超次元ゲイムネプテューヌ Origins Transition 作:シモツキ
「ネプテューヌ、さん……!」
「弟子に、してくださいっ!」
ある日の事。今日も何にもない、素晴らしい一日になると思っていたところに、ロムちゃんとラムちゃんが現れた。そして、言われたのだった。わたしに、師匠になってほしいと。
「そ…それは、全くの予想外…しかし、あまりにも重いお願い……」
『……?』
思わずわたしがパロネタをしてしまう(いつもの事?んもう、そういう指摘は心の中に留めておくものだよ?)と、ロムちゃんラムちゃんは二人揃ってきょとんとする。更にそこで、開けっ放しになっていた廊下への扉から、ネプギアとユニちゃんがわたしとネプギアの共用部屋へと入ってくる。
「すみません、ネプテューヌさん。ロムとラムが、変な事言いました…よね?」
「あぁいや、謝るような事は言われてないけど…えっと、ロムちゃんラムちゃん。弟子にしてって…どういう事?」
申し訳なさそうなユニちゃんへ首を横に振ってから、視線を二人へと戻す。弟子って…まさか、女神としてじゃないよね?そういう事なら、ブランに頼むに決まってるし。
「えっとね、わたし、きんせつかくとー…?…が、できるようになりたいの」
「わたしもー!だからおしえてっ、ネプテューヌちゃん!」
「近接格闘?…それって、ブランじゃ駄目なの?そうでなくても、ネプギアだって教えられるでしょ?」
「えっとねお姉ちゃん、それが……」
「わたし、刀をつかってみたい…(きらきら)」
「それにね、わたしはニンジャになってみたーい!イエス、にんにん!ジャキンジャキン!」
「か、刀?忍者?それって……」
一体何に、或いは誰に影響されたのか…二人の話す理由を聞いて、わたしはうーん、と頬を掻く。まあ、そういう事ならわたしを頼ってくるのは分かるし、弟子っていうのも本気で弟子入りしようとしてる訳じゃなくて、単に教えてほしいって気持ちの延長線上で言ってるんだと思う。…けど、刀の指導…指導かぁ……。
「二人共、刀って結構難しいんだよ?後、分かってると思うけどわたしは忍者じゃないからね?原作シリーズの中じゃ忍者になってた事もあるけど、忍者になりたいならわたしよりマベちゃんに頼った方がいいと思うよ」
「あ、そっか。じゃあばいばーい」
「ばいばい」
「えっ、ちょっと!?ちょっとぉ!?」
くるりと振り返り、ぽてぽてと歩き出す二人。まさかの反応にわたしはびっくりし、慌てて二人を引き留めようとし……二人の肩が、ぷるぷると震えている事に気付く。
「ろ、ロムちゃん?ラムちゃん?…まさか……」
「いっえーい!ネプテューヌちゃんだーまさーれたー!」
「えへへ、大成功…♪」
「くっ、やられた……!」
「こ、こら二人共!ほんとすみませんネプテューヌさん…!」
それはもう嬉しそうに、ロムちゃんとラムちゃんはハイタッチ。その二人の悪戯に、二人じゃなくてユニちゃんがぺこぺこ。うーん、ほんとにユニちゃんは真面目っていうか、シンプルに良い子だなぁ…。というか、こうもまんまと騙されるとは、二人も中々演技派だよね…。
「むむ、このわたしを手玉に取るとはやるね二人共…。……仕方ない、このネプテューヌが刀の手解きをしてしんぜよう!」
「ほんと?」
「やったぁ!」
「え、お姉ちゃんいいの?」
「まあほら、何もしない内から駄目だって言うのはわたしも好きじゃないからね。……それに二人の事だから、いざやってみたらあっさり飽きたりするかもしれないでしょ?」
『あー』
喜ぶ二人をちらりと見つつわたしが小声で言えば、ネプギアとユニちゃんはありそうだ…とばかりに呟きを漏らす。
でも実際、もうわたしの中でやる気の火は点いている。二人がどの程度本気なのかは分からないけど…わたしとしては、しっかりと教えてみるつもりでいる。
「こほん。それじゃあ早速…と言いたいところだけど、最初に一つだけ言っておくね。二人も魔法を教わる中で言われてるとは思うけど、遊び半分で誰かに向けて刀を向けたり振ったりしない事。これを約束出来る?」
『はーい!』
