超次元ゲイムネプテューヌ Origins Transition 作:シモツキ
あの日わたしは、思い付いて、実行した。どんな事でもまずはやってみないと始まらない、やってみなくちゃ分からないと思って、最初の一歩を踏み出した。それは間違いなんかじゃなかったし、やって良かった事だと思う。
だけど、一歩進んでも、そこで止まったら意味がない…って事はないけど、それじゃあ詰まらない。折角一歩踏み出したのなら、そこでしっかり踏み締められたのなら…二歩目も、元気良く出していかなきゃね!
「という訳で……第二回、プラネタワーかくれんぼ!」
看板を壁に掛けて、くるりと振り向いて、わたしは宣言する。拳を突き上げる。遂に訪れた、二度目の日への歓喜と共に。
「プラネタワー、かくれんぼ…?…ネプテューヌよ、いきなり何を……」
「読んで字の如くだよ!前にプレプラネタワーかくれんぼをやったんだけど、わたし的に大好評だったから、この度正式版が行われる事になりました!」
「あー…あはは、そういえばそういう事もあったね」
怪訝そうな顔のMAGES.に説明をすれば、懐かしいなぁ…って感じでマベちゃんが言う。その言葉に、鉄拳ちゃんとサイコネちゃんも小さく笑う。
「…あれ?でもネプテューヌさん、それならこれって第一回になるんじゃ?」
「え?でも第一回はもうやってるんだよ?」
「いや、それはわたし達も参加したプレとしての一回目だし、正式版もこれが初めてなら、やっぱり第二回っていうのはおかしいんじゃないかな」
「あ、そっかぁ…じゃあ、第一回、プラネタワーかくれんぼ!」
第一期パーティー組のファルコムとサイコネちゃんの指摘を受けて、わたしは看板の『二』の部分にバツを描く。その上に『一』と書き直して、改めて宣言する。よし、これなら問題なし!
「えぇと…いいかな、ネプテューヌさん。前も気になった事だけど、やって大丈夫なの?というか、大丈夫だったの…?」
「大丈夫大丈夫!前の時は大丈夫だったし、今回はわたしと第一期パーティーの皆で七人もいるんだから、怒られても怖くない!」
「怒られる前提でやりたくなんてないにゅー。帰るにゅ〜」
「えぇ!?じょ、冗談だって!これ楽しいから!凄く楽しいからやろうよ〜!」
本当に帰ろうとしたぷちこを引き留めて、楽しかったでしょ?と不安そうな鉄拳ちゃんにウインクをする。更にお願い!やろっ!とわたしは皆に頼み込み……皆は顔を見合わせる。それから小さく肩を竦めて…それじゃあやろうか、と言ってくれた。
「やったー!よーっし、それじゃあ早速──」
「ま、待ったネプちゃん。やるのはいいけど、ルールはどうするの?前と同じ?それとも何か違うの?」
「あ、それなんだけど、基本は前と同じで、隠れる場所はこの階だけにしようと思うんだ。で、前にやった時は、隠れてる間が暇…って話だったでしょ?だから、これを使ってみよっかなって」
そう言ってわたしは、今いる部屋…わたしとネプギアの共用部屋に置いてある、片手に乗せられるサイズのドローンを皆に見せる。
「ネプテューヌさん、これは…?」
「よくぞ訊いてくれました鉄拳ちゃん!これはカメラとマイク、それに自動追従機能を搭載した小型ドローンだよ!このドローンで鬼の様子を撮影して、隠れている人にリアルタイムの映像として送れば、隠れている間も暇にならないし、ドキドキ感も増すと思わない?」
「ほぅ…見たところ、中々高性能そうではないか。…さては、ネプギア作だな?」
「もっちろん!前に趣味で作ってたから、昨日話して借りたんだー。ネプギアの工夫で、音もそんなにしないんだよ?」
リモコンで起動させて、軽く飛ばす。流石に全く音がしない訳じゃないけど、全然五月蝿い感じはなくて、そんなドローンが飛行する様子に皆はぱちぱちと拍手を送る。ネプギア、見てる?ネプギアが残してくれたこのドローンは、皆に凄いって思われてるよ。ネプギアの事を、皆は認めてくれてるよ。…でも…この光景を、ネプギアにも見せてあげたかったな……。
「ねぷ子、今絶対ネプギアに対して失礼な思考してるにゅ。ネプギアは普通に生きてるにゅー」
「あ、バレた?まぁ、元から突っ込み待ちだったんだけどねー。…こほん。じゃあ、皆このドローンと自分の端末とを接続してくれる?今回もわたしがまずは鬼をやるからさ」
「え?いいの?」
「いいのいいの、任せてよサイコネちゃん。映像配信も、映る相手が最もユニークで、最もラブリーで、最もチャーミングだけど笑いを呼ぶ者なわたしじゃなくっちゃ見応えのある内容にならないでしょ?」
「自分で言っちゃうんだ、そういう事…しかも何か後半は、違うのが混ざっていたような…。…まあでも、これもネプテューヌさんらしい…かも?」
そのとーり!とファルコムにサムズアップをして、わたしは一度ドローンを着陸させる。皆の携帯端末との接続も確認して、前にやった時のルールも一通り説明して…そこからわたしはカウントスタート。先にもうカウントを始めちゃう事で、わたしが鬼をやる事に対する反対意見を封殺する。うわわっ、早く隠れないと!って状況を作り出す。まあ、別にこんな事しなくても反対意見が出そうな感じはなかったけども…わたし的には、早くやりたかったしね。それに人数も多い以上、さっさとかくれんぼに入らないと一話で終わらなくなっちゃうっていうね。
って、いう訳で…ここからわたしと第一期パーティー組の皆によるかくれんぼ、はっじまっるよー!
