ハンドラー・ウォルター悪人説   作:灰ネズミ

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ルビコン3かもしれない場所で、冷酷無慈悲外道な調教師が哀れなケダモノ達を虐待(本人の供述)していく話です。苦手な方は閲覧の際にはお気を付け下さい。
(n番煎じだったらごめんなさい)


お前に意味を与えてやる

霊安室にも似た冷たい冷気と耳が痛くなるほどの静寂に包まれた一室。

そこへ唐突に開放音と眩いばかりの電光が飛び込む。

 

「…はぁ、また来たのか。よくもまあ、飽きない事だ」

 

心底呆れたような溜息と声色。男は言外にいい加減に止めておけと伝えているようでもあった。

反応がない様子に、男はあえて以前売り渡した旧世代型強化人間達の事を尋ねてみる。

 

「617達は、その後どうだ…ハンドラー・ウォルター」

 

保管した一室への扉を開け、男は振り返る。問いかけ先の杖を突いた男性、ハンドラー・ウォルターは相応に年老いたようにも見えるが、いまだその眼光は壮齢を保ってもいる。

しかし問いかけには返事をせず、沈黙を保ったままであった。

 

「…まあいい。在庫処分の手間が省ける」

 

返事はないと判断して、男は独り言のように言う。実際にこの部屋に保管された商品(・・)には馬鹿にならない維持費がかかっていた。

保管された商品である、強化人間。第6世代までのコーラル技術によるものと、第7から最新の第10世代までのコーラル代替技術によるもの。

今や強化人間はコーラルを扱わないものが人気商品で、ここにある第4世代などは旧世代型と呼ばれ文字通り在庫処分を待つだけの代物。

 

その上、有人式の人型起動兵器であるアーマード・コア(AC)を操作だけできれば良いパーツ(・・・)として、操縦技術以外の機能をオミット。

かつ騎乗スペースも確保するため、接続プラグを用いて脳波コントロールを行うタイプに合わせて人の姿すら捨て去られたケダモノ()。それがこの一室に保管された商品であった。

改めてその説明をすべく、男が口を開く。

 

「機能以外は死んでいるものと」

「御託はいい。起動しろ」

 

初めてウォルターが声を上げる。食い気味に説明の言葉を遮られた男は一瞬、目を開くも黙って起動シークエンスを行う。

連なった照射装置が離れ、冷却保存液などを注入していたノズルが引かれてプチプチと怖気のする音を立てて外れていく。最後に解凍液を流し込んだノズルがプチン、と外れて落ちた。

恐らく起動し、意識が戻りつつある商品(・・)に杖を突きながらウォルターが近づき、頭部近くで立ち止まる。

 

「621」

 

その声色は地獄から聞こえてくるかのように。あるいは地獄へ招くかのように低く沈んで聞こえた。

 

「お前に虐待(意味)を与えてやる」

 

心の奥深くへと言い聞かせるかのようなウォルターの言葉に対し、売り渡した男は気付かれぬよう溜息を吐いた。

 

 

 

ウォルターの拠点に引き連れられても、旧世代型強化人間の621は目立った反応を示さなかった。

ラップ状の包帯は移動により少しほつれ、下から覗く爛れた皮膚の痛みにも無反応。

そんな621に対し、ウォルターは冷徹に言い放つ。

 

「621。虐待の時間だ」

 

ある意味、予想通りの言葉にも621は反応を示さない。

ウォルターはゆっくりと近付き、その身体へと手をかけた。

 

数刻後。621の身体は見るからに身体に悪そうな緑の蛍光色をした液体に浸からせられる。

味合せるようにゆっくりと慎重に。顎は断頭台のように窪んだフチへ乗せられる。

更に621の全身が浸かるまで追加の液体が注がれ、白い煙が吹きあがった。

 

「どうだ、621。熱いか、痛みはあるか」

 

ウォルターの言葉に僅かに身じろぎして反応を返す。初めて反応を見せた621に対して彼は満足したのか口端を歪めた。

 

「そうか。包帯も変える。ゆっくり浸かれ」

 

緑の液体を手にすくい、頭部にも被せながらウォルターは虐待を続ける。

その余りの無体さに621は声も上げれずに口を開いた。

 

きもちいい。

 

「この熱湯はお前のような身体の奴にも効く薬を混ぜてある。少し匂うだろうが我慢しろ」

 

眉を顰めながらジワジワと包帯を解き始めるウォルターの手。漂う香りは621には殆ど感じ取れなかったが、仄かに優しい香りがする気がした。

彼が言う熱湯も621には見えないが、温度調節の掲示板がもし見れたら39度前後を保持しているのが見えただろう。今まで冷却室などで慣れた身にはさぞ熱いに違いないと、ウォルターは本気で考えている。

 

「終わったら冷え切った味気のない水を飲ませる。それまでゆっくり浸かれ」

 

この後にも虐待予告(水分補給)を怠らない。ウォルターは悪人であった。

621は後を思い、僅かな戸惑いと共に息を一つ吐いた。

 

 

 

熱湯の薬漬け(薬湯舟)上りの水攻め(水分補給)を終え、布製の包帯を全身に巻き直されて連れ出された先には、またしても白い煙を上げる液体が待っていた。

 

「621。虐待は続くぞ。お前のような強化された身体には物足りないスープだ」

 

そう言うとウォルターは座椅子に付く。ケダモノの621でも顔が届く卓上の皿には並々と盛られたスープが待っていた。微かに感じ取れる匂いに621の空腹が音を上げる。

ウォルターの頂きますの言葉を待つ事もせず、621はスープに口と舌をつける。

 

おいしい。

 

記憶に久しい暖かな食事に、本人さえ忘れかけていた感情が揺さぶられる。

目に巻きつけられた包帯へ気付かない内に涙が滲む。

 

「火傷の痛みすら厭わないか。せめて落ち着いて食え」

 

がっつく621に対し、眉を顰めて歯を食いしばるように表情を歪めるウォルター。そんな彼の食事も621と同じ白い煙を上げる、適温のスープであった。

 

 

 

「621。お前に仕事を与える」

 

食事後、部屋を移してもう一度包帯を変えたウォルターは命令を下す。

彼曰く劇薬とやらを染み込ませた包帯は仄かに温かみを感じたが、冷え込み始めた夜も遅い時間からの命令に621はようやく本題かと身体を強張らせる。

 

ここで横になれ(ベッドでゆっくり休め)。それが今のお前の仕事だ」

 

そう言い残すと621の身体に布を被せて、ウォルターは部屋の電気を消して扉を閉めた。

扉の締まる音と包帯越しに感じていた光がなくなるのを感じて、621は暫し呆然と佇む。

じわりじわりと包帯から染み入る薬物。爛れた皮膚が疼く(治癒)のを感じながら、ウォルターの言動に621は多大に困惑しつつ諦めて身体から力を抜いた。

 




ウォルター、虐待で検索をしたら見当たらなかったので息抜きに書きました。反省はしている。

でもまたネタが思いついたり、需要があれば短編として書くかもしれません。
予定は未定。
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