ私は、私達は、どうしても気になる事があって…それを、言う。
『…王様というか、女神様なんですけど?』
「ですよねー」
そう。私は女神。ここ、プラネタワーのリビングに当たる部屋にいるのは全員女神。それも私含め守護女神五人に、神次元の女神であるセイツという、錚々たる面子。王様ゲームって別に、本当に王を選出するゲームではないし、と言われればそれまでだけど…気になるんだから仕方がない。
「じゃあさ、女王様ゲームって事する?」
「それでも一番気になる、神から王にという部分は変わっていませんわね…。…女王様、という響きには魅力を感じないでもないですけど」
((それは確かに……))
「まあそれは分からない事もないかなぁ。…んー、それなら…神王?或いは悪魔神王?」
「どっから悪魔出てきたんだよ、しかもそれだと天使の王と悪魔の神じゃねぇか」
女王の響きにちょっと惹かれるものがあったのはともかくとして、女王にしろ神王にしろ、どうにもしっくりこない。そして一度気になってしまうと、タイトルなんて何でもいいでしょ、って気持ちにもなれなくなる。
という事で、何が良いか話す事十数分。結構皆マジになって考えた末…これだというタイトルが、決まる。
「えー、それでは厳正なる審査の末、神姫様ゲームとなりましたー!」
発表をしたネプテューヌの言葉に、私達はノリで拍手。結局シンプルな名前になったけど…うん、まあ、良いよね。
「よーしじゃあ早速始めよー!神姫さん神姫さんおいで下さい…」
『それ違うゲームですけど!?』
いきなり一人で全然違う事をやり始めたネプテューヌに、再び私達は全員で突っ込む。厳密にはゲームっていうかおまじないの一種だけど、まあそこは気にしないでほしいかな。
「こほん。とにかく始めようよ〜。王様ゲーム…もとい、神姫様ゲームやりたいのに、さっきからずっと会話してるばっかりだしさ〜」
「そうなってる理由の多くは誰かさんがふざけるからなんだけどね」
「こら!何ふざけてるのさ誰かさん!」
「…もう突っ込まないわよ?」
本当に早くやりたいのか、普通にボケたいだけなんじゃないのか。そう思わざるを得ないネプテューヌの態度に、ノワールは半眼を向ける。けどどうやら早くやりたいのは嘘じゃなかったのか、それからのネプテューヌは大人しくなり…ブランが、ちょこんと小さく手を挙げる。
「やるなら、神姫様を決める為の割り箸は必要じゃない?」
「っと、そうだった。割り箸は……」
「…あったっけ?私がここに住んでた頃は、なかった気がするんだけど…」
「そっか、じゃあちょっと探してくるね!」
言うが早いか、ネプテューヌは割り箸を探しにすっ飛んでいく。それを私達は、見送る形となり…ただ待つのもアレだねって事で、ざっくりとルールを決める事にする。神姫…いや、王様ゲームのルールなんて、基本決まっていない、決めなくてもいいようなものではあるけど、だからって決めちゃいけないものでもないし、ゲームの途中でいざこざが起きないようにする為には、予め最低限のルール決めをしておくのが無難というもの。
「まず基本的な流れとしては、割り箸で作ったくじを引いて、王様…今回の場合は神姫様を決める。で、神姫は命令の内容と、それを誰にしてもらうかを番号で言って、その番号に該当する割り箸を引いた人がそれを実行する…で、いいかな?」
「いい筈よ。で、ルール…というか、遊びにおける常識の範疇だけど、本気で嫌がる事はしない、させないは鉄則よね」
「確かにそうね。それをこのゲームに組み込むとしたら、嫌な場合はちゃんと言う、言われた場合は食い下がらずに別の命令に変える…ってところかしら。…あ、でもその場合、断られる前提で意図的に無理難題を命令して、それに対する拒否で命令した番号の相手が誰か判明させる…って手が使えちゃうわよね。例えば一番に○○…って無理な命令をして拒否を引き出せば、一番が誰かはっきりした状態で改めて命令が出来ちゃう訳だし」