手を挙げて、二人は元気良く返事をする。一見軽い調子に見えるけど、二人はちゃんと、わたしの目を見て答えている。それはきっと、ブランやルウィーの皆がしっかり二人に指導をしているからで…これなら大丈夫だって思える。
だったらと、わたしは準備をして皆をトレーニングルームに連れていく。いやぁ、プラネタワーってこれでもか!って位高くするのを目的にしてたから、とにかく色んなフロアや階層があるんだよね。…本当はそんなふわっとした感じじゃなくて、もっとちゃんと考えて建築されたんだけど。
「さて、今からやっていく訳だけど…どうしてネプギアとユニちゃんまで?」
「それは…って、なんで今になって訊くの…?わたし達も、って言ったのは、移動する前だよね…?」
「そのタイミングで訊いたら、描写外になっちゃうでしょ?」
「あぁ…ほんとお姉ちゃんは、当たり前のようにメタ発言するね…。…わたしは勉強の為だよ。太刀とビームソードじゃ使い方は全然違うけど、参考になる部分はきっとあると思うから」
「アタシもネプギアと同じです。アタシもビヨンドフォームの時は近接格闘を戦闘に組み込んでますし、刀の技術そのものは活かせなくても、間合いの取り方とか体捌きとかは学びになるんじゃないか…って」
「そっか…うーん、これは結構本格的な指導をしなくちゃいけないのかも……」
「あ……勿論ロムちゃんラムちゃんの事を優先してね?わたし達は、勝手に学ばせてもらうから。ね、ユニちゃん」
ネプギアの言葉に、ユニちゃんはこくりと頷く。当のロムちゃんとラムちゃんは、さっき渡した木刀を持って「まだ?まだ?」という視線をわたしへと向けていて……よし。
「じゃあ、始めよっか。まずは刀の持ち方だけど…左手は持ち手の下側、右手は上側だよ。…あ、でもラムちゃんって左利きだったよね?この場合、左右も逆に……まあでも、いっか」
「え、いいんですか?」
「わたしも教えるなんて殆どやった事ないからね。そのわたしが下手に慣れてない事やろうとしても上手くいく訳ないし、だから皆にはわたしのやり方を伝えたいんだけど…いいかな?ラムちゃん」
「だいじょーぶよ!それより早くおしえてっ!」
という訳で、わたしはわたしのスタイルを教える。刀の持ち方、握り方から始めて、振り方とか、脚の動かし方とかも、一つ一つ教えていく。
「ネプテューヌさん、こう……?」
「あ、良いねロムちゃん。でもちょっと肩に力が入り過ぎかな。もっとリラックスして振ると、振り易くなるよ」
「え、でも…力を入れなきゃ、ダメじゃないの…?(きょとん)」
「んっとね、力を入れなくていい…って事じゃなくて、ずっと力を入れてる必要はない、って事だよ。ほら、ビームのサーベルも斬る時だけ刃が出てくるアイドリング機能があったりするじゃん?」
『あー!』
「あー、って…アンタ達、ほんとに分かってる訳……?」
皆真面目にやってくれてるから、わたしもふざけず真面目に指導。っていうか、武器の扱いについて教えてるんだから、そこはふざけちゃ駄目だよね。
「んー……」
「あれ、どしたのネプギア」
「いや、わたしって普段片手で振ってるから、両手で振るのに慣れなくて…。…それでいうと、イリゼさんって凄いよね……」
「あぁ、イリゼは持ち方を切り替えながら戦ってるんだもんね。でも、わたしからすればネプギアも凄いと思うよ。刃の重さが丸々無い武器なんて、わたしだったら上手く感覚が掴めそうにない気がするし」
「そんな事ないよ。お姉ちゃんだったらきっと出来るだろうし、そもそも慣れちゃえばそういうものだって……あ」
何かに気付いたように、目を丸くするネプギア。そのネプギアへ、わたしはぱちんと一つウインク。別にイリゼが凄くないって言いたい訳じゃないし、むしろ凄いに決まってるんだけど…やっぱり大事なのは慣れだと思う。難しい事でも慣れちゃえば、身体で覚える事が出来れば自然とやれるようになるし、別のやり方を身体が覚えていると、頭では違うと分かっていても、ついついそっちに引っ張られちゃう。
「皆そうなんだよ。だからイリゼは凄いし、ネプギアも凄い。そしてわたしは超凄い。でしょ?」
「ふふっ、そうだね。お姉ちゃん、わたしの動きを見てもらっていい?」
「任せんしゃい!」
