銃が撃てないので拳で抵抗するキヴォトス生活 作:×⚪︎舐め鯛
まずは、この作品に触れてくださりありがとうございます。
今後、そこそこのペースで投稿を続けたいと思いますので、よろしくお願い致します。
拙い、至らないところがあればご指摘いただけると光栄です。
私は天才だった。
全日本女子剣道選手権大会、優勝。
皇后盃全日本女子選手権大会、優勝。
全日本フェンシング選手権大会女子サーブル、優勝。
齢15という年齢のせいで段位こそ高位のものは持っていないものの、その他、空手、槍道、斧道などなど、ほとんどの武道をマスターして、大会でも一度ずつ好成績を残している。
私は紛れもない武術の天才だった。
一つの道を極めるのに、必要な時間はどんなに長くても2週間。
2週間で私の周りに、私に勝利できる者はいなくなった。
戦って、戦って、戦った。
そして、勝って、勝って、勝ち尽くした。
だけど、得られたものは虚しさだけだった。
こんな、生まれ持ったチートのような才能で無双して何が楽しいのだろうか?いや、何も楽しくない。
せめて、私と対等に戦える相手が一人でもいれば、変わったのかもしれないが、私の化け物のようなズルに対応するのを人間に求めるのはあまりに酷な話というものだ。
ともあれ、私は14歳で武道の一切をやめた。敵がいない闘争など退屈極まりなかったし、私なんかがチート使って武術をやっても、その道の人たちに失礼だ。
武道をやめて、私は新しい趣味を探そうとして………そして、私にも才能がないことがあるのだと知った。
いや、才能がないなどという言葉では生ぬるい。私のチートじみた武道の才能と相反するレベルのものだ。
実は、私は銃が撃てなかったのだ。
武道をやめて私は試しにゲーム、それもFPSのシューティングゲームをやってみた。
そしたらどうだろう。なんと、敵には一発も当たらない。
私も、始めは誰だって下手なんだから、しょうがないと思ったさ。
でも、練習用の動かない的にも一発も当たらなかった時点で私には不可能であると悟った。
他にも、夏祭りで射的をやってみると、コルク弾は向かいの焼きそば屋の鉄板で焼かれた。
私の射撃下手は投擲物にも適応されるようで、水切りをしたら何故か一度も着水しないまま川の対岸に飛んでいった。
しかも、ボールを投げたり打ったりする球技すらも私のその特性は発揮された。
剣を握れば敵無し。ただしつまらない。
銃を撃てば必敗。流石につまらない。
こんなピーキーな性能をした私は、どうやって、武道をやる上で培われた闘争心を埋めればいいのだろうか。
だから、最近、私は何に熱中するわけでも無く、ただ飛び道具が登場しないようなゲームをダラダラと消費しながら生きてきた。
いや、ついさっきまでそうやって生きてきたんだ。
「で、あなたはだれ?私が死んだって、どういうこと?」
私は、全体が純白の何かで構成されたおかしな空間を見渡して、再び、眼前にいるナニカに目を向ける。
自室でダラダラしていたら、私はいつの間にかこんな場所に居て、そして、体全体にモザイクがかかったみたいなそれに「すまない!だが、君はたった今死んだ‼︎」と言われた。
あまりの脈絡のなさに、私は夢だと思ったが頬をつねれば痛かった。
「いやはや、驚いた!いきなり、君は死んだと言われたのにその落ちつきようかい⁉︎」
男なのか女なのか分からない妙な声だったが、その高らかな声音からナニカは興奮しているように見えた。
「緊急事態に狼狽えても仕方ないからね……それより、質問に答えてもらいたいのだが?……私は本当に死んだのか?どうして死んだのか?…ここは何処で、あなたは何者なのか?」
「おっと、すまない。私としたことが……。質問が増えた気がするが、全て答えよう!…まず、君は死んだ。これは本当だ。…そして、君が死んだ理由は君が世界のバグだったからだ…いや、どちらかといえば
「は?……手違い?」
「バグとか神じゃなくてそっちの方が気になるのかい……本当に掴みどころのない子だね……」
「あなたが神なのは見た目やオーラから分かるし、バグには心当たりがあるからね…」
私は息を吐いて視線を落とす。