「ノワールの言う通りですわね…まあそこは、そういう姑息な手は使わない、って事にすれば良いのではないかしら。遊びなのですから、後腐れなく楽しくやりたい…それは全員が思っている事でしょう?」
「同感よ。他だと…あ、神姫が指定した番号の相手に何かする、或いはしてもらうという事は有りにする?わたし的には、取り敢えず有りにしてやってみて、不都合があれば無しにする…ってすれば良いと思うわ」
「…ネプテューヌがいなくなったら、途端に話がスムーズに進むようになったね……」
『…はは……』
私の確認から始まり、セイツ、ノワール、ベール、ブランと次々意見が上がっていく。それは何とも、しっかりとしたルール決めで……逆に考えると、ネプテューヌの影響力は凄過ぎる…なんで一人でああも空気を変えられるの…。…まぁ、ルール決めっていうふざける訳にはいかないパートだったから、っていうのもあるんだろうけど…。
とまあ、五人で話す事数分。元々単純なゲームって事もあって、数分の内に概ねルールは定まり…こんなものかと決まったところで、丁度良くネプテューヌが戻ってきた。
「お待たせ〜!割り箸とウィードくん確保してきたよー!」
『なんで!?』
そして戻ってくるや否や、再びボケの雰囲気が展開された。最早これは、うずめとくろめのシェアリングフィールドならぬ、ネプテューヌによるボケまくりフィールドか何かなんじゃないかな…。
なんてこれまた私達が突っ込む中、本当にネプテューヌとやってきたウィード君は居心地が悪そうに頬を掻く。
「なんかその…すまん」
「あぁいや、こっちこそごめんね。ウィード君は、これから何をするか聞いてる?」
「王様ゲームだろ?名前はちょっと違うらしいけど」
思わず突っ込んだ私達だけど、別にウィード君が悪い訳ではないし、参加してほしくない訳でもない。だからネプテューヌとウィード君、二人にこっちで決めたルールを説明し、割り箸に神姫のマークと番号をそれぞれ書いて…準備は、完了。
「…あ、そういえばウィードが参加するってなると、神姫様ゲームって名前も適切じゃなくなるわね。…名前の再考は……」
「いやもういいでしょセイツ…言い出しっぺなんだから、割り箸を持つ役はネプテューヌがやりなさいよね」
「えっ!?い、いいんですか!?」
「いや喜ぶ事でもないでしょうに…」
流れで振ったノワールに謎の反応を見せるネプテューヌへ対し、ブランが向ける半眼。それを軽くいなした(?)ネプテューヌは割り箸のマークをした方を纏めて持ち、私達の方へと差し出す。
「…一応言っておくけど、強く握り締めて割り箸を引かせない…ってボケは止めてね?私も良い加減、早くやりたいし」
「いやいやイリゼ、流石のネプテューヌもこの期に及んでまだふざけるという事はしないでしょう。それはもう、
「うっ…や、やだなぁ。そんな事する訳ないじゃーん…」
『…………』
今の反応には、いよいよ本当に誰も突っ込まない。そういえば、久し振りに
誰からともなく、差し出された割り箸の内一本を指で摘む。そして全員が選んだところで、顔を見合わせ…言う。
『神姫様だーれだっ!』
掛け声と共に、割り箸を引き抜く。皆に見えないようにしつつ、自分の割り箸に書かれているものを確認する。確認の間、数秒の沈黙が訪れ…次に聞こえたのは、小さな笑い声。
「ふふ、最初の神姫はわたくしですわね。やはりこの名に相応しいのはわたくしという事かしら」
「相応しいも何も、さっきこのゲームの為だけに取り敢えず私達で決めただけの名前だけどね。で、命令は?」
「そうですわねぇ…ならばまずは一回目という事で軽く、一番に肩でも揉んでもらうとしますわ」