木刀を握り直し、中段の構えをしたネプギアにわたしは答える。わたし自身はあんまりこの構えってした事ないし、何ならわたしの構えは大体我流なんだけど…ここで基本の構えをするのがネプギアらしいというか、そういうネプギアには最早安心感すらちょっとある。
「あの、ネプテューヌさん。踏み込む時の脚の動きってこうですか?」
「え?こうじゃないの?」
うんうんと頷きながらネプギアの動きを見てあげて、それが済んだところで今度はユニちゃんに声を掛けられる。ユニちゃんと、その声に反応したラムちゃん、二人の動きも見てあげる。
なんか、こうやってると本当に師匠とか先生になった気分だし、こういう形で頼られるのも良いなぁ。イリゼもこんな感じでネプギア達を鍛えてたのかなぁ。…なんて、ちょっとほっこりした気持ちになっていたんだけど……
「…あ、あれ?」
『……?』
「…えっと、ごめんね…?なんか、改めて考えると、踏み込んだ後の脚の動きはこれまでそんなに意識してなかったっていうか…正直、説明出来ないかも……」
「…よくわかんないのにやってた、ってこと?」
「い、言い方に気を付けないよラム…あれですよね?経験と直感に身を任せてるとか、そういう事ですよね?」
「フォローありがとね、ユニちゃん…えーっと、実際にやってみるから見てもらえる?そうすれば、二人も分かるでしょ?」
自分が出来るのと、人に教えられるのとは違う。それを痛感しながら、わたしはちょっと離れて自分の愛刀を取り出す。二人をちらりと見た後に、軽い調子で一太刀打つ。
「どう?分かった?っていうか、どんな感じ?」
「えぇと…こんな感じ、かも…?」
「なんかちがーう。こうよ、こう!」
「…ラムちゃんも、ちょっとちがう…かも……」
ユニちゃんにラムちゃんがそれぞれやってくれるけど、わたし自身感覚でしか理解していないから、合っているかどうか分からない。同じく見ていたらしいロムちゃんも加わって、三人でああでもないこうでもないと言っていたけども、三人共遠距離戦が本職だからか全員話している内に「自分も違うんじゃ…?」って感じになっていっちゃって……最終的には、ネプギアのNギアでわたしの動きを撮影してもらい、それを全員で見る事になった。
「はぇー、これがわたしの動きかぁ。こうやって見ると……」
「やっぱり、恥ずかしい?」
「ううん、我ながら惚れ惚れするなーって」
鋭い打ち込み、無駄のない動き、そしてきりっとした表情…これぞ正に、非の打ち所がない一撃!プラネテューヌの守護女神が見せる、パーフェクトな姿!皆もそう思うよねっ!
…え、活字媒体なんだからどんな動きをしてるか分からない?それじゃあ皆、自分の中で理想的な動きを想像してみて。──その動きが、わたしの動きだよ。
「よーし、それじゃあそろそろ次のステップへいってみよー!」
『おー!』
「えっ、早くない?」
「いーのいーの。今日は刀の…ねぷ流派の体験会みたいなものだからね。地道な練習も大事だと思うけど、最初はまず楽しくなくっちゃ、これを学んだよ!って言えるものがなくっちゃ、続けようって思えないでしょ?」
他の人がどういう考えかは分からないけど、楽しさが大事だっていうのがわたしの考え。第一一日で学べる事なんてほんのちょっぴり、基礎の基礎だけなんだから、最初からそれをやるより、まずは色々感じてもらった方が良いと思う。だからわたしは、素早い刀の抜き方とか、回転斬りとかの、分かり易く剣術!…って感じるような技術を色々見せていって、教えていく。実際にやってみてもらう。勿論皆間違ってるところや不十分なところがあったけど、直さないと怪我しそうな部分以外はあまり言い過ぎず、とにかく気持ち良くやってもらう。
その甲斐あって、皆楽しみながらやってくれていた…と思う。楽しみながら木刀を振る、って表現すると中々にアレな感じがあるけど、わたしの狙い的にはばっちり。だけどまだまだ時間はある…もうわたし的にも、今日はとことん(勿論夜遅くまではやらないよ?三人は今日プラネテューヌに泊まってくみたいだけど)やるもりで…だからわたしの指導は続くよー!って訳で、次のシーンへGO!