*
カウントが終わって(というか途中からは携帯端末のタイマーを使って)、わたしは部屋の壁を向いた状態からくるりと振り向く。ドローンを、再度自動追従モードで飛行させる。さぁて、ここから探していく訳だけど…んー。
「流石にこの部屋に隠れる怖いもの知らずはいないかー。……うん、わたしとかネプギアの部屋に隠れてるパターンもないね。幾らルール上は問題ないとはいえ、実際やられてたら軽く引いてたし、誰もいなくてほんと良かった……」
テーブルの下とか収納スペースの中とかを一通り確認して、わたしは廊下に出る。本格的な探しに出る前に、一回ちょっと素早く動いてみて、ちゃんとドローンが着いてきてくれるかどうかを確認しておく。
その結果、ドローンはばっちり着いてきてくれた。全力疾走したり跳ね回ったりしたらどうなるかは分からないけど、これなら普通に移動する分には問題なさそう。いやぁ、ほんとネプギアは凄いよね。今は出掛けてるけど、帰ってきたらたーっぷり褒めてあげなくっちゃ。
「…っと、そうだ。皆ー、見えてるー?わたしの愉快な言動で爆笑して居場所がバレたりしないよう、気を付けなくちゃ駄目だよー?」
ドローンのカメラに向けて、わたしはピース。ついでに何パターンかポーズも取って、それから改めて歩き出す。
(んー、しらみ潰しに探していくのが堅実だけど、それじゃ時間が凄く掛かるし、皆も楽しくないよね。だからまずは……)
取り敢えず小部屋はスルーして、廊下を歩いていく。皆にドキドキ感を提供する為に、「こっちへ行く…と見せかけてこっち!」的な感じに、色々と映像に変化を作る。
そうして初めに訪れたのは、リビングに当たる部屋。前の時は、ここにも隠れていたんだけど、今回はどうかな?
「犯人に告ぐ!貴様は完全に包囲されている!人質を解放し、大人しく投降せよ!」
エアメガホンを構えて、わたしは声を張る。言い切ったところで、数秒待ち…だけど当然、誰も出てこない。出てこないし、そもそも何の反応もない。…うーん、これはちょっと虚しい。普段だったらある筈の突っ込みがないっていうのは、中々に切ないね。
まあでもそれはともかくとして、わたしはリビング内も探していく。いそうな場所、隠れられそうな所、そういうのを片っ端から調べていって…だけど誰も見つからなかった。
「うーん、いないかぁ…仕方ない、それじゃあ別の場所を……と、見せかけて再びとうっ!」
一回廊下に戻ってから、速攻でもう一度入るわたし。油断させてそこを突く作戦だったけど、うっかり誰かが姿を出しちゃってる…なんて事はなかった。どうやら本当に、ここには誰もいないみたい。
だからわたしはリビングを離れ、次の場所…次に思い付く、あり得そうな場所に向かう。勿論その道中でもドローンのカメラにポーズとかを取ったりして……物置き部屋に入る。
(リビングもだけど、ここにも前には居たんだよね。物置きって隠れられそうな場所が沢山あるし、だから見に来た訳だけど)