少考の後、ベールが口にした命令。それは決して難しかったり辛かったりする訳じゃない、だけど同じ女神である私達からすればさせられるのは程々に恥ずかしく、側から見れば「肩揉みを命令した」という部分含めて軽く笑えて、更には暫定的なルールとして決めた「命令内容に神姫を含める」へのテストにもなるという、一回目の命令としては理想的とも言える内容。その事に私は心の中で賛辞を送り、さて一番は誰かな…と軽く見回す。勿論一番は私じゃない。
一体誰がこの命令を受け、実行するのか。好奇心にも似た感情と共に、私も皆も見回し…一番の割り箸を引いた人物が、ゆっくりと手を上げる。
「…えー、っと…はい。俺です…」
『あ……』
「あらあら、これは……」
予想外だ、というようにベールは軽く肩を竦める。…そう。私達は失念していた。ウィード君の参加は即ち、女子のみから男女混合のゲームになるのだという事を。スキンシップの発生する命令は、こうなる可能性がある事を。
「ど、どうする?ベールもウィードくんも…その、色んな意味で大丈夫?」
「まぁ…わたくしは問題ありませんわ。自分が招いた状況ですし、肩揉み一つでドギマギする程初心でもありませんし…何よりあいちゃんは、この位で怒ったりなどしませんもの」
「ベールがそう言うなら、俺も大丈夫…かな。…ただ出来れば、万が一の時は皆からうずめとくろめに説明を……」
マジで頼む…と手を合わせてくるウィード君に、苦笑しつつも私達は首肯。おっとこれは…となりはしたけど、両方拒否しなかった以上、これは成立する事になる。そして一回目の神姫たるベールは、その立場に相応しい椅子へと座り……
「って、どっから持ってきたのよその玉座!?そしていつ用意したのよ!?」
「…これも、ネプテューヌが?」
「い、いやこれはわたしも知らないんだけど……」
「あ、それ私。折角なら、こういうのあった方が雰囲気出るでしょ?」
「あー…そういえば皆とテニスした時にも、イリゼどこからか用意したそれに座ってたわね……」
私が軽く手を挙げて説明すると、あの時の事を知ってるセイツと、既に座ってるベール以外から「えぇ…?」って顔をされる。特に突っ込んだノワールからは訳が分からないという顔をされる。…まあ、それはともかく…懐かしいなぁ、皆とのテニス。
「こほん。ではウィードさん、宜しくお願い致しますわ」
「お、おう。…じゃあ、失礼して……」
仕切り直すようにして、ベールは玉座に座り直す。そこからゆったりと、見せ付けるように脚を組む。それから目を逸らすようにして、ウィード君はベールと玉座の背後へ回り…肩へと触れて、揉み始める。
「ぁん…っ。あ、これは…中々、良い…ですわぁ……♡」
「ちょっ、変な声出すの止めてもらいます…!?」
艶かしい声を漏らすベールに、赤面をするウィード君。ぴくっ、ぴくっとベールは身体を震わせていて…でも私達には見えている。肩揉みをされているベールは、愉快そうに笑っている事に。
「っていうか、俺肩に直接触れてるんだが、それは良かった…のか…?」
「良かったのか、と言われると……大きくてしっかりしている、殿方の手をとっても感じますわ…ふふっ……♪」
「だからそういう事言うの止めてもらえないかなぁ…!?ひぃっ、不道徳の恐怖がぁぁ……!」
そういえば確かにベールは…というかこの場だとネプテューヌ以外全員が肩出しファッションをしているから、肩揉みをする場合そのまま肌に触れる事になる。そしてその事を言及されたベールは、わざとしっとりしたような声を出し…ただ肩揉みをしているだけなのに、ウィード君は冷や汗だらだらだった。…ベールも人が悪いなぁ…女神だけど。
「はぁ…はぁ…も、もういいでしょうか……」
「えぇ、ご苦労様ですわ。悪くない腕前でしたわよ」
「それは、どうも…」
数分後、肩揉みを終えたウィード君は精神面からやたら疲労した様子だった。からかっていたベールは玉座から降りてからも楽しそうだったし、私達も見てて面白かったから、実質ウィード君の単独大負け状態だった。まぁ、うん…ほんと、お疲れ様。