*
プラネテューヌの生活圏から大きく離れた、とある遺跡。そこに今、わたし達は来ていた。
「ここって、いつの時代のどんな遺跡…っていうか、施設だったんだろう。他の国もそうらしいけど、プラネテューヌも建国してからずっと、場所が変わったりこの辺りまで広がったりはしてない…筈だよね?」
「んー、言われてみると確かに気になるね。帰ったら教えていーすんしよっか」
ぽてぽてと、遺跡の中へと五人で入っていく。ここに来た理由は、勿論探検…なんかじゃない。
お昼までの間、わたしはみっちりと刀を使う技術を教えた。それからお昼ご飯を食べて、ちょっと休憩してから、ギルドに行ってここでのクエストを受けた。午前中に教えた技術を、今度は実戦形式で試してもらう為に。
「あの、ネプテューヌさん。ここまで来て言うのもどうかと思いますけど、実戦に出るのが早過ぎませんか…?正直まだ、本当に体験会レベルの事しか学んでない気がするんですけど……」
「そうだね、わたしも本格的に色々教えた訳じゃないし。でもこれからも真面目に学んでくれるなら、早い内に一回実戦を経験しておいた方がプラスになると思うし…何かあったら、普通に戦えば良いだけでしょ?」
「それは、まぁ……」
わたしが肩を竦めてみせれば、ユニちゃんも同じように肩を竦める。ユニちゃん、ネプギア達と話してる時はちょっと大人っぽいっていうか、ノワールの妹だなぁって雰囲気があるけど、わたしやイリゼ達と話す時は素直な後輩、って感じがあって可愛いよね。
まあ、それはともかく不安はない。受けた討伐クエストはそこまで高難易度のものじゃないし、何よりここには女神が五人もいる。幾ら慣れない武器を使うって言っても、クエストの難易度からすれば戦力過剰もいいところだし、ぶっちゃけ余裕って感じかなー。……なんかこう、凄い不味いタイプのフラグ的地の文になってるけど…まあ大丈夫大丈夫!こういう流れで取り返しの付かない事が起こるような作品でもないしね!
「さてと。皆、今回のクエストはここの遺跡を調査する為に、棲み付いてるモンスターの群れを何とかしてほしいって事だけど、他にも崩れそうな壁とか足を取られそうな場所がないか気を付けておこっか。そういう情報も纏めておけば、依頼主さんも安全に調査出来るだろうし」
遺跡の入り口から中へと進んだところで、先頭に出たネプギアは振り返り、三人に話す。言ってから「あっ」っていう顔をして、わたしに申し訳なさそうな顔をしていたけども、問題ないよ〜とわたしはひらひらと手を振って返す。
多分これは、普段からネプギアがしてる事。こうやって、女神候補生で行動する時もリーダーシップを取っているんだと思う。わたしに申し訳なさそうにしていたのも、姉で守護女神のわたしがいるのにリーダーシップを取っちゃったからなんだろうけど…ついやっちゃう位には身体に染み渡っているって思うと、お姉ちゃんとしても鼻が高い。
「けど、個人でこんな所を調査したいなんて物好きよね。それとも、考古学者はそれが普通なのかしら」
「どうなんだろう…でも、個人での調査だからギルドに依頼したのに、それを女神が担当したなんて知ったら、依頼主さんもびっくりするだろうね」
ゆっくり見回してモンスターや危険な場所を警戒しながら、ネプギアとユニちゃんが話す。その後ろをわたしが歩いていて、逆に前はロムちゃんとラムちゃんで…ある時不意に、先頭の二人が足を止める。
「ねぇねぇネプテューヌちゃん!この木、なんだかきれそうじゃない?」
「いあいぎり、使う?(わくわく)」
「あー、そういう事ね。いいよー、見せてあげる。──二人の期待する、居合斬りを」
くるりと振り向いた二人が指差していたのは、床の亀裂から伸びている木。丁度それが、小部屋みたいになってるっぽい場所への出入り口を塞いでいて…なんていうか、本当におあつらえ向きなシチュエーション。
「…ふー、ぅ……」
木の前で得物を顕現させ、鞘と一緒に腰に構える。摺り足のように左脚を前に出して、少しだけ前傾姿勢を取る。ぶっちゃけ居合斬りなんて大してやった事ないけど…出来る、わたしなら出来る!
「ぱっと見で斬れそうだと思う木なら、別に居合斬りじゃなくてもいいわよね?」
「あ、そういう事言っちゃうんだユニちゃん……」
……なんか後ろから遠慮ゼロの発言が聞こえたけど、まあそれはそれ、これはこれ!ここはわたしの見せ場なんだから!
