超次元ゲイムネプテューヌ Origins Transition 作:シモツキ
孤島の様な次元の、陸上と水中二方向からの調査を一行は行った。どちらのチームも、この次元についての情報はともかく、食料の確保には色々ありながらも成功し、無事に…と言えるかどうかは微妙なところと言わざるを得ない面々もいるにはいるが…合流する事が出来た。施設に残った三人も、錬金術を上手くやれた事で、首尾は上々…とまでは言わずとも、それなりに良い結果を得られたと一行は認識していた。
そうして得た食料と、施設にあったもの、それに錬金にて用意をした食材を使った夕食を経て、一行は今日はもう休もうという判断をした。女神の皆を始め、まだそれなりに体力の残っているメンバーも当然いたが、これからどれだけの間この次元に留まらなければいけないのかも、今後どんな事が起こるのかも分からない事を思えば、余裕のある内に休むというのは必要な選択。そして、休むのであれば当然の事として、イリゼ達女性陣は今…シャワーを浴びている。
「はふぅ…温かい……」
「あれ?ディールちゃんは暑いの苦手じゃなかったの?」
「お風呂の温かさは別ってもんよねー。お風呂じゃなくてシャワーだけど」
流れるシャワーの音と、シャワー室内で広がる湯気の中で、会話が飛び交う。今聞こえたのは、イリゼとディール、エストのやり取りで…その三人の雑談が交わされる中、イヴもまたエリナから声を掛けられた。
「…ねぇ、イヴ。貴女の右腕って、義手…なのよね?それを付けたままシャワーを浴びても大丈夫なの?」
「防水処理はしてあるから大丈夫よ。戦闘用でもあるから、簡単に壊れたりはしないわ」
「へぇ、それは残念ね。片腕が使えないって事なら、わたしが髪も身体も洗ってあげようと思ったのに」
仕切りの向こう側から聞こえたエリナの声に答えた直後、背後に気配を感じ、イヴは振り返る。するとそこにいた女性、その声の主はセイツで……
「…遠慮するわ」
「…ねぇ、今貴女、本気でちょっと引いてなかった…?」
イヴの返しに、セイツはほんのりとショックを受けていた。…普段の言動とは、如何に大事かを示す一幕である。普段の言動次第では、イヴは誰かに洗ってもらうのかといえば、その辺りはまた別の話となる訳だが。
「洗ってあげる、かぁ…ねぇビッキィ、洗ってもらおっか?」
「結構です。……え、あれ!?そこは普通、『洗ってあげよっか?』では!?なんで当たり前な感じで洗う事を要求してきてるんですか!?」
「そういうボケだから?」
「ある意味納得の回答ありがとうございます……」
「まあ冗談はさておき、折角だし洗ってあげよっか?今なら98%オフでやるよ?」
「安ぅ!格安ですね!支払いを求めようとしてるのは訳が分かりませんけども!」
「…二人は仲が良いですね」
『あ、もしかして嫉妬(ですか)?』
「え、今のどこに嫉妬するべき部分が?」
一方セイツ達のやり取りを切っ掛けに、ネプテューヌとビッキィは漫才の様なやり取りを展開。それを聞いていたピーシェがぼそりと呟くと、二人はにやりと笑って言い…それに対するピーシェの冷めきった返しに、二人揃って「酷い!」…と叫んでいた。
「…………」
「……?イリス、そんなところでしゃがんでどうかしたんッスか?」
「ここ、少し色が違う気がする。これは、汚れ?」
「おおぅ、イリスが床の隙間の汚れをWatch…」
当たり前だが、全員がシャワーを浴び続けている訳ではない。現にイリスはじーっと床を見つめており…その理由を聞いたアイは、自分含め他の者なら大して気にもしないであろう事に集中していたイリスの「らしさ」に苦笑をする。
そんな風に、各々のんびりとした時間を過ごす。それは意図せずこの次元に来てしまった面々もいる中、紆余曲折あったものの、一先ずここまでやってこれたという状況が生み出す安堵感あってのもの。そしてそこでまた一つ、あるやり取りが聞こえてくる。
「ね、ルナちゃん。こうしてると、あの時の事を思い出さない?」
「あの時、って…もしかして、あの特殊な空間?…での時の事?」
あの時。その言葉でルナと茜自身が思い浮かべたのは、嘗て巻き込まれた…そして今回の様に力を合わせて進み、戦っていったある経験の一幕。その時も丁度、シャワールームの様な場所があったのだ。
「ピーシェの次元でピーシェやイリゼとお風呂に入った時も、神生オデッセフィアの天然温泉も、色々あったけどどっちも楽しかったし…や、やっぱりシャワーとかお風呂とかって、仲良くなるのにぴったりな場所なのかな…?」
「あはは、そーかもね。女の子同士ではあるけど、やっぱりお互いに全部曝け出す場所な訳だし」
「…うん、なら…ネプテューヌ、ビッキィ、私も洗いっこに賛成だよ!っていうか、皆で洗いっこしない?こうしてまた会えたし、エリナさんとは新しく出会えた訳だけど、私達ってそんな気軽に会える訳じゃないでしょ?」