「さって、それじゃあ二回目いくよ〜!はいっ、せーの!」
『神姫様だーれだ!』
割り箸をネプテューヌに返し、ネプテューヌは両手の内でそれを混ぜ、再び私達はそれぞれに引く。さっきと同じように割り箸を見て…二回目の神姫が、声を上げる。
「今回はわたしのようね。神姫…うん、良い響きだわ」
「次はブランかぁ…で、ブランはどんな命令するの?」
自分でない事を残念そうにしつつ問うネプテューヌへ、ブランは首肯。そして既に決めてあるとばかりに、薄く笑みを浮かべ…言う。
「じゃあ、六番に肩を揉んでもらおうかしら」
口にしたのは、まさかの被せ。番号こそ違うものの、内容は完全に同じ。二回目にして中々攻めたその選択に私達は少し驚き、それと共に今度はどんな展開になるか楽しみに……
「…あの、六番俺なんですけど…またやる…?」
と思っていたら、なんとまたもウィード君だった。ウィード君、肩揉み再びだった。これはブランも想定外だったらしく、ウィード君が名乗り出た瞬間目を丸くし…けれど撤回はせずに、頷く。数秒後、ウィード君も若干躊躇いながらもやると返し、二回目の命令も成立する。
「昨日も仕事で大変だったの。宜しく頼むわ」
「ブランブラン、肩揉みを命令するのは良いですけど…肩が凝る事なんてあるんですの?いつもいつでも軽いでしょう?」
「はっ倒すぞ」
明らかにわざと胸を揺らしながら言うベールへの、敵意マシマシシンプル返答。それからブランは「ったく…」と呟いた後、玉座へと座る。ちょこんと座り、続いてふわりと脚を組む。
「あ、また素肌に…えぇと……」
「その程度で動じるわたしじゃないわ。貴方も別に疚しい気持ちはないでしょう?」
「そ、そりゃそうだけど…」
二度目なおかげで落ち着いている…という事は特にないウィード君へ、ブランは静かに気にするなと返す。そして先程と同様、ウィードくんは背後に回って、後ろから肩に触れる。触れて、揉み始める。
「ん、んっ…確かに、これは…悪く、ないかも…あっ……♡」
「ほんとそういうのいいからッ、いいからぁッ!なんでそんな声出す訳!?」
「だ、だって…貴方、上手いんだ…もの…あぁっ……!」
「嘘だよなぁ!?絶対嘘だ、嘘だと言ってよブラン!」
分かり易く色っぽい声を出していたベールとは対照的に、我慢しているような…けれど堪えきれずに吐息が漏れてしまっているようなブランの声。必死に抑えようとしてる感がある分、なんだかベールの時以上にイケナイ感じがあって……ウィード君はもう大分テンパっていた。…ブランもこういう事、するんだね…。
「ふぅ…ふぅ…も、もう勘弁してくれ……」
「なんで貴方が激痛マッサージを、それもやる側じゃなくて受ける側みたいな事言うのよ…。…まあ、いいわ。本当に悪くなかったわよ」
暫くやった後にギブアップしたウィード君へ、ブランは頷き終了となる。ベールの様に分かり易く笑ってはいなかったけど、確かにちょっぴり口角が上がっていた。あぁ、楽しかった…と心の中で言っていそうな表情だった。
「何かこう、ブランの帽子が王冠に見えてきたわね…というか、それを意識してわざわざ帽子被ってから座ったでしょ」
「まぁ、否定はしないわ」
「あ、なんかそうなるとわたしも被りたいかも。ねぇねぇブラン、わたしが神姫になった時は被らせて!」
「え、嫌だけど?」
「酷い!」
セイツに指摘されたブランは帽子を取り、ネプテューヌの頼みへ淡々と返す。酷いと言いつつも、ネプテューヌは大して気にしてないみたいで…三回目の、神姫抽選ターンへ。残念ながら三度目も私は神姫の割り箸を引く事が出来ず…代わりに私の隣で、ぴっと割り箸が上げられる。
「ふふん。次の神姫はわたしよ。神姫レジストハート…良い響きだけど、なにかロボット感があるわね……」