真っ直ぐに見据えるのは、木の幹。意識を集中し、太刀の軌道を鮮明にイメージする。そして腕に、脚に、全身に力を込め…斬撃を、放つ。
「……──ふッ!」
全力の、最速の一撃。イメージの通りに、思い描いたままに、刃が空を駆け抜けて…一瞬の間を経て、道を塞ぐ木はすぱっと倒れる。
『おぉー!』
「ふふーん、どうだったかな?凄かったでしょ?格好良かったでしょ?」
四人からの歓声を受けながら、わたしは太刀を鞘に戻す。結論から言うと、出入り口の先の小部屋には特に何もなかったんだけど…今の歓声で、わたしは満足。大満足。
「やっぱり凄いです、ネプテューヌさん。まさか、切断面がこんなにも滑らかになってるなんて……」
「でしょー?刀って、元々切断力重視の武器だからね。だから上手く使えば綺麗に斬れるし、逆に上手く使えないと強みを活かせないどころかすぐ折れちゃうしで、結構難しい武器でもあるんだよ」
「へー、そうなのね。…あれ?でもいあいぎりって、シュバっと行ってカチャンってやるものじゃないの?」
「えっと、ラムちゃん。それだと何も分からない──」
「あー、一瞬で相手の後ろにまで駆け抜けて、しかもその時にはもう納刀までしてるイメージってあるよね。でもほら、考えてみて?ただ斬るだけなら駆け抜ける必要はないし、納刀まで一瞬でやる必要もないよね?」
『今ので分かった(の・んですか)!?』
分かる分かる、と頷きながらわたしが答えると、ネプギアとユニちゃんはびっくりしていた。いやぁ、なんか分かるんだよね。やっぱりわたしって、ラムちゃんと波長が合うのかも。
あ、因みに言っておくと、わたしが普段の戦闘で居合斬りをしないのは、やる必要がないからだよ。居合斬り…というか居合術って、基本は納刀した状態…要は構えていない状態から瞬時に攻撃する為の技術であって、既に構えているならそのまま仕掛けちゃえばいいだけだからね。
「いあいぎり、わたしもできるように…なるかな…?」
「うーん、どうかな。でもロムちゃんも女神だし、一生懸命努力すれば、わたしは可能性あると思うよ」
「うんうん、わたしもロムちゃんなら……」
だから頑張って、とエールを送るようにわたしは言う。それに続いて、ネプギアも多分肯定の言葉を言おうとして…でもその途中で、口を閉ざす。
だけど、わたしはそれを不思議には思わなかった。きっと、皆も変だとは思っていない。だって…気付いているから。モンスターの群れが、近付いてきている事に。
「…このままだと、挟み討ちにされますよね。どっちかに打って出ますか?」
「ううん、ここで迎え討とう。ここは広いから木刀も振り易いし、足場もしっかりしてるからね」
「えっ、木刀でやるの?」
「ほんものの刀、使わない…?」
「いやー、流石に今の皆が真剣を使うのは危ないからね。それに、木刀は打撃になるから、最悪雑に振っても何とかなるよ」
判断を伝えながら、わたしはまた得物を抜く。念の為女神化の選択肢も頭に浮かべつつ、戦闘になる前にぐるりと見回して周囲を確認する。
直後、頷き合ったネプギア達四人は、ネプギアとユニちゃん、ロムちゃんとラムちゃんの二組に別れて配置に着く。全員臨戦態勢になっていて……数秒後、気配で感じた通り二つのモンスターの集団が現れた。
「うん、やっぱり予想通りだね。それじゃあ皆、もしもの時はわたしがフォローに入るから…思いっきりやっちゃって!」
『うん!』
『はい!』
指揮を取るようにわたしがばっと手を振れば、それに合わせて四人も床を蹴る。勢いのままに突っ込んでくるモンスターの群れと、交戦を開始する。
「わたしたちのケンジュツ、みせてあげるわ!」
「負けないよ…で、ござる…?」
「木刀には重さがある…だからここは、M.P.B.Lの要領で……!」
「よし…アタシだって……!」
兜と鉤爪で武装した(のかなぁ?それともそういう身体なのかなぁ?)小型モンスターの群れに、真っ向から突っ込んでいく四人。勿論数は群れの方がずっと多いけど、身体能力とリーチはネプギア達の方が上。軽快に動いて、木刀を振り回して、蹴散らすようにして四人は戦っていく。