ぐるっと見回してみたわたしだけど、当然それだけじゃ誰も見つからない。色んなところに隠れられそうって事は、隠れてる可能性がある場所も色々あるって事で…それを全部確かめるってなると、かなり大変。例えばここには大きな段ボールも沢山ある訳だけど、例えばその中身を全部出して〜とか、別の場所から空の段ボール箱を持ってきて〜とかして、某伝説の傭兵みたいにその中に隠れてる…みたいな事も考えられるし。……え?中身を出してたらそれが外に出てる事で、どこかから持ってきたなら段ボール箱の数が変わってる事で分かる?いやいや、物置き部屋だよ?物置きにある物を正確に把握なんて、わたしじゃなくても大概の人はしてないって。
「…となると、やっぱりここは──中々上手い隠れ方だね。だけど…残念。そこに隠れてるのは、もうお見通しだよ?」
いつもより声のトーンを落として、真面目な雰囲気を出しながら言う。勿論、何も見通してなんかいない。だからこれは、あくまで鎌を掛けてるだけ。かくれんぼは小さい子でも出来る遊びだけど、やっぱり最後に勝つのはクレバーな思考を持つ者で……
「…………」
だけどここでも、何の反応もない。思いっきり滑った瞬間位、静かオブ静か。うぐ…二回連続でこれはちょっと堪えるっていうか、やっぱり静かなのはわたしの性に合わないって……。
「うぅん…でもここをしっかり探すのは、本当に大変だしなぁ……」
基本的なルールは前回と同じだから、一度隠れたらもうその場から動いちゃ駄目…ってルールも存在してる。だから探すのも大変だし、一旦ここは保留にして、後でまた来ようかな…なんて思うわたし。…うん、そうしよう。一度は難を逃れた…って展開もあった方が、皆も楽しめるだろうしね。…あ、でもその前に……
「ぷちこー、いるー?」
「ぷちこじゃないにゅ、ブロッコリーだにゅ。……あっ」
……わぁお。戦術なんて何にもなく、おまけ感覚でただ言ってみただけなのに…見つけちゃったよ。見ーつけた、しちゃったよ。
「…姑息だにゃ、ねぷ子……」
「いや、今のは反応しちゃったぷち子が悪いでしょ…っていうか、こんな所に隠れてたんだ……」
主張と共にひょこっと出てきたぷちこがいたのは、段ボール箱じゃなくて大きい紙袋の中。出てきた瞬間ゲマを頭の上に担いでいた事からして、あれで身を隠していたんだろうけど…うーん、ここに隠れられるのはぷちこかいーすん位だろうなぁ。
「まあでも、これで一人目発見!やったね!」
「ねぷ子が鬼で最初に見つかるなんて、赤っ恥にゅ……」
「ちょっ、ほんとに軽く落ち込むのは止めてよ……。…因みにここって、他に誰か隠れてる?」
「そんなの言う訳ないにゅ」
「えー、いいじゃん教えてよ〜」
「そんな仲間を売るような行為、ブロッコリーはしないにゅ。甘く見てもらっちゃ困るにゅ」
「まあまあそう言わず。なんかお肉奢ってあげるからさー」
「ここには誰もいないにゅー」
「あ、言うんだ……」
あっさり掌を返してきたぷちこの変わり身の速さに、わたしは思わず困惑。…ぷちこって、見た目にしろ性格にしろ喋り方にしろ、第一期パーティー組の中でも特に個性が強いよね…。
とまあ、かなり予想外の形にはなったけど、まずはぷちこを発見出来た。ここからわたしは二人目を探しに行く訳だけど、前と違ってぷちこはついてこないみたい。…前回同様見つけた相手も同行するパターンにすると、後半はメンバーが多くなって、描写が大変になるから…とかではないと思うよ!実際どうなのかはわたしには分からないけどね!