「それはまあ、わたくし達なら全員ロボット感が出るかと…。して、セイツは何を命令するんですの?」
「そうねぇ、なら……六番、わたしの肩を揉んで頂戴」
三度目で神姫となったセイツは頬を掻いた後、私達の顔をゆっくりと見回し…不敵な笑みを浮かべて言う。なんと、被せに続いての天丼…今度は指定する番号も同じな、完全に同一の命令を神姫として下す。そして自然と、私達の視線は一方向へ…ウィード君の方へと向く。
ただまあ、三度目の正直って言葉があるし、そうでなくとも二連続で当たってしまう事はそれなりにあっても、三連続…って事はそうそうないと思う。ついつい私も皆もウィード君の方を見てしまった訳だけど、普通に考えてそんな事は……
「…よーし…やるぞー……」
……あった。三度目の正直ではなく、二度ある事は三度ある、のパターンだった。…凄い…無駄に凄い……。
「この変な引きの強さ…流石はOEで主人公の一人を担っただけはあるね、ウィードくん!これはわたしも負けてられないよ…!」
「全然嬉しくねぇ……」
「あら、ベールとブランは良くてわたしは嬉しくないって事?…それは少し、悲しいわ…」
「あ、や、そういう事ではなくて……」
「まあこんな妙な引きで肩揉みばっかりさせられる状況は、大概嬉しくないでしょうけどね」
「いや分かってんじゃねぇか…!…はぁ…ええいやってやる、やってやるさ…!」
「やってみせろよ、ウィードくん!…なーんてね」
覚悟が決まった…とかではなく、シンプルにヤケになったっぽいウィード君は、ネプテューヌのボケを受けつつセイツが玉座へ座るより先にその背後へ移る。その様子をセイツは眺め、ウィード君が持ち場(?)に付いてから、悠々と玉座の前へと行く。ゆっくりと座り、指先から太腿にかけてのラインを強調するように脚を組む。…あの椅子に座ると、何か脚を組みたくなるんだよね。
「それじゃあお願いね、ウィード。…あ、この方がやり易いわよね」
「いや、まぁ…そっすね……」
そう言って、セイツはノースリーブのロングコートを脱ぐ。…あれ、というかセイツもさっきまではそれ着てなかったような…まさか、ウィード君を弄る為に…?
けど、もしそういう事ならそれは若干空振っている。何せウィード君、もう心の方がへろへろになってるし。
(…って、あれ?これ、今からウィード君がセイツの肩を揉む…つまり、セイツに触れるんだよね?それって……)
肩揉みなんだから、触れるのは当然の事。ベールもブランもそれを分かった上で、それを用いてウィード君をからかってきた。それは多分、セイツも同じ事。でも確か、セイツって……
「…その、セイツはいいの…?」
「うん?何が?」
「何がって…セイツ、今から触れられるんだよ…?触れる側じゃなくて、触れられる側だよ…?」
「……あっ。ちょ、ちょっと待ってウィード!この命令、やっぱ無──」
「ひゃうっ…っ♡!」
気付きはすれども、時既に遅し。無し、と言いかけたセイツだったけど、その時にはもう手が肩に触れる直前で…そのままウィード君は、セイツの両の肩をしっかりと掴む。掴んで、揉み始める。
「やっ、ぁ、ひぅっ…!ま、待って…待ってぇぇ…っ!」
「…………」
「待ってって、待ってってばぁぁ…っ!む、無理っ…はぁう…っ!わたしっ、そうやって触られるっ、のっ…無理なのぉぉ……っ♡!」
「あ、あの、ちょっ…ウィード君…?命令したセイツが悪いとはいえ、事が事だから止めてくれないかな…って…(こ、これはまさか……)」
((ウィード(君・くん、さん)、心を無にしてる…!?))
先の二人とは比べ物にならない…あくまで演技だった二人とは違う、マジの反応を見せるセイツ。これは不味い、不味過ぎる。見た目も声も如何わしいというか…妹として、シンプルに見てられない…!妹じゃなくても、こんな顔真っ赤にして震えながら弱々しい懇願をする女の子の姿なんて、見てられる訳がない…っ!