一番良い動きをしてるのはやっぱりネプギアで、間合いの取り方や視線の動きもばっちり。でも次に動けてるのは意外にもラムちゃんで、ロムちゃんは元々の性格とこうして前に出る経験をあまりしていないからか、防御重視…というか消極的。だけどそんなロムちゃんにモンスターは群がって、そこをガンガン攻めてるラムちゃんが横から叩く形になっているから、結果的には囮とアタッカーの役割分担のようになっている。そしてもう一人、ユニちゃんも上手く動けていないみたいだけど……
「(もしかして……)ユニちゃん!もっとキックを活用しよう、キック!パンチとか頭突きとかでもいいけど!」
「え…!?でも、そういう攻撃はまだ習って……」
「いいよいいよそんなの気にせずやっちゃって!勝てばよかろうなのだァァァァッ!!」
「あ、は、はい!」
他の皆より動きが鈍かった理由、それは慣れてないとか技術不足とかじゃなくて、なんとユニちゃんが真面目に考え過ぎてたから。それを示すように、わたしが気にしなくていいと言ったのを皮切りにユニちゃんの動きが変わる。飛び込みながら爪を突き出してきたモンスター、その顔を真っ直ぐ伸ばした脚で蹴り上げたかと思えば、浮いたモンスターの頭に上段から木刀を振り下ろす。そこからも、慣れてる足技を主体に、そこに木刀攻撃を合わせる事で次々とモンスターを倒し始める。
(やっぱり、わたしの助太刀は要らなそうだね。…刀だけに)
全員、刀の使い手としてはまだまだ。ネプギア以外は、近距離戦の技術自体が未熟だし、特にロムちゃんラムちゃんはそう。でもそれを、女神としての身体の裏、経験…それに連携で補っている。いつの間にか二組から四人一組の動きに移っていて、モンスターに付け入る隙を与えない。一番動けていて、複数の個体を牽制しつつ一体一体着実に倒しているネプギアを中心に、ユニちゃんがネプギアのフォローに入る。ロムちゃんが防御で回り込もうとするモンスターを押し留めて、ラムちゃんは遊撃として縦横無尽に動き回る。もう大分わたしが教えた事が頭からすっ飛んでる感じだけど…これは実戦だから、やりたいようにやるのが一番。そうして群れが攻めあぐねれば、ネプギア達は見逃す事なく一気呵成の攻勢に出る。もう流れは完全にネプギア達に向いていて、どんどんモンスターは減っていく。
これならもう、戦闘終了も時間の問題。完勝は確実。…そう、思っていた時だった。
「……!皆、気を付けて!まだいるみたい!」
「予備戦力…?ふん、モンスターにしては中々戦術、的……」
新たに現れた、別の群れ。そんなに数は多くないけど、一直線にこっちに向かって走ってくる。丁度方向的にはユニちゃんが一番近くて、ユニちゃんはそっちに振り向きながら構え直し……わたしもユニちゃんも、すぐに気付く。新たなモンスター集団の、様子がおかしい事に。迷いなく、一心不乱に、予備戦力として考えるにはあまりにも勢い任せなその動きはまるで……
「…待った、違うよ!これは増援じゃなくて……」
次の瞬間、最後尾のモンスターが吹き飛ばされる。それと共に、大きな影が…なんかこう、某連合の拠点防衛用MAみたいな大型モンスターが姿を現す。
「あれは…まさか……!」
「お、お姉ちゃん?その反応…もしや、特別なモンスターなの!?」
「特別も特別、大特別だよ!だってこのモンスターは、原作の記念すべき最初のボスなのに、Originsシリーズでは時系列の関係から会話で語られるだけで登場する事はなかったある意味不遇なモンスター……の同系統っぽいんだからね!」
「えぇ、っと…そ、そうなんだ……」
「よくわかんないけど、そいつ今、そっちのモンスターこーげきしてなかった?」
「なかまわれ、してる……?(おろおろ)」
こっちの存在に気付いたのか、人形と虫が合体したような大型モンスターは、持っていた大剣を床に叩き付けてわたし達を威嚇する。群れの方のモンスターは、とにかく距離を取ろうとしている。
やっぱり、新たに現れた群れは増援じゃなかった。あのモンスター達は、この大型モンスターから逃げていた。なんで襲われてるのかは分からないけど…この遺跡の安全を確保するなら、この大型モンスターの撃破は必須。
「皆、群れの方は頼んでもいい?わたしは……」
「うん、任せて!だからお姉ちゃんは、そのモンスターをお願い!」
言い切る前に返してくれるネプギア。続いてユニちゃん達も、わたしの方を見て頷いてくれる。…ほんと、全力で頼もしいよね。皆こんなに頼もしいんだから…わたしもネプギアのお姉ちゃんとして、守護女神として、格好悪い姿は見せられないかな!