競技は変えても長い間、竹刀やら木槍やらを振り回していたんだ、潰れ
た豆が固まって少しゴツゴツしている、あまり女の子らしくない私の手のひら。
でも、大きさ自体は小さいし、手の平から伸びる腕も細くてひどく華奢だ。
こんな細腕から、同年代か少し上の婦女子は兎も角、高段位のおっちゃん達を投げ飛ばすパワーが出るはずないだろう。
「なるほど…いやはや、本当に話が早くて助かる。お察しの通り、君はこの世界で生きるには余るほどの力を持っている。なぜなら、君はもともとこことは別の世界で生まれるはずだったからだ。……しかし、私たちの手違いでこっちの世界で生まれてしまった」
「じゃあ、私はあなた方のミスを誤魔化すために殺されたと?」
「世界にバグがあると世界もバグ自身も幸せになれないから………いや、言い訳はよそう……まぁ平たく言えばそうなるね…本当に申し訳ない」
『神』の口調からおどけた様子が消え去り、モザイクのような姿が揺らめいた。
「…まさか、神に頭を下げられる日が来るとはね……まぁ、いいよ。色々心残りはあるけど、これも私の運命なんだろうね」
あの漫画を最終回まで読みたかったし、最近やり始めたELDEN RINGはまだ全クリ出来てないし、明日ブルーアーカイブのアップデートで新イベだったけど………あれ、なんか腹立ってきたな?
「君は人生2周目か何かなのかい?………まぁ、いい。流石に私たちも君に申し訳なさすぎてね…そこで…お詫びと言ってはなんだが…君、ゲームに興味はあるかい?」
「まぁ…あるけど……」
私は少しぶっきらぼうに答えた。
まったく…その好きなゲームを出来なくなったのは誰のせいだと思ってるんだ。
「それはよかった…じゃあ、私とあるゲームをしよう」
「ゲーム?」
「ああ。今から君を、
「ゲームの世界……?そんな世界は存在するのか?…ゲームは人間の想像とプログラムで出来た偽りの世界だろう?」
「人間の想像だろうが、一つのれっきとした世界だよ。……この世はね、思ったよりも簡単に世界が作られるんだ」
「ほぅ……まぁ、神が目の前にいるような世の中だしね。ゲームの世界が実在しても何もおかしくないか………。うん、それは分かったけど、どうして私はゲームをクリアしないと願い事を叶えてもらえないんだ?」
「私たち神は世界全体は兎も角、ある特定の個人に祝福を贈るのは禁止されているんだ。だけど、苦難を乗り越えた勇者になら話は変わる。……それに、君はとんでもない能力を持っている。クリアは容易だろう?」
特定の個人を殺すのはいいのかよ……。
そのツッコミを飲み込んで、私は神のゲームとやらについて考える。
私が一番直近にやったゲームはELDEN RING………いや、ELDEN RINGが難しすぎて息抜きでやったBloodborneかな。Bloodborneなら……まぁ、いけるでしょ。銃使えないからパリィができないけど、何周もしたし、一回栗本チャレンジして最初のボスまでは倒せたし……。
………それに、神の言だとゲームの中の敵……つまり、あの化け物達と現実世界で、真正面から戦えるんだろう?
なんて……なんて、魅力的なんだ。
私は、己の中に飼っていた闘志がムクムクと膨れ上がり暴れ狂うのを感じた。
いけない、頬が緩んでしまう。
「なるほど……うん、じゃあそのゲーム、受けるよ。すぐにクリアして帰ってくるから覚悟しといてよ?」
「君がそう言ってくれて嬉しいよ。……うん、その意気やよし。じゃあ、早速その世界に飛ばすから……そこでじっとしておいて」
私は神の言う通り、直立不動で構える。
神は、両手を上げて、力むような仕草をした。それに合わせて、私も緊張で体が少し強張る。
「願わくば、向こうの世界では君が幸せに生きれるように………じゃあ、行ってらっしゃい」
世界が廻る。
前後左右の感覚がなくなって、自己と世界の境界があやふやになる。
吐き気なんだか、悦楽なんだか、訳のわからない感情になりながら、私はゆらりゆられて、そして、遂にその揺れが止んだ。
「んっ……うぅ…」
私は閉じていた瞳をゆっくりと開く。
眩い光と、空の青が私の網膜を刺激した。
………あれ?Bloodborneにこんな綺麗な青空あったっけ?