…と、ストップをお願いした私だけど、ウィード君は止めない。止めないどころか、さっきから全く反応がなくて…今のウィード君は、ただ肩揉みをするだけの存在と化していた。淡々黙々とした、肩揉み職人となっていた。そして、数分後……
「…ふぅ。セイツ、この辺りで終了に……」
「う、ぅ…やらぁ…もうやだなのぉ…ぐすっ……」
「って、なんでこんな事になってんのぉおおおおぉぉぉぉッ!!?」
我に返ったウィード君が手を止めた時にはもう、ご覧の有り様だった。セイツは完全にか弱い女の子が襲われた末みたいになってるし…私達も見ていられなくて、全員赤面しつつ目を逸らしていた。
「と…取り敢えず、もう肩揉み命令はなしにしようか……」
『そ、そう(だね・ね・ですわね)……』
何事もやり過ぎはいけない。調子に乗るのもいけない。そんな当たり前の事を、全員揃って痛感する私達であった。…ほんとにもう、この流れは断ち切ろう……。
「すまん…ほんとすまん……」
「う、ううん…貴方は命令された事をその通りにやっただけだもの、気にしないで……」
「いや、それはちょっと…流石にあれは気にしないようにしても、頭の中から暫く消えそうにないっていうか……」
「わ、忘れてっ!無理ならせめて、頭の奥に追いやってぇっ!」
一応セイツが回復したところで、また割り箸を回収し次の番へ。…それはそうと、これはあれかな…あんなの見せられたんだから無茶言うなってセイツを窘めるべきか、それとも妹として、同性として、私からもウィード君にお願いするべきなのかな…。
「えー、それじゃあ気を取り直して、はいっ!」
『神姫様だーれだっ!』
ネプテューヌの掛け声でまた、私達は割り箸を引く。これまでと同じように、引いた割り箸を確認して……あっ。
「やった、今度は私だ。…ふっ、神姫…漸く私に相応しい称号を手にする事が出来たよ。ふふん」
「あ、早速玉座に座ったわねイリゼ…ここまでの流れだと、命令を言ってから座るものになってた気がするんだけど……」
「へ?…あ…い、言われてみると確かに…い、一回立った方がいい…?」
「いやまあ、別にそこはルールでもありませんし、そのままでいいと思いますけれど…こういうところもやはり、しっかりしてるようでしっかりしてないイリゼらしいですわねぇ」
「こんな事でしみじみと感じないで…!」
頬を掻きながらのノワールの指摘を受けて私がハッとする中、ベールに感慨深そうな顔をされて湧き上がる恥ずかしさ。結局「命令するという観点では、むしろ座ってから言う方がそれっぽい」という意見も出た事で、座るタイミングは各々の自由って事になったけど…だとしてもうっかりはうっかり。くぅっ、セイツに続いて私まて予想外の恥ずかしさを味わう羽目になるなんて…。
「こ、こほん。…えー、っと……よし。…では、二番、四番、六番。君達の秘密を一つ、ここで明かしてもらおうか」
咳払いをし、どんな命令をしようか私は少考。やらないと見せかけてまた肩揉み…というのも一瞬浮かんだけれど、またウィード君が当たっちゃったら楽な事にならないし、当たらなくてもそれはそれで普通に肩揉みをするだけで終わって、何か私が滑ったみたいな雰囲気になりそうだったから止めておく。そして考えた末、命令を決め…それを口にすると共に、指先へ視線を集めるような動きで脚を組む。
「おっ、女神化してる時の口調で言うなんてイリゼノリノリだねぇ。で、二番四番六番は誰かなー?」
「二番は私ね」
「四番はわたくしですわ。…四番、わたくし…これはあまり面白くないですわね…」
「六番はわたしよ。…と、いう事は……」
順に手を挙げた、ノワール、ベール、ブランの三人。それはつまり、四回目にして遂にウィード君が外れたと言う事で…ちらりと見てみれば、ウィード君は救われたような顔をしていた。
「秘密、秘密ねぇ…そんな急に言われても、すぐには思い付かないっていうか……」
「えー、何かあるでしょー?国家機密とかさ〜」
「そんなの言う訳ないでしょうが…!…じゃあ、あれよ。アルテューヌの件でネプギアと一騎討ちしてから、ユニが一層鍛錬に精を出してるから、今日は労いを兼ねてプラネテューヌで美味しいものを買ってお土産にしようと思ってる…とかでもいい?」
「へぇ、素敵じゃない。同じ妹を持つ身として、良いと思うわ。妹を思う、貴女の感情の尊さ含めてねっ!」