(あの時は、女神化しなきゃ敵わない相手だった。同じ個体じゃないし、色もちょっと違うから戦闘能力も違ってる可能性が高いけど……)
群れを躱して、大型モンスターの前に出る。鞘に入れたままの得物を掲げて、視線を送りながら刃を抜く。女神化はしない。きっと今のわたしなら…必要ない。
「さぁて、いざ尋常に…勝負ッ!」
完全に抜き放つと同時に、わたしは床を蹴る。大剣を持ち上げ、振り下ろしてくる大型モンスターに対し、わたしは斬り上げで打ち合い斬り結ぶ。
「……っ、流石に重いなぁ…でも……ッ!」
身体も武器もわたしより大きいんだから、その攻撃が重いのも当然。わたしはすぐに押される形になって…だからわたしは力を抜きつつ、左向きにスピン。その回転で大型モンスターの斬撃を床に逃しつつ一歩前に出て、即座に跳躍。勢いそのままに太刀を振って、胴体部分を斬り付ける。
まずは一撃。今のは入りが浅くて大したダメージにはなってないけど…もう今ので、この大型モンスターの大体の強さは分かった。
「よっ、ほっ、とりゃあっ!」
着地と同時にバックステップ、更にサイドステップも組み合わせて、大型モンスターの体当たりを回避。同時に置いておくように太刀を出して、モンスターの脚の一本に傷を付ける。続けてわたしは背後を取り、ジャンプを掛けてハイキック。そこからの三角跳びで、モンスターとの距離を開く。
「ほらほらカモーン、そっちだってまだ余裕あるんでしょ?」
緩めに構えて、わたしは挑発。それが通じたのかは分からないけど、大型モンスターは飛び掛かってくる。対してわたしは真っ直ぐ走り、下を潜り抜ける事で再びモンスターの背後を取ってそこから素早く回転斬り。ステップとヒットアンドアウェイを組み合わせで、モンスターを翻弄しつつ少しずつダメージを与えていく。
一気に勝負を決める事はしない。だってまだ群れの方が残っている以上、大型モンスターに全力を注いだタイミングで後ろから攻撃される可能性もゼロじゃないし、大きなダメージを与えた事でモンスターが怒り狂って、予想外の動きをしてくる…なんて事もあり得る。わたし一人ならそれも何とかなるだろうけど、その予想外の動きが群れを処理してるネプギア達に向いた場合、万が一の事が起こるかもしれない。だから今は、倒す事よりもモンスターの意識を引き付ける事を優先する。そうしていれば、そう時間が掛からない内にネプギア達が……
「こっちは終わったよ、お姉ちゃん!」
前言撤回。そう時間が掛からないどころか、もう終わっていた。ネプギアが言うのと同時に、ユニちゃん、ロムちゃん、ラムちゃんはこっちへ加勢するような動きを見せてくれて…だからわたしは、それを手で制する。
「大丈夫!四人はそこで見てて!今からわたしが、刀の……ねぷ流派の真髄を、見せてあげるから」
にっ、と四人へ笑みを見せて、わたしは大型モンスターに向き直る。わたしの気配が変わった、と感じたのか、モンスターはこれまで以上に警戒する様子を見せてくるけど…わたしにはもう見えている。勝利への、道筋が。
「ね、皆。心技体って言葉知ってる?」
「それって、武道とかスポーツとかの……」
「そそ、刀に限らず色んなところで言われる言葉だけど…やっぱり大事なのは、これなんだよ…ねッ!」
背中越しにユニちゃんへと答えて、わたしは走り出す。突っ込むわたしに向けて、大型モンスターは大剣を振るってくるけど…わたしはそれを、斜めに深く踏み込んで躱す。
「心技体の一つ目、それは心!戦いへの意思、絶対守るんだって覚悟、自分を信じて貫く決意!心がなくちゃ、何も始まらないし…折れない思いがあれば、道は開ける!見つけ出せる!」
更に一歩踏み込んで、大型モンスターの懐に潜り込む。だけど今の体勢だと、あまり良い一撃は放てない。このモンスターは脚が六本もあるから、姿勢を崩すのもちょっと難しい。だから軽く一太刀浴びせて、一度離れる。反撃もまた躱して、わたしはモンスターの周囲を走る。
「心技体の二つ目、それは技!技術、知識、経験…そういうものを積み重ねる事で、一つ一つの動きが研ぎ澄まされる!最小限の消費で、最大限の結果を、無駄のない最高を作り出す!」
攻撃を見切り、紙一重で避ける。次の動きを予測して、その裏をかく。腕へ、脚へ、その関節へ、身体全体を使った斬撃を打ち込んで明確なダメージを与えていく。同時に行動も鈍らせていく。
大型モンスターからすれば、自分の攻撃は全然当たらないし、逆に相手からはどんどん仕掛けられる、嫌な状況。だからより荒っぽい、強引な攻撃になっていって……次の瞬間、モンスターの体勢が崩れる。大剣で薙ぎ払おうとした瞬間、関節へのダメージが効いてがくんとよろける。そしてその時にわたしがいるのは……モンスターの、真正面。
「心技体の三つ目、それは力!心で道を開いて、技で進み方を選び出したのなら、後は全力で駆け抜けるだけ!つまり……力こそ、パワーッ!」
両脚で、力一杯大跳躍。跳んでからの急降下でより強い力を得ながら、わたしは大上段で振り被る。大型モンスターを見据えて、全身に力を漲らせて……モンスターの人型部分から虫型の下半身までを、一直線に斬り裂き断ち切る。
「我が剣は無敵なり──なんちゃって」
片膝立ちの状態で着地し、立ち上がる。大型モンスターが絶命したのを確認してから、振り返る。そしてわたしはピースをし……戦いは、終わった。
「ネプテューヌちゃん、すっごーい!」
「かっこいい…(きらきら)」
「そう、わたしは凄いのだ!…でも、皆も凄かったよ。これは四人共、将来有望間違いなしだね!」
「そ、そうですか?…なんか、照れるわね」
「ふふっ。でもやっぱり、そう言ってもらえると嬉しいな」
きゃっきゃとはしゃぐロムちゃんラムちゃんに、顔を見合わせ頬を緩めるネプギアとユニちゃん。さっきまでは凄く頼もしかったけど、今では可愛い妹とその友達。だけどやっぱり、皆には実力が感じられて…そんな皆がこれからも刀の使い方、戦い方を学んでくれたら、嬉しいと思う。主人公兼師匠ポジっていうのも、中々魅力的だしね!ちょっとイリゼの二番煎じ感あるけども!