何やら『その気』になったのか、珍しく全員に呼び掛けるルナ。それにネプテューヌは目を瞬かせるも、すぐに同意を示し、ビッキィも構わないと頷いて見せる。更にそこへ、茜やイリスも賛成と続く。
「ふふっ、わたしも賛成よ。イリゼもよね?」
「え、わ、私?…え、えーっと……」
「…さて、ウチはこの辺で……」
「どうしたのよアイ。こういう時って貴女、いつもは乗り気じゃない」
「…じゃ、じゃあ洗いっこしよっか、エスちゃん……」
「あ、うん、まぁ別にいいけど…それじゃあまずは頭から……」
「待って、二人共。折角だし、誰と洗いっこするかはランダムな方法で……」
『……!』
「ああっ、ここぞとばかりにアイとビッキィがぱーとちょき出してる…!それで決めようとすると、人数的に時間がかかり過ぎるんじゃないかな……」
どうも乗り気ではなかった…というより、身の危険を感じていた様子のイリゼ、アイ、ディールだったが、賛成の輪が広がる雰囲気に流されはっきりと拒否するタイミングを失う。そして対照的にやる気満々なルナは、どんどんと話を進めていく、が……
「……あ。ねぇルナ、一ついい?」
「ほぇ?エリナさん、どうかした?」
「今思ったんだけど…人数的に、一人余らないかしら?」
「あっ……」
エリナからの指摘に、ルナははっとした顔になる。そういえば…とイリゼ達も各々見回す。
「ど、どうしよう…どこか一組は、三人で洗いっことかにする…?」
「んー…ま、ここは言い出しっぺとして、ルナはまた今度って事にするとか?」
「えぇっ、そんなぁ!」
「…ルナ、発案者として皆を見守るッス。これが出来るのは、(多分)ルナだけッスよ」
「見守る必要ってあるかな…!?洗いっこだよ…?」
頬に指を当てつつ言ったエストと、それに続いたアイの言葉に、ルナはショックを受ける。それからルナは味方を求めて皆を見るが、イリゼ達は苦笑し肩を竦めるばかり。…と、いう訳でルナは見守り係となり……親睦を深める為(?)の洗いっこが始まった。
「んふふ〜、宜しくねすーちゃん」
「宜しく、茜。洗いっこ、楽しみ」
「だね〜。すーちゃんは、洗いっこした事ある?」
「ある。ロムとラム、よくイリスの事を洗ってくれる」
わしゃわしゃと、シャンプーを泡立てイリスの髪を茜が洗う。茜もよく知る(無論別次元ではあるが)双子の女神が洗ってくれるのだと聞くと、茜は柔らかな表情で笑い…それからまた一つ、茜は言う。
「ね、イリスちゃん。私の髪とイリスちゃんの髪、濃さは違うけど同じ赤色で一緒だね」
「そういえば、そう。…赤…アイの女神の姿も、真っ赤な髪だった。赤はいい、温かそう」
「あー、赤といえば炎だもんね。林檎とかトマトとか、敵陣営のエースパイロットとかも赤だけど」
「…でも、温かいブランは白と茶色。フィナンシェも茶色で、ミナは水色。…茜は、どんな色が好き?」
「赤い色が好き…なんてね。まあ、赤も好きだけど…やっぱり黒かな〜。はい、流すよ〜」
一旦止めていたシャワーを出し、茜はイリスの髪からシャワーを流す。それから場所を入れ替わり…今度はイリスが茜の髪を洗い始める。
「茜は、影といつも洗いっこ、する?」
「へっ?い、いやー流石にそれは……って、すーちゃんそれはどういう意味で言ったのかな…?」
「茜と影は仲良し。だから訊いた。…違った?」
「あー…あはは、そうだよねぇ…。…えー君とは仲良しだけど、流石にいつも洗いっこしてたりはしないよ。ゆーちゃん…私達の子供とは、私がよく一緒に入って洗ってあげてるけどね」
「そう。なら、今日はイリスが沢山洗ってあげる」
「ふふっ、ありがとねイリスちゃん。それなら、たっぷり洗ってもら…わひゃぁっ!?ちょ、い、イリスちゃん!?身体はいい、洗うのは髪だけでいいって話になってたよね…!?」
「あ……ごめんなさい。ロムとラムは、いつも身体も洗ってくれるから、間違えた…」
声こそ平坦ながら、無垢な気持ちを感じるイリスの言葉に、茜は微笑み身を任せ…た直後、髪を洗っていた手でそのまま身体も洗おうとした事で、驚きながら制止を掛ける。思わず変な声を出してしまった事で茜が若干顔を赤くする一方、イリスはこれまた無表情のまま、ぺこんと頭を下げての謝罪をしており…そんなイリスに、今度は苦笑してしまう茜であった。
「では、宜しくお願いします」
「えぇ。…というか、別にそんな固い口調じゃなくても大丈夫よ?」
「そう?…なら、改めて…宜しく、エリナちゃん」
「任せて。…って言っても、ただ髪を洗うだけだけど……」
自分で言った返しに軽く肩を竦めた後、エリナはシャンプーを手で泡立てる。程良く泡立ったところでビッキィの髪に触れ、爪を立てないようにしながら洗う。
「んん…エリナちゃん、洗うの上手だね。…多分」
「多分…?」
「いや、よく考えたら上手いかどうかの判別も自分には出来ないっていうか、思い返せば普段は何も考えず洗ってた気がするというか……」
「あぁ…私もそんなに上手いつもりはないけど、ビッキィはもう少し丁寧に…というか、優しく洗った方が良いと思うわ。近くで見て分かったけど、結構毛先傷んでるし」
「…毛先が傷んでるなら、切ればいいのでは…?」
さも当然の事のように返すビッキィへ、エリナは思わず沈黙。身嗜みや肌、髪のケア等に無頓着な知人は勿論エリナにもいる。しかしそれでもやはり、こうもあっさりと、むしろ「何故そんな事を気にするの?」とばかりの声音で切ればいいのではと返してくるビッキィには閉口してしまったエリナであり…割と世話焼きな一面のある彼女の手付きは、自然と丁寧な、入念なものとなっていた。
「さ、終わったわ。…ところで訊きたいんだけど…貴女、イエローハート様とは……」
「従者だよ。ピーシェ様はわたしの上司であり、尊敬する人であり、いつでも力になりたい相手だから」
「だと思ったわ。じゃあ、もう一つ。パープルハート様とも仲が良い…のよね…?」
「ねぷ姉さん?ねぷ姉さんは…うーん、なんと言えばいいのか分からない…けど、出会えて良かったと思ってる…かな」
「…うん、分かる。分かるわ…敬愛出来る存在がいるのって、いいわよね…その方の為になれる事があるのって、それだけで幸せよね……」
「ふっ…分かる。ピーシェ様もネプ姉さんも絶対そんな事ないって言うだろうけど…女神様ってやっぱり、わたし達とは違う『何か』があるよね……」
「…ビッキィ、今分かったわ。私、貴女とは仲良くなれるって」
「同感。…あ、それはそうと凄くさっぱりしたかも。…よ、よし……!」
「それは良かった…けど、私は普通に洗っただけなんだから、そんな意気込まなくても大丈夫よ…?というかむしろ、気合い入れて髪を洗われるのは怖いんだけど……」
前後入れ替わったところで四股立ちの様な体勢を取るビッキィに、一体どんな洗い方をするつもりなのかとエリナは狼狽。ただそれはそれとして、『女神への深い敬意』という共通項を持つ二人は、この時確かに距離が縮まっていた。…因みにビッキィの洗い方は確かに多少雑だったが、普通だった。これには拍子抜けのエリナである。
「お客さーん、お痒いところはありませんか〜?なーんてね」
「えー、痛くも痒くもないです〜」
「今の問いにその回答をする人を初めて見たわ…いや、貴女もわたしも女神だけど。っていうかネプテューヌもネプギアも、ちょっと髪が外ハネしてるわよね」
「ふっ、そこは自分とネプギアのチャームポイントだからね!……多分」
そんな二人から敬意を持たれる女神の一人、ネプテューヌはセイツに髪を洗われている真っ最中。指摘の通り、シャワーで濡れて洗われている最中でも尚ネプテューヌの髪は外側に跳ねており、普段付けているカチューシャを外し完全なストレートの髪型となっている今のセイツとは対照的。
「あっ、セイツ!普段殆ど触れられる事のない、いっそ忘れられてるんじゃないかって位注目される事のないセイツのカチューシャに珍しく触れられてるよ!」
「言わなくてもいいのよそんな事は!しかも、カチューシャ付けてない時に触れられるって……」
「まあ、そんなものだよ。自分の髪飾りも似たようなものだし。にしてもセイツって、やっぱりイリゼの姉なだけあって突っ込みへのパワーが強いよね。割とボケる事も多い辺りはイリゼと違うけど」
「そういうネプテューヌは…って、考えてみたら貴女の妹には会った事がなかったわね。けど、貴女の妹もネプギアでしょ?」
「勿論!けど自分には弟もいるからねー。ネプギアは可愛くてしっかり者だし、一誠は真っ直ぐに育ってくれたし、二人は自分の誇りなんだ」
「…そういう事、嬉しそうに語る辺りはやっぱり貴女も『ネプテューヌ』よね」
「…そんな感じの事、前にイリゼにも言われたなぁ…信次元では色んな『ネプテューヌ』に会ったけど、やっぱそう言われても自分としてはあんまり実感がないんだよね」
妹の話から姉としての事、そして『ネプテューヌ』へと話は移り変わっていく。実感がないと言うネプテューヌは肩を竦め、その返しにセイツは一瞬口籠もる……が、次にネプテューヌが見せたのは笑み。
「でもまあ、それはそれでいっか、って最近は思うんだ。自分は別に、ネプテューヌらしくなりたくない…って訳じゃないし、ネプテューヌらしいからって何か変えようと思う訳でもないからね。ネプギアや一誠が誇りなのも、そこはらしさ関係なく自分の気持ちだしさ」
「…そうね、それで良いと思うわ。わたしもイリゼの姉っぽいって言われる時もあれば、その逆の評価をされる事もあるし、イリゼと姉妹だって感じてもらえたら嬉しいけど…誰にどう思われようと、わたしはセイツであり、レジストハートであり…わたしの在り方は、わたしが決めるんだもの」
「おっ、今のちょっと格好良いね!さっすが女神の本場で女神やってる女神!」
「そこはもうちょっと言葉選びどうにかならなかったの…?…こほん。ネプテューヌこそ格好良いわよ?言葉がじゃなくて、落ち着いた…だけど芯のある思いが、そこにある気持ちの熱がねっ!」
「うーん、その感性は相変わらず分からないなぁ…。…ところでセイツ、前の事があるからちょっと…いやかなり躊躇っちゃうんだけど…頭、洗っても大丈夫?」
「あぁ、勿論大丈夫よ。…が、頑張って我慢するから……」
「そんな頑張らなきゃいけない事じゃないと思うんだけどなー!?」
交代し、今度は自分が洗う番となったところでネプテューヌが問うと、セイツは冷静に返した…かと思えば、胸の前できゅっと両手を握り、ぷるぷると肩を震わせる。相変わらず自分は積極的に絡みにいく割に、触れられるととにかく弱いセイツの様子にネプテューヌも思わず突っ込み…しかしそれもセイツの『在り方』なのだろうと思い、ネプテューヌはまた一つ、小さく肩を竦めた。…頑張っても尚、やっぱりセイツがよわよわモードになってしまった事は、言うまでもない。
「それじゃ、洗っていくわよー」
「いやぁ、エストに洗ってもらうなんて感慨深いッスねぇ」
「そう?あー、そういえばアイって……」
「ご存知ブランちゃんの親友ッス。まあそれはそうと、ぱぱっとやってくれればいいッスよ」
感慨深いと言ったのも束の間、適当でも良さげな様子で返すアイ。されど彼女の性格をある程度理解しているからか、エストははいはい、と軽く流して、あまり手間はかけず…しかししっかりと毛根から毛先まで洗っていく。
「まあそれはいいとして…さっきは随分と動揺していたみたいじゃない。水着に着替えた時も、なんなら前に天然の温泉に入った時もちょっと変な瞬間があったし…ひょっとして、ルナの事が苦手なの?」
「うへぇ〜、鋭いッスねぇエストは。けど別に、苦手って訳じゃないッスよ。ただ…ちょーっとばかり、ルナはテクニシャンなんッスよねぇ…」
「…テクニシャン?」
「そう…あの日ウチはルナに手籠めにされかけたんッス。ついでにイリゼも茜に手籠めにされかけて、なんだかんだ一番凄かったのはディールだったんスよ」
「いや何の話!?最初から最後まで全部意味が分からないんだけど!?」
「分からない?まさか、具体的に何があったか訊きたいって事ッスか?…うぅ、あの時の事を細かく話すなんて、それだけでも恥ずかしいッスけど…どうしても知りたいと言うなら……」
「ちょっ、違う違う!なんでそうなるのよ!?っていうか分かってるわよね、分かった上でわざとふざけてるわよねぇ!?……正直ちょっと気にはなるけど…!」
「はっはっは、エストはほんとに鋭いッスねぇ。…因みに気になるっていうのは、具体的な内容についてッスか?それとも…自分の知らない、ディールの経験についてッスか?」
ちらり、と微かにエストの方を振り向き問うアイへ、エストは「鋭いのはそっちでしょ…」と内心呟く。…実のところ、どちらかと言われたらどちらもだったりするのだが…そのまま答えるのは面白くないという思いから、澄ました顔を作って肩を竦める。
「さてね。でもまあ、わたしは別次元とか別世界の話をディーちゃんにした事があるし…あっ、別次元といえば、前にある次元で貴女とは違う『アイ』に会った事があったわね。そのアイもアイドルやってて、社交的だったわ」
「え、そうなんッスか?いやまさか、ブランちゃん達みたいにウチにも別次元の存在がいるとは…。んっ…ここからはウチが洗うッスから、もう少しその話をしてくれないッスか?…というかウチ、やっぱりそっち方面に縁があるんッスかねぇ。正直イリゼや茜とはまた何かやりたいッスし」
「勿論いいわよ。けど、貴女と違って蹴り主体じゃなくて、声で攻撃したりサポートしたりしてたわね」
「声で?ははぁ、そこは全然違うッスねぇ。まぁ、別次元の存在って事なら、多少違っていてもおかしくはない──」
「後、ベールおねーさんに妹的な存在として溺愛されてたわね。本人も嬉しそうだったわよ」
「はぁぁっ!?そ、そんな馬鹿な…ウチが、別次元ではベールの妹的な存在って…そんなの何かの間違い……」
「あ、因みにその人の苗字は篠宮じゃなかったわね。名前は
「じゃあ名前が同じなだけの別人じゃないッスか!なんだったんスかここまでの会話!」
「なにって…わたしは最初から、貴女とは違うアイとしか言ってないわよ?」
びっくりして思わず手を止めてしまうアイに対し、「別に『別次元の貴女』とは言っていない」…とばかりににやりと笑って見せるエスト。先程翻弄された分を返せた事で、エストはすっきりし…しかしアイもアイで切り替えが早いのか、割とすぐに気を取り直していた。…普段は軽い調子で人の事を揶揄う場面も多いながら、その実鋭く冷静な思考を併せ持つこの二人は、中々どうして親和性が高いのかもしれない。
「…イリゼさんとですか……」
「いやそんな、分かり易く嫌そうな顔しないでよ……」
「何を言ってるんですかイリゼさん。私は嫌そうなんじゃなくて、嫌なんですよ?」
「より悪い方への訂正どうも…!」
全体的に明るい、或いは前向きなやり取りが多い洗いっこだが、どうもここだけは別。やれやれ、と首を横に振るピーシェにイリゼは不満の突っ込みを返し…つつも、髪を洗うべくシャンプーを泡立てる。その律儀さにピーシェは軽く肩を竦め、嫌と言いはしたものの抵抗する事なくイリゼの洗いを受け入れる。
「…前から思ってたけど、ピーシェってほんと私にだけ当たりキツい時あるよね…そんなに気に食わない?」
「気に食わないも何も、前に言ったじゃないですか。心の底から大嫌いだって」
「え、あれはそういう棘のあるタイプの冗談だったんじゃないの…?」
「割と本心ですよ?というか、だったらイリゼさんは私の事をどう思ってるんですか?」
「気に食わない」
「…貴女こそ、私にはあんまり遠慮ないですよね…あぁいや、そういえばアイさんにも遠慮がなかったか…」
「あ、勘違いしないでね?別にエディンの女神が嫌いとか、そういう事じゃないから。…ただまぁ…そうだね、遠慮する気にならないって意味では確かにどっちもそうだよ。そう思う理由はまたそれぞれ違うけども」
髪を傷めないよう優しく洗う手とは対照的な、優しさのない会話。お互い声を荒げてこそいないものの、どう見ても仲良く話そうという雰囲気ではなく…そんなやり取り、そんな雰囲気のままイリゼは洗い終えると、ピーシェと交代。なんだかんだどちらも律儀な性格だからか、洗う側になったピーシェもまた、イリゼの髪を洗うべくシャンプーを泡立てた手の動きは丁寧。
「…まあ、いいじゃないですか。それで誰かに迷惑が掛かる訳でも、それで戦争が起こる訳でもなし。それとも、好きでもない相手と形だけ仲良くするのがお望みで?」
「けど、私達がギスギスしていたら、それを気にする人はいるでしょ?ルナとか、ビッキィとか…後は、イリスちゃんなんかも。女神としてそれは、無視していい事じゃない…違う?」
「…そういうところですよ。意図的ではないんでしょうけど、いつも貴女は女神の、上に立つ側の視点でいる。実際女神なんですから間違いではない…いやむしろ、正しいんでしょうけども…『女神として』の視点であって、『友達』の視点じゃない貴女と、仲良くする気なんてありません。だって私は、そもそも女神自体が、そんなに好きじゃないですから」
「好きじゃないって、それは……。…そういうところ、っていうのはこっちの台詞だよ。そういう、変に冷めてて侮蔑していて…その癖ちゃんと女神してるのが、気に食わない。もっと前向きに女神で在らんとすれば、もっと多くの人を、皆を幸せに出来る筈なのに」
「知ったような事を…。なら──いえ、止めましょう。これ以上は、ここで話すべき事じゃない。これ以上話すと、それこそこの場全体の空気を悪くしてしまいそうですからね」
「…そうだね、軽率だった。ありがとう、ピーシェ。それと…もう一つ勘違いしてほしくないから言っておくけど、私はピーシェの事を物凄く気に食わないけど…別に、嫌いじゃないから」
「…それはどうも。であれば私からも二つ。まず一つ、そもそもの話ですが…イリゼさんの扱いの悪さは、シンプルにイリゼさんの反応が面白いからだと思いますよ。要は、天性の弄られ体質って訳です」
「んなッ…た、確かにピーシェ以外からも扱い悪い時はあるけど、そんな言い方って……」
「それからもう一つ。…私は大嫌いですが…私は前回、貴女からの招待に応じた。拒否する事も、ビッキィだけを送る事も出来た。その上で、信次元へ、神生オデッセフィアへ訪れた。…つまり、そういう事ですよ」
手を止める事なく、さらりと流すようにピーシェがイリゼへ伝えた言葉。それに、それが意味するところに、イリゼは目を丸くし…微かに、笑みを浮かべる。軟着陸…と呼ぶには、あまりに難のある会話の終わり。そこから二人は特に何か話す事もなく、ピーシェもイリゼを洗い終わる。しかしそれでも、二人の表情は…決して悪いものではなかった。
「…良いなぁ……」
それぞれの形で、それぞれのやり取りと共に髪を洗うイリゼ達。そして唯一、誰とも洗い合う事なくそれを眺める一人の姿。言うまでもなくそれは、奇数人である事と、言い出しっぺを理由に見守りという謎の役目となったルナ。
そんなルナが漏らした呟き。しかしそれは、羨むものではない。そこにあるのは、羨ましいという感情ではなく──感嘆。
(良い、凄く良い…茜とイリスのほんわかなやり取りも、ビッキィとエリナさんの同志的トークも、ネプテューヌとセイツさんの真っ直ぐな会話も、アイとエストの軽快なからかい合いも、イリゼとピーシェの二人ならではの距離感も…全部良い、例外なく良い、本当に良い…!…うん、やっぱり可愛い子や美人さん同士のやり取りって、内容問わず心が洗われるよね。良いと良いの組み合わせなんだから更に良くなるのは当然だけど、これはもう良い+良いじゃなくて良い×良いっていうか良いの二乗みたいな感じで、なんかもう普通なら1+1=2か良くて5〜10なのが、皆の場合は1+1=200で10倍…じゃなくて100倍間違いなしだよ!つまり、即ち、これは……尊い・オブ・尊い……!)
ぎゅぅぅ、と胸の前で握られる拳。噛み締めるように震えるルナの身体。感無量たる思いの中、ルナは自分が見守り役…つまり全員を眺められるポジションとなれた事を心から感謝し……もう一組へと、視線を向ける。
「じゃあ、わたしから洗いますね。…まあ実を言うと、既にわたしは自分で洗っちゃってるんだけど…」
「奇遇ね、私もよ。…しかしまあ、洗いっことは…また変な事になったものね」
「そうですね…こういう雰囲気は嫌いじゃないですけど、ちょっと翻弄されるというか…」
「同感よ。…嫌いじゃないって事も、含めて」
自分でもう洗っている状況ながら、イヴはディールからの洗いを受け入れる。困ったような、しかし柔らかなディールの言葉に、イヴは肩を竦めて返し…シャワーで流すと、二人は交代。今度はイヴが洗い、ディールは洗い終わるのを待つ。
「けど、相手がイヴさんで安心しました。イヴさんだったら、変な事をされる心配もないですし…前みたいな事にも、ならなそうですし」
「前みたいな事?そういえばさっきも、動揺気味にエストを誘っていたわね…何かあったの?」
「ええ、まぁ…。…その、出来れば深くは訊かないでいてもらえると……」
「その方が良さそうね…さてと、流すから目を瞑っていてもらえる?」
遠い目(向き的にイヴには見えないが)と、その幼い見た目には似合わない哀愁を背中から漂わせながら訊かないでほしいと言うディールに、イヴは本当に何があったのか、と内心気になりつつもディールを気遣い訊かない事にする。それからシャワーヘッドを手に取り、ディールの髪からシャンプーを落としていく。そうしてしっかりと落としきったイヴは、シャワーを止めようとしたが……そこで、予想外の事が起こる。
「ん、ありがとうございま…ひゃんっ!?」
「え…!?ディール、どうかし…きゃっ!」
不意に、予兆もなくお湯から水に変わったシャワー。それが身体に掛かったディールは驚き、その反応にイヴも驚く。そして二人とも慌てて動いた結果、元々滑り易い上、今はまだ流したばかりのシャンプーが残っている状態だったシャワールームの床で揃って足を滑らせてしまい、ばしゃんばたんと大きな音が部屋内に響く。
『な、何事!?』
その音を耳にして、イリゼ達は集まってくる。何があったのか、怪我をしていないか、そんな心配の思いと共に二人のいるエリアへと集まり、声を掛けようとした…が……
「あぅぅ…急になに……?(びくびく)」
「痛た…ディール、大丈──」
イリゼ達が駆け込んできた時、そこでは二人が、ディールとイヴが折り重なるように倒れていた。イヴは仰向けに倒れ、その上からディールがうつ伏せになるようにして重なっていた。
片や仄かな凹凸、女性としての膨らみやくびれを伺わせつつも、まだ幼さの残る身体付きをした女神の少女。片や目を見張る程のものは持たない、しかし確かなメリハリを、たおやかな曲線のある肢体を持つ人間の少女。柔らかそうな飴色の髪と、艶のある黒い髪は濡れてしっとりとした質感を生み出し、同じく濡れた白い肌は水滴が滴る事で艶やかさが大幅に増大。先程まで湯を浴びていたからか、二人の頬はほんのりと赤く、そんな二人は折り重なり、仰向けとうつ伏せでぴったりと肌を触れ合わせている。身体と身体が、密着している。
しかも双方慌てて手を出したのか、両手それぞれが互いにぎゅっと握り合った状態。脚もディールはイヴの、イヴはディールの股に入れているような格好。加えて寸前のところで止まったようではあるものの、二人の瑞々しい唇同士もまた後一歩で触れてしまう、鼻先同士は今も微かに触れ合っているような体勢。あまりに魅力的で、あまりに刺激的で…だからこそ禁断の、桃色構図。
「…へっ!?あ、こ、これはっ……!」
「え、ぁ…ち、違うっ!違うわ!これは断じてそんな……」
間近に見える互いの顔に数秒困惑していたディールとイヴだが、イリゼ達の存在に、不気味な程の静寂に気付き、慌てて弁明しようとする。真っ赤な顔で、動揺しきった瞳で、そういう事ではないと言おうとし……
『…はぁぅっ……』
──されどもう、時既に遅し。そしてこれが、全くの無からディーイヴ概念、或いはイヴディー概念の生まれた瞬間であった。……因みにその後、誰もいなくなったシャワールームの一角には、微妙にどろりとした赤い液体がぼたぼた落ちていたような、いないような。
*
ご飯の後、イリゼ達はお風呂…っていうか、シャワーに行った。僕はそれを見送って、どうしようかなってぼーっと考えていたんだけど…気付けば同じように残っていた、ズェピアさん、ワイトさん、影さんが何かの話をしていた。
「ふーむ…これは何とも気になるね。いや、気になるではなく、不可解と言うべきか」
「ああ。機器の故障の可能性も考えてみたが、どうやらそうでもないようでね」
「実際に潜っていた茜達にも聞いてみたが、このデータと内容は概ね合致している。だから間違いではないんだろう」
タブレット端末を見ながら、難しい顔をしている三人。多分内容も難しい話で…でも気になった僕は、少し耳を傾けてみる。
「短距離ならともかく、俺達はかなりの距離を移動していた筈だ。実際それ相応に時間も掛かっている訳だからな。だから、こんな筈はないんだが……」
「…例えば、機器に不具合を起こす何かがあった…という事はないかな?天候や磁気の影響を受ける事はあるだろう?」
「いや、それはない…とまでは言わないにしても、現実として可能性は低いだろうね。電子機器全般に影響があったならともかく、こうもピンポイントでというのはそっちの方が余程不可解だし、何より異常があった形跡も機器からは見られないんだ」
(わー…やっぱり難しい。難しいっていうか、全然分からない……)
難し過ぎて、全然頭に入ってこない会話。何とかさっきまでの調査に関係する話だって事は分かったけど…それ以外は、本当に分からない。だから聞くのを諦めた僕は、何か飲んで来ようかなと立ち上がろうとして……そこで、ワイトさんと目が合った。
「うん?…あ、すまないね愛月くん。君を除け者にするような形になってしまって」
「あ、いや、大丈夫です!多分僕、いや絶対僕、そっちの話に入っても何も分からないから!」
「いやいや、そんな卑下をする必要はないよ。第一訳が分からなくて困っていたのは私達も同様。つまり、愛月君と同じという事さ」
「そ、そうかなぁ…同じ分からないでも、僕とズェピアさん達じゃ全然違うような……」
多分同じじゃないよ…と僕は頬を掻く。僕はズェピアさん達みたいに賢い訳じゃないけど、それでも『答えが出せない』って意味での分からないと、『そもそも話が理解出来ない』って意味での分からないとが一緒だとは思わない。…うーん…僕が落ち込まないように、気を遣ってくれてるのかなぁ……。
「しかしまあ、本当にどうしたものか…データ不足として、一旦保留にでもするか?」
「それも一理ある…が、ここは一つ、私達自身も振り返る意味を込めて、愛月君に説明をしてみないかい?」
「へ?ぼ、僕に?」
「…悪くないかもな。結論を急ぐ必要もなし、俺はそれで構わない」
「同感だよ、影くん。愛月くん、もし良ければ聞いてくれないかな?」
「え、えーっと…はい…」
そういう事ならと、僕は頷く。聞いても結局分からないって事になりそうだけど…それで三人が何かに気付けたら、無駄じゃなかったって事になるもんね。
という訳で、僕は三人がいるテーブルに移動して席に座る。置かれたタブレット端末に目をやって、説明を聞く。
「これはだね、先程までの水上及び水中調査でワイト君が観測してくれたデータだよ」
「ワイトさん…えと、ロボットのレーダーとかセンサーとかで…って事ですか?」
「そういう事だよ、愛月くん。理解が早いね」
「で、俺達が見ていた…というより気になっていたのはこれ、水深に関するデータだ」
影さんが指差したのは、マス目みたいになった背景と、そこに折れ曲がった線が表示されているデータ。水深…って事だから、多分左側にある線の端っこがスタート地点、砂浜の辺りなんだろうけど…•。
「…これ、何かおかしいんですか?僕には、普通に見えるけど……」
「はは、実は私もそうだったよ。二人に言われて気付いたけれど、私もこういう事については詳しくなくてね」
「まぁ仕方ないさ、どんな人間にも知識には限界がある。俺も大して詳しくはないしな」
「私も偶々違和感を抱けただけに過ぎないよ。…さて、話を戻すとして…おかしいのはこの辺りからだ。ここからはずっと、横一線だろう?」
「うん、そうだけど…これが、変なの…?」
首を傾げながら僕が訊けば、ズェピアさん達は揃って頷く。それからデータが横一線…水深がずっと変わっていない事がおかしいんだと教えてくれる…けど、やっぱり僕は分からない…。
「先程影君も触れていた事だけど、こうもずっと変わらないというのは変なんだ。これが小さな池や湖であれば、まだ分からなくもないのだが……」
「うーん……大きい魚、僕達が捕ってきたあの巨大なサメみたいなのが暴れて、水底が平らになっちゃった…とかは……」
「ユニークな発想だけど、流石にそれはないだろうね。もしそういう事を出来るとすれば、それはあのサメなんて比較にならない位の超巨大存在以外にあり得ない。…まぁ、そういう存在がこの次元にいないとも限らないんだけども」
「ですよね…むむ、むむむ……はぁ。…ごめんなさい、やっぱり分からないです…」
「気にするな。俺達もそれが分からなくて停滞していたんだから」
目一杯頭を捻ってみるけど、それでも全然出てこない。僕はがっくりと肩を落として…そんな僕を見て、三人は肩を竦める。
「これはやはり、一度保留にするしかないかもしれないな。まだ限られた範囲しか調べられていない以上、これがどの方角もそうなのか、今回調べた場所だけなのかすらも今の状態では分からないのだから」
「…だな。或いはこの次元においてはこれが普通、単にこちらの常識が通用しないという事なのか……」
「それを調べる為にも、やっぱりデータ収集が必要だね。…うん、これ以上考えていても無駄に疲労するだけだ、一旦今回は打ち切るとしようか」
振り返りをした三人も結局新しい発見は出来なかったみたいで、仕方ないねという雰囲気に。僕もちょっとだけど参加して、僕なりに考えてみて…だけど全然分からなかった、自分でもないだろうなぁという考えしか出てこなかったのはちょっと残念だし悔しいけど、分からないものは本当に仕方ない。三人の言う通り、もっとデータを集めれば分かるようになるかも…っていうのに期待するしかない。…けど、ずっと変わらない、かぁ……。
「んー…なんか、ゲームみたいだなぁ……」
『ゲーム?』
「あ、はい。ゲームにも色々ありますけど、中にはフィールドの端が壁とか崖になっていない場所でその端を越えて進もうとすると、勝手に操作キャラクターが後ろを向いて戻っちゃったり、そもそも見えない壁みたいなのに阻まれちゃったりするものがあるんです。で、大概そういうのって、進めない先はずーっと同じ地面…っていうか、地形?…が続いてるように見えるのも多いから、それみたいだなぁ…って」
思い出したのは、よくあるゲームの仕様。仕方ない事だし、そういうものだって思ってるけど、出来ればその向こう側まで行ってみたいなぁ、だけど多分行けてもバグっちゃうんだろうなぁ…って思う、アレ。…そういえば、この三人ってゲームするのかな?前に仮想空間のカジノではそれぞれプレイしたり店員をしていたりしたけど、普段はゲームとかそういう遊びって……
『……それだ…』
「え?」
「それだよ、愛月君!あぁそうだ、その可能性は確かにある…!」
「へ、へ?どういう事…?」
はっとした顔で、僕の事を見る三人。何かに気付いたみたいだけど…今度もまた、全然さっぱり分からない。
「君の言う通りという事だ。私達はこれまで、水深が殆ど変わらない地形がずっと続いていると思っていた。だが、そうではないのかもしれない。私達は変わらない地形の上をずっと進んでいるつもりだったが、実際には進んでいなかった…君の言うゲームの様に、同じ場所で足踏みしていただけかもしれないという事だよ、愛月くん」
「えぇ…!?で、でも僕のはゲームの話で……」
「ああそうだ。実際にそうなのか、そうではないのかは分からない。だが俺達は、このデータがおかしいと思いつつも、正しいものであると、実際そうなっていると思っていた。観測データが故障以外の理由でおかしな状態になっている可能性に気付かない、視野狭窄の状態に陥っていた。…そしてそれを、愛月が気付かせてくれたという訳さ」
言葉から感じる、ほんのりとした熱。そういう事か、もしそうなら…そんな雰囲気が、段々と大人の三人から伝わってくる。…えぇ、っと…まだはっきりとは分からないけど…僕の言った事が、三人の助けになった…って事でいい、のかな…?
「ワイト君、君の機体の機器はあくまで通常のものだったね?という事は……」
「我々と同じように、誤った観測をしていた可能性は確かにある。より正確には、ほぼ同じ地形が続いているのか、同じ場所なのかを判別出来る程細かいレベルでの情報を取得出来ていないと言うべきだろうけどね」
「なら、ここからの調査の方向性…少なくとも水上水中に関しては決まったな。…全く、大の大人が子供に気付かされるとは…いや、違うな。大人子供関係なく…アイディアは、誰からでも生まれ得るというだけか」
それからまた、三人は会話を始める。さっきまでは全然進まなかった議論が、どんどん進んでいく。今度こそもう、僕に入れるようなところは全然なくて……それを眺める僕は、思うのだった。やっぱり大人は、凄いんだなぁ…って。
今回のパロディ解説
・「おおぅ〜〜Watch…」
ネットミームの一つ、パモさん構文のパロディ。あくまでネットミームであり、ポケモンのキャラの発言ではありません。因みにもしるーちゃんが床の汚れを見つけたら…速攻で拭き取りに掛かる事でしょう。
・「〜〜敵陣営のエースパイロットとかも赤〜〜」
ガンダムシリーズにおける、お約束の一つの事。シャアから始まった、赤系統のカラーリングをした敵エースの存在は、これからも色んな派生的パターンを生みつつ続くのではないかと思います。
・「〜〜どんな色が好き?」、「赤い色が好き〜〜」
どんな色がすきのフレーズの一つの事。ただのパロディネタではありますが、まだ幼いイリスと、先生をしていた経験のある茜の組み合わせだとしっくりきますね。
・「あ、因みにその人〜〜全然違うし」
原作であるネプテューヌシリーズの一つ、超女神信仰 ノワール 激神ブラックハートに登場するキャラの一人、増嶋愛の事。パロディ…と呼ぶには微妙なラインですが、一応紹介です。
・(〜〜普通なら1+1〜〜じゃなくて100倍〜〜)
プロレスラーである小島聡さんの代名詞的な台詞…について言及した、ブログでのコメントのパロディ。間違ってる方は有名ですが、それに対する言及の方はあまり知られていないのかなと思います。