「では次はわたくしですわね。皆様、心して聞いて下さいまし!なんとわたくしに…遂に、妹が出来る可能性が芽生えたのですわっ!」
『へー……』
「信じてませんわね!?嘘ではありませんわよ!?ちょっと違う方との共同の妹になりそうな気もしますけれど、本当の事ですわよっ!」
『共同の妹って……』
聞いた事のない、そして恐らく今後も聞く事のないようなワードに困惑をする私達。けど両手を胸の前でぶんぶんと振り、珍しく子供の様に声を弾ませるベールがちょっと可愛かったのと、本当に期待してる感じがあった事から、否定的な事は言わないでおく事にした。…現実になると、良いね。
「それじゃあ最後はブランだね。ブランにも何か秘密を明かしてもらうよ」
「そうね…うん、丁度良いわ。前々からどこかで明かそうと思っていたけど、明かす機会がメタ的な意味でも中々なかった秘密を皆に教えるわ」
『……?』
何やら仰々しい言い方をし始めたブランは、ここに来た時点で脱いでいたコートをいつもの肩出しスタイルで着る。そして袖に手が覆われた状態で指を顎に当てて少し考えた後、部屋の一角に立て掛けてあったフローリングワイパーの本体を一言言って手に取る。そうして片手で逆さに持つと、持ち手の側を袖の内側に入れ…すっ、とヘッドの部分まで全て袖へと仕舞ってしまう。
『え、あれ!?どういう事!?』
「これだけじゃないわ。ネプテューヌ、ここにある漫画とか雑誌も少し借りるわね」
「う、うん…ってえぇ!?なんか次々と袖の中に消えていってない!?マジック!?マジックか何か!?」
「まさか。さてと、それじゃあ見てもらったし早速返すわ」
「おいマジか、さっき入れたワイパーが出てきて…いややっぱり変だよなぁ!?肘曲げた状態で袖から出てくるってどうなってんの!?そのワイパー、どう見ても腕より長いんですけど!?」
「ふっ…お分かり頂けたかしら?これが──四次元萌え袖よ」
『四次元萌え袖!?』
小さく笑みを浮かべながらブランが明かした、驚きの秘密。四次元萌え袖なる、驚愕の事実。一体どういう原理なのか、幾らでも物が入るのか、入れている場合重さはどうなのか、入れた状態で脱いだらどうなるのか…あまりに気になる事だらけだったけど、それについてブランは何も教えてくれなかった。
「しょ、衝撃の情報が明かされたわね…神次元のブラン…は、普段萌え袖になるような服着てないから出来ないのかしら…。…あ、いや、むしろ萌え袖云々でいうなら、ブランじゃなくてノワールの方が……」
「はは…えぇと、まぁ…うん…全員終わったし、次いく…?」
玉座から降り、私が言えば、皆はネプテューヌへ割り箸を差し出す。ネプテューヌは自分含め見えないようにしながら割り箸を混ぜ、五度目の抽選を行い…また新たな神姫が決まる。
「うんうん、やっと私の番ね。神姫…やっぱりこれは私にこそしっくりくるってものよ」
「なんだかんだ皆、神姫ってワード気に入ってるよね〜。っていうか、全然わたしに回ってこない…」
「邪念が邪魔をしてるんじゃない?さーてと、じゃあ私からの命令だけど…んー、ここまで挙がっていない三番と五番に命令するわ。服を取り替えてみて頂戴」
自分の番となった事で気を良くしたノワールは玉座に座り、堂々と上げて脚を組む。それから服の取り替え…つまり、服を交換してそれぞれ着てみてほしいと言う。
それは中々面白そうな命令。服はその人の印象に大きな影響を与えるものだし、それを入れ替えたら…っていうのは私も見てみたい。ただ同時に、例えばベールとブランが当たってしまったらどうするんだろうとも思った。体型が全然違う以上、ベールがブランの服を着たらかなり目のやり場に困るだろうし、ブランは…最悪喧嘩になりかねない。けどそれをノワールが思い付かないとも思えないし…そういえばノワールって服装への拘りが強い方みたいだから、そういう方面への好奇心を優先した…って事なのかな。
「三番…って事はわたしかぁ。うーん、回ってきてほしいのは命令される側じゃなくてする側だけど…まあいいや。で、わたしと服を交換するのは誰かなー!?」
「……はい…」
「おっ、ウィードくんだね!それじゃあ宜し…ウィードくんなの!?」
残念そうにしていたのも束の間、すぐにテンションを上げたネプテューヌだけど、相手となる五番が誰か分かった瞬間愕然とする。ついでに私達も「えぇ!?」…となる。理由は…言うまでもない。というか、ウィード君の被命令率高くない…?