「じゃ、探索を続けよっか。もう全然気配はしないけど、また別のモンスターがいるかもしれないしさ」
そうしてわたし達は遺跡の中を一通り回って、安全の確認と確保をしていった。危なそうな場所も、しっかりネプギアが記録しておいてくれた。これなら多分、大丈夫だと思う。結果的には、休みの日にクエストをする事になっちゃったけど…色々満足気な気分だし、結果オーライかな。
*
遺跡から戻って、報告をして、それからわたし達はプラネタワーに帰った。もう良い時間だしって事で訓練は終わりにして、皆でご飯を食べた。その後ネプギア達は皆でお風呂に入って、更にその後はゲームをしていた。始めて刀の訓練をして、そのままクエストもしたのに、皆ってば元気だよねぇ。やっぱり若い子は違うなぁ…なーんてね。
「ふぁーあ、今日はお仕事の予定だけど……これも国際交流の一環だよね。ネプギアだって、きっともっと強くなれるだろうし…よーし!」
起きて、ベットから出たわたしは、ぐっと両手を握る。実際、国際交流っていうと大規模なイメージになるけど、個人個人が色々教えたり、逆に教えてもらったりして学び合うのも、立派な国際交流だと思う。それに仕事だって、幸い今は余裕があって……いや、ほんとだよ?ほんと、やらなきゃいけない事は何とかかんとかやってるわたしなんだからね?
そんな訳で、わたしは今日もやる気十分。ネプギア達がもう起きてる事は、共用部屋から聞こえてくる声で分かってる。だからわたしは扉に手を掛け、今日も元気良く、皆に刀のなんたるかを……
「ユニ!わたしたちに、銃のつかいかたをおしえてちょーだい!」
「わたしたち、ガンマンになってみたい…!(ばんばん)」
「ずこーっ!」
TVに映っているアニメと、目を輝かせるロムちゃんラムちゃんに、迫られて困惑するユニちゃんと、頬を掻きつつ苦笑するネプギア。小さい子の興味は移り易い。そんな一幕を目の当たりにしたわたしは、思わずずっこけてしまうのだった。
今回のパロディ解説
・「〜〜それは、全くの〜〜重いお願い……」
デュエル・マスターズのカードの一つ、シヴィル・バインドのフレーバーテキストのパロディ。しかしDMファンの多くは知っているかと思いますが、白凰のモノローグが元ネタでもあります。
・「〜〜イエス、にんにん!ジャキンジャキン!」
Vtuber風真いろはさんの代名詞的な台詞の一つのパロディ。しかしこちらはNOではなくYESです。ラムが忍者に興味を持っているのは、原作シリーズの四女神オンラインを意識しての展開だったりもします。
・「〜〜ビームのサーベル〜〜アイドリング機能〜〜」
ガンダムシリーズ(宇宙世紀)における、一部のビームサーベルに搭載されている機能の一つの事。でも斬る時だけしか刃がないっていうのは、中々使うのが難しいというか、心的負担があるんだろうなと思います。
・「〜〜この木、なんだかきれそう〜〜」、「いあいぎり、使う?(わくわく)」
ポケモンシリーズにおける、細い木及びそれを処理する際のテキストのパロディ。作中でも触れてますが、切り裂くとかの斬撃系や、炎タイプの技とかじゃ駄目なの…?と思った事がある私です。
・「〜〜勝てばよかろうなのだァァァァッ!!」
ジョジョの奇妙な冒険 戦闘流潮に登場するキャラの一人、カーズの代名詞的な台詞の一つのパロディ。でも流石に、ネプテューヌが女性をギターに見立てるなんて事はないでしょう。
・「我が剣は無敵なり──なんちゃって」
軌跡シリーズに登場するキャラの一人、アネラス・エルフィードの代名詞的な台詞のパロディ。1stでこのキャラ良いな、でもサブキャラなんだよね…と思っていたら、NPCとして共闘出来てびっくりしました。