突如として現れたのは、数人の生徒。
制服の上にそれぞれ個性あるコートを纏い、どこか只者ではない雰囲気を放っている。
生徒たちはざわついた。
「あれ……天命の十傑のメンバー……!」
「一気に四人も……!?」
「ここにて宣言する。獅堂レイ、お前は“十傑”から除名だ」
「なっ……!? ま、待ってくれ!まだ俺は……!」
「敗北は罪だ。敗者に居場所はない」
冷たく言い放つその姿に、コウは眉一つ動かさなかった。
そして、次の瞬間――その中のひとりが、コウに視線を向ける。
「桜井コウ。お前に“十傑”の座を譲る価値があると判断した。……我々の一員になれ」
会場が静まり返る。
だが、コウの返事は早かった。
「……興味はない」
「……なに?」
「俺は“十傑”になんてならない。俺が望むのは―強者との勝負だ」
風が吹き抜ける。
悪魔たちの咆哮が、彼の決意を祝福するように唸った。
「このデュエルで証明されたろ。俺は弱者でも、虫けらでもない。だから……全員、俺が倒してやるよ」
静かに、しかし確かな声音で放たれたその言葉に、十傑たちの目が鋭くなる。
「面白い……ならばその口、最期まで叩いていられるか、見せてもらおう」
十傑たちは一人、また一人とその場を去っていく。
そして、コウの背後にそっと寄り添う少女――ユイが囁いた。
「やっぱり……アンタはもう、今までの弱く、いじめられていたコウじゃないね」
コウは答えなかった。ただ、虚空を見つめていた。
その瞳の奥には、冷たい火が燃えていた。
校門を出てすぐの通学路、夕焼けが影を長く伸ばす中、コウは隣を歩くユイにちらりと目を向ける。
「……なに、黙ってるんだよ」
「……ちょっと…ね。昔のあんたが帰ってきたように思えて嬉しくてね。」
でも、とつけ加えユイは頬を膨らませ、ふと笑った。「昔から無茶する子だったけど、あれは無茶どころじゃないよ」
「ふっ……そうかもな」
風が吹いた。制服の裾が揺れ、コウの足取りは少しだけ軽やかになる。
この感覚――胸が高鳴る。カードを握る手に、また戦いたいという衝動が滾っていた。
(ああ……そうだ。オレは、こういう“戦い”が好きだったんだ)
いじめられていた時の自分では感じなかった感情。
圧倒的な力で相手をねじ伏せる快感。戦術を巡らせ、駆け引きで上を取る喜び。
「なに笑ってんの?」
「……いや、楽しいなってさ」
ユイは呆れたように肩をすくめたが、心なしかその瞳には安堵が浮かんでいた。
久しぶりに「勝負を楽しむかつてのコウ」を見たからかもしれない。
「ただいまー」
「……って、アンタひとり暮らしでしょ。誰に言ってんのよ」
「癖だよ。癖」
笑いながら部屋に入り、玄関で靴を脱ぐ。ユイも当然のように後に続く。
この家での生活に、彼女も自然に溶け込んでいる。
コウは部屋の隅に積まれたカードケースを取り出し、机の上に広げる。
獣の咆哮。悪魔の囁き。断罪の意志。
その全てが詰まったカードたちが、今の彼のすべてだった。
――数日後。
繁華街の大型モニターで、突如流れたニュースが街を騒がせた。
《次週、デュエル大型公式トーナメント“グランド杯予選”開催!
優勝者には全国大会への挑戦権が与えられる――》
放課後のカフェ。コウはそのニュースを静かに眺めていた。
周囲の生徒たちはざわめき、参加を迷う者、出場を決意する者、様々だった。
だが――
コウの視線は、ただモニターを貫いたまま。
「面白くなってきたじゃねえか……」
唇の端がゆっくりと、確実に吊り上がる。
(俺が倒すべき“強者”がいる限り……俺は、止まらない)
――そして、画面が切り替わった時、次回予告のように心が高鳴った。