「だ、男装…?男、装……?」
「俺女装じゃん…しかもワンピースじゃん……」
狼狽え、後退り、どんどん表情が曇っていくネプテューヌと、ただただシンプルにショックを受けるウィード君。男女間での交換という、体型以上に色々アレな展開の発生。異性がさっきまで着ていた服を着るっていう時点でちょっとストップを掛けたくなるし、全体的にダボダボで済みそうなネプテューヌはまだしも、ウィード君がネプテューヌのパーカーワンピ(或いはニーハイも…?)を着るというのは…見てられない。ある意味さっきのセイツに匹敵するレベルで、直視出来ない。
とまあ、男女間である事や、ウィード君側の事ばかり考えていた私だけど、ネプテューヌが珍しく…本当に珍しい位表情を曇らせている事に気付いて、少し驚く。確かに男装なんてそういう趣味でもなければ嬉々としてやれる事じゃないだろうけど、それにしたって落ち込みようが凄い。…と、初めはその理由が分からなかった私だけど…数秒後、気付く。思い出す。何もネプテューヌが男装をするのは、これが初めてじゃない事を。私が知る限り、過去にも一度…それも人前で、男装をしていた事を。
(そういえば、ネプテューヌって……)
どうやら守護女神の皆もそれを…とある夏の祭典の事を思い出したのか、各々顔を見合わせる。ブランはそんな事もあったなぁ、って顔で、ベールは色々思い出したのか苦笑気味で、唯一知らないセイツはぽかんとしていて…そしてノワールは、ちょっぴり顔を赤くし恥ずかしそうにしていた。…多分、私も同じような顔をしていると思う。あの時の…あの時我を失ってやってしまった奇行は、ちょっと…いやかなり恥ずかし過ぎる…!
「…えー、っと…その、二人共大丈夫……?」
さっきまでのわいわい感はどこへやら、何とも変な感じになってしまった雰囲気。ノワールの表情も、恥ずかしいという風なものから、申し訳ないというものへと代わり……五回目にして、遂に命令のチェンジが発生するのだった。それも神姫様ゲーム初めての命令チェンジは、命令された側ではなく、する側からの要望によって行われるのだった。
今回のパロディ解説
・「〜〜プロポーズじゃなくて、王様ゲーム!」
王様のプロポーズの事。王様ゲームならぬ神姫様ゲームに合わせるなら、王様ならぬ女神様のプロポーズ…そんな事になったら、その国は大騒ぎでしょうね。
・「〜〜神王?或いは悪魔神王?」
デュエル・マスターズにおける、クリーチャーの冠詞の一つ(二つ)の事。直後のブランの突っ込みにもある通り、悪魔神王だとアルカディアスとバロムですね。デス・マリッジのパターンもありますが。
・「〜〜神姫さん神姫さんおいで下さい…」
こっくりさんにおける、呼び出しのフレーズのパロディ。仮にこっくりさんをやるとしても、こんな守護女神が勢揃いの場に呼び出されたらこっくりさんもびっくりする事でしょう。
・「〜〜嘘だと言ってよブラン!」
機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争における、サブタイトルの一つのパロディ。実は作中の台詞ではなくタイトルの事…というのは有名でしょうか。前にパロネタに使った覚えもありますね。
・「やってみせろよ、ウィードくん!〜〜」
機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイに登場するキャラの一人、ガウマン・ノビルの代名詞的な台詞のパロディ。これでウィードが何とでもなる筈だ、と言ったら確実に閃光が流れていた事でしょう。
・「〜〜ちょっと違う方との共同の妹〜〜」
ROG Xbox Allyシリーズの事。ASUSのROGシリーズの一つでもある為、純粋なマイクロソフトの携帯機ではないですが…もしかしたら、本当にベールに妹が…?…と思っちゃいますね。
・「〜〜四次元萌え袖よ」
ドラえもんに登場するひみつ道具の一つ、四次元ポケットの事。何年も前から出したいと思っていたネタです。時期的に、まったく最近の探偵ときたら、を意識してるっぽく見えるかもですが、違います。