「…こほん。それじゃあ元気に二人目…と思ったけど、うーん……」
物置きから出たわたしは、ドローンを見る。さっきわたしは、鎌を掛ける事でぷちこを見つけた訳だけど、その様子もばっちりカメラは撮っていただろうし、皆もそれを見てる筈。つまりこの手はもう使えない訳で……一人目から使うのは勿体なかったなぁ…。
…と、後悔してても仕方ない。わたしはすぐに気持ちを切り替えて、二人目を探しに行く。探しながら、考える。
(いそうな場所の2トップを探した訳だけど、このまま他の場所も闇雲に探してたら、結局しらみ潰しに探すのと同じになっちゃうよね。それで探すのは、やっぱり探し物してるのと大差なくなるし……)
ぽてぽて歩きながら、わたしは腕を組んで頭を捻る。この実はクレバーで有名…になりたいわたしとしては、もっとスマートに探したいところだし……あ、そーだ。
「例えばここなら……」
くるりと反転して、ちょっと戻る。ひょっとしたら、と考えてわたしが訪れたのは、情報処理室…と適当に名前を付けた部屋。
「うーん…ぱっと見誰もいないけど……」
ここにあるのは、仕事で使ってるのとは別のサーバーと、その周辺機器一式。情報処理の名前の通り(いやほんと適当に付けた名前だけど)、ここは電子関係のあれこれをスムーズに行う為の部屋で……正直、あんまりわたしが入る事はない。わたしよりもネプギアが主に使ってる部屋で、後は偶にいーすんが使ってる位の場所で…この部屋、ネプギアがベールの影響を受けた結果の場所な気がするんだよね…ネプギアはメカオタだし、最近はソフト方面も色々手を出してるみたいだから、有効活用はしてると思うけども…。
まあそれはともかく、一見ここには誰もいない。でもここはリビングや物置きよりも、遥かに人が隠れられそうな場所なんて限られてる訳で……
「ふふーん、サイコネちゃん見ーつけた!」
「あっ…うーん、やっぱり見つかっちゃうかぁ……」
出入り口からは見えない、部屋の端にある物の陰。そこにサイコネちゃんがいた。わたしが見つけて声を掛ければ、サイコネちゃんは残念そうに陰から出てきた。
「よっと。ネプテューヌさん、さっき何かに気付いたみたいに振り返って、ここに来たよね?ここに誰か…っていうより、わたしがいるって分かってたの?」
「分かってたっていうか、もしかしたら…って感じかなー。ほら、サイコネちゃんってオンラインゲーム好きでしょ?」
わたしの返しで、サイコネちゃんは納得したような顔をする。今言った通り、サイコネちゃんはオンラインゲーム…というかゲーム全般が好きなゲーマーで、ベールともオンゲー上で勝負した事があるんだとか。で、そんなサイコネちゃんなら、ひょっとしたらと思っていて…結果はわたしの見立てが大正解。うんうん、これはクレバーな姿を披露出来たよね。
「あー、そっか。前にかくれんぼをした時はこの部屋ってなかったし、興味が湧いてつい隠れたんだけど…流石はネプテューヌさん、お見通しだった訳だね」
「ふっふっふ、友達の事だからねー。…あ、そういえば…サイコネちゃんって、前のかくれんぼでも二番目だったよね?」
「そういえば、確かに…一番最初ではないとはいえ、ちょっと悔しいな……」
「お、それは今後も開催されたら参加したいって事?」
「あはは、声を掛けてくれるなら参加するよ。…ところで…ここの機材とか置いてあるゲームって、ちょっと見てもいいかな?その、隠れてる間は大して見る事が出来なかったから……」
「いいよいいよ。でもわたしよりネプギアが使う事の多い部屋だし、うっかりネプギアの秘密とか見付けないようにね!万が一見付けちゃったら、その時はわたしとサイコネちゃんとの秘密だよ?」
「あ、ネプテューヌさんとは共有する前提なんだ……」
そういう訳で、サイコネちゃんは部屋に残り、わたしは出る。まあ実際ネプギアはしっかりしてるし、見られて困るものはちゃんと自分の部屋に持っていってるよね。…いざ本当に秘密にしてるものが出てきたら、お姉ちゃんとしてどう反応するべきか迷いそうだけど……。
「こほん。さぁて、幸先良く三人目も行くよー!今もわたしの動向を映像で見てる皆……次は、君だ」
ぴっ、とカメラの向こうを指差して、わたしはキメ顔。それなら普通に、また捜索をする。
「残りは四人、どこにいるかなーっと」
またわたしは残る四人がいそうな場所、興味を惹かれそうな場所を考える。だけどプラネタワーの中、それもこのフロアだけ…っていうのは難しい。だけど最終手段の「片っ端から探す」って手はまだ取りたくないし、何か良い案を……と思っていたところで、わたしはある作戦を思い付いた。
「よーし……」
心を決め、わたしは目を閉じる。強く強く思い浮かべて、深く深く信じる。その思いを胸に抱いた状態で、目を閉じたままわたしは歩き……ここだ、と思ったタイミングで目を開く。そして、目の前にあった部屋へと入……ろうと思ったけど、目の前にあったのは壁だったから、普通に一番近い部屋に入る事にした。…もうちょっと進んでいたら、目を閉じたまま壁に激突してた可能性が高いのは内緒。
「ここかな?ここかな?それとも…こっちかな?」
わたしが入ったのは、お客さん用の部屋。そこのクローゼットの中だったり、ベットの下だったりを、わたしは一つ一つ確認していく。そして……
「……!ここかぁ!」
「わぁ!?」
机の下、椅子の前、椅子を少し引く事で作った空間に、膝を抱えてファルコムがファルコムが隠れていた。机の左右に板が付いているタイプだったから、椅子を完全に引かなきゃ見えてこない場所に、ファルコムがちっちゃくなった状態でいた。
「やたっ!ファルコム発見!これで三人目!」
「び、びっくりしたぁ…何とか凌げると思ったんだけど、無理だったかぁ……。…よいしょ」
カーペットに手を突いて、ファルコムが机の下から出てくる。ファルコムってわたしと同じで小柄だし、もう一人のファルコムっていう比較対象がいる分、余計に小さいイメージがあるっていうか…ぶっちゃけ、小さい子がかくれんぼしてた感が凄い。…この話すると、ほんとわたしも小柄だし、おっきいわたしの存在もあるから、同じ事やったら同じような印象を抱かれるんだろうけどね!