あそこ、ずっと夜じゃなかったっけ?
それに、私の周りを囲むのは天高く聳えるビル群。
うん?おかしいぞ?もしかしてBloodborneとは違う世界に飛ばされた?
「……お嬢さん?大丈夫かい?」
「え、あぁ……お構いなく…って、えぇ⁉︎」
あまりにも私が呆然としすぎていたのか、この道を歩く通行人の1人が声をかけてきた。
いや、通行人というか通行犬か?
なんと、話しかけてきた者の姿はモフモフとした毛並みの二足歩行の犬だった。
私は驚きの声を上げる。
「うぉ⁉︎お、お嬢さん、本当に大丈夫かい⁉︎」
「あ………えっと…お構いなく〜」
何とも居た堪れなくなり、私は苦笑いしながらそそくさとその場を立ち去った。
早歩きをしながら周りを見つめると、さっきの通行犬だけがおかしいのではなく、他も、やけに古風な装いの二足歩行の猫だったり、ふくよかなスズメだったり、果てにはロボットだったりがそこら中を闊歩していた。
あ、いや!遂に人を見つけた!
どこかの学校の制服を着た、可愛らしい女の子達だ。
ようやくまともな人を見つけられて嬉しくなった私は彼女達に近づく。
しかし、近づいてみるとその少女達も完全に人というわけではなかった。
コスプレかなんかだと思っていた猫のような耳や天使のような羽は、全部自前で、そして、彼女らの頭の上には天使の輪っかのようなものが浮かんでいたのだ。
さらに、驚くことに彼女らはその華奢な姿からは想像もできないような、無骨な銃火器を携えていた。
彼女らの姿を見て、ようやく私は、自分がどのゲームの世界に飛ばされたかを理解した。
そして、絶望した。
だって…ここって……。
「うそでしょ………」
私はフラフラとした足取りで歩いて、ふと横を見るとビルのガラスに反射した私の姿が見えた。
私の容姿は前の世界のものから変わっていた。
もちろん、フロムゲー特有のスタイリッシュながらも無骨なものではなく、今を生きる女子高生のような可愛らしい女の子だった。
バッサリと短く切り揃えた野暮ったい黒髪は毛先までサラサラとした金色の長髪に変わっていて、瞳の色は燃えるような赤色だった。
それでも、服の上からで分かる、薄っぺらで子供っぽい体が今まで通りなのは、動かしやすいと神に感謝すればいいのか、こんなに可愛くできるのに体は手を抜きやがったなと怒ればいいのか分からなかった。
まるで深窓の吸血姫のような淑やかさと肉食性を兼ね備えたような、その姿の上には、先ほどの女生徒のように特徴的な天使のような輪が浮かんでいた。
「この世界は……」
嗚呼、どうして忘れていたんだろう。Bloodborneをした後、AP消費のためにこのゲームを、ほんの一瞬プレイした事に。
「ブ、ブ、ブルーアーカイブじゃないかあああぁぁぁぁ‼︎⁉︎」
ブルーアーカイブ。透き通るような世界観がウリの、学園ものの美少女ゲームだ。
そして、舞台であるキヴォトスでは銃の携帯が許可されており、生徒達はことあるごとに各々の銃器で問題を解決していく。
そう、銃がそこら中で当たり前にぶっ放される、アメリカもびっくりの銃社会がこの世界だ。
そして、何度も言うが私は銃器はおろか飛び道具すら満足に扱えない。
「あの神め‼︎この世界をどうやってクリアしろってんだよ⁉︎というか、そもそもどうやって生きろってんだよおおおおぉぉぉぉ‼︎」
これは、銃器の一切を使えない私が、銃が当たり前のキヴォトスで学園生活を送る物語。
そして、己に与えられた才能でこの世界をゴリ押し攻略して、本来とは少し違う終着点に行き着く物語だ。