「でも、凄いねネプテューヌさん。片っ端から部屋を見ていったなら、ここに辿り着くのも変じゃないけど…何か、この部屋にわたしがいるって分かってる感じじゃなかった?」
「ふっふっふ、分かってた訳じゃないけど、ここにいるって感じたんだよなー、これが」
「か、感じた?それは、どういう……」
「どうもこうも、わたしの無意識とか直感とかに任せた感じかな」
それ以上の説明もないし、と思いながらわたしが言えば、ファルコムは目を丸くする。そんな事あるの…?って言いたげな表情になる。…あ、勿論女神の直感とか、特殊能力的なのじゃないよ?
「まあでも、そういうのに任せれば、ファルコムだったら見つけられるって気はしてたんだけどね」
「…どうして?」
「だってほら、二人はいつかまた会える…って言うじゃん」
「根拠それ…!?…それだけで直感に身を任せて、しかも本当に見つけ出しちゃうのは凄過ぎるよネプテューヌさん……」
感心しているようにも、呆れているようにも見えるファルコムの反応。でも実際、わたしはいけると思ったんだよねー。っていうより、いけるって強く信じたからこそ、わたしの中の無意識がここへ導いてくれた感じ?
「じゃあ、わたしはまた他の場所を探しにいくね。ファルコムはどうする?」
「わたしは…リビングで待ってようかな。ついていったら、どうしても探したくなっちゃうと思うし、だけどそれじゃルール違反でしょ?」
一緒に部屋を出つつ、まぁねとわたしは肩を竦める。わたしも同行はするけど鬼じゃないから探すの禁止、勿論ふと見つけてしまっても悟られないよう黙ってなきゃ駄目…なんて守れる気がしない。ファルコムの判断はよーく分かる。
って訳で、わたしはファルコムを先に見送って、ちょっとしてから動き出した。ここからは後半戦だし、気合いも入れ直そう、うん。
(残りの三人…なんか、全員強敵そうだなぁ…。…いや、簡単に見つかりそうなメンバーなんて、よく考えたら誰もいないけど……)
普段は愉快な友達だけど、そこはやっぱり何度もわたし達の力になってくれた、頼もしいパーティーの仲間達な訳だから、一筋縄でいく気はしない。
「…よし、ここは一つ……ここかっ!そこかっ!それともここなのかぁ!」
ここまではわたしの慧眼が冴えまくったおかげで、動きのある画があまり撮れていなかったと思う。それも踏まえて、一旦わたしは片っ端から探し回る。扉もタンスもゴミ箱も、開けて開けて開けまくる。まあでも、そんなんで見つかるような三人でもなくて…結果わたしは、無駄に体力を消耗しただけ。そうなる事も予想はしていたから、別にそれはいいんだけども。
(……仕方ない。ここは、アレを活用しようかな)
足を止めて、耳を澄ませる。そこからは、足音も極力立てないようにしながら一部屋、また一部屋と確認していく。
さっきまでとは逆に、静かに静かに探す。ここからは、体力温存で…とかって訳じゃない。これにはちゃんとした理由があって、きちんとわたしには作戦がある。
「ねっぷっぷ〜、ねっぷっぷ〜、ねーぷーぷ〜」
そのスタンスで、即興の曲を口ずさみながら探していく事数分。わたしはエレベーターの近くにある、非常用の階段の扉を開ける。…そういえば、前の時はエレベーターの中に隠れて…ってのもあったっけ。こっちの場合も、上や下の階に行ってないならルール違反にはならない、けど……
(うーん?ここで間違いない、筈なんだけど……)
ここに入ったのは、さっきみたいな勘じゃない。そうじゃなくて、ちゃんとした根拠があって…でも、誰の姿も見当たらない。これはもしかすると、この非常階段じゃなくて……あ。
「まさか……!」
階段を数歩降りて、踊り場の下を覗いてみる。そうしてそこにあったのは、そこにいたのは……
「…見つかってしまったか」
「見つかってしまったか、じゃないよ!魔法で階段下にくっ付いてるとかズルくない!?」
何食わぬ顔で、ふわりと階段に着地した女の子。何か問題でも?とばかりの雰囲気をしている女の子…MAGES.が、そこに隠れていた。隠れているっていうか、潜んでいた。
「だが、きちんとこのフロア内、というルールは守っていただろう?」
「わたしが言ってるのはそこじゃないし…まあ、いいや。そんなMAGES.も、見つけた事には変わらないからねー」
「…言われてみると、それは本当にそうだな…魔法を使ってまで身を潜めていたのに見つかったと思うと、途端に悔しくなってきた…くっ……!」
「あっはっはー、残念だったね!それじゃ、次行ってきまーす!」
くるりとわたしは背を向けて、踊り場に戻る。そのまま非常階段の出入り口を通って、わたしは次の、残りの二人を探すべく廊下に戻…ろうとしたところで、背後から声を掛けられる。
「ところでネプテューヌよ、一体何故私がここに隠れていると分かったのだ。先程は直感で狙い当てたようだが、もしや今回も……」
「え!?そ、それはまぁ…そんな感じかなー!ほら、わたしとMAGES.の仲でもあるしね!」
「何を馬鹿な…と言いたいところだが…ふっ。女神が…特にネプテューヌが言うと、強ち荒唐無稽とも思えないな」
何だか納得した様子のMAGES.に肩を竦めて、今度こそわたしは廊下に出る。着いてくるかなー?と思った途中で一回足を止めたけど、MAGES.も同行はしないみたいで…それを確認したわたしは、ふっと笑う。
(良かった良かった、ばっちり
軽い調子で歩きながら、心の中で呟く。それからちらりとドローンを、そこに搭載されたカメラを見て、やったね、とばかりにピースをする。
一体どうやって、MAGES.の居場所を探り当てたか。その答えは、このドローンのカメラにある。カメラには音をキャッチする為のマイクもあって、映像だけじゃなくて音声も届ける事が出来る。つまりわたしの発言も、見てる皆は楽しめる訳だけど…実際聞いてたらどうなるか。それは勿論──近くにいれば、わたしにも聞こえるって事。声であれなんてあれ、わたしの発してる音が聞こえてくる…その音が聞こえれば、近くに誰かしらがいるって事。そしてわたしがこれを使おうって提案したのも、当然わたしの考えた作戦を出来るようにする為で……即ち、このかくれんぼが始まった時点で、もうわたしの作戦は成立していたって訳なのだ!ハーッハッハッハ!
「…って、この笑い方じゃ悪役やってた頃のマジェコンヌだよ…こほん。それより残りは二人、もうひと踏ん張りだよわたしっ!」
胸の前で両手を握って、わたしは意気込む。その後はまた、足音を抑えると共にねぷねぷ言いながら探していく。流石にわたしもドローンを逆利用する作戦は奥の手も奥の手、多用はしちゃいけないよねと思っていたけど、どんな事でも一回やったらハードルはぐっと下がるもの。だからこの手で残りの二人も探し出そうとして……だけど、見つからない。これが全然、驚く程見つからないし聞こえてもこない。
「あっれぇ…?幾ら何でも、お手洗いに隠れてるとかはないだろうし…あ、他の階に行ってたりしないよね?二人共ー、もしうっかり他の階に行っちゃってるなら、怒らないから戻っておいでー」
わたしはカメラに呼び掛け、エレベーターの近くにもう一回行くけど、二人共全然現れない。って事は、やっぱりこの階のどこかにはいるらしい。
でも割と本当に、もう殆どの部屋は確認してる。ちゃんと物陰とか人が入れそうな場所も見ているから、見落としてる…って事もない筈。となるとまさか、本当にお手洗いにでも隠れているのか。いやいやいや…と言いたいところではあるけど、じゃあ他にどこを探してないの?って話。ほんとに、冗談抜きに、このフロアの中はもう隅々まで探した状態で……
「……フロアの、中?」
その瞬間、ふとわたしの頭に一つの可能性が思い浮かぶ。ひょっとして…そう思いながら、わたしは小走りでリビングに向かう。
といっても、リビング内をもう一度探そうって事じゃない。わたしはリビングに入って、見つかった後はここに集まっていた皆のきょとんとした視線を浴びながらも、奥まで進んで……バルコニーに続く窓を開ける。
「いやぁ、盲点だったよ……でもそうだよね。エリアはこのフロア内であって、外に出ちゃいけないなんて事は一言も言っていないんだからね!」
びしぃ!と推理を披露する感じのポーズを取りながら、バルコニーへ出るわたし。そしてわたしの見立て通り、バルコニーには残りの二人が……
…………。
「……いないじゃん」
ぴゅー、と木枯らしが……じゃなくて、高い場所だから普通に強い風が吹く、プラネタワーのバルコニー。いやもう、ほんとにいなかった。ここに隠れられる場所なんてないから、ぱっと見じゃなくてほんとにいなかった。
「どうしたの?ネプテューヌさん」
「あれか。ここにいるかも…と思ったがいなかったのか」
「そういえば、わたし達もここは特に見てないね」
「にしても、風強いにゅー」
最初に情報処理室から戻ってたサイコネちゃんが、続いて残りの三人もバルコニーに出てきて、ぐるりと見回す。ファルコムのサイドテールは風でぴょんぴょん跳ねて、MAGES.の帽子とぷちこのゲマが飛ばされそうになる。…うーん、ほんとに今日は風が強いなぁ…仮に隠れる場所があっても今日は身体が冷えちゃいそうだし、選択肢としてはない…かぁ。
「あはは、まぁそんなところかな…。でもいないみたいだし、もう一か八か本当にお手洗いを……」
いざ行ってみて、それでいたらそれはそれで嫌だなぁ…と思いながら、中へ戻ろうとしたわたし。皆も「お手洗い…?」って感じの顔をしつつ、一緒に戻ろうとして……そこでふと、MAGES.の姿がわたしの目に留まった。…そういえば、MAGES.って……。…い、いや…いやいや、流石にそんな事はない…よね…?…うん、ない、幾ら何でもそれはないって。…………でも、本当に…?
「…………」
『……?』
ぴたり、とわたしは足を止める。皆から、どうしたの?って反応をされる。そんな反応を、視線を受けながら、わたしはゆっくりと振り向く。そして無言でバルコニーの端、柵の部分まで行って、そこから身を乗り出す形でバルコニーの下を覗いてみて……
「…その…本当に大丈夫…?なんか、大分表情が変わってきてるけど……」
「だ、大丈夫〜。むしろこれ位からが、本当に良いところだから…!」
「いや、幾ら何でも非常識過ぎるんじゃないかなぁッ!!?」
『ええぇッ!?』
いた。なんといた。いてしまった。バルコニーの真下に、残りの二人が。そこの壁に張り付いているマベちゃんと、バルコニーの裏に走ってる棒状の部分に捕まっている鉄拳ちゃんが。
「ちょっ!?二人共正気!?あぁいやまず、戻って戻って!流石にゾッとするから!ここ滅茶苦茶高いところなんだからね!?」
「え、いや、それを言ったらネプちゃんも体勢的に多分バルコニーに足が着いて──」
「いいから戻ってきなさいッ!」
『あ、はい!』
わたしの一喝で、二人は速攻戻ってくる。マベちゃんは忍者らしく、鉄拳ちゃんは雲梯をするみたいにバルコニーの床の上に戻ってくれる。全くもう…わたしは女神化すれば飛べるけど、二人はそうじゃないんだから、ただのかくれんぼでここまでリスキーな事はしちゃ駄目だよね、うん。
「はふぅ、大変だったぁ……」
「大変なのはやらなくても分かるでしょ鉄拳ちゃん…しかもよりにもよって、こんな風の強い日に……」
「あはは、ごめんね。でも……満足かな」
「えっと…それは、割と長い間隠れられたとか、一応訓練にはなったとか、そういう事だよね…?深掘りしないけど、そういう事でいいよね……?」
妙に気持ち良さそうな顔をした鉄拳ちゃんに、わたしは「あ、これ追求しない方がいいやつだ」と直感的に感じ取る。そしてマベちゃんの方を見れば、何とも言えない顔をしていて…うん、ほんとにこれは追求しないでおこう…。
「けど、びっくりしちゃった。まさか、こんな場所に隠れてたのに見つかるなんて」
「そこはまあ、裏に潜むって発想がMAGES.と同じだったからかなー。……やる場所は違い過ぎて、ほんと正気を疑ったけど」
『それはまあ…はは……』
笑い事じゃないよ…と肩を竦める二人にわたしが突っ込めば、先に見つけた四人もうんうんと頷く。そうして今度こそ、わたし達はリビングに戻る。
「まあでも、これにて全員発見!つまり、第二回…じゃなかった、第一回プラネタワーかくれんぼも、わたしの完全勝利だね!えっへん!」
『おぉー』
腰に手を当て、胸を張るわたしに向けられる拍手。全員が拍手してくれた訳じゃないけど…完全勝利出来ただけでもわたしはご満悦。いやー、ほんと我ながら凄いよね!だってこのメンバーを全員見つけ出したんだから!
「で、皆どうだった?楽しかった?」
「うん、楽しかったよネプテューヌさん。でも次は、わたしも鬼をやってみたいかな」
「まあ、悪くはなかったにゅ。でもこれは、最初からねぷ子が探してる姿をのんびり映像で鑑賞してる方がより楽しい気がするにゅ〜」
「それはかくれんぼを真っ向から否定してるようなものじゃ…こほん。わたしも楽しかったかな。前回も今回も、最後まで残る事が出来たしね」
「わたしもだよ〜。次はどこに隠れようかなぁ」
それからもう一つ。皆も楽しんでくれたみたいだから、それも嬉しい。ファルコムや鉄拳ちゃんなんかは次の事まで考えてくれてるし、これなら第二回だって望めそうな気がする。
「にしても、メンバーの内三人が同じような隠れ方をしてたのは驚きだよね。上手い隠れ方だなー、とは思ったけど」
「だよねぇ、わたしもそう思う。でも、身体能力で隠れるならともかく、魔法を使うのはやっぱりズルいんじゃないかなー?」
「ほぅ?だが魔法とて研鑽を重ねなければ実用に足らないのが現実というもの。それでいて魔法だけが駄目、というのには頷けないな」
「でもさでもさ、魔法だったらもっと色々な事が出来る訳じゃん?まぁ今回の使い方はギリギリセーフだとしても、次からはもう少しルールを詰めないといけないと思うんだよね」
正直MAGES.にズルい、っていうのは冗談半分だけど、魔法とかそれに近い技術を使って良いかどうかは本当に考えた方が良いと思う。そういう改善点が見つかったって意味でもかくれんぼは成功だったと思うし…次はもっと、沢山のメンバーを呼びたいよね。そうなると、色々大変だとは思うけど。
「さてさて、次にかくれんぼをやる時は、ルールの調整以外にももっと面白要素とかは入れたいよね。例えば…あ、そうだ!ぷちこじゃないけど、もっとドローンを使って皆の様子も映せると良いかも!そうすれば後から振り返って楽しむ事も出来るし、何ならこのプラネタワーかくれんぼって名前も『新しいネプ名物企画!』みたいな感じで装飾してみようかなー」
「何かそれだと、別の企画も存在してそうな…ってあれ?ネプテューヌさんの声が、二重に聞こえるような……」
「ああ、すまない。まだドローンからの映像を流したままだった……うん?…声……」
「あっ……」
首を傾げたサイコネちゃんに、MAGES.が自分の端末を見せつつ謝罪をする…までは良かったんだけど、そこで何か引っ掛かったような反応を見せる。しかもそこでうっかり、わたしはしまった!…って感じに声を出してしまう。
自分でもこれは酷い、って思うようなあからさまなタイミングでの声出しに、全員の視線がばっと向かう。そして続けて、端末やドローンを、そこにあるカメラを交互に見つめ始めて……
「な、ななな何もないヨー?そんな、ズルなんてわたしは何もしてないからネー?」
その後、自分のズル…じゃなかった、ちょーっとだけ賛否両論になりそうな作戦が発覚しそうになったわたしは、速攻でこの場から逃げる事を選び……プラネタワーかくれんぼから、今度はプラネタワー鬼ごっこが始まってしまうのだった。
今回のパロディ解説
・「〜〜最もユニーク〜〜最もチャーミング〜〜」
地面師たちに登場するキャラの一人、ハリソン山中の代名詞的な台詞のパロディ。最も○○を三つ並べる形である為、長めの台詞ながらパロネタとして使い易いのかな?と思いました。
・「〜〜ラブリーで、最もチャーミングだけど笑いを呼ぶ者〜〜」
これはゾンビですか?における、重要なフレーズのパロディ。上記と合わせた混合パロネタです。因みにこれはファンなら反応するけど、代名詞と言えるような有名になるタイプの台詞ではないかな…と思います。
・〜〜某伝説の傭兵〜〜
メタルギアシリーズにおける主人公の一人、ソリッド・スネークの事。作中でネプテューヌも触れてますが、普通に段ボール箱がありそうな場所なら、一つ増えていても案外気付かれない気がします。
・「〜〜次は、君だ」
僕のヒーローアカデミアに登場するキャラの一人、オールマイトこと八木俊典の名台詞の一つのパロディ。何気にこれ、ノワールベールブランが言ったら原作の新作と世代交代という意味でマッチしてましたね。
・「〜〜二人はいつかまた会える〜〜」
空の軌跡SC及び、そのリメイク作品のキャッチコピーの事。更に言えば、星の在り処という曲のフレーズの一つでもあります。このパロネタをファルコム相手に使った理由は…言うまでもありません。
・「〜〜新しいネプ〜〜」
新しいカギのパロディ。学校かくれんぼならぬ、プラネタワーかくれんぼですからね。…ネプテューヌの場合、子供を沢山招いて自分が隠れるかくれんぼも本当にやりそうな